特許第6404680号(P6404680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404680
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】ベルト駆動装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20181001BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G03G15/16
   F16C13/00 Z
【請求項の数】17
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-217416(P2014-217416)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-85327(P2016-85327A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】316018166
【氏名又は名称】エイチピー プリンティング コリア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝浩
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−162794(JP,A)
【文献】 特開2006−71818(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0034634(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラー及び張架ローラーを備え、前記駆動ローラー及び前記張架ローラーに架け渡された無端ベルトを回転駆動するベルト駆動装置であって、
前記駆動ローラーの外周面には、前記無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値である高摩擦部と、前記無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値よりも小さい第2の値である低摩擦部とが形成され、
前記高摩擦部と前記低摩擦部との境界線は、前記駆動ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、前記駆動ローラーの回転軸線方向の中心側から端部側に向かっており、
前記駆動ローラーの外周面には、前記駆動ローラーの回転軸線方向の中央部に、前記境界線が配置されていない非形成部が設けられ、
前記非形成部の前記回転軸線方向における長さは、前記無端ベルトの幅の40%以上100%以下であり、
前記駆動ローラーの回転軸線方向における両端部に、前記高摩擦部及び前記低摩擦部が形成された形成部が設けられているベルト駆動装置。
【請求項2】
前記境界線は、前記駆動ローラーの回転軸線方向において対称に配置されている請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記高摩擦部と前記無端ベルトの裏面との摩擦係数をμ1とし、
前記低摩擦部と前記無端ベルトの裏面との摩擦係数をμ2としたとき、
下記式(1)〜(3)を満たす請求項1または2に記載のベルト駆動装置。
0.50≦μ1≦0.95…(1)
0.25≦μ2≦0.70…(2)
0.04≦μ1−μ2≦0.25…(3)
【請求項4】
前記形成部を、前記回転軸線方向において中央部側から端部側に向かって、第1領域a、第2領域b、第3領域cと分けた場合、
前記第1領域aの前記高摩擦部の前記摩擦係数をμa1とし、
前記第1領域aの前記低摩擦部の前記摩擦係数をμa2とし、
前記第2領域bの前記高摩擦部の前記摩擦係数をμb1とし、
前記第2領域bの前記低摩擦部の前記摩擦係数をμb2とし、
前記第3領域cの前記高摩擦部の前記摩擦係数をμc1とし、
前記第3領域cの前記低摩擦部の前記摩擦係数をμc2としたとき、
下記式(4)を満たす請求項1〜3の何れか一項にに記載のベルト駆動装置。
μa1−μa2<μb1−μb2<μc1−μc2…(4)
【請求項5】
前記境界線は、前記駆動ローラーの回転軸線方向に対して傾斜して配置され、
前記回転軸線に対する前記境界線の傾斜角は、30度以上75度以下である請求項1〜の何れか一項に記載のベルト駆動装置。
【請求項6】
前記高摩擦部及び前記低摩擦部は帯状に形成されて、前記境界線は前記駆動ローラーの回転軸線方向に対して傾斜して配置され、
前記高摩擦部は、前記駆動ローラーの周方向において3本以上配置されている請求項1〜の何れか一項に記載のベルト駆動装置。
【請求項7】
駆動ローラー及び張架ローラーを備え、前記駆動ローラー及び前記張架ローラーに架け渡された無端ベルトを回転駆動するベルト駆動装置であって、
前記張架ローラーの外周面には、前記無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値である高摩擦部と、前記無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値よりも小さい第2の値である低摩擦部とが形成され、
前記高摩擦部と前記低摩擦部との境界線は、前記張架ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、前記張架ローラーの回転軸線方向の端部側から中心側に向かっているベルト駆動装置。
【請求項8】
前記境界線は、前記張架ローラーの回転軸線方向において対称に配置されている請求項に記載のベルト駆動装置。
【請求項9】
前記高摩擦部と前記無端ベルトの裏面との摩擦係数をμ1とし、
前記低摩擦部と前記無端ベルトの裏面との摩擦係数をμ2としたとき、
下記式(5)〜(7)を満たす請求項またはに記載のベルト駆動装置。
0.50≦μ1≦0.95…(5)
0.25≦μ2≦0.70…(6)
0.04≦μ1−μ2≦0.25…(7)
【請求項10】
前記張架ローラーの外周面には、前記張架ローラーの回転軸線方向の中央部に、前記境界線が配置されていない非形成部が設けられ、
前記非形成部の前記回転軸線方向における長さは、前記無端ベルトの幅の40%以上100%以下であり、
前記張架ローラーの回転軸線方向における両端部に、前記高摩擦部及び前記低摩擦部が形成された形成部が設けられている請求項の何れか一項に記載のベルト駆動装置。
【請求項11】
前記形成部を、前記回転軸線方向において中央部側から端部側に向かって、第1領域e、第2領域f、第3領域gと分けた場合、
前記第1領域eの前記高摩擦部の前記摩擦係数をμe1とし、
前記第1領域eの前記低摩擦部の前記摩擦係数をμe2とし、
前記第2領域fの前記高摩擦部の前記摩擦係数をμf1とし、
前記第2領域fの前記低摩擦部の前記摩擦係数をμf2とし、
前記第3領域gの前記高摩擦部の前記摩擦係数をμg1とし、
前記第3領域gの前記低摩擦部の前記摩擦係数をμg2としたとき、
下記式(8)を満たす請求項10に記載のベルト駆動装置。
μe1−μe2<μf1−μf2<μg1−μg2…(8)
【請求項12】
前記境界線は、前記張架ローラーの回転軸線方向に対して傾斜して配置され、
前記回転軸線に対する前記境界線の傾斜角は、30度以上75度以下である請求項11の何れか一項に記載のベルト駆動装置。
【請求項13】
