特許第6404689号(P6404689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404689
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/24 20140101AFI20181001BHJP
   E05B 83/40 20140101ALI20181001BHJP
   E05B 81/20 20140101ALI20181001BHJP
   E05B 79/08 20140101ALI20181001BHJP
   E05B 81/66 20140101ALI20181001BHJP
   E05B 81/36 20140101ALI20181001BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   E05B85/24
   E05B83/40
   E05B81/20 B
   E05B79/08
   E05B81/66
   E05B81/36
   B60J5/00 H
   B60J5/00 N
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-238213(P2014-238213)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-98613(P2016-98613A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100827
【氏名又は名称】アイシン機工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高柳 進介
(72)【発明者】
【氏名】町田 利雄
【審査官】 桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−058572(JP,U)
【文献】 実開昭60−137067(JP,U)
【文献】 特開2003−301647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00−85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボデーに一側の端部が固定される一対の固定棒及びそれら両固定棒の他側の端部同士を接続する接続棒を一体的に有するストライカに係合可能であり、前記ボデーに形成された開口を開閉するドアに回動自在に連結され、該ドアの閉作動に伴い前記両固定棒のうちの前記ドアに近い側の前記固定棒である第1固定棒に押圧されて、回動しつつ該第1固定棒と噛み合って前記ドアを閉状態に保持可能なラッチと、
前記第1固定棒と噛み合った前記ラッチに係止して前記ラッチの前記第1固定棒との噛み合いを解除する方向への回動を規制するポールと、
前記ラッチに一体に形成され、前記第1固定棒と噛み合う回動方向で、前記両固定棒のうちの前記ドアから遠い側の前記固定棒である第2固定棒に当接可能なストッパ片と
電動モータに駆動連結されて前記ドアに回動自在に連結され、回動に伴い前記ラッチを押圧することで、前記ドアの半ドア状態で前記第1固定棒と噛み合う前記ラッチを回動させて全閉状態になるように前記ドアを閉作動させるクローザレバーとを備え
前記ストッパ片は、前記ラッチの前記クローザレバーにより押圧される被押圧部として兼用された、車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置は、車両のボデー側に設けられたストライカと、車両のドア側に設けられストライカと係合してドアを半ドア状態又は全閉状態で保持するラッチ機構とを備えて構成される。このラッチ機構は、ドアに固定されるベースプレートに回動自在に連結されるラッチ及びポールを有しており、ドアの閉作動に伴いストライカに押圧されるラッチが回動しつつストライカと噛み合うとともに、当該噛み合いの状態にあるラッチをポールで回り止めすることでドアを保持する。
【0003】
