(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について、説明する。
【0018】
<コアシェル型金属微粒子の製造方法>
本実施形態に係るコアシェル型金属微粒子は、銅を含むコア成分と銀を含むシェル成分により形成されている。
本実施形態に係るコアシェル型金属微粒子の製造方法は、以下の3つの工程を含んでいる。
(1)銅粒子と、銀粒子を準備する工程
(2)上記銅粒子と上記銀粒子とを有機溶媒中に同時に分散させることにより、上記銅粒子の表面に複数の上記銀粒子を吸着させる工程
(3)上記銀粒子が吸着した上記銅粒子を加熱することにより、上記銅粒子の表面に吸着した複数の上記銀粒子同士を融着させて、上記銅粒子の表面に上記銀を含むシェル成分を形成する工程
【0019】
本実施形態に係るコアシェル型金属微粒子の製造方法によれば、銅粒子と複数の銀粒子を固体同士で吸着させ、その後、加熱することにより銅粒子の表面に吸着した銀粒子を融解させて複数の銀粒子同士を融着させている。こうすることで、銀の被覆状態が良好で、かつ、導電性に優れるコアシェル型金属微粒子を安定的に製造することができる。
この製造方法により銀の被覆状態が良好で、かつ、導電性に優れるコアシェル型金属微粒子を得ることができる理由は必ずしも明らかではないが以下の理由が考えられる。
まず、分散している銀粒子が表面積を最小にすべく銅粒子の表面全体を覆うように吸着して、銀粒子からなる層が形成される。そして、これを加熱することにより、銅粒子の表面全体を銀粒子が覆ったまま銀粒子同士の融着が起こるため、銅に対する被覆性に優れた銀シェル成分が形成されると考えられる。これにより、銀の被覆状態が良好なコアシェル型金属微粒子が得られる。このようなコアシェル型金属微粒子は、銀を含むシェル成分により銅の酸化を効果的に抑制できるため、導電性に優れていると考えられる。
【0020】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0021】
[銅粒子と、銀粒子を準備する工程]
はじめに、本実施形態に係るコアシェル型金属微粒子の原料である銅粒子と、銀粒子を準備する。
【0022】
(銅粒子)
原料である銅粒子は特に限定されず、一般的に用いられる公知の銅粒子を用いることができる。市販の銅粒子としては、例えば、高純度化学研究所製球状銅粉末(製品名:CUE12PE)等を用いることができる。あるいは、銅粒子は、還元法、不均化法等により製造することもできる。
なお、本実施形態において、銅粒子の粒子形状は、球状であっても、板状であってもよい。
【0023】
銅粒子の平均粒子径は、好ましくは100nm以上20μm以下であり、より好ましくは100nm以上10μm以下であり、特に好ましくは100nm以上1μm以下である。
銅粒子の平均粒子径が上記下限値以上であると、得られる導電性インクの流動特性がより良好となる。銅粒子の平均粒子径が上記上限値以下であると、より微細な配線パターンの形成が可能となり、得られる回路の抵抗値をより一層低減できる。
ここで、本実施形態において、「平均粒子径」という記載は、定方向接線径(フェレ径)の測定によって求めた粒径分布における積算値50%の粒子径を意味する。また、「粒径分布」という記載は、SEM像から無作為に約300個の粒子に対して、粒子径を測定し求めた値を意味する。
【0024】
本実施形態に係る銅粒子は、通常、有機溶媒に分散して懸濁液の状態で使用する。
使用する有機溶媒としては特に限定されないが、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレンなどの疎水性溶媒が好ましい。これにより、コアシェル型金属微粒子の製造時に、銅粒子同士が凝集してしまうことを抑制することができる。
使用する有機溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0025】
なお、銅粒子を含む懸濁液中の銅粒子の濃度は、例えば、1g/L以上500g/L以下である。
【0026】
さらに、上記銅粒子を含む懸濁液には、銅粒子の凝集を抑制する観点から、分散剤を配合することが好ましい。分散剤としては、銅粒子を被覆する銀粒子の被覆性を向上させる観点から、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、ナフテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のカルボン酸系分散剤が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0027】
懸濁液中に配合する分散剤の量は銅粒子の凝集を抑制できる量であれば特に限定されないが、例えば、銅粒子100質量部に対し、1質量部以上100質量部以下である。
【0028】