前記高摩擦部及び前記低摩擦部は帯状に形成されて、前記境界線は前記張架ローラーの回転軸線方向に対して傾斜して配置され、
前記高摩擦部は、前記張架ローラーの周方向において3本以上配置されている請求項12の何れか一項に記載のベルト駆動装置。
【請求項14】
駆動ローラー及び張架ローラーを備え、前記駆動ローラー及び前記張架ローラーに架け渡された無端ベルトを回転駆動するベルト駆動装置であって、
前記駆動ローラーの外周面には、前記無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値である第1の高摩擦部と、前記無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値よりも小さい第2の値である第1の低摩擦部とが形成され、
前記第1の高摩擦部と前記第1の低摩擦部との境界線である第1の境界線は、前記駆動ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、前記駆動ローラーの回転軸線方向の中心側から端部側に向かっており、
前記張架ローラーの外周面には、前記無端ベルトの裏面との摩擦係数が第3の値である第2の高摩擦部と、前記無端ベルトの裏面との摩擦係数が第3の値よりも小さい第4の値である第2の低摩擦部とが形成され、
前記第2の高摩擦部と前記第2の低摩擦部との境界線である第2の境界線は、前記張架ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、前記張架ローラーの回転軸線方向の端部側から中心側に向かっているベルト駆動装置。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載のベルト駆動装置を備える画像形成装置。
【請求項16】
前記無端ベルトは、トナー像を転写するための転写ベルトである請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記無端ベルトは、用紙を搬送するための用紙搬送ベルトである請求項15に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、例えば、用紙を搬送するための搬送ベルトや、トナーを二次転写するための中間転写ベルトとして、無端ベルトが使用されている。無端ベルトは、駆動ローラー及び張架ローラー(従動ローラー)に架け渡され、駆動ローラーによる動力が伝達されて、周回軌道に沿って駆動される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のベルト駆動装置では、駆動ローラー又は張架ローラーの少なくとも一方の外周面に、軸方向中心を対称に、ローラーの回転方向の上流側の軸方向中心から下流側の軸方向端部に向けて傾斜した複数の傾斜した溝が設けられている。このベルト駆動装置では、ローラーの回転により、軸方向中心側から幅方向両端部に向けて無端ベルトを引張るように力を発生させている。これにより、無端ベルトの斜行や蛇行を防止していた。
【0004】
特許文献2に記載のベルト駆動装置では、無端ベルトの幅方向端部の少なくとも一方に、ベルト幅方向端部から中心に向かって外径が小さくなる円錐状の回転体を無端ベルトの幅方向の端部に当接させている。これにより、ベルト幅方向の一方に無端ベルトがずれると、ずれた方の円錐状の回転体において、外径が大きい位置で無端ベルトが当接して張力が大きくなり、ベルト幅方向の反対側では、外径が小さい位置で無端ベルトが当接して張力が小さくなる。無端ベルトの両端部の張力の差を利用して、無端ベルトに、片寄った方と反対側への力を作用させている。これにより、無端ベルトの斜行や蛇行を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−344750号公報
【特許文献2】特開2009−69478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の従来技術では、ローラーの外周面に溝が形成されているので、この溝の内部に無端ベルトが入り込むことで、無端ベルトが波状に変形し、画像の悪化を招くことになる。さらに、中間転写ベルトにおいて、転写後に無端ベルトに残存したトナーを掻き取るクリーニングブレードを備える構成では、通常、張架ローラー上で、無端ベルトに対してクリーニングブレードが当接する。そのため、張架ローラーの外周面に溝が設けられていると、溝に対応する位置において、無端ベルトとクリーニングブレードと密着性が低下して、トナーを充分に除去することができないおそれがある。
【0007】
また、上記の特許文献2に記載の従来技術では、駆動ローラー及び張架ローラーとは別に、円錐状の回転体を設ける必要があるので、このような機構を設置するためのスペースを確保する必要があると共に、コストの増加を招くことになっている。
【0008】
本発明は、装置の簡略化を図りつつ、無端ベルトの変形を抑制すると共に無端ベルトの幅方向におけるズレを抑制することが可能なベルト駆動装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、駆動ローラー及び張架ローラーを備え、駆動ローラー及び張架ローラーに架け渡された無端ベルトを回転駆動するベルト駆動装置である。駆動ローラーの外周面には、無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値である高摩擦部と、無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値よりも小さい第2の値である低摩擦部とが形成されている。高摩擦部と低摩擦部との境界線は、駆動ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、駆動ローラーの回転軸線方向の中心側から端部側に向かっている。
【0010】
無端ベルトは、駆動ローラーの外周面に沿って搬送される際に、駆動ローラーの周方向に沿って縮みが生じる。これは、駆動ローラーの回転位置に応じて、無端ベルトに作用する張力が減少することによるものであり、引っ張られた状態の無端ベルトは、張力の減少に応じて縮むことになる。このとき、無端ベルトは、駆動ローラーの外周面に対して、相対的に移動し、駆動ローラーの回転方向の上流側に僅かにスリップする。このベルト駆動装置では、駆動ローラーの外周面に高摩擦部と低摩擦部とが形成され、この高摩擦部と低摩擦部との境界線は、駆動ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、駆動ローラーの回転軸線方向の中心側から端部側に向かって配置されているので、無端ベルトが回転方向の上流側に引っ張られてスリップした際に、低摩擦部と高摩擦部との間の境界線に沿って、駆動ローラーの回転軸線方向の中央に、無端ベルトを寄せる力が生じる。これにより、無端ベルトは、駆動ローラーの回転軸線方向の中心側に寄せられるので、無端ベルトの幅方向における位置ズレが抑制される。また、駆動ローラーの外周面に、溝を形成する必要がないので、無端ベルトが溝に入り込んで変形するおそれがない。
【0011】
境界線は、駆動ローラーの回転軸線方向において対称に配置されていてもよい。これにより、駆動ローラーの回転軸線方向において、無端ベルトの中心からのズレ量に応じて、無端ベルトを中央に寄せる力が増加することになる。そのため、無端ベルトは、駆動ローラーの回転軸線方向の中心からずれ難くなる。
