【実施例1】
【0038】
a)まず、本実施例1の温度センサの構造を説明する。
図1に示すように、本実施例の温度センサ1は、内燃機関の排気管などの流通管に装着することにより、測定対象ガスが流れる流通管内に配置させ、測定対象ガス(排気ガス)の温度検出に用いられるものである。
【0039】
なお、ここでは、温度センサ1の長手方向が軸線方向であり、
図1の上下方向である。また、温度センサ1の先端側は
図1の下側であり、後端側は
図1の上側である。
この温度センサ1には、感温素子3と、シース部7と、金属チューブ9と、取付け部11と、ナット部13と、が主に設けられている。
【0040】
感温素子3は、測定対象ガスが流れる流通管内に配置される測温素子であり、金属チューブ9の内部に配置されるものである。
この感温素子3には、後に詳述するように、温度によって内部の金属抵抗体の電気的特性(電気抵抗値)が変化する感温部4と、この感温部4に接続された一対の出力線(素子電極線)5とが設けられている。
【0041】
シース部7は、一対の金属芯線(シース芯線)15を外筒17の内側にて絶縁保持するものである。このシース部7には、金属製の外筒17と、導電性金属からなる一対の金属芯線15と、外筒17と2本の金属芯線15との間を電気的に絶縁して金属芯線15を保持する絶縁粉末(図示せず)と、が設けられている。
【0042】
金属チューブ9は、軸線方向に延びる筒状の部材の先端側を閉塞して形成した部材であり、耐腐食性金属(例えば、耐熱性金属でもあるSUS310Sなどのステンレス合金)から形成されたものである。
【0043】
この金属チューブ9は、鋼板の深絞り加工によりチューブ先端(底部)19が閉塞した軸線方向に延びる筒状に形成され、筒状のチューブ後端が開放した形状に形成されている。また、金属チューブ9は、チューブ後端側が取付け部11の第2段部21の内面に当接するように、軸線方向寸法が設定されている。
【0044】
更に、金属チューブ9の内部には、感温素子3およびセメント(保持部材)23が配置されている。この金属チューブ9には、先端部分に小径部25が形成され、その後端側に小径部25よりも径が大きな大径部27が形成されている。そして、この小径部25および大径部27の間は、段差部29により接続されている。
【0045】
セメント23は、感温素子3の周囲に充填されるものであり、感温素子3を保持してその揺動を防止するものである。このセメント23としては、熱伝導率が高く、高耐熱、高絶縁性の材料を用いることが好ましい。
【0046】
例えば、Al
2O
3やMgOなどの酸化物、AlNやTiNやSi
3N
4やBN等の窒化物、および、SiCやTiCやZrC等の炭化物が主体のセメントを用いることが好ましい。または、Al
2O
3やMgOなどの酸化物、AlNやTiNやSi
3N
4やBN等の窒化物、および、SiCやTiCやZrC等の炭化物が主体で、Al
2O
3やSiO
2やMgO等の無機バインダーを混合したセメントを用いることが好ましい。
【0047】
取付け部11は、金属チューブ9を支持する部材であり、少なくとも金属チューブ9の先端が外部に露出する状態で金属チューブ9の後端側の外周面を取り囲んで、金属チューブ9を支持するものである。この取付け部11には、径方向外側に突出する突出部31と、突出部31の後端側に位置すると共に軸線方向に延びる後端側鞘部33と、が設けられている。
【0048】
突出部31は、先端側に取り付け座35が設けられた環状の部材である。取り付け座35は、先端側に向かって径が小さくなるテ―パ形状の部材であり、排気管(図示せず)のセンサ取り付け位置に形成された後端側に向かって径が大きくなるテ―パ形状と対応したものである。
【0049】
なお、前記取付け部11は、排気管のセンサ取り付け位置に配置されると、取り付け座35がセンサ取り付け位置のテーパ部に密着し、排気管外部への排気ガスの漏出を防止するものである。
【0050】
後端側鞘部33は、環状に形成された部材であり、この後端側鞘部33には、先端側に位置する第1段部37と、第1段部37よりも外径が小さな前記第2段部21と、が形成されている。
【0051】
ナット部13は、六角ナット部39およびネジ部41を有するものである。
金属芯線15は、先端部が溶接点(接合部:図示せず)により、感温素子3の出力線5と電気的に接続されるものであり、後端部が抵抗溶接により加締め端子43と接続されるものである。つまり金属芯線15は、自身の後端が加締め端子43を介して外部回路、例えば車両の電子制御装置(ECU)等の接続用のリード線45と接続されるものである。