また、上記銅粒子を含む懸濁液には、あらかじめ銅粒子の表面に存在する酸化物を除去する観点から、各種還元剤を配合してもよい。還元剤は還元性を有する溶媒を用いてもよいし、溶媒以外の還元剤を配合してもよい。
【0029】
上記還元剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノールなどの脂肪族モノアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,2−ブタンジオールなどの脂肪族多価アルコール;ベンジルアルコール、1−フェニルエタノール、ジフェニルカルビトール、ベンゾインなどの芳香族モノアルコール;ヒドロベンゾインなどの芳香族多価アルコール;グルコース、マルトース、フルクトースなどの糖類;ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールなどの高分子アルコール;ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニドン、ヒドラジン等のアミン化合物;水酸化ホウ素ナトリウム、ヨウ化水素、水素ガス等の水素化合物;一酸化炭素、亜硫酸等の酸化物;硫酸第一鉄、塩化鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、硫化鉄、酢酸錫、塩化錫、二リン酸錫、シュウ酸錫、酸化錫、硫酸錫等の低原子価金属塩;ホルムアルデヒド、ハイドロキノン、ピロガロール、タンニン、タンニン酸、サリチル酸等の有機化合物等を挙げることができる。
使用する還元剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
懸濁液中に配合する還元剤の量は銅粒子の表面に存在する酸化物を十分に除去できる量であれば特に限定されないが、例えば、銅粒子100質量部に対し、1質量部以上200質量部以下である。
【0031】
(銀粒子)
原料である銀粒子は特に限定されず、一般的に用いられる公知の銀ナノ粒子を用いることができる。市販の銀粒子としては、例えば、イオリテック社製銀ナノ粒子(製品名:NM−0037−HP)等を用いることができる。あるいは、銀粒子は、還元法、熱分解法等により製造することもできる。
本実施形態において、銀粒子の粒子形状は、球状であっても、板状であってもよい。
【0032】
銀粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm以上200nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下である。
銀粒子の平均粒子径が上記下限値以上であると、得られるコアシェル型金属微粒子の銀の被覆性がより良好となる。銀粒子の平均粒子径が上記上限値以下であると、より微細な配線パターンの形成が可能となり、得られる回路の抵抗値をより一層低減できる。
【0033】
本実施形態に係る銀粒子は、通常、有機溶媒に分散して懸濁液の状態で使用する。
使用する有機溶媒としては疎水性溶媒、親水性溶媒のいずれであってもよい。特に限定されないが、鉱物油、脂肪酸、アルコール、炭化水素などの疎水性溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール、グリセリンなどの多価アルコール類、糖アルコール類、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族アミン類、エタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミドなどのアミド類等などの親水性溶媒;が好ましい。これにより、コアシェル型金属微粒子の製造時に、銀の凝集体が生成してしまうことを抑制することができる。
使用する有機溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0034】
なお、銀粒子を含む懸濁液中の銀粒子の濃度は、例えば、1g/L以上1000g/L以下である。
【0035】
さらに、上記銀粒子を含む懸濁液は、銀粒子の凝集を抑制するために分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては、銅粒子を被覆する銀粒子の被覆性を向上させる観点から、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のアルキルアミン系分散剤が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0036】
懸濁液中に配合する分散剤の量は銀粒子の凝集を抑制できる量であれば特に限定されないが、例えば、銀粒子100質量部に対し、1質量部以上100質量部以下である。
【0037】
