(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、車両用ドアロック装置の一実施形態について説明する。なお、以下では、車両の前後方向を「前後方向」といい、車両の高さ方向上方及び下方をそれぞれ「上方」及び「下方」という。
【0019】
図1に示すように、車両のボデーの側部に適宜の支持部材(図示略)を介して支持されるドアとしてのスライドドア10は、前後方向への移動に伴ってボデーに形成された乗降用の開口を開閉する。このスライドドア10内には、ボデー側と係合することでスライドドア10を全閉状態で保持する全閉ドアロック装置11及びスライドドア10を全閉状態又は半ドア状態(閉止状態)で保持するクローザ・リリース装置12が設置されるとともに、ボデー側と係合することでスライドドア10を全開状態で保持する全開ドアロック装置13が設置されている。
【0020】
クローザ・リリース装置12は、半ドア状態にあるスライドドア10を電動で全閉状態まで閉作動させる。また、クローザ・リリース装置12は、リリースケーブルC1を介してスライドドア10内に設置された周知のリモコン(リモートコントローラ)14に機械的に連係されるとともに、該リモコン14にオープンケーブルC2を介して機械的に連係されている。クローザ・リリース装置12は、その電動による解除操作力がリリースケーブルC1、リモコン14及びオープンケーブルC2を介して伝達されることで、スライドドア10の全閉状態での保持を解除する。
【0021】
なお、リモコン14は、スライドドア10の外面又は内面に露出する操作ハンドル15に接続されており、クローザ・リリース装置12は、操作ハンドル15の手動による解除操作力がオープンケーブルC2を介して伝達されることで、同様にスライドドア10の全閉状態での保持を解除する。
【0022】
また、リモコン14は、オープンケーブルC3,C4を介して全閉ドアロック装置11及び全開ドアロック装置13にそれぞれ機械的に連係されており、クローザ・リリース装置12の電動による解除操作力又は操作ハンドル15の手動による解除操作力を全閉ドアロック装置11及び全開ドアロック装置13に伝達する。このとき、全閉ドアロック装置11がスライドドア10の全閉状態での保持を解除し、あるいは全開ドアロック装置13がスライドドア10の全開状態での保持を解除する。
【0023】
図2に示すように、クローザ・リリース装置12は、スライドドア10の後端面に沿って広がってこれに締結される、例えば金属板からなるベースプレート21を有するとともに、該ベースプレート21に設置されたラッチ機構22を有する。このラッチ機構22は、ベースプレート21に軸支された互いに平行な一対の回転軸23,24にそれぞれ一体回動するように連結されたラッチ25及びポール26を有する。
【0024】
ラッチ25には、略U字状の係合凹部25aが形成されている。そして、ラッチ25は、係合凹部25aを挟んでその一側及び他側(
図2において反時計回転方向及び時計回転方向の側)にそれぞれ第1爪部25b及び第2爪部25cを形成する。また、ラッチ25は、第1爪部25bの長手方向中間部から突出する第3爪部25dを形成する。周方向において、第1爪部25bの先端部の第2爪部25cに対向する端面及び第3爪部25dの第1爪部25bに対向する端面は、フルラッチ係合面25e及びハーフラッチ係合面25fをそれぞれ形成する。このラッチ25は、ベースプレート21に一端の掛止されたラッチ付勢ばね(図示略)の他端が掛止されることで図示時計回転方向に回動する側に付勢されるとともに、該ベースプレート21に設置されたラッチストッパ(図示略)に当接することで当該方向への回動が規制され、所定の初期回動位置(以下、「アンラッチ位置」という)に保持される。なお、ラッチ25は、回転軸23を挟んで第3爪部25dの反対側にアーム状の連動片25gを突出する。
【0025】
一方、ポール26は、回転軸24からその径方向一側(
