(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記学習用把持データ、及び前記第一検証用把持データの時間変動を示す、学習用時間変動把持データ、及び第一検証用時間変動把持データを算出する時間変動算出手段をさらに備え、
前記把持状態記憶手段は前記学習用時間変動把持データから導出された前記特徴量を記憶し、前記認証手段は、前記特徴量と前記第一検証用時間変動把持データとに基づいて、前記ユーザの認証を行う、請求項1に記載の個人認証装置。
前記時間変動算出手段により算出された前記学習用時間変動把持データ及び前記第一検証用時間変動把持データの頻度分布を示す学習用確率密度関数及び第一検証用確率密度関数を生成する確率密度関数生成手段をさらに備え、
前記認証手段は、前記学習用確率密度関数と第一検証用確率密度関数との類似度に基づいて、前記ユーザの認証を行う、請求項2に記載の個人認証装置。
前記学習用把持データ、前記追加学習用把持データ、及び前記第二検証用把持データの時間変動を示す、学習用時間変動把持データ、追加学習用時間変動把持データ、及び第二検証用時間変動把持データを算出する時間変動算出手段をさらに備え、
前記第一比較手段は、前記第二検証用時間変動把持データと前記学習用時間変動把持データから導出された特徴量とを比較し、
前記第二比較手段は、前記第二検証用時間変動把持データと前記追加学習用時間変動把持データから導出された特徴量とを比較し、
前記把持状態記憶手段は、前記第一比較手段及び前記第二比較手段の比較結果に基づいて、前記追加学習用時間変動把持データから導出された特徴量を新たな特徴量として記憶する、請求項5に記載の個人認証装置。
前記時間変動算出手段により算出された前記学習用時間変動把持データの頻度分布を示す学習用確率密度関数、前記時間変動算出手段により算出された前記追加学習用時間変動把持データの頻度分布を示す追加学習用確率密度関数、及び前記時間変動算出手段により算出された前記第二検証用時間変動把持データの頻度分布を示す第二検証用確率密度関数を生成する確率密度関数生成手段をさらに備え、
前記第一比較手段は、前記第二検証用確率密度関数と前記学習用確率密度関数とを比較し、
前記第二比較手段は、前記第二検証用確率密度関数と前記追加学習用確率密度関数とを比較し、
前記把持状態記憶手段は、前記第一比較手段及び前記第二比較手段の比較結果に基づいて、前記追加学習用確率密度関数から導出された特徴量を新たな特徴量として記憶する、請求項6に記載の個人認証装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る個人認証装置、及び個人認証方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の概要を示す図である。
図1に示すように個人認証装置10は、例えばスマートフォン、携帯電話機、タブレット端末のような携帯端末30の個人認証を行う装置である。携帯端末30と個人認証装置10とは、移動通信網、無線LAN等に代表されるネットワークNを介して通信が可能である。なお、携帯端末30は、スマートフォン等に限られず、ユーザが持ち運び可能な端末であればよい。
【0022】
携帯端末30は、携帯端末30の位置、姿勢、動き等の状態を示すモーションデータを検出するモーションセンサ、及び携帯端末30に対するユーザの手の接触状態を示す接触データを検出する接触センサを備える。
【0023】
モーションセンサは、例えば携帯端末30が備える加速度センサである。携帯端末30は、加速度センサを用いてモーションデータを検出し、モーションデータとモーションデータが検出された時刻とを、個人認証装置10に送信する。
【0024】
携帯端末30においてモーションデータを検出するタイミングは、例えば1秒あるいは1分ごとのように定期的なタイミングに設定される。なお、携帯端末30がモーションデータを検出するタイミングは、定期的な場合に限られず、例えば携帯端末30に対して特定のアクションがなされたタイミングであってもよい。また、モーションデータを検出するセンサは、位置、姿勢、動き等の状態を示すモーションデータを検出できるセンサであれば、その種類を問わない。例えば、携帯端末30は、角速度センサ、方位センサ等を用いて、モーションデータを検出してもよい。
【0025】
接触センサは、例えば携帯端末30が備える圧力センサである。携帯端末30は、圧力センサを用いて接触データを検出し、接触データと接触データが検出された時刻とを、個人認証装置10に送信する。また、本実施形態では、ユーザが携帯端末30を把持した場合にユーザの手が接触する携帯端末30の部分に、複数(N個)の圧力センサがタイル状に整列して配置されている。なお、ユーザの手が接触する携帯端末30の部分に配置されるような態様であれば、N個の圧力センサは整列していなくてもよい。
【0026】
携帯端末30において接触データを検出するタイミングは、例えば1秒あるいは1分ごとのように定期的なタイミングに設定される。なお、携帯端末30が接触データを検出するタイミングは、定期的な場合に限られず、例えば携帯端末30に対して特定のアクションがなされたタイミングであってもよい。また、接触データを検出するセンサは、ユーザが所有する携帯端末30に対するユーザの手の接触状態を示す接触データが取得できるセンサであれば、その種類は問わない。
【0027】
次に、個人認証装置10の構成を説明する。