ここで、銅粒子の分散剤として前述したカルボン酸系分散剤を使用し、銀粒子の分散剤としてアルキルアミン系分散剤を使用することで、銅粒子を被覆する銀粒子の被覆性をより効果的に向上させることができる。
【0038】
[銅粒子の表面に複数の銀粒子を吸着させる工程]
つぎに、銅粒子と銀粒子とを有機溶媒中に同時に分散させることにより、銅粒子の表面に複数の銀粒子を吸着させる。
【0039】
銅粒子と銀粒子とを有機溶媒中に同時に分散させる方法は特に限定されないが、例えば、有機溶媒中に銅粒子を分散させた懸濁液に、有機溶媒中に銀粒子を分散させた懸濁液を添加し、得られた混合液を均一に混合する方法、有機溶媒中に銀粒子を分散させた懸濁液に、有機溶媒中に銅粒子を分散させた懸濁液を添加し、得られた混合液を均一に混合する方法、有機溶媒中に銅粒子を分散させた懸濁液に銀粒子を添加し、得られた混合液を均一に混合する方法、有機溶媒中に銀粒子を分散させた懸濁液に銅粒子を添加し、得られた混合液を均一に混合する方法等が挙げられる。
これらの中でも、銀粒子および銅粒子の凝集をより効果的に抑制できる観点から、有機溶媒中に銅粒子を分散させた懸濁液に、有機溶媒中に銀粒子を分散させた懸濁液を添加し、得られた混合液を均一に混合する方法が好ましい。
【0040】
ここで、銅粒子の表面に銀粒子を十分に吸着させるために、例えば、上記の混合液を10〜40℃、5〜30分間混合することが好ましい。
【0041】
銅粒子と銀粒子とを同時に分散させるときに使用する有機溶媒としては疎水性溶媒、親水性溶媒のいずれであってもよい。特に限定されないが、鉱物油、脂肪酸、アルコール、炭化水素などの疎水性溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール、グリセリンなどの多価アルコール類、糖アルコール類、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族アミン類、エタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミドなどのアミド類等などの親水性溶媒;が好ましい。これにより、コアシェル型金属微粒子の製造時に、銅の凝集体や銀の凝集体が生成してしまうことを抑制することができる。
使用する有機溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0042】
有機溶媒中に分散させる銀粒子の量は、銅粒子100質量部に対し、好ましくは1質量部以上80質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上40質量部以下であり、特に好ましくは5質量部以上25質量部以下である。
有機溶媒中に分散させる銀粒子の量が上記下限値以上であると、銅粒子に対する銀粒子の被覆性がより一層良好なものとなる。また、有機溶媒中に分散させる銀粒子の量が上記上限値以下であると、銀粒子の凝集体の生成をより効果的に抑制することができる。
【0043】
[銅粒子の表面に銀を含むシェル成分を形成する工程]
つづいて、銀粒子が吸着した銅粒子を加熱することにより、銅粒子の表面に吸着した複数の銀粒子同士を融着させて、銅粒子の表面に銀を含むシェル成分を形成する。
【0044】
銀粒子が吸着した銅粒子を加熱する加熱温度は特に限定されないが、60℃以上150℃以下であることが好ましい。
銀ナノ粒子はナノサイズ効果により、融点が低下することが知られている。そのため、銀粒子として銀ナノ粒子を用いた場合、このような比較的低温でも銀ナノ粒子同士を融着させて、銅粒子の表面に銀を含むシェル成分を形成できる。
【0045】
銀粒子が吸着した銅粒子を加熱する加熱時間は特に限定されないが、例えば、10分間以上2時間以下である。
【0046】
以上の工程により、導電性に優れたコアシェル型金属微粒子を得ることができる。
また、必要に応じて、遠心分離等の公知の分離方法により、得られた懸濁液からコアシェル型金属微粒子を分離してもよい。
【0047】
<コアシェル型金属微粒子>
本実施形態の製造方法により得られたコアシェル型金属微粒子は、例えば、導電性インクに用いられる導電性粒子として好適に用いることができる。本実施形態の製造方法により得られたコアシェル型金属微粒子は、銀の被覆状態が良好であり、導電性に優れているため、このコアシェル型金属微粒子を含む導電性インクを用いて得られた回路は導電性に優れている。
【0048】
コアシェル型金属微粒子の平均粒子径は、好ましくは100nm以上20μm以下であり、より好ましくは100nm以上10μm以下であり、特に好ましくは100nm以上1μm以下である。
コアシェル型金属微粒子の平均粒子径が上記下限値以上であると、得られる導電性インクの流動特性がより良好となる。コアシェル型金属微粒子の平均粒子径が上記上限値以下であると、より微細な配線パターンの形成が可能となり、得られる回路の抵抗値をより一層低減できる。
【0049】
<導電性インク>
