(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吊作業用の作動部を備えた移動式クレーンに搭載され、前記作動部に繋がるロープの巻き取り又は繰り出しを行うことにより前記作動部に吊作業のための動作を行わせる電動ウインチ装置であって、
前記移動式クレーンに設けられ、前記ロープの巻き取り又は繰り出しのために回転するウインチドラムと、
前記ウインチドラムの軸方向の一方側に配置されるとともに前記ウインチドラムの軸方向と直交する方向に並ぶ複数の電動機と、
前記複数の電動機から出力されるトルクを合成するギア機構と、
前記ギア機構により合成されたトルクを前記ウインチドラムに伝達して前記ウインチドラムを回転させる伝達部と、を備え、
前記ギア機構は、前記複数の電動機から出力されるトルクを合成したトルクで回転する出力部を有し、
前記伝達部は、前記ウインチドラムを前記出力部の回転速度よりも低い回転速度で回転させる減速機を有し、
前記複数の電動機のそれぞれは、トルクの出力軸としての駆動軸を有し、
前記ギア機構は、前記複数の電動機の前記駆動軸の対応するものと一体的に回転可能となるようにその駆動軸にそれぞれ結合された複数のギアをさらに有し、
前記出力部は、前記複数のギアが周りに配置されたセンターギアであって前記複数の電動機の前記駆動軸のトルクを合成してその合成したトルクによって回転するように前記複数のギアのそれぞれと噛み合うものであり、
前記伝達部は、前記センターギアと一体的に回転可能となるように構成された伝達軸をさらに有し、
前記減速機は、前記伝達軸の回転の入力を受けるようにその伝達軸に接続されていて、その伝達軸の回転速度を所定の減速比で減速させた回転速度で前記ウインチドラムを回転させる、電動ウインチ装置。
前記伝達部は、前記減速機と前記ウインチドラムとの間でトルクを伝達する接続状態と、前記減速機と前記ウインチドラムとの間でのトルクの伝達が遮断されるように前記減速機と前記ウインチドラムとを切り離す切断状態とに切り換わるクラッチを有し、
前記クラッチは、前記ウインチドラムの軸方向において前記減速機を挟んで前記電動機と反対側で前記ウインチドラムの内側に配置されている、請求項1又は2に記載の電動ウインチ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の電動ウインチ装置では、2つの電動機が出力するトルクでウインチドラムを回転させるため、大きな吊能力を確保できるという利点はあるものの、この電動ウインチ装置を移動式クレーンに搭載することは、移動式クレーンの寸法の制約上から困難である。その理由は、以下の通りである。
【0007】
移動式クレーンでは、ウインチ装置は上部旋回体に搭載され、この上部旋回体は、搬送時及び移動式クレーンが公道を自走する時に寸法の制限を受ける。
【0008】
具体的に、移動式クレーンの搬送時には、上部旋回体はトレーラ等の運搬車両に積載されて搬送されるが、その際、上部旋回体は、一般的に、その幅方向が運搬車両の幅方向に一致するように積載される。運搬車両は、公道を走行するため、法令で定められた車幅制限をクリアする必要があり、それに伴って、上部旋回体の幅は、車幅制限に基づいた制約を受ける。ウインチ装置は、そのウインチドラムの軸方向が上部旋回体の幅方向に一致するように上部旋回体に搭載されるが、上記特許文献1の電動ウインチ装置のように2つの電動機がウインチドラムの軸方向の両側に配置されている場合には、ウインチドラムの軸方向における電動ウインチ装置の寸法が増大するため、上記のような上部旋回体の幅の制約から当該電動ウインチ装置を上部旋回体に搭載することは困難になる。
【0009】
また、移動式クレーンが公道を自走する時には、移動式クレーン自体が上記車幅制限をクリアする必要がある。移動式クレーンが公道を自走する際、上部旋回体はその幅方向が移動式クレーンの車幅方向に一致するように配置されるため、この場合も上部旋回体の幅は、車幅制限に基づいた制約を受ける。従って、この場合も、上記特許文献1の電動ウインチ装置を上部旋回体に搭載することは困難になる。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、大きな吊能力を確保しつつ、移動式クレーンの寸法の制限をクリアすることが可能な電動ウインチ装置及び移動式クレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明による電動ウインチ装置は、吊作業用の作動部を備えた移動式クレーンに搭載され、前記作動部に繋がるロープの巻き取り又は繰り出しを行うことにより前記作動部に吊作業のための動作を行わせる電動ウインチ装置であって、前記移動式クレーンに設けられ、前記ロープの巻き取り又は繰り出しのために回転するウインチドラムと、前記ウインチドラムの軸方向の一方側に配置されるとともに前記ウインチドラムの軸方向と直交する方向に並ぶ複数の電動機と、前記複数の電動機から出力されるトルクを合成するギア機構と、前記ギア機構により合成されたトルクを前記ウインチドラムに伝達して前記ウインチドラムを回転させる伝達部と、を備える。
