【実施例1】
【0008】
図1に示す実施例1の半導体モジュール10は、半導体チップ20と半導体チップ30を備えている。
【0009】
半導体チップ20は、IGBTである。半導体チップ20の下面の電極は、はんだにより放熱ブロック22に接続されている。放熱ブロック22の下面は、放熱板50に接続されている。半導体チップ20の上面の主電極は、はんだにより金属ブロック24に接続されている。金属ブロック24の上面は、はんだにより放熱ブロック26に接続されている。放熱ブロック26の上面は、放熱板52に接続されている。また、半導体チップ20の上面の信号電極は、ワイヤーによって信号端子28に接続されている。
【0010】
半導体チップ30は、ダイオードである。半導体チップ30の下面の電極は、はんだによって放熱ブロック32に接続されている。放熱ブロック32の下面は、放熱板50に接続されている。半導体チップ30の上面の電極は、はんだにより金属ブロック34に接続されている。金属ブロック34の上面は、はんだにより放熱ブロック36に接続されている。放熱ブロック36の上面は、放熱板52に接続されている。
【0011】
放熱ブロック22と放熱ブロック32の表面は、金属層に覆われている。したがって、放熱ブロック22と放熱ブロック32は互いに導通している。また、放熱ブロック32には、出力電極端子40が接続されている。放熱ブロック22と放熱ブロック32の表面の金属層は、出力電極端子40と導通している。すなわち、半導体チップ20の下面の電極と半導体チップ30の下面の電極は、放熱ブロック22、32を介して出力電極端子40に接続されている。
【0012】
放熱ブロック26と放熱ブロック36の表面は、金属層に覆われている。したがって、放熱ブロック26と放熱ブロック36は互いに導通している。また、放熱ブロック36には、入力電極端子42が接続されている。放熱ブロック26と放熱ブロック36の表面の金属層は、出力電極端子40と導通している。すなわち、半導体チップ20の上面の主電極と半導体チップ30の上面の電極は、金属ブロック24、34及び放熱ブロック22、32を介して入力電極端子42に接続されている。
【0013】
半導体チップ20、30は、絶縁樹脂54に覆われている。絶縁樹脂54は、半導体モジュール10の表面の略全域に形成されている。但し、信号端子28の一部、出力電極端子40の一部、入力電極端子42の一部、放熱板50の下面及び放熱板52の上面は、絶縁樹脂54から露出している。
【0014】
実施例1の半導体モジュール10は、放熱ブロック22、26、32、36に特徴を有している。また、放熱ブロック22、26、32、36は略同じ構成を有している。したがって、以下では、放熱ブロック22について詳細に説明する。
【0015】
図2は、半導体チップ20、放熱ブロック22及び放熱板50を拡大した斜視図を示している。なお、以下では、放熱板50の上面に平行な一方向をx方向といい、放熱板50の上面に平行であり、x方向に直交する方向をy方向という。
図2に示すように、放熱ブロック22は、4つのブロック22a〜22dにより構成されている。各ブロック22a〜22dは、上面視したときに二等辺直角三角形の形状に形成されている。各ブロック22a〜22dは、直角の角部が一致するように、放熱板50上に配列されている。各ブロック22a〜22dは、ブロック22a〜22dのうちの隣接する他の2つのブロックに接している。
【0016】
図3は、
図2の点線IIIにおける放熱ブロック22の横断面図を示している。
図3に示すように、各ブロック22a〜22dは、二次元熱拡散部材60と、二次元熱拡散部材60の表面を覆っている金属層62を有している。
図4に示すように、二次元熱拡散部材60は、配向性グラファイト層60aが多数積層された積層体である。各配向性グラファイト層60aは、二次元状(すなわち、平面状)に伸びている。より詳細には、各配向性グラファイト層60aは、二次元熱拡散部材60の厚み方向(
図4のz方向)と厚み方向に直交する一方向(
図4のa方向)により確定される平面に沿って二次元状に伸びている。a方向は、二次元熱拡散部材60の上面を平面視したときに、直角三角形の直角の角部からその角部に対向する辺に向かう方向である。また、各配向性グラファイト層60aは、a方向及びz方向に直交するb方向に積層されている。配向性グラファイト層60aは、a方向及びz方向において極めて高い熱伝導率を有している。他方、各配向性グラファイト層60aの界面では熱伝導が阻害されるため、配向性グラファイト層60aの間の熱伝導率はあまり高くない。したがって、二次元熱拡散部材60は、a方向及びz方向の熱伝導率が高い一方で、b方向の熱伝導率があまり高くない(すなわち、a方向及びz方向の熱伝導率よりも低い)。
