特許第6404654号(P6404654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404654
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】塗布方法および塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20181001BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20181001BHJP
   B05C 1/02 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B05D1/28
   B05D1/36 Z
   B05C1/02 101
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-192530(P2014-192530)
(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公開番号】特開2016-59909(P2016-59909A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 博明
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−101175(JP,A)
【文献】 特開2015−205226(JP,A)
【文献】 特開2001−162204(JP,A)
【文献】 特開2011−173029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00−3/20
B05D1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布針の先端部に液状材料を付着させ、対象物の上方の予め定められた位置に前記塗布針を配置し、前記塗布針を下降および上昇させて前記対象物に前記液状材料を塗布し、前記液状材料からなる液状材料層を形成する工程を複数回実行し、複数の前記液状材料層を積層する塗布方法において、
実行した前記工程の回数が増大するに従って、前記予め定められた位置から前記対象物に向けて前記塗布針を下降させる距離を減少させる、塗布方法。
【請求項2】
今回の前記工程において前記塗布針を下降させる距離は、前回の前記工程において前記塗布針を下降させた距離よりも前回の前記工程で形成された前記液状材料層の厚さ分だけ小さい、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
その底に孔が開口され、前記液状材料が注入された容器と、
その先端部が前記孔と略同じ径を有する前記塗布針とを備え、
前記塗布針を下降させ、前記塗布針の先端部を前記孔から突出させて前記先端部に前記液状材料を付着させるとともに前記塗布針を前記予め定められた位置に配置する、請求項1または請求項2に記載の塗布方法。
【請求項4】
塗布針の先端部に液状材料を付着させる塗布ユニットと、
前記塗布ユニットと対象物を相対移動させて前記対象物の上方の予め定められた位置に前記塗布針の先端を配置する位置決め装置と、
前記塗布針を下降および上昇させる第1の駆動装置と、
前記塗布ユニットおよび前記第1の駆動装置を制御して前記対象物に前記液状材料を塗布し、前記液状材料からなる液状材料層を形成する工程を複数回実行し、複数の前記液状材料層を積層する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記第1の駆動装置を制御し、実行した前記工程の回数が増大するに従って、前記予め定められた位置から前記対象物に向けて前記塗布針を下降させる距離を減少させる、塗布装置。
【請求項5】
前記制御装置は、今回の前記工程において前記塗布針を下降させる距離を、前回の前記工程において前記塗布針を下降させた距離よりも前回の前記工程で形成された前記液状材料層の厚さ分だけ減少させる、請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布ユニットは、
その底に孔が開口され、前記液状材料が注入された容器と、
その先端部が前記孔と略同じ径を有する前記塗布針と、
前記塗布針を下降および上昇させる第2の駆動装置とを含み、
