(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱処理装置については、熱処理温度をより高くすることが要請されている。このため、反応管内の温度検出についても、より高い温度を検出可能とすることが求められている。従来、反応管内に熱電対などの温度センサが配置される場合、当該温度センサは、たとえば、石英の保護管で覆われた状態で保護される。
【0006】
しかしながら、たとえば、約1250℃以上の高温で熱処理を行う高温炉においては、ヒータからの熱を直接的に受ける石英製の保護管は、熱により劣化し、溶融または破損などを生じるおそれがある。したがって、石英製の保護管で反応管内の温度センサを保護する構成では、高温による保護管の劣化の問題を避けられず、熱処理温度を向上し難い。このため、温度センサを反応管の外部に配置し、高温に起因する保護管の劣化の問題を回避することが考えられる。しかしながら、この場合、温度センサは、反応管内から離隔した位置で反応管内の温度を検出することとなり、温度の検出精度が低くなる。
【0007】
一方、保護管の材料を、より耐熱温度の高い材料に変更することが考えられる。たとえば、石英製の保護管に代えて炭化ケイ素製の保護管を用いることが考えられる。しかしながら、保護管は、スペースに制約のある反応管内に配置されるなどの理由により、複雑な形状を有することとなる。このため、比較的寸法精度を高くし易い(加工し易い)石英を用いた場合と比べて、極めて硬い炭化ケイ素製の保護管の製造が困難且つ高価となってしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、高温環境における温度をより正確に検出できるとともに、劣化が抑制され、製造コストを低減でき、且つ、より容易に製造できる温度検出装置、および、これを備える熱処理装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる温度検出装置は、温度センサと、前記温度センサを収容して保護するための保護管と、を備え、前記保護管は、前記保護管の一端側を形成する第1保護部と、前記保護管の他端側を形成し前記第1保護部の耐熱温度よりも高い耐熱温度を有し前記第1保護部に連結される第2保護部と、加圧された気体を前記保護管内に受け入れるための加圧気体受入部と、を含んでいる。
【0010】
この構成によると、第2保護部の耐熱温度は、第1保護部の耐熱温度よりも高く設定されている。これにより、第2保護部は、より高温雰囲気において、熱による劣化が抑制された状態で、この高温雰囲気に十分に耐えることができる。その上、保護管の内部には、加圧された気体が供給される。これにより、高温の温度測定対象物が保護管内に進入することを抑制できる。したがって、温度測定領域が高温であっても、第2保護部および温度センサを、この高温環境に直接配置できる。よって、温度検出装置は、高温環境における温度をより正確に検出できる。また、高温雰囲気に耐える第2保護部は、保護管のうちの一部のみを構成している。このため、保護管の全部が第2保護部の素材と同じ素材で形成される場合と比べて、第2保護部の内面などの加工作業は、より容易である。その結果、温度検出装置を、より容易且つ安価に製造できる。以上の次第で、高温環境における温度をより正確に検出できるとともに、劣化が抑制され、製造コストを低減でき、且つ、より容易に製造できる温度検出装置を実現できる。
【0011】
さらに、前記第1保護部および前記第2保護部は、互いに接続される接続部を有し、前記接続部は、前記加圧された気体を前記保護管の外部に排出するための排気口を有している。
【0012】
この構成によると、第1保護部と第2保護部との接続部から、保護管内の加圧された気体が排気口から排出される。このため、温度測定対象物が第1保護部と第2保護部との接続部から保護管内に進入することをより確実に抑制できる。これにより、第1保護部が過度に高温の雰囲気に曝されることを抑制できる。よって、保護管の劣化をより確実に抑制できる。また、第1保護部と第2保護部との接続部の間から温度測定対象物の進入を抑制するために、これらの保護部間を厳密にシールする必要がない。このため、保護管の製造を、より容易に行うことができる。
【0013】
(
2)好ましくは、前記接続部は、前記第1保護部の一端部に形成された筒状の第1接続部と、前記第2保護部の一端部に形成された筒状の第2接続部と、を有し、前記第2接続部は、前記第1接続部に突き合わされる突き合わせ部と、この突き合わせ部から延び前記排出口を取り囲む環状の鍔部と、を有している。
【0014】