【0052】
一対の金属芯線15は、絶縁チューブ47によって互いに絶縁されており、一対の加締め端子43も絶縁チューブ47により互いに絶縁されている。リード線45は、導線を絶縁性の被覆材により被覆したものであり、このリード線45は、耐熱ゴム製の補助リング49の内部を貫通して配置されている。
【0053】
b)次に、本実施例1の要部である感温素子3の構成について説明する。
図2及び
図3に示すように、本実施例1の感温素子3は、セラミックス基板(セラミックス基体)51と、セラミックス基板51の一方(
図2(a)の上側)の主面に形成された金属抵抗体層53と、同じ主面に形成された揮発抑制層55と、同じ主面の後端側(
図2(a)の左側)に形成された一対の低熱膨張層57a、57b(57と総称する)と、金属抵抗体層53の後端側の一部及び低熱膨張層57を覆うように形成された一対のパッド部59a、59b(59と総称する)と、各パッド部59の表面に接合された前記一対の出力線5a、5b(5と総称する)と、金属抵抗体層53の先端側の上側(
図2(a)の上側)を覆うセラミックス被覆層63と、出力線5の先端側及び一対のパッド部59等を覆う被覆部材65と、を備えている。
【0054】
なお、感温部4は、感温素子3のうち、出力線5以外の板状部分である。
以下、各構成について説明する。
セラミックス基板51は、例えば純度99.9%のアルミナからなる(平面視で)長方形の板材である。
【0055】
金属抵抗体層53は、金属抵抗体である例えばPtからなる(例えば厚さが0.5〜3.0μmの)導電性を有する薄膜であり、先端側の細線部71と後端側の一対の端子部73a、73b(73と総称する)からなる。
【0056】
このうち、細線部71は、線幅の狭い(例えば幅20μmの)細線であり、セラミックス被覆層63で覆われた領域内にて複数回蛇行するように形成されている。
一方、各端子部73は、細線部71の後端側の一対の端部にそれぞれ接続されて後端側に伸びるように形成された(細線部71より幅の広い)端子である。
【0057】
詳しくは、各端子部73は、(細線部71と接続された)先端側の長方形の端子先端部73a1、73b1と、後端側の長方形の端子後端部73a2、73b2とから構成され、全体として(平面視で)凸形状となっている。なお、端子後端部73a2、73b2は、端子先端部73a1、73b1より幅(
図2(b)のY方向の寸法)が広く、面積が大きな部材である。
【0058】
揮発抑制層55は、金属抵抗体層53と同様な材料からなる同様な厚さの層であり、金属抵抗体層53と同じ平面にて、金属抵抗体層53の細線部71の先端側及び幅方向(Y方向)の両側を囲むように(平面視で)コ字状に形成されている。これにより、揮発抑制層55は、その形成材料である白金の揮発に伴い白金蒸気圧を発生し、金属抵抗体層53の揮発を抑制する。
【0059】
低熱膨張層57は、例えば軟化点900℃以上の電気絶縁性を有する高耐熱ガラスからなり、その厚みは、金属抵抗体層53より厚い(例えば厚さ1〜30μmの)厚膜である。
【0060】
この低熱膨張層57の組成は、例えばSiO
2:35質量%、Al
2O
3:20質量%、BaO:45質量%である。この低熱膨張層57のガラスとしては、出力線5及びセラミックス基板51より熱膨張係数が小さい各種のガラス、例えば上述したケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、リンケイ酸塩ガラス等、各種のガラスを採用できる。
【0061】
つまり、低熱膨張層57(従って低熱膨張層57を形成するガラス)の熱膨張係数は、温度センサ1の使用温度領域(例えば20−300℃)において、例えば4.5×10
−6/℃〜9.5×10
−6/℃であり、出力線5やセラミックス基板51の熱膨張係数より小さいガラスが用いられる。
【0062】
更に、ここでは、出力線5と低熱膨張層57との熱膨張係数差が、0.2×10
−6/℃〜5.3×10
−6/℃の範囲(好ましくは0.5×10
−6/℃〜4.1×10
−6/℃の範囲)のガラスを用いる。
【0063】
また、この低熱膨張層57は、(平面視で)長方形であり、その先端側がそれぞれ各端子後端部73a2、73b2に接するとともに(接していなくとも良い)、各端子後端部73a2、73b2と同じ幅で、後端側に伸びるように形成されている。
【0064】
パッド部59は、Ptを主成分(90体積%)としアルミナを10体積%含む材料からなり、その厚みは、金属抵抗体層53より厚い(例えば厚さ1〜30μmの)導電性を有する厚膜である。