図2は、個人認証装置10の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、個人認証装置10は、機能的には、モーションデータ取得部11(データ取得手段)、接触データ取得部12(データ取得手段、学習用接触データ取得手段)、静止状態判定部13(静止状態判定手段)、ノイズ除去部14、把持状態判定部15(把持状態判定手段)、較正データ抽出部16(較正データ抽出手段)、把持データ較正部17(把持データ較正手段、学習用把持データ較正手段、第一検証用把持データ較正手段、第二検証用把持データ較正手段)、時間変動算出部18(時間変動算出手段)、確率密度関数生成部19(確率密度関数生成手段)、特徴ベクトル生成部20、把持状態情報記憶部21(把持状態記憶手段)、認証部22(認証手段)、追加学習用把持データ設定部23(追加学習用把持データ設定手段)、及び比較部24(第一比較手段、第二比較手段)と、を備える。
【0028】
図3は、個人認証装置10のハードウェア構成図である。個人認証装置10は、物理的には、
図3に示すように、CPU101、主記憶装置であるRAM102及びROM103、データ送受信デバイスである通信モジュール104、ハードディスク、フラッシュメモリ等に例示される補助記憶装置105、入力デバイスであるタッチパネル及びキーボード等に例示される入力装置106、ディスプレイ等の出力装置107などを含むコンピュータシステムとして構成されている。
図2に示した各機能は、
図3に示すCPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール104、入力装置106、出力装置107を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置105におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0029】
再び、
図2を参照し、個人認証装置10の各機能部について詳細に説明する。
【0030】
モーションデータ取得部11は、ユーザが所有する携帯端末30の位置、姿勢、動き等の状態を示すモーションデータを携帯端末30から取得する部分である。モーションデータとモーションデータが検出された時刻とが、携帯端末30から個人認証装置10に送信されることにより、モーションデータ取得部11は、モーションデータとモーションデータが検出された時刻とを取得する。モーションデータ取得部11は、取得したモーションデータとモーションデータが検出された時刻とを、静止状態判定部13に引き渡す。
【0031】
ここで、モーションデータ取得部11が携帯端末30からモーションデータとモーションデータが検出された時刻とを取得するタイミングは、例えば1秒あるいは1分ごとのように定期的なタイミングに設定される。なお、モーションデータ取得部11が携帯端末30からモーションデータとモーションデータが検出された時刻とを取得するタイミングは、定期的な場合に限られず、例えば携帯端末30に対して特定のアクションがなされたタイミングであってもよい。また、モーションデータ取得部11は、携帯端末30がモーションデータを検出した全てのタイミングに連動させて、モーションデータを取得しなくてもよい。例えば、携帯端末30がモーションデータを1秒ごとに検出する場合、モーションデータ取得部11は、1秒ごとにモーションデータを取得することとしてもよいし、1分ごとに取得することとしてもよい。
【0032】
接触データ取得部12は、ユーザが所有する携帯端末30に対するユーザの手の接触状態を示す接触データを携帯端末30から取得する部分である。本実施形態では、携帯端末30は、携帯端末30が備える圧力センサを用いて接触データを検出するものとする。
【0033】
すなわち、接触データ取得部12は携帯端末30から、N個の接触データ(以下、「接触データ群」という。)と接触データ群を検出した時刻とを取得する。また、接触データ取得部12は、取得した接触データ群と接触データ群が検出された時刻とを、ノイズ除去部14、把持状態判定部15、及び較正データ抽出部16に引き渡す。なお、本実施形態では、接触データ群には、較正用接触データ群、学習用接触データ群、第一検証用接触データ群、及び第二検証用接触データ群がある。較正用接触データ群は、学習用接触データ群、第一検証用接触データ群、及び第二検証用接触データ群を較正(キャリブレーション)するための較正データを抽出するためのデータである。学習用接触データ群はユーザを認証する際に照会するデータの基となるデータである。第一検証用接触データ群は、ユーザを認証する際の対象となる接触データ群であり、学習用接触データ群よりも後に取得される。第二検証用接触データ群は、後述する追加学習用JS情報量特徴ベクトルを学習用JS情報量特徴ベクトルとして把持状態情報記憶部21に追加で記憶させるか否かの判断の際用いられる接触データ群であり、第一検証用接触データ群よりも後に取得される。
【0034】
例えば、N個整列して配置しているうちのi番目(i=1,・・・・N)の圧力センサから、時刻tにおいて検出された接触データをf
i(t)とした場合、接触データ取得部12によってN個の圧力センサから得られる接触データ群は下記式(1)のように表される。
【数1】
【0035】
ここで、接触データ取得部12が携帯端末30から接触データと接触データが検出された時刻とを取得するタイミングは、例えば1秒あるいは1分ごとのように定期的なタイミングに設定される。なお、接触データ取得部12が携帯端末30から接触データと接触データが検出された時刻とを取得するタイミングは、定期的な場合に限られず、例えば携帯端末30に対して特定のアクションがなされたタイミングであってもよい。
【0036】
また、接触データ取得部12は、携帯端末30が接触データを検出した全てのタイミングに連動させて、接触データを取得しなくてもよい。例えば、携帯端末30が接触データを1秒ごとに検出する場合、接触データ取得部12は、1秒ごとに接触データを取得することとしてもよいし、1分ごとに取得することとしてもよい。
