(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の触媒ユニットを内部に備えた消音装置では、排ガス浄化率を良くするために、排気の漏れを減らして触媒ユニットを通過させることが望まれる。しかしながら、消音装置の内部空間に触媒ユニットを配置させる場合に、消音装置の内部空間の断面と触媒ユニットの断面を同じ大きさにすれば、排気漏れを減らして触媒ユニットを通過させることができるが、消音装置の設計の自由度が低くなる。また、消音装置の内部空間の断面よりも触媒ユニットの断面が小さい場合、消音装置の内壁と触媒ユニットの外周部との隙間を埋める隔壁を設ける必要があり、設計の自由度が低くなるとともに、隔壁と触媒ユニットを溶接する第1箇所と、隔壁と消音装置の内壁とを溶接する第2箇所とが必要であり、溶接箇所が増えてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、設計自由度の低下を防ぐことができる鞍乗型車両用の消音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る鞍乗型車両用の消音装置は、エンジンユニットからの排出ガスを導く排気通路に設けられた鞍乗型車両用の消音装置であって、前記排気通路の一部を構成し、上流側開口部から排出ガスを導入し下流側開口部から排出ガスを排出する内部空間を有する、前記排出ガスの流れ方向に垂直な方向に膨出した膨出部と、前記内部空間よりも前記排出ガスの流れ方向に垂直な断面積が小さく、上流側より導かれた前記排出ガスを前記内部空間に導く入口部と、前記内部空間よりも前記排出ガスの流れ方向に垂直な断面積が小さく、前記内部空間に導かれた前記排出ガスを下流側に導く出口部と、前記入口部に溶接された入口触媒ユニットと、前記出口部に溶接された出口触媒ユニットと、を備える。
【0007】
上記構成によれば、入口触媒ユニットを通過して一次浄化された排気が膨出部で消音される。消音後の排気が出口触媒ユニットを通過して二次浄化されて、消音装置外へ排出される。入口部と出口部とに触媒ユニットがそれぞれ溶接されることで、2つの触媒ユニットの膨出部への溶接を回避することができ、触媒ユニットの外形に拘わらず膨出部を形成することができ、且つ、膨出部と触媒ユニットとの隙間を塞ぐ隔壁を不要にできる。これによって、触媒ユニットに起因する膨出部の設計の制約を減らすことができる。例えば、膨出部の設計制約を減らすことで、消音効果の高い膨出部を形成しやすくなる。
【0008】
上記構成において、前記入口部及び前記出口部には、前記膨出部の内部空間に開口する開口部分がそれぞれ形成され、前記入口触媒ユニットの上流側端部が、前記入口部の開口部分に溶接され、前記出口触媒ユニットの下流側端部が、前記出口部の開口部分に溶接されてもよい。この構成によれば、各触媒ユニットを膨出部の内部空間に収容しやすくなる。
【0009】
上記鞍乗型車両用の消音装置は、前記上流側開口部又は前記下流側開口部から前記膨出部の外方に向けて突出しており、前記入口部又は前記出口部を形成する外パイプ体を備え、前記外パイプ体と、前記上流側開口部及び前記下流側開口部のうち対応する開口部と、前記入口触媒ユニット及び前記出口触媒ユニットのうち対応するユニットとが、共通部分で溶接されてもよい。この構成によれば、外パイプ体と触媒ユニットとの間の溶接と、外パイプ体と膨出部との間の溶接とを個別に行う場合に比べて、溶接箇所を減らすことができる。
【0010】
上記鞍乗型車両用の消音装置は、前記上流側開口部又は前記下流側開口部から前記膨出部の内方に向けて突出しており、前記入口部又は前記出口部を形成する内パイプ体を備え、前記内パイプ体と前記上流側開口部及び前記下流側開口部のうち対応する開口部とが溶接される箇所よりも、前記膨出部の内方側で、前記内パイプ体と前記入口触媒ユニット及び前記出口触媒ユニットのうち対応するユニットとが溶接されてもよい。この構成によれば、内パイプ体の長さや形状によって触媒ユニットを好ましい位置に配置することができ、設計の自由度を向上することができる。
【0011】
