特許第6404766号(P6404766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404766
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ラッシュアジャスタ
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/245 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   F01L1/245 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-84657(P2015-84657)
(22)【出願日】2015年4月17日
(65)【公開番号】特開2016-205166(P2016-205166A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柵木 清史
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 恭介
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−116508(JP,U)
【文献】 特開昭51−121616(JP,A)
【文献】 特開2005−002953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00− 1/32
F01L 1/36− 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のボディと、前記ボディ内に往復移動可能に挿入される筒状のプランジャとを備え、前記プランジャ内には低圧室が設けられ、前記ボディ内には前記プランジャの底壁との間に高圧室が設けられ、前記底壁には弁孔が設けられ、前記プランジャの頂部には前記弁孔と同軸上の位置に頂孔が設けられ、また、前記高圧室には前記弁孔を開閉可能な弁体と前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材とが設けられており、前記弁体が前記弁孔から離れたときに、前記低圧室に貯留された作動油が前記弁孔から前記高圧室に流れるようになっており、また、前記頂孔から前記プランジャ内の軸路を経て前記弁孔を貫通する棒状治具の先端部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁体を開弁方向に押動することで、前記高圧室に混入したエアーを抜くことが可能とされるラッシュアジャスタであって、
前記プランジャの周壁には、前記低圧室に作動油を供給するための給油管が貫通して設けられ、前記給油管は、前記低圧室に前記プランジャの内周半径を超える突出量をもって配置状況で上向きに突出し、かつ前記プランジャ内の軸路から外れた位置に配置されていることを特徴とするラッシュアジャスタ。
【請求項2】
前記給油管は、前記軸路に挿通される変形治具で押圧されて前記軸路から退避するように変形する形状可変性を有していることを特徴とする請求項1記載のラッシュアジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッシュアジャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のラッシュアジャスタは、車両のシリンダヘッドに組み付けられ、作動油の油圧を利用してバルブクリアランスを調整するものであって、有底筒状のシリンダ(ボディ)と、シリンダ内に往復移動可能に挿入される有底筒状のプランジャとを備えている。プランジャ内には低圧室が設けられ、シリンダ内にはプランジャの底壁部(底壁)との間に高圧室が設けられている。そして、底壁部には弁口(弁孔)が設けられており、高圧室には弁口を開閉可能な弁部(弁体)と弁部を閉弁方向に付勢する第1バネ部(付勢部材)とが設けられている。
【0003】