【0037】
図4は、携帯端末30が検出する接触データの一例を示す図である。
図4(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ異なるタイミングの接触データを示している。X軸の値は、接触データ群が取得された時刻を示す。Y軸の値は、接触データの値であるセンサ値を示す。Z軸の値は、接触データ群のi番目のデータを示す。
【0038】
静止状態判定部13は、モーションデータ取得部11から取得したモーションデータとモーションデータが検出された時刻に基づいて、携帯端末30が静止状態であるか否かを判定する部分である。携帯端末30が静止状態であるかの判断は、例えば次のように行われる。
【0039】
携帯端末30によりモーションデータが検出された時刻をTs≦t≦Teとすると、静止状態判定部13は、Ts≦t≦Teの期間内のモーションデータMS(t)をフーリエ変換し、パワースペクトラムPS
MS(ω)を算出する。そして、周波数ωTh以上のパワースペクトラムPS
MS(ω)の和が、下記式(2)の条件を満たす場合、携帯端末30は静止状態であると判定される。静止状態判定部13は、静止状態であるか否かの判定結果を、把持状態判定部15に引き渡す。
【数2】
なお、上記式(2)の右辺におけるThresholdOfMotionSensorSpectrumは、静止状態を判定するための閾値である。この閾値は、例えば実験的なデータから定められる値である。
【0040】
ノイズ除去部14は、接触データ群に含まれるノイズを除去し、ノイズを除去した接触データ群を、把持状態判定部15に引き渡す部分である。ノイズ除去部14は、当該接触データ群の検出に係る過渡状態に起因するノイズ、パルスノイズ、接触データ群に対するウェーブレットシュリンケージにより除去可能なノイズ、接触データ群の検出に係る直流成分に起因するノイズ及びガウスノイズのうちの少なくとも1つを除去できる。本実施形態では、ノイズ除去部14は、接触データ群について、これらのノイズの全てを除去することができる。以下に、ノイズの除去について具体的に説明する。
【0041】
ノイズ除去部14は、接触データ群の検出に係る過渡状態に起因するノイズを以下のように除去する。接触データf
i(t)が取得された時間をTs≦t≦Teとすると、ノイズ除去部14は、下記式(3)に示すように、接触データの取得開始直前及び直後のδtの時間のデータを除去する。接触データの取得開始直前及び直後については、接触データの変動が大きいと考えられるため(過渡状態)、確実に把持されている状態を判断するために用いるデータとしては適当でないためである。
【数3】
【0042】
次に、ノイズ除去部14は、パルスノイズを次のように除去する。接触データf
i(t)が下記式(4)に示す条件を満たす場合には、接触データがパルスノイズを含むものと判断できるので、ノイズ除去部14は、下記式(4)の条件を満たした接触データf
i(t)が取得された時刻tにおけるN個全ての接触データ(接触データ群)を、処理対象から除外する。
【数4】
なお、上記式(4)の右辺におけるThresholdOfSensorValueは、パルスノイズを判定するための閾値である。
【0043】
次に、ノイズ除去部14は、ウェーブレットシュリンケージの手法を用いて、接触データ群からノイズを除去する。ウェーブレットシュリンケージの手法は、信号のウェーブレット展開係数を求め、この展開係数の絶対値が任意の閾値より小さいものを0に置き換えて信号の再構成を行う手法である。具体的には、次のようにノイズを除去する。接触データf
i(t)をウェーブレット基底関数Φ
jk(t)で展開した時のウェーブレット係数を示すd
jkを、下記式(5)により計算する。
【数5】
そして、ウェーブレット係数d
jkに基づき推定されるノイズの標準偏差δを下記式(6)により計算する。
【数6】
また、推定したノイズの標準偏差δに基づき閾値λを下記式(7)のように算出する。
【数7】
ここで、上述の式中のNはウェーブレット係数の総数を表している。次に、この閾値λを用いて、ウェーブレット係数に対して、下記式(8)に示すソフトスレッシュホールド処理を行う。
【数8】
【0044】
さらに、ノイズ除去部14は、下記式(8)により処理されたウェーブレット係数d
~jkを逆ウェーブレット変換し、下記式(9)に示される、ノイズが除去された接触データ群f
~i(t)を算出する。
【数9】
なお、下記式(9)における左辺を、以下の説明においてf
~i(t)とする。
【0045】
続いて、ノイズ除去部14は、接触データ群の検出に係る直流成分の起因するノイズを除去する。このノイズを除去するために、ノイズ除去部14は、下記式(10)に示すように、接触データf
i(t)の時間平均を減算し、交流成分を算出する。
【数10】
なお、上記式(10)におけるTは、1データセットの時間を表す。1データセットとは、把持されていることを判断するために必要となる接触データ群を取得する連続した時間(接触データ群の観測時間)のことである。
【0046】
次に、ノイズ除去部14は、ガウスノイズを除去する。ノイズ除去部14は、下記式(11)に示すように、ガウス関数Gauss(t
ne,σ)とのコンボリューション(たたみこみ積分)によりデータを平滑化することにより、接触データ群からガウスノイズを除去する。
【数11】
ここで、αはガウス関数のハイパーパラメータ、t
neは時刻tの近傍を表す。ノイズ除去部14は、このように種々のノイズが除去された接触データf
~’a