図2の左側)に延出する略鉤爪状の係合端部26aを形成する。このポール26は、ポール付勢ばね(図示略)により図示反時計回転方向に回動する側、即ち係合端部26aを図示下側に移動させる側に付勢され、所定の初期回動位置に保持される。
【0026】
ここで、ラッチ機構22の基本的な動作について説明する。
スライドドア10が開放されている状態では、アンラッチ位置に保持されるラッチ25は、ボデーに固着されたストライカ29に係合凹部25aを対向させる。つまり、係合凹部25aは、スライドドア10の閉作動に伴うストライカ29の進入経路を開放している。また、所定の初期回動位置に保持されるポール26は、係合端部26aを第3爪部25dの上方に配置する。なお、このときのラッチ機構22の状態をアンラッチ状態(解除状態)という。
【0027】
次に、スライドドア10の閉作動に伴い、係合凹部25a内にストライカ29が進入したとする。この際、ストライカ29により係合凹部25aの内壁面が押圧されることで、ラッチ25は、ラッチ付勢ばねに抗して図示反時計回転方向に回動し、ハーフラッチ係合面25fに係合端部26aが係止されることで回り止めされる。このとき、スライドドア10は、係合凹部25aにおいてストライカ29と係合してこれを抜け止めする半ドア状態にある。このときのラッチ機構22の状態をハーフラッチ状態といい、ラッチ25の回動位置をハーフラッチ位置という。
【0028】
続いて、スライドドア10の更なる閉作動に伴い、係合凹部25a内にストライカ29が更に進入したとする。この際、ストライカ29により係合凹部25aの内壁面が押圧されることで、ラッチ25は、ラッチ付勢ばねに抗して図示反時計回転方向に更に回動し、
図2に示すように、フルラッチ係合面25eに係合端部26aが係止されることで回り止めされる。このとき、スライドドア10は、係合凹部25aにおいてストライカ29と係合してこれを抜け止めする全閉状態にある。このときのラッチ機構22の状態をフルラッチ状態(係合状態)といい、ラッチ25の回動位置をフルラッチ位置という。
【0029】
また、ハーフラッチ状態又はフルラッチ状態において、ポール26がポール付勢ばねに抗して図示時計回転方向に回動すると、係合端部26aによるハーフラッチ係合面25f又はフルラッチ係合面25eの係止が解除される。このとき、ラッチ25は、例えばシール部材の反発力などでスライドドア10が開作動し始めることに伴い、係合凹部25a内から退出するストライカ29により係合凹部25aの内壁面が押圧されることで、図示時計回転方向に回動する。そして、スライドドア10は、係合凹部25aにおけるストライカ29との係合を解除して開放可能となる。
【0030】
なお、
図3に示すように、クローザ・リリース装置12は、例えばロータリスイッチからなるラッチスイッチ80を有する。このラッチスイッチ80は、ラッチ25の回動位置(アンラッチ位置等)を検出するためのものである。また、クローザ・リリース装置12は、回転軸24に一体回動するように連結されたポール駆動レバー27を有する。ポール駆動レバー27の先端部は、上方に向かって凸になるように湾曲されて被押圧部27aを形成する。なお、被押圧部27aが下方に移動するポール駆動レバー27の回動方向は、前述のラッチ25との係合状態を解除するポール26の回動方向に一致している。
【0031】
ベースプレート21には、車両の前方に向かって広がる、例えば金属板からなるベースプレート30が締結されている。ベースプレート30は、ベースプレート21とは別にスライドドア10に締結されている。このベースプレート30の前方下部には、図示しないECU(電子制御装置)により駆動制御されるアクチュエータ31が設置されている。このアクチュエータ31は、電動モータ32と、該電動モータ32の回転軸の回転を減速する減速機構33とを有する。なお、減速機構33の出力軸には、ピニオン33aが固着されている。
【0032】
