(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404644
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】A/D変換回路、エフェクタ及びA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法
(51)【国際特許分類】
H03M 1/08 20060101AFI20181001BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
H03M1/08 A
H03M1/12 C
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-173834(P2014-173834)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-48886(P2016-48886A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130329
【氏名又は名称】株式会社コルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】伏見 俊之
【審査官】
齋藤 正貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−118792(JP,A)
【文献】
特開2014−066758(JP,A)
【文献】
特表2012−507898(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/137061(WO,A1)
【文献】
特開2007−061431(JP,A)
【文献】
特開2001−021597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/08
H03M 1/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源としてスイッチング電源を用いるA/D変換回路であって、
A/D変換器と、
制御部と、
前記制御部が設定するサンプリング周波数に基づき、サンプリングクロックを生成して前記A/D変換器に出力するサンプリングクロック生成部とを備え、
前記制御部は、前記A/D変換器へのキャリブレーション信号の設定後、サンプリング周波数の設定を順次切り替えて前記A/D変換器の出力のノイズレベルを測定し、測定したノイズレベルの中でノイズレベルが最小のサンプリング周波数を記憶し、
前記制御部は、再起動時、記憶しているサンプリング周波数を読み出し、サンプリング周波数として設定することを特徴とするA/D変換回路。
【請求項2】
電源としてスイッチング電源を用いるA/D変換回路であって、
A/D変換器と、
制御部と、
前記制御部が設定するサンプリング周波数に基づき、サンプリングクロックを生成して前記A/D変換器に出力するサンプリングクロック生成部とを備え、
前記制御部は、前記A/D変換器へのキャリブレーション信号の設定後、前記キャリブレーション信号の設定を維持した状態で、サンプリング周波数の設定を順次切り替えて前記A/D変換器の出力のノイズレベルを測定し、測定したノイズレベルの中でノイズレベルが最小のサンプリング周波数を記憶し、
前記制御部は、再起動時、記憶しているサンプリング周波数を読み出し、サンプリング周波数として設定することを特徴とするA/D変換回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載のA/D変換回路において、
前記A/D変換器に入力する信号を音声信号とするか前記キャリブレーション信号とするかの選択を行う信号選択部が前記A/D変換器の前段に設けられ、
前記信号選択部は前記制御部からの選択信号により前記選択を行うことを特徴とするA/D変換回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のA/D変換回路において、
前記サンプリング周波数の設定の順次切り替えは、初期設定されているサンプリング周波数から所定の周波数幅でサンプリング周波数を順次下げることによって行われることを特徴とするA/D変換回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のA/D変換回路において、
前記キャリブレーション信号は消音信号もしくは所定の周波数の正弦波信号のいずれかであることを特徴とするA/D変換回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のA/D変換回路を具備することを特徴とするエフェクタ。
【請求項7】
電源としてスイッチング電源を用いるA/D変換回路の制御部が実行するA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法であって、