なお、例えばドアの強閉時などでストライカにラッチが大荷重で押圧されると、該ラッチが本来の回動範囲(ドアを保持可能な回動範囲)を超えて回動して周辺部品と干渉する可能性がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、ラッチの前述の過回動と止めるストッパを設けることが提案されている。すなわち、ベースプレートの端部には、ラッチの回転軌跡内の所定位置に介在する屈曲部(ストッパ)が形成されている。これにより、ラッチの回動は、その一部が屈曲部に当接することにより止められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−129810号公報(第12図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、ベースプレートに曲げ加工や絞り加工をして屈曲部(ストッパ)を成形する必要があり、製造工数の増大を余儀なくされている。
本発明の目的は、製造工数をより削減することができる車両用ドアロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用ドアロック装置は、車両のボデーに一側の端部が固定される一対の固定棒及びそれら両固定棒の他側の端部同士を接続する接続棒を一体的に有するストライカに係合可能であり、前記ボデーに形成された開口を開閉するドアに回動自在に連結され、該ドアの閉作動に伴い前記両固定棒のうちの前記ドアに近い側の前記固定棒である第1固定棒に押圧されて、回動しつつ該第1固定棒と噛み合って前記ドアを閉状態に保持可能なラッチと、前記第1固定棒と噛み合った前記ラッチに係止して前記ラッチの前記第1固定棒との噛み合いを解除する方向への回動を規制するポールと、前記ラッチに一体に形成され、前記第1固定棒と噛み合う回動方向で、前記両固定棒のうちの前記ドアから遠い側の前記固定棒である第2固定棒に当接可能なストッパ片と、電動モータに駆動連結されて前記ドアに回動自在に連結され、回動に伴い前記ラッチを押圧することで、前記ドアの半ドア状態で前記第1固定棒と噛み合う前記ラッチを回動させて全閉状態になるように前記ドアを閉作動させるクローザレバーとを備え、前記ストッパ片は、前記ラッチの前記クローザレバーにより押圧される被押圧部として兼用される。
【0008】
この構成によれば、前記ドアの閉作動時、前記第1固定棒に押圧される前記ラッチが回動しつつ前記第1固定棒と噛み合うとともに、該噛み合った前記ラッチに前記ポールが係止して前記ラッチの前記第1固定棒との噛み合いを解除する方向への回動を規制する。これにより、前記ドアが閉状態に保持される。また、例えば前記ドアの強閉時などで前記第1固定棒に大荷重で押圧される前記ラッチが本来の回動範囲(ドアを保持可能な回動範囲)を超えて回動しようとすると、前記ストッパ片が前記第2固定棒に当接することで回動が規制される。特に、前記ストッパ片は、前記第1固定棒において前記ラッチと噛み合う前記ボデーに既存の前記ストライカの前記第2固定棒に当接可能であればよい。このため、前記ラッチを回動規制すべく前記ストッパ片の当接可能な部位を別設しなくてもよく、製造工数をより削減することができる。
【0010】
この構成によれば、前記ドアの半ドア状態で、前記電動モータを駆動して前記クローザレバーを回動させると、該クローザレバーにより前記被押圧部の押圧される前記ラッチが回動することで、前記全閉状態になるように前記ドアが閉作動するとともに、前記全閉状態で前記第1固定棒と噛み合った前記ラッチに前記ポールが係止して前記ラッチの前記第1固定棒との噛み合いを解除する方向への回動を規制する。これにより、前記ドアが全閉状態で保持される。特に、前記ストッパ片は、前記被押圧部として兼用されることで、例えば前記被押圧部とは独立で前記ラッチに形成する場合に比べて該ラッチの形状をより簡素化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、製造工数をより削減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用されるスライドドアの概念図。
図2】本発明の一実施形態のラッチ機構を示す正面図。
図3】同実施形態を示す側面図。
図4】アクティブレバーが中立位置にある状態を示す側面図。
図5】アクティブレバーがクローズ位置にある状態を示す側面図。
