特許第6404691号(P6404691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404691
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】熱交換部品
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20181001BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20181001BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20181001BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   F28D7/16 F
   F28F21/04
   F01P3/20 F
   F01P7/16 504C
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-240567(P2014-240567)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-102605(P2016-102605A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】徳田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】川口 竜生
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 誠
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02471317(US,A)
【文献】 国際公開第2014/148584(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00−13/00
F28F 1/00− 1/44
F28F 11/00−19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の端面から第二の端面に貫通して、第一の流体の流路となる複数のセルを区画形成するセラミックスを主成分とする隔壁を有するハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の外周に嵌合した金属製の被覆部材と、
前記被覆部材の外周に接触して配置され、第二の流体の流路を形成する管状流通部であり、前記第二の流体がその内周面に接触する第二流体流通部と、
前記第二流体流通部の外周に配置され、前記第二流体流通部を包含するとともに、第三の流体を前記第二流体流通部の外周面及び前記被覆部材の外周面と接触するように流通させる流路となる第三流体流通部と、
を備える熱交換部品。
【請求項2】
記管状流通部は、前記被覆部材の外周に接触して巻き付けられ、螺旋状に配置されている請求項1に記載の熱交換部品。
【請求項3】
記管状流通部は、前記被覆部材の外周に接触して蛇行して配置されている請求項1に記載の熱交換部品。
【請求項4】
前記第二流体流通部は、前記被覆部材の外周に接触して格子状に配置されている請求項1に記載の熱交換部品。
【請求項5】
(前記第二流体流通部と前記被覆部材との接触面積)/(前記ハニカム構造体の外周表面積)は、0.01〜0.3である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換部品。
【請求項6】
(前記第二流体流通部の、前記第三の流体と接触する接触表面積)/(前記第二流体流通部の容積)は、0.3〜0.8である請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換部品。
【請求項7】
前記第二流体流通部を形成する管状流通部の隣接する前記管状流通部との距離は、0.3〜7.0mmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱交換部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流体間で熱交換するための熱交換部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃費改善が求められており、エンジン始動時などのエンジンが冷えている時の燃費悪化を防ぐため、冷却水やエンジンオイル、ATF(オートマチックトランスミッションフルード)等を早期に暖めて、フリクション(摩擦)損失を低減するシステムが期待されている。あるいは排ガス浄化用触媒を早期に活性化するために触媒を加熱するシステムが期待されている。