上記構成において、前記鞍乗型車両は、自動二輪車であって、前記消音装置は、前記自動二輪車の前記エンジンユニットよりも後方であって、前記自動二輪車の後輪よりも前方に配置されてもよい。この構成によれば、他の搭載機器との干渉を防ぎつつ、消音効果を高めるために、膨出部が三次元的な形状に形成されやすい。本発明では、設計の自由度を向上でき、なるべく大きい空間に形成しやすい。
【0012】
上記構成において、前記入口触媒ユニット及び前記出口触媒ユニットは、互いに上下方向にずれて配置されてもよい。この構成によれば、消音装置が前後方向に大きくなることを防ぐことができる。
【0013】
上記構成において、前記入口触媒ユニットの軸線が前後方向に延び、前記出口触媒ユニットの軸線が車幅方向に延びてもよい。この構成によれば、向きを変えることで、消音効果を向上できる。
【0014】
上記構成において、前記膨出部には、その外部から内部へと貫通する孔を塞ぐ蓋体が設けられてもよい。この構成によれば、予め膨出部に孔が設けられているため、入口側及び出口触媒ユニットをそれぞれ入口部や出口部と溶接した後に、スパッタ等の異物を前記孔から排出させることができる。また、その後に蓋体で前記孔を塞ぐことにより、この孔から排出ガスが漏れることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設計自由度の低下を防ぐことができる鞍乗型車両用の消音装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態を各図面を参照して説明する。以下に記載する各方向は、鞍乗型車両の搭乗者から見た方向を基準とする。また、以下の説明で、「上流側」及び「下流側」とは、それぞれ、鞍乗型車両のエンジンユニットから排出されるガスの流れ方向における上流側及び下流側を指すものとする。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る消音装置を備えた鞍乗型車両1の拡大右側面図である。この実施形態で、鞍乗型車両1は、一例にすぎないが、自動二輪車である。
図1に示すように、鞍乗型車両1では、その車体フレーム2に、略前後方向に延びるスイングアーム3の前端部がピボット軸4により回動自在に支持され、スイングアーム3の後端部に後輪5が回転自在に支持されている。車体フレーム2には、走行駆動力を発生するエンジン12及びそれに接続された変速機13とを有するエンジンユニット6が搭載され、その変速機13の出力軸から出力される回転動力が無端状の動力伝達ループ(図示せず)を介して後輪5に伝達される。エンジンユニットの6の下部には潤滑油を貯蔵するオイルパン14が配置されている。
【0019】
エンジン12は、例えば多気筒エンジンであり、エンジン12の複数の排気ポート12aには、エンジン12からの排出ガス(以下、単に「排出ガス」という。)をエンジン12の前方から下方へと導く複数の排気管8が接続されている。複数の排気管8は、エンジン12の下方の集合管9で集合され、集合管9の下流側端部には、第1消音装置としての排気チャンバ10が接続されている。さらに、排気チャンバ10の下流側端部には、第2消音装置としての排気マフラ11が接続されている。この実施形態では、第1消音装置としての排気チャンバ10についてのみ説明し、排気マフラ11についての説明は省略する。ただし、排気マフラ11も排気チャンバ10と同様の特徴を有してもよい。
【0020】
図8は、排気チャンバ10の構成を簡略化して示した模式図である。
図8に示すように、排気チャンバ10は、排出ガスの排気通路の一部を構成する内部空間Sを有する膨出部20と、上流側より導かれた排出ガスを内部空間Sに導く入口部50と、内部空間Sに導かれた排出ガスを下流側に導く出口部60とを有している。また、排気チャンバ10は、入口部50に溶接された入口触媒ユニット80と、出口部60に溶接された出口触媒ユニット90とを有している。
【0021】
膨出部20は、入口部50を介して内部空間Sに排出ガスを導入するための上流側開口部21と、出口部60を介して内部空間Sの排出ガスを排出するための下流側開口部22とを有している。前記内部空間Sを形成する膨出部20の内壁は、排出ガスの流れ方向に垂直な方向に膨出している。すなわち、膨出部20は、排出ガスの流れ方向における内部空間Sの断面積が、上流側開口部21及び下流側開口部22よりも大きくなるように形成されている。
【0022】