【0012】
また、高摩擦部と無端ベルトの裏面との摩擦係数をμ1とし、低摩擦部と無端ベルトの裏面との摩擦係数をμ2としたとき、摩擦係数μ1,μ2は下記式(1)〜(3)を満たしていることが好ましい。
0.50≦μ1≦0.95…(1)
0.25≦μ2≦0.70…(2)
0.04≦μ1−μ2≦0.25…(3)
【0013】
駆動ローラーの外周面には、駆動ローラーの回転軸線方向の中央部に、境界線が配置されていない非形成部が設けられている。非形成部の回転軸線方向における長さは、無端ベルトの幅の40%以上100%以下である。駆動ローラーの回転軸線方向における両端部に、高摩擦部及び低摩擦部が形成された形成部が設けられている。駆動ローラーの回転軸線方向の両端部に、高摩擦部及び低摩擦部を形成することで、無端ベルトの位置ズレを抑制することができる。高摩擦部及び低摩擦部と、無端ベルトの裏面との接触面積を抑えることで、無端ベルトの裏面が高摩擦部及び低摩擦部によって摩耗してしまうことが抑制され、無端ベルトの信頼性の向上を図ることができる。
【0014】
また、形成部を、回転軸線方向において中央部側から端部側に向かって、第1領域a、第2領域b、第3領域cと分けた場合、第1領域aの高摩擦部の摩擦係数をμa1とし、第1領域aの低摩擦部の摩擦係数をμa2とし、第2領域bの高摩擦部の摩擦係数をμb1とし、第2領域bの低摩擦部の摩擦係数をμb2とし、第3領域cの高摩擦部の摩擦係数をμc1とし、第3領域cの低摩擦部の摩擦係数をμc2としたとき、摩擦係数は下記式(4)を満たしている。
μa1−μa2<μb1−μb2<μc1−μc2…(4)
【0015】
また、境界線は、駆動ローラーの回転軸線方向に対して傾斜して配置され、回転軸線に対する境界線の傾斜角は、30度以上75度以下であることが好ましい。これにより、無端ベルトを駆動ローラーの回転軸線方向における中央に寄せる力が好適に作用する。
【0016】
また、高摩擦部及び低摩擦部は帯状に形成されて、境界線は駆動ローラーの回転軸線方向に対して傾斜して配置されている構成でもよい。高摩擦部は、駆動ローラーの周方向において3本以上配置されていることが好ましい。これにより、駆動ローラーの周方向において、バランス良く境界線を配置し、無端ベルトの位置ズレを抑制することができる。
【0017】
また、本発明は、駆動ローラー及び張架ローラーを備え、駆動ローラー及び張架ローラーに架け渡された無端ベルトを回転駆動するベルト駆動装置である。張架ローラーの外周面には、無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値である高摩擦部と、無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値よりも小さい第2の値である低摩擦部とが形成されている。高摩擦部と低摩擦部との境界線は、張架ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、張架ローラーの回転軸線方向の端部側から中心側に向かっている。
【0018】
無端ベルトは、張架ローラーの外周面に沿って搬送される際に、張架ローラーの周方向に沿って伸びが生じる。これは、張架ローラーの回転位置に応じて、無端ベルトに作用する張力が増大することによるものであり、縮んだ状態の無端ベルトは、張力の増大に応じて伸びることになる。このとき、無端ベルトは、張架ローラーの外周面に対して、相対的に移動し、張架ローラーの回転方向の下流側に僅かにスリップする。このベルト駆動装置では、張架ローラーの外周面に高摩擦部と低摩擦部とが形成され、この高摩擦部と低摩擦部との境界線は、張架ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、張架ローラーの回転軸線方向の端部側から中心側に向かって配置されているので、無端ベルトが回転方向の下流側に引っ張られてスリップした際に、低摩擦部と高摩擦部との間の境界線に沿って、張架ローラーの回転軸線方向の中央に、無端ベルトを寄せる力が生じる。これにより、無端ベルトは、駆動ローラーの回転軸線方向の中心側に寄せられるので、無端ベルトの幅方向における位置ズレが抑制される。また、張架ローラーの外周面に、溝を形成する必要がないので、無端ベルトが溝に入り込んで変形するおそれがない。
【0019】
境界線は、張架ローラーの回転軸線方向において対称に配置されていてもよい。これにより、張架ローラーの回転軸線方向において、無端ベルトの中心からのズレ量に応じて、無端ベルトを中央に寄せる力が増加することになる。そのため、無端ベルトは、張架ローラーの回転軸線方向の中心からずれ難くなる。
【0020】
また、高摩擦部と無端ベルトの裏面との摩擦係数をμ1とし、低摩擦部と無端ベルトの裏面との摩擦係数をμ2としたとき、摩擦係数μ1,μ2は下記式(5)〜(7)を満たしていることが好ましい。
0.50≦μ1≦0.95…(5)
0.25≦μ2≦0.70…(6)
0.04≦μ1−μ2≦0.25…(7)
【0021】
張架ローラーの外周面には、張架ローラーの回転軸線方向の中央部に、境界線が配置されていない非形成部が設けられている。非形成部の回転軸線方向における長さは、無端ベルトの幅の40%以上100%以下である。張架ローラーの回転軸線方向における両端部に、高摩擦部及び低摩擦部が形成された形成部が設けられている。張架ローラーの回転軸線方向の両端部に、高摩擦部及び低摩擦部を形成することで、無端ベルトの位置ズレを抑制することができる。高摩擦部及び低摩擦部と、無端ベルトの裏面との接触面積を抑えることで、無端ベルトの裏面が高摩擦部及び低摩擦部によって摩耗してしまうことが抑制され、無端ベルトの信頼性の向上を図ることができる。
【0022】
また、形成部を、回転軸線方向において中央部側から端部側に向かって、第1領域e、第2領域f、第3領域gと分けた場合、第1領域eの高摩擦部の摩擦係数をμe1とし、第1領域eの低摩擦部の摩擦係数をμe2とし、第2領域fの高摩擦部の摩擦係数をμf1とし、第2領域fの低摩擦部の摩擦係数をμf2とし、第3領域gの高摩擦部の摩擦係数をμg1とし、第3領域gの低摩擦部の摩擦係数をμg2としたとき、摩擦係数は下記式(8)を満たしている。
μe1−μe2<μf1−μf2<μg1−μg2…(8)
【0023】
また、境界線は、張架ローラーの回転軸線方向に対して傾斜して配置され、回転軸線に対する境界線の傾斜角は、30度以上75度以下であることが好ましい。これにより、無端ベルトを張架ローラーの回転軸線方向における中央に寄せる力が好適に作用する。
【0024】
また、高摩擦部及び低摩擦部は帯状に形成されて、境界線は張架ローラーの回転軸線方向に対して傾斜して配置されている構成でもよい。高摩擦部は、張架ローラーの周方向において3本以上配置されていることが好ましい。これにより、張架ローラーの周方向において、バランス良く境界線を配置し、無端ベルトの位置ズレを抑制することができる。
【0025】