前記A/D変換器へのキャリブレーション信号を設定し、サンプリング周波数を順次切り替えて前記A/D変換器の出力のノイズレベルを測定し、測定したノイズレベルの中でノイズレベルが最小のサンプリング周波数を選択してサンプリング周波数とすることを特徴とするA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法。
【請求項8】
電源としてスイッチング電源を用いるA/D変換回路の制御部が実行するA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法であって、
前記A/D変換器へのキャリブレーション信号を設定し、前記キャリブレーション信号の設定を維持した状態でサンプリング周波数を順次切り替えて前記A/D変換器の出力のノイズレベルを測定し、測定したノイズレベルの中でノイズレベルが最小のサンプリング周波数を選択してサンプリング周波数とすることを特徴とするA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法において、
前記サンプリング周波数の設定の順次切り替えは、初期設定されているサンプリング周波数から所定の周波数幅でサンプリング周波数を順次下げることによって行うことを特徴とするA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載のA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法において、
前記キャリブレーション信号は消音信号もしくは所定の周波数の正弦波信号のいずれかであることを特徴とするA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電源としてスイッチング電源を用いるA/D変換回路、そのA/D変換回路を具備するエフェクタ及びA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
A/D変換器を含む装置の電源としてスイッチング電源を用いる場合には、電源ラインにコイルやコンデンサを用いたローパスフィルタを挿入したり、スイッチング電源自体のノイズを低減するためにスイッチング波形の工夫をしたりして、スイッチング電源から生じる高周波ノイズ(スイッチングノイズ)のレベルを下げることが行われている。特許文献1には電流波形、電圧波形共に正弦波状とすることにより、スイッチング電源のスイッチングノイズを低減し、かつ効率を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−304772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチング電源は小型、軽量であって、電力変換効率も良く、装置の小型化には好適な電源であるものの、装置の小型化や低価格化、高性能化(例えば高SN比化)の要請に対応しつつ、十分にスイッチングノイズのレベルを下げることは、要求水準が高まるにつれ、困難となってきており、スイッチングノイズの影響が問題となってきている。
【0005】
例えば、A/D変換器を含む装置において、装置の小型化の結果、A/D変換器の前段に設けたエイリアシングノイズ(折り返し雑音)防止用のローパスフィルタ回路にスイッチングノイズが飛びつき(電磁的、静電的に結合し)、回り込みを起こし、これにより所定の高域周波数の遮断性能が得られなくなるといった問題が生じる。また、エイリアシングノイズ防止用のローパスフィルタをシールドケースに入れるか、あるいは装置の筺体外部に配置したとしても、A/D変換器の入力に接続される配線やA/D変換器を構成する回路のアナログ信号入力部へもスイッチングノイズが飛びつきを起こすことがある。
【0006】
この発明の目的はこのような状況に鑑み、スイッチング電源のスイッチングノイズの影響を軽減し、A/D変換出力の低ノイズ化を図ることができるようにしたA/D変換回路、エフェクタ及びA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、電源としてスイッチング電源を用いるA/D変換回路は、A/D変換器と、制御部と、制御部が設定するサンプリング周波数に基づき、サンプリングクロックを生成してA/D変換器に出力するサンプリングクロック生成部とを備え、制御部はA/D変換器へのキャリブレーション信号
の設定後、サンプリング周波数の設定を順次切り替えてA/D変換器の出力のノイズレベルを測定し、測定したノイズレベルの中でノイズレベルが最小のサンプリング周波数を記憶し、制御部は再起動時、記憶しているサンプリング周波数を読み出し、サンプリング周波数として設定する。
請求項2の発明によれば、さらに、ノイズレベルの測定は、キャリブレーション信号の設定を維持した状態で行われることを明記している。