また、プランジャには、周壁部を貫通する形態の送油管が取り付けられている。送油管は、低圧室に斜め上方に突き出るように配置され、上端がプランジャの頂部近傍に至っている。プランジャの低圧室には、送油管を通してシリンダヘッド側の作動油が送られて貯留される。油圧変動によって底壁部の弁口から弁部が離れたときには、低圧室に貯留された作動油が弁口を通して高圧室に送られる。この場合において、低圧室の作動油が送油管の上端に対応する高さ位置まで貯留されるため、低圧室に十分な量の作動油が確保される。その結果、低圧室の作動油不足に起因して高圧室に低圧室のエアーが吸い込まれるといった事態を回避することができ、ラッシュアジャスタの傾斜配置や小型化に対応することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−2953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のラッシュアジャスタの場合、高圧室の油圧が適正値に維持されるように、組み付け時などにおいて高圧室に作動油とともに混入しているエアーを抜きとる作業が行われる。こうしたエアー抜き作業を行うに際し、通常、軸方向に細長い棒状治具が用いられる。棒状治具は、プランジャの頂部に設けられた頂孔からプランジャ内の軸路に差し込まれ、さらに先端部が弁口を貫通して高圧室に臨み、高圧室に収容された弁部に当接する。引き続いて棒状治具が押し込まれ、弁部が第1バネ部の付勢力に抗して弁口から離れることにより、高圧室のエアーを弁口から低圧室に移行させて抜くことが可能となる。しかし、特許文献1の構成によれば、棒状治具が挿通される軸路を横切る形態で送油管が設けられているため、上述の棒状治具を用いたエアー抜き作業を行おうとしても、棒状治具が送油管と干渉して作業を続けることができない。このため、棒状治具を用いる方法以外の方法でエアー抜き作業を行わねばならず、作業が煩雑になるおそれがある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、低圧室に十分な量の作動油を確保することができ、高圧室のエアー抜き作業を容易に行うことができるラッシュアジャスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筒状のボディと、前記ボディ内に往復移動可能に挿入される筒状のプランジャとを備え、前記プランジャ内には低圧室が設けられ、前記ボディ内には前記プランジャの底壁との間に高圧室が設けられ、前記底壁には弁孔が設けられ、前記プランジャの頂部には前記弁孔と同軸上の位置に頂孔が設けられ、また、前記高圧室には前記弁孔を開閉可能な弁体と前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材とが設けられており、前記弁体が前記弁孔から離れたときに、前記低圧室に貯留された作動油が前記弁孔から前記高圧室に流れるようになっており、また、前記頂孔から前記プランジャ内の軸路を経て前記弁孔を貫通する棒状治具の先端部が前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁体を開弁方向に押動することで、前記高圧室に混入したエアーを抜くことが可能とされるラッシュアジャスタであって、前記プランジャの周壁には、前記低圧室に作動油を供給するための給油管が貫通して設けられ、前記給油管は、前記低圧室に前記プランジャの内周半径を超える突出量をもって配置状況で上向きに突出し、かつ前記プランジャ内の軸路から外れた位置に配置されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
プランジャの周壁に給油管が貫通して設けられ、給油管が低圧室に配置状況で上向きに突出して配置されるため、低圧室に給油管の上端まで十分な量の作動油を貯留させることができる。その結果、低圧室のエアーが高圧室に吸い込まれる事態が回避され、ラッシュアジャスタの傾斜配置や小型化に対応することが可能となる。
また、給油管がプランジャ内の軸路から外れた位置に配置されているため、軸路に通される棒状治具を用いて高圧室のエアー抜き作業を支障なく容易に行うことができる。
また、給油管の上端が配置状況で十分に高い位置に至ることができ、低圧室に貯留される作動油が不足する事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係るラッシュアジャスタがシリンダヘッドに組み込まれた状態をあらわす断面図である。
図2図1のラッシュアジャスタに対応する部分の拡大図である。
図3】プランジャの周壁に貫通状態で取り付けられた給油管が変形治具で押圧されて軸路から退避するように変形した状態をあらわす図である。
図4】本発明の実施例2に係るラッシュアジャスタにおける図2相当図である。
図5図4のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい形態を以下に示す
【0011】
前記給油管は、前記軸路に挿通される変形治具で押圧されて前記軸路から退避するように変形する形状可変性を有している。これによれば、プランジャの成形後、周壁に給油管を取り付けることができる。その結果、給油管の取り付け前、予めプランジャに熱処理(浸炭、窒化)や表面処理(めっき、DLC)などの加工を済ませておくことができる。