【0065】
このパッド部59は、(平面視で)長方形であり、端子後端部73a2、73b2と低熱膨張層57との全面を覆うように形成されている。
出力線5は、Ptからなる熱膨張係数が9.5×10
−6/℃(20−300℃)の線材(Pt線)であり、その先端は、パッド部59に接合されている。なお、出力線5としては、Pt合金を用いてもよい。
【0066】
この出力線5は、パラレル溶接(抵抗溶接)によってパッド部59に接合されるので、出力線5とパッド部59との接合部分75(
図2(a)参照)はスポット状に形成される。
【0067】
セラミックス被覆層63は、例えば純度99.9%のアルミナからなる基板であり、このセラミックス被覆層63によって、金属抵抗体層53の細線部71と端子先端部73a1、73b1の先端側と揮発抑制層55とが覆われている。
【0068】
なお、セラミックス被覆層63は、例えば純度99.9%のアルミナからなる接合層64(
図2(a)参照)によって、セラミックス基板51等に接合されている。
被覆部材65は、例えば前記低熱膨張層57と同じガラス材料(異なっていてもよい)からなるガラス被覆層であり、その熱膨張係数は、出力線5の熱膨張係数より小さい。この被覆部材65によって、出力線5の先端側、パッド部59、セラミックス被覆層63の後端側が覆われて気密される。
【0069】
特に、本実施例1では、出力線5より熱膨張係数の小さいガラスからなる被覆部材65が、出力線5のうち少なくともパッド部59上に位置する部位を被覆するように配置され、且つ、出力線5より熱膨張係数の小さい低熱膨張層57が、パッド部59とセラミックス基板51との間に配置されるとともに、パッド部59を隔てて被覆部材65に対向する領域の少なくとも一部に配置されている。しかも、出力線5と低熱膨張層57との熱膨張係数差は、0.2×10
−6/℃〜5.3×10
−6/℃(好ましくは0.5×10
−6/℃〜4.1×10
−6/℃)以内である。本実施例1では、低熱膨張層57の熱膨張係数は、セラミックス基板51の熱膨張係数より小さい。なお、低熱膨張層57の熱膨張係数は、これに限られず、セラミックス基板51の熱膨張係数より大きいものであってもよい。
【0070】
更に、本実施例1では、前記低熱膨張層57は、
図2(b)にてメッシュ状(網目状)に示すように、出力線5の軸方向(X方向)について、出力線5の先端から低熱膨張層57の後端の範囲において、出力線5の軸方向に対する垂直方向(Y方向)の範囲に配置されている。
【0071】
なお、この低熱膨張層57は、メッシュ状の範囲の全域でなくともよく、一部でもよいが、(平面視で)出力線5と重なるように(更には接合部分75と重なるように)形成されると好ましい。
【0072】
c)次に、感温素子3の製造方法について説明する。
図4及び
図5に示すように、まず、セラミックス基板51の母材(図示せず)を、超音波洗浄によって洗浄する。なお、この母材とは、複数の感温素子3を1枚の大判の基板から作製するための板材であり、
図5では、1枚の感温素子3の部分を示している。
【0073】
次に、金属抵抗体層53及び揮発抑制層55を形成するために、母材(従ってセラミックス基板51)の表面のうち、金属抵抗体層53及び揮発抑制層55の形成する表面部分に、周知のPVD法(例えば、スパッタリング法)によってPt膜(図示せず)を形成する。
【0074】
次に、周知のレジスト膜形成、露光処理、現像、エッチング、レジスト膜剥離等のフォトリソグラフィ工程によって、
図5(a)に示すように、金属抵抗体層53及び揮発抑制層55を形成する。
【0075】
次に、アニール処理(エイジング処理)を行う。なお、アニール処理としては、ここでは、大気又はN
2雰囲気下で、1000〜1400℃に加熱し、その後、自然冷却を行う。
【0076】
次に、低熱膨張層57の組成のガラス材料(粉末)90質量部とブチラール樹脂10質量部とを加えてガラスペースト57Pを作製し、
図5(b)に示すように、そのガラスペースト57Pを、低熱膨張層57を形成する箇所に印刷する。
【0077】
次に、Pt材料(粉末)90質量部とセルロース樹脂10質量部とを加えてPtペースト59Pを作製し、
図5(c)に示すように、そのPtペースト59Pを、パッド部59を形成する箇所に印刷する。即ち、金属抵抗体層53の端子部73の端子後端部73a2、73b2とガラスペースト57Pとの全面を覆うように印刷する。
【0078】