また、本発明は、駆動ローラー及び張架ローラーを備え、駆動ローラー及び張架ローラーに架け渡された無端ベルトを回転駆動するベルト駆動装置である。駆動ローラーの外周面には、無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値である第1の高摩擦部と、無端ベルトの裏面との摩擦係数が第1の値よりも小さい第2の値である第1の低摩擦部とが形成されている。第1の高摩擦部と第1の低摩擦部との境界線である第1の境界線は、駆動ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、駆動ローラーの回転軸線方向の中心側から端部側に向かっている。張架ローラーの外周面には、無端ベルトの裏面との摩擦係数が第3の値である第2の高摩擦部と、無端ベルトの裏面との摩擦係数が第3の値よりも小さい第4の値である第2の低摩擦部とが形成されている。第2の高摩擦部と第2の低摩擦部との境界線である第2の境界線は、張架ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、張架ローラーの回転軸線方向の端部側から中心側に向かっている。
【0026】
無端ベルトは、駆動ローラーの外周面に沿って搬送される際に、駆動ローラーの周方向に沿って縮みが生じる。このとき、無端ベルトは、駆動ローラーの外周面に対して、相対的に移動し、駆動ローラーの回転方向の上流側に僅かにスリップする。このベルト駆動装置では、駆動ローラーの外周面に第1の高摩擦部と第1の低摩擦部とが形成され、この第1の高摩擦部と第1の低摩擦部との境界線である第1の境界線は、駆動ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、駆動ローラーの回転軸線方向の中心側から端部側に向かって配置されているので、無端ベルトが回転方向の上流側に引っ張られてスリップした際に、第1の低摩擦部と第1の高摩擦部との間の第1の境界線に沿って、駆動ローラーの回転軸線の中央に、無端ベルトを寄せる力が生じる。これにより、無端ベルトは、駆動ローラーの回転軸線方向の中央側に寄せられるので、無端ベルトの幅方向における位置ズレが抑制される。また、駆動ローラーの外周面に、溝を形成する必要がないので、無端ベルトが溝に入り込んで変形するおそれがない。
【0027】
また、無端ベルトは、張架ローラーの外周面に沿って搬送される際に、張架ローラーの周方向に沿って伸びが生じる。このとき、無端ベルトは、張架ローラーの外周面に対して、相対的に移動し、張架ローラーの回転方向の下流側に僅かにスリップする。このベルト駆動装置では、張架ローラーの外周面に第2の高摩擦部と第2の低摩擦部とが形成され、この第2の高摩擦部と第2の低摩擦部との境界線である第2の境界線は、張架ローラーの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、張架ローラーの回転軸線方向の端部側から中心側に向かって配置されているので、無端ベルトが回転方向の下流側に引っ張られてスリップした際に、第2の低摩擦部と第2の高摩擦部との間の第2の境界線に沿って、張架ローラーの回転軸線の中央に、無端ベルトを寄せる力が生じる。これにより、無端ベルトは、張架ローラーの回転軸線方向の中央側に寄せられるので、無端ベルトの幅方向における位置ズレが抑制される。また、張架ローラーの外周面に、溝を形成する必要がないので、無端ベルトが溝に入り込んで変形するおそれがない。
【0028】
また、本発明は、上記のベルト駆動装置を備える画像形成装置である。この画像形成装置では、無端ベルトの幅方向における位置ズレが抑制される。これにより、生成される画質の品質を向上することができる。
【0029】
また、無端ベルトは、トナー像を転写するための転写ベルトであってもよい。この構成の画像形成装置では、転写ベルトの変形が抑制されるので、転写ベルトに残存するトナーを好適に取り除くことができる。これにより、生成される画質の品質を向上することができる。
【0030】
また、無端ベルトは、用紙を搬送するための用紙搬送ベルトであってもよい。この構成の画像形成装置では、用紙搬送ベルトの変形が抑制されるので、用紙と用紙搬送ベルトとの密着性の低下を防止することができる。これにより、用紙及び用紙搬送ベルトに対して感光体を好適に押し当てることができ、用紙及び用紙搬送ベルトと、感光体との密着性の低下を防止することができる。その結果、トナー像の転写が良好に行われ、画質の向上が図られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のベルト駆動装置及び画像形成装置によれば、装置の簡略化を図りつつ、無端ベルトの変形を抑制すると共に無端ベルトの幅方向におけるズレを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1(a)は、本発明の一実施形態のベルト駆動装置を示す側面図であり、図1(b)は、無端ベルトに作用する張力Tを示すグラフであり、図1(c)は、無端ベルトの伸び率を示すグラフである。
図2図2(a)は、駆動ローラーを回転軸線と直交する方向から示す平面図であり、図2(b)は、張架ローラーを回転軸線と直交する方向から示す平面図である。
図3図3(a)は、駆動ローラーの両端部を拡大して示す平面図であり、図3(b)は、張架ローラーの両端部を拡大して示す平面図である。
図4図4(a)は、高摩擦部及び低摩擦部が形成された形成部を拡大して示す平面図であり、図4(b)は、周方向における高摩擦部及び低摩擦部の配置を示す概略図である。
図5図5(a)は、ベルト駆動装置の底面図であり、図5(b),(c)は、駆動ローラー及び無端ベルトの端部を示す拡大図である。
図6図6(a)は、ベルト駆動装置の平面図であり、図6(b),(c)は、張架ローラー及び無端ベルトの端部を示す拡大図である。
図7図7は、駆動ローラー及び無端ベルトを示す底面図であり、図7(a)は、回転軸線方向の一端側に無端ベルトがずれている場合を示し、図7(b)は、回転軸線方向の他端側に無端ベルトがずれている場合を示している。
図8図8(a)は、傾斜角と無端ベルトのズレ量との関係を示すグラフであり、図8(b)は、高摩擦部の摩擦係数μ1と低摩擦部の摩擦係数μ2との関係を示すグラフであり、図8(c)は、摩擦係数の差(μ1−μ2)と傾斜角との関係を示すグラフであり、図8(d)は、螺旋状の高摩擦部及び低摩擦部の条数と無端ベルトのズレ量との関係を示すグラフである。
図9図9は、他の実施形態に係る駆動ローラーを示す側面図である。
図10】中間転写ユニットを備えたカラー画像形成装置を示す概略図である。
図11】用紙搬送ユニットを備えたモノクロ画像形成装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態のベルト駆動装置を示す側面図である。ベルト駆動装置1は、駆動ローラー2と、張架ローラー(従動ローラー)3と、無端ベルト4とを備える。駆動ローラー2は、図示しない電動モーターから動力が伝達されて、回転軸線周りに回転する。張架ローラー3は、駆動ローラー2の回転軸線に直交する方向に離間して駆動ローラー2と平行に配置されている。無端ベルト4は、駆動ローラー2及び張架ローラー3に架け渡されて、駆動ローラー2の回転に伴って周回軌道に沿って移動する。張架ローラー3は、無端ベルト4の移動に伴って回転軸線周りに回転する。また、駆動ローラー2及び張架ローラー3は、回転軸線方向において無端ベルト4の幅よりも長く形成されている。
【0035】
ベルト駆動装置1は、例えば、プリンタ等の画像形成装置において、現像ユニットにより現像されたトナー像を用紙に二次転写する転写ユニットとして使用される。無端ベルト4は、転写ユニットにおける中間転写ベルトとして機能する。また、ベルト駆動装置1は、用紙を搬送する用紙搬送ユニットとして使用することができる。無端ベルト4は、用紙搬送ユニットにおける用紙搬送ベルトとして機能する。