前記ギア機構は、前記複数の電動機から出力されるトルクを合成したトルクで回転する出力部を有し、前記伝達部は、前記ウインチドラムを前記出力部の回転速度よりも低い回転速度で回転させる減速機を有し、前記複数の電動機のそれぞれは、トルクの出力軸としての駆動軸を有し、前記ギア機構は、前記複数の電動機の前記駆動軸の対応するものと一体的に回転可能となるようにその駆動軸にそれぞれ結合された複数のギアをさらに有し、前記出力部は、前記複数のギアが周りに配置されたセンターギアであって前記複数の電動機の前記駆動軸のトルクを合成してその合成したトルクによって回転するように前記複数のギアのそれぞれと噛み合うものであり、前記伝達部は、前記センターギアと一体的に回転可能となるように構成された伝達軸をさらに有し、前記減速機は、前記伝達軸の回転の入力を受けるようにその伝達軸に接続されていて、その伝達軸の回転速度を所定の減速比で減速させた回転速度で前記ウインチドラムを回転させる。
【0012】
この電動ウインチ装置では、ギア機構が複数の電動機から出力されるトルクを合成し、伝達部がそのギア機構により合成されたトルクをウインチドラムに伝達するため、大きなトルクでウインチドラムを回転させることができる。このため、大きな吊能力を確保できる。しかも、この電動ウインチ装置では、ウインチドラムの軸方向の一方側に複数の電動機が配置されるとともに、それらの複数の電動機がウインチドラムの軸方向と直交する方向に並ぶため、仮にその複数の電動機がウインチドラムの軸方向の両側に分かれて配置される場合に比べて、電動ウインチ装置をウインチドラムの軸方向において小型化することができる。このため、電動ウインチ装置が移動式クレーンに搭載された場合に移動式クレーンの寸法を増大させることがなく、移動式クレーンの寸法の制限をクリアすることが可能となる。
また、この電動ウインチ装置では、ギア機構の出力部の回転速度よりも低い回転速度でウインチドラムを回転させることができる。しかも、この電動ウインチ装置では、減速機がウインチドラムの内側に配置されているため、減速機がウインチドラムの外側に配置されている場合よりも電動ウインチ装置を小型化できる。
【0013】
上記電動ウインチ装置において、前記複数の電動機は、前記電動ウインチ装置が備える全ての電動機であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、電動ウインチ装置が備える全ての電動機はウインチドラムの軸方向の一方側のみに配置されるため、電動ウインチ装置が多くの電動機を備える場合でもウインチドラムの軸方向においてその電動ウインチ装置を小型化することができる。
【0015】
上記電動ウインチ装置において、前記伝達部は、前記ギア機構と前記ウインチドラムとの間でトルクを伝達する接続状態と、前記ギア機構と前記ウインチドラムとの間でのトルクの伝達が遮断されるように前記ギア機構と前記ウインチドラムとを切り離す切断状態とに切り換わるクラッチを有することが好ましい。
【0016】
この構成では、クラッチを切断状態にすることにより、ウインチドラムをギア機構とそれに繋がる電動機から切り離して自由に回転させることができる。このため、対象物のフリーフォールを実施できる。
【0019】
上記電動ウインチ装置において、前記伝達部は、前記減速機と前記ウインチドラムとの間でトルクを伝達する接続状態と、前記減速機と前記ウインチドラムとの間でのトルクの伝達が遮断されるように前記減速機と前記ウインチドラムとを切り離す切断状態とに切り換わるクラッチを有し、前記クラッチは、前記ウインチドラムの軸方向において前記減速機を挟んで前記電動機と反対側で前記ウインチドラムの内側に配置されていることが好ましい。
【0020】
この構成では、クラッチを切断状態にすることにより、ウインチドラムを減速機とそれに繋がるギア機構及び電動機から切り離して自由に回転させることができ、その結果、対象物のフリーフォールを実施できる。しかも、この構成では、クラッチがウインチドラムの内側に配置されているため、クラッチがウインチドラムの外側に配置されている場合よりも電動ウインチ装置を小型化できる。また、クラッチがウインチドラムの軸方向において減速機を挟んで電動機と反対側に配置されていることにより、クラッチを冷却するための冷却設備やクラッチの電気配線を電動機に係る設備と干渉することなく配置できる。このため、クラッチの冷却設備や電気配線のレイアウトを容易に行うことができる。
【0021】
上記電動ウインチ装置において、前記各電動機は、その電動機が作動することにより回転する駆動軸を有し、前記ギア機構及び前記伝達部は、前記駆動軸のトルクを増大させて前記ウインチドラムに伝達するように構成され、前記電動ウインチ装置は、前記各電動機の前記駆動軸に対してそれぞれ制動を掛ける複数のブレーキ装置をさらに備えることが好ましい。
【0022】
この構成では、各ブレーキ装置が対応する電動機の駆動軸に制動を掛けることにより、ウインチドラムの回転を制動することができる。しかも、この構成では、複数のブレーキ装置を備えているため、仮にいずれかのブレーキ装置が故障して制動力を発揮できなくなった場合であっても、残りのブレーキ装置で制動力をある程度確保できる。このため、ウインチドラムの回転に対する制動の信頼性を向上できる。さらに、この構成では、ギア機構及び伝達部が電動機の駆動軸のトルクを増大させてウインチドラムに伝達するようになっているが、そのトルクの伝達の流れにおいて最も上手側に位置する各電動機の駆動軸に対して各ブレーキ装置が制動を掛けるから、各ブレーキ装置は小さい制動力でウインチドラムの回転を制動できる。換言すれば、ウインチドラムの回転を制動するのに各ブレーキ装置に必要とされる制動力は小さくて済む。このため、各ブレーキ装置として、制動能力が小さい小型のものを用いることができ、ブレーキ装置を設けることによる電動ウインチ装置の大型化を防ぐことができる。
【0023】