図6】同実施形態のラッチ機構の動作を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、車両用ドアロック装置の一実施形態について説明する。なお、以下では、車両の前後方向を「前後方向」といい、車両の高さ方向上方及び下方をそれぞれ「上方」及び「下方」という。
【0014】
図1に示すように、車両のボデーの側部に適宜の支持部材(図示略)を介して支持されるドアとしてのスライドドア10は、前後方向への移動に伴ってボデーに形成された乗降用の開口を開閉する。このスライドドア10内には、ボデー側と係合することでスライドドア10を全閉状態で保持する全閉ドアロック装置11及びスライドドア10を全閉状態又は半ドア状態で保持するクローザ・リリース装置12が設置されるとともに、ボデー側と係合することでスライドドア10を全開状態で保持する全開ドアロック装置13が設置されている。
【0015】
クローザ・リリース装置12は、半ドア状態にあるスライドドア10を電動で全閉状態まで閉作動させる。また、クローザ・リリース装置12は、リリースケーブルC1を介してスライドドア10内に設置された周知のリモコン(リモートコントローラ)14に機械的に連係されるとともに、該リモコン14にオープンケーブルC2を介して機械的に連係されている。クローザ・リリース装置12は、その電動による解除操作力がリリースケーブルC1、リモコン14及びオープンケーブルC2を介して伝達されることで、スライドドア10の全閉状態での保持を解除する。
【0016】
なお、リモコン14は、スライドドア10の外面又は内面に露出する操作ハンドル15に接続されており、クローザ・リリース装置12は、操作ハンドル15の手動による解除操作力がオープンケーブルC2を介して伝達されることで、同様にスライドドア10の全閉状態での保持を解除する。
【0017】
また、リモコン14は、オープンケーブルC3,C4を介して全閉ドアロック装置11及び全開ドアロック装置13にそれぞれ機械的に連係されており、クローザ・リリース装置12の電動による解除操作力又は操作ハンドル15の手動による解除操作力を全閉ドアロック装置11及び全開ドアロック装置13に伝達する。このとき、全閉ドアロック装置11がスライドドア10の全閉状態での保持を解除し、あるいは全開ドアロック装置13がスライドドア10の全開状態での保持を解除する。
【0018】
図2に示すように、クローザ・リリース装置12は、スライドドア10の後端面に沿って広がってこれに締結される、例えば金属板からなるベースプレート21を有するとともに、該ベースプレート21に設置されたラッチ機構22を有する。このラッチ機構22は、ベースプレート21に軸支された互いに平行な一対の回転軸23,24にそれぞれ一体回動するように連結されたラッチ25及びポール26を有する。
【0019】
ラッチ25には、略U字状の係合凹部25aが形成されている。そして、ラッチ25は、係合凹部25aを挟んでその一側及び他側(図2において反時計回転方向及び時計回転方向の側)にそれぞれ第1爪部25b及び第2爪部25cを形成する。また、ラッチ25は、第1爪部25bの長手方向中間部から突出する第3爪部25dを形成する。周方向において、第1爪部25bの先端部の第2爪部25cに対向する端面及び第3爪部25dの第1爪部25bに対向する端面は、フルラッチ係合面25e及びハーフラッチ係合面25fをそれぞれ形成する。このラッチ25は、ベースプレート21に一端の掛止されたラッチ付勢ばね(図示略)の他端が掛止されることで図示時計回転方向に回動する側に付勢されるとともに、該ベースプレート21に設置されたラッチストッパ(図示略)に当接することで当該方向への回動が規制され、所定の初期回動位置(以下、「アンラッチ位置」という)に保持される。なお、ラッチ25は、回転軸23を挟んで第3爪部25dの反対側にストッパ片及び被押圧部としてのアーム状の被押圧突片25gを突出する。
【0020】
一方、ポール26は、回転軸24からその径方向一側(図2の左側)に延出する略鉤爪状の係合端部26aを形成する。このポール26は、ポール付勢ばね(図示略)により図示反時計回転方向に回動する側、即ち係合端部26aを図示下側に移動させる側に付勢され、所定の初期回動位置に保持される。
【0021】