本実施形態に係る導電性インクは、上記コアシェル型金属微粒子と、バインダー樹脂と、水および有機溶媒のうち少なくとも一方を含む溶媒と、を含有するものである。
【0050】
上記導電性インクは、例えば、上記コアシェル型金属微粒子と、上記バインダー樹脂とを、水、有機溶媒のうち少なくとも一方を含む溶媒に分散させた液体である。
【0051】
上記導電性インクを、例えば、インクジェット法やスクリーン印刷法等により基材上に塗布して、乾燥後、加熱して、金属粒子含有配線、薄膜等の導電部材とすることができる。
【0052】
本実施形態において、導電性インクの形態は、エマルジョンでもよいし、サスペンションでもよく、使用する溶媒は、一般に用いられる溶媒であれば特に限定されない。
【0053】
上記導電性インク中のコアシェル型金属微粒子の含有量は、導電性インクの全体を100質量%としたとき、例えば、10質量%以上94質量%以下である。
【0054】
(バインダー樹脂)
本実施形態において、導電性インクはバインダー樹脂を含有する。このバインダー樹脂は、コアシェル型金属微粒子同士を結着するバインダーとして機能する。
【0055】
上記バインダー樹脂の導電性インク中における存在形態は、溶媒に対して溶解していてもよいし、エマルジョン、またはサスペンションであってもよい。上記バインダー樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ロジン、ロジンエステル、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルプチラール、ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。
使用するバインダー樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0056】
上記導電性インク中のバインダー樹脂の含有量は、導電性インクの全体を100質量%としたとき、例えば、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0057】
(有機溶媒)
導電性インクに使用する有機溶媒は、疎水性溶媒、親水性溶媒のいずれであってもよい。
【0058】
疎水性溶媒としては、一般的にインク等に使用されるものであればよい。例えば、鉱物油、脂肪酸、アルコール、炭化水素などが挙げられる。
【0059】
親水性溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール、グリセリンなどの多価アルコール類、糖アルコール類、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、メチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族アミン類、エタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミドなどのアミド類等が挙げられる。
【0060】
導電性インクに使用する有機溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0061】
(銀粒子)
本実施形態に係る導電性インクは、さらに銀粒子を含むことが好ましい。これにより、本実施形態に係る導電性インクを用いて得られる回路の導電性をより一層向上できる。
銀粒子としては、本実施形態に係るコアシェル型金属微粒子の製造に用いる、前述した銀粒子と同様のものを用いることができる。
導電性インク中の銀粒子の量は、導電性インクの全体を100質量%としたとき、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
【0062】
(還元剤)
本実施形態に係る導電性インクには必要に応じて各種還元剤を配合することができる。還元剤は還元性を有する溶媒を用いてもよいし、溶媒以外に別途還元剤を配合してもよい。
還元剤としては、前述した銅粒子を含む懸濁液に含有させる還元剤と同様のものが挙げられる。
【0063】
導電性インク中の還元剤の量は、導電性インクの全体を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0064】
(分散剤)
本実施形態に係る導電性インクには、必要に応じて各種分散剤を添加してもよい。
上記分散剤としては、例えば、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のアルキルアミン系分散剤、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、ナフテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のカルボン酸系分散剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0065】