【0008】
請求項
3の発明では請求項1
または2の発明において、A/D変換器に入力する信号を音声信号とするかキャリブレーション信号とするかの選択を行う信号選択部がA/D変換器の前段に設けられ、信号選択部は制御部からの選択信号により前記選択を行う。
【0009】
請求項
4の発明では請求項1
から3のいずれかの発明において、サンプリング周波数の設定の順次切り替えは、初期設定されているサンプリング周波数から所定の周波数幅でサンプリング周波数を順次下げることによって行われる。
【0010】
請求項
5の発明では請求項1
から4のいずれかの発明において、キャリブレーション信号は消音信号もしくは所定の周波数の正弦波信号のいずれかとされる。
【0011】
請求項
6の発明によれば、エフェクタは請求項1
から5のいずれかのA/D変換回路を具備する。
【0012】
請求項
7の発明によれば、電源としてスイッチング電源を用いるA/D変換回路の制御部が実行するA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法は、A/D変換器へのキャリブレーション信号
を設定し、サンプリング周波数を順次切り替えてA/D変換器の出力のノイズレベルを測定し、測定したノイズレベルの中でノイズレベルが最小のサンプリング周波数を選択してサンプリング周波数とすることとされる。
請求項8の発明によれば、さらに、ノイズレベルの測定は、キャリブレーション信号の設定を維持した状態で行われることを明記している。
【0013】
請求項
9の発明では請求項
7または8の発明において、サンプリング周波数の設定の順次切り替えは、初期設定されているサンプリング周波数から所定の周波数幅でサンプリング周波数を順次下げることによって行う。
【0014】
請求項
10の発明では請求項
7から9のいずれかにの発明において、キャリブレーション信号は消音信号もしくは所定の周波数の正弦波信号のいずれかとされる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によるA/D変換回路及びA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法によれば、スイッチング電源のスイッチングノイズに起因するA/D変換出力のノイズレベルを下げることができる。
【0016】
また、この発明によるエフェクタによれば、可聴範囲内のノイズレベルを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明によるA/D変換回路の一実施例を具備するエフェクタの機能構成を示すブロック図。
【
図2】Aはサンプリング周波数とエイリアシングノイズの最低周波数の関係を示す表、BはAの表をグラフ化したグラフ。
【
図3】この発明によるA/D変換回路の他の実施例を具備するエフェクタの機能構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0019】
図1はこの発明によるA/D変換回路の一実施例を具備するエフェクタの機能構成の一例を示したものであり、このエフェクタは音声信号(音声帯域の信号、楽音信号を含む)に各種エフェクト(効果)を付加することができるものとなっている。
【0020】
エフェクタはマイクロコントローラ10とスイッチング電源20とローパスフィルタ30と操作手段40とによって構成されており、マイクロコントローラ10はスイッチング電源20を電源に用いるものとなっている。マイクロコントローラ10はこの例ではA/D変換器11と信号処理部12とD/A変換器13と制御部14とサンプリングクロック生成部15とを備えている。
【0021】
上記の構成において、この発明で定義するA/D変換回路はA/D変換器11と、制御部14と、サンプリングクロック生成部15とよりなるものとされる。
【0022】
音声信号はA/D変換器11の前段に設けられたエイリアシングノイズ防止用のローパスフィルタ30に入力されて高域成分が除去され、帯域制限された音声信号がA/D変換器11に入力されてA/D変換される。A/D変換されてデジタル化された音声信号は信号処理部12に入力され、所望のエフェクトが付加される。
【0023】
信号処理部12は例えばコーラス、ディレイ、リバーブといったエフェクトを付加することができるものとなっている。音声信号に付加するエフェクトの種類の選択と、各エフェクトのパラメータの調整は、操作手段40を操作することによって行われ、制御部14は操作手段40の操作に応じて信号処理部12を制御する。
【0024】
信号処理部12によってエフェクトが付加されたデジタル信号はD/A変換器13に入力されてD/A変換され、出力される。
【0025】
サンプリングクロック生成部15は制御部14が設定するサンプリング周波数に基づき、サンプリングクロックを生成してA/D変換器11、信号処理部12及びD/A変換器13に出力する。
