(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[塗布装置の全体構成]
図1は、この発明の実施の形態に従う塗布装置の全体構成図である。
図1を参照して、本実施の形態に従う塗布装置200は、X軸テーブル1と、Y軸テーブル2と、Z軸テーブル3と、塗布機構4と、観察光学系6と、CCDカメラ7と、基板固定板8と、制御部とを備える。制御部は、画像処理部9と、制御用コンピュータ10と、ホストコンピュータ11とを含んで構成される。
【0014】
X軸テーブル1、Y軸テーブル2、Z軸テーブル3、塗布機構4、観察光学系6、CCDカメラ7および基板固定板8は処理室201内に配置される。X軸テーブル1は、処理室201の底部上に設置されている。
【0015】
X軸テーブル1は、X軸方向に移動可能に構成される。具体的には、X軸テーブル1の下面にはガイド部(図示せず)が設置されている。当該ガイド部は、処理室201の底面に設置されたガイドレールに摺動可能に接続されている。また、X軸テーブル1の下面にはボールねじが接続されている。ボールねじをモータなどの駆動部材により動作させることにより、X軸テーブル1はガイドレールに沿ってX軸方向に移動可能になっている。
【0016】
X軸テーブル1上には、Y軸テーブル2が設置されている。Y軸テーブル2は、Z軸テーブル3に接続された移動体がY軸方向に移動可能となっている。
【0017】
Y軸テーブル2に接続された移動体にはZ軸テーブル3が設置されている。Z軸テーブル3には、観察光学系6および塗布機構4が接続されている。観察光学系6は、処理対象材である基板5における液体材料の塗布位置を観察するためのものである。CCDカメラ7は、観察した画像を電気信号に変換する。Z軸テーブル3は、観察光学系6および塗布機構4をZ軸方向に移動可能に保持している。X軸テーブル1、Y軸テーブル2およびZ軸テーブル3は、塗布機構4を基板5に対して相対移動させるための「移動機構」の一実施例に対応する。
【0018】
基板固定板8は、処理室201内の天井面に設置されている。基板5は、液体材料が塗布される表面(塗布対象面)と、表面と反対側の裏面とを有する。基板固定板8は、基板5の表面が塗布機構4と対面するように基板5を保持する。
【0019】
画像処理部9、制御用コンピュータ10およびホストコンピュータ11は、処理室201の外部に設置されている。画像処理部9は、CCDカメラ7で変換された画像データを受ける。制御用コンピュータ10は、X軸テーブル1、Y軸テーブル2、Z軸テーブル3、塗布機構4および観察光学系6を制御する。ホストコンピュータ11は、塗布装置全体を制御する。ホストコンピュータ11は、CCDカメラ7で変換された画像データを受けるとともに、制御用コンピュータ10への指令を出力する。ホストコンピュータ11は、図示は省略するが、画像データおよび制御用コンピュータ10からの出力データを表示するためのモニタおよび、制御用コンピュータ10への指令を入力するための操作パネルを有している。
【0020】
[塗布機構の構成]
図2は、
図1に示した塗布機構4を示す模式図である。
図2(A)は側面図を示し、
図2(B)は正面図を示す。
図2を参照して、塗布機構4は、塗布ユニット20と、駆動部19とを備える。
【0021】
塗布ユニット20は、液体材料が注入された容器21と、塗布針24とを含む。容器21は、支持部29によって架台27に固定されている。容器21は、基板5の表面(
図1)に対面して設けられる頂部と、頂部と反対側の底部とを有する。容器21は、その内部に液体材料を収めるための空間を有している。容器21の頂部には、上下方向に貫通する孔部(第3孔部)21dが形成されている。塗布針24の先端部は、先端に近付くに従って先細りになるようにテーパ状に加工されている。塗布針24の先端部24aは、容器21内の液体材料内に浸漬される。塗布ユニット20の詳細な構成については後述する。
【0022】