また、ベースプレート30には、ピニオン33aの斜め後上方で該ピニオン33aの軸心と略平行に中心線の延びる支持軸としての略円柱状の第1支持ピン34が固着されるとともに、該第1支持ピン34には、例えば金属板からなる作動ギヤとしてのアクティブレバー35が軸支されている。すなわち、アクティブレバー35は、第1支持ピン34が貫通してこれに軸支される略円形の支持部36を有する。また、アクティブレバー35は、第1支持ピン34を中心とする径方向において支持部36の外側に配置される略円弧状の連結部37を有するとともに、該連結部37の第1支持ピン34を中心とする周方向一側(図示時計回転方向の側)の端部及び支持部36同士を第1支持ピン34を中心とする径方向に接続する接続部38を有する。そして、アクティブレバー35は、支持部36の外周部、連結部37の内周部及び接続部38の側壁により、第1支持ピン34を中心とする周方向他側(図示反時計回転方向の側)に開口する略扇状の溝部35aを形成する。
【0033】
図4に併せ示すように、アクティブレバー35は、第1支持ピン34を中心とする周方向に並んで連結部37の外周部に第1ギヤ部37a及び第1カム部37bを有する。第1ギヤ部37aは、複数の外歯からなり、アクチュエータ31のピニオン33aに噛合する。従って、アクティブレバー35は、ピニオン33aが回転することでその回転方向に応じた方向に第1支持ピン34の周りを回動する。また、アクティブレバー35は、その回動規定範囲が予め設定されており、第1ギヤ部37aの終端がピニオン33aに到達する等で回動規制される。第1ギヤ部37aの周方向中間部でピニオン33aに噛合する
図4に示すアクティブレバー35の回動位置を含む回動規定範囲の中間部を「中立範囲」という。
【0034】
第1カム部37bは、第1支持ピン34を中心とする周方向に延びる円弧面状に成形されており、その直径は第1ギヤ部37aの歯先円及び歯元円の両直径の中間の長さに設定されている。また、アクティブレバー35は、第1ギヤ部37a及び第1カム部37bの境界部に配置された案内カム37cを有する。この案内カム37cは、第1ギヤ部37aの第1支持ピン34を中心とする周方向他側(図示反時計回転方向の側)の端の外歯である第1端歯37dと第1カム部37bとを滑らかに接続する外向きに凸の略弓形に成形されている。
【0035】
なお、連結部37の接続部38側寄りの内周部には、複数の内歯からなる内歯車部37eが形成されている。また、連結部37の内周部には、基本的に内歯車部37e(内歯)の歯元円の径と同等の内径を有して内歯車部37eから第1支持ピン34を中心とする周方向他側(図示反時計回転方向の側)に延びる解放部37fが形成されている。より厳密には、解放部37fの内歯車部37eから離間する先端部は、第1支持ピン34を中心とする径方向の寸法が徐々に縮小されるように平面状に成形されている。さらに、
図3に示すように、アクティブレバー35は、支持部36から第1支持ピン34を中心とする斜め後下方の径方向に延出片39を延出する。この延出片39の第1支持ピン34から離間する先端部は、前方に転向して接続部38の近傍で連結部37に接続されている。
【0036】
ベースプレート30には、アクティブレバー35の溝部35a内で第1支持ピン34の中心線と略平行に中心線の延びる略段付き円柱状の第2支持ピン40が固着されるとともに、該第2支持ピン40には、例えば金属板からなるリリースレバー41が軸支されている。すなわち、リリースレバー41は、第2支持ピン40が貫通してこれに軸支される略円形のレバー支持部42を有する。このレバー支持部42も、アクティブレバー35の溝部35a内に位置している。レバー支持部42の外周部には、
図3における斜め前下方の角度位置で複数の外歯からなるギヤ部42aが形成されており、該ギヤ部42aにおいてアクティブレバー35の内歯車部37eに噛合可能となっている。
【0037】
また、リリースレバー41は、レバー支持部42から第2支持ピン40を中心とする斜め後上方の径方向に略弓形のレバー突片43を延出する。なお、リリースレバー41には、レバー支持部42及びレバー突片43の境界部に略円弧状の段差41aが設定されている。レバー突片43は、段差41aを介することでレバー支持部42に対しアクティブレバー35の板厚分だけ紙面に直交する手前側にずれており、その長手方向中間部において連結部37と干渉することなくこれを乗り越える。