【0003】
自動車燃費の改善のためには、オイル温度を早期に上昇することが求められる。このため、自動車エンジンやトランスミッションオイルを最適な温度にすることを目的として、冷却水とオイルを熱交換するための、オイルウォーマーが用いられている。しかし、エンジン始動直後は冷却水温度が低く、冷却水の温度が上がるのに時間がかかる。その結果オイルウォーマーを用いても、オイルの温度上昇までに時間が掛かる課題がある。
【0004】
エンジン始動時のオイル温度を迅速に上昇させるためには、熱源として冷却水だけでなく、排ガスの排熱も利用することが期待される。例えば、特許文献1には、ハニカム構造体(第一流体流通部)とケーシング(第二流体流通部)からなる、熱交換器が記載されている。これによれば、第一流体流通部を流通する高温の排ガスと、第二流体流通部を流通する低温の液体との熱交換が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/071161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、流体としてオイルを流通させると、オイルは熱伝導性が悪いため、局所的に過熱されて品質劣化や焼付き等の問題が発生する可能性がある。つまり、第一の流体と第二の流体との二流体の熱交換の場合、高温の流体から低温の流体へ熱が伝えられるため、一方の流体の温度に他方の流体の温度が支配され、所望の温度とすることが難しいことがあった。
【0007】
本発明の課題は、熱交換する流体の温度を制御可能な熱交換部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、第一の流体の流路となるハニカム構造体を被覆する被覆部材の外周に接触して、第二の流体の流路を形成する管状流通部を配置し、さらに管状流通部を包含する外周流通部を配置することにより、上記課題を解決しうることを見出した。上記課題を解決するため、本発明によれば、以下の熱交換部品が提供される。
【0009】
[1] 第一の端面から第二の端面に貫通して、第一の流体の流路となる複数のセルを区画形成するセラミックスを主成分とする隔壁を有するハニカム構造体と、前記ハニカム構造体の外周に嵌合した金属製の被覆部材と、前記被覆部材の外周に接触して配置され、第二の流体の流路を形成する管状流通部であり、前記第二の流体がその内周面に接触する第二流体流通部と、前記第二流体流通部の外周に配置され、前記第二流体流通部を包含するとともに、第三の流体を前記第二流体流通部の外周面及び前記被覆部材の外周面と接触するように流通させる流路となる第三流体流通部と、を備える熱交換部品。
【0010】
[2] 記管状流通部は、前記被覆部材の外周に接触して巻き付けられ、螺旋状に配置されている前記[1]に記載の熱交換部品。
【0011】
[3] 記管状流通部は、前記被覆部材の外周に接触して蛇行して配置されている前記[1]に記載の熱交換部品。
【0012】
[4] 前記第二流体流通部は、前記被覆部材の外周に接触して格子状に配置されている前記[1]に記載の熱交換部品。
【0013】
[5] (前記第二流体流通部と前記被覆部材との接触面積)/(前記ハニカム構造体の外周表面積)は、0.01〜0.3である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱交換部品。
【0014】
[6] (前記第二流体流通部の、前記第三の流体と接触する接触表面積)/(前記第二流体流通部の容積)は、0.3〜0.8である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱交換部品。
【0015】
[7] 前記第二流体流通部を形成する管状流通部の隣接する前記管状流通部との距離は、0.3〜7.0mmである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の熱交換部品。
【発明の効果】
【0016】
熱交換部品が、熱交換するための第一の流体の流路、第二の流体の流路に加え、第三の流体の流路を有することにより、第三の流体により、第一の流体、第二の流体の温度を制御し、過昇温を防止することができる。特に、ハニカム構造体を被覆する被覆部材の外周に接触して配置され、第二の流体の流路を形成する管状流通部と、管状流通部を包含する外周流通部と、を備えることにより、各流体の温度を制御しやすい。本発明の熱交換部品は、熱伝導性が低い流体(例えばオイル)でも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】実施形態1の熱交換部品の軸方向を示す模式図である。
図1B】実施形態1の熱交換部品の軸方向に垂直な断面を示す模式図である。