前記制御装置は、前記第2の駆動装置を制御して前記塗布針を下降させ、前記塗布針の先端部を前記孔から突出させて前記先端部に前記液状材料を付着させる、請求項4または請求項5に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は塗布方法および塗布装置に関し、特に、対象物に液状材料を塗布する塗布方法および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先端径が数十μmの塗布針を用いてインクのような液状材料を塗布する技術や、スポット径が数μm〜数十μmのレーザ光を用いてパターンを加工する技術を、マイクロメートルオーダーの精密位置決め技術と組み合わせると、微細なパターンを作成したり、パターンの所定の位置を正確に加工することが可能となるので、これらの技術はフラットパネルディプレイの修正作業や太陽電池のスクライブ作業などに従来から利用されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特に塗布針を用いる技術は、ディスペンサが不得意とする粘度の高いインクでも塗布できるので、最近では、フラットパネルディプレイのパターンと比較して厚い10μm以上の厚膜の形成にも利用されている。この技術は、たとえば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やセンサなどの半導体デバイスの電子回路パターンやプリント基板配線の形成に用いられる。また、将来的に有望な製造技術であるプリンテッドエレクトロニクス技術で作製されるパターンも厚膜に分類される。したがって、塗布針を用いて液状材料を塗布する技術は、今後の用途拡大が期待される加工技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−268354号公報
【特許文献2】特開2009−122259号公報
【特許文献3】特開2012−006077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、たとえばMEMSに設けられた機構部の表面にインクの厚膜を形成する方法として、塗布針を用いて粘度の高いインクを繰り返し塗布し、複数のインク層を積層する方法が考えられる。しかし、この塗布方法では、インクを塗布する毎に塗布針の先端からMEMSの機構部に衝撃が印加され、MEMSの機構部が破損する恐れがある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、対象物を破損させることなく粘度の高い液状材料を厚く塗布することが可能な塗布方法および塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る塗布方法は、塗布針の先端部に液状材料を付着させ、対象物の上方の予め定められた位置に塗布針を配置し、塗布針を下降および上昇させて対象物に液状材料を塗布し、液状材料からなる液状材料層を形成する工程を複数回実行し、複数の液状材料層を積層する塗布方法において、実行した工程の回数が増大するに従って、予め定められた位置から対象物に向けて塗布針を下降させる距離を減少させるものである。
【0008】
好ましくは、今回の工程において塗布針を下降させる距離は、前回の工程において塗布針を下降させた距離よりも前回の工程で形成された液状材料層の厚さ分だけ小さい。
【0009】
好ましくは、その底に孔が開口され、液状材料が注入された容器と、その先端部が孔と略同じ径を有する塗布針とを備え、塗布針を下降させ、塗布針の先端部を孔から突出させて先端部に液状材料を付着させるとともに塗布針を予め定められた位置に配置する。
【0010】
また、この発明に係る塗布装置は、塗布針の先端部に液状材料を付着させる塗布ユニットと、塗布ユニットと対象物を相対移動させて対象物の上方の予め定められた位置に塗布針の先端を配置する位置決め装置と、塗布針を下降および上昇させる第1の駆動装置と、塗布ユニットおよび第1の駆動装置を制御して対象物に液状材料を塗布し、液状材料からなる液状材料層を形成する工程を複数回実行し、複数の液状材料層を積層する制御装置とを備えたものである。この制御装置は、第1の駆動装置を制御し、実行した工程の回数が増大するに従って、予め定められた位置から対象物に向けて塗布針を下降させる距離を減少させる。
【0011】
好ましくは、制御装置は、今回の工程において塗布針を下降させる距離を、前回の工程において塗布針を下降させた距離よりも前回の工程で形成された液状材料層の厚さ分だけ減少させる。
【0012】
好ましくは、塗布ユニットは、その底に孔が開口され、液状材料が注入された容器と、その先端部が孔と略同じ径を有する塗布針と、塗布針を下降および上昇させる第2の駆動装置とを含み、制御装置は、第2の駆動装置を制御して塗布針を下降させ、塗布針の先端部を孔から突出させて先端部に液状材料を付着させる。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る塗布方法および塗布装置では、実行した塗布工程の回数が増大するに従って塗布針の下降距離を減少させるので、塗布針の先端から液状材料層を介して対象物に加えられる衝撃を緩和することができる。したがって、対象物を破損させることなく粘度の高い液状材料を厚く塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施の形態によるインク塗布方法において使用されるインク塗布装置の全体構成を示す図である。
図2図1に示した塗布機構部に含まれる塗布ユニットの構成を示す断面図である。
図3図2に示した容器および塗布針の構成を示す断面図である。
図4図1図3に示したインク塗布装置を使用した塗布工程を示す断面図である。