駆動部19は、塗布針24を上下方向に往復移動可能に構成されている。駆動部19は、塗布針24を上方向に移動させることにより、先端部24aの表面に液体材料を付着させた状態で、塗布針24を孔部21dから基板5に向けて突出させる。
【0023】
具体的には、駆動部19は、塗布針ホルダ14と、サーボモータ15と、バネ16と、カム17と、カムフォロワ18と、カム連結板25と、可動部26と、架台27と、リニアガイド28とを含む。
【0024】
サーボモータ15は、
図1に示したZ軸方向に沿う方向に回転軸15bが設けられている。サーボモータ15の回転軸15bにはカム17が接続されている。カム17の下部表面には、カムフォロワ18をガイドするスロープ状のカム面17aが形成されている。そして、サーボモータ15の駆動により回転軸15bが回転すると、カム17は、カム面17aを下方に向けた状態で回転する。
【0025】
カム17とカムフォロワ18との間には、バネ16の張力が作用して、可動部26およびカム連結板25を介してカムフォロワ18をカム面17aに押圧している。このため、サーボモータ15の回転によりカム17が回転する際、バネ16の張力により、カムフォロワ18は、カム面17aに押圧されて接触した状態が保たれる。
【0026】
カムフォロワ18には、カム連結板25が接続されている。カム連結板25の反対側は可動部26に固定されている。可動部26の上端部には、塗布針ホルダ14が装着されている。塗布針ホルダ14は、先端部24aを上方に向けて塗布針24の基端部を保持する。サーボモータ15の駆動によりカム17が回転すると、カムフォロワ18の上下方向の移動に伴なって、塗布針24は上下方向に往復移動される。
【0027】
(塗布ユニットの構成)
図3は、
図2に示した塗布ユニット20を示す模式図である。
図3を参照して、塗布ユニット20は、容器21と、塗布針24と、第1蓋部22と、第2蓋部23とを含む。
【0028】
容器21は、頂部21aと、頂部21aと反対側の底部21bとを有する。頂部21aは、基板5の表面(
図1)に対面して設けられている。底部21bには開口部が設けられている。第1蓋部22は、この開口部を塞ぐように底部21bに取り付け可能である。
【0029】
容器21はその内部に、液体材料100を収容する収容部21xを有している。収容部21xは、容器21内の頂部21a側に設けられている。収容部21xを密閉するように第2蓋部23が取り付けられている。すなわち、第2蓋部23は、第1蓋部22よりも頂部21a側に設けられ、液体材料100を収容するための空間(収容部21x)を規定する。第2蓋部23は、たとえば圧入によって、容器21の内壁面21cに固定されている。
【0030】
容器21、第1蓋部22および第2蓋部23は、たとえば、フッ素系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂などのような樹脂系材料、あるいは、液体材料で腐食されない金属材料などで形成されている。また、容器21、第1蓋部22および第2蓋部23は、金属材料で形成し、その表面をフッ素系樹脂などでコーティングしたものでもよい。
【0031】
第1蓋部22には、上下方向に貫通する第1孔部22aが形成されている。第2蓋部23には、上下方向に貫通する第2孔部23aが形成されている。頂部21aには、上下方向に貫通する第3孔部21dが形成されている。第1孔部22a、第2孔部23aおよび第3孔部21dは、中心線が互いに一致するように配置されている。
【0032】
液体材料100は、たとえば金属粉末が含有された導電性のペースト(金属ペースト)であり、数十〜数百Pa・s程度の粘度を有している。なお、液体材料100は、容器21に形成された第3孔部21dまたは第2蓋部23に形成された第2孔部23aを用いて収容部21x内に注入することができる。
【0033】
塗布針24は、先端部24aと、軸部24bとを含む。軸部bのテーパ部以外の部分は、たとえば円筒形状を有する。本実施の形態では、軸部24bに、テーパ部以外の軸部分のうち先端側が基端側よりも細い段付きのものを使用しているが、テーパ部以外の軸部分の太さが一定であってもよい。先端側の軸部分の外径は1mm以下であり、たとえば0.7〜0.4mm程度である。