次に、アルミナ粉末90質量部とブチラール樹脂10質量部とを加えてアルミナペースト(図示せず)を作製し、そのアルミナペーストを、母材(従ってセラミックス基板51)上のセラミックス被覆層63で覆う箇所(接合層64となる箇所)に印刷する。
【0079】
次に、同じく
図5(c)に(透視して)示すように、アルミナペーストを印刷した箇所に重ねるように、(焼成済みのセラミックス基板である)セラミックス被覆層63を配置する。
【0080】
次に、上述したように、表面に各層などが配置された母材(従ってセラミックス基板51)を、焼成温度1000〜1400℃で2時間焼成する。
次に、ダイシングによって、母材を後述する溶接向けのワークサイズにカットする。
【0081】
次に、
図5(d)に示すように、パッド部59上に出力線5を配置し、パラレル溶接(抵抗溶接)によって、出力線5をパッド部59に接合する。
次に、被覆部材65の組成のガラス材料(粉末)90質量部とブチラール樹脂10質量部とを加えてガラスペースト(図示せず)を作製し、そのガラスペーストを、被覆部材65を形成する箇所に塗布する。即ち、ガラスペーストを、出力線5の先端側、パッド部59、セラミックス被覆層63の後端側を覆うように塗布する。
【0082】
次に、例えば焼成温度1000〜1400℃で2時間、ガラスを焼成する。
次に、ダイシングによって、ワークサイズの基板をカットして、各感温素子3を分離する。
【0083】
このように、上述した工程によって、感温素子3を製造することができる。
なお、温度センサ1は、上述したように製造された感温素子3を、従来と同様な手順で組み付けることによって製造することができる。
【0084】
d)次に、本実施例1の効果を説明する。
本実施例1では、出力線5より熱膨張係数の小さいガラスからなる被覆部材65が、出力線5のうち少なくともパッド部59上に位置する部位を被覆するように配置され、且つ、出力線5より熱膨張係数の小さい低熱膨張層57が、パッド部59とセラミックス基板51との間に配置されるとともに、パッド部59を隔てて被覆部材65に対向する領域の少なくとも一部に配置されている。
【0085】
しかも、出力線5と低熱膨張層57との熱膨張係数差は、0.2×10
−6/℃〜5.3×10
−6/℃(好ましくは0.5×10
−6/℃〜4.1×10
−6/℃)以内である。
【0086】
従って、感温素子3が、例えば850℃以上の高温の状態と常温の状態との間の温度変化に晒された場合でも、被覆部材65と低熱膨張層57とにより(パッド部59を介して)出力線5に対して圧縮応力をかけることができる。これにより、出力線5とパッド部59との間の固着力を高めることができる。このように、出力線5とパッド部59との間における剥離を低減することができるので、感温素子3の耐久劣化を抑制することができる。
【0087】
また、本実施例1では、低熱膨張層57は、(平面視で)出力線5とセラミックス基板51との間(しかも接合部分75の位置)に形成されているので、前記剥離(従って電気的接続が絶たれること)を効果的に防止できる。
【0088】
更に、本実施例1では、低熱膨張層57のガラスの軟化点は900℃以上であるので、感温素子3は900℃に到る高温の範囲まで好適に使用することができる。
その上、本実施例1では、低熱膨張層57のガラスのアルカリ金属の含有率が、(酸化物換算で)0.2質量%以下であり、実質的に含まれていないので、絶縁性が高く、マイグレーションの発生を抑制する効果が高いという利点がある。
【0089】
また、本実施例1では、出力線5とパッド部59とは、ガラスからなる被覆部材65で覆われるとともに、被覆部材65と低熱膨張層57とのガラス成分が同じである。よって、被覆部材65と低熱膨張層57との熱膨張の性質(熱膨張係数)が同じであるので、剥離抑制の効果が高いという効果がある。
【実施例3】
【0095】
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例3の温度センサは、感温素子の金属抵抗体層の形状(配置)が、前記実施例1とは異なる。
【0096】
具体的には、
図6に示すように、本実施例3の感温素子103は、前記実施例1と同様に、セラミックス基板151と、セラミックス基板151の主面に形成された金属抵抗体層153と、同じ主面に形成された揮発抑制層155と、同じ主面の後端側に形成された一対の低熱膨張層157と、金属抵抗体層153の端子部173の一部及び低熱膨張層157を覆うように形成された一対のパッド部159と、各パッド部159の表面に接合された一対の出力線105と、金属抵抗体層153の先端側の上側を覆うセラミックス被覆層163と、出力線105の先端側及び一対のパッド部159等を覆う被覆部材165と、を備えている。