入口部50は、膨出部20の上流側開口部21から膨出部20の外方に向けて突出する部分を有する第1外パイプ体51を含み、排出ガスの排気通路の一部を形成する。第1外パイプ体51は、その上流側端部に、
図1に示した集合管9の下流側端部と接続するための第1接続部52を有する。また、第1外パイプ体51の下流側端部に、膨出部20の内部空間Sに開口する開口部53が形成されている。
【0023】
また、出口部60は、膨出部20の下流側開口部22から膨出部20の外方に向けて突出する部分を有する第2外パイプ体61と、膨出部20の下流側開口部22から膨出部20の内方に向けて突出する内パイプ体64とを含み、排出ガスの排気通路の一部を形成する。第2外パイプ体61は、その下流側端部に、
図1に示した排気マフラ11の上流側端部と接続するための第2接続部63を有する。また、内パイプ体64の上流側端部に、膨出部20の内部空間Sに開口する開口部65が形成されている。入口部50及び出口部60の排気通路の断面積(排出ガスの流れ方向に垂直な断面積)は、いずれも、排出ガスの流れ方向における膨出部20の内部空間Sの断面積よりも小さい。
【0024】
入口触媒ユニット80は、タンデム型の触媒ユニットであり、排気通路の一部を形成する筒状のケーシング81と、これに収容され、排気浄化用の触媒を担持させたハニカム構造の2つの担体82,83とを有する。入口触媒ユニット80の担体82は、ケーシング81が形成する排気通路において、担体83よりも上流側に配置されており、上流側の担体82と下流側の担体83の間には空隙が設けられる。入口触媒ユニット80の担体82は、ケーシング81の溶接箇所を確保するために、ケーシング81の上流側端部81aよりやや下流側に配置される。
【0025】
また、出口触媒ユニット90は、排気通路の一部を形成する筒状のケーシング91と、これに収容され、排気浄化用の触媒を担持させたハニカム構造の1つの担体92とを有する。出口触媒ユニット90の担体92は、ケーシング81の溶接箇所を確保するために、ケーシング91の下流側端部91bよりやや上流側に配置される。入口触媒ユニット80の2つの担体82,83、及び出口触媒ユニット90の担体92は、限定されるわけではないが、いずれも大きさや種類が同じである。
【0026】
膨出部20と入口触媒ユニット80と第1外パイプ体51とは、共通部分(第1溶接箇所41)で溶接されている。より詳しくは、膨出部20の上流側開口部21と、入口触媒ユニット80の上流側端部81aと、第1外パイプ体51の開口部53近傍の外周面とが溶接されている。入口触媒ユニット80の上流側端部81aが、第1外パイプ体51の開口部53に溶接されているため、入口触媒ユニット80を膨出部20の内部空間Sに収容しやすくなる。また、入口触媒ユニット80を膨出部20の内部空間Sに収容することで、排気チャンバ10の小型化を図ることができる。
【0027】
また、膨出部20と内パイプ体64と第2外パイプ体61とは、共通部分(第2溶接箇所42)で溶接されている。より詳しくは、膨出部20の下流側開口部22と、内パイプ体64の下流側の開口部66と、第2外パイプ体61の開口部62近傍の外周面とが溶接されている。さらに、出口触媒ユニット90の下流側端部91bと内パイプ体64の上流側の開口部65とが、溶接されている(第3溶接箇所43)。このため、出口触媒ユニット90を膨出部20の内部空間Sに収容しやすくなる。また、出口触媒ユニット90を膨出部20の内部空間Sに収容することで、排気チャンバ10の小型化を図ることができる。
【0028】
膨出部20の内部には、内部空間Sを第1膨張室S1と第2膨張室S2に区画する仕切壁23が設けられている。仕切壁23は、膨出部20の内壁と溶接されて固定されている。また、仕切壁23の周縁の部分23bが出口触媒ユニット90の外周面に当接しており、出口触媒ユニット90を支持する。仕切壁23には、第1膨張室S1と第2膨張室S2を連通する連通路23aが設けられている。ただし、内部空間Sは、膨張室に限定されず、例えば内部空間Sは共鳴室であってもよい。
【0029】
なお、後述するが、第1膨張室S1を形成する膨出部20には、その外部から内部へと貫通する孔24を塞ぐ蓋体25が設けられている。
【0030】
以下では、
図2〜
図7を参照して、排気チャンバ10の構造をより詳しく説明する。