そして、ボデーには、ラッチ機構22と係合可能なストライカ29が固着されている。このストライカ29は、例えば金属棒からなり、ボデーに一側の端部が固定される一対の固定棒としての第1固定棒29a及び第2固定棒29bと、それら第1固定棒29a及び第2固定棒29bの他側の端部同士を接続する接続棒29cとを一体的に有して略「コ」の字形状を呈する。第1固定棒29a及び第2固定棒29bは、スライドドア10の開閉方向に間隔をあけて互いに略平行に配置されており、第1固定棒29aの方が第2固定棒29bよりもスライドドア10に近い側に配置されている。また、第1固定棒29a及び第2固定棒29b間にラッチ25の第2爪部25cが進入可能となっている。このとき、第2爪部25cは、その板厚方向でベースプレート21及び接続棒29c間に挟まれる。
【0022】
ここで、ラッチ機構22の基本的な動作について説明する。
スライドドア10が開放されている状態では、アンラッチ位置に保持されるラッチ25は、ストライカ29に係合凹部25aを対向させる。つまり、係合凹部25aは、スライドドア10の閉作動に伴うストライカ29の進入経路を開放している。また、所定の初期回動位置に保持されるポール26は、係合端部26aを第3爪部25dの上方に配置する。なお、このときのラッチ機構22の状態をアンラッチ状態(解除状態)という。
【0023】
次に、スライドドア10の閉作動に伴い、係合凹部25a内にストライカ29の第1固定棒29aが進入したとする。この際、第1固定棒29aにより係合凹部25aの内壁面が押圧されることで、ラッチ25は、ラッチ付勢ばねに抗して図示反時計回転方向に回動して第1固定棒29aと噛み合うとともに、ハーフラッチ係合面25fに係合端部26aが係止されることで回り止めされる。このとき、スライドドア10は、係合凹部25aにおいてストライカ29と係合してこれを抜け止めする半ドア状態にある。このときのラッチ機構22の状態をハーフラッチ状態といい、ラッチ25の回動位置をハーフラッチ位置という。
【0024】
続いて、スライドドア10の更なる閉作動に伴い、係合凹部25a内にストライカ29の第1固定棒29aが更に進入したとする。この際、第1固定棒29aにより係合凹部25aの内壁面が押圧されることで、ラッチ25は、第1固定棒29aと噛み合う状態のままラッチ付勢ばねに抗して図示反時計回転方向に更に回動し、図2に示すように、フルラッチ係合面25eに係合端部26aが係止されることで回り止めされる。このとき、スライドドア10は、係合凹部25aにおいてストライカ29と係合してこれを抜け止めする全閉状態にある。このときのラッチ機構22の状態をフルラッチ状態(係合状態)といい、ラッチ25の回動位置をフルラッチ位置という。
【0025】
なお、ラッチ25が第1固定棒29aと噛み合う状態では、回転軸23を中心とする被押圧突片25gの図示反時計回転方向の回動軌跡上に第2固定棒29bが位置しており、ラッチ25がフルラッチ位置から当該方向に回動する際に所定の空走区間を経て第2固定棒29bに当接可能となっている。
【0026】
また、ハーフラッチ状態又はフルラッチ状態において、ポール26がポール付勢ばねに抗して図示時計回転方向に回動すると、係合端部26aによるハーフラッチ係合面25f又はフルラッチ係合面25eの係止が解除される。このとき、ラッチ25は、例えばシール部材の反発力などでスライドドア10が開作動し始めることに伴い、係合凹部25a内から退出するストライカ29の第1固定棒29aにより係合凹部25aの内壁面が押圧されることで、図示時計回転方向に回動する。そして、スライドドア10は、係合凹部25aにおけるストライカ29との係合を解除して開放可能となる。
【0027】
なお、図3に示すように、クローザ・リリース装置12は、例えばロータリスイッチからなるラッチスイッチ80を有する。このラッチスイッチ80は、ラッチ25の回動位置(アンラッチ位置等)を検出するためのものである。また、クローザ・リリース装置12は、回転軸24に一体回動するように連結されたポール駆動レバー27を有する。ポール駆動レバー27の先端部は、上方に向かって凸になるように湾曲されて被押圧部27aを形成する。なお、被押圧部27aが下方に移動するポール駆動レバー27の回動方向は、前述のラッチ25との係合状態を解除するポール26の回動方向に一致している。
【0028】