導電性インク中の分散剤の量は、導電性インクの全体を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0066】
また、本実施形態に係る導電性インクには、必要に応じて各種消泡剤、着色剤、表面調整剤等の導電性インクに一般的に使用される各種添加剤を含んでもよい。
【0067】
<導電性インクの作製方法>
本実施形態に係る導電性インクは、公知の方法によって作製することができる。例えば、3本ロールミル、ビーズミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ディスパーなどの混合機を用いて、上記の各材料を混合して導電性インクを作製することができる。
【0068】
<基板>
本実施形態に係る基板は、本実施形態に係る導電性インクを、基材の所定の領域に塗布し、上記領域を加熱し、上記導電性インク中の上記コアシェル型金属微粒子同士を融着させて、導電パターンを形成することにより得られるものである。
【0069】
上記基板は、例えば、有機ELディスプレイ、太陽電池、電子ペーパー、フレキシブル基板等の電子デバイスに用いられる。
【0070】
本実施形態において、上記基板の形成に用いる基材は、使用目的等により、ガラス等の無機基材、各種プラスチック基材が使用可能である。
【0071】
プラスチック基材としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性樹脂により形成されたものが挙げられる。耐熱性、機械的特性、熱的特性などの面からポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリエステルにより形成されたものが好ましい。
【0072】
また、基材の形状としては、平板、立体物、フィルム等が挙げられ、フィルム状のものが好適に用いられる。上記樹脂からなる樹脂フィルムを用いることで、ロールツーロール方式での製造が可能となり、高い製造効率で生産することができる。
【0073】
これらの基材は、導電性インクを塗布する前に、純水や超音波等を用いて塗布面を洗浄することが好ましい。
【0074】
<基板の製造方法>
本実施形態に係る基板の製造方法は、導電性インクを基材の所定の領域に塗布する塗布工程と、上記領域を加熱し、上記導電性インク中の上記コアシェル型金属微粒子同士を融着させ、導電パターンを形成するパターン形成工程と、を有する。これにより、抵抗値が十分に低減された基板を安定的に製造できる。
【0075】
導電性インクを基材の所定の領域に塗布する方法は、公知の各種方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、ディスペンサーでの塗布法などを用いることができる。
特に微細な配線パターンを形成するために、インクジェット法またはスクリーン印刷法が好ましい。
【0076】
ここで、導電性インクを基材に塗布する塗布量としては、所定の領域の所望する膜厚に応じて適宜調整すればよく、インクジェット法では乾燥後の導電性インクの膜厚が0.01μm以上10μm以下の範囲が好ましく、特に好ましくは0.1μm以上10μm以下の範囲となるよう塗布すればよい。スクリーン印刷法では、インクジェット法に比べ厚膜化が容易なため、乾燥後の導電性インクの膜厚が0.1μm以上100μm以下の範囲が好ましく、特に好ましくは1μm以上50μm以下の範囲となるよう塗布すればよい。
【0077】
パターン形成工程における導電性インクを塗布した領域の加熱は、基材の熱変形及び変性等を考慮し、金属微粒子の融点以上の任意の温度で行えばよい。また、パターン形成工程の前に、基材を加熱する工程を有し、加熱された基材を用いて、パターン形成工程を行うこともできる。
【0078】
パターン形成工程における導電性インクを塗布した領域の加熱方法は公知の各種加熱方法を使用することができる。例えば、加熱炉による外部加熱、マイクロ波加熱や電流による加熱、誘導加熱遠赤外線加熱、光加熱等によっておこなうことができる。
【0079】
パターン形成工程は、大気下でおこなうことができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
銅を含むコア成分と銀を含むシェル成分により形成されたコアシェル型金属微粒子の製造方法であって、
銅粒子と、銀粒子を準備する工程と、
前記銅粒子と前記銀粒子とを有機溶媒中に同時に分散させることにより、前記銅粒子の表面に複数の前記銀粒子を吸着させる工程と、
前記銀粒子が吸着した前記銅粒子を加熱することにより、前記銅粒子の表面に吸着した複数の前記銀粒子同士を融着させて、前記銅粒子の表面に前記銀を含むシェル成分を形成する工程と、
を含む、コアシェル型金属微粒子の製造方法。
2.