【0097】
本実施例3では、金属抵抗体層153の一対の端子部173の後端側は、(平面視で)パッド部159より幅(
図6(c)の上下方向の寸法)が狭く、出力線105の直下の範囲まで形成されている。
【0098】
また、本実施例3では、パッド部159は、前記実施例2と同様に、Ptとガラスとから構成されている。さらに、パッド部159には、低熱膨張層157を介さずに直接にセラミックス基板151と接する部分が存在する。このように、パッド部159が、ガラス成分を含むとともに、セラミックス基板151と直接に接する部分があるため、パッド部159とセラミックス基板151との密着性が高いという効果がある。
【0099】
なお、その他の構成の材料は、前記実施例1と同様であり、その製造手順は、金属抵抗体層153の端子部173の表面に低熱膨張層157を形成すること以外は、基本的に前記実施例1と同様である。
【0100】
本実施例3においても、前記実施例1とほぼ同様な効果を奏する。
[実験例1]
次に、本発明の効果を確認した実験例1について説明する。
【0101】
本実験例1では、実験に使用する試料として、前記実施例1と同様な感温素子を作製するとともに、その低熱膨張層の成分を、下記表1のように変更して、出力線とパッド部との間の固着力を調べた。なお、各試料は、それぞれ10個作製した。
【0102】
固着力を調べる試験は、金属材料引張試験(JIS Z2241:2011)に準拠した方法により行なった。この試験では、試料である感温素子のセラミックス基板側を固定し、出力線を引っ張り、出力線の断線や抜け(パッド部からの剥がれ)の状態により、固着力を調べた。その結果を同じく表1に示す。なお、引っ張りの際には、出力線の断線又は抜けが生じるまで、150MPa(必要荷重)以上の荷重を加えた。
【0103】
また、下記表1において、熱膨張係数差は、(20−300℃における)Ptからなる出力線の熱膨張係数と下記表1のガラス材料からなる低熱膨張層の熱膨張係数との差(熱膨張係数差)を示している。なお、ガラス材料の熱膨張係数は、ガラス材料の種類によって決まっている。
【0104】
なお、表1の固着力の判定基準として、◎は「全数、必要荷重以上となっても抜けがなく断線したこと」を示し、○は「全数、必要荷重以上となった場合に抜けが生じたこと」を示し、×は「全数、抜けが発生し、必要荷重までに抜けが生じたものもあること」を示している。
【0105】
【表1】
この表1から、熱膨張係数差が、0.2×10
−6/℃〜5.3×10
−6/℃の範囲である場合には、固着力が強く、更に、熱膨張係数差が、0.5×10
−6/℃〜4.1×10
−6/℃の範囲である場合には、一層固着力が強く好適であることが分かる。
[実験例2]
次に、本発明の効果を確認した実験例2について説明する。
【0106】
本実験例2では、低熱膨張層を構成するガラスのアルカリ金属量(含有率)と電気絶縁性との関係について調べた。
具体的には、低熱膨張層を構成するガラスの成分を、下記表2に示す成分として、前記実施例1と同様な感温素子を備えた温度センサの試料を作製した。
【0107】
そして、各試料を用いて、温度が既知の雰囲気(例えば600℃)の温度を測定し、その測定の精度誤差を調べた。その結果を下記表2に示す。
なお、表2において、R
2Oは、アルカリ金属の酸化物成分として、Na
2O及びK
2Oを示す。また、◎は精度誤差が0.5℃以内を示し、○は精度誤差が0.5℃を上回り1℃以内を示し、×は精度誤差が1℃より大きいことを示す。
【0108】
【表2】
電気絶縁性が低下すると漏れ電流の影響で精度誤差が大きくなることから、この表2から、低熱膨張層を構成するガラスのアルカリ金属の含有率(酸化物換算)が、0.2質量%以下の場合には、電気絶縁性が高いことが分かる。
【0109】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば感温素子を収容する温度センサの構成としては、公知の各種の構成を採用できる。
【0110】
(2)また、感温素子を構成する、例えばセラミックス基板、金属抵抗体層、出力線、被覆部材などの材料としても、本発明の範囲において、公知の各種の材料を使用できる。
(3)更に、低熱膨張層の形成位置は、パッド部の下方(セラミックス基板側)だけでなく、更にパッド部より(セラミックス基板の平面方向の)外側に広がっていてもよい。