【0012】
<実施例1>
本発明の実施例1を図1図3によって説明する。実施例1は、エンジンの動弁装置90に設けられ、カム80とロッカアーム70とのバルブクリアランスを自動調整する油圧式のラッシュアジャスタ10を例示するものであって、水平対向型又は傾斜したエンジンのシリンダヘッド91に組み付けられている。
【0013】
動弁装置90は、図1に示すように、シリンダヘッド91の吸気又は排気ポート92を開閉するためのものであって、エンジンに同期して回転するカム80と、バルブ本体60に一体に設けられたバルブステム61と、カム80の回転に応じて揺動することでバルブステム61を押圧するロッカアーム70と、ロッカアーム70の一端部を揺動可能に支持するラッシュアジャスタ10とを備えている。
【0014】
バルブステム61は、シリンダヘッド91の吸気又は排気ポート92に連なるステムガイド孔93に挿入され、コイルスプリング65によってバルブ本体60が吸気又は排気ポート92を閉じる方向に付勢されている。カム80が回転すると、ロッカアーム70が揺動するとともに、バルブステム61がステムガイド孔93内を往復移動して、バルブ本体60が吸気又は排気ポート92を開閉するように構成されている。
【0015】
ロッカアーム70は、一端部をラッシュアジャスタ10に支持させ、他端部をバルブステム61に当接させ、一端部と他端部との間に設けられたローラ72にカム80を回転可能に接触させて、軸線を水平方向に対して傾斜させた姿勢で配置されている。
【0016】
ラッシュアジャスタ10は、シリンダヘッド91に設けられた断面円形の有底の装着孔95に対し水平方向に向けて傾斜する姿勢で挿入される。図2に示すように、ラッシュアジャスタ10は、円筒状のボディ11と、ボディ11内に上下方向(詳細には上下方向に対して傾斜する方向)に往復移動可能に挿入される円筒状のプランジャ12とを備えている。
【0017】
図2に示すように、ボディ11は、円板状の端壁13と、端壁13の外周縁から立ち上がる筒壁14とからなる。筒壁14の外周面には、ボディ周回溝15が全周に亘って凹設されている。また、筒壁14には、ボディ周回溝15の奥面に開口する断面円形のボディ油孔16が壁厚方向(径方向)に貫通して設けられている。筒壁14の上端開口部には、プランジャ12がボディ11から抜け出るのを規制するリテーナ50が取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、プランジャ12は、円板状の底壁17と、底壁17の外周縁から立ち上がる周壁18とからなる。周壁18の上端部は、半球状に絞られた形態の球部19として構成されている。プランジャ12がボディ11内に挿入された状態では、球部19がボディ11の周壁18から上方に突出し、球部19の半球面状の外周面に、ロッカアーム70の一端部が摺動可能に支持されるようになっている。このため、球部19には高い硬度及び耐摩耗性が必要とされ、熱処理(浸炭、窒化)や表面処理(めっき、DLC)などの加工が施されている。
【0019】
球部19の上端部となる径方向中心部には、断面円形の頂孔21が貫通して設けられている。また、底壁17の径方向中心には、頂孔21と上下方向の同軸上の位置に、断面円形の弁孔22が貫通して設けられている。弁孔22と頂孔21とは互いにほぼ同一の開口径で構成されている。
【0020】
プランジャ12内は、作動油を貯留するための低圧室23として構成される。そして、プランジャ12内の径方向中心部には、頂孔21と弁孔22とを結ぶ仮想直線24(図3を参照)に沿った軸路が設けられている。軸路は、頂孔21又は弁孔22に対応する大きさの路径を有し、ここに後述するエアー抜き用の棒状治具又は変形治具40が挿通されるようになっている。
【0021】
プランジャ12の周壁18の外周面は、ボディ11の筒壁14の内周面に摺動可能とされ、図2に示すように、筒壁14の内周面と対向する位置に、プランジャ周回溝25が全周に亘って凹設されている。また、周壁18には、プランジャ周回溝25の奥面に開口する断面円形の取付孔26が壁厚方向(径方向)に貫通して設けられている。取付孔26には、給油管30が圧入により取り付けられている。
【0022】
給油管30は、銅又は銅合金製などの金属製の管材であって、図3に示すように、変形治具40などによる曲げ荷重を受けて変形される形状可変性を有し、且つ変形加工後は一定の形態を維持する形状保持性を有している。そして、給油管30は、プランジャ12内にて軸路を挟んだ両側のうちの片側に偏在して配置されている。具体的には、給油管30は、周壁18の取付孔26に径方向に沿って圧入保持される圧入部31と、圧入部31から低圧室23に臨んで上向きに屈曲された弧状の屈曲部32と、屈曲部32から軸路に沿って立ち上がって上端が頂孔21の近傍に至る本体管部33とからなる。
