特許第6404618号(P6404618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404618カテーテル、カテーテル製造用金型、カテーテルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404618
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】カテーテル、カテーテル製造用金型、カテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20181001BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A61M25/00 500
   A61M25/00 506
   A61M25/14 510
   A61M25/14 514
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-133186(P2014-133186)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-10484(P2016-10484A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】塩野 潤二
(72)【発明者】
【氏名】宮野 広道
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−508059(JP,A)
【文献】 特表2005−521525(JP,A)
【文献】 特表平10−508514(JP,A)
【文献】 米国特許第5378230(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側管と、前記外側管の内側に同軸状に設けられた内側管と、一端部側において前記外側管と前記内側管とを分離する分岐部と、を有するカテーテルであって、
少なくとも前記外側管内側と前記内側管外側とで形成される第1ルーメンの断面積に対する内側管内で形成される第2ルーメンの断面積の比(第1ルーメンの断面積/第2ルーメンの断面積)が、
前記分岐部内において、これらの延在する長さ方向で同軸状位置における断面比に対して同じかそれ以上の値として設定され、かつ、前記分岐部において、他端側から一端部側に向けて前記外側管と前記内側管とが離心するように分離するカテーテルを製造する金型であって、
前記外側管と前記外側管内に位置する前記内側管との隙間に挿入される第1芯金と、前記内側管に挿入される第2芯金と、これらを覆って前記分岐部外形を形成する外金型と、を有し、
前記第1芯金において、前記外側管に挿入する挿入部が前記外側管の内部に沿った外面部と前記内側管の外部に沿った内面部とを有し、前記内面部が前記内部管外形に対応した溝とされるとともに、該挿入部の断面形状がその長さ方向において前記分岐部に対応する位置で前記内面部がなくなって拡径するように前記溝に終端が設けられ、
前記外金型には、前記外側管と前記内側管とこれらに挿入された前記第1及び第2芯金を配置可能なY字状に分岐した溝部と、これら溝部とともに前記分岐部を形成可能な空間部とが配置され
前記第1芯金の前記挿入部が、軸線と交差する方向で略三日月状の断面とされ、前記第2芯金の前記挿入部が、軸線と交差する方向で略円形の断面形状とされてなることを特徴とするカテーテル製造用金型。
【請求項2】
請求項に記載の金型を用いてカテーテルを製造する方法であって、
前記第2芯金を前記内側管に挿入する工程と、
前記第2芯金の挿入された前記内側管を前記第1芯金の前記溝に配置する工程と、
前記第2芯金と前記内側管と前記第1芯金とを前記外側管に挿入する工程と、
前記第2芯金と前記内側管と前記第1芯金と前記外側管とを前記外金型の対応する前記溝部に配置する工程と、
前記空間部に樹脂を注入して前記分岐部を形成する工程と、
前記金型を離型すると共に前記芯金を除去する工程とを有していることを特徴とするカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル、カテーテル製造用金型、カテーテルの製造方法に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に処置を行う処置具として内視鏡等で使用されるカテーテルがあげられ、例えば、複数のルーメンを有し、ほぼ全長に亘って複数の管路を有するものがある。このうち、バルーンカテーテルなどでは、複数の管路のうち、少なくともその一部が一端で閉塞・封止される。また、両端が開放されているルーメンも用いられる。
【0003】