【0038】
リリースレバー41は、ベースプレート30に一端の掛止された、例えばコイルスプリングからなる付勢部材90の他端が掛止されることで図示時計回転方向に回動する側に付勢されるとともに、ベースプレート30に形成されたストッパ片30aに当接することで当該方向への回動が規制される。このとき、リリースレバー41は、所定の初期回動位置に保持される。
【0039】
図4に併せ示すように、リリースレバー41が初期回動位置にあるとき、該リリースレバー41は、中立範囲にあるアクティブレバー35の内歯車部37eの図示反時計回転方向の側に先行してギヤ部42aを配置している。そして、
図5への変化で示すように、アクティブレバー35が図示反時計回転方向に回動すると、所定の空走区間を経てギヤ部42aに内歯車部37eが噛合する。これにより、アクティブレバー35の図示反時計回転方向への回動に伴って、リリースレバー41が付勢部材90の付勢力に抗して図示反時計回転方向に回動し始める。なお、レバー支持部42は、基本的にギヤ部42a(外歯)の歯先円の径と同等の外径を有するものの、連結部37には解放部37fが形成されていることでこれと干渉することはない。
【0040】
図3に示すように、リリースレバー41(レバー突片43)の先端には、リリースケーブルC1の端末が掛止されており、リリースレバー41が初期回動位置から回動することでリリースケーブルC1をクローザ・リリース装置12側に引っ張るように構成されている。つまり、クローザ・リリース装置12の電動による解除操作力は、リリースレバー41が初期回動位置から回動することで発生する。
【0041】
ベースプレート30には、第1支持ピン34の上方でその中心線と略平行に中心線の延びる略円柱状の支持ピン45が固着されるとともに、該支持ピン45には、例えば金属板からなるオープンレバー46が軸支されている。このオープンレバー46は、支持ピン45を中心とする上方の径方向に略弓形の第1レバー突片47を延出するとともに、支持ピン45を中心とする下方の径方向にアーム状の第2レバー突片48を延出する。そして、第1レバー突片47の先端は、ポール駆動レバー27の被押圧部27aの上方で下方に向かって凸になるように湾曲されて押圧部47aを形成する。
【0042】
オープンレバー46は、第2レバー突片48の先端においてオープンケーブルC2の端末が掛止されている。従って、オープンケーブルC2がリモコン14側に引っ張られると、オープンレバー46は、支持ピン45を中心に図示反時計回転方向に回動する。このとき、オープンレバー46は、押圧部47aにおいてポール駆動レバー27の被押圧部27aを下方に押圧することで、該被押圧部27aが下方に移動するようにポール駆動レバー27が回動する。これにより、ポール駆動レバー27と一体回動するポール26がラッチ25との係合状態を解除する。つまり、クローザ・リリース装置12の電動による解除操作力又は操作ハンドル15の手動による解除操作力は、オープンケーブルC2がリモコン14側に引っ張られてオープンレバー46が回動するかたちでクローザ・リリース装置12に伝達される。ポール26がラッチ25との係合状態の解除を完了する
図5に示すアクティブレバー35の回動位置を「リリース位置」という。
【0043】
アクティブレバー35の延出片39の先端部には、第1支持ピン34の中心線と略平行に中心線の延びる略円柱状の支持ピン50が固着されるとともに、該支持ピン50には、例えば金属板からなるクローザレバー51が軸支されている。このクローザレバー51は、支持ピン50を中心とする後方の径方向に延びるレバー突片52を有する。このレバー突片52の先端は、紙面に直交する手前側に起立して略L字状の押上壁52aを形成する。クローザレバー51は、適宜の保持部材により実質的にアクティブレバー35と一体回動するように保持されており、該アクティブレバー35が中立範囲にあるときに、ハーフラッチ位置にあるラッチ25の連動片25gの下方に押上壁52aを配置する。従って、アクティブレバー35と共にクローザレバー51が図示時計回転方向に回動すると、押上壁52aにより連動片25gの押圧されるラッチ25がハーフラッチ位置からフルラッチ位置へと回動する。このとき、半ドア状態にあるスライドドア10が全閉状態になることは既述のとおりである。なお、アクティブレバー35が中立範囲から図示時計回転方向に回動するとき、レバー支持部42を解放部37fが移動することで、リリースレバー41が初期回動位置のままであることはいうまでもない。ラッチ機構22によるスライドドア10の全閉状態での保持が完了する