この構成によると、第2接続部は、第1接続部の周囲を取り囲んで保護する形状を有する。これにより、第1保護部に高温の温度測定対象物が触れることを、抑制できる。また、排出口から保護管の外部に排出される加圧気体は、第1接続部および第2接続部のうちの第1接続部側に流れる。これにより、この加圧気体を、第1接続部の周囲における気体カーテンとして用いることができる。よって、第1接続部に高温の温度測定対象物が触れることを、より確実に抑制できる。
【0015】
(
3)好ましくは、前記加圧気体受入部は、前記第1保護部に形成されている。
【0016】
この構成によると、加圧気体を、保護管のうちのより低温側部分から、保護管内に導入できる。これにより、保護管内の温度が過度に高くなることを抑制できる。これにより、保護管の劣化を、より確実に抑制できる。
【0017】
(
4)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる熱処理装置は、被処理物を収容するためのチューブと、前記チューブ内の温度を検出するように構成された前記温度検出装置と、を備えている。
【0018】
この構成によると、熱処理装置において、高温環境における温度をより正確に検出できるとともに、劣化が抑制され、製造コストをより低減でき、且つ、熱処理装置をより容易に製造できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、高温環境における温度をより正確に検出できるとともに、劣化が抑制され、製造コストを低減でき、且つ、より容易に製造できる温度検出装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、温度検出装置、および、被処理物を熱処理するための熱処理装置として広く適用することができる。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかる熱処理装置1の側面図であり、大部分を断面で示している。
図1を参照して、熱処理装置1は、被処理物100の表面に熱処理を施すことが可能に構成されている。より具体的には、熱処理装置1は、被処理物100に向けて加熱されたガス(熱処理用ガス)を供給することで、被処理物100の表面に熱処理を施すことが可能に構成されている。熱処理用ガスは、たとえば、希ガスを含んでいる。本実施形態において、熱処理装置1は、縦型炉である。
【0023】
また、本実施形態では、熱処理装置1は、より高温で被処理物100を熱処理可能に構成されている。本実施形態における「高温」の一例として、1250℃以上の温度を挙げることができる。
【0024】
本実施形態では、被処理物100は、半導体を製造するためのウェハであり、円板状に形成されている。また、熱処理装置1が被処理物100に行う熱処理として、アニール処理、酸化処理、拡散処理、および、リフロー処理などを例示することができる。なお、被処理物100は、ウェハに限らず、他の部材であってもよい。
【0025】
熱処理装置1は、ヒータ2と、台座3と、チューブ5と、閉塞蓋6と、架台7と、複数の石英ヒートバリア8と、複数のSiCヒートバリア9と、ボート10と、熱処理用ガス供給管11と、温度検出装置13と、を有している。
【0026】
ヒータ2は、チューブ5内の雰囲気(気体)を加熱するために設けられている。ヒータ2は、たとえば、電熱ヒータである。ヒータ2は、全体として中空の箱形形状に形成されており、チューブ5の一部を収納している。
【0027】
ヒータ2は、周壁2aと、天壁2bとを有している。周壁2aは、チューブ5の上部側の一部を取り囲むように配置されている。天壁2bは、周壁2aの上端部を塞いでおり、チューブ5の上方に位置している。周壁2aの下端部は、台座3に受けられている。
【0028】
台座3は、ヒータ2を支持するために設けられている。台座3は、たとえば、平板状に形成されており、上下方向X1におけるチューブ5の中間部を取り囲むように配置されている。
【0029】
チューブ5は、ボート10に収容された被処理物100を収容し、当該被処理物100に熱処理を施すために設けられている。本実施形態では、チューブ5は、耐熱温度の異なる複数(2種類)の材料を用いて形成されている。
【0030】
チューブ5は、ボート10に収容された被処理物100に隣接した位置で当該被処理物100を取り囲むように配置されている。チューブ5は、高温環境下で用いられる部分を、耐熱性の高い材料(本実施形態では、炭化珪素(以下、SiCともいう))によって形成された構成を有し、且つ、比較的低温環境で使用される部分を、加工性の高い材料(加工し易い材料、後述する石英、以下、SiO