特許文献3では、第15図、第16図に、一般的な医療用バルーンカテーテル1の構成を示している。この医療用バルーンカテーテル1は可撓性チューブ2の先端にバルーン3を取着してなり、可撓性チューブ2には造影剤等の薬剤を送液するためのメイン通路4と、上記バルーン3を膨らませるための流体を供給する通路5とを一体に成形してある。また、可撓性チューブ2は基端側に設けた分岐部6より上記メイン通路4と通路5とに個別的に接続した2つのチューブ7,8に分岐している。2つのチューブ7,8の延出先端のそれぞれには別々の口金7a,7bが取り付けられている。
【0004】
このようにカテーテル1では、分岐部6においてメイン通路4と通路5とが、管軸方向に対して適度に角度をもって分岐されており、その周囲が接着剤等の樹脂によって被覆され、適宜の形状にこの樹脂が固形化して固体化されて分岐部6が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−323739号公報
【特許文献2】特許第2680067号公報
【特許文献3】特公平6−59314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このようなカテーテルでは、いずれも、ルーメン内側を流れる流体流量をさらに大きくするとともに、内視鏡等におけるカテーテル外径を増大させないために、ルーメン断面積を大きくして管路抵抗を最小化したい、つまり、ルーメンの全長に亘って断面積をなるべく大きくしたいという要求がある。同時に密閉性などを劣化させずに容易に製造可能としたいという要求がある。これらの要求を満たすために、ルーメンが同軸状に複数の管路となったカテーテルが用いられていた。
【0007】
同軸状に複数のルーメンが形成されている場合、分岐部分の形成において形成圧力で断面積を減少させずに、かつ互いのルーメン境界の肉厚を維持してルーメンを形成することが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.管路抵抗を最小化し、内部流体流量を最大化できる複数ルーメンを有するカテーテルを提供可能とすること。
2. 分岐部のアウトサート時に射出圧でシースがつぶれてしまうことを防止すること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明のカテーテル製造用金型は、外側管と、前記外側管の内側に同軸状に設けられた内側管と、一端部側において前記外側管と前記内側管とを分離する分岐部と、を有するカテーテルであって、
少なくとも前記外側管内側と前記内側管外側とで形成される第1ルーメンの断面積に対する内側管内で形成される第2ルーメンの断面積の比(第1ルーメンの断面積/第2ルーメンの断面積)が、
前記分岐部内において、これらの延在する長さ方向で同軸状位置における断面比に対して同じかそれ以上の値として設定され、かつ、前記分岐部において、他端側から一端部側に向けて前記外側管と前記内側管とが離心するように分離するカテーテルを製造する金型であって、
前記外側管と前記外側管内に位置する前記内側管との隙間に挿入される第1芯金と、前記内側管に挿入される第2芯金と、これらを覆って前記分岐部外形を形成する外金型と、を有し、
前記第1芯金において、前記外側管に挿入する挿入部が前記外側管の内部に沿った外面部と前記内側管の外部に沿った内面部とを有し、前記内面部が前記内部管外形に対応した溝とされるとともに、該挿入部の断面形状がその長さ方向において前記分岐部に対応する位置で前記内面部がなくなって拡径するように前記溝に終端が設けられ、
前記外金型には、前記外側管と前記内側管とこれらに挿入された前記第1及び第2芯金を配置可能なY字状に分岐した溝部と、これら溝部とともに前記分岐部を形成可能な空間部とが配置され
前記第1芯金の前記挿入部が、軸線と交差する方向で略三日月状の断面とされ、前記第2芯金の前記挿入部が、軸線と交差する方向で略円形の断面形状とされてなることを特徴とする
た、本発明のカテーテルの製造方法は、上記の金型を用いてカテーテルを製造する方法であって、
前記第2芯金を前記内側管に挿入する工程と、
前記第2芯金の挿入された前記内側管を前記第1芯金の前記溝に配置する工程と、
前記第2芯金と前記内側管と前記第1芯金とを前記外側管に挿入する工程と、
前記第2芯金と前記内側管と前記第1芯金と前記外側管とを前記外金型の対応する前記溝部に配置する工程と、
前記空間部に樹脂を注入して前記分岐部を形成する工程と、
前記金型を離型すると共に前記芯金を除去する工程とを有することを特徴とする

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分岐部において、第1ルーメンと第2ルーメンとの断面比を、同軸状の位置に比べて減少しないようにしたので、管路抵抗を最小化し、内部流体流量を最大化できる複数ルーメンを有するカテーテルを提供可能とするとともに、分岐部における密閉性を向上可能とし、カテーテル製造におけるコストの削減を図ることができるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るカテーテルの第1実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明に係るカテーテルの第1実施形態における分岐部付近を示す拡大斜視図である。