i(t)を、把持状態判定部15に引き渡す。
【0047】
把持状態判定部15は、静止状態判定部13から取得した携帯端末30が静止状態か否かの判定結果、及びノイズ除去部14から取得した接触データ群に基づいて、携帯端末30が把持されているか否か(把持状態であるか否か)を判定する部分である。把持状態判定部15は、ある検出時刻において把持状態でないと判定した場合には、その判定結果、検出時刻に対応する接触データ群、及び接触データ群に対応付けられている時刻を較正データ抽出部16に引き渡す。一方、把持状態判定部15は、把持状態であると判定した場合には、ノイズが除去された後の、学習用接触データ群、第一検証用接触データ群、又は第二検証用接触データ群をそれぞれの接触データ群が検出された時刻と対応付けて、把持データ較正部17に引き渡す。
【0048】
具体的には、把持状態判定部15は、ある検出時刻において把持状態であるか否かを、次のように判定する。把持状態判定部15は、静止状態判定部13からある検出時刻において携帯端末30が静止状態であるとの判定結果を取得し、ノイズ除去部14から取得したその検出時刻における接触データ群が、下記式(12)の条件を満たす場合、携帯端末30は把持状態でないと判断する。
【数12】
なお、上記式(12)の右辺におけるThresholdOfPressureSensorは、把持されていないことを判定するための閾値である。この閾値は、例えば実験的なデータから定められる値である。
【0049】
較正データ抽出部16は、把持状態判定部15によりある検出時刻において把持状態でないという判定結果を取得した場合、その判定結果に対応付けられているノイズを除去した接触データ群f
~ ’a
i(t)、及び当該接触データ群f
~ ’a
i(t)に対応付けられている時刻を、後述する把持状態情報記憶部21に格納する。この把持状態情報記憶部21に格納された接触データ群f
~ ’a
i(t)が、学習用接触データ群、第一検証用接触データ群、及び第二検証用接触データ群を較正(キャリブレーション)するための較正データとなる。
【0050】
把持データ較正部17は、較正データ抽出部16により抽出され把持状態情報記憶部21が記憶する較正データを用いて、把持状態判定部15から取得した、学習用接触データ群、第一検証用接触データ群、及び第二検証用接触データ群を較正し、把持データ群を生成する部分である。また、把持データ較正部17は、生成した学習用把持データ群、第一検証用把持データ群、及び第二検証用把持データ群を時間変動算出部18に引き渡す。
【0051】
具体的には、把持データ較正部17は、把持状態情報記憶部21を参照して較正データを取得し、学習用接触データ群、第一検証用接触データ群、及び第二検証用接触データ群を較正する。例えば、把持状態情報記憶部21に記憶されている較正データがC
~fai(t)である場合は、下記式(13)に示すように較正を行う。
【数13】
【0052】
時間変動算出部18は、把持データ群に含まれる各時刻における把持データを基に時間変動データを計算し、各把持データに対応する時間変動データを含む時間変動把持データを生成する部分である。また、時間変動算出部18は、算出した時間変動把持データを、確率密度関数生成部19に引き渡す。時間変動データは、一の時刻における把持データと時系列において直前に取得された把持データとの差分データである。ここでは、時間変動算出部18は、学習用把持データ群に対応する学習用時間変動把持データ、第一検証用把持データ群に対応する第一検証用時間変動把持データ、及び第二検証用把持データ群に対応する第二検証用時間変動把持データを算出する。例えば、時間変動算出部18は、式(13)により得られた把持データf
~a
i(t)を用いて、下記式(14)に示すように時間変動データy
i(t)を算出する。
【数14】
そして、N個のセンサ全てにより取得された把持データの時間変動把持データy
tを、下記式(15)により計算する。
【数15】
【0053】
確率密度関数生成部19は、時間変動把持データに示される時間変動の頻度分布を示す確率密度関数を生成する部分である。また、確率密度関数生成部19は、生成した確率密度関数を、特徴ベクトル生成部20に引き渡す。具体的には、確率密度関数生成部19は、時間変動算出部18により算出された学習用時間変動把持データに基づく確率密度関数を学習用確率密度関数、第一検証用時間変動把持データに基づく確率密度関数を第一検証用確率密度関数、及び第二検証用時間変動把持データに基づく確率密度関数を第二検証用確率密度関数として生成する。ここでは確率密度関数生成部19による学習用確率密度関数の生成を具体的に説明する。
【0054】
まず、時間変動算出部18により算出された学習用時間変動把持データは下記式(16)により表される。
【数16】
【0055】
本実施形態では、学習時間変動把持データの頻度分布(ヒストグラム)から算出される確率密度関数と、事前に登録済みの基準時間変動把持データに基づく確率密度関数(基準確率密度関数)との確率分布の相違度であるJS特徴量を算出する。まず、確率密度関数生成部19は、下記式(17)及び下記式(18)に示すように、センサiの時間方向ヒストグラムhist
i(k)を生成する。
【数17】
【数18】
ただし、r(k)は、ヒストグラムにおけるk番目の刻み値を表す。そして、確率密度関数生成部19は、下記式(19)に示すように、確率密度関数PDFを算出する。
【数19】
上記式のN
Tは、ヒストグラムを規格化するための定数である。なお、確率密度関数の算出方法は上記に限られず、ガウス関数を用いたカーネル密度法等を用いてもよい。
【0056】