図2A】ハニカム構造体を示す模式図である。
図2B】ハニカム構造体と被覆部材とを一体化するところを示す模式図である。
図2C】ハニカム構造体と被覆部材とが一体化された熱交換部材を示す模式図である。
図3A】実施形態1の軸方向における断面図である。
図3B】管状流通部の断面形状を楕円とした実施形態を示す断面図である。
図3C】管状流通部の断面形状を長方形とした実施形態を示す断面図である。
図4A】実施形態2の熱交換部品の軸方向を示す模式図である。
図4B】実施形態2の熱交換部品の軸方向に垂直な断面を示す模式図である。
図5A】実施形態3の熱交換部品の軸方向を示す模式図である。
図5B】実施形態3の熱交換部品の軸方向に垂直な断面を示す模式図である。
図6】実施形態4の熱交換部品の軸方向を示す模式図である。
図7】比較例1の熱交換部品の軸方向を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0019】
(実施形態1)
(熱交換部品)
図1A及び図1Bに、熱交換部品30の実施形態1を示す。熱交換部品30は、第一の端面2(2a)から第二の端面2(2b)に貫通して、第一の流体の流路となる複数のセル3を区画形成するセラミックスを主成分とする隔壁4を有するハニカム構造体1と、ハニカム構造体1の外周に嵌合した金属製の被覆部材11と、被覆部材11の外周に接触して配置され、第二の流体の流路を形成する管状流通部32と、管状流通部の外周に配置され、管状流通部32を包含するとともに、第三の流体を管状流通部32及び被覆部材11と接触するように流通させる流路となる外周流通部33と、を備える。すなわち、熱交換部品30は、第一の流体の流路であるハニカム構造体1の第一流体流通部25、第二の流体の流路である管状流通部32の第二流体流通部26、第三の流体の流路である外周流通部33の第三流体流通部27を備える。熱交換部品30は、前記流体を相互に混合させずに流通させる。つまり、流体を隔離しつつ、相互に熱交換を行う。
【0020】
熱交換部品30は、第一の流体と第二の流体との間で熱交換することができるのみならず、第二の流体の外周側に第三の流体の流路を備えるため、第二の流体の温度制御を可能とする機能を有する。例えば、熱交換前に第一の流体が第二の流体よりも高温で、第三の流体が第二の流体よりも低温の場合、第二の流体は第一の流体との熱交換により温度が上昇するが、第三の流体との熱交換により温度を低下させることが可能である。
【0021】
熱交換部品30が、熱交換するための第一の流体の流路、第二の流体の流路に加え、第三の流体の流路を有することにより、第三の流体により、第一の流体、第二の流体の温度を制御し、過昇温を防止することができる。例えば、熱交換部品30を車両に取り付け、第一の流体として、排ガス、第二の流体として、オイル、第三の流体として水を流通させると、排ガスからの熱が被覆部材11の外周と管状流通部32の接触部を介して、管状流通部32内のオイルに熱伝達される。つまり、排ガスからオイルへ熱伝達して、迅速にオイルの温度を上昇させることができる。また、第三の流体として水を流通させているため、排ガスの温度が高くなってもオイル接触面が過熱されることなく、オイルの劣化を防止することができる。具体的には、以下の(a)〜(c)ように利用することができる。
【0022】
(a)オイル温度が低い(加熱したい)ときは、排ガスからの熱が被覆部材11の外周と管状流通部32の接触部を介して、管状流通部32に熱伝達される。これにより、管状流通部32内を流れるオイルの温度を上昇させることができる。また管状流通部32をコイル状(螺旋状)に巻きつけて、オイルの滞留時間を長くすることで、伝熱性の悪いオイルの温度を効率よく上昇させることができる。
【0023】
(b)オイル温度の上昇後、または排ガス温度が高いときでも、被覆部材11の外周面11hと管状流通部32の外周には冷却水を接触させているため、オイル接触面が過熱されることなく、オイルの劣化を防止することができる。
【0024】
(c)冷却水とオイルの流量を変えることで、伝熱量のバランス調整が可能である。具体的には、オイルを優先的に加熱したい場合には、冷却水の量を減らして水温を高め、オイルとの温度差を大きくすることで、オイルへの伝熱量を増大させることができる。また、オイル温度が上がりすぎた場合には、冷却水の量を増加させて、オイル温度上昇を抑えることができる。
【0025】