2ともいう)によって形成された構成を有している。
【0031】
チューブ5は、全体として、上下方向(鉛直方向、チューブ5の軸方向)X1に細長い円筒状に形成されている。チューブ5の一部は、ヒータ2の下方に突出している。
【0032】
図2は、
図1における、チューブ5の下部周辺を拡大した図である。
図1および
図2を参照して、チューブ5は、第1筒状部21と、この第1筒状部21の上方において第1筒状部21に隣接して配置された第2筒状部22と、を有している。
【0033】
第1筒状部21は、チューブ5の下端部と中間部の一部とを構成している。第1筒状部21は、加工性の高い材料を用いて形成されており、本実施形態では、石英製である。第1筒状部21は、架台7の一部、石英ヒートバリア8、熱処理ガス供給管11の一部、および、温度検出装置13の一部を収容している。第1筒状部21は、ヒータ2に取り囲まれておらず、第1筒状部21内の温度は、第2筒状部22内の温度よりも低く、且つ、石英の耐熱温度よりも低くなるように設定されている。なお、本実施形態における「耐熱温度」とは、熱処理装置の使用条件下での設計上の許容温度をいう。
【0034】
第1筒状部21は、円筒状の本体部21aと、本体部21aの上端部に形成された環状のフランジ部21bと、を有している。熱処理装置1における熱処理時、本体部21aの下端部は、円板状の閉塞蓋6によって閉じられる。閉塞蓋6は、チューブ5に対するボート10および被処理物100などの出し入れ時、第1筒状部21に対して、図示しない駆動装置によって上下方向X1に変位される。第1筒状部21は、第2筒状部22と協働して、ボート10および被処理物100を収容する収容空間を形成している。
【0035】
第2筒状部22は、チューブ5の中間部の一部と上端部とを構成している。第2筒状部22は、耐熱性に優れた材料を用いて形成されており、本実施形態では、SiC製である。第2筒状部22は、架台7の一部、SiCヒートバリア9、ボート10、熱処理用ガス供給管11の一部、および、温度検出装置13の一部を収容している。熱処理装置1における熱処理時、第2筒状部22内の温度は、第1筒状部21内の温度よりも高くなる。しかしながら、第2筒状部22の耐熱温度は、第1筒状部21の耐熱温度よりも高く設定されているので、第2筒状部22は、この高温環境下での熱による劣化を十分に抑制されている。
【0036】
第2筒状部22は、円筒状の本体部22aと、本体部22aの下端部に形成された環状のフランジ部22bと、を有している。本実施形態では、第2筒状部22の厚みは、第1筒状部21の本体部21aの厚みよりも薄く設定されている。第2筒状部22の大部分は、ヒータ2に取り囲まれている。
【0037】
第2筒状部22のフランジ部22bは、第1筒状部21のフランジ部21bに突き合わされており、フランジ部21bに支持されている。フランジ部22bと、台座部3は、複数の環状の連結ブロック23〜27を介して互いに連結されている。上記の構成を有するチューブ5内に、石英ヒートバリア8が配置されている。
【0038】
石英ヒートバリア8は、第1筒状部21内の高熱が第1筒状部21の周辺に伝わることを抑制するために設けられている。石英ヒートバリア8は、石英製の板状部材である。石英ヒートバリア8は、上下方向X1に等間隔に複数配置されている。石英ヒートバリア8は、閉塞蓋6から上方に延びる支柱28に支持されており、第1筒状部21に取り囲まれている。石英ヒートバリア8の周囲に、架台7が配置されている。
【0039】
架台7は、SiCヒートバリア9、および、ボート10を保持するために設けられている。架台7は、石英ヒートバリア8を取り囲む基部7aと、基部7aから上方に延びる上部7bと、を有している。
【0040】
基部7aは、たとえば、円筒状に形成されており、閉塞蓋6に支持されている。基部7aは、第1筒状部21に取り囲まれている。この基部7aの内部に石英ヒートバリア8が収容されている。基部7aの上端部には、上部7bが形成されている。
【0041】
上部7bは、SiCヒートバリア9、および、ボート10が設けられる部分である。上部7bは、基部7aから上方に延びる柱状に形成されている。上部7bには、SiCヒートバリア9を保持するための保持部7cが形成されている。
【0042】
保持部7cは、SiCヒートバリア9を上下方向X1に等間隔に配置するように構成されている。保持部7cは、水平方向に延びる溝部を有している。そして、この溝部が、上下方向X1に沿って複数、等間隔に配置されている。保持部7cの各溝部は、SiCヒートバリア9の外周縁部を保持している。
【0043】