図3】本発明に係るカテーテルの第1実施形態を示す断面図である。
図4】本発明に係るカテーテル製造用金型の第1実施形態を示す平面図である。
図5】本発明に係るカテーテル製造用金型の第1実施形態を示す斜視図である。
図6】本発明に係るカテーテル製造用金型の第1実施形態を示す斜視図である。
図7】本発明に係るカテーテルの製造方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
図8】本発明に係るカテーテルの製造方法の第1実施形態における分岐部付近における樹脂注入前を示す工程図(a)、樹脂注入後を示す工程図(b)である。
図9】本発明に係るカテーテルの製造方法の第1実施形態における分岐部付近における芯金除去前を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るカテーテル、カテーテル製造用金型、カテーテルの製造方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるカテーテルを示す斜視図であり、図2は、図1の拡大斜視図であり、図において、符号1は、カテーテルである。
【0013】
本実施形態におけるカテーテル1は、バルーンカテーテルとされる。なお、バルーンカテーテルに限定されることはなく、これ以外の種類のカテーテルにも適応できる。
本実施形態におけるカテーテル1は、図1に示すように、可撓性を有する円筒状のチューブ(外側管)2と、外側管2の先端に取り着けられたバルーン3と、外側管2の内側に同軸状に設けられた円筒状の内側管4と、基端(一端部)側において外側管2と内側管4とを分離する分岐部6と、を有する。
【0014】
分岐部6よりも先端側では、外側管2内側と内側管4外側とで第1ルーメン5が形成され、同様に、内側管4内で第2ルーメン7が形成される。
また、外側管2は基端側に設けた分岐部6より上記メイン通路5に個別的に接続したチューブ8と通路7に連通する内側管4とに分岐している。2つのチューブ4,8の延出先端のそれぞれには別々の口金4a,8bが取り付けられている。
【0015】
カテーテル1は、バルーン3との接着性かつ加工性を考慮してポリエチレン樹脂等を用いることができる。また、外側管2および内側管4を構成する材料としては、例えばポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂(特に軟質塩化ビニル樹脂)、シリコーンゴム、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。さらに外側管2および内側管4を構成する材料としては、バルーン3と同種の材料を用いることが好ましい。
外側管2および内側管4は、異なる材料で構成されていても良いが、同じ材料で構成されていることが好ましい。これにより、医療用でのカテーテル1の材料を共通化できるため生産性を向上することができる。
【0016】
外側管2の内径は、特に限定されないが、1〜9mmが好ましく、特に2〜4mmが
好ましい。外径も、特に限定されないが、2〜10mmが好ましく、特に3〜5mmが好ましい。内外径が前記範囲内であると、分岐部を束ねた際に嵩張らず、かつ流量抵抗も少ない外側管2とすることができる。
【0017】
内側管4の内径は、特に限定されないが、1〜9mmが好ましく、特に0.3〜3mmが好ましい。外径も、特に限定されないが、1〜5mmが好ましく、特に1〜3mmが好ましい。内外径が前記範囲内であると、束ねた際に嵩張らず、かつ流量抵抗も少ない内側管4とすることができる。
【0018】
バルーン3は、例えば、ポリエチレンやナイロンから製造されたチューブで、カテーテル1先端に設けられる。
通路(第1ルーメン)5は、たとえば、バルーン3まで連通するとともに、バルーン3を膨らませるための流体を供給するものできる。
【0019】
通路(第2ルーメン)7が、たとえば、造カテーテル1の先端側まで連通して開口し、カテーテル1先端部を管腔内に案内する際にガイドワイヤや、スタイレットを挿通することや、管腔に造影剤を注入することができる。
カテーテル1における可撓性チューブ2の先端部分までは、バルーン3に流体を供給する第1ルーメン5が達していない。また、この先端部分の機械的な強度を保つために第2ルーメン7が中央に位置されるとともに、先端部は挿入性を向上させるためにテーパ状に縮径されかつ先端周縁の肉厚を全周的に維持するようにしている。
【0020】