図6に示すアクティブレバー35の回動位置を「クローズ位置」という。
【0044】
図3に示すように、ベースプレート30には、ピニオン33aの上方で、例えばロータリスイッチからなる回転検出部材としての中立スイッチ70が設置されている。この中立スイッチ70は、回路基板及び該回路基板との電気的な接続状態を切り替える可動切片を内蔵しており、該可動切片と一体回動する操作軸70aの軸線は、ピニオン33aの軸線と略平行に延びている。そして、操作軸70aには、例えば樹脂材からなる検出ギヤとしての略扇状の中立スイッチレバー71が一体回動するように連結されている。
【0045】
図4に併せ示すように、中立スイッチレバー71は、操作軸70aを中心とする周方向に並んでその外周部に第2ギヤ部71a及び第2カム部71bを有する。つまり、中立スイッチレバー71は、いわゆる欠歯ギヤ形状を呈する。第2ギヤ部71aは、複数の外歯からなり、アクティブレバー35の第1ギヤ部37aに噛合可能となっている。従って、中立スイッチレバー71は、第1ギヤ部37a及び第2ギヤ部71aが噛合状態にあるとき、アクティブレバー35が回動することでその回動方向に応じた方向に操作軸70aの周りを回動する。アクティブレバー35の回動に伴って中立スイッチレバー71と共に操作軸70aの回動する中立スイッチ70は、アクティブレバー35が中立範囲にあることを検出する。つまり、中立スイッチ70は、アクティブレバー35が中立範囲にあるか否かによって前述の電気的な接続状態が切り替わる。
【0046】
第2カム部71bは、円弧面状に成形されており、アクティブレバー35の第1カム部37bに当接可能となっている。
図6に併せ示すように、第2カム部71bは、周方向における全範囲が第1カム部37bに当接する当接状態にあるときに、第1支持ピン34を中心とする周方向に延びる。従って、中立スイッチレバー71は、第2カム部71bにおいて操作軸70aを中心とする径方向内側に第1カム部37bが突出することで回動規制される。厳密には、
図7に示すように、アクティブレバー35の図示時計回転方向への回動(クローズ位置に向かう回動)に伴い、第1ギヤ部37a及び第2ギヤ部71aの噛合が完全に外れて第1カム部37bが第2カム部71bに乗り上げた段階で中立スイッチレバー71の回動が規制される。一方、アクティブレバー35は、第2カム部71bに第1カム部37bを摺動させることで中立スイッチレバー71に対して回動可能である。
【0047】
なお、中立スイッチレバー71には、第2ギヤ部71a及び第2カム部71bの境界部に配置された係入溝71cが形成されている。この係入溝71cには、第1ギヤ部37a(アクティブレバー35)の第1端歯37dが係入可能となっている。
【0048】
図9は、アクティブレバー35に連動する中立スイッチレバー71の回動範囲及び対応する中立スイッチ70の電気的な接続状態を示す説明図である。同図に示すように、中立スイッチレバー71の回動範囲の角度は、約90°に設定されており、アクティブレバー35の中立範囲に相当する回動範囲(以下、便宜的に中立スイッチレバー71の中立範囲という)に中立スイッチレバー71が位置するときに中立スイッチ70がオフ状態になる。また、アクティブレバー35が中立範囲をリリース位置又はクローズ位置側に超えた回動規定範囲に相当する回動範囲に中立スイッチレバー71が位置するときに中立スイッチ70がオン状態になる。ECUは、このような中立スイッチ70のオン・オフ状態に基づいて、アクティブレバー35が中立範囲にあるか否かを判断する。アクティブレバー35が中立範囲をクローズ位置側に超えた回動規定範囲に相当する中立スイッチレバー71の回動範囲の終端が、第1カム部37bが第2カム部71bに乗り上げて回動規制される中立スイッチレバー71の回動位置であることはいうまでもない。