SiCヒートバリア9は、第2筒状部22の下端部周辺の熱が第1筒状部21側に伝わることを抑制するために設けられている。SiCヒートバリア9は、SiC製の板状部材であり、石英ヒートバリア8の耐熱温度よりも高い耐熱温度を有している。SiCヒートバリア9は、上下方向X1に等間隔に複数配置されている。SiCヒートバリア9は、チューブ5の第2筒状部22の下部に取り囲まれている。SiCヒートバリア9の上方には、ボート10が配置されている。
【0044】
ボート10は、架台7の上部7b側に形成されており、チューブ5内において被処理物100を保持するための保持部を形成している。ボート10は、閉塞蓋6とともに上下方向X1に沿って変位されることで、チューブ5に出し入れされる。
【0045】
ボート10は、被処理物100を上下方向X1に等間隔に配置するように構成されている。より具体的には、ボート10は、水平方向に延びる溝部を有している。そして、この溝部が、上下方向X1に沿って複数、等間隔に配置されている。ボート10の各溝部は、被処理物100の外周縁部を保持している。これにより、複数の被処理物100は、上下方向X1に等間隔に配置された状態で、チューブ5内に配置される。この際、ボート10は、被処理物100がヒータ2の周壁2aに取り囲まれるように、被処理物100を保持している。チューブ5内へは、熱処理用ガス供給管11から、被処理物100に熱処理を施すための熱処理用ガスが供給される。
【0046】
熱処理用ガス供給管11は、たとえば、希ガスなどの処理用ガスをチューブ5内に供給するために設けられている。熱処理用ガス供給管11には、図示しない、ガス発生装置またはタンクからポンプなどを用いて供給される処理用ガスが、通過する。熱処理用ガス供給管11は、チューブ5の第1筒状部21に形成された貫通孔部を通ってチューブ5の外部からチューブ5の内部に進んでいる。
【0047】
熱処理用ガス供給管11は、チューブ5の内部において、チューブ5と架台7との間を上下方向X1に沿って延びている。熱処理用ガス供給管11からチューブ5内に供給された処理用ガスは、チューブ5内に拡散され、各被処理物100に供給される。チューブ5内のガスは、被処理物100の熱処理後、図示しない排気管を通ってチューブ5の外部に排出される。熱処理装置1における熱処理時のチューブ5内の温度は、温度検出装置13によって検出される。
【0048】
温度検出装置13は、チューブ5内の温度を直接的に検出可能に構成された内温検出型の装置である。より具体的には、温度検出装置13は、チューブ5内に後述する温度センサ31が配置された構成を有しており、チューブ5内において、チューブ5内の温度を計測する。
【0049】
温度検出装置13は、少なくとも一部がチューブ5の外部からチューブ5の内部に延びる形状に形成されている。また、本実施形態では、温度検出装置13は、耐熱性に優れるとともに、温度検出装置13の製造にかかる手間が小さくなるように形成されている。
【0050】
温度検出装置13は、チューブ5内に配置される温度センサ31と、この温度センサ31を収容して保護するための保護管32と、パージガス供給装置(加圧気体供給部)33と、を有している。
【0051】
パージガス供給装置33は、保護管32内へ向けて加圧されたパージ用のガス(パージガス)ガスを供給するために設けられている。このパージガスとして、N
2などの不活性ガスを例示することができる。なお、パージガスは、熱処理用ガス供給管11から供給されるガス(熱処理用ガス)と同じガスであってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
パージガス供給装置33は、タンク34と、ポンプ35と、を有している。タンク34は、保護管32に供給されるパージガスを貯留している。なお、タンク34は、パージガスを製造するための製造装置(図示せず)に接続されていてもよい。タンク34は、ポンプ35に接続されている。
【0053】
ポンプ35は、タンク34内のパージガスを保護管32内に加圧状態で供給するために設けられている。ポンプ35から保護管32へ送り出されるパージガスの気圧は、チューブ5内の気圧よりも大きく設定される。これにより、チューブ5内のガスが保護管32内に進入することは、抑制される。
【0054】
保護管32は、温度センサ31を収容する収容部材として設けられている。本実施形態では、保護管32は、耐熱温度の異なる複数(2種類)の材料を用いて形成されている。保護管32は、高温環境下で用いられる部分を、耐熱性の高い材料(SiC)によって形成された構成を有し、且つ、比較的低温環境で使用される部分を、加工性の高い材料(SiO
2)によって形成された構成を有している。