本発明による移動式クレーンは、上記電動ウインチ装置を備えた移動式クレーンである。
【0024】
この移動式クレーンは、上記電動ウインチ装置を備えることにより、大きな吊能力を確保しつつ、寸法の制限をクリアすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、大きな吊能力を確保しつつ、移動式クレーンの寸法の制限をクリアすることが可能な電動ウインチ装置及び移動式クレーンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1〜
図4を参照して、本発明の第1実施形態による電動ウインチ装置1及びそれを備えた移動式クレーンについて説明する。
【0029】
この第1実施形態による電動ウインチ装置1を備える移動式クレーンは、例えば
図1に示すようなクレーンである。この移動式クレーンは、クローラクレーンであり、クローラ式の自走可能な下部走行体2と、その下部走行体2上に搭載された上部旋回体4とを備える。
【0030】
上部旋回体4は、下部走行体2上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載された旋回フレーム6と、旋回フレーム6の前部に起伏可能となるように取り付けられたブーム8と、ブーム8の先端からワイヤロープである吊ロープ10を介して吊り下げられて吊荷100を吊るフック装置12とを備える。フック装置12は、本発明における吊作業用の作動部の一例である。以下、場合により、フック装置12及びそれに吊られた吊荷100を一体として巻上/巻下の対象物102という。
【0031】
なお、以下の説明における「前」、「後」の用語は、上部旋回体4(旋回フレーム6)の「前」、「後」のことを意味する。上部旋回体4の前側は、ブーム8が設けられた側に相当し、上部旋回体4の後側は、ブーム8が設けられた側と反対側に相当する。また、上部旋回体4の幅方向は、上部旋回体4の前後方向及び旋回軸方向の両方に対して直交する方向に相当する。
【0032】
旋回フレーム6上には、
図2に示すように、後述のウインチドラム20を支持するための第1支持部14及び第2支持部16が設けられている。第1支持部14及び第2支持部16は、旋回フレーム6の前後方向の中間位置に設けられており、旋回フレーム6におけるブーム8(
図1参照)の取付部位の後方に配置されている。第1支持部14と第2支持部16は、旋回フレーム6の幅方向において互いに対向し且つその幅方向において間隔をあけて配置されている。
【0033】
第1支持部14は、
図2に示すように、旋回フレーム6上に固定された第1支持台14aと、その第1支持台14aにより支持された第1軸受14bとを有する。第2支持部16は、旋回フレーム6上に固定された第2支持台16aと、その第2支持台16aにより支持された第2軸受16bとを有する。
【0034】
電動ウインチ装置1は、上部旋回体4(
図1参照)に搭載されており、旋回フレーム6におけるブーム8の取付部位の後方に配置されている。電動ウインチ装置1は、フック装置12に繋がる吊ロープ10の巻き取り又は繰り出しを行うことによりフック装置12に吊作業のための昇降動作を行わせる巻上用のウインチ装置である。電動ウインチ装置1は、
図2及び
図3に示すように、ウインチドラム20(以下、単にドラム20と称する)と、第1電動機22と、第2電動機24と、ギア機構26と、伝達部28と、第1ブレーキ装置30と、第2ブレーキ装置32と、を備える。
【0035】
ドラム20は、回転して吊ロープ10の巻き取り/繰り出しを行うことにより、フック装置12(対象物102)(
図1参照)の巻上/巻下を行うものである。ドラム20は、その軸方向が上部旋回体4の幅方向に一致するように第1支持部14及び第2支持部16によって支持され、それによって旋回フレーム6上に設置されている。ドラム20は、
図2に示すように、ドラム本体40と、第1軸41と、第2軸42とを有する。なお、
図2では、ドラム本体40の内部の構成を示すため、ドラム本体40及び吊ロープ10がドラム本体40の軸方向に沿った断面で表されている。
【0036】
ドラム本体40は、吊ロープ10が巻かれる部分である。吊ロープ10は、このドラム本体40から引き出されてブーム8(
図1参照)の先端を経由し、そのブーム8の先端から垂下されてフック装置12を吊り下げる。ドラム本体40は、その軸方向両端に鍔の付いた円筒状に形成されており、内部に空間を有する。
【0037】
第1軸41(
図2参照)は、ドラム本体40の軸方向の一端に固定的に設けられており、ドラム本体40と一体的に回転可能となっている。第1軸41は、ドラム本体40の軸方向の一端からドラム本体40の外側へ延びるとともにドラム本体40と同軸に配置されている。
【0038】
第2軸42(
図2参照)は、ドラム本体40の軸方向の他端に固定的に設けられており、ドラム本体40と一体的に回転可能となっている。第2軸42は、ドラム本体40の軸方向の他端からドラム本体40の外側へ延びるとともにドラム本体40と同軸に配置されている。
【0039】
ドラム本体40が第1支持部14と第2支持部16との間に配置された状態で、第1軸41が第1軸受14bにより回転自在となるように支持されるとともに第2軸42が第2軸受16bにより回転自在となるように支持されている。これにより、ドラム20は、上部旋回体4の幅方向に延びる軸回りに回転自在となっている。ドラム20は、一方の回転方向である巻上方向に回転することにより吊ロープ10をドラム本体40に巻き取り、それによってフック装置12(対象物102)(