特徴ベクトル生成部20は、基準とする基準時間変動把持データに基づき生成された確率密度関数である基準確率密度関数と、確率密度関数生成部19により生成された確率密度関数とに基づきJS情報量を算出する部分である。JS情報量は、2つの確率密度関数の分布の類似度を示すものとして定義される。ここでは、特徴ベクトル生成部20は、基準確率密度関数と、確率密度関数生成部19により生成された学習用確率密度関数との分布の類似度を示すJS情報量を算出し、把持状態情報記憶部21、認証部22、及び追加学習用把持データ設定部23、比較部24に引き渡す。
【0057】
具体的には、特徴ベクトル生成部20は、基準確率密度関数PDF
i(r(k)|Y
Tstd)を用いて、学習用確率密度関数PDF
i(r(k)|Y
T)との確率分布の類似度としてJS情報量D
JS(i)(PDF
i(r(k)|Y
T)||PDF
i(r(k)|YT
std))を算出する。関数P(x),Q(x)のJS情報量は、下記式(20)のように計算される。
【数20】
なお、上記式(20)におけるR(x)は、R(x)=(P(x)+Q(x))/2により定義される。
【0058】
そして、特徴ベクトル生成部20は、算出された分布の類似度を特徴ベクトルとして規定する。具体的には、特徴ベクトル生成部20は、JS情報量を特徴ベクトルとして規定する。ここでは、特徴ベクトル生成部20は、学習用確率密度関数に基づくJS情報量の算出を、把持データを取得するための全てのセンサ(i=1,2,・・・,N)について実施して、下記式(21)に示されるJS情報量特徴ベクトルJSD(Y
T)を、学習用JS情報量特徴ベクトルとして規定する。
【数21】
また、特徴ベクトル生成部20は、基準確率密度関数と、確率密度関数生成部19により生成された第一検証用確率密度関数及び第二検証用確率密度関数のぞれぞれとに基づき、第一検証用JS情報量特徴ベクトル、及び第二検証用JS情報量特徴ベクトルを生成する。ここでの生成方法は、上述した学習用JS情報量特徴ベクトルの生成方法と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
把持状態情報記憶部21は、特徴ベクトル生成部20より生成された学習用JS情報量特徴ベクトルJSD(Y
T)を含む学習用の把持状態情報を、携帯端末30のユーザの把持状態を認識するための情報(照合用データ)として、携帯端末30のユーザに対応付けて記憶する部分である。なお、1以上の学習用JS情報量特徴ベクトルを含む把持状態情報が1のユーザに対応付けられている。また、把持状態情報記憶部21は、較正データ抽出部16から取得した接触データ群(較正用接触データ群)を、把持データを較正するための較正データとして、記憶する。なお、把持状態情報記憶部21は、較正データを取得する度に記憶している較正データを上書きし、最新の較正データのみを記憶することとしてもよい。また、把持状態情報記憶部21は、後述する追加学習用把持データ設定部23からの引き渡された情報に従って、追加学習用JS情報量特徴ベクトルを仮登録するとともに、比較部24の決定に応じて、追加学習用JS情報量特徴ベクトルを、学習用JS情報量特徴ベクトルとして追加して記憶する。また、把持状態情報記憶部21は、比較部24の決定に応じて、仮登録された追加学習用情報量特徴ベクトルの仮登録を解除し、追加学習用情報量特徴ベクトルを削除する。なお、把持状態情報記憶部21は、クラウドサーバ上や個人認証装置10以外の他のシステム上に設けられていてもよい。
【0060】
認証部22は、学習用JS情報量特徴ベクトルと第一検証用JS情報量特徴ベクトルとの類似尺度(以下、「第一類似尺度」という)を算出することにより、ユーザの認証を行う部分である。また、認証部22は、認証が成功した場合には、その認証結果と第一検証用JS特徴量ベクトルとを、追加学習用把持データ設定部23に引き渡す。また、認証部22は、認証が成功した場合には、認証結果を、携帯端末30等に送信する。
【0061】
図5は、2つのJS情報量特徴ベクトルの例を示す図である。認証部22は、
図5の(a)、(b)に示されるような2つのJS情報量特徴ベクトルの類似性をを評価し認証を行う。
図5の(a)は、ユーザIDが「2」であるユーザの学習用JS情報量特徴ベクトルを示している。
図5の(b)は、ユーザIDが「4」であるユーザの第一検証用情報量特徴ベクトルを示している。これらのJS情報量特徴ベクトルについて、下記式(23)により計算されるユークリッド距離を求め類似度を判断する。ユーザが異なる
図5の(a)、(b)の場合には、類似度に基づいて認証は失敗することとなる。
【0062】
例えば第一類似尺度は、下記式(23)において、Sim(JSD(Y
TV),JSD(Y
T))で表される。JSD(Y
TV)は、第一検証用JS情報量特徴ベクトルである。認証部22は、この第一類似尺度が下記式(22)の条件を満たすこと、つまり所定の閾値Th
judge以上であるかを判定する。認証部22は、第一類似尺度が下記式(22)の条件を満たす場合に、把持状態情報記憶部21に記憶されている学習用JS情報量特徴ベクトルに対応するユーザにより携帯端末30は把持されていると判断する。
【数22】
【0063】
なお、類似尺度Sim(X
v,X
l)の計算式は限定されないが、例えば、下記式(23)に示されるような、比較するJS情報量特徴ベクトルのユークリッド距離の計算式を用いる。
【数23】
【0064】
追加学習用把持データ設定部23は、認証部22による認証が成功すると、その認識処理の対象となった第一検証用JS情報量特徴ベクトルを、追加学習用JS情報量特徴ベクトルとして把持状態情報記憶部21に仮登録する部分である。また、追加学習用把持データ設定部23は、比較部24に、追加学習用JS情報量特徴ベクトルを引き渡す。