【0036】
図2は、図1中の駆動ローラー及び張架ローラーを回転軸線と直交する方向から示す平面図である。図2(a)は駆動ローラー2を示し、図2(b)は張架ローラー3を示している。図3は駆動ローラー及び張架ローラーの両端部の外周面を拡大して示す平面図である。図3(a)は駆動ローラー2の両端部を示し、図3(b)は張架ローラー3の両端部を示している。
【0037】
図2(a)及び図3(a)に示されるように、駆動ローラー2の外周面には、高摩擦部21及び低摩擦部22が形成されている。高摩擦部21と無端ベルト4の裏面(駆動ローラー2の外周面と接触する面)との静止摩擦係数は、第1の値である。低摩擦部22と無端ベルト4の裏面との静止摩擦係数は、第1の値より小さい第2の値である。高摩擦部21としては、樹脂を塗布することで形成することができる。高摩擦部21には、低摩擦部22よりも摩擦係数が高い樹脂を塗布する。
【0038】
高摩擦部21及び低摩擦部22は、帯状を成し螺旋状に配置されている。高摩擦部21及び低摩擦部22は、周方向において交互に配置されている。駆動ローラー2の外周面を回転軸線と直交する方向から見た場合、高摩擦部21及び低摩擦部22は、回転軸線が延在する方向(回転軸線方向)に対して傾斜して配置されている。
【0039】
高摩擦部21は、駆動ローラー2の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、駆動ローラー2の回転軸線方向の中心側から端部側へ離間するように配置されている。また、高摩擦部21は、回転軸線方向において対称に配置されている。
【0040】
低摩擦部22は、駆動ローラー2の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、駆動ローラー2の回転軸線方向の中心側から端部側へ離間するように配置されている。また、低摩擦部22は、回転軸線方向において対称に配置されている。
【0041】
高摩擦部21及び低摩擦部22は、同一の形状を成し平行に配置されている。そして、高摩擦部21と低摩擦部22との境界線23は、駆動ローラー2の回転軸線方向に対して、傾斜して配置されている。境界線23は、駆動ローラー2の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、駆動ローラー2の回転軸線方向の中心側から端部側へ離間するように配置されている。境界線23は、回転軸線方向において対称に配置されている。
【0042】
高摩擦部21と無端ベルト4の裏面との静止摩擦係数をμ1とし、低摩擦部22と無端ベルト4の裏面との静止摩擦係数をμ2としたとき、静止摩擦係数μ1,μ2は下記式(1)〜(3)を満たしている。
0.50≦μ1≦0.95…(1)
0.25≦μ2≦0.70…(2)
0.04≦μ1−μ2≦0.25…(3)
【0043】
また、境界線23は、駆動ローラー2の回転軸線方向において両端部に形成されている。駆動ローラー2の回転軸線方向の中央部には、境界線23が配置されていない非形成領域(非形成部)24が設けられている。駆動ローラー2の回転軸線方向の両端部には、高摩擦部21及び低摩擦部22が形成されて、境界線23が配置された形成領域(形成部)25がそれぞれ形成されている。非形成領域24の回転軸線方向における長さは、例えば、無端ベルト4の幅の40%以上100%以下である。
【0044】
非形成領域24では、外周面の摩擦係数は周方向において差はなく、例えば、低摩擦部22の摩擦係数と同じ値となっている。なお、駆動ローラー2は、回転軸線方向の全長において、形成領域が設けられている構成でもよい。また、無端ベルト4の幅方向の両端部に対応する位置に、形成領域が設けられ、形成領域の外側に非形成領域が設けられていてもよい。
【0045】
また、高摩擦部21及び低摩擦部22は、回転軸線方向において摩擦係数が異なる値となるものでもよい。例えば、回転軸線方向において端部側に向かうにつれて、摩擦係数が大きくなるように、高摩擦部21及び低摩擦部22が形成されていてもよい。
【0046】
図3(a)に示されるように、回転軸線方向において中央部側から端部側に向かって、形成領域25を、第1領域25a、第2領域25b、第3領域25cと分けて、各領域における摩擦係数を異なる値にしてもよい。
【0047】
例えば、第1領域25aの高摩擦部21の静止摩擦係数をμa1とし、第1領域25aの低摩擦部22の静止摩擦係数をμa2とし、第2領域25bの高摩擦部21の静止摩擦係数をμb1とし、第2領域25bの低摩擦部22の静止摩擦係数μb2とし、第3領域25cの高摩擦部21の静止摩擦係数をμc1とし、第3領域25cの低摩擦部22の静止摩擦係数をμc2としたとき、静止摩擦係数μa1,μa2,μb1,μb2,μc1,μc2は下記式(4)を満たしている。
μa1−μa2<μb1−μb2<μc1−μc2…(4)
【0048】
図2(b)及び図3(b)に示されるように、張架ローラー3の外周面には、高摩擦部31及び低摩擦部32が形成されている。高摩擦部31と無端ベルト4の裏面(張架ローラー3の外周面と接触する面)との静止摩擦係数は、第1の値である。低摩擦部22と無端ベルト4の裏面との静止摩擦係数は、第1の値より小さい第2の値である。高摩擦部31としては、樹脂を塗布することで形成することができる。高摩擦部31には、低摩擦部32よりも摩擦係数が高い樹脂を塗布する。
【0049】
高摩擦部31及び低摩擦部32は、帯状を成し螺旋状に配置されている。高摩擦部31及び低摩擦部32は、周方向において交互に配置されている。張架ローラー3の外周面を回転軸線と直交する方向から見た場合、高摩擦部31及び低摩擦部32は、回転軸線が延在する方向(回転軸線方向)に対して傾斜して配置されている。
【0050】
高摩擦部31は、張架ローラー3の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、張架ローラー3の回転軸線方向の端部側から中心側へ接近するように配置されている。また、高摩擦部31は、回転軸線方向において対称に配置されている。
【0051】
低摩擦部32は、張架ローラー3の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、張架ローラー3の回転軸線方向の端部側から中心側へ接近するように配置されている。また、低摩擦部32は、回転軸線方向において対称に配置されている。
【0052】
高摩擦部31及び低摩擦部32は、同一の形状を成し平行に配置されている。そして、高摩擦部31と低摩擦部32との境界線33は、張架ローラー3の回転軸線方向に対して、傾斜して配置されている。境界線33は、張架ローラー3の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、張架ローラー3の回転軸線方向の端部側から中心側へ離間するように配置されている。境界線33は、回転軸線方向において対称に配置されている。
【0053】
高摩擦部31と無端ベルト4の裏面との静止摩擦係数をμ1とし、低摩擦部32と無端ベルト4の裏面との静止摩擦係数をμ2としたとき、静止摩擦係数μ1,μ2は下記式(5)〜(7)を満たしている。
0.50≦μ1≦0.95…(5)
0.25≦μ2≦0.70…(6)
0.04≦μ1−μ2≦0.25…(7)