カテーテル1では、分岐部6において、バルーン3の設けられた他端(先端)側から一端(基端)部側に向けて外側管2と内側管4とが離心するように分離する。なお、本実施形態においては、外側管2が、分岐部6よりも基端側では同径の別部材であるチューブ8として分岐部6に嵌挿され、また、内側管4が、分岐部6よりも基端側で同径の管材であるチューブ4として分岐部6に嵌挿されている。内側管4は、分岐部6の基端側および先端側で連続した管材とすることもできる。
【0021】
本実施形態のカテーテル1においては、図2に示すように、その全長に亘って、少なくとも外側管2内側と内側管4外側とで形成される第1ルーメン5の断面積SAに対する内側管4内で形成される第2ルーメン7の断面積SBの比(第1ルーメンの断面積SA/第2ルーメンの断面積SB)が、一定値以上となるように設定されている。
【0022】
図3は、本実施形態のカテーテルにおける矢視断面図である。
具体的には、図1に矢視A−Aで示す位置においては、図3(a)に示すように、外側管2と内側管4とは、同軸状態となっており、ここでの第1ルーメンの断面積/第2ルーメンの断面積=SA/SBを基準として、ルーメンの全長でこの比の値が基準値よりも小さくならないように設定されている。
【0023】
図2に矢視B−Bで示す分岐部6の外側近傍とされる位置においては、図3(b)に示すように、外側管2と内側管4とは、同軸状態から偏心した状態となっており、ここでも第1ルーメンの断面積/第2ルーメンの断面積=SA/SBは、先の基準値と等しい値とされて、基準値よりも小さくない。
【0024】
図2に矢視C−Cで示す分岐部6中で、外側管2と内側管4とが離心はするが分岐されていない位置においては、図3(c)に示すように、内側管4が、一点鎖線で示す外側管2の断面輪郭よりからはみ出す状態となっており、ここでは、第1ルーメンの断面積SAが、基準の位置に比べて拡大しているため、第1ルーメンの断面積/第2ルーメンの断面積=SA/SBは、先の基準値よりも大きい値とされて、基準値よりも小さくない。
【0025】
図2に矢視D−Dで示す分岐部6中から分岐部6より基端側の位置においては、図3(d)に示すように、外側管2と内側管4とが分岐されおり、第1ルーメンには、外側管2に変えて、チューブ8が設けられている。ここでは、チューブ8の内径が外側管2の内径と等しく設定されており、第1ルーメンの断面積SAが、基準の位置に比べて拡大しているため、第1ルーメンの断面積/第2ルーメンの断面積=SA/SBは、先の基準値よりも大きい値とされて、基準値よりも小さくない。
【0026】
このように、本実施形態における分岐部6内における断面比SA/SBが、基準となる同軸状位置における断面比よりも、カテーテル1の延在する長さ方向全長で大きい状態を維持するように設定されている。これにより、カテーテル1においては、内視鏡などで規定された外側管2の外径が一定値とされてそれ以上増加できない場合に、水や空気などの流体をできるだけ多く負荷が低い状態で流すことができる。
例えば、図3(e)に示すように、外側管2と同径のカテーテルで、同軸ルーメンではない場合には、たとえ、第2ルーメン7と同じ径のルーメン7’を設けることができても、ルーメン5’は第1ルーメン5と同じ断面寸法とはならず、SA/SBはより小さくなる。このため管路抵抗が大きくなり、流量が本実施形態のカテーテル1よりも減少してしまうことになる。
【0027】
本実施形態においては、カテーテル1の全長に亘って、第1ルーメンの断面積/第2ルーメンの断面積=SA/SBを一定値以上にして送水送液性を維持することができる。
【0028】
次に、このカテーテル1の製造工程について、カテーテル1の分岐部6付近に対して行われる工程を中心に説明する。
【0029】
本実施形態のカテーテル1の製造方法においては、図4に示すような金型10を使用する。
金型10は、図4に示すように、上型(外金型)11と下型(外金型)12と太芯金(第1芯金)13と芯金(第2芯金)14とから構成される。
上型11の内面(合わせ面)は、分岐部6となる樹脂成形空間を構成する空間部(キャビティ)11aと、外側管2の先端側を配置可能な第1溝11bと外側管2の基端部側を載置可能な第2溝11cと、第2溝11cに連続して太芯金13を載置可能な第3溝11dと、内側管4の基端側を配置可能な第4溝11eと、第4溝11eに連続して芯金14を載置可能な第5溝11fと、を有している。
第1〜第5溝(溝部)11b〜11fとは、分岐部6を形成可能な空間部11aを介して対向する位置に略同一平面である基準面上に設けられている。
【0030】
空間部11aには、分岐部6を構成する樹脂が充填するための図示しないゲートが、上型11の側面部から空間部11aに連通するように設けられている。
空間部11aは、分岐部6として、例えば矩形を為しているが、所定の形状を有すればよい。