【0049】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、ラッチ機構22がハーフラッチ状態にあり、
図4に示すように、アクティブレバー35が中立範囲にあるとする。この状態で、ECUは、操作軸70aが中立スイッチレバー71と一体回動する中立スイッチ70が中立範囲にあることを検知する。これに基づき、ECUによりアクチュエータ31を駆動してアクティブレバー35を図示時計回転方向に回動させる。そして、回動規定範囲でアクティブレバー35が回動する際、第1ギヤ部37a及び第2ギヤ部71aの噛合状態にあれば、その回動方向に応じた回動方向(ここでは図示反時計回転方向)で中立スイッチレバー71が回動する。また、クローズ位置に向かうアクティブレバー35の回動に伴って第1カム部37b及び第2カム部71bが当接状態になると、中立スイッチレバー71は、第2カム部71bにおいて操作軸70aを中心とする径方向内側に第1カム部37bが突出することで回動規制される。一方、アクティブレバー35は、第2カム部71bに第1カム部37bを摺動させることで中立スイッチレバー71に対して回動可能である。従って、アクティブレバー35は、中立スイッチレバー71を残置したまま第2カム部71bに第1カム部37bを摺動させつつクローズ位置に向かって回動する。このように、アクティブレバー35がクローズ位置に到達するまで中立スイッチレバー71が回動し続ける必要がなくなることで、その移動領域が縮小される。なお、アクチュエータ31の駆動は、例えばラッチスイッチ80によりラッチ25がフルラッチ位置にあることが検出されることでECUにより停止される。
【0050】
その後、アクティブレバー35が中立範囲に向かって回動する際、当初は、アクティブレバー35は、中立スイッチレバー71を残置したまま第2カム部71bに第1カム部37bを摺動させつつ回動する。そして、アクティブレバー35が中立範囲に向かって更に回動すると、第1ギヤ部37aの第1端歯37dが係入溝71cに到達してこれに係入しその内壁面を押圧することで中立スイッチレバー71が回動を始めるとともに、第1ギヤ部37aが第2ギヤ部71aに噛合することで中立スイッチレバー71が回動する。なお、アクチュエータ31の駆動は、中立スイッチ70によりアクティブレバー35が中立範囲にあることが検出されることでECUにより停止される。
【0051】
特に、アクティブレバー35がクローズ位置に向かって回動する際、第1カム部37bが第2カム部71bに乗り上げることに先立って(
図7参照)、
図8に示すように、案内カム37cにより第2カム部71bが押圧される。そして、第1ギヤ部37a及び第2ギヤ部71aの噛合状態から第1カム部37b及び第2カム部71bの当接状態へと切り替わる最後まで第1ギヤ部37aと噛合する第2ギヤ部71aの外歯である第2端歯71dの歯先が第1ギヤ部37aの回動軌跡から離間されるようになっている。従って、その後の中立範囲に向かうアクティブレバー35の回動に伴って第1端歯37dが係入溝71cに係入する際、予め第2端歯71dの歯先が第1ギヤ部37aの回動軌跡から離間されていることで、第1端歯37dが第2端歯71dと干渉することが抑制される。なお、第1端歯37dが、第1ギヤ部37a及び第2ギヤ部71aの噛合状態から第1カム部37b及び第2カム部71bの当接状態へと切り替わる最後まで第2ギヤ部71aと噛合する第1ギヤ部37aの外歯であることはいうまでもない。
【0052】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、アクティブレバー35がクローズ位置に到達するまで中立スイッチレバー71が回動し続ける必要がなくなることで、その移動領域が縮小される分、構成部品の配置の自由度をより向上させることができる。