図3に示すように、ブロック22a及びブロック22cの二次元熱拡散部材60では、上面視において、配向性グラファイト層60aがx方向に伸びている。すなわち、ブロック22a及びブロック22cの二次元熱拡散部材60においては、a方向がx方向と一致する。また、
図3に示すように、ブロック22b及びブロック22dの二次元熱拡散部材60では、上面視において、配向性グラファイト層60aがy方向に伸びている。すなわち、ブロック22b及びブロック22dの二次元熱拡散部材60においては、a方向がy方向と一致する。すなわち、各ブロック22a〜22dは、a方向が放熱ブロック22の中心23から放射状に伸びるように配置されている。
【0017】
図3に示すように、各ブロック22a〜22dの二次元熱拡散部材60は、金属層62によって覆われている。したがって、金属層62は、各ブロック22a〜22dの二次元熱拡散部材60の間に介装されている。例えば、ブロック22aの二次元熱拡散部材60とブロック22bの二次元熱拡散部材60の間には、ブロック22aの金属層62aとブロック22bの金属層62bが介装されている。金属層62は、銅により構成されている。金属層62は、塑性を有するので、二次元熱拡散部材60の表面に密着している。また、各ブロック22a〜22dの金属層62同士も密着している。金属層62によって、隣接する二次元熱拡散部材60の間における熱伝導率の向上が図られている。
【0018】
図2に示すように、半導体チップ20は、放熱ブロック22の中心23(
図3参照)に重なる位置に接続されている。このため、半導体チップ20と放熱ブロック22の積層方向に沿って見たときに、各二次元熱拡散部材60のa方向は、半導体チップ20からその周囲に放射状に伸びている。
【0019】
半導体チップ20に通電すると、半導体チップ20が発熱する。すると、半導体チップ20で発生した熱が、放熱ブロック22を通って放熱板50に伝わる。これによって、半導体チップ20の温度上昇が抑制される。上記の通り、各放熱ブロック22の二次元熱拡散部材60は、その厚み方向において高い熱伝導率を有する。このため、半導体チップ20で発生した熱は、効率的に放熱板50に伝達される。また、上記の通り、各ブロック22の二次元熱拡散部材60は、高い熱伝導率を有するa方向が半導体チップ20から放射状に伸びるように配置されている。したがって、半導体チップ20で発生した熱は、各二次元熱拡散部材60によって放射状に分散されながら、放熱板50に伝えられる。このように半導体チップ20で発生した熱が分散しやすいので、半導体チップ20の温度上昇がさらに抑制される。また、上記の通り、各二次元熱拡散部材60は、金属層62を介して互いに接続されている。このため、各二次元熱拡散部材60の間でも熱が伝わり易い。したがって、半導体チップ20で発生した熱が放熱ブロック22でより拡散し易くなっている。これによって、半導体チップ20の温度上昇がさらに抑制される。したがって、この半導体モジュール10では、半導体チップ20の温度が上昇し難い。
【0020】
また、二次元熱拡散部材60は、温度上昇により膨張する。しかしながら、実施例1の技術では、二次元熱拡散部材60の表面全体が銅である金属層62によって覆われている。銅は比較的剛性が高いので、金属層62によって二次元熱拡散部材60が拘束され、二次元熱拡散部材60の熱膨張が抑制される。これによって、放熱ブロック22と他の部材との接合部の劣化が抑制される。
【0021】
実施例1の構成と請求項の構成の関係は、以下の通りである。実施例1のブロック22aの二次元熱拡散部材60は、請求項の第1二次元熱拡散部材の一例である。実施例1のブロック22aの二次元熱拡散部材60では、y方向(第1方向)における熱伝導率よりも、y方向に直交するx方向と厚み方向(すなわち、第1方向に直交する第1平面内)における熱伝導率が高い。実施例1のブロック22bの二次元熱拡散部材60は、請求項の第2二次元熱拡散部材の一例である。実施例1のブロック22bの二次元熱拡散部材60では、x方向(第2方向)における熱伝導率よりも、x方向に直交するy方向と厚み方向(すなわち、第2方向に直交する第2平面内)における熱伝導率が高い。半導体チップ20と放熱ブロック22の積層方向に直交する断面(例えば、