図5図4に示した塗布工程を複数回実行して厚膜を形成する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、この発明の一実施の形態によるインク塗布方法において使用されるインク塗布装置1の全体構成を示す図である。図1において、インク塗布装置1は、基板の表面を観察する観察光学系2と、観察された画像を映し出すモニタ3と、観察光学系2を介して基板にレーザ光を照射し不要部をカットするカット用レーザ部4と、インクを塗布針の先端部に付着させて基板の対象領域に塗布する塗布機構部5と、対象領域に塗布されたインクを加熱する基板加熱部6と、対象領域を認識する画像処理部7と、装置全体を制御するホストコンピュータ8と、装置機構部の動作を制御する制御用コンピュータ9とを備える。さらに、その他に対象領域を有する基板をXY方向(水平方向)に移動させるXYステージ10と、XYステージ10上で基板を保持するチャック部11と、観察光学系2や塗布機構部5をZ方向(垂直方向)に移動させるZステージ12などが設けられている。
【0016】
XYステージ10は、塗布機構部5によってインクを対象領域に塗布する際や、観察光学系2によって基板の表面を観察する際などに、基板を適切な位置に相対移動させるために用いられる。図1に示したXYステージ10は、2つの一軸ステージを直角方向に重ねた構成を有している。ただし、このXYステージ10は、観察光学系2や塗布機構部5に対して基板を相対的に移動させることができるものであればよく、図1に示すXYステージ10の構成に限定されるものではない。基板サイズが大きい場合には、X軸方向とY軸方向にそれぞれ独立して移動可能なガントリ型のXYステージを用いてもよい。
【0017】
図2(A)は、図1に示した塗布機構部5に含まれる塗布ユニット20の構成を示す断面図である。図2(A)において、塗布ユニット20は、その底に第1の孔21aが開口され、インク22が注入された容器21と、第2の孔23aが開口され、容器21を密封する蓋23と、第1および第2の孔21a,23aと略同じ径を有する塗布針24とを含む。塗布針24の先端部は、第2の孔23aを貫通してインク22に浸漬される。
【0018】
図3は、塗布針24と容器21の部分を拡大した図であり、容器21の底に開口された第1の孔21aと、その蓋23に開口された第2の孔23aと、塗布針24との寸法関係を表したものである。第1の孔21aの径をDdとし、第2の孔23aの径をDuとし、塗布針24の径をDとすると、DdとDuはDよりも大きく、Dd>Du>Dの関係にある。なお、この関係式は、塗布針24が段付ではなく、ストレートのタイプの場合に成り立つ。
【0019】
また、第1の孔21aの径Ddと塗布針24の径Dとの差の半分(片側隙間)をΔdとし、第2の孔23aの径Duと塗布針24の径Dとの差の半分(片側隙間)をΔuとすると、Δd>Δuの関係にあり、蓋23に開口された第2の孔23aと塗布針24との隙間よりも、容器21の底に開口された第1の孔21aと塗布針24との隙間の方が大きく設定されている。このため、第2の孔23aと塗布針24で容器21の姿勢を保つことができ、さらに、塗布針24が第2の孔23aの内面に接触した状態にあっても、塗布針24が第1の孔21aの内面に接触しないため、第1の孔21aの磨耗による変形を抑制できる。したがって、塗布針24の先端部24aに付着するインク22の液量が変化しないので安定した塗布が可能となる。
【0020】
図2に戻って、塗布針24の基端部は塗布針固定板25に固定支持される。塗布針固定板25は直動案内部材26のスライド部26bに固定され、直動案内部材26のレール部26aは支持台29に固定される。直動案内部材26は、レール部26aとスライド部26bの間に転動体(ボールなど)を介在させた転がり案内の構成を有し、レール部26aとスライド部26bとは極軽い力で自在に直線運動することが可能なリニアガイドとなっている。塗布精度を向上するために、軽い予圧を与える場合もある。
【0021】
直動案内部材26の上下端にはそれぞれストッパ27,28が設けられ、スライド部26bがレール部26aから抜け出ることを防止する。なお、直動案内部材26にストッパ機能が内蔵されていれば、ストッパ27,28は無くてもよい。
【0022】
支持台29には、出力軸30aを上方に向けてエアシリンダ30が設けられる。エアシリンダ30の出力軸30aの先端には、先端にピン31aを固着した駆動板31が水平に固定されており、出力軸30aと一体となって上下動する。ピン31aは、図2(B)に示すように、塗布針固定板25に設けた切り欠き部25aの下方から接して、エアシリンダ30の出力軸30aの上下動により、塗布針固定板25を上下に移動させる機能を持つ。
【0023】
容器21は、たとえば、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂等の樹脂からなり、容器21の側部には突起部21bが設けられている。この突起部21bには、磁性体のピン32が突起部21bから上方に突出するように固着される。容器21は射出成形により作成してもよく、この場合、ピン32は射出成形時に一体成形することも可能である。