ベースプレート21には、車両の前方に向かって広がる、例えば金属板からなるベースプレート30が締結されている。ベースプレート30は、ベースプレート21とは別にスライドドア10に締結されている。このベースプレート30の前方下部には、図示しないECU(電子制御装置)により駆動制御されるアクチュエータ31が設置されている。このアクチュエータ31は、電動モータ32と、該電動モータ32の回転軸の回転を減速する減速機構33とを有する。なお、減速機構33の出力軸には、ピニオン33aが固着されている。
【0029】
また、ベースプレート30には、ピニオン33aの斜め後上方で該ピニオン33aの軸心と略平行に中心線の延びる略円柱状の第1支持ピン34が固着されるとともに、該第1支持ピン34には、例えば金属板からなるアクティブレバー35が軸支されている。すなわち、アクティブレバー35は、第1支持ピン34が貫通してこれに軸支される略円形の支持部36を有する。また、アクティブレバー35は、第1支持ピン34を中心とする径方向において支持部36の外側に配置される略円弧状の連結部37を有するとともに、該連結部37の第1支持ピン34を中心とする周方向一側(図示時計回転方向の側)の端部及び支持部36同士を第1支持ピン34を中心とする径方向に接続する接続部38を有する。そして、アクティブレバー35は、支持部36の外周部、連結部37の内周部及び接続部38の側壁により、第1支持ピン34を中心とする周方向他側(図示反時計回転方向の側)に開口する略扇状の溝部35aを形成する。
【0030】
連結部37の外周部には、複数の外歯からなるギヤ部37aが形成されており、該ギヤ部37aにおいてアクチュエータ31のピニオン33aに噛合する。従って、アクティブレバー35は、ピニオン33aが回転することでその回転方向に応じた方向に第1支持ピン34の周りを回動する。ギヤ部37aの周方向中間部でピニオン33aに噛合する図3に示すアクティブレバー35の回動位置を「中立位置」という。
【0031】
なお、連結部37の接続部38側寄りの内周部には、複数の内歯からなる内歯車部37bが形成されている。また、連結部37の内周部には、基本的に内歯車部37b(内歯)の歯元円の径と同等の内径を有して内歯車部37bから第1支持ピン34を中心とする周方向他側(図示反時計回転方向の側)に延びる解放部37cが形成されている。さらに、アクティブレバー35は、支持部36から第1支持ピン34を中心とする斜め後下方の径方向に延出片39を延出する。この延出片39の第1支持ピン34から離間する先端部は、前方に転向して接続部38の近傍で連結部37に接続されている。
【0032】
ベースプレート30には、アクティブレバー35の溝部35a内で第1支持ピン34の中心線と略平行に中心線の延びる略段付き円柱状の第2支持ピン40が固着されるとともに、該第2支持ピン40には、例えば金属板からなるリリースレバー41が軸支されている。すなわち、リリースレバー41は、第2支持ピン40が貫通してこれに軸支される略円形のレバー支持部42を有する。このレバー支持部42も、アクティブレバー35の溝部35a内に位置している。レバー支持部42の外周部には、図3における斜め前下方の角度位置で複数の外歯からなるギヤ部42aが形成されており、該ギヤ部42aにおいてアクティブレバー35の内歯車部37bに噛合可能となっている。
【0033】
また、リリースレバー41は、レバー支持部42から第2支持ピン40を中心とする斜め後上方の径方向に略弓形のレバー突片43を延出する。なお、リリースレバー41には、レバー支持部42及びレバー突片43の境界部に略円弧状の段差41aが設定されている。レバー突片43は、段差41aを介することでレバー支持部42に対しアクティブレバー35の板厚分だけ紙面に直交する手前側にずれており、その長手方向中間部において連結部37と干渉することなくこれを乗り越える。
【0034】
リリースレバー41は、ベースプレート30に一端の掛止された、例えばコイルスプリングからなる付勢部材90の他端が掛止されることで図示時計回転方向に回動する側に付勢されるとともに、ベースプレート30に形成されたストッパ片30aに当接することで当該方向への回動が規制される。このとき、リリースレバー41は、所定の初期回動位置に保持される。
【0035】