下型12の内面(合わせ面)は、同様に、分岐部6となる樹脂成形空間を構成する空間部(キャビティ)12aと、外側管2の先端側を配置可能な第1溝12bと外側管2の基端部側を載置可能な第2溝12cと、第2溝12cに連続して太芯金13を載置可能な第3溝12dと、内側管4の基端側を配置可能な第4溝12eと、第4溝12eに連続して芯金14を載置可能な第5溝12fと、を有している。
第1〜第5溝(溝部)12b〜12fとは、分岐部6を形成可能な空間部12aを介して対向する位置に略同一平面である基準面上に設けられている。
【0031】
第1溝11b,12bは、キャビティ11a,12aと金型11,12の外部とを連通しており、外側管2の外径に対応した形状として、外側管2を金型11,12で挟んだ際に、第1溝11b,12b内部が外側管2で密閉されるように設定されている。
第2溝11c,12cは、キャビティ11a,12aから、金型11,12の外部側へと延在し、外側管2またはチューブ8の外径に対応した形状となるよう設定されて、第1溝11b,12bを延長した位置に形成されている。第2溝11c,12cも、同様に、外側管2の外径に対応した形状として、外側管2を金型11,12で挟んだ際に、第2溝11c,12c内部が外側管2で密閉されるように設定されている。
【0032】
第3溝11d,12dは、第2溝11c,12cと同心となるように設定され、かつ、第2溝11c,12cと金型11,12の外部とを連通しており、太芯金13の外径に対応した形状として、太芯金13を金型11,12で挟んだ際に、第3溝11d,12d内部が太芯金13で密閉されるように設定されている。
第4溝11e,12eは、キャビティ11a,12aから、金型11,12の外部側へと延在し、第1溝11b,12bと第2溝11c,12cとを結んだ線から、離心するように第1溝11b,12bから角度を有して設定され、内側管4の外径に対応した形状として、内側管4を金型11,12で挟んだ際に、第4溝11e,12e内部が内側管4で密閉されるように設定されている。
【0033】
第5溝11f,12fは、第4溝11e,12eと同心となるように設定され、第4溝11e,12eと金型11,12の外部とを連通しており、芯金14の外径に対応した形状として、芯金14を金型11,12で挟んだ際に、第5溝11f,12f内部が芯金14で密閉されるように設定されている。
これらの第1溝11b,12bと第2溝11c,12cと第4溝11e,12eとは、Y字状に分岐した形状となるように配置されている。
なお、第2溝11c,12cおよび第4溝11e,12eを金型11,12の外部側へと延在させ、第3溝11d,12dと第5溝11f,12fを設けないこともできる。
【0034】
太芯金(第1芯金)13は、図5図6に示すように、分岐部6において第1ルーメン5を形成するように、外側管2と外側管2内に位置する内側管4との隙間に挿入可能とされる挿入部13aを有する。挿入部13aが、外側管2の内径と等しい外径を有してほぼ円筒状の外面部13bと、内側管4の外部に沿った内面部13cとを有する。挿入部13aは、内面部13cが内部管4外形に対応した溝13cとされるとともに、挿入部13aの断面形状がその長さ方向において分岐部6に対応する位置で内面部13cがなくなって第1ルーメン5が拡径するように溝13cに終端13dが設けられている。つまり、終端13dから先端側が挿入部13aとされて、溝13cは挿入部13aの全長に設けられている。
太芯金(第1芯金)13は、挿入部13aが、軸線と交差する方向で略三日月状の断面形状とされて溝13cが形成されている。
【0035】
また、芯金(第2芯金)14は、内側管4に挿入可能とされ、内側管4の内径と同じ外形寸法を有する円柱状とされ、内側管4に挿入された状態で、芯金14は、溝13c内に配置した際に、内側管4が外側管2の内部に位置可能となるように設定されている。
芯金(第2芯金)14は、軸線と交差する方向で略円形の断面形状とされている。
これら芯金13,14を構成する材料としては、芯金13,14が溶融または変形しない材料であれば特に限定されないが、金属類が好ましく、例えばステンレス鋼、鉄等が挙げられる。
【0036】
次に、本実施形態におけるカテーテル1の製造方法について説明する。
【0037】
本実施形態におけるカテーテル1の製造方法は、図7に示すように、第2芯金挿入工程S1と、内側管溝配置工程S2と、第1芯金挿入工程S3と、外金型配置工程S4と、樹脂注入工程S5と、離型・芯金除去工程S6と、を有している。
【0038】
第2芯金挿入工程S1においては、まず、第2芯金14を内側管2の基端側に挿入する。この際、内側管2に対する第2芯金14の先端側への挿入位置は、分岐部6の外側位置、あるいは、金型11,12の外側位置までとして設定される。
なお、内側管4が分岐部6の基端側において別体とされるチューブ4等が用いられる場合には、分岐部6の基端側となる第2芯金14には、別体のチューブ4を所定位置に挿入しておく。
【0039】