前記銀粒子が吸着した前記銅粒子を加熱する加熱温度が60℃以上150℃以下である、1.に記載のコアシェル型金属微粒子の製造方法。
3.
前記銅粒子の平均粒子径が100nm以上20μm以下である、1.または2.に記載のコアシェル型金属微粒子の製造方法。
4.
前記銀粒子の平均粒子径が1nm以上200nm以下である、1.乃至3.いずれか一つに記載のコアシェル型金属微粒子の製造方法。
5.
前記有機溶媒中に分散させる前記銀粒子の量は、前記銅粒子100質量部に対し、1質量部以上80質量部以下である、1.乃至4.いずれか一つに記載のコアシェル型金属微粒子の製造方法。
6.
前記有機溶媒が疎水性溶媒である、1.乃至5.いずれか一つに記載のコアシェル型金属微粒子の製造方法。
7.
1.乃至6.いずれか一つに記載のコアシェル型金属微粒子の製造方法により得られたコアシェル型金属微粒子。
8.
7.に記載のコアシェル型金属微粒子と、バインダー樹脂と、水および有機溶媒のうち少なくとも一方を含む溶媒と、を含む導電性インク。
9.
銀粒子をさらに含む8.に記載の導電性インク。
10.
所定の導電パターンを有する基板の製造方法であって、
8.または9.に記載の導電性インクを、基材の所定の領域に塗布する塗布工程と、
前記領域を加熱し、前記導電性インク中の前記コアシェル型金属微粒子同士を融着させ、導電パターンを形成するパターン形成工程と、
を含む、基板の製造方法。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
各実施例及び各比較例で用いた原料成分を下記に示した。
単分散銅粉末は硫酸銅5水和物水溶液を2段階で還元することにより作製、または市販のものを用いた。作製した3種類の平均粒子径の制御は水溶液のpHと温度を適宜変えることにより行った。
銅粒子1:単分散銅粉末(平均粒子径:0.5μm)
銅粒子2:単分散銅粉末(平均粒子径:0.2μm)
銅粒子3:単分散銅粉末(平均粒子径:1.0μm)
銅粒子4:単分散銅粉末(平均粒子径:5.0μm、高純度化学研究所製球状銅粉末(製品名:CUE12PE))
銀粒子を含む懸濁液:銀ナノ粒子分散液(イオリテック社製銀ナノ粒子(NM−0037−HP)、銀ナノ粒子濃度:500g/L、溶媒:n−オクタン、n−ブタノール、平均粒子径20nm)
還元剤1:ヒドラジン一水和物(和光純薬工業社製)
分散剤1:オレイン酸(和光純薬工業社製)
分散剤2:n−へキシルアミン(関東化学社製)
分散剤3:n−ドデシルアミン(和光純薬工業社製)
バインダー樹脂:ポリエステル樹脂(高松樹脂社製、ペスレジンS−680EA)
【0083】
(実施例1)
<銅コア銀シェル粒子の作製>
ガラス製三口フラスコに、銅粒子1を1g、トルエンを10mlそれぞれ加え、混合溶液を得た。次いで、ガラス製三口フラスコ内を窒素雰囲気下にし、ホットマグネットスターラとPTFE(四フッ化エチレン)製回転子を用いて、400rpmで混合溶液を撹拌した。これにより、銅粒子を含む懸濁液を得た。
次いで、得られた銅粒子を含む懸濁液に還元剤1を1.2g加え撹拌し、銅粒子1表面の酸化物を除去した。つづいて、分散剤1を0.22g加え、さらに撹拌した。
懸濁液を撹拌しながら、銀粒子を含む懸濁液を0.5g(銀粒子:0.25g)加え、室温(20℃)で、10分間撹拌した。これにより銅粒子の表面に複数の銀粒子を吸着させた。ここで、銀粒子を含む懸濁液は、分散剤として、分散剤2を0.025gと分散剤3を0.025g含んでいる。
その後、得られた懸濁液を油浴にて120℃で、1時間加熱撹拌した。これにより、銅粒子の表面に吸着した複数の銀粒子を融解させて複数の銀粒子同士を融着させ、銅粒子の表面に銀シェル成分を形成させた。