図1参照)を巻き上げる。また、ドラム20は、巻上方向と逆の回転方向である巻下方向に回転することにより吊ロープ10を繰り出し、それによってフック装置12(対象物102)を巻き下げる。
【0040】
第1電動機22及び第2電動機24は、電力が供給されることによって作動し、対象物102の巻上時にドラム20を巻上方向に回転させるためのトルクを出力する。第1及び第2電動機22,24は、
図2に示すように、両方とも、ドラム20の軸方向の一方側に配置されている。具体的には、第1及び第2電動機22,24は、ドラム20の軸方向において、第1支持部14を挟んでドラム本体40と反対側に配置されている。
【0041】
第1電動機22は、第1電動機本体22aと、第1駆動軸22bとを有する。第1電動機本体22aは、電力が供給されることによって第1駆動軸22bをその軸回りに回転させる。すなわち、第1駆動軸22bは、第1電動機本体22aが作動することにより回転し、第1電動機本体22aが生成するトルクの出力軸に相当する。第1電動機22は、旋回フレーム6上に設置された図略の電動機支持部によって第1電動機本体22aが支持されることにより、第1駆動軸22bがドラム20の軸方向に延びる姿勢で設置されている。第1駆動軸22bは、第1電動機本体22aから第1支持部14側へ突出して延びる突出部22c(
図2参照)を有する。
【0042】
第2電動機24は、第2電動機本体24aと、第2駆動軸24bとを有する。第2電動機本体24aは、電力が供給されることによって第2駆動軸24bをその軸回りに回転させる。すなわち、第2駆動軸24bは、第2電動機本体24aが作動することにより回転し、第2電動機本体24aが生成するトルクの出力軸に相当する。第2電動機24は、旋回フレーム6上に設置された図略の電動機支持部によって第2電動機本体24aが支持されることにより、第2駆動軸24bがドラム20の軸方向に延びる姿勢で設置されている。また、第2電動機24は、その第2駆動軸24bが第1駆動軸22bと平行になるようにドラム20の軸方向と直交する方向において第1電動機22と並んで配置されている。第2駆動軸24bは、第2電動機本体24aから第1支持部14側へ突出して延びる突出部24c(
図2参照)を有する。
【0043】
ギア機構26は、第1電動機22が出力するトルクと第2電動機24が出力するトルクとを合成するものである。すなわち、ギア機構26は、第1駆動軸22bのトルクと第2駆動軸24bのトルクとを合成する。ギア機構26は、第1及び第2電動機22,24と第1支持部14との間に配置されている。換言すれば、ギア機構26は、ドラム20の軸方向において第1支持部14を挟んでドラム本体40と反対側に配置されている。ギア機構26は、
図2及び
図3に示すように、センターギア50と、第1ギア51と、第2ギア52とを有する。これらのギア50,51,52は、いずれも外歯車である。
図2及び
図3では、ギア50,51,52を模式的に表しており、それらのギアの外歯の図示を省略している。また、
図3では、センターギア50に対する第1ギア51と第2ギア52の配置及びセンターギア50に結合された後述の伝達軸54を判りやすく示すために、ドラム20の第1軸41や第1軸受14b等については図示を省略している。これらのことは、後述する実施形態及び変形例に関する
図5、
図7〜
図11においても同様である。
【0044】
センターギア50は、本発明における出力部の一例である。センターギア50は、ドラム20と同軸に配置されている。第1ギア51は、第1駆動軸22b(
図2参照)と同軸に配置されるとともに、第1駆動軸22bと一体的に回転可能となるようにその第1駆動軸22bの突出部22cの先端に結合されている。第2ギア52は、第2駆動軸24b(
図2参照)と同軸に配置されるとともに、第2駆動軸24bと一体的に回転可能となるようにその第2駆動軸24bの突出部24cの先端に結合されている。
【0045】
第1ギア51と第2ギア52は、
図3に示すように、センターギア50の周りに配置されている。具体的には、第1ギア51と第2ギア52は、センターギア50の径方向外側に配置され、センターギア50の径方向においてセンターギア50を挟んで互いに反対側に配置されている。第1ギア51と第2ギア52は、それぞれ、センターギア50と噛み合っている。これにより、第1駆動軸22bのトルクが第1ギア51からセンターギア50に伝達されるとともに、第2駆動軸24bのトルクが第2ギア52からセンターギア50に伝達され、それによって両駆動軸22b,24bのトルクが合成される。すなわち、センターギア50は、両駆動軸22b,24bのトルクを合成したトルクで回転する。
【0046】
第1ギア51と第2ギア52は、同じ構成を有する。第1ギア51及び第2ギア52は、センターギア50よりも小径であるとともにセンターギア50よりも少ない歯数を有する。これにより、センターギア50の回転速度は、第1及び第2ギア51,52の各々の回転速度よりも低くなる。一方、センターギア50のトルクは、第1及び第2ギア51,52のトルクを合成したトルクとなるから、それら両ギア51,52の各々のトルクよりも増大する。従って、ギア機構26は、第1及び第2駆動軸22,24bの各々のトルクよりも増大したトルクを生成する。
【0047】
伝達部28(
図2参照)は、ギア機構26により合成されたトルクをドラム20へ伝達してドラム20を回転させるものである。伝達部28は、
図2に示すように、伝達軸54と、減速機56とを有する。