【0054】
また、境界線33は、張架ローラー3の回転軸線方向において両端部に形成されている。張架ローラー3の回転軸線方向の中央部には、境界線33が配置されていない非形成領域(非形成部)34が設けられている。張架ローラー3の回転軸線方向の両端部には、高摩擦部31及び低摩擦部32が形成されて、境界線33が配置された形成領域(形成部)35がそれぞれ形成されている。非形成領域34の回転軸線方向における長さは、例えば、無端ベルト4の幅の40%以上100%以下である。
【0055】
非形成領域34では、外周面の摩擦係数は周方向において差はなく、例えば、低摩擦部32の摩擦係数と同じ値となっている。なお、張架ローラー3は、回転軸線方向の全長において、形成領域が設けられている構成でもよい。また、無端ベルト4の幅方向の両端部に対応する位置に、形成領域が設けられ、形成領域の外側に非形成領域が設けられていてもよい。
【0056】
また、高摩擦部31及び低摩擦部32は、回転軸線方向において摩擦係数が異なる値となるものでもよい。例えば、回転軸線方向において端部側に向かうにつれて、摩擦係数が大きくなるように、高摩擦部31及び低摩擦部32が形成されていてもよい。
【0057】
図3(b)に示されるように、回転軸線方向において中央部側から端部側に向かって、形成領域35を、第1領域35a、第2領域35b、第3領域35cと分けて、各領域における摩擦係数を異なる値にしてもよい。
【0058】
例えば、第1領域35eの高摩擦部31の静止摩擦係数をμe1とし、第1領域35eの低摩擦部32の静止摩擦係数をμe2とし、第2領域35fの高摩擦部31の静止摩擦係数をμf1とし、第2領域35fの低摩擦部32の静止摩擦係数μf2とし、第3領域35cの高摩擦部31の静止摩擦係数をμg1とし、第3領域35gの低摩擦部32の静止摩擦係数をμg2としたとき、静止摩擦係数μe1,μe2,μf1,μf2,μg1,μg2は下記式(4)を満たしている。
μa1−μa2<μb1−μb2<μc1−μc2…(4)
【0059】
次に、ベルト駆動装置1の動作について説明する。
【0060】
図1(a)に示されるように、駆動ローラー2によって無端ベルト4に動力が伝達されて、無端ベルト4は周回移動する。張架ローラー3は無端ベルト4の移動に伴って回転する。図1(a)では、張架ローラー3が左側に配置され、駆動ローラー2が右側に配置されている。駆動ローラー2及び張架ローラー3の外径は同一であり、中心の高さ位置は同じである。
【0061】
位置Pは、張架ローラー3の外周面の最高点であり、位置Pは、駆動ローラー2の外周面の最高点であり、位置Pは、駆動ローラー2の外周面の最低点であり、位置Pは、張架ローラー3の外周面の最低点である。無端ベルト4の微小領域Mの移動を考えると、この微小領域Mは、位置Pにおいて張架ローラー3の外周面から離れて、図示右側へ、駆動ローラー2の位置Pに向かって移動する。
【0062】
微小領域Mは、位置Pにおいて駆動ローラー2の外周面に接触し、駆動ローラー2の外周面に接触した状態で回転移動し、位置Pに達する。微小領域Mは、位置Pにおいて駆動ローラー2の外周面から離れて、図示左側へ、張架ローラー3の位置Pに向かって移動する。微小領域Mは、位置Pにおいて張架ローラー3の外周面に接触し、張架ローラー3の外周面に接触した状態で回転移動し、位置Pに達する。
【0063】
図1(b)は、無端ベルトに作用する張力を示すグラフである。図1(b)では、横軸に位置を示し、縦軸に張力Tの大きさを示している。無端ベルト4では、位置Pから位置Pにおいて、張力T1が作用する。位置Pから位置Pにおいて、無端ベルト4に作用する張力は一定である。位置Pから位置Pにおいて、無端ベルト4に作用する張力は徐々に減少し、張力T1から張力T2に減少する。
【0064】
無端ベルト4に作用する張力は、位置Pから位置Pにおいて一定であり、張力T2である。位置Pから位置Pにおいて、無端ベルト4に作用する張力が徐々に上昇し、張力T2から張力T1に増える。
【0065】
図1(c)は、無端ベルトの伸び率を示すグラフである。図1(c)では、横軸に位置を示し、縦軸にベルト伸び率の大きさを示している。無端ベルト4では、位置Pから位置Pにおいて、一定のベルト伸び率R1である。位置Pから位置Pにおいて、ベルト伸び率は、無端ベルト4に作用する張力の減少に伴って徐々に減少し、ベルト伸び率R1からベルト伸び率R2に減少する。
【0066】
無端ベルト4の伸び率は、位置Pから位置Pにおいて一定であり、ベルト伸び率R2を維持する。位置Pから位置Pにおいて、ベルト伸び率は、無端ベルト4に作用する張力の増加に伴って徐々に増加し、ベルト伸び率R2からベルト伸び率R1になる。
【0067】
無端ベルト4は、駆動ローラー2の外周面に沿って位置Pから位置Pに搬送される際に、駆動ローラー2の周方向に沿って縮みが生じる。このとき、無端ベルト4は、駆動ローラー2の外周面に対して、相対的に移動し、駆動ローラー2の回転方向の上流側に僅かにスリップする。
【0068】
図5(b)及び図5(c)では、無端ベルト4の微小領域の位置P近傍における駆動ローラー2との接触状態を示している。微小領域は、無端ベルト4の幅方向における端部を含む領域である。位置P近傍とは、位置Pに達する直前の位置である。無端ベルト4は、位置Pcの直前において、上流側(後方)に僅かにスリップする。微小領域は、駆動ローラー2の形成領域25上に配置され、高摩擦部21及び低摩擦部22と接触している。
【0069】
微小領域が後方に僅かにスリップすると、微小領域には、境界線23に沿うように、駆動ローラー2の回転軸線方向の中心側に無端ベルト4を寄せる力が生じる。これにより、無端ベルト4は、駆動ローラー2の回転軸線方向の中心側に寄せられる。
【0070】
また、無端ベルト4は、張架ローラー3の外周面に沿って位置Pから位置Pに搬送される際に、張架ローラー3の周方向に沿って伸びが生じる。このとき、無端ベルト4は、張架ローラー3の外周面に対して、相対的に移動し、張架ローラー3の回転方向の下流側に僅かにスリップする。
【0071】
図6(b)及び図6(c)では、無端ベルト4の微小領域の位置P近傍における張架ローラー3との接触状態を示している。位置P近傍とは、位置Pに達する直前の位置である。無端ベルト4は、位置Pの直前において、下流側(前方)に僅かにスリップする。微小領域は、張架ローラー3の形成領域35上に配置され、高摩擦部31及び低摩擦部32と接触している。
【0072】
微小領域が前方に僅かにスリップすると、微小領域には、境界線33に沿うように、張架ローラー3の回転軸線方向の中心側に無端ベルト4を寄せる力が生じる。これにより、無端ベルト4は、張架ローラー3の回転軸線方向の中心側に寄せられる。
【0073】
図7は、駆動ローラー及び無端ベルトを示す底面図である。図7(a)は、回転軸線方向の一端側に無端ベルトがずれている場合を示している。このように、無端ベルト4が駆動ローラー2の一端側にずれている場合には、無端ベルト4の幅方向の端部は、他端側より一端側の方が、形成領域25に重なる面積が大きくなっている。無端ベルト4が駆動ローラー2の回転軸線の中心側に寄せられる力は、他端側より一端側の方が強くなっている。これにより、無端ベルト4は、一端側から他端側へ寄せられることになる。
【0074】