図4に併せ示すように、リリースレバー41が初期回動位置にあるとき、該リリースレバー41は、中立位置にあるアクティブレバー35の内歯車部37bの図示反時計回転方向の側に先行してギヤ部42aを配置している。そして、アクティブレバー35が図示反時計回転方向に回動すると、所定の空走区間を経てギヤ部42aに内歯車部37bが噛合する。これにより、アクティブレバー35の図示反時計回転方向への回動に伴って、リリースレバー41が付勢部材90の付勢力に抗して図示反時計回転方向に回動し始める。なお、レバー支持部42は、基本的にギヤ部42a(外歯)の歯先円の径と同等の外径を有するものの、連結部37には解放部37cが形成されていることでこれと干渉することはない。
【0036】
図3に示すように、リリースレバー41(レバー突片43)の先端には、リリースケーブルC1の端末が掛止されており、リリースレバー41が初期回動位置から回動することでリリースケーブルC1をクローザ・リリース装置12側に引っ張るように構成されている。つまり、クローザ・リリース装置12の電動による解除操作力は、リリースレバー41が初期回動位置から回動することで発生する。
【0037】
ベースプレート30には、第1支持ピン34の上方でその中心線と略平行に中心線の延びる略円柱状の支持ピン45が固着されるとともに、該支持ピン45には、例えば金属板からなるオープンレバー46が軸支されている。このオープンレバー46は、支持ピン45を中心とする上方の径方向に略弓形の第1レバー突片47を延出するとともに、支持ピン45を中心とする下方の径方向にアーム状の第2レバー突片48を延出する。そして、第1レバー突片47の先端は、ポール駆動レバー27の被押圧部27aの上方で下方に向かって凸になるように湾曲されて押圧部47aを形成する。
【0038】
オープンレバー46は、第2レバー突片48の先端においてオープンケーブルC2の端末が掛止されている。従って、オープンケーブルC2がリモコン14側に引っ張られると、オープンレバー46は、支持ピン45を中心に図示反時計回転方向に回動する。このとき、オープンレバー46は、押圧部47aにおいてポール駆動レバー27の被押圧部27aを下方に押圧することで、該被押圧部27aが下方に移動するようにポール駆動レバー27が回動する。これにより、ポール駆動レバー27と一体回動するポール26がラッチ25との係合状態を解除する。つまり、クローザ・リリース装置12の電動による解除操作力又は操作ハンドル15の手動による解除操作力は、オープンケーブルC2がリモコン14側に引っ張られてオープンレバー46が回動するかたちでクローザ・リリース装置12に伝達される。
【0039】
アクティブレバー35の延出片39の先端部には、第1支持ピン34の中心線と略平行に中心線の延びる略円柱状の支持ピン50が固着されるとともに、該支持ピン50には、例えば金属板からなるクローザレバー51が軸支されている。このクローザレバー51は、支持ピン50を中心とする後方の径方向に延びるレバー突片52を有する。このレバー突片52の先端は、紙面に直交する手前側に起立して略L字状の押上壁52aを形成する。クローザレバー51は、適宜の保持部材により実質的にアクティブレバー35と一体回動するように保持されており、該アクティブレバー35が中立位置にあるときに、ハーフラッチ位置にあるラッチ25の被押圧突片25gの下方に押上壁52aを配置する。従って、アクティブレバー35と共にクローザレバー51が図示時計回転方向に回動すると、押上壁52aにより被押圧突片25gの押圧されるラッチ25がハーフラッチ位置からフルラッチ位置へと回動する。このとき、半ドア状態にあるスライドドア10が全閉状態になることは既述のとおりである。なお、アクティブレバー35が中立位置にあるときに、ハーフラッチ位置にあるラッチ25の被押圧突片25gから下方に押上壁52aが離間しているのは、例えばアクチュエータ31を駆動しなくても、ラッチ25を回動可能にするためである。アクティブレバー35が中立位置から図示時計回転方向に回動するとき、レバー支持部42を解放部37cが移動することで、リリースレバー41が初期回動位置のままであることはいうまでもない。