【0055】
本実施形態では、保護管32は、全体としてL字状に形成された細長い部材であり、チューブ5の外部に配置される部分が略水平に延びており、チューブ5の内部に配置される部分が略鉛直に延びている。
【0056】
保護管32は、第1保護部41と、第2保護部42と、を有しており、これら第1保護部41と第2保護部42とが互いに連結された構成を有している。
【0057】
第1保護部41は、チューブ5の第1筒状部21および第2筒状部22のうちの第1筒状部21寄りに配置されており、保護管32の一端(下端)側を形成している。一方、第2保護部42は、第1筒状部21および第2筒状部22のうちの第2筒状部22寄りに配置されており、保護管32の他端(上端)側を形成している。このため、熱処理装置1の熱処理時において、第2保護部42の温度は、第1保護部41の温度よりも高くなる。第1保護部41は、チューブ5内においては、第1筒状部21に取り囲まれるように配置されている。一方、第2保護部42は、チューブ5内においては、第1筒状部21および第2筒状部22内に取り囲まれるように配置されている。なお、第2保護部42は、チューブ5内においては、第1筒状部21には取り囲まれずに第2筒状部22内に取り囲まれるように配置されていてもよい。
【0058】
本実施形態では、第2保護部42の耐熱温度は、第1保護部41の耐熱温度よりも高く設定されている。より具体的には、第1保護部41は、石英を用いて形成され、第2保護部42は、SiCを用いて形成されている。第1保護部41は、主成分が石英であり、不純物を含んでいてもよい。また、第2保護部42は、主成分がSiCであり、不純物を含んでいてもよい。
【0059】
上記の構成により、第2保護部42の硬度は、第1保護部41の硬度よりも高い。このため、第2保護部42は、異物との接触に対して傷が付きにくく、高い強度を有している。また、第1保護部41は、比較的硬度が低いため、加工性に優れ、切削などの機械加工によって、より容易に形状加工され得る。
【0060】
また、第2保護部42における温度変化に伴う機械的強度の低下は、第1保護部41における温度変化に伴う機械的強度の低下よりも小さい。特に、本実施形態では、熱処理装置1における熱処理時、チューブ5内の温度は、被処理物100の周辺において、1250℃よりも高い高温となる。この場合でも、第2保護部42の温度変化に伴う機械的強度の低下は、十分に抑制されている。本実施形態では、第2保護部42の耐熱温度は、約1500℃〜1600℃程度である。
【0061】
一方、第1保護部41は、第1筒状部21の近傍に配置されており、石英ヒートバリア8などによって熱的に保護されている。このため、第1保護部41の温度は、当該第1保護部41の耐熱温度未満の比較的低い値となる。
【0062】
また、第2保護部42の密度は、第1保護部41の密度よりも高い。また、第2保護部42の曲げ強度は、第1保護部41の曲げ強度よりも高い。
【0063】
図3は、温度検出装置13の第1保護部41の周辺の拡大図である。
図2および
図3を参照して、第1保護部41は、SiO
2製の一体成形品であってもよいし、SiO
2製の複数の部材が組み合わされることで形成されていてもよい。
【0064】
第1保護部41は、チャンバ43と、水平部44と、湾曲部45と、鉛直部46と、第1接続部47と、を有している。
【0065】
チャンバ43は、パージガス供給装置33からのパージガスを保護管32内に受容れる受入部分、および、温度センサ31の信号線が保護管32の内部から外部に出る部分として設けられている。チャンバ43は、たとえば、略円筒状に形成されており、水平方向に延びている。チャンバ43の一端部は、保護管32の一端部を構成している。この一端部には、加圧気体受入部48および信号線出入口49が形成されている。
【0066】
加圧気体受入部48および信号線出入口49は、それぞれ、チャンバ43の一端部に形成された、円筒状のポートである。加圧気体受入部48には、ポンプ35の吐出口が接続されている。これにより、ポンプ35からの加圧されたパージガスは、チャンバ43から保護管32内に導入される。
【0067】
信号線出入口49には、温度センサ31の後述する信号線61が通されている。信号線61は、熱処理装置1の制御部(図示せず)などに接続されている。制御部は、温度センサ31の検出結果を用いて、ヒータ2などを温度制御する。チャンバ43のうち、第1筒状部21側を向く部分から、水平部44が延びている。
【0068】