また、熱交換部品30は、各流体の流入をON/OFFすることにより、熱交換させたい流路間のみの熱交換が可能である。例えば、第一の流体を気体、第二の流体を液体、第三の流体を液体とすると、第三の流体のみをOFF(流入させない)とした場合、気体(第一の流体)/液体(第二の流体)間のみの熱交換が可能である。また、第一の流体のみをOFF(流入させない)とした場合、液体(第二の流体)/液体(第三の流体)間のみの熱交換が可能である。あるいは、すべての流体を流入させた場合、気体(第一の流体)/液体(第二の流体)/液体(第三の流体)間の熱交換が可能となる。つまり、熱交換部品30は、第一の流体〜第三の流体のいずれかを流入させないようにして二流体の熱交換に用いることもできる。あるいは、熱交換部品30が、流体の流路として、第一流体流通部25、第二流体流通部26、第三流体流通部27以外の流路を備えるように構成して、四流体以上の熱交換に用いるようにすることもできる。
【0026】
以下、具体的に各構成部材について説明する。
【0027】
(ハニカム構造体)
図2Aに、ハニカム構造体1の模式図を示す。ハニカム構造体1は、セラミックスで柱状に形成され、軸方向の第一の端面2(2a)から第二の端面2(2b)まで貫通する流体の流路を有するものである。ハニカム構造体1は、隔壁4を有し、隔壁4によって、流体の流路となる多数のセル3が区画形成されている。隔壁4を有することにより、ハニカム構造体1の内部を流通する流体からの熱を効率よく集熱し、外部に伝達することができる。
【0028】
ハニカム構造体1の外形は、円柱状に限らず、軸(長手)方向に垂直な断面が楕円形であってもよい。また、ハニカム構造体1の外形は、角柱状、すなわち、軸(長手)方向に垂直な断面が、四角形、またはその他の多角形であってもよい。
【0029】
熱交換部品30は、ハニカム構造体1がセラミックスを主成分とすることにより、隔壁4や外周壁7の熱伝導率が高まり、その結果として、隔壁4や外周壁7を介在させた熱交換を効率良く行わせることができる。なお、本明細書にいうセラミックスを主成分とするとは、セラミックスを50質量%以上含むことをいう。
【0030】
ハニカム構造体1の気孔率は、10%以下であることが好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。
【0031】
ハニカム構造体1は、特に伝熱性を考慮すると、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)が主成分であることが好ましい。なお、主成分とは、ハニカム構造体1の50質量%以上が炭化珪素であることを意味する。
【0032】
さらに具体的には、ハニカム構造体1の材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si、及びSiC等を採用することができる。ただし、多孔体の場合は高い熱伝導率が得られないことがあるため、高い熱交換率を得るためには、緻密体構造(気孔率5%以下)とすることが好ましく、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを採用することが好ましい。SiCは、熱伝導率が高く、放熱しやすいという特徴を有するが、Siを含浸するSiCは、高い熱伝導率や耐熱性を示しつつ、緻密に形成され、伝熱部材として十分な強度を示す。例えば、SiC(炭化珪素)の多孔体の場合、20W/(m・K)程度であるが、緻密体とすることにより、150W/(m・K)程度とすることができる。熱伝導率の測定は、ハニカム構造体1から切り出したテストピースに対して、光交流法で測定した熱拡散率、DSC(Differen−tial Scanning Calorimetry:示差走査熱量分析)法で測定した比熱、及びアルキメデス法で測定した密度の値を用いて、室温における値を算出する。
【0033】
ハニカム構造体1のセル3の軸方向に垂直な断面のセル形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
【0034】
ハニカム構造体1のセル密度(即ち、単位断面積当たりのセルの数)については特に制限はなく、目的に応じて適宜設計すればよいが、25〜2000セル/平方インチ(4〜320セル/cm)の範囲であることが好ましい。セル密度を25セル/平方インチ以上とすることにより、隔壁4の強度、ひいてはハニカム構造体1自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。また、2000セル/平方インチ以下とすることにより、熱媒体が流れる際の圧力損失が大きくなることを防止することができる。
【0035】
ハニカム構造体1のアイソスタティック強度は、1MPa以上が好ましく、5MPa以上がさらに好ましい。このような強度を有すると、耐久性を十分なものとすることができる。
【0036】