内側管溝配置工程S2においては、第2芯金挿入工程S1で第2芯金14の挿入された内側管4を、溝13cの終端13dに対応して褶曲させた状態として第1芯金13の溝13cに配置する。このとき、分岐部6内部に位置していれば、第2芯金14の挿入された内側管4が、第1芯金13の溝13cから離間する位置は、終端13dに対して厳密に一致する必要はない。
【0040】
次いで、第1芯金挿入工程S3においては、第2芯金14の先端側と、第2芯金14の挿入された内側管4と、内部管4の基端側が溝13c内に配置された第1芯金13の挿入部13aとを外側管2の終端側から挿入する。
あるいは、ここまでの工程として、あらかじめ外側管2に挿入された内側管4に第2芯金14を挿入するとともに、外側管2と内側管4との間に第1芯金13の挿入部13aを挿入してもよい。
【0041】
次いで、外金型配置工程S4として、第2芯金14と内側管4と第1芯金13と外側管2とを外金型11,12の対応する溝部11b〜12fに配置する。具体的には、図8(a)に示すように、外側管2が第1溝11b,12bに位置規制され、チューブ8が第2溝11c,12cに位置規制され、太芯金13が第3溝11d,12dに位置規制され、内側管4またはチューブ4が第4溝11e,12eに位置規制され、芯金14が第5溝11f,12fに位置規制される。また、第1溝11b,12bにより、挿入された状態である第2芯金14と内側管4と第1芯金13と外側管2とを位置規制する。
これにより、第1溝11b〜12fによって、挿入された状態である第2芯金14と内側管4と第1芯金13と外側管2とがY字状に分岐した形状となるように位置規制された状態となる。
【0042】
次いで、図8(b)に示すように、樹脂注入工程S5として、上型11と下型12とを、それらの内面(合わせ面)において当接し、両端を固定し、空間部11a,12a に、図示しないゲート から溶融樹脂を注入して分岐部6を成形する。
成形する際の樹脂押出部におけるシリンダーの温度は、押し出す樹脂に依存するため特に限定されないが、190〜230℃が好ましく、特に200〜220℃が好ましい。また、金型温度は、分岐部6の形状によるが、10〜50℃が好ましく、特に15〜20℃が好ましい。
【0043】
注入された樹脂は、キャビティ11a,12aにより、分岐部6を形成する。分岐部6には、先端側に同軸状の外側管2と内側管4と、基端側に分岐されたルーメンとなるチューブ8およびチューブ4とが配置されている。また、チューブ8およびチューブ4が、各ルーメンの形成する略同一平面の面内における互いの為す軸角度を有して設けられる。
【0044】
そして、離型・芯金除去工程S6として、まず、図9に示すように、金型11,12を離型する。そして、芯金13,14を除去して、分岐部6を形成する。
さらに、必要であれば分岐部6外側において接着あるいは溶着等を行う。これにより、最終的にカテーテル1を得ることができる。
【0045】
以上、本発明のカテーテル、カテーテル製造用金型およびカテーテルの製造方法について図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されず、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
例えば、本実施の形態では、内側管4が1本の場合について説明したが、2本等、複数本の場合でも用いることができる。
また、外金型配置工程S4として、図5(b)に示すように、太芯金13がほぼ直線状で、芯金14が溝13cの終端13d付近で湾曲するようにしたが、図6に示すように、芯金14がほぼ直線状で、太芯金13が溝13cの終端13d付近で湾曲するようにしてもよい。
【0046】
本実施形態におけるカテーテル1は、分岐部6において、第1ルーメン5と第2ルーメン7との断面比SA/SBを、同軸状の位置に比べて減少しないようにしたので、管路抵抗を最小化し、内部流体流量を最大化できる複数ルーメンを有するカテーテルを提供可能とするとともに、分岐部における密閉性を向上可能とし、製造工数の削減ができるとともに、角度をなした分岐管の成形が容易に可能となり、カテーテル製造におけるコストの削減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の活用例として、医療用および工業用カテーテルのチューブ分岐部の製造方法を挙げることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…カテーテル
2…外側管
3…バルーン
4…内側管
5…第1ルーメン
6…分岐部
7…第2ルーメン
8…チューブ
10…金型
11…上型
11a…空間部
11b〜11f…溝(溝部)
12…下型
12b〜12f…溝(溝部)
13…第1芯金
13a…挿入部
13b…外面部
13c…内面部(溝)
13d…終端
14…第2芯金
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9