水平部44は、第1筒状部21の外部において水平に延びる円筒状の部分であり、第1筒状部21の近傍において、湾曲部45に接続されている。湾曲部45は、水平部44と鉛直部46とを繋ぐ筒状の部分であり、略90度曲がった円弧状に形成されている。湾曲部45は、第1筒状部21を貫通するように配置されており、これにより、第1保護部41は、チューブ5の内部から外部に延びている。湾曲部45の上端部は、鉛直部46に接続されている。
【0069】
鉛直部46は、チューブ5の第1筒状部21内において、当該第1筒状部21と平行に延びる円筒状部分として設けられており、第1筒状部21に取り囲まれている。鉛直部46の上端部は、第1接続部47を有している。第1接続部47は、第2保護部42の後述する第2接続部52に接続される部分として設けられている。第1接続部47および第2接続部52は、協働して、接続部40を形成している。接続部40の詳細は、後述する。上記の構成を有する第1保護部41は、第2保護部42を支持している。
【0070】
図4は、第2保護部42の周辺の主要部について説明するための図である。
図1、
図3および
図4を参照して、第2保護部42は、SiO
2製の一体成形品であってもよいし、SiO
2製の複数の部材が組み合わされることで形成されていてもよい。
【0071】
第2保護部42は、第2保護部本体51と、第2接続部52と、を有している。
【0072】
第2保護部本体51は、上下方向X1に延びる円筒状に形成されている。本実施形態では、第2保護部本体51の断面形状(上下方向X1と直交する断面の形状)は、第1保護部41の鉛直部46の断面形状と同じに設定されている。第2保護部本体51の上端部51aは、ボート10の上端部10aの近傍に位置している。
【0073】
第2保護部本体51の上端部51aは、閉じられた形状を有している。第2保護部本体51の下端部は、第1保護部41に受けられており、第1筒状部21に取り囲まれている。第2保護部本体51の中間部および上端部は、第2筒状部22に取り囲まれている。第2保護部本体51は、SiCヒートバリア9の側方を通って、ボート10の側方に延びている。第2保護部本体51の下端部に、第2接続部52が形成されている。
【0074】
前述したように、第1接続部47と第2接続部52とは、協働して、接続部40を形成している。接続部40は、チューブ5の第1筒状部21および第2筒状部22のうちの第1筒状部21寄りに配置されており、第1筒状部21に取り囲まれている。
【0075】
第1接続部47は、第1保護部41の一端部に形成された、円筒状の部分であり、第2接続部52は、第2保護部42の一端部に形成された円筒状の部分である。
図5は、
図3のV−V線に沿う断面図である。
図1、
図3および
図5を参照して、第1接続部47の上端部には、排気口53が形成されている。
【0076】
排気口53は、パージガス供給装置33からの加圧されたパージガスが保護管32の外部(チューブ5の内側)に排出される部分として設けられている。排気口53は、第1接続部47の上端部に形成された溝部であり、第1接続部47の上端面に開放されている。排気口53は、第1接続部47の周方向に等間隔に複数形成されている。各排気口53は、第1接続部47を当該第1接続部47の径方向に貫通するように形成されている。各排気口53の大きさは、適宜設定される。排気口53に隣接して、第2接続部52が配置されている。
【0077】
第2接続部52は、第1接続部47に支持される円筒状の部分として設けられている。第2接続部52は、第1接続部47の上端部に突き合わされる突き合わせ部54と、この突き合わせ部54から下方に延び第1接続部47の排気口53を取り囲む環状の鍔部55と、を有している。
【0078】
突き合わせ部54は、第2保護部本体51と一体に形成された円筒状の部分である。突き合わせ部54は、第1接続部47の上端面に載せ置かれている。突き合わせ部54の下端面は、水平方向に延びる平坦面であり、第1接続部47の上端面に接触しているとともに、排気口53と上下方向X1に向かい合っている。突き合わせ部54の外周部には環状のフランジ部54aが形成されており、このフランジ部54aから鍔部55が下方に延びている。
【0079】
鍔部55は、第1接続部47の排気口53を取り囲む形状に形成されており、チューブ5内の熱処理用ガスが排気口53から保護管32内に進入することを抑制している。鍔部55は、突き合わせ部54の外周部から延びる略円筒状に形成されており、第1接続部47の排気口53の周囲を取り囲んでいる。上下方向X1において、鍔部55の下端部の位置は、排気口53の位置よりも下方である。鍔部55と第1接続部47との間には、第1接続部47の径方向に隙間C1が形成されている。
【0080】