アイソスタティック強度は以下の方法で求める。ハニカム構造体1の外周面に、厚さ0.5mmのウレタンゴム製のシートを巻き付ける。更に、ハニカム構造体の両端面に、円形のウレタンゴム製のシートを挟んで、厚さ20mmのアルミニウム製の円板を配置する。アルミニウム製の円板、及びウレタンゴム製のシートは、ハニカム構造体の端面の半径と同じ半径のものを用いる。アルミニウム製の円板の外周に沿ってビニールテープで巻くことにより、アルミニウム製の円板の外周とウレタンゴム製のシートとの間を封止して、試験用サンプルとする。
【0037】
作製した試験用サンプルを水の入った圧力容器に入れる。そして0.3〜3.0MPa/分の速度で圧力を上昇させて所定の静水圧を試験用サンプルにかけ、ハニカム構造体の破壊及びクラックの発生を確認する。クラックの発生の有無は、試験中の破壊音の確認と、試験後にハニカム構造体の外観を目視することによって行ない、クラックが発生していない場合は、さらに静水圧を上昇させて、アイソスタティック強度を評価する。
【0038】
ハニカム構造体1の直径は、200mm以下であることが好ましく、100mm以下であることが好ましい。このような直径とすることにより、熱交換効率を向上させることができる。
【0039】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の厚さ(壁厚)についても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。壁厚を0.1〜1mmとすることが好ましく、0.2〜0.6mmとすることが更に好ましい。壁厚を0.1mm以上とすることにより、機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によって破損することを防止することができる。また、1mm以下とすることにより、流体の圧力損失が大きくなったり、熱交換率が低下するといった不具合を防止することができる。
【0040】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の密度は、0.5〜5g/cmであることが好ましい。0.5g/cm以上とすることにより、隔壁4を十分な強度とし、第一流体が流路内を通り抜ける際に圧力により隔壁4が破損することを防止することができる。また、5g/cm以下とすることにより、ハニカム構造体1を軽量化することができる。上記の範囲の密度とすることにより、ハニカム構造体1を強固なものとすることができ、熱伝導率を向上させる効果も得られる。
【0041】
ハニカム構造体1は、熱伝導率が50W/(m・K)以上であることが好ましい。より好ましくは、100〜300W/(m・K)、さらに好ましくは、120〜300W/(m・K)である。この範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率よくハニカム構造体1内の熱を被覆部材11の外側に排出できる。
【0042】
熱交換部品30は、第一の流体として排ガスを流す場合、ハニカム構造体1の隔壁4に触媒を担持させることが好ましい。このように隔壁4に触媒を担持させると、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になり、これに加えて、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることが可能になる。本発明のハニカム構造体1に用いる触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有すると良い。ここに挙げた触媒は、金属、酸化物、およびそれ以外の化合物であっても良い。
【0043】
第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1の第一流体流通部25のセル3の隔壁4に担持される触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましく、貴金属であれば0.1〜5g/Lであることが更に好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が発現しやすい。一方、400g/L以下とすると、圧力損失を抑え、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0044】
(被覆部材)
被覆部材11は、ハニカム構造体1の外周に嵌合した金属製の管である。本明細書では、ハニカム構造体1と被覆部材11とを合わせて熱交換部材10と呼ぶ。図2Bに示すように、ハニカム構造体1を被覆部材11に挿入して焼きばめにより一体化し、図2Cに示すように、熱交換部材10を形成することができる。なお、ハニカム構造体1と被覆部材11との接合は、焼きばめ以外に、圧入やろう付け、拡散接合等を用いてもよい。
【0045】