【0053】
(2)本実施形態では、アクティブレバー35がクローズ位置に向かって回動する際、案内カム37cにより第2カム部71bが押圧されることで、第2ギヤ部71aの第2端歯71dの歯先が第1ギヤ部37aの回動軌跡から離間される。そして、アクティブレバー35が中立範囲に向かって回動する際、第1ギヤ部37aの第1端歯37dが係入溝71cに到達してこれに係入することで中立スイッチレバー71が回動し始めるとともに、第1ギヤ部37aが第2カム部71bに噛合することでアクティブレバー35の回動に伴って中立スイッチレバー71が回動する。特に、第1端歯37dが係入溝71cに係入する際、予め第2端歯71dの歯先が第1ギヤ部37aの回動軌跡から離間されていることで、第1端歯37dが第2端歯71dと干渉することを抑制することができ、第1ギヤ部37a及び第2ギヤ部71aの噛合状態へとより円滑に移行することができる。また、案内カム37cによる前述の動作は、第2カム部71bを押圧するのみの極めて簡易な構造で実現していることで、例えば経年劣化や環境変化などの影響を受けにくくすることができる。
【0054】
(3)本実施形態では、連結部37の接続部38から離間する側の先端部は、解放部37fの平面形状により、第1支持ピン34を中心とする径方向の寸法が徐々に縮小されていることで、アクティブレバー35をより小型化することができる。なお、連結部37の当該先端部は、第1カム部37bにおいて中立スイッチレバー71を回動規制し得る強度が確保されていればよいため、これによって強度不足に陥ることはない。
【0055】
(4)本実施形態では、中立スイッチレバー71の移動領域、即ち操作軸70aの移動領域が縮小されることで、例えば操作軸70aが過剰に回動してアクティブレバー35の中立範囲以外で中立スイッチ70のオン・オフ状態が切り替わることを抑制できる。つまり、中立スイッチレバー71と共に回動する操作軸70aが中立スイッチ70の検出可能範囲を超えることを回避できる。
【0056】
(5)本実施形態では、第1ギヤ部37a及び第2ギヤ部71aの噛合の外れた状態にあるとき、第2カム部71bに当接する第1カム部37bによって中立スイッチレバー71を回動規制・保持することができ、例えばベースプレート30に対して中立スイッチレバー71を保持するための凹部等を追加加工しなくてもよい。
【0057】
(6)本実施形態では、アクティブレバー35及び中立スイッチレバー71間の回転伝達を、それらの重なる板厚の範囲で噛合可能な第1ギヤ部37a及び第2ギヤ部71aによって実現した。従って、例えば中立スイッチレバーにその板厚方向に適宜のフランジ状の被押圧部を起立させて該被押圧部をアクティブレバーで押圧して回転伝達する場合のように、中立スイッチレバーに対する被押圧部の成形加工を行わなくてもよい。これにより、製造工数及びコストを削減することができる。
【0058】
あるいは、例えば中立スイッチレバーにその板厚方向に突出するピン状の被押圧部を固着して該被押圧部をアクティブレバーで押圧して回転伝達する場合のように、中立スイッチレバーに対し被押圧部を別設しなくてもよい。これにより、部品点数及びコストを削減することができる。
【0059】
また、中立スイッチレバー71にフランジ状やピン状の被押圧部を設ける必要がないため、該中立スイッチレバー71をより薄型化することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0060】
・前記実施形態において、ラッチ機構22によりスライドドア10を全閉状態で保持させるアクチュエータ31の駆動は、例えばピニオン33aが第1ギヤ部37aの終端に到達して回転不能になることによるモータロック(モータ電流の急増等)が検出されることでECUにより停止されてもよい。
【0061】
・前記実施形態において、係合状態にあるラッチ機構22を解除するアクチュエータ31の駆動は、例えばピニオン33aが第1ギヤ部37aの終端に到達して回転不能になることによるモータロック(モータ電流の急増等)が検出されることでECUにより停止されてもよい。