【0065】
比較部24は、第二検証用JS特徴情報量ベクトルと学習用特徴ベクトルとの類似尺度(以下、「第二類似尺度」という)、及び第二検証用JS情報量特徴ベクトルと追加学習用特徴ベクトルとの類似尺度(以下、「第三類似尺度」という)を算出し、第二類似尺度と第三類似尺度とを比較することにより、把持状態情報記憶部21に仮登録された追加学習用JS情報量特徴ベクトルを、学習用JS情報量特徴ベクトルとして、把持状態情報記憶部21に記憶させる(本登録させる)かどうか決定する部分である。また、比較部は、把持状態情報記憶部21に記憶させるかどうかの決定結果を、把持状態情報記憶部21に引き渡す。
【0066】
比較部24による第二類似尺度と第三類似尺度との比較は、具体的には、下記式(24)に示されるように、第二類似尺度より第三類似尺度の方が大きいか否かの比較である。
【数24】
【0067】
なお、上記式において、JSD(Y
TU)は追加学習用JS情報量特徴ベクトルを表している。また、比較部24は、上記式(24)における類似尺度EvalDB(JSD(Y
TU))を、下記式(25)により計算する。
【数25】
【0068】
以下、本実施形態の個人認証装置10による個人認証方法の手順について説明する。まず、
図6を参照して、個人認証装置10における較正データの抽出方法を説明する。
【0069】
はじめに、モーションデータ取得部11は、携帯端末30からモーションデータを取得する(S101:データ取得ステップ)。また、接触データ取得部12は、携帯端末30から、接触データ群を取得する(S102:データ取得ステップ)。携帯端末30からモーションデータが取得されると、静止状態判定部13は、携帯端末30が静止状態かどうかを判定する(S103:静止状態判定ステップ)。ノイズ除去部14は、接触データ群に含まれる種々のノイズを除去する(S104)。続いて、把持状態判定部15は、静止状態判定部13による判定結果とノイズを除去した接触データ群とに基づいて、携帯端末30が把持状態であるか否かを判定する(S105:把持状態判定ステップ)。把持状態判定部15により、携帯端末30が把持されていないと判断されると(S105:NO)、較正データ抽出部16は、ノイズを除去した接触データ群を較正データとして抽出する(S106:較正データ抽出ステップ)。較正データが抽出されると、把持状態情報記憶部21は、較正データを記憶する(S107)。一方、把持状態判定部15により、携帯端末30が把持されていると判断されると(S105:YES)、較正データ抽出の処理を終了する。
【0070】
次に、
図7を参照して、個人認証装置10における学習用JS情報量特徴ベクトルの生成方法を説明する。なお、学習用JS情報量特徴ベクトルの後に生成する、第一検証用JS情報量特徴ベクトル、及び第二検証用JS情報量特徴ベクトルの生成方法も同様である。
【0071】
はじめに、接触データ取得部12は、携帯端末30から学習用接触データ群を取得する(S201:学習用接触データ取得ステップ)。学習用接触データ群は、ユーザを認証する際の照合用データの基となるデータである。携帯端末30から学習用接触データ群が取得されると、ノイズ除去部14により学習用接触データ群のノイズが除去される(S202)。さらに、把持データ較正部17は、把持状態情報記憶部21を参照して較正データを取得し、ノイズを除去した学習用接触データ群を較正(キャリブレーション)して学習用把持データ群を生成する(S203:学習用把持データ較正ステップ)。続いて、時間変動算出部18は、ステップS203において把持データ較正部17により生成された学習用把持データ群に基づく時間変動把持データを学習用時間変動把持データとして算出する(S204)。
【0072】
次に、確率密度関数生成部19は、時間変動算出部18により算出された学習用時間変動把持データに基づく確率密度関数を学習用確率密度関数として生成する(S205)。続いて、特徴ベクトル生成部20は、基準確率密度関数と、確率密度関数生成部19により生成された学習用確率密度関数との分布の類似度として定義されるJS情報量を算出する。更に、特徴ベクトル生成部20は、学習用確率密度関数に基づき算出されたJS情報量の算出を、N個の全てのセンサについて実施し、JS情報量特徴ベクトルJSD(Y
T)を、学習用JS情報量特徴ベクトルとして規定する(S206)。
【0073】
そして、把持状態情報記憶部21は、特徴ベクトル生成部20により生成された学習用JS情報量特徴ベクトルJSD(Y
T)を、ユーザを認証するために照会するデータとして記憶する(S207:把持状態記憶ステップ)。
【0074】
次に、
図8を参照して、個人認証装置10における個人認証方法の処理手順を説明する。
【0075】
まず、接触データ取得部12は、携帯端末30から第一検証用接触データ群を取得する(S301:第一検証用接触データ取得ステップ)。第一検証用接触データ群は、携帯端末30を所有するユーザによる把持状態の認識処理における判定の対象となるデータである。携帯端末30から第一検証用接触データ群が取得されると、ノイズ除去部14により第一検証用接触データ群のノイズが除去される(S302)。把持データ較正部17は、把持状態情報記憶部21を参照して較正データを取得し、第一検証用接触データ群を較正して第一検証用把持データ群を生成する(S303:第一検証用把持データ較正ステップ)。続いて、時間変動算出部18は、ステップS303において把持データ較正部17により生成された第一検証用把持データ群に基づく時間変動把持データを第一検証用時間変動把持データとして算出する(S304)。
【0076】