ハニカム構造体1を被覆する被覆部材11は、第一の流体や第二の流体を流通(透過)させず、熱伝導性がよく、耐熱性、耐蝕性のあるものが好ましい。被覆部材11としては、金属管、セラミックス管等が挙げられる。金属管の材質としては、例えば、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができる。
【0046】
被覆部材11がハニカム構造体1の外周面7hを被覆しているため、ハニカム構造体1の内部を流れる第一の流体とハニカム構造体1の外部を流れる第二の流体とを混合させずに、それぞれを流通させ、熱交換させることができる。また、熱交換部材10は、被覆部材11を備えるため、設置場所や設置方法により加工することが容易であり、自由度が高い。熱交換部材10は、被覆部材11によってハニカム構造体1を保護することができ外部からの衝撃にも強い。
【0047】
(管状流通部)
管状流通部32は、被覆部材11の外周に接触して配置されている。第二流体流通部26を構成する管状流通部32は、第二の流体や第三の流体を透過させず、熱伝導性がよく、耐熱性、耐蝕性のあるもので形成されることが好ましい。管状流通部32を形成する材料としては、金属、セラミックス等が挙げられる。金属としては、例えば、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができる。
【0048】
図1A及び図1Bに示す実施形態1では、管状流通部32は、被覆部材11の外周面11hに接触して巻き付けられ、螺旋状に配置されている。
【0049】
管状流通部32の断面形状としては、円、楕円、四角形(正方形、長方形)等を挙げることができるがこれに限定されない。図1Aの実施形態1は、管状流通部32の断面形状を円とした例である。また、図3Aは、実施形態1の軸方向における断面図である。第一の流体(例えば、排ガス)からの熱が被覆部材11の外周と管状流通部32の接触部を介して、管状流通部32内の第二の流体(例えば、オイル)に熱伝達される。また、第三の流体(例えば、水)が被覆部材11の外周面11hと管状流通部32の外周に接触しているため、第三の流体により、第一の流体、第二の流体の温度を制御し、過昇温を防止することができる。また、図3Bは、管状流通部32の断面形状を楕円とした実施形態を示す断面図である。さらに、図3Cは、管状流通部32の断面形状を長方形とした実施形態を示す断面図である。
【0050】
(外周流通部)
第三流体流通部27を構成する外周流通部33は、熱交換部材10(ハニカム構造体1、被覆部材11)、管状流通部32を包含している。外周流通部33は、管状流通部32やハニカム構造体1を包含するように備えられていれば、形状は限定されない。第三流体流通部27を構成する外周流通部33は、第三の流体を透過させず、熱伝導性がよく、耐熱性、耐蝕性のあるものが好ましい。外周流通部33を構成する材料としては、金属、セラミックス等が挙げられる。金属としては、例えば、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができる。
【0051】
(熱交換部品の製造方法)
次に、熱交換部品30の製造方法を説明する。まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム構造体1の材料としては、前述のセラミックスを用いることができるが、例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム構造体1を製造する場合、所定量のSiC粉末、バインダー、水又は有機溶媒を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得る。そしてハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁4によってガスの流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1を得ることができる。
【0052】
続いて、被覆部材11を昇温させ、図2B、および図2Cに示すように、ハニカム構造体1を被覆部材11に挿入して焼きばめにより一体化し、熱交換部材10を形成することができる。なお、ハニカム構造体1と被覆部材11との接合は、焼きばめ以外に、圧入やろう付け、拡散接合等を用いてもよい。
【0053】
その後、金属製の管状流通部32を熱交換部材10に接触させて配置する。その後、外周流通部33によりこれらを覆い、3流路で構成される熱交換部品30とすることができる。
【0054】
(実施形態2)
図4A及び図4Bに実施形態2の熱交換部品30を示す。管状流通部32は、被覆部材11の外周に接触して蛇行して配置されている。図4Aに示す実施形態2は、軸方向に沿う形で管状流通部32が蛇行しているが、周方向に沿う形で蛇行させることもできる。
【0055】
(実施形態3)