なお、隙間C1は、第1接続部47の周方向の一部に亘って塞がれてもよい。この場合、鍔部55の下端部または第1接続部47から、隙間C1を塞ぐための延伸部が形成される。これにより、隙間C1から保護管32内に熱処理用ガスが進入することは、より確実に抑制される。
【0081】
上記の構成により、保護管32内の加圧されたパージガスは、矢印A1で示すように、第1接続部47と第2接続部52との間の排気口53から、隙間C1を通って保護管32の外部に排出される。保護管32の外部に排出されたパージガスは、チューブ5内の熱処理用ガスと混ざる。上記の構成を有する保護管32内に、温度センサ31が収容されている。
【0082】
図1、
図2および
図4を参照して、温度センサ31は、信号線61と、碍子62と、センサ本体63(63a〜63d)と、を有している。
【0083】
信号線61は、図示しない制御部に接続されており、保護管32の信号線出入口49を通って保護管32の外部から保護管32の内部に延びている。また、信号線61は、保護管32のチャンバ43から水平部44、湾曲部45、および、鉛直部46を通り、さらに、接続部40および第2保護部42に延びている。
【0084】
信号線61には、当該信号線61の長手方向に沿って碍子62が複数取り付けられている。碍子62は、たとえば、セラミック製の部材である。信号線61に、センサ本体63が接続されている。センサ本体63は、たとえば、熱電対であり、当該温度センサ31での温度に応じた電気信号を出力するように構成されている。
【0085】
本実施形態では、4つのセンサ本体63(63a〜63d)が設けられている。センサ本体63aは、第1筒状部21の側方に配置されている。センサ本体63b〜63dは、第2筒状部22の側方に配置されている。各センサ本体63は、当該センサ本体63の位置でのチューブ5内の温度を検出する。
【0086】
以上の次第で、本実施形態によると、センサ本体63を含む温度センサ31の少なくとも一部は、被処理物100を熱処理するためのチューブ5内に配置される。これにより、温度センサ31は、被処理物100のより近くにおいて温度を検出できる。よって、温度検出装置13は、熱処理時のチューブ5内の温度をより正確に検出できる。また、チューブ5内において、より高い耐熱温度を有する第2筒状部22寄りに、より高い耐熱温度を有する第2保護部42が配置される。これにより、第2筒状部22内における被処理物100の熱処理温度をより高くできる。すなわち、第2保護部42は、第2筒状部22内の高温雰囲気において、熱による劣化が抑制された状態で、この高温雰囲気に十分に耐えることができる。しかも、第2筒状部22内の高温雰囲気に耐える第2保護部42は、保護管32のうちの一部のみを構成している。このため、保護管32の全部が第2保護部42の素材と同じ素材で形成される場合と比べて、第2保護部42の内面などの加工作業は、より容易である。その結果、保護管32の製造が容易である。よって、熱処理装置1を、より容易且つ安価に製造できる。以上の次第で、熱処理時の温度をより正確に検出できるとともに、熱処理温度をより高くでき、劣化が抑制され、製造コストを低減でき、且つ、より容易に製造できる熱処理装置1を実現できる。
【0087】
また、本実施形態によると、保護管32の接続部40は、第1筒状部21および第2筒状部22のうちの第1筒状部21寄りに配置されている。この構成によると、第1筒状部21と第2筒状部22のうち、熱処理時により低い温度となる第1筒状部21寄りに、第1保護部41と第2保護部42との接続部40が配置されている。これにより、第1保護部41が過度に高温の雰囲気に曝されることを抑制できる。よって、保護管32の劣化をより確実に抑制できる。
【0088】
また、本実施形態によると、パージガス供給装置33が設けられている。この構成によると、チューブ5内において、保護管32内の気圧を、保護管32の外部の気圧よりも高くできる。これにより、たとえば、第1保護部41と第2保護部42との接続部40の間から、保護管32の内部に、チューブ5内の高温の熱処理用ガスが進入することを抑制できる。これにより、保護管32は、温度センサ31をより確実に保護できる。
【0089】
また、本実施形態によると、保護管32の第1保護部41は、第1筒状部21を貫通するように配置されることで、チューブ5の外部に延びている。この構成によると、温度センサ31の検出信号を取り出すための信号線61を、チューブ5内において比較的低温である領域からチューブ5の外部へ取り出すことができる。これにより、信号線61などの劣化をより確実に抑制できる。
【0090】