【0062】
・前記実施形態において、アクティブレバー35及び中立スイッチレバー71の板厚は、互いに同等であってもよいし、異なっていてもよい。
・前記実施形態において、連結部37の解放部37fの内歯車部37eから離間する先端部は平面形状に限定されるわけではなく、例えば段付形状であってもよい。
【0063】
・前記実施形態において、中立スイッチ70は、例えばロータリーエンコーダやホールセンサなどであってもよい。
・前記実施形態において、アクティブレバー35の案内カム37cを省略してもよい。
【0064】
・前記実施形態においては、クローザ・リリースの両機能を有することを前提に、アクティブレバー35が中立範囲からクローズ位置に向かって回動する途中で中立スイッチレバー71の回動を規制するようにした。これに代えて、若しくはこれに加えて、アクティブレバー35が中立範囲からリリース位置に向かって回動する途中で中立スイッチレバー71の回動を規制するようにしてもよい。
【0065】
・前記実施形態において、クローザ・リリース装置12等によるリリース機能を省略してもよい。この場合であっても、アクティブレバー35が中立範囲からクローズ位置に向かって回動する途中で中立スイッチレバー71の回動を規制するようにしてもよい。
【0066】
・前記実施形態において、クローザ・リリース装置12等によるクローザ機能を省略してもよい。この場合、アクティブレバー35が中立範囲からリリース位置に向かって回動する途中で中立スイッチレバー71の回動を規制すればよい。
【0067】
・本発明は、例えばスイング式のドアに適用してもよいし、車両の後部に配置されるバックドアに適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0068】
(イ)車両のドアを閉止状態に保持可能なラッチ機構と、
回動規定範囲で支持軸の周りに回動自在であり、電動モータに駆動連結されて前記ラッチ機構に連係され、中立範囲から前記回動規定範囲の一端側であるクローズ位置に向かって一方向に回動することで半ドア状態にある前記ドアを全閉状態で保持するように前記ラッチ機構を作動させ、前記中立範囲から前記回動規定範囲の他端側であるリリース位置に向かって他方向に回動することで前記ドアの全閉状態での保持を解除するように前記ラッチ機構を作動させる作動ギヤであって、前記支持軸を中心とする周方向に並んで外周部に第1ギヤ部及び当該周方向に沿って延びる第1カム部を有する作動ギヤと、
前記支持軸と平行な操作軸を有し、前記作動ギヤが前記中立範囲にあることを検出する回転検出部材と、
前記操作軸に一体回動するように連結され、該操作軸を中心とする周方向に並んで外周部に前記第1ギヤ部と噛合可能な第2ギヤ部及び前記リリース位置に向かう前記作動ギヤの回動に伴って前記第1カム部と当接可能であって該第1カム部と当接状態にあるときに前記支持軸を中心とする周方向に沿って延びる第2カム部を有する検出ギヤとを備えた、車両用ドアロック装置。
【0069】
この構成によれば、前記回動規定範囲で前記作動ギヤが回動する際、前記第1ギヤ部及び前記第2ギヤ部の噛合状態にあれば、その回動方向に応じた回動方向で前記検出ギヤが回動する。そして、前記操作軸が前記検出ギヤと一体回動する前記回転検出部材により、前記作動ギヤが前記中立範囲にあることが検出される。また、前記リリース位置に向かう前記作動ギヤの回動に伴って前記第1カム部及び前記第2カム部が当接状態になると、前記検出ギヤは、前記第2カム部において前記操作軸を中心とする径方向内側に前記第1カム部が突出することで回動規制される。一方、前記作動ギヤは、前記第2カム部に前記第1カム部を摺動させることで前記検出ギヤに対して回動可能である。従って、前記作動ギヤは、前記検出ギヤを残置したまま前記第2カム部に前記第1カム部を摺動させつつ前記リリース位置に向かって回動可能である。このように、前記作動ギヤが前記リリース位置に到達するまで前記検出ギヤが回動し続ける必要がなくなることで、その移動領域が縮小される分、構成部品の配置の自由度をより向上させることができる。