図5A及び図5Bに実施形態3の熱交換部品30を示す。管状流通部32は、被覆部材11の外周に接触して格子状に配置されている。図5Aに示す実施形態3は、軸方向に沿った軸方向流通部32jと周方向に沿った周方向流通部32kとを含む。複数の軸方向流通部32jの両端が周方向流通部32kに接続されており、周方向流通部32kを流通する第二の流体は、枝分かれして軸方向流通部32jへ流通し、その後、これらが周方向流通部32kに集まるように構成されている。
【0056】
(実施形態4)
図6に実施形態4の熱交換部品30を示す。図6の実施形態は、管状流通部32が実施形態1のように、被覆部材11の外周に接触して巻き付けられ、螺旋状に配置されているのに加え、管状流通部32が軸方向に湾曲している。これにより、管状流通部32の長さが長くなるため、熱交換が起こりやすくなり、熱交換効率を向上させることができる。実施形態4は、実施形態1の管状流通部32を湾曲させたものであるが、このように管状流通部32を湾曲させることは、実施形態1に限らず、他の実施形態でも同様に行うことができる。
【0057】
実施形態1〜4のいずれにおいても、(管状流通部と被覆部材との接触面積)/(ハニカム構造体の外周表面積)は、0.01〜0.3であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.2、さらに好ましくは、0.1〜0.2である。熱交換に寄与するのはハニカム構造体1の外周面7hの面積のため、上記の式では、ハニカム構造体1の外周表面積を分母としている。上記の式の数値が大きいほど第一の流体と第二の流体との熱交換効率を向上させることができるが、例えば、第二の流体がオイルの場合、オイルの劣化や焼きつきが発生しやすくなる。この範囲とすることにより、熱交換効率を向上させて、第二の流体の劣化や焼きつきを防止できる。特に、実施形態2,3では、焼きつきを防止するために、上記の式の数値の上限を抑えることが好ましい。
【0058】
実施形態1〜4のいずれにおいても、(管状流通部の、第三の流体と接触する接触表面積)/(管状流通部の容積)は、0.3〜0.8であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜0.8、さらに好ましくは、0.7〜0.8である。数値が大きいほど第二の流体と第三の流体との熱交換効率を向上させることができ、第二の流体がオイルの場合、オイルの劣化や焼きつきが発生しにくくなる。数値が大きいほど、熱交換効率を向上させて、第二の流体の劣化や焼きつきを防止できるが製作が困難になり、第二の流体の流れの抵抗が大きくなる。特に、実施形態2,3では、焼きつきを防止するために、上記の式の数値を大きくすることが好ましい。
【0059】
実施形態1〜4のいずれにおいても、第二流体流通部を形成する管状流通部32の隣接する管状流通部32との距離は、0.3〜7.0mmであることが好ましい。より好ましくは、0.3〜4.0mm、さらに好ましくは、0.3〜2.0mmである。数値が小さいと管状流通部32と被覆部材11との接触面積を大きくできるが、製作が困難となる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
(ハニカム構造体の製造)
Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム構造体1を、以下のように作製した。まず、所定量のSiC粉末、バインダー、水又は有機溶媒などを混練した成形用原料を、所望の形状に押し出し、乾燥してハニカム成形体を得た。ハニカム成形体の上に金属Siの塊を載せ、真空中または減圧の不活性ガス中で、焼成をした。この焼成中に、ハニカム成形体の上に載せた金属Siの塊を融解させ、外周壁7や隔壁4に金属Siを含浸させた。このように作製したハニカム構造体1は、SiC粒子の隙間に金属Siが充填された緻密質の材料となっており、熱伝導が約150W/(m・K)と高い熱伝導性を示した。ハニカム構造体1の形状は、直径40mm、長さ100mmで、セル構造部分は、隔壁4の厚み約0.4mm、セルピッチ約1.8mmであった。
【0062】
(流体流路の作製)
ステンレスの金属管(被覆部材11)をハニカム構造体1の外周面7hに焼きばめにより嵌合させて熱交換部材10を製造し(図2B及び図2C参照)、ステンレスからなる管状流通部32を熱交換部材10の外周に接触させて配置した。その後、ステンレスからなる外周流通部33によりこれらの外側を覆い、3流路で構成される流体流路を作製した(図1A参照)。
【0063】
(熱交換効率試験)