次に、確率密度関数生成部19は、時間変動算出部18により算出された第一検証用時間変動把持データに基づく確率密度関数を第一検証用確率密度関数として生成する(S305)。続いて、特徴ベクトル生成部20は、基準確率密度関数と、確率密度関数生成部19により生成された第一検証用確率密度関数との分布の類似度として定義されるJS情報量を算出する。更に、特徴ベクトル生成部20は、第一検証用確率密度関数に基づき算出されたJS情報量の算出を、N個の全てのセンサについて実施し、JS情報量特徴ベクトルJSD(Y
Tv)を、第一検証用JS情報量特徴ベクトルとして規定する(S306)。
【0077】
次に、認証部22は、特徴ベクトル生成部20により規定された第一検証用JS情報量特徴ベクトルと、把持状態情報記憶部21が記憶する学習用JS情報量特徴ベクトルとの類似度合いを示す第一類似尺度を算出する(S307)。続いて、認証部22は、算出した第一類似尺度が所定の閾値以上である場合に、携帯端末30を所有するユーザにより、携帯端末30が把持されている判断し、認証が成功したと判定する(S308:認証ステップ)。
【0078】
次に、
図9を参照して、個人認証装置10における学習用JS情報量特徴ベクトルを追加する際の処理手順を説明する。
【0079】
認証部22による認証が成功すると、追加学習用把持データ設定部23は、認証が成功した第一検証用JS情報量特徴ベクトルを、追加学習用JS情報量特徴ベクトルとして、把持状態情報記憶部21に仮登録する(S401)。
【0080】
続いて、接触データ取得部12は、携帯端末30から第二検証用接触データ群を取得する(S402)。第二検証用接触データ群は、追加学習用JS情報量特徴ベクトルを学習用JS情報量特徴ベクトルとして、把持状態情報記憶部21に追加(本登録)する際の判断のために用いられるデータである。携帯端末30から第二検証用接触データ群が取得されると、ノイズ除去部14により第二検証用接触データ群のノイズが除去される(S403)。把持データ較正部17は、把持データ較正部17は、把持状態情報記憶部21を参照して較正データを取得し、第二検証用接触データ群を較正して第二検証用把持データ群を生成する(S404)。続いて、時間変動算出部18は、ステップS404において把持データ較正部17により較正された第二検証用把持データ群に基づく時間変動把持データを第二検証用時間変動把持データとして算出する(S405)。
【0081】
次に、確率密度関数生成部19は、時間変動算出部18により算出された第二検証用時間変動把持データに基づく確率密度関数を第二検証用確率密度関数として生成する(S406)。続いて、特徴ベクトル生成部20は、基準確率密度関数と、確率密度関数生成部19により生成された第二検証用確率密度関数との分布の類似度として定義されるJS情報量を算出する。更に、特徴ベクトル生成部20は、第二検証用確率密度関数に基づき算出されたJS情報量の算出を、N個の全てのセンサについて実施し、JS情報量特徴ベクトルJSD(Y
Tv)を、第二検証用JS情報量特徴ベクトルとして規定する(S407)。
【0082】
次に、比較部24は、特徴ベクトル生成部20により規定された第二検証用JS情報量特徴ベクトルと、把持状態情報記憶部21が記憶する学習用情報量特徴ベクトルとの類似度合いを示す第二類似尺度Sim(JSD(Y
TV),JSD(Y
T))、及び第二検証用JS情報量特徴ベクトルと、把持状態情報記憶部21に仮登録された追加学習用情報量特徴ベクトルとの類似度合いを示す第三類似尺度Sim(JSD(Y
TV),JSD(Y
U))をそれぞれ算出する(S408)。
【0083】
次に、比較部24は、第二類似尺度より第三類似尺度の方が大きいか否かを比較し、判定する(S409)。そして、ステップS409において、第二類似尺度より第三類似尺度の方が大きいと判定された場合に(S409:YES)、把持状態情報記憶部21は、仮登録された追加学習用情報量特徴ベクトルを学習用情報量特徴ベクトルとして追加で記憶(本登録)する(S410)。そして、ステップS409において、第三類似尺度より第二類似尺度の方が大きいと判定された場合には(S409:NO)、把持状態情報記憶部21は、仮登録された追加学習用情報量特徴ベクトルの仮登録を解除するとともに追加学習用情報量特徴ベクトルを削除する(S411)。
【0084】
次に、本実施形態の個人認証装置10の作用効果について説明する。携帯端末30のユーザを認証する個人認証装置において、モーションデータ取得部11は、携帯端末30の動きを示すモーションデータを取得し、接触データ取得部12は、携帯端末30に対するユーザの指の接触状態を示す接触データを取得する。静止状態判定部13は、モーションデータに基づいて、端末が静止状態であるか否かを判定する。そして、静止状態判定部13の判定結果と接触データとに基づいて、把持状態判定部15は携帯端末30が把持されているか否かを判定する。把持状態判定部15が携帯端末30を把持していないと判断すると、接触データから、接触データを較正するためのデータである較正データを、較正データ抽出部16は抽出する。接触データ取得部12は、携帯端末30が把持されている状態での接触データである学習用接触データを取得し、把持データ較正部17は学習用接触データを、較正データを用いて較正し、学習用把持データとする。把持状態情報記憶部21は、ユーザに対応する学習用把持データを1以上記憶している。接触データ取得部12がさらに取得した接触データを第一検証用接触データと見做し、較正データ抽出部16はこの第一検証用接触データについても、較正データを用いて較正することにより、第一検証用把持データを生成する。認証部22は、第一検証用把持データと把持状態情報記憶部21が記憶する1以上の学習用把持データとの比較に基づき、ユーザの認証を行う。