また、本実施形態によると、第1保護部41は、チューブ5内においては第1筒状部21に取り囲まれるように配置され、第2保護部42は、チューブ5内においては少なくとも第2筒状部22に取り囲まれるように配置されている。この構成によると、第1保護部41が過度に高温となることを抑制でき、且つ、第2保護部42内の温度センサ31によって、第2筒状部22内の温度を、より正確に検出できる。
【0091】
また、本実施形態によると、第2保護部42の耐熱温度は、第1保護部41の耐熱温度よりも高く設定されている。これにより、第2保護部42は、より高温雰囲気において、熱による劣化が抑制された状態で、この高温雰囲気に十分に耐えることができる。その上、保護管32の内部には、加圧されたパージガスが供給される。これにより、チューブ5内の高温の熱処理用ガスが保護管32内に進入することを抑制できる。したがって、チューブ5の第2筒状部22内が高温であっても、第2保護部42および温度センサ31を、この高温環境に直接配置できる。よって、温度検出装置13は、高温環境における温度をより正確に検出できる。また、高温雰囲気に耐える第2保護部42は、保護管32のうちの一部のみを構成している。このため、保護管32の全部が第2保護部42の素材と同じ素材で形成される場合と比べて、第2保護部42の内面などの加工作業は、より容易である。その結果、温度検出装置13を、より容易且つ安価に製造できる。以上の次第で、高温環境における温度をより正確に検出できるとともに、劣化が抑制され、製造コストを低減でき、且つ、より容易に製造できる温度検出装置13を実現できる。
【0092】
また、本実施形態によると、第1保護部41と第2保護部42との接続部40において、保護管32内の加圧されたパージガスが排気口53から排出される。このため、チューブ5内の熱処理用ガスが第1保護部41と第2保護部42との接続部40から保護管32内に進入することをより確実に抑制できる。これにより、第1保護部41が過度に高温の雰囲気に曝されることを抑制できる。よって、保護管32の劣化をより確実に抑制できる。また、第1保護部41と第2保護部42との間の接続部40から熱処理用ガスの進入を抑制するために、これらの保護部41,42間を厳密にシールする必要がない。このため、保護管32の製造を、より容易に行うことができる。
【0093】
また、本実施形態によると、接続部40の第2接続部52は、第1接続部47に突き合わされる突き合わせ部54と、突き合わせ部54から延び排気口53を取り囲む環状の鍔部55と、を有している。この構成によると、第2接続部52は、第1接続部47の周囲を取り囲んで保護する形状を有する。これにより、第1保護部41に高温の熱処理用ガスが触れることを、抑制できる。また、排気口53から保護管32の外部に排出されるパージガス(加圧気体)は、第1接続部47および第2接続部52のうちの第1接続部47側に流れる。これにより、このパージガスを、第1接続部47の周囲における気体カーテンとして用いることができる。よって、第1接続部47に高温の熱処理用ガスが触れることを、より確実に抑制できる。
【0094】
また、本実施形態によると、加圧気体受入部48は、第1保護部41に形成されている。この構成によると、加圧されたパージガスを、保護管32のうちのより低温側部分から、保護管32内に導入できる。これにより、保護管32内の温度が過度に高くなることを抑制できる。これにより、保護管32の劣化を、より確実に抑制できる。
【0095】
以上より、熱処理装置1について、高温環境における温度をより正確に検出できるとともに、劣化が抑制され、製造コストを削減でき、且つ、熱処理装置1をより容易に製造できる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0097】
(1)上述の実施形態では、センサ本体63が熱電対である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。センサ本体は、保護管32の第2保護部42内で温度を計測可能な構成であればよく、具体的な構成は限定されない。
【0098】
(2)また、上述の実施形態では、耐熱温度の高い材料として、SiCを例示した。しかしながら、この通りでなくてもよい。耐熱温度の高い材料として、SiC以外のセラミック材料が用いられてもよいし、カーボン材などが用いられてもよい。
【0099】
(3)また、上述の実施形態では、パージガスは、ポンプ35によって加圧されることで保護管32内に供給される構成を説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。パージガスは、加圧状態で保護管32内に供給さればよく、パージガスの加圧方法は、限定されない。