【0034】
塗布針24の先端部24aには、直径30μm〜200μm程度の平坦面が形成されている。この平坦面は、塗布針24の中心線と直交している。塗布針24は、金属材料からなり、機械加工で成形される。その他、ガラス管を引き伸ばして塗布針24を形成してもよい。
【0035】
塗布針24は、第1孔部22aおよび第2孔部23aを貫通するとともに、少なくとも先端部24aが第3孔部21dを貫通可能となっている。塗布針24は、第1孔部22a、第2孔部23aおよび第3孔部21dの中心を結ぶ直線に沿って上下動可能に保持されている。塗布針24が第1孔部22a、第2孔部23aおよび第3孔部21dに挿入されたとき、塗布針24と各孔部との間には一定の隙間が存在する。
【0036】
[塗布機構の動作]
図4は、
図2に示した塗布機構4の動作に伴なう塗布針24の位置を説明するための模式的な断面図である。
図4を用いて、塗布針24の移動の様子を塗布工程に沿って説明する。塗布工程において、塗布針24は、塗布待機状態(
図4(a),(c))と、塗布状態(
図4(b))との間を遷移する。
【0037】
図2(A)を参照して、サーボモータ15は、回転軸15bを回転させてカム17を回転させる。これにより、カム17のカム面17aは、Z軸方向の高さが変化するため、カム面17aと接するカムフォロワ18の高さも変化する。
図2(B)を参照して、カム面17aのうち、下側領域17bにカムフォロワ18が近接する状態で塗布針24が下降し、上側領域17cにカムフォロワ18が近接する状態で塗布針24が上昇する。これにより、サーボモータ15を駆動させると、カム17を介して塗布針24の先端部24aを上下方向に往復移動させることができる。
【0038】
(塗布待機状態)
たとえば、カムフォロワ18が下側領域17bに近接する状態では、塗布針24は、移動可能範囲の下端位置(サーボモータ15に最も近い位置)に移動している。このとき、
図4(a)に示すように、塗布針24の先端部24aは、収容部21x内に収容されている液体材料100に浸漬されている。
【0039】
(塗布状態)
サーボモータ15の回転軸15bの回転により、さらにカム17が回転してカムフォロワ18が上側領域17cに到達すると、塗布針24は、移動可能範囲の上端位置に移動する。これにより、
図4(b)に示すように、塗布針24の先端部24aは、容器21の頂部21aに形成された第3孔部21dを貫通して頂部21aから上向きに突出された状態となる。先端部24aの表面には液体材料100が付着されており、先端部24aを基板5の表面に接触させることで基板5の表面に液体材料100が塗布される。
【0040】
先端部24aを一定時間、基板5の表面に接触させた後、サーボモータ15の回転軸15bの回転により、さらにカム17が回転してカムフォロワ18が上側領域17cに到達すると、塗布針24は下端位置に移動する。これにより、
図4(c)に示すように、先端部24aが収容部21x内の液体材料100に浸漬される。塗布針24が塗布待機状態に戻り、1回の塗布動作が完了する。
【0041】
[作用効果]
以上説明したように、本実施の形態に係る塗布機構4は、容器21の頂部21aに第3孔部21dを設けておき、塗布針24の先端部24aを、第3孔部21dを貫通して頂部21aから上向きに突出させることにより、頂部21aに対面して設けられた基板5の表面に液体材料100を塗布するように構成されている。本実施の形態に係る塗布機構の作用効果を、
図5の比較例を用いて説明する。
【0042】
図5は、比較例としての従来の塗布装置における塗布機構の動作に伴なう塗布針の位置を説明するための模式的な断面図である。
図5を参照して、従来の塗布装置において、塗布機構の塗布ユニットは、液体材料100が注入された容器120と、塗布針110と、蓋部130とを含む。容器120の底部には、上下方向に貫通する孔部122が形成されている。容器120の頂部には開口部が設けられおり、この開口部を塞ぐように蓋部130が取り付けられている。