【0024】
また、直動案内部材26を固定する支持台29の下端面には磁石33が固着される。容器21に固着されたピン32の上端面を磁石33の下端面に吸着させることで、容器21を支持台29に1点で吊り下げた状態で支持するとともに、蓋23に開口された第2の孔23aに塗布針24を貫通させると、その隙間Δuは小さいため、容器21は所定位置に保持される。また、容器21の底に開口した第1の孔21aと塗布針24との隙間ΔdをΔuよりも十分大きく設定することで、塗布針24は、第1の孔21aに接触することなく上下動することが可能となる。たとえば、Δd=200μm、Δu=100μmに設定する。
【0025】
塗布針24が容器21の蓋23に開口した第2の孔23aに挿入されれば、容器21の姿勢は塗布針24と第2の孔23aによりある程度拘束され、容器21の姿勢が決まり、その姿勢を保持する。
【0026】
容器21の底に開口した第1の孔21aと塗布針24とが接触しないため、ダストの発生を防止することができ、インク22中へのダストの侵入を抑制することができる。また、容器21は磁石33と容器21に固着したピン32の吸引力で1面支持されているだけであり、塗布針24と第2の孔23aとが接触しても、容器21の固定方法には調心性があるため、塗布針24に与える影響は少ない。ピン32と磁石33とが接する面はほぼ平らで、それらは3mm前後の直径である。なお、第1の孔21aの中心と第2の孔23aとの中心を結ぶ基準線が、塗布針24の中心線とほぼ一致するように、ピン32と磁石33の接触面が設定される。
【0027】
図4(A)〜(D)は、図1図3で示したインク塗布装置1を使用して基板35の表面の対象領域35aにインク22を塗布する工程を示す図である。塗布機構部5は、塗布ユニット20をZ軸方向(垂直方向、塗布針24の長さ方向)に下降および上昇させる副Zステージ34を含む。副Zステージ34は、Z軸方向に伸縮する駆動軸34aを有し、駆動軸34aの先端部が支持台29の上端部に固定されている。副Zステージ34は、Z軸方向の座標を有し、駆動軸34aを任意の第1座標から任意の第2座標まで所望の速度で移動させる機能を有する。まず、図4(A)に示すように、XYステージ10およびZステージ12を用いて塗布ユニット20と基板35を相対移動させ、基板35の対象領域35aの上方に塗布針24の先端を配置する。
【0028】
次に図4(B)に示すように、エアシリンダ30の出力軸30aを下方(図では、出力軸30aを引き込む方向)に移動させ、出力軸30aと一体となって移動する駆動板31を下方に移動させる。駆動板31の先端に固着したピン31aは、塗布針固定板25に設けた切り欠き部25aに下方から接しており、駆動板31の下降により塗布針固定板25は直動案内部材26に沿って下方に移動する。それに合わせて塗布針24も下方に移動し、容器21の底に開口された第1の孔21aから塗布針24の先端部24aが突出する。この状態で、塗布針24の先端部24aにはインク22が付着しており、塗布できる状態となる。このとき、塗布針24の先端は対象領域35aの真上に配置され、塗布針24の先端と対象領域35aの表面との間隔は所定の距離に設定されている。つまり、対象領域35aの上方の予め定められた位置に塗布針24の先端が配置される。
【0029】
その後、図4(C)に示すように、副Zステージ34を用いて塗布ユニット20全体を所定の速度で下降させ、インク22が付着した塗布針24の先端を基板35の対象領域35aに接触させる。これにより、塗布針先端部24aのインク22が対象領域35aに塗布され、インク層22aが形成される。
【0030】
なお、塗布針24の先端が対象領域35aに接触した後に継続して塗布ユニット20を下降させてもスライド部26bがレール部26aに沿って上方に退避するので、塗布針24の先端には過大な負荷が加わらない。そのため、塗布時に基板35に加えられる荷重は、スライド部26bと、塗布針固定板25と、塗布針24の合成重量となり、たとえば、約10g前後と軽荷重である。
【0031】
塗布針24の先端を一定時間、対象領域35aに接触させた後、図4(D)に示すように、エアシリンダ30の出力軸30aを上方(図では、出力軸30aを突出させる方向)に移動させ、塗布針24の先端部24aを容器21のインク22中に浸漬した状態に戻すとともに、副Zステージ34の駆動軸34aを上方に移動させて塗布ユニット20全体を上方に移動させ、1回の塗布動作が終了する。
【0032】
なお、ここでは塗布ユニット20の下降を副Zステージ34によって行なっているが、その代わりに観察光学系2を搭載したZステージ12によって行なってもよい。
【0033】
このような塗布装置1を使用し、複数のインク層22aを積層して厚膜を作成する場合、単に図4(A)〜(D)で示した塗布工程を繰り返すと、インク層22aを塗布する毎に塗布針24の先端からインク層22aを介して対象領域35a(たとえばMEMSの機構部)に衝撃が印加され、その衝撃によって対象領域35aが破損する恐れがある。