【0023】
圧入部31の一端開口は、周壁18のプランジャ周回溝25の奥面に臨み、給油管30に作動油を導入する導入端34として構成される。一方、本体管部33の上端開口は、給油管30を通った作動油を低圧室23に送る導出端35として構成される。また、本体管部33は、周壁18の内周面との間に若干の隙間をあけつつ周壁18に対向して配置され、少なくともプランジャ12の内径を越える突出量を有している。また、給油管30は、全長に亘って同一の内径寸法で構成されている。
【0024】
図2に示すように、シリンダヘッド91の装着孔95は給油孔96に連通しており、給油孔96から供給される作動油は、ボディ周回溝15、ボディ油孔16、プランジャ周回溝25及び給油管30を経て低圧室23に貯留されるようになっている。
【0025】
ボディ11内には、端壁13、筒壁14及びプランジャ12の底壁17によって区画される高圧室27が設けられている。高圧室27には、弁孔22を開閉可能な球状の弁体28と、弁体28を保持するケージ29と、ケージ29内に収容されて弁体28を弁孔22側に付勢する圧縮コイルばねからなる第1スプリング39(付勢部材)と、ケージ29の外周縁部と端壁13との間に介設されてプランジャ12をロッカアーム70側に付勢する圧縮コイルばねからなる第2スプリング38とが設けられている。弁体28は、低圧室23と高圧室27との圧力差に応じて弁孔22に接離可能に往復動作するように構成されている。そして、弁体28が第1スプリング39の付勢力に抗して弁孔22から離れる向きに移動することにより、低圧室23に貯留された作動油が弁孔22を通して高圧室27に流れるようになっている。
【0026】
また、カム80が回転し、ロッカアーム70がカム80側から押圧されると、プランジャ12がロッカアーム70の一端部に押圧されてボディ11に対して沈み込むように移動し、高圧室27の作動油が圧縮させられ、高圧室27の圧力が上昇する。それに伴い、高圧室27の若干の作動油が筒壁14の内周面と周壁18の外周面との間を通してプランジャ周回溝25に流れる。これにより、ラッシュアジャスタ10の全長が作動油の流出分だけ短縮させられる。また、高圧室27の圧力上昇によってボディ11とプランジャ12とが剛体化することで、ラッシュアジャスタ10がロッカアーム70を所定位置で適正に支持することが可能となる。
【0027】
さらなるカム80の回転に伴い、カム80側からロッカアーム70に作用する圧力が低減すると、高圧室27の圧力と第2スプリング38の付勢力とによってプランジャ12が上昇する。それに伴い、高圧室27の圧力が低下し、低圧室23との間に圧力差が生じて、弁体28が第1スプリング39の付勢力に抗して開く。弁体28が開くのと同時に、低圧室23の作動油が高圧室27に流れ、その流動分、ラッシュアジャスタ10の全長が伸長する。かくして、ラッシュアジャスタ10がロッカアーム70を適正位置で支持する状態が担保され、カム80とロッカアーム70とのバルブクリアランスが実質的にゼロとなるように調整される。
【0028】
ところで、エンジンの停止時には、低圧室23への作動油の供給が止まるため、ラッシュアジャスタ10が水平方向に向けて傾斜した姿勢をとっていると、低圧室23に十分な量の作動油を確保することができないおそれがある。しかるに本実施例の場合、低圧室23の作動油が少なくとも給油管30の本体管部33の導出端35に対応する高さ位置まで貯留されるため、低圧室23に十分な量の作動油を確保することができる。したがって、その後のエンジン始動時に、低圧室23のエアーが高圧室27に吸い込まれる事態が回避され、高圧室27の油圧が適正値に維持される。
【0029】
一方、高圧室27に混入したエアーを抜きとる作業を行う際には、図示しないエアー抜き用の棒状治具が用いられる。棒状治具は、頂孔21を通してプランジャ12内の低圧室23に差し込まれ、先端部が頂孔21から経路を経て弁孔22に挿入される。さらに、棒状治具の先端部が高圧室27に臨んで弁体28を第1スプリング39の付勢力に抗して押し下げることにより、弁孔22が開き、高圧室27のエアーが弁孔22を通して低圧室23に抜け出ることが可能となる。本実施例の場合、棒状治具が通過する軸路から外れた位置に給油管30が配置されているため、棒状治具が給油管30と干渉することはなく、棒状治具を用いたエアー抜き作業を支障なく行うことができる。
【0030】