【0048】
伝達軸54は、センターギア50から第1軸41を貫通してドラム本体40内へ延びている。伝達軸54は、センターギア50と同軸に配置されるとともに、センターギア50と一体的に同じ軸回りに回転可能となっている。また、伝達軸54は、ドラム20と同軸に配置されている。伝達軸54は、ドラム20の第1軸41に対して相対回転可能となっている。
【0049】
減速機56は、ドラム本体40の内部空間に設けられている。減速機56の入力側には、伝達軸54が接続されている。減速機56の出力部は、ドラム本体40に接続されている。減速機56は、ドラム20をセンターギア50及び伝達軸54の回転速度を所定の減速比で減速させた回転速度で回転させる。また、減速機56は、伝達軸54から入力されるその伝達軸54のトルクを増大させる。これにより、伝達部28は、ギア機構26のセンターギア50から入力されるトルクを増大させてドラム本体40へ伝達する。
【0050】
第1ブレーキ装置30(
図2参照)は、第1電動機22の第1駆動軸22bに対して制動を掛けることにより、ギア機構26及び伝達部28を介して第1駆動軸22bと繋がるドラム20の回転を制動するものである。第1ブレーキ装置30としては、例えば電磁ブレーキが用いられる。第1ブレーキ装置30は、第1電動機本体22aに対して第1支持部14側、すなわち第1電動機本体22aとギア機構26との間に配置されて第1電動機本体22aに固定されている。第1ブレーキ装置30は、第1駆動軸22bの突出部22cの周りに設けられており、その突出部22cに対して制動を掛ける。
【0051】
第2ブレーキ装置32(
図2参照)は、第2電動機24の第2駆動軸24bに対して制動を掛けることにより、ギア機構26及び伝達部28を介して第2駆動軸24bと繋がるドラム20の回転を制動するものである。第2ブレーキ装置32としては、第1ブレーキ装置30と同様の電磁ブレーキが用いられる。第2ブレーキ装置32は、第2電動機本体24aに対して第1支持部14側、すなわち第2電動機本体24aとギア機構26との間に配置されて第2電動機本体24aに固定されている。第2ブレーキ装置32は、第2駆動軸24bの突出部24cの周りに設けられており、その突出部24cに対して制動を掛ける。
【0052】
移動式クレーンには、第1及び第2電動機22,24と第1及び第2ブレーキ装置30,32を制御するための
図4に示すような制御システムが搭載される。この制御システムは、ウインチ操作装置60と、ブレーキ操作装置62と、第1インバータ64と、第2インバータ66と、コントローラ68とを有する。
【0053】
ウインチ操作装置60は、ドラム20(
図2参照)を巻上方向又は巻下方向へ回転させる操作を行うために用いられるものである。ウインチ操作装置60は、図略の操作レバーを備えており、操作レバーの操作に応じてその操作を示す指示信号をコントローラ68へ出力する。
【0054】
ブレーキ操作装置62は、第1ブレーキ装置30及び第2ブレーキ装置32を操作するために用いられるものである。ブレーキ操作装置62は、図略のブレーキペダルを備えており、ブレーキペダルの操作に応じてその操作を示す指示信号をコントローラ68へ出力する。
【0055】
第1インバータ64は、電源70から第1電動機本体22aへ供給される電流を制御するものである。
【0056】
第2インバータ66は、電源70から第2電動機本体24aへ供給される電流を制御するものである。
【0057】
コントローラ68は、ウインチ操作装置60から入力される指示信号に応じて、その指示信号が示す操作レバーの操作に対応した電流が第1電動機本体22aと第2電動機本体24aに流れるように第1インバータ64と第2インバータ66に電流を制御させる。それによって、コントローラ68は、ドラム20が操作レバーの操作に応じた巻上方向又は巻下方向への回転を行うように第1及び第2電動機22,24の作動を制御する。また、コントローラ68は、ブレーキ操作装置62から入力される指示信号に応じて、その指示信号が示すブレーキペダルの操作に対応した制動を掛けるように第1及び第2ブレーキ装置30,32を制御する。
【0058】
この第1実施形態の電動ウインチ装置1では、ギア機構26が第1電動機22の第1駆動軸22bのトルクと第2電動機24の第2駆動軸24bのトルクとを合成し、伝達部28がそのギア機構26により合成されたトルクをウインチドラム20に伝達するため、大きなトルクでドラム20を回転させることができる。このため、この電動ウインチ装置1及びそれを備えた移動式クレーンでは、大きな吊能力を確保できる。
【0059】
しかも、この第1実施形態では、ドラム20の軸方向の一方側に第1及び第2電動機22,24が配置されるとともに、その第1及び第2電動機22,24がドラム20の軸方向と直交する方向に並んで配置されるので、仮に第1電動機22と第2電動機24がドラム20の軸方向の両側に分かれて配置される場合に比べて、電動ウインチ装置1をドラム20の軸方向において小型化することができる。このため、ドラム20の軸方向が上部旋回体4の幅方向に一致するように電動ウインチ装置1が上部旋回体4に搭載されたときに、上部旋回体4の幅の制限をクリアすることができる。
【0060】
また、この第1実施形態では、伝達部28が減速機56を備えているため、ギア機構26のセンターギア50の回転速度よりも低い回転速度でドラム20を回転させることができる。しかも、この第1実施形態では、減速機56がドラム本体40の内部空間に配置されているため、減速機56がドラム20の外側に配置されている場合よりも電動ウインチ装置1を小型化できる。