【0040】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、ラッチ25がハーフラッチ位置で第1固定棒29aと噛み合う状態、即ちラッチ機構22がハーフラッチ状態にあり、図4に示すように、アクティブレバー35が中立位置にあるとする。この状態で、図5への変化で示すように、ECUによりアクチュエータ31を駆動してアクティブレバー35をクローザレバー51と共に図示時計回転方向に回動させると、押上壁52aに被押圧突片25gの押圧されるラッチ25が、第1固定棒29aと噛み合う状態のままフルラッチ位置まで回動するとともにポール26により回り止めされることで、図2に示すように、ラッチ機構22がフルラッチ状態になる。これにより、スライドドア10が全閉状態で保持される。なお、アクチュエータ31の駆動は、例えばラッチスイッチ80によりラッチ25がフルラッチ位置にあることが検出されることでECUにより停止される。
【0041】
また、例えばアクチュエータ31の駆動停止が遅れるなどでアクティブレバー35等が過大に回動し、図6に示すように、ラッチ25がフルラッチ位置(本来の回動範囲(ドアを保持可能な回動範囲))を超える位置(いわゆるオーバラッチ位置)まで回動し続けたとする。このとき、被押圧突片25gが第2固定棒29bに当接することでラッチ25の回動が規制される。あるいは、例えば手動によるスライドドア10の強閉時などで第1固定棒29aに大荷重で押圧されるラッチ25がフルラッチ位置を超えて回動しようとする場合も、被押圧突片25gが第2固定棒29bに当接することでラッチ25の回動が規制される。
【0042】
特に、被押圧突片25gは、第1固定棒29aにおいてラッチ25と噛み合うボデーに既存のストライカ29の第2固定棒29bに当接可能であればよい。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
【0043】
(1)本実施形態では、ラッチ25を回動規制すべく被押圧突片25g(ストッパ片)の当接可能な部位を形成するためにベースプレート21に曲げ加工や絞り加工をしなくてもよく、製造工数をより削減することができる。あるいは、ラッチ25を回動規制すべく被押圧突片25g(ストッパ片)の当接可能な別部材を設けなくてもよく、部品点数及び製造工数をより削減することができる。
【0044】
(2)本実施形態では、ストッパ片としての被押圧突片25gは、ラッチ25のクローザレバー51により押圧される被押圧部としての被押圧突片25gとして兼用されることで、例えば当該被押圧突片25gとは独立でラッチ25に形成する場合に比べて該ラッチ25の形状をより簡素化することができる。
【0045】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、クローザレバー51により押圧される被押圧部としての被押圧突片25gとは別に、ラッチ25にストッパ片を形成してもよい。
【0046】
・前記実施形態において、クローザ・リリース装置12等によるクローザ機能を省略してもよい。この場合、クローザ機能に係るラッチ25の被押圧突片25gは省略可能であるが、該被押圧突片25g自体やこれに準じた形状をストッパ片としてラッチ25に形成することになる。
【0047】
・前記実施形態において、全閉ドアロック装置11がラッチ機構22と同様のラッチ機構を備える場合、当該ラッチ機構のラッチに被押圧突片25gに準じた形状のストッパ片を形成して、当該ラッチが噛み合うストライカの第2固定棒に当接可能にしてもよい。
【0048】
・前記実施形態において、クローザ・リリース装置12等によるリリース機能を省略してもよい。
・本発明は、例えばスイング式のドアに適用してもよいし、車両の後部に配置されるバックドアに適用してもよい。この場合であっても、その車両用ドアロック装置がラッチ機構22と同様のラッチ機構を備える場合、当該ラッチ機構のラッチに被押圧突片25gに準じた形状のストッパ片を形成して、当該ラッチが噛み合うストライカの第2固定棒に当接可能にすればよい。
【符号の説明】
【0049】
10…スライドドア(ドア)、22…ラッチ機構、25…ラッチ、25g…被押圧突片(ストッパ片、被押圧部)、26…ポール、29…ストライカ、29a…第1固定棒(固定棒)、29b…第2固定棒(固定棒)、29c…接続棒、32…電動モータ、35…アクティブレバー、51…クローザレバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6