撹拌後、分散剤2を0.4g加え、さらに撹拌した。次いで、メタノール40mlを加え、遠心分離をおこなった。得られた沈殿物を分離し、もう一度、メタノール40mlを加え、沈殿物を撹拌し、遠心分離をおこなった。これにより、銅コア銀シェル型の金属微粒子の沈殿物を得た。
【0084】
<銅コア銀シェル粒子のSEM観察>
得られた銅コア銀シェル型の金属微粒子をガラス板に垂らして乾燥させた後、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、FE−SEM S-4700)で観察し、エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所 EMAX−7000)で同定した。その結果、銅コア銀シェル型の金属微粒子であることが確認された。
また、この銅コア銀シェル型の金属微粒子の平均粒子径は0.5μmであった。
また、
図1に実施例1で得られた銅コア銀シェル型の金属微粒子のSEM写真(撮影倍率10万倍)を示す。
図1のSEM写真から、銅粒子に対する銀の被覆状態が良好であることが確認できた。
【0085】
<導電性インクの作製>
前述の銀粒子を含む懸濁液0.4g(銀粒子:0.2g)に、得られた銅コア銀シェル型の金属微粒子を0.3g、バインダー樹脂を0.035g、分散剤1を0.037gそれぞれ加え、混ぜ合わせて導電性インクを得た。
【0086】
<基板の作製>
導電性インクをガラス基板に塗布し、大気下、150℃で1時間焼成し、厚さ3.5μmの銅銀導体を作製した。この銅銀導体の体積抵抗率を測定したところ、14μΩ・cmであった。
体積抵抗率の測定は、日置電機株式会社製のミリオームハイテスター3540により、四端子法により測定を行った。
【0087】
(実施例2)
銅粒子1の代わりに銅粒子2を用いた以外は実施例1と同様にして、銅コア銀シェル型の金属微粒子、導電性インク、基板を作製した。
【0088】
(実施例3)
銅粒子1の代わりに銅粒子3を用いた以外は実施例1と同様にして、銅コア銀シェル型の金属微粒子、導電性インク、基板を作製した。
【0089】
(実施例4)
銅粒子1の代わりに銅粒子4を用いた以外は実施例1と同様にして、銅コア銀シェル型の金属微粒子、導電性インク、基板を作製した。
【0090】
(比較例1)
導電性インクを作製するときの銅コア銀シェル型の金属微粒子を銅粒子1とする以外は実施例1と同様にして、導電性インク、基板を作製した。
【0091】
(比較例2)
懸濁液を油浴にて120℃で1時間加熱撹拌する代わりに、得られた懸濁液を油浴にて室温(20℃)で1時間撹拌した以外は実施例1と同様にして、銅コア銀シェル型の金属微粒子、導電性インク、基板を作製した。
【0092】
(比較例3)
銅コア銀シェル型の金属微粒子を作製するときの銀粒子を含む懸濁液を酢酸銀のアミン錯体0.25gとする以外は実施例1と同様にして、銅コア銀シェル型の金属微粒子、導電性インク、基板を作製した。
【0093】
得られた結果を表1に示す。また、
図2および
図3に比較例2および3で得られた銅コア銀シェル型の金属微粒子のSEM写真(撮影倍率10万倍)をそれぞれ示す。
【0094】
【表1】
【0095】
本実施形態に係る製造方法により製造された実施例1〜4のコアシェル型金属微粒子を用いた基板は体積抵抗が低く、導電性に優れていた。
これに対し、比較例1〜3のコアシェル型金属微粒子を用いた基板は体積抵抗が高く、導電性に劣っていた。また、
図2および
図3から、導電性に劣るコアシェル型金属微粒子は銀の凝集体が銅に吸着しているような構造になっていることを確認した。