【0026】
スイッチング電源20のスイッチングノイズはサンプリング周波数以上の周波数成分をもち、エイリアシングノイズの発生原因となる周期性ノイズであり、上記のような構成において、例えばスイッチングノイズがローパスフィルタ30等に飛びつき、A/D変換器11の入力信号にスイッチングノイズが混入した場合、エイリアシングノイズが発生することになる。スイッチング電源20のスイッチング周波数をf
SW[Hz]とし、サンプリング周波数をf
S[Hz]とすると、エイリアシングノイズは、
f
image(N)=|f
SW−N×f
S|[Hz]
但し、Nは正の整数または0
の周波数成分をもつことになる。このエイリアシングノイズの周波数が可聴範囲に入ると、音程感のあるノイズとなる。
【0027】
一方、スイッチング電源20は自励発振回路を用いた構成をとることが多く、スイッチング周波数(発振周波数)f
SWは個体間で±30%以上ばらつくことがある。
【0028】
この例ではこのようなスイッチング電源20の使用を前提としており、サンプリング周波数f
Sを変えることで、エイリアシングノイズの周波数成分f
image(N)のうち、許容する周波数の下限以下のものを極力なくし、音程感のあるノイズの発生を抑制するものとなっている。
【0029】
ここで、スイッチング電源20のスイッチング周波数f
SWを640kHzとし、このスイッチング電源20のスイッチングノイズがA/D変換器11の入力信号に混入する場合について説明する。なお、エイリアシングノイズの周波数成分f
image(N)のうち、許容する周波数の下限、即ちローパスフィルタ30のカットオフ周波数は14kHzとする。
【0030】
640kHzのスイッチングノイズが入力信号に混入した場合、サンプリング周波数f
Sが例えば31.25kHzであるとすると、エイリアシングノイズの最低周波数は、N=20の時であり、
f
image(20)=640000−20×31250
=15000[Hz]
となるので、14kHz以下の周波数成分は生じない。
【0031】
これに対し、スイッチング電源20のスイッチング周波数f
SWが640kHzに対して、−30%ばらついたとすると、f
SWは448kHzとなり、N=14の時、
f
image(14)=448000−14×31250
=10500[Hz]
となり、14kHz以下の周波数成分が生じる。この場合、サンプリング周波数f
Sを変える(下げる)ことで、14kHz以下の周波数成分が生じないようにすることができる。
【0032】
図2はf
SW=448kHzとし、サンプリング周波数f
Sを31.25kHzから100Hzステップで下げていった場合のエイリアシングノイズの最低周波数をN=14及び15の時について表及びグラフに示したものである。
図2に示した表、グラフより、サンプリング周波数f
Sを30.95kHzもしくは30.85kHzとすれば、エイリアシングノイズの最低周波数を14kHz以上とすることができ、許容範囲内の周波数(=可聴範囲外の周波数)とすることができることがわかる。
【0033】
なお、実際のエイリアシングノイズは、f
image(N)=|f
SW−N×f
S|のNによる周波数毎にレベル差があるため、周波数が許容範囲に入らなくてもノイズレベルが小さく、問題とならない場合もある。加えて、
図2Aの表におけるステップ4、ステップ5について言えば、エイリアシングノイズの最低周波数だけを見ると、f
image(15)>f
image(14)であり、ステップ5のサンプリング周波数f
S=30850Hzの方が望ましいが、A/D変換出力のノイズレベルの比較でサンプリング周波数f
Sを選択すれば、f
S=30950Hzを選択することになる。これはステップ4のf
image(14)のノイズレベルがステップ5のf
image(15)のノイズレベルより小さいことによる。
【0034】
上述したように、サンプリング周波数f
Sを順次切り替えてA/D変換器11の出力ノイズレベルを測定し、ノイズレベルの比較結果からサンプリング周波数f
Sを選択すれば、A/D変換出力のノイズレベルを下げることができる。
【0035】
上記のようなサンプリング周波数f
Sの選択は制御部14によって実行される。以下、制御部14が実行するサンプリング周波数f
Sの選択及び設定について説明する。
【0036】
サンプリング周波数f
Sの選択には、キャリブレーション信号を用い、キャリブレーション信号をローパスフィルタ30に入力する。キャリブレーション信号は消音信号もしくは所定の周波数の正弦波信号のいずれかとする。
【0037】
制御部14はローパスフィルタ30へのキャリブレーション信号入力時、サンプリング周波数f
Sの設定を順次切り替えてA/D変換器11の出力のノイズレベルを測定する。サンプリング周波数f
Sの設定の切り替えは、初期設定されているサンプリング周波数f
Sから所定の周波数幅でサンプリング周波数f