図3に示す断面)において、第1平面が伸びる方向(すなわち、x方向)が、第2平面が伸びる方向(すなわち、y方向)と異なる。
【0022】
なお、上記の実施例1では、4つのブロック22a〜22dにより放熱ブロック22が構成されていたが、ブロックの数としては2以上の任意の数を採用することができる。例えば、
図5に示すように3つのブロック22e〜22gにより放熱ブロック22が構成されてもよい。
図5では、各二次元熱拡散部材60の各a方向の間に、120°の角度が設けられている。このような放熱ブロック22の中心25に六方晶の結晶構造を有する半導体チップ20(例えば、厚み方向がc軸であるSiCからなる半導体チップ)を設置すると、半導体チップ20の結晶構造に対して等方的に熱を拡散することができる。
【実施例2】
【0023】
図6は、実施例2の半導体モジュールの半導体チップ20、放熱ブロック22及び放熱板50の拡大斜視図を示している。実施例2の半導体モジュールは、放熱ブロック22の構造が実施例1の半導体モジュール10と異なる。実施例2の半導体モジュールのその他の構成は、実施例1の半導体モジュール10と等しい。
【0024】
図6、7に示すように、実施例2の放熱ブロック22は、3つの金属層262a〜262bと2つの二次元熱拡散部材260a、260bを交互に積層した構造を有している。金属層262cが放熱板50上に積層されている。二次元熱拡散部材260bが金属層262c上に積層されている。金属層262bが二次元熱拡散部材260b上に積層されている。二次元熱拡散部材260aが金属層262b上に積層されている。金属層262aが二次元熱拡散部材260a上に積層されている。半導体チップ20が金属層262a上に積層されている。
【0025】
図7に示すように、各二次元熱拡散部材260a、260bは、実施例1の二次元熱拡散部材60と同様に、配向性グラファイト層60aが多数積層された積層体である。二次元熱拡散部材260aにおいては、配向性グラファイト層60aがx方向に積層されている。したがって、二次元熱拡散部材260aの各配向性グラファイト層60aは、上面視したときにy方向に伸びており、断面視したときには厚み方向に伸びている。したがって、二次元熱拡散部材260aは、y方向及び厚み方向において高い熱伝導率を有している。二次元熱拡散部材260bにおいては、配向性グラファイト層60aがy方向に積層されている。したがって、二次元熱拡散部材260bの各配向性グラファイト層60aは、上面視したときにx方向に伸びており、断面視したときには厚み方向に伸びている。したがって、二次元熱拡散部材260bは、x方向及び厚み方向において高い熱伝導率を有している。
【0026】
金属層262a〜262cは、銅により構成されている。金属層262aは、二次元熱拡散部材260aと半導体チップ20の間に介装されている。金属層262aは、塑性を有するので、二次元熱拡散部材260aの上面に密着している。金属層262aによって、半導体チップ20と二次元熱拡散部材260aの間における熱伝導率の向上が図られている。金属層262bは、二次元熱拡散部材260aと二次元熱拡散部材260bの間に介装されている。金属層262bは、塑性を有するので、二次元熱拡散部材260aの下面と二次元熱拡散部材260bの上面に密着している。金属層262bによって、二次元熱拡散部材260aと二次元熱拡散部材260bの間における熱伝導率の向上が図られている。金属層262cは、二次元熱拡散部材260bと放熱板50の間に介装されている。金属層262cは、塑性を有するので、二次元熱拡散部材260bの下面に密着している。金属層262cによって、二次元熱拡散部材260bと放熱板50の間における熱伝導率の向上が図られている。
【0027】