図2に示す各方向は、排気チャンバ10を鞍乗型車両1に取り付けたときの鞍乗型車両1の搭乗者から見た方向と一致する。
図2に示すように、排気チャンバ10は、入口部50を介して、前方から送り込まれてきた排出ガスを膨出部20の内部空間Sに導入し、出口部60を介して、内部空間Sの排出ガスを右上後方へと排出する。
【0031】
膨出部20は、鞍乗型車両1の前方から後方に延びる排気系において、車幅方向及び上下方向に膨出した立体的形状を有している。膨出部20は、
図2〜
図4に示すように、排気チャンバ10を鞍乗型車両1に取り付けた状態で、右側に配置される第1膨出体31と、左側に配置される第2膨出体32と、第1膨出体31と第2膨出体32とを合わせたときに前方に開口する部分を塞ぐ閉塞体33とを含み、これらが互いに溶接されることで一体化されている。第1膨出体31の右上後方に、膨出部20の下流側開口部22が円形に形成されている。閉塞体33の右側には、膨出部20の上流側開口部21が円形に形成されている。第2膨出体32には、内部空間Sを左右に区画するように上述の仕切壁23が設けられており、膨出部20の内部には、右側に第1膨張室S1が形成され、左側に第2膨張室S2が形成されている。
【0032】
第1外パイプ体51は、膨出部20の上流側開口部21から膨出部20の前方、すなわち排出ガスの流れの上流側に向けて突出している。第1外パイプ体51は、その上流側端部に設けられた第1接続部52で集合管9の下流側端部と接続されている。第1外パイプ体51は、略円筒状であって、前後方向に延びる集合管9と軸線方向が一致するように延びる。さらに、入口触媒ユニット80は、膨出部20の上流側開口部21から膨出部20の内方に向かって、集合管9及び第1外パイプ体51と軸線方向が一致するように前後方向に延びる。入口触媒ユニット80の下流側端部81bは、第1膨張室S1に開口している。
【0033】
入口触媒ユニット80のケーシング81は円筒状であって、少なくとも、その上流側端部81aは、膨出部20の上流側開口部21及び第1外パイプ体51の下流側の開口部53と略々同形同大である。より詳しくは、
図4に示すV−V矢視の拡大断面図である
図5に示すように、入口触媒ユニット80の上流側端部81aは、膨出部20の上流側開口部21よりやや小径であって、入口触媒ユニット80の上流側端部81aが、膨出部20の上流側開口部21を、空隙をほとんど設けることなく挿通可能である。また、入口触媒ユニット80の上流側端部81aは、第1外パイプ体51の下流側の開口部53よりやや大径であって、第1外パイプ体51の下流側の開口部53が、入口触媒ユニット80の上流側端部81aを、空隙をほとんど設けることなく挿通可能である。
【0034】
そして、
図5に示すように、第1外パイプ体51の開口部53近傍の外周面と、入口触媒ユニット80の上流側端部81aと、膨出部20の上流側開口部21とが、この順に径方向に重なるように階段状に配置された状態で、全周溶接により互いに一箇所で接合されている(第1溶接箇所41)。ここで、「第1外パイプ体51の開口部53と、入口触媒ユニット80の上流側端部81aと、膨出部20の上流側開口部21とが、径方向に重なる」とは、膨出部20の上流側開口部21と、入口触媒ユニット80の上流側端部81aと、第1外パイプ体51とが、いずれもビード幅(例えば5mm)内におさまるように配置された状態をいう。こうして、入口触媒ユニット80は、膨出部20の内部空間Sに収容された状態で、入口部50に固定される。
【0035】
このように、第1外パイプ体51と入口触媒ユニット80と膨出部20とが一箇所でまとめて溶接されるので、第1外パイプ体51と入口触媒ユニット80との間の溶接と、第1外パイプ体51と膨出部20との間の溶接とを個別に行う場合に比べて、溶接箇所を減らすことができる。また、第1外パイプ体51と入口触媒ユニット80と膨出部20とが、全周溶接されているため、第1外パイプ体51の排気通路を通過する排出ガスを、排気漏れなく全て、入口触媒ユニット80の担体82,83を通過させて、膨出部20の内部空間Sへと導入することができる。
【0036】
図4及び
図5に示すように、入口触媒ユニット80の外周面と膨出部20の内壁との間には隙間が設けられている。このため、入口触媒ユニット80による膨出部20の温度上昇を軽減することができる。
【0037】