Sを順次下げることによって行う。周波数幅は例えば100Hzとする。
【0038】
制御部14は測定したノイズレベルの中でノイズレベルが最小のサンプリング周波数f
Sを制御部14内のメモリ(不揮発性メモリ)に記憶し、再起動時、記憶しているサンプリング周波数f
Sを読み出し、サンプリング周波数f
Sとして設定する。
【0039】
このようにしてサンプリング周波数f
Sを設定すれば、A/D変換器11の出力の低ノイズ化を図ることができ、即ち可聴範囲内のノイズレベルを下げることができる。
【0040】
サンプリング周波数f
Sを下げていくステップ数は適宜、選定することができる。例えば、前述の
図2に示した表、グラフではステップ数は21となっているが、適宜、ステップ数を増減してもよい。また、各ステップの周波数幅も100Hzに限らず、適宜、変えてもよい。
【0041】
さらに言えば、例えば2値や3値のサンプリング周波数f
Sに対するA/D変換出力のノイズレベルを比較することでも、比較した範囲で最もノイズレベルの小さいサンプリング周波数f
Sを選ぶことで、初期設定状態よりもノイズレベルを小さくすることができ、あるいは初期設定状態でノイズレベルが小さかったことを確認することができる。
【0042】
なお、サンプリング周波数f
Sを下げていくのではなく、サンプリング周波数f
Sを上げていくことでも、低ノイズ化を図ることは可能であるが、信号処理部12(DSP)の演算処理時間が短かくなり、信号処理のプログラム量を減らさなければならないといった状況も生じうるので、サンプリング周波数f
Sを上げるのは好ましくない。
【0043】
図3はこの発明によるA/D変換回路の他の実施例を具備するエフェクタの機能構成例を示したものであり、
図3ではローパスフィルタ30の前段に信号選択部50が設けられたものとなっている。
【0044】
信号選択部50はローパスフィルタ30に入力する信号を音声信号とするか、サンプリング周波数f
S設定のためのキャリブレーション信号とするかの選択を行うものであり、キャリブレーションモードと音声信号入力モードとの切り替えは、操作手段40を操作することによって行われる。制御部14は操作手段40の操作に応じて選択信号を信号選択部50に出力し、信号選択部50は制御部14からの選択信号によりローパスフィルタ30に入力する信号を選択する(切り替える)。
【0045】
キャリブレーションモードでは、制御部14は前述の
図1における場合と同様、サンプリング周波数f
Sの設定を順次切り替えてA/D変換器11の出力のノイズレベルを測定し、測定したノイズレベルの中でノイズレベルが最小のサンプリング周波数f
Sを制御部14内のメモリに記憶する。
【0046】
音声信号入力モードでは、制御部14はメモリからサンプリング周波数f
Sを読み出し、サンプリング周波数f
Sとして設定する。
【0047】
図1に示したエフェクタではサンプリング周波数f
Sの選択は例えば工場で行われるが、
図3に示したエフェクタではキャリブレーションモードを備えることにより、サンプリング周波数f
Sの選択、設定を随時行うことができる。
【0048】
サンプリング周波数f
Sの選択、設定を工場で行えば、スイッチング電源20のスイッチング周波数f
SWの個体間のばらつきに起因してノイズレベルが異なるといった問題を解消することができるが、例えば電源電圧の降下等によりスイッチング周波数f
SWが一個体でも変動することがあり、サンプリング周波数f
Sの選択、設定を随時行うことができれば、このような場合でも対処でき、つまりノイズレベルを下げることができる。
【0049】
以上、この発明の実施例について説明したが、この発明によるA/D変換器のサンプリング周波数の決定方法は、オーバサンプリングA/D変換器にも適用することができる。
【0050】
なお、A/D変換器11の出力のノイズレベルを測定、比較してサンプリング周波数f
Sを決定するものとなっているが、例えばD/A変換器13の出力をA/D変換し、そのA/D変換出力のノイズレベルを測定、比較してサンプリング周波数f
Sを決定するといった方法を採用してもよい。
【0051】
上述した例では、マイクロコントローラに内蔵されたA/D変換器を用いた構成の例について説明したが、A/D変換器として、エイリアシングノイズ防止用のローパスフィルタを内部に含むA/D変換回路モジュールを用いてもよい。なお、この発明によれば、エイリアシングノイズ防止用のローパスフィルタが無い場合(直結された場合)でも、スイッチング電源のスイッチングノイズの影響を軽減する効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 マイクロコントローラ 11 A/D変換器
12 信号処理部 13 D/A変換器
14 制御部 15 サンプリングクロック生成部
20 スイッチング電源 30 ローパスフィルタ
40 操作手段 50 信号選択部