【0061】
また、この第1実施形態では、第1ブレーキ装置30が第1電動機22の第1駆動軸22bに制動を掛けるとともに、第2ブレーキ装置32が第2電動機24の第2駆動軸24bに制動を掛けることにより、ドラム20の回転を制動することができる。
【0062】
しかも、この第1実施形態では、仮に、第1ブレーキ装置30と第2ブレーキ装置32の一方が故障して制動力を発揮できなくなった場合であっても、もう一方のブレーキ装置によりドラム20の回転に対する制動力をある程度確保できる。このため、ドラム20の回転に対する制動の信頼性を向上できる。
【0063】
さらに、この第1実施形態では、第1ブレーキ装置30が第1電動機22の第1駆動軸22bに対して制動を掛けるとともに、第2ブレーキ装置32が第2電動機24の第2駆動軸24bに対して制動を掛けることにより、第1及び第2ブレーキ装置30,32は、それぞれ、小さい制動力でドラム20の回転を制動することができる。
【0064】
具体的に、ギア機構26及び減速機56は、各電動機22,24の各駆動軸22b,24bのトルクを増大させてドラム20へ伝達するが、そのトルクの伝達の流れにおいて最も上手側に位置する電動機22,24の駆動軸22b,24bに対して対応するブレーキ装置30,32が制動を掛けるから、各ブレーキ装置30,32は、小さい制動力でドラム20の回転を制動できる。換言すれば、ドラム20の回転を制動するのに各ブレーキ装置30,32に必要とされる制動力は小さくて済む。このため、各ブレーキ装置30,32として制動能力が小さい小型のものを用いることができ、ブレーキ装置30,32を設けることによる電動ウインチ装置1の大型化を防ぐことができる。
【0065】
(第2実施形態)
図5には、本発明の第2実施形態による電動ウインチ装置1の概略的な構成が示されている。
図6には、この第2実施形態による電動ウインチ装置1を制御するための制御システムの構成が示されている。
図5及び
図6を参照して、第2実施形態による電動ウインチ装置1について説明する。
【0066】
第2実施形態による電動ウインチ装置1は、上記第1実施形態の電動ウインチ装置1と同様に移動式クレーンに搭載されて対象物102(
図1参照)の巻上/巻下を行うものである。ただし、この第2実施形態による電動ウインチ装置1では、伝達部28が、ギア機構26とドラム20との間、具体的には減速機56とドラム20との間でトルクを伝達する接続状態とトルクの伝達を遮断する切断状態とに切り換わるクラッチ58(
図5参照)を備えている。
【0067】
具体的に、この第2実施形態では、減速機56は、
図5に示すように、ドラム本体40の内部空間において、上記第1実施形態の場合よりも第1及び第2電動機22,24寄りに配置されている。これにより、ドラム本体40の内部空間のうち減速機56に対して第1及び第2電動機22,24と反対側の位置にスペースが確保され、このスペースを利用してクラッチ58が設けられている。すなわち、クラッチ58は、ドラム20の軸方向において減速機56を挟んで第1及び第2電動機22,24と反対側でドラム本体40の内部空間に設けられている。
【0068】
クラッチ58としては、例えば湿式クラッチが用いられる。このクラッチ58は、図示していないが、減速機56の図略の出力軸と一体的に回転する一方のクラッチ板と、ドラム本体40と一体的に回転する他方のクラッチ板と、それらのクラッチ板同士を結合させる結合状態と互いに分離させる分離状態とに切り換えるための切換装置とを備える。切換装置がクラッチ板同士を結合状態にすることによって、クラッチ58は、減速機56とドラム本体40との間でトルクを伝達する接続状態になる。一方、切換装置がクラッチ板同士を分離状態にすることによって、クラッチ58は、減速機56とドラム本体40との間でのトルクの伝達が遮断されるように減速機56とドラム本体40とを切り離す切断状態になる。
【0069】
クラッチ58は、制御システムのコントローラ68(
図6参照)によって制御される。具体的には、コントローラ68がクラッチ58の切換装置に制御信号を送り、切換装置は、その制御信号に応じて前記クラッチ板同士を結合状態又は切断状態にする。
【0070】
この第2実施形態の電動ウインチ装置1に関する上記以外の構成は、上記第1実施形態の電動ウインチ装置1に関する構成と同様である。
【0071】
この第2実施形態による電動ウインチ装置1では、クラッチ58を接続状態から切断状態に切り換えることにより、ドラム20を減速機56とそれに繋がるギア機構26及び電動機22,24から切り離して自由に回転させることができる。その結果、フック装置12(
図1参照)のフリーフォールを実施できる。
【0072】
しかも、この第2実施形態では、クラッチ58がドラム本体40の内部空間に配置されているため、クラッチがドラムの外側に配置されている場合に比べて電動ウインチ装置1を小型化できる。
【0073】
さらに、この第2実施形態では、クラッチ58がドラム20の軸方向において減速機56を挟んで電動機22,24と反対側に配置されていることにより、クラッチ58を冷却するための冷却設備やクラッチ58の電気配線を電動機22,24に係る冷却設備や電気配線と干渉することなく配置できる。このため、クラッチ58の冷却設備や電気配線のレイアウトを容易に行うことができる。
【0074】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【0075】