【0034】
そこで本実施の形態によるインク塗布方法では、図4(B)で示した予め定められた位置から対象領域35aに向けて塗布針24を下降させる距離(下降量)dを、実行した塗布工程の回数に応じて減少させ、塗布針24の先端からインク層22aを介して対象領域35aに印加される衝撃を緩和する。
【0035】
図4(B)では、容器21の底に開口された第1の孔21aから塗布針24の先端部24aが突出し、先端部24aにインク22が付着し、塗布針24の先端が対象領域35aの表面の上方の予め定められた位置に配置された状態を示した。図5(A)は、図4(B)のうちのインク22が付着した塗布針24の先端部24aを示している。このとき、副Zステージ34のZ軸方向の座標が0に較正される。副Zステージ34の座標の正方向は、塗布針24を下降させる方向に設定されている。
【0036】
また、この状態における塗布針24の先端と対象領域35aの表面との間の距離d0は予め測定された既知の値であり、ホストコンピュータ8に記憶されている。観察光学系2などを用いて塗布針24の先端と基板35の表面との距離を調整し、塗布針24の先端と基板35の表面とが略接触するときにおける副Zステージ34のZ軸方向の座標から上記の距離d0を求め、ホストコンピュータ8に記憶させる。また、塗布針24の長さや基板35の厚さにはばらつきがあるので、距離d0は適宜補正される。
【0037】
第1回目の塗布工程では、図4(C)で示したように、副Zステージ34を制御し、インク22が付着した塗布針24の先端を第1の距離d1だけ下降させ、一定時間待機する。この場合は、図5(B)に示すように、塗布針24の先端と対象領域35aの表面との間にインク層22aが形成される。第1層目のインク層22aの膜厚をα1とすると、d1=d0−α1である。α1は、予め実験によって求められた既知の値であり、ホストコンピュータ8に記憶されている。この塗布工程では、塗布針24の先端が対象領域35aに直接衝突しないので、塗布針24の先端からインク層22aを介して対象領域35aに印加される衝撃を最小限に抑制することができる。
【0038】
第2回目の塗布工程では、図4(C)で示したように、副Zステージ34を制御し、インク22が付着した塗布針24の先端を第1の距離d1よりも小さな第2の距離d2だけ下降させ、一定時間待機する。この場合は、図5(C)に示すように、塗布針24の先端と対象領域35aの表面との間に2つのインク層22aが積層される。第2層目のインク層22aの膜厚をα2とすると、d2=d0−α1−α2=d1−α2である。α2は、予め実験によって求められた既知の値であり、ホストコンピュータ8に記憶されている。この第2回目の塗布工程では、塗布針24の下降量d2を第1回目の塗布工程における下降量d1よりも第2層目のインク層22aの膜厚α2分だけ小さくするので、塗布針24の先端からインク層22aを介して対象領域35aに印加される衝撃を最小限に抑制することができる。
【0039】
第3回目の塗布工程では、図4(C)で示したように、副Zステージ34を制御し、インク22が付着した塗布針24の先端を第2の距離d2よりも小さな第3の距離d3だけ下降させ、一定時間待機する。この場合は、図5(D)に示すように、塗布針24の先端と対象領域35aの表面との間に3つのインク層22aが積層される。第3層目のインク層22aの膜厚をα3とすると、d3=d0−α1−α2−α3=d2−α3である。α3は、予め実験によって求められた既知の値であり、ホストコンピュータ8に記憶されている。この第3回目の塗布工程では、塗布針24の下降量d3を第2回目の塗布工程における下降量d2よりも第3層目のインク層22aの膜厚α3分だけ小さくするので、塗布針24の先端からインク層22aを介して対象領域35aに印加される衝撃を最小限に抑制することができる。
【0040】
以上のように、本実施の形態では、実行した塗布工程の回数が増大するに従って塗布針24の下降量dを減少させるので、インク塗布時に塗布針24の先端からインク層22aを介して対象領域35aに印加される衝撃を緩和することができる。したがって、基板35の対象領域35a(たとえばMEMSの機構部)を破損させることなく粘度の高いインク22を厚く塗布することができる。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 パターン修正装置、2 観察光学系、3 モニタ、4 カット用レーザ部、5 塗布機構部、6 基板加熱部、7 画像処理部、8 ホストコンピュータ、9 制御用コンピュータ、10 XYステージ、11 チャック部、12 Zステージ、20 塗布ユニット、21 容器、21a 第1の孔、22 インク、23 蓋、23a 第2の孔、24 塗布針、24a 先端部、25 塗布針固定板、25a 切り欠き部、26 直動案内部材、26a レール部、26b スライド部、27,28 ストッパ、29 支持台、30 エアシリンダ、30a 出力軸、31 駆動板、31a,32 ピン、33 磁石、35 基板、35a 対象領域。
図1
図2
図3
図4
図5