【0043】
塗布針110の先端部112は、蓋部130に設けられた孔部を貫通して液体材料100に浸漬される。塗布針110は、図示しない駆動部によって上下方向に往復移動可能に構成されている。駆動部は、塗布針24を下方向に移動させることにより、先端部112の表面に液体材料100を付着させた状態で、塗布針110を孔部122から基板5の表面に向けて突出させる。
【0044】
次に、
図5を用いて、比較例における塗布針110の移動の様子を塗布工程に沿って説明する。塗布工程において、塗布針110は、塗布待機状態(
図5(a),(c),(d),(f))と、塗布状態(
図5(b),(e))との間を遷移する。
【0045】
具体的には、塗布待機状態において、塗布針110は、その移動可能範囲の上端位置に移動している。このとき、
図5(a)に示すように、塗布針110の先端部112は、容器120内の液体材料100に浸漬されている。
【0046】
次に、塗布針110が移動可能範囲の下端位置に移動すると、
図5(b)に示すように、先端部112は、容器120の底部に形成された孔部122を貫通して容器120の底部から下向きに突出される。その表面に液体材料100が付着された先端部112を基板5の表面に接触させることにより、基板5の表面に液体材料100が塗布される。
【0047】
先端部112を一定期間、基板5の表面に付着させた後、塗布針110を上端位置に移動させることにより、
図5(c)に示すように、先端部112が容器120内の液体材料100に浸漬される。塗布針110が塗布待機状態に戻り、1回の塗布動作が完了する。
【0048】
ここで、液体材料100が、たとえば金属ペーストのような高粘度の材料である場合、液体材料100を塗布した後の塗布針110の外周部分には、塗布後の残りの液体材料100が付着していることがある。そして、塗布針110を容器120内に戻す際に、この残りの液体材料100が、その粘着力によって容器120の孔部122の周りを取り囲む周辺部分に付着することがある。塗布動作を繰り返すことによって、孔部122の周辺部分には液体材料100が蓄積される。その結果、
図5(f)に示されるように、蓄積された液体材料100によって孔部122の周辺部分に液溜まりが形成されることがある。
【0049】
このように孔部122の周辺部分に液体溜まりが形成されると、溜まった液体材料100が、塗布針110の先端部112に余分に付着してしまい、1回の塗布動作において基板5の表面に塗布される液体材料100の量にばらつきが生じる場合がある。
【0050】
特に、液体材料100が、金属ペーストのように金属を含有した材料である場合には、金属を含有していない材料に比べて比重が大きいため、孔部122の周辺部分に蓄積された液体材料100が自重(重力作用)によって下方(底部側)に集まりやすくなる。この結果、液体溜まりが発生しやすくなる傾向がある。
【0051】
これに対して、本実施の形態に係る塗布機構では、
図4に示したように、塗布針24の先端部24aは、容器21の頂部21aに形成された第3孔部21dを貫通して頂部21aから上向きに突出される。
【0052】
このような構成とすることにより、塗布針24を容器21内に戻す際に第3孔部21dの周辺部分に付着した液体材料100は、自重によって下方(底部側)に移動するため、容器21内に向かって戻りやすくなる。したがって、第3孔部21dの周辺部分に液体材料100が蓄積されるのを抑制することができる。この結果、第3孔部21dの周辺部分に液体溜まりが形成されるのを防止できる。
【0053】
このように、第3孔部21dに液体溜まりが形成されるのが防止されることによって、本実施の形態に係る塗布機構は、塗布動作ごとに生じる、基板5に塗布される液体材料100の量のばらつきを防止することができる。この結果、液体材料100を長時間安定して塗布することが可能となる。
【0054】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。