第一の流体(ガス)を熱交換部材10のハニカム構造体1のセル3中を通過させ、第二の流体(オイル)を管状流通部32内、第三の流体(水)を外周流通部33内に流入させ、熱交換効率を測定した。第一の流体として大気ガスを用いて、温度400℃で流量10g/sec(0.464Nm/min)にてセル3内に流した。また、第二の流体としてオイルを用いて、第一の流体と対向する方向に60℃で10L/minの流量を流した。第三の流体として水を用いて、30℃で0〜10L/minの流量を流した。ただし、第三の流体がない「水無し」の場合も測定し、「水無し状態からのオイル温度低下」の基準とした。
【0064】
熱交換部材10のセル3の入口より20mm上流を流れる第一の流体の温度を「入口ガス温」、セル3の出口より200mm下流を流れる第一の流体の温度を「出口ガス温」とした。管状流通部32の入口を通過するオイルの温度を「入口オイル温」、管状流通部32の出口を通過するオイルの温度を「出口オイル温」とした。外周流通部33の入口を通過する水の温度を「入口水温」、外周流通部33の間の出口を通過する水の温度を「出口水温」とした。
【0065】
これらの温度から、ガスとオイルの間の熱交換効率(%)を下記式にて算出した。
熱交換効率(%)=(入口ガス温−出口ガス温)/(入口ガス温−入口オイル温)×100
【0066】
水(第三の流体)が無い場合または水(第三の流体)を流さなかった場合のガス(第一の流体)とオイル(第二の流体)との熱交換効率試験の結果、あるいは水(第三の流体)を流した場合のガス(第一の流体)とオイル(第二の流体)との熱交換効率試験の結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
(ハニカム構造体の製造)
実施例1と同じハニカム構造体1を作製した。
【0068】
(流体流路の作製)
ステンレスの金属管をハニカム構造体1の外周面7hに焼きばめにより嵌合させて熱交換部材10を製造し、ステンレスからなるケーシング41内に熱交換部材10を配置した。比較例1は、実施例と異なり、管状流通部32がない熱交換部品40である(図7参照)。ケーシング41は、外周流通部33に相当するが、外周流通部33内には、オイルを流入させた。つまり、実施例1では、管状流通部32にオイルを流入させたが、比較例1は、管状流通部32がなく、第一の流体(ガス)を熱交換部材10のハニカム構造体1のセル3中を通過させ、第二の流体(オイル)をケーシング41内に流入させた。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例1は、図1Aに示すように、管状流通部32を有し、通常、水を外周流通部33内に流入させながらオイルを管状流通部32内に流入させる使い方を想定しているものである。ただし、「水無し状態からのオイル温度低下」の基準とするため、「水無し」の場合を測定したが、「水無し」の状態でオイル焼きつきが生じたとしても、水を流した状態でオイル焼きつきが解消され、問題はなかった。また、実施例1では、「水無し」の場合でも、オイルが流れた際、熱交換部材10の外周との接触距離(時間)を長く確保でき、かつオイルの流れが乱れやすくなるため、オイル全体の温度を効率よく加温できた。
【0071】
また、実施例1は、「水無し」の場合でも水を流した場合でも、ガス(第一の流体)−オイル(第二の流体)間の熱交換が効率的に行なわれ、オイル温度を効率よく加温することができた。さらに、水流量を調整することにより、広い温度域でのオイルの温度制御が可能となった。一方、水を用いることにより、配管内壁へのオイル焼きつきなどの不具合は見られなかった。
【0072】
一方、比較例1では、オイルが軸方向に短いルートで通過するため、熱交換部材10の外周との接触距離(時間)が短くなり、かつオイルの流れが乱れにくいためオイル全体の温度が加温されにくかった。比較例1は、排ガスからの熱が被覆部材11を通じオイルに直接伝達されるが、被覆部材11の表面近傍のオイルが過熱されることで、品質劣化や焼付きが発生した。また、オイルの滞留時間が短く、熱交換の効率が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の熱交換部品は、加熱体(高温側)と被加熱体(低温側)との間で熱交換する用途に用いることができる。自動車分野で排ガスから排熱回収用途で使用する場合は、自動車の燃費向上に役立てることができる。
【符号の説明】
【0074】
1:ハニカム構造体、2:(軸方向の)端面、2a:第一の端面、2b:第二の端面、3:セル、4:隔壁、7:外周壁、7h:(ハニカム構造体の)外周面、10:熱交換部材、11:被覆部材、11h:(被覆部材の)外周面、25:第一流体流通部、26:第二流体流通部、27:第三流体流通部、30:熱交換部品、32:管状流通部、32j:軸方向流通部、32k:周方向流通部、33:外周流通部、40:熱交換部品、41:ケーシング。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7