実施例2の半導体モジュールでも、半導体チップ20で発生した熱が、放熱ブロック22を通って放熱板50に伝わる。これによって、半導体チップ20の温度上昇が抑制される。上記の通り、二次元熱拡散部材260a、260bは、その厚み方向において高い熱伝導率を有する。このため、半導体チップ20で発生した熱は、効率的に放熱板50に伝達される。また、xy平面においては、上記の通り、二次元熱拡散部材260aはy方向に高い熱伝導率を有し、二次元熱拡散部材260bはx方向に高い熱伝導率を有する。したがって、半導体チップ20で発生した熱は、二次元熱拡散部材260a、260bによってx方向及びy方向に分散されながら、放熱板50に伝えられる。このように半導体チップ20で発生した熱が分散しやすいので、半導体チップ20の温度上昇がさらに抑制される。また、上記の通り、二次元熱拡散部材260aと二次元熱拡散部材260bは、金属層262bを介して互いに接続されている。このため、二次元熱拡散部材260aと二次元熱拡散部材260bの間でも熱が伝わり易い。したがって、半導体チップ20で発生した熱が、放熱ブロック22を介して放熱板50により伝わり易くなっている。これによって、半導体チップ20の温度上昇がさらに抑制される。したがって、実施例2の半導体モジュールでは、半導体チップ20の温度が上昇し難い。
【0028】
実施例2の構成と請求項の構成の関係は、以下の通りである。実施例2の二次元熱拡散部材260bは、請求項の第1二次元熱拡散部材の一例である。実施例2の二次元熱拡散部材260bでは、y方向(第1方向)における熱伝導率よりも、y方向に直交するx方向と厚み方向(すなわち、第1方向に直交する第1平面内)における熱伝導率が高い。実施例2の二次元熱拡散部材260aは、請求項の第2二次元熱拡散部材の一例である。実施例2の二次元熱拡散部材260aでは、x方向(第2方向)における熱伝導率よりも、x方向に直交するy方向と厚み方向(すなわち、第2方向に直交する第2平面内)における熱伝導率が高い。半導体チップ20と放熱ブロック22の積層方向に直交する断面(例えば、各二次元熱拡散部材260a、260bのxy平面における断面)において、第1平面が伸びる方向(すなわち、x方向)が、第2平面が伸びる方向(すなわち、y方向)と異なる。
【0029】
なお、実施例2の半導体モジュールでは、二次元熱拡散部材260a、260bの端面が露出しているが、二次元熱拡散部材260a、260bの表面全体が金属層262a〜262cで覆われていてもよい。
【0030】
また、実施例2の半導体モジュールでは、2つの二次元熱拡散部材260a、260bが積層されていたが、3つ以上の二次元熱拡散部材が積層されていてもよい。
【0031】
また、上述した実施例1、2では、二次元熱拡散部材の間に介装されている熱伝導部材が金属層であったが、熱伝導部材がセラミックス等の非金属の高熱伝導材料により構成されていてもよい。
【0032】
以下に、本明細書が開示する半導体モジュールの構成を列挙する。なお、各構成は、いずれも独立して有用なものである。
【0033】
本明細書に開示の技術の一例では、半導体モジュールが、半導体チップと、前記半導体チップに接続されている放熱部材を有する。前記放熱部材が、第1方向における熱伝導率よりも、前記第1方向に直交する第1平面内における熱伝導率が高い第1二次元熱拡散部材と、第2方向における熱伝導率よりも、前記第2方向に直交する第2平面内における熱伝導率が高い第2二次元熱拡散部材と、前記第1二次元熱拡散部材と前記第2二次元熱拡散部材の間に介装されている第1熱伝導部材を有している。前記半導体チップと前記放熱部材の積層方向に直交する断面において、前記第1平面が伸びる方向が、前記第2平面が伸びる方向と異なる。
【0034】
本明細書に開示の技術の一例では、前記放熱部材が、第3方向における熱伝導率よりも、前記第3方向に直交する第3平面内における熱伝導率が高い第3二次元熱拡散部材と、前記第2二次元熱拡散部材と前記第3二次元熱拡散部材の間に介装されている第2熱伝導部材をさらに有している。前記第1二次元熱拡散部材と前記第2二次元熱拡散部材が、前記積層方向に直交する前記断面内で互いに隣接するように配置されている。前記第2二次元熱拡散部材と前記第3二次元熱拡散部材が、前記積層方向に直交する前記断面内で互いに隣接するように配置されている。前記半導体チップが、前記積層方向に沿って見たときに、前記第1二次元熱拡散部材、前記第2二次元熱拡散部材及び前記第3二次元熱拡散部材と重なる位置に配置されている。前記積層方向に直交する前記断面において、前記第1平面が伸びる前記方向と、前記第2平面が伸びる前記方向と、前記第3平面が伸びる方向が、前記半導体チップから放射状に伸びている。
【0035】
本明細書に開示の技術の一例では、前記第1二次元熱拡散部材と前記第2二次元熱拡散部材が、前記積層方向に沿って積層されている。
【0036】
本明細書に開示の技術の一例では、前記熱伝導部材が銅である。
【0037】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。