例えば、
図7及び
図8に示す変形例のように、第1ブレーキ装置30を、第1電動機本体22aに対してドラム20と反対側、すなわち第1電動機本体22aに対してギア機構26と反対側に配置して第1電動機本体22aに固定してもよい。この場合、第1電動機本体22aのうちギア機構26と反対側の端部から第1駆動軸22bを突出させ、その突出した第1駆動軸22bの部分に第1ブレーキ装置30が制動を掛けるようにすればよい。
【0076】
また、第2ブレーキ装置32を、第2電動機本体24aに対してドラム20と反対側、すなわち第2電動機本体24aに対してギア機構26と反対側に配置して第2電動機本体24aに固定してもよい。この場合、第2駆動軸24bのうちギア機構26と反対側の端部から第2駆動軸24bを突出させ、その突出した第2駆動軸22bの部分に第2ブレーキ装置32が制動を掛けるようにすればよい。
【0077】
また、電動ウインチ装置においてドラムの軸方向の一方側に配置される電動機の数は、必ずしも2つに限定されない。すなわち、3つ以上の電動機がドラムの軸方向の一方側に配置されてもよい。
【0078】
図9には、電動ウインチ装置1が、3つの電動機72を備えていてそれらがドラム20の軸方向の一方側に配置された変形例が示されている。この場合、電動機72と、その電動機72の駆動軸に結合されてその駆動軸と一体的に回転するギア74と、駆動軸に制動を掛けるブレーキ装置76とを1つのユニット78とし、そのユニット78をセンターギア50の周りに3つ配置して、各ユニット78のギア74をセンターギア50に噛み合わせればよい。電動機72は、上記第1実施形態の第1及び第2電動機22,24と同様のものであり、ギア74は、上記第1実施形態の第1及び第2ギア51,52と同様のものであり、ブレーキ装置76は、上記第1実施形態の第1及び第2ブレーキ装置30,32と同様のものである。
【0079】
また、4つ以上のユニット78をセンターギア50の周りに同様に配置してもよい。
【0080】
これらの変形例において、ブレーキ装置76は、
図7及び
図8の変形例の場合と同様に、電動機本体に対してドラム20と反対側に配置されてもよい。
【0081】
以上のように、より多くの電動機72を設けることによって、ドラム20に付与可能なトルクを大きくすることが可能である。しかも、これらの変形例では、電動ウインチ装置1が備える全ての電動機72はドラム20の軸方向の一方側のみに配置され、それらの電動機72がドラム20の軸方向に対して直交する方向において並列に配置されるため、ドラム20の軸方向における電動ウインチ装置1の寸法が増大するのを防ぐことができ、上部旋回体4の幅の制限をクリアすることができる。
【0082】
また、本発明による電動ウインチ装置は、ドラムの軸方向の一方側のみに電動機が配置されたものに必ずしも限定されない。
【0083】
例えば、
図10に示す変形例のように、電動ウインチ装置1は、ドラム20の軸方向の一方側(第1支持部14側)に配置された第1及び第2電動機22,24に加えて、ドラム20の軸方向の他方側(第2支持部16側)に配置された第3電動機82を備えていてもよい。
【0084】
第3電動機82は、ドラム20の軸方向において第2支持部16を挟んでドラム20と反対側に配置された第3電動機本体82aと、その第3電動機本体82aから第2軸42を貫通してドラム本体40内へ延びる第3駆動軸82bとを有する。第3電動機本体82aは、上記第1実施形態の第1電動機本体22aと同様のものである。第3駆動軸82bは、ドラム20と同軸に配置されている。
【0085】
第3電動機本体82aの第2支持部16側には、第3ブレーキ装置84が配置されており、この第3ブレーキ装置84は、第3電動機本体82aに固定されている。第3ブレーキ装置84は、第3駆動軸82bのうち第3電動機本体82aからドラム20側へ突出した部分に制動を掛ける。
【0086】
ドラム本体40の内部空間には、ギア機構26により合成されたトルクをドラム本体40へ伝達する伝達部28の第1減速機86と、第3駆動軸82bが入力側に接続された第2減速機88とが設けられている。
【0087】
第1減速機86は、上記第1実施形態の減速機56と同様のものであるが、その減速機56に比べて第1支持部14寄りに配置されている。
【0088】
第2減速機88は、ドラム本体40の内部空間において第1減速機86とドラム20の軸方向に並んで配置されており、その第1減速機86に対して第2支持部16側に配置されている。第2減速機88の出力部は、ドラム本体40に接続されている。第2減速機88は、第3駆動軸82bの回転速度を所定の減速比で減速した回転速度でドラム本体40(ドラム20)を回転させる。
【0089】
そして、この
図10の変形例では、第1及び第2電動機本体22a,24aの軸方向の長さが、上記第1実施形態の第1及び第2電動機本体22a,24aの軸方向の長さよりも小さい。具体的には、この変形例での第1及び第2電動機本体22a,24aの軸方向の長さは、上記第1実施形態の第1及び第2電動機本体22a,24aの軸方向の長さの約半分である。第2支持部16側に第3電動機82及び第3ブレーキ装置84が設けられることにより、ドラム20の軸方向における電動ウインチ装置1の寸法が増大するが、この第1及び第2電動機本体22a,24aの長さの削減によって、電動ウインチ装置1の寸法が大幅に増大するのを抑制できる。
【0090】
また、一般的に、電動機の出力トルクは、電動機本体の軸方向の長さに比例するため、
