特許第6404803号(P6404803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6404803-マグネシウム合金 図000003
  • 特許6404803-マグネシウム合金 図000004
  • 特許6404803-マグネシウム合金 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404803
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】マグネシウム合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 23/00 20060101AFI20181004BHJP
   B22D 17/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C22C23/00
   B22D17/00 334
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-222590(P2015-222590)
(22)【出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-128603(P2016-128603A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2015年11月13日
(31)【優先権主張番号】103141813
(32)【優先日】2014年12月2日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】515316311
【氏名又は名称】安立材料科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王建義
(72)【発明者】
【氏名】葉明堂
(72)【発明者】
【氏名】呉政淵
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103031474(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102676894(CN,A)
【文献】 特開昭58−161495(JP,A)
【文献】 特開2012−130957(JP,A)
【文献】 特開2012−021182(JP,A)
【文献】 米国特許第04130500(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第104004950(CN,A)
【文献】 特開2001−026835(JP,A)
【文献】 特開平06−316750(JP,A)
【文献】 Zhikun Qu、他3名,The solution and room temperature aging behavior of Mg-9Li-xAl(x=3,6) alloys,Journal of Alloys and Compounds,NL,2012年 9月25日,Vlo.536,Page.145-149
【文献】 坂井徹也、他4名,Mg-Li-Al-Ca系合金の半溶融成形加工,軽金属,日本,1998年 1月,Vol.48 No.1,Page.13-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00 − 49/14
B22D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム(Mg)、
リチウム(Li)6〜8wt%、
アルミニウム(Al)6〜wt%、および
亜鉛(Zn)1.0wt%
からなるマグネシウム合金であって、
固相線と液相線の間の温度範囲が50℃以上であることを特徴とするマグネシウム合金。
【請求項2】
上記温度範囲が95℃以上あることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金。
【請求項3】
比重が1.65未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のマグネシウム合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に合金に関し、特に具体的にはマグネシウム合金に関する。
【背景技術】
【0002】
半固体鋳造法(semi-solid metal casting)は、鋳造技術の一つである。従来の鋳造技術と比較すると、半固体鋳造法において、より小さい粒子で、より優れた機械的特性の製造物が得られる。半固体鋳造法においては、使用する金属・合金の固相線と液相線の間の温度範囲が十分に大きいことが必須要件の一つである。これは、合金が融解し始める温度から、合金が完全に融解する温度までの温度範囲(すなわち、固液共存域(solid-liquid co-existence region))が十分に大きく、鋳造温度を制御し易くするためである。このようにして、複雑な形状と優れた機械的特性を有する鋳造片を製造できる。
【0003】
マグネシウム合金はその軽量性から幅広く使用されてきた。一般的に使用されているマグネシウム合金のうち、マグネシウムリチウム合金(Mg−Li合金)は最も軽量のものである。例えば、LZ91(Mg−9%Li−1%Zn)の比重はわずか約1.5であり、これは現在業務用に広く用いられているマグネシウム合金AZ91(Mg−9%Al−1%Zn)の比重である1.81よりもかなり低い。台湾特許出願公開第TW201043708Aは、軽量のマグネシウム合金の製造方法を開示しており、これは、(i)マグネシウム、アルミニウム、マンガン、亜鉛、シリコン等の合金材料を真空誘導融解ファーネスのるつぼへ入れ、真空誘導融解ファーネスに対し真空ポンプを使用するステップと、(ii)上記真空誘導融解ファーネスのるつぼを加熱し、上記合金材料を融解して融解液にするステップと、(iii)上記融解液を、リチウムを入れておいたバケツへ注ぎ、上記融解液がリチウム材料を激しくゆすいでリチウム材料と混合されるステップ、および(iv)上記リチウム含有融解液を鋳造金型へ注ぎこみ、合金を冷却しインゴットにするステップを含み、それによって、高剛性かつ低密度のマグネシウムリチウム合金材料を製造する。
【0004】