図7(b)は、回転軸線方向の他端側に無端ベルトがずれている場合を示している。このように、無端ベルト4が張架ローラー3の他端側にずれている場合には、無端ベルト4の幅方向の端部は、一端側より他端側の方が、形成領域25に重なる面積が大きくなっている。無端ベルト4が駆動ローラー2の回転軸線の中心側に寄せられる力は、一端側より他端側の方が強くなっている。これにより、無端ベルト4は、他端側から一端側へ寄せられることになる。
【0075】
また、張架ローラー3において、無端ベルト4が一端側にずれると、他端側と比較して一端側の方が、形成領域35に重なる無端ベルト4の面積が増える。これにより、一端側において無端ベルト4を回転軸線方向の中心側に寄せる力は、他端側において無端ベルト4を回転軸線方向の中心側に寄せる力よりも強くなる。
【0076】
また、張架ローラー3において、無端ベルト4が他端側にずれると、一端側と比較して他端側の方が、形成領域35に重なる無端ベルト4の面積が増える。これにより、他端側において無端ベルト4を回転軸線方向の中心側に寄せる力は、一端側において無端ベルト4を回転軸線方向の中心側に寄せる力よりも強くなる。
【0077】
このように、本実施形態のベルト駆動装置1では、無端ベルト4が駆動ローラー2の回転軸線方向の中心側に寄せられるので、無端ベルト4の幅方向における位置ズレが抑制される。同様に、無端ベルト4は張架ローラー3の回転軸線方向の中心側に寄せられるので、無端ベルト4の幅方向における位置ズレが抑制される。ベルト駆動装置1では、無端ベルト4の位置ズレを防止するための機構を別途設ける必要がないので、装置の簡素化を図ることができる。また、ベルト駆動装置1では、駆動ローラー2の外周面及び張架ローラー3の外周面に、溝部を設ける必要がなく、凹凸が形成されていない。そのため、無端ベルト4に波打ちなどの変形が生じるおそれがない。
【0078】
次に、境界線の傾斜角度θと無端ベルトの幅方向におけるズレ量との関係について説明する。図8(a)は、傾斜角度θと無端ベルトとのズレ量との関係を示すグラフである。図8(a)では、横軸に境界線と駆動ローラー2の回転軸線との傾斜角度θを示し、縦軸に無端ベルトの駆動ローラー2の回転軸線方向におけるズレ量を示している。同一時間、同一回転速度で、駆動ローラー2を回転駆動させた場合における無端ベルト4のズレ量を、境界線の傾斜角度を変えてそれぞれ測定した。
【0079】
無端ベルトの位置ズレ量の測定において、測定器具として「紙搬送ベルト走行試験JIG」を用いた。ベルトの走行速度を250mm/secとし、走行開始から1分ごとにベルトの位置を測定し、5分後の位置をベルトのズレ量として測定した。また、高摩擦部の静止摩擦係数μ1を0.60とし、低摩擦部の静止摩擦係数μ2を0.35とし、高摩擦部及び低摩擦部の条数を3とした。また、駆動ローラー2の回転軸線方向において、非形成領域の長さを、無端ベルトの幅に対して60%とした。
【0080】
図8(a)に示されるように、角度θが0°である場合(境界線と回転軸線とが平行である場合)に、無端ベルト4のズレ量が大きく、傾斜角が大きくなるに従い、無端ベルト4のズレ量は減少している。角度θが90°である場合(境界線と回転軸線とが直交している場合)に、無端ベルト4のズレ量が大きく、傾斜角度θが小さくなるに従い、無端ベルト4のズレ量は減少している。傾斜角度θが30°以上75°以下である場合に、無端ベルト4のズレ量が小さく、ズレ量がなかった。張架ローラー3についても同様の結果である。
【0081】
次に、高摩擦部の摩擦係数μ1と低摩擦部の摩擦係数μ2との関係について説明する。図8(b)は、高摩擦部の摩擦係数μ1と低摩擦部の摩擦係数μ2との関係を示すグラフである。図8(b)では、横軸に低摩擦部の摩擦係数μ2を示し、縦軸に高摩擦部の摩擦係数μ1を示している。図8(b)中、破線で示す直線は、μ1=μ2である。低摩擦部の摩擦係数を一定として、高摩擦部の摩擦係数を変化させて、その他の条件(回転速度、傾斜角=45°)を同一として、無端ベルト4の幅方向の位置ズレを測定した。図8(b)に示されるように、μ1が0.5以上であり、μ1≧μ2+0.04を満たす範囲において、無端ベルト4の幅方向の位置ズレを防止することができた。張架ローラー3についても同様の結果である。なお、無端ベルト4の位置ズレ量が1mm以下で飽和した場合を、位置ズレを防止できたと判定した。
【0082】
次に、高摩擦部と低摩擦部の摩擦係数の差Δμ(Δμ=μ1−μ2)と、境界線の傾斜角度θとの関係について説明する。図8(c)は、摩擦係数の差Δμと傾斜角度θとの関係を示すグラフである。図8(c)では、横軸に境界線と駆動ローラー2の回転軸線との傾斜角度θを示し、縦軸に摩擦係数の差Δμを示している。低摩擦部の摩擦係数μ2を一定として、高摩擦部の摩擦係数μ1及び傾斜角度θを変えて、その他の条件(回転速度)を同一として、無端ベルト4の幅方向の位置ズレをそれぞれ測定した。なお、無端ベルト4の位置ズレ量が1mm以下で飽和した場合を、位置ズレを防止できたと判定した。
【0083】
図8(c)では、無端ベルト4の位置ズレを防止できた範囲を示している。図8(c)に示されるように、Δμが大きくなるにつれて、位置ズレを防止できる傾斜角度θの範囲が広くなることが分かる。また、傾斜角度θが45°に近づくにつれて、Δμが低い値であっても無端ベルト4の位置ズレを防止でき、傾斜角度θが45°のときに、Δμが最も小さい値となった。張架ローラー3についても同様の結果である。
【0084】
次に、螺旋状の高摩擦部及び低摩擦部の条数と無端ベルトのズレ量との関係について説明する。図8(d)は、螺旋状の高摩擦部及び低摩擦部の条数と無端ベルトのズレ量との関係を示すグラフである。図8(d)では、横軸に条数を示し、横軸に無端ベルト4の幅方向におけるズレ量を示している。高摩擦部及び低摩擦部は、同一の形状、同一の寸法、同一の条数とした。高摩擦部及び低摩擦部が形成されていないものを条数0とした。条数を1〜5と変化させて、その他の条件(回転速度)を同一として、無端ベルト4の位置ズレを測定した。
【0085】
図8(d)に示されるように、条数が0である場合に、無端ベルト4のズレ量が最も大きかった。条数が1,2と増加するのに従い、無端ベルトのズレ量が減少し、条数が3以上である場合に、無端ベルト4の位置ズレは検出されなかった。張架ローラー3についても同様の結果である。
【0086】
次に、高摩擦部の幅の大きさと、無端ベルト4のズレ量との関係について説明する。駆動ローラー2の周方向において、高摩擦部と低摩擦部の割合を変化させて、その他の条件(傾斜角度θ=45、摩擦係数μ1,μ2、回転速度)を同一として、無端ベルト4の位置ズレを測定した。測定結果によれば、高摩擦部と低摩擦部の割合が変化しても、無端ベルト4のズレ量に変化はなく、同一の値であった。高摩擦部の幅の大きさは、無端ベルト4のズレ量に影響しないことが分かった。
【0087】
次に、駆動ローラー2の非形成領域の幅と、無端ベルトの皺の発生の有無との関係について説明する。無端ベルト4の幅を及び駆動ローラー2の回転軸線方向の長さを変化させず、駆動ローラー2の回転軸線方向における非形成領域24の長さ(幅)を変化させて、無端ベルト4に皺が発生するか否かを調べた。下記表1に調査結果を示す。
【表1】
【0088】
表1に示されている通り、非生成領域が形成されていない場合(0%)、非形成領域が無端ベルト4の全幅に対して20%の幅である場合には、無端ベルト4に皺が発生した。非形成領域が無端ベルト4の全幅に対して40%、60%、80%、100%である場合に、無端ベルト4に皺は発生しなかった。張架ローラー3についても同様の結果である。