第2外パイプ体61は、膨出部20の下流側開口部22から膨出部20の右上後方、すなわち排出ガスの流れの下流側に向けて突出している。第2外パイプ体61は、その下流側端部に設けられた第2接続部63で排気マフラ11の上流側端部と接続されている。第2外パイプ体61は、略円筒状である。
【0038】
内パイプ体64は、膨出部20の下流側開口部22から膨出部20の内方に向かって突出しており、第2膨張室S2に向かうように湾曲した断面円形の筒状である。内パイプ体64の上流側の開口部65は、第1膨張室S1に位置している。さらに、出口触媒ユニット90は、内パイプ体64の上流側の開口部65から第2膨張室S2に向かって、内パイプ体64の開口部65と軸線方向が一致するように延びる。出口触媒ユニット90の上流側端部91aは、第2膨張室S2に開口している。
【0039】
内パイプ体64の下流側の開口部66は、少なくとも、膨出部20の下流側開口部22及び第2外パイプ体61の上流側の開口部62と略々同形同大である。より詳しくは、
図6に示すように、内パイプ体64の下流側の開口部66は、膨出部20の下流側開口部22よりやや小径であって、内パイプ体64の下流側の開口部66が、膨出部20の下流側開口部22を、空隙をほとんど設けることなく挿通可能である。また、内パイプ体64の下流側の開口部66は、第2外パイプ体61の上流側の開口部62よりやや大径であって、第2外パイプ体61の上流側の開口部62が、内パイプ体64の下流側の開口部66を、空隙をほとんど設けることなく挿通可能である。
【0040】
そして、第2外パイプ体61の上流側の開口部62近傍の外周面と、内パイプ体64の下流側の開口部66と、膨出部20の下流側開口部22とが、この順に径方向に重なるように階段状に配置された状態で、全周溶接により互いに一箇所で接合されている(第2溶接箇所42)。ここで、「第2外パイプ体61の上流側の開口部62と、内パイプ体64の下流側の開口部66と、膨出部20の下流側開口部22とが、径方向に重なる」とは、膨出部20の下流側開口部22と、内パイプ体64の下流側の開口部66と、第2外パイプ体61とが、いずれもビード幅(例えば5mm)内におさまるように配置された状態をいう。
【0041】
また、出口触媒ユニット90のケーシング91は円筒状であって、少なくとも、その下流側端部91bは、内パイプ体64の上流側の開口部65と略々同形同大である。より詳しくは、出口触媒ユニット90の下流側端部91bは、内パイプ体64の上流側の開口部65よりやや小径であって、出口触媒ユニット90の下流側端部91bが、内パイプ体64の上流側の開口部65を、空隙をほとんど設けることなく挿通可能である。
【0042】
そして、内パイプ体64の上流側の開口部65と、出口触媒ユニット90の下流側端部91b近傍の外周面とが、径方向に重なるように階段状に配置された状態で、全周溶接されている(第3溶接箇所43)。ここで、「内パイプ体64の上流側の開口部65と、出口触媒ユニット90の下流側端部91bとが、径方向に重なる」とは、内パイプ体64の上流側の開口部65と、出口触媒ユニット90が、いずれもビード幅(例えば5mm)内におさまるように配置された状態をいう。こうして、出口触媒ユニット90は、膨出部20の内部空間Sに収容された状態で、膨出部20に固定される。
【0043】
このように、膨出部20と内パイプ体64と第2外パイプ体61とが一箇所でまとめて溶接されるので、第2外パイプ体61と内パイプ体64との間の溶接と、第2外パイプ体61と膨出部20との間の溶接とを個別に行う場合に比べて、溶接箇所を減らすことができる。また、膨出部20と内パイプ体64と第2外パイプ体61とが全周溶接されており、且つ、内パイプ体64の上流側の開口部65と出口触媒ユニット90とが全周溶接されているため、第2外パイプ体61の排気通路を通過して下流側へと導かれる排出ガスを、排気漏れなく全て、出口触媒ユニット90の担体92を通過したガスとすることができる。
【0044】
さらに、内パイプ体64と膨出部20の下流側開口部22とが溶接される箇所よりも、膨出部20の内方側で、内パイプ体64と出口触媒ユニット90が溶接されているので、内パイプ体64の長さや形状によって出口触媒ユニット90を好ましい位置に配置することができ、設計の自由度を向上することができる。例えば、この実施形態では、第1膨張室S1より下流側である第2膨張室S2が、左側に配置されているが、右上後方から左前方に向かって湾曲して第2膨張室S2へと延びる内パイプ体64を備えることで、右上後方に膨出部20の下流側開口部22を設けることが可能になる。