図10の変形例における第1電動機22の出力トルクは、上記第1実施形態の第1電動機22の出力トルクよりも小さくなるとともに、同変形例における第2電動機24の出力トルクは、上記第1実施形態の第2電動機24の出力トルクよりも小さくなるが、それらの出力トルクの減少分以上のトルクを第3電動機82により付与できる。このため、この
図10の変形例によれば、電動ウインチ装置1による吊能力を向上することが可能である。
【0091】
また、
図11に示す変形例のように、ドラム20の軸方向の一方側(第1支持部14側)に配置された第1電動機22、第1ブレーキ装置30、第2電動機24、第2ブレーキ装置32、ギア機構26及び伝達部28からなる第1ユニット91と同様の第2ユニット92を、ドラム20の軸方向の他方側(第2支持部16側)に第1ユニット91と対称になるように設けてもよい。この変形例において各ユニット91,92の構成は、
図10に示した変形例における第1電動機22、第1ブレーキ装置30、第2電動機24、第2ブレーキ装置32、ギア機構26及び伝達部28からなるユニットの構成と同様である。
【0092】
この変形例では、第2支持部16側に設けられた第2ユニット92が有する2つの電動機本体94a,96aの軸方向の長さは、
図10の変形例の第3電動機本体82aの軸方向の長さよりも小さい。このため、この変形例では、
図10の変形例の場合に比べて、ドラム20の軸方向における電動ウインチ装置1の寸法を削減できる。
【0093】
一方、この変形例では、第2ユニット92の各電動機94,96の出力トルクは、
図10の変形例の第3電動機82の出力トルクよりも小さくなるが、電動機94,96の数が
図10の変形例に比べて多いため、第2ユニット92からドラム20に付与するトルクとしては
図10の変形例の場合と同等以上のトルクを確保できる。
【0094】
また、クラッチは、ギア機構とドラムとの間でトルクを伝達する伝達部において、必ずしも減速機とドラムとの間に設けられていなくてもよい。例えば、ギア機構と減速機との間に設けられていてもよい。
【0095】
また、本発明による電動ウインチ装置は、対象物の巻上/巻下を行う巻上用のウインチ装置に必ずしも限定されない。例えば、本発明による電動ウインチ装置は、ブーム等の起伏部材を起伏させるための起伏用のウインチ装置であってもよい。
【0096】
図12には、本発明の変形例による起伏用の電動ウインチ装置105が搭載された移動式クレーンの概略的な構成が示されている。この移動式クレーンの上部旋回体4は、その後部に立設されたガントリ106を備えている。また、この移動式クレーンは、吊作業用の作動部としての起伏装置107を備えている。
【0097】
起伏装置107は、起伏部材としてのブーム8と、マスト108と、ガイライン110と、マスト側スプレッダ112aと、ガントリ側スプレッダ112bと、を備える。
【0098】
マスト108は、上部旋回体4の幅方向に延びる軸回りに回動可能となるようにその上部旋回体4の前後方向の中間部に設けられている。このマスト108の先端部とブーム8の先端部とが、ガイライン110を介して接続されている。
【0099】
マスト側スプレッダ112aは、マスト108の先端部に設けられており、ガントリ側スプレッダ112bは、ガントリ106の頂部に取り付けられている。
【0100】
電動ウインチ装置105は、ガントリ106の基部近傍の部位に設置されている。具体的に、上記第1及び第2支持台14a,16aに対応する一対の支持台109が、上部旋回体4の幅方向に分かれて配置された状態でガントリ106の基部近傍の部位に取り付けられている。この一対の支持台109は、上記第1及び第2軸受14b,16bに対応する図略の軸受をそれぞれ支持している。その図略の軸受によって、電動ウインチ装置105のウインチドラム115(以下、単にドラム115と称する)の軸が回転自在となるように支持されている。ドラム115は、その軸方向が上部旋回体4の幅方向に一致するように配置されている。
【0101】
ドラム115には、起伏ロープ116が巻かれている。このドラム115から引き出された起伏ロープ116がガントリ側スプレッダ112bとマスト側スプレッダ112aに掛け回されている。ドラム115は、回転して起伏ロープ116の巻き取り/繰り出しを行うことにより、ブーム8が起伏するように起伏装置107に吊作業のための動作を行わせる。
【0102】
具体的に、ドラム115は、起伏ロープ116を巻き取るように回転することにより、マスト側スプレッダ112aをガントリ側スプレッダ112b側に引き寄せ、それによってマスト108を後方へ回動させるとともにガイライン110を介してブーム8の先端部を後方へ引っ張る。これにより、ブーム8が後方へ回動しつつ起立する。一方、ドラム115は、起伏ロープ116を繰り出すように回転することにより、マスト側スプレッダ112aがガントリ側スプレッダ112bから前方へ離間することを許容し、それによって、ブーム8がガイライン110を介してマスト108によって支持されながら前方へ回動しつつ倒伏する。
【0103】
起伏用の電動ウインチ装置105の上記以外の構成としては、上記した電動ウインチ装置1の種々の構成と同様の構成が適用される。それによって、この変形例においても、上記電動ウインチ装置1によって得られる効果と同様の効果が得られる。
【0104】
また、本発明による移動式クレーンは、クローラクレーンに限定されるものではない。例えば、ホイール式の下部走行体を有するホイールクレーンであっても、本発明を同様に適用可能である。