また、組み付けに際し、給油管30は、当初は直線状に延出する形態をなし、成形済のプランジャ12の取付孔26に外側から挿入される。図3に示すように、プランジャ12内には、予め弁孔22から軸路に沿って頂孔21を貫通する変形治具40が差し込まれている。変形治具40は、上下方向に細長い円柱棒状をなし、棒状治具とほぼ同様の形態で構成されている。給油管30は、差し込みの過程で変形治具40と当接し、差し込み深さが増すにつれ変形治具40の側面に沿って立ち上がるように変形させられる。その後、変形治具40がプランジャ12から引き抜かれ、本体管部33がプランジャ12内に高く起立した形態となるようにして、給油管30が成形されることとなる。
【0031】
以上説明したように、本実施例によれば、プランジャ12の周壁18に給油管30が貫通して設けられ、給油管30が低圧室23に配置状況で上向きに突出して配置されるため、低圧室23に給油管30の導出端35まで十分な量の作動油を貯留させることができる。その結果、低圧室23のエアーが高圧室27に吸い込まれる事態が回避され、ラッシュアジャスタ10の傾斜配置や小型化に対応することが可能となる。また、給油管30がプランジャ12内の軸路から外れた位置に配置されているため、軸路に通される棒状治具を用いて高圧室27のエアー抜き作業を支障なく容易に行うことができる。
【0032】
さらに、成形済のプランジャ12の周壁18に直線形態の給油管30が取り付けられ、変形治具40によって強制的に曲げ変形させられて完成形態の給油管30になるため、給油管30の取り付け前、予めプランジャ12に熱処理(浸炭、窒化)や表面処理(めっき、DLC)などの加工を済ませておくことができる。
【0033】
<実施例2>
図4及び図5は、本発明の実施例2を示す。実施例2は、給油管30Aと取付孔26Aの形態が実施例1とは異なるが、それ以外は実施例1と同様である。以下においては、実施例1と同一又は相当する部位には実施例1と同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0034】
取付孔26Aは、プランジャ12の周壁18を径方向と交差する方向に貫通する形態とされている。給油管30Aは、実施例1の給油管30よりも高い剛性で一定形状を維持する金属部材であって、全体が直線状に延出する形態とされている。給油管30Aの一端部は、周壁18の取付孔26Aに圧入保持される圧入部31Aとされている。そして、給油管30Aの全長は、少なくとも、プランジャ12の内径(最大内径)の半分を超える長さになっている。圧入部31Aが周壁18の取付孔26Aに圧入された状態で、給油管30Aは、高さ方向に関してプランジャ12内を同一高さで横切るように配置されるようになっている。
【0035】
もっとも、ラッシュアジャスタ10Aは、配置状況では水平方向に向けて傾斜した姿勢をとっている。このため、給油管30Aは、配置状況では圧入部31Aからプランジャ12内に上向き傾斜で配置され、その上端が周壁18の上部近傍に至るようになっている。ここで、図5に示すように、取付孔26Aがプランジャ12の径方向と交差する方向に貫通していることから、プランジャ12内に突出する給油管30Aは、径方向中心の軸路から外れた位置に配置されることとなる。
【0036】
実施例2によれば、低圧室23の作動油が給油管30Aの導出端35Aと対応する位置まで貯留されるため、低圧室23に十分な量の作動油を確保することができる。また、給油管30Aが軸路から外れた位置に配置されるため、エアー抜き用の棒状治具を用いて高圧室27のエアー抜き作業を行うことができる。この点は、実施例1と同様である。一方、実施例2の場合、実施例1と違って、プランジャ12の周壁18に給油管30Aを取り付けた後、給油管30Aを曲げ加工する必要がないため、その分、加工工数を減じることができる。
【0037】
<他の実施例>
以下、本発明の他の実施例を簡単に説明する。
(1)実施例1において、給油管は、曲げ荷重を受けて変形される形状可変性を有する樹脂製の管材であってもよい。
(2)ラッシュアジャスタが常には上下方向に沿って設置されるものであってもよい。この場合も、坂道停止などの配置状況において、ラッシュアジャスタが水平方向に向けて傾斜する姿勢になることがあるので、本発明を適用する意義が大きい。
(3)周壁に給油管を取り付けた後、プランジャを完成形態に加工するものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10、10A…ラッシュアジャスタ
11…ボディ
12…プランジャ
17…底壁
18…周壁
21…頂孔
22…弁孔
27…高圧室
28…弁体
30、30A…給油管
39…第1スプリング(付勢部材)
図1
図2
図3
図4
図5