【0045】
図5に示すように、仕切壁23は、その周縁の一部23cが第2膨出体32の内壁に溶接されて膨出部20に固定されており、仕切壁23の周縁の別の部分23bが、出口触媒ユニット90の下部を支持するように形成されている。このように、内部空間Sを仕切るための仕切壁23を、出口触媒ユニット90の支持部材として兼用しているため、別の支持部材を設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
【0046】
図5に示すように、出口触媒ユニット90の外周面と膨出部20の内壁との間には隙間が設けられている。このため、出口触媒ユニット90による膨出部20の温度上昇を軽減することができる。なお、出口触媒ユニット90の上方と膨出部20との間の隙間には、仕切壁23が設けられていないため、排出ガスは連通路23aだけでなくこの隙間からも第1膨張室S1から第2膨張室S2へ流入される。
【0047】
図7に示すように、この実施形態に係る鞍乗型車両1は自動二輪車であり、排気チャンバ10はエンジンユニット6よりも後方であって後輪5より前方のスペースに配置されている。具体的には、エンジンユニット6の下部のオイルパン14は、右側の浅底部14aと左側の深底部14bとから形成されている。浅底部14aの下方であって深底部14bの左側方を集合管9が前後方向に延びており、側面視において集合管9がオイルパン14の深底部14bに重なっている(
図1参照)。この集合管9の下流側端部に接続された排気チャンバ10は、少なくともその膨出部20が側面視してエンジンユニット6及び後輪5と重ならないように配置される。これにより、当該自動二輪車に搭載された他の機器との干渉を防ぎつつ、消音効果の高い三次元的な形状に膨出部20を形成することができる。
【0048】
エンジンユニット6と後輪5との間のスペースには限りがあるが、この実施形態に係る排気チャンバ10では、
図2乃至
図4に示すように、入口触媒ユニット80及び出口触媒ユニット90が、互いに上下方向にずれて配置されている。より詳しくは、入口触媒ユニット80は、膨出部20の内部空間Sにおける下部の空間に配置されており、出口触媒ユニット90は、膨出部20の内部空間Sにおける上部の空間に配置されている。このため、排気チャンバ10の前後方向の寸法が短くなるように設計して、エンジンユニット6と後輪5との間のスペースに排気チャンバを配置させることができる。
【0049】
入口部50の上流側端部には第1接続部52が設けられており、出口部60の下流側端部には第2接続部63設けられている。このため、排気チャンバ10は、排気チャンバ10に隣接する他の排気装置(この実施形態では集合管9及び排気マフラ11)に対して着脱可能に構成されており、当該他の排気装置を変更することなく、要求される浄化性能に応じた排気チャンバ10を取り付けることができる。
【0050】
また、入口触媒ユニット80と出口触媒ユニット90とは、平面視してそれらの軸線同士が互いに交差するように配置されている。より詳しくは、入口触媒ユニット80の軸線が前後方向に延びるように配置されており、出口触媒ユニット90の軸線が車幅方向に延びるように配置されている。このように、入口触媒ユニット80と出口触媒ユニット90の向きを変えることで、消音効果を向上することができる。
【0051】
図7及び
図8に示すように、膨出部20には、その外部から内部へと貫通する孔24を塞ぐ蓋体25が設けられている。この実施形態に係る排気チャンバ10は、膨出部20の入口である入口部50に入口触媒ユニット80が溶接され、膨出部20の出口である出口部60に出口触媒ユニット90が溶接されている。このため、製造工程において、各触媒ユニット80,90を膨出部20に溶接した後に膨出部20内に例えばスパッタなどの異物が存在した場合、このような異物は、ガスと異なり膨出部20の外部に排出させることができなくなる。しかし、この実施形態では、予め膨出部20に孔24が設けられているため、入口触媒ユニット80及び出口触媒ユニット90をそれぞれ入口部50及び出口部60に溶接した後であっても、スパッタ等の異物を前記孔24から排出させることができる。また、その後に蓋体25で前記孔24を塞ぐことにより、この孔24から排出ガスが漏れることを防ぐことができる。