しかしながら、Mg−Li合金の固相線と液相線の間の温度範囲は小さい。例えば、Mg−6wt%Li合金の固相線と液相線の間の温度範囲はわずか4℃である。このような合金は、半固体鋳造法での使用には適さない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、マグネシウム合金を対象とする。数種類の成分を添加することによって、当該マグネシウム合金の固相線と液相線の間の温度範囲を大きくする。このようにして、当該マグネシウム合金は半固体鋳造法での使用に適している。さらに、上記マグネシウム合金は、軽量であるという特徴を有している。
【0006】
本発明のある実施形態によれば、上記マグネシウム合金は、マグネシウム(Mg),リチウム(Li)6〜12wt%およびアルミニウム(Al)1〜10wt%を含んでいる。上記マグネシウム合金の固相線と液相線の間の温度範囲は50℃以上である。
【0007】
本発明のある実施形態によれば、上記マグネシウム合金は、マグネシウム(Mg),リチウム(Li)6〜12wt%,アルミニウム(Al)1〜10wt%,亜鉛(Zn)0.2〜3wt%,マンガン(Mn)0.3wt%以下、シリコン(Si)0.2wt%以下、カルシウム(Ca)1.0wt%以下およびスズ(Sn)1.0wt%以下を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例に係る示差走査熱量測定(DSC,SDT Q600 V20.9 Build 20)曲線を示す図である。
図2】本発明の一実施例に係るDSC曲線を示す図である。
図3】本発明の実施例と比較例の特徴を集めたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な記述では、開示された実施形態を完全に理解できるようにするために、説明の目的で、多くの特定の詳細を述べる。しかしながら、これらの特定の詳細を用いずに一つ以上の実施形態を実施してもよいことは明らかである。図面を簡素化するため、周知の構成や装置に関しては概略的に示すものとする。
【0010】
本発明は、マグネシウム合金を対象とする。数種類の成分を添加することによって、当該マグネシウム合金の固相線と液相線の間の温度範囲の調整が可能となる。上記マグネシウム合金は、マグネシウム(Mg),リチウム(Li)6〜12wt%およびアルミニウム(Al)1〜10wt%を含んでいる。上記マグネシウム合金の固相線と液相線の間の温度範囲は50℃以上である。上記マグネシウム合金の固相線と液相線の間の温度範囲がより大きいため、当該マグネシウム合金は、半固体鋳造法での使用に適している。好ましい実施形態では、上記マグネシウム合金の固相線と液相線の間の温度範囲は95℃以上である。また、実施形態によっては、当該マグネシウム合金の比重は1.65未満である。一般的に、低密度の鋳造片ほど強度−重量比(強度と密度との比率)が大きく、モバイル機器での使用に適している。
【0011】
上記マグネシウム合金の主成分はマグネシウムである。すなわち、当該マグネシウム合金は、本願に記載の他の成分のほかには、主にマグネシウムで形成されている。マグネシウムを主成分とするため、上記マグネシウム合金は軽量である。リチウムの添加により、当該マグネシウム合金の密度は1.65g/cm未満に減少するが、同時に当該合金の固相線と液相線の間の温度範囲を小さくしてしまう。一般的に、マグネシウム合金にリチウムを1wt%添加すると、液相線は約10℃低下するが、固相線は約5℃低下するだけである。したがって、当該固相線と液相線の間の温度範囲はより小さくなる。当該マグネシウム合金にアルミニウム1.0wt%を添加すると、当該合金の固相線と液相線の間の温度範囲は大きくなるが、当該マグネシウムの密度は若干増加する。一般的に、マグネシウム合金にアルミニウム1.0wt%を添加すると、液相線は約2℃低下するが固相線は約10℃低下する。そのため、当該固相線と液相線の間の温度範囲は大きくなる。リチウムとアルミニウムの比率を調整することで、固相線と液相線の間の温度範囲をより大きくし、比重をより小さくすることができる。
【0012】
当該マグネシウム合金は、他の成分を含んでもよい。例えば、亜鉛(Zn)をマグネシウム合金に添加し、当該マグネシウム合金の耐食性を強化し、融点を低下できる。少量のマンガン(Mn)をマグネシウム合金に添加し、当該マグネシウム合金の強度および耐食性を強化できる。少量のシリコン(Si)をマグネシウム合金に添加し、当該マグネシウム合金の強度を強化できる。さらに、固化過程でのマグネシウム−シリコン化合物による発熱によって、当該マグネシウム合金の鋳造特性を向上できる。少量のカルシウム(Ca)をマグネシウム合金に添加し、半固体鋳造工程での燃焼を防止できる。少量のスズ(Sn)をマグネシウム合金に添加し、当該マグネシウム合金の高温下での強度を増加できる。具体的には、当該マグネシウム合金は、さらに、亜鉛(Zn)0.2〜3wt%,マンガン(Mn)0.3wt%以下、シリコン(Si)0.2wt%以下、カルシウム(Ca)1.0wt%以下およびスズ(Sn)1.0wt%以下を含んでもよい。
【0013】
以下、いくつかの種実施例と比較例を用いて、本発明の効果を記載する。全実施例および全比較例においてMg−(Xwt%)Li−(Ywt%)Al−(1wt%)Zn合金を使用し、実施例および比較例におけるXおよびYの値を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
図1は、実施例4のDSC曲線を示す。図2は実施例5のDSC曲線を示す。図1および2に示すように、双方の例において、固相線と液相線の間の温度範囲は50℃以上である。実施例5の固相線と液相線の間の温度範囲は95℃以上である。各実施例および各比較例における、比重(SG)と固相線と液相線の間の温度範囲(S−L範囲)を、図3中のブロック061−0101,0121,181,191,661,671,761,771,861および881に示す。比較例と比較すると、本発明の各実施例における固相線と液相線の間の温度範囲のほうが大きい。また、本発明の各実施例における比重は1.65以下であり、これは一般的なマグネシウム合金の比重である1.8よりも小さい。
【0016】
結論として、マグネシウム合金に添加する成分の種類と量を調整することで、固相線と液相線の間の温度範囲がより大きく、半固体鋳造法での使用に適したマグネシウム合金を得ることができる。さらに、当該マグネシウム合金は軽量という特徴を有しており、モバイル機器での使用に適している。
【0017】
開示された実施形態に種々の修正と変更を行えることは当業者には明らかであろう。明細書と実施例は例示的なものとしてのみ考慮され、本開示の真の範囲は以下の特許請求の範囲とその等価物によって示されることが意図される。
図1
図2
図3