【0085】
これにより、接触データ取得部12により取得された、ユーザによる携帯端末30に対するユーザの指の接触状態を示す接触データの認識により、認証部22は認証を行うので、認証に際してユーザに対して特段の操作が強いられないため、ユーザの利便性が損なわれることがない。また、この発明によれば、ユーザにより端末が把持されていない場合、接触データ取得部12により取得された接触データから、較正データ抽出部16は、接触データを較正するための較正データを抽出する。そして、較正データ抽出部16が抽出した較正データを用いて把持データ較正部17は、把持データを生成する。認証部22は、この較正した把持データに基づいて認証を行う。したがって、正確かつ安定してノイズの除去された把持データに基づいて認証が行われるため、高精度な認証が可能となる。
【0086】
また、本実施形態の個人認証装置10は、学習用把持データ、及び第一検証用把持データの時間変動を示す、学習用時間変動把持データ、及び第一検証用時間変動把持データを算出する時間変動算出部18をさらに備えている。その場合には、把持状態情報記憶部21は、学習用時間変動把持データを記憶し、認証部22は、学習用時間変動把持データと第一検証用時間変動把持データとに基づいて、ユーザの認証を行う。この構成により、認証部22は、接触データの時間変動から特徴量を導出している。したがって時間変動が考慮されるため、ヒステリスノイズにも対応した、高精度な認証が可能となる。
【0087】
また、本実施形態の個人認証装置10は、時間変動算出手段により算出された学習用時間変動把持データ及び第一検証用時間変動把持データの頻度分布を示す、学習用確率密度関数及び第一検証用確率密度関数を生成する確率密度関数生成部19をさらに備えている。その場合には、認証部22は、認証手段は、学習用確率密度関数と第一検証用確率密度関数との類似度に基づいて、ユーザの認証を行う。この構成によれば、統計確率的なアプローチを用いることにより、突発的なノイズを阻止し、認証部22は確実な認証をすることができる。また、時間変動データの分布の類似度に基づいているため、認証部22はヒステリスノイズについても確実に考慮された、認証が可能となる。
【0088】
また、本実施形態の個人認証装置10において、把持状態情報記憶部21は、較正データ抽出部16により抽出された較正データを、ユーザに対応付けて記憶する。その場合には、把持状態判定部15により、把持されている状態と判定された場合、把持データ較正部17は、把持状態情報記憶部21に記憶されている較正データを用いて、第一検証用接触データを較正し、第一検証用把持データを生成する。この構成よれば、把持データ較正部17は、把持状態情報記憶部21に記憶されている較正データを用いて、接触データを確実に較正することが可能となり、認証部22は、高精度な認証を確実にすることができる。
【0089】
また、本実施形態の個人認証装置10は、第一検証用接触データを取得した後に、接触データ取得部12が取得した接触データを第二検証用接触データと見做し、この第二検証用接触データを、把持データ較正部17が較正データを用いて較正し第二検証用把持データを生成し、次のように学習用把持データを追加する。その場合には、認証部22により認証が成功した際の処理対象となった第一検証用把持データを追加学習用把持データとして仮登録する、追加学習用把持データ設定部23と、第二検証用把持データと学習用把持データ、及び第二検証用把持データと追加学習用把持データとを比較する比較部24とをさらに備える。把持状態情報記憶部21は、比較部24による比較結果に基づいて、追加学習用把持データを新たな学習用把持データとして記憶する。この構成によれば、把持状態情報記憶部21は、認証の際に照合する把持データを学習している。よって、ユーザの把持状態の経年変化に対応することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態の個人認証装置10において、時間変動算出部18は、第二検証用把持データの時間変動を示す第二検証用時間変動把持データを算出し、比較部24は、第二検証用時間変動把持データと学習用時間変動把持データ、及び第二検証用時間変動把持データと追加学習用時間変動把持データとを比較する。その場合には、把持状態情報記憶部21は、比較部24による比較結果に基づいて、追加学習用時間変動把持データを新たな学習用時間変動把持データとして記憶する。この構成によれば、把持状態情報記憶部21は、時間変動を考慮したデータを認証の際に照合するデータとして学習している。よって、認証部22は、ヒステリスノイズを考慮した認証を可能にしつつ、ユーザの把持状態の経年変化に対応することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態の個人認証装置10の確率密度関数生成部19は、学習用時間変動把持データの頻度分布を示す学習用確率密度関数、追加学習用時間変動把持データの頻度分布を示す追加学習用確率密度関数、及び第二検証用時間変動把持データの頻度分布を示す第二検証用確率密度関数、を生成する。その場合には、比較部24は、第二検証用確率密度関数と学習用確率密度関数、及び第二検証用確率密度関数と追加学習用確率密度関数とを比較する。この構成によれば、把持状態情報記憶部21は、統計確率的なアプローチを用い、かつ時間変動データの分布の類似度に基づいて、認証の際に照合するデータを学習している。よって、認証部22は、ヒステリスノイズ、及び突発的なノイズを考慮した認証を可能にしつつ、ユーザの把持状態の経年変化に対応することが可能となる。