【0089】
上述したように、測定を行った結果、無端ベルト4の幅方向の位置ズレを抑制するために好適な高摩擦部及び低摩擦部の条件について、以下に示す。
【表2】
【0090】
次に、他の実施形態に係るベルト駆動装置の駆動ローラーについて説明する。図9は、他の実施形態に係る駆動ローラーを示す概略図である。図9(a)に示されるように、非形成領域が設けられていない駆動ローラー41でもよい。駆動ローラー41では、回転軸線方向の全長にわたって、高摩擦部21及び低摩擦部22が設けられている。また、張架ローラーにおいても、回転軸線方向の全長にわたって、高摩擦部及び低摩擦部が設けられている構成でもよい。
【0091】
図9(b)では、平行四辺形を成す高摩擦部43が複数形成された駆動ローラー45が示されている。駆動ローラー45では、高摩擦部43以外の領域は、低摩擦部44として形成されている。平行四辺形の斜辺である境界線は、駆動ローラー45の回転軸線に対して傾斜して配置されている。また、張架ローラーにおいても、平行四辺形を成す高摩擦部が複数形成された構成でもよい。
【0092】
図9(c)では、楕円形を成す高摩擦部51が複数形成された駆動ローラー53が示されている。駆動ローラー53では、高摩擦部51以外の領域は、低摩擦部52として形成されている。楕円形の長軸は、駆動ローラー53の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、駆動ローラーの回転軸線方向の中心側から端部側に向かっている。高摩擦部51と低摩擦部52との境界線55は、楕円形を成すように配置されている。境界線55のうち、駆動ローラー53の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて、駆動ローラーの回転軸線方向の中心側から端部側に向かう部分によって、無端ベルト4に対して、幅方向の中心側に寄せる力が作用する。また、張架ローラーにおいても、楕円形を成す高摩擦部が複数形成された構成でもよい。
【0093】
図10は、中間転写ユニットを備えたカラー画像形成装置を示す概略図である。図10に示されるように、カラー画像形成装置61は、中間転写ユニット62として、ベルト駆動装置を備えている。
【0094】
中間転写ユニット62は、駆動ローラー2と、張架ローラー3と、無端ベルトである中間転写ベルト63と、二次転写ローラー64と、を有する。二次転写ローラー64は、記録媒体である用紙を駆動ローラー2に沿って移動する中間転写ベルト63に押し当てるように配置されている。カラー画像形成装置61は、感光体65、その他、画像形成装置として必要な様々な周知の構成を備えている。感光体65は、中間転写ベルト63の移動方向に沿って複数配置されている。
【0095】
感光体65上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト63に一次転写される。一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー64によって押し当てられた用紙に二次転写される。用紙に二次転写されたトナー像は、図示しない定着装置によって定着される。
【0096】
また、中間転写ユニット62には、中間転写ベルト63に付着し、残存するトナーを除去するためのクリーニングブレード(不図示)を備えている。クリーニングブレードは、中間転写ベルト63に押し当てられて、残存するトナーを除去する。
【0097】
このようなカラー画像形成装置61においても、ベルト駆動装置を備えているので、中間転写ベルト63の幅方向の位置ズレを防止することができる。また、駆動ローラー2及び張架ローラー3の外周面に凹凸が形成されていないので、中間転写ベルト63の波打ちなどの変形の発生が防止される。そのため、クリーニングブレードと中間転写ベルト63との密着性の低下を防止することができ、残存トナーを好適に除去することができ、画質の向上を図ることができる。
【0098】
図11は、用紙搬送ユニットを備えたモノクロ画像形成装置を示す概略図である。図11に示されるように、モノクロ画像形成装置71は、用紙搬送ユニット72として、ベルト駆動装置を備えている。
【0099】
用紙搬送ユニット72は、駆動ローラー2と、張架ローラー3と、無端ベルトである用紙搬送ベルト73と、を有する。モノクロ画像形成装置71は、感光体74、その他、画像形成装置として必要な様々な周知の構成を備えている。感光体74上に形成されたトナー像は、用紙搬送ベルト73によって搬送される用紙に転写される。用紙に転写されたトナー像は、図示しない定着装置によって定着される。
【0100】
このようなモノクロ画像形成装置71においても、ベルト駆動装置を備えているので、用紙搬送ベルト73の幅方向の位置ズレを防止することができる。また、駆動ローラー2及び張架ローラー3の外周面に凹凸が形成されていないので、用紙搬送ベルト73の波打ちなどの変形の発生が防止される。そのため、感光体74と用紙搬送ベルト73との密着性の低下を防止することができ、トナー像の転写を良好に行うことができ、画質の向上を図ることができる。
【0101】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0102】
上記の実施形態では、駆動ローラー2及び張架ローラー3を一つずつ備える構成としているが、駆動ローラー2を複数備える構成でもよく、張架ローラー3を複数備える構成でもよい。また、駆動ローラー2及び張架ローラー3は、異なる外径を有するものでもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、駆動ローラー及び張架ローラーの両方に、高摩擦部及び低摩擦部が形成されているが、高摩擦部及び低摩擦部は、駆動ローラーのみに形成されていてもよく、張架ローラーのみに形成されていてもよい。
【0104】
高摩擦部の形状は、帯状、平行四辺形、楕円形以外であってもよい。例えば、ひし形、台形、三角形などでもよい。その他の曲線などを有する形状でもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、樹脂を塗布することで高摩擦部を形成しているが、例えば、サンドブラストなどを施工することで、表面粗さを変えることで、摩擦係数を変化させて、高摩擦部及び低摩擦部を形成してもよい。また、コーティングを施工することで、摩擦係数を変化させて、高摩擦部及び低摩擦部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…ベルト駆動装置、2,41,45,53…駆動ローラー、3…張架ローラー(従動ローラー)、4…無端ベルト、21,31,43,51…高摩擦部、22,32,44,52…低摩擦部、23,33,46,55…境界線、24,34…非形成領域(非形成部)、25,35…形成領域(形成部)、25a,35a…第1領域、25b,35b…第2領域、25c,35c…第3領域、61…カラー画像形成装置、62…中間転写ユニット(ベルト駆動装置)、63…中間転写ベルト(無端ベルト)、71…モノクロ画像形成装置、72…用紙搬送ユニット(ベルト駆動装置)、73…用紙搬送ベルト(無端ベルト)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11