【0052】
孔24は、スパッタなどの異物を確実に排出させることができるように、直径10mm以上であることが好ましい。また、孔24は、第1膨出体31と第2膨出体32とが溶接される部分を含む空間である第1膨張室S1に開口するように形成されることが好ましい。蓋体25は、例えば、膨出部20と同じ材質の金属板である。蓋体25は、例えば膨出部20に溶接されて固着される。
【0053】
以上説明したように、エンジンユニット6から排出された排出ガスは、入口部50の排気通路を通った後、入口部50に溶接された入口触媒ユニット80を通過して、一次浄化される。一次浄化された排出ガスは、膨出部20の第1膨張室S1に導入され、排気音が低減される。排出ガスが第1膨張室S1から第2膨張室S2に導入されると、排気音は更に低減される。第2膨張室S2の排出ガスは、出口触媒ユニット90を通過して二次浄化され、その後、出口触媒ユニット90に溶接された出口部60を介して、排気チャンバ10の外部へと排出される。
【0054】
入口部50と入口触媒ユニット80とが溶接されており、出口部60と出口触媒ユニット90とが溶接されているため、排気チャンバ10に導入される排出ガスは必ず各触媒ユニット80,90を通過してから排気チャンバ10の外部へと排出される。このため、各触媒ユニット80,90は、排ガス浄化率を良くするために、膨出部20の内部空間Sの断面と触媒ユニットの断面とを同じ大きさや形状にしたり、膨出部20の内壁と触媒ユニットとの隙間を塞ぐ隔壁を設けたりする必要がなくなる。従って、触媒ユニットに起因する膨出部20の設計の制約を減らすことができ、例えば、消音効果の高い膨出部20を形成しやすくなる。
【0055】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る排気チャンバ110の構成を示した模式図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、この実施形態では、膨出部120の内部空間Sは、仕切壁23によって前後方向に区画されている。また、出口部160は、膨出部120の下流側開口部122から膨出部120の外方に向けて突出する部分と内方に向けて突出する部分とを有する一つの出口パイプ体161で形成されている。出口パイプ体161は、その上流側の開口部162と出口触媒ユニット90の下流側端部91bとが、溶接されており、その外周面の一部と膨出部120の下流側開口部122とが、溶接されている。この実施形態でも、入口部50と入口触媒ユニット80とが溶接されており、出口部160と出口触媒ユニット90とが溶接されているため、第1実施形態と同様、触媒ユニットに起因する膨出部120の設計の制約を減らすことができ、消音効果の高い膨出部120を形成しやすくなる。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、排気チャンバの形状、大きさ、配置等は、上記実施形態の適宜変更可能である。また、膨出部の内部空間の仕切壁の数や仕切方向なども上記実施形態に限定されない。
【0057】
入口触媒ユニットは、必ずしもタンデム型の触媒ユニットである必要はなく、また、出口触媒ユニットは、タンデム型の触媒ユニットであってもよい。ただし、入口触媒ユニットの浄化性能が、出口触媒ユニットのそれよりも高く設定されていることが好ましい。
【0058】
また、入口部及び出口部は、膨出部の内部空間よりも排出ガスの流れ方向に垂直な断面積が小さければよく、上記実施形態の構成に限定されず、適宜好ましい構成をとることができる。入口部及び出口部は、膨出部に溶接されるための別部材でなくてもよく、例えば膨出部と入口部及び出口部は、一つの部材から形成されたものであってもよい。また、例えば、入口部は、内パイプ体と外パイプ体とで構成されていてもよく、膨出部の外方に向けて突出する部分と内方に向けて突出する部分とを有する一つのパイプ体で構成されていてもよい。また、出口部は、外パイプ体のみの構成であってもよい。入口部と出口部とは、同一の構成であってもよい。