(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態にかかる物品の分解装置及び分解方法は、液体中に静置された電極間でパルス放電を発生させ、放電、もしくは放電により誘起された衝撃波を利用して物品の分解を行うというものである。
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態の実施の形態について説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の物品の分解装置の一様態を表す。
【0015】
物品分解装置1は、液体2を保持した例えば満たした容器3と、液体2中で互いに間隔をあけて対向して配置される正電極4及びアース電極5と、正電極4に高電圧パルスを印加するパルス電源6と、放電電流を測定(計測)する電流計7と、少なくとも正電極4を上下方向に移動させる電極間距離調整機構8とを備える。アース電極5は接地されている。電極間距離調整機構8は放電条件調整装置の一例として機能する。
【0016】
物品9は分解処理する対象物であり、正電極4とアース電極5との間の液体2中に保持される。
図1では、アース電極5上に載置しているが、支持手段により電極4又は5に接しないように支持してもよい。
【0017】
制御部10は、パルス電源6と、電流計7と、電極間距離調整機構8とに接続される。制御部10は、電極間距離調整機構8を制御して、正電極4とアース電極5との間の距離(電極間距離)を調整する。
【0018】
パルス電源6は、任意の電圧を印加できる。一例として、パルス電源6にはマルクス発生器を用いることができる。放電は、正電極4とアース電極5との間に生じる。そして正電極4とアース電極5との間に保持された物品9は、放電もしくは放電により誘起された衝撃波により分解される。
【0019】
正電極4の形状及びアース電極5の形状について、
図1では正電極4の先端を円錐形状とし、アース電極5を平板状で例示しているが、放電が起これば分解が進むため、物品9の形状、若しくは材料、又は、分解後に目的とする形状に合わせて、多様な形態が適用できる。アース電極5は、例えば平板状以外に、網状、格子状、渦巻き状などであってもよい。
【0020】
また、正電極4とアース電極5との位置は、
図1では物品9を挟むように対向させて設置しているが、それぞれ少なくとも1つあり、その正電極4とアース電極5との間の最も近い距離が100mmよりも小さければ液体中で放電が起こるため、電極の位置は問わない。例えば、正電極4とアース電極5とを物品9の上方に設置したりしても良い。また、正電極4とアース電極5とのそれぞれの数も、一方もしくは両方が複数本存在しても良い。また、放電の発生は、正電極4とアース電極5とのそれぞれの先端の方向にほとんど影響されないため、これらの方向も問わない。
【0021】
正電極4及びアース電極5に対する物品9の位置は、液体中の電極4,5間の放電経路上か、もしくは放電によって発生する衝撃波が伝播する領域に存在させれば分解が進むため、必ずしも物品9を正電極4もしくはアース電極5に接触させたり、電極4,5間に存在させたりする必要は無い。
【0022】
電極間距離調整機構8は、正電極4とアース電極5との間の距離を移動変更できる機構である。
図1では、電極間距離調整機構8として、正電極4の高さを変更できる機構を示すが、アース電極5の高さを変更する機構であっても良い。移動距離は、処理対象の物品9の大きさ又は放電条件にも依存するので、一概に特定できないが、移動ストロークの一例として、液体2の電気伝導度の大幅な変化にも対応できるよう、本設備構成にて液体中でパルス放電を発生させられる上限である100mmまで移動できる構成としている。また、移動精度の一例としては、基板から電子部品が剥離した際に生じる、電極と処理物との間の距離の変化に追従できるようにするため、電子部品の厚さである1mm以下としている。
【0023】
分解対象の物品9としては、特に特定されないが、放電による衝撃波の効果を全体に均等に及ぼすためには、薄型の物品が好ましい。例えば、携帯電話、ゲーム機、もしくは薄型テレビなどの電気製品、電子基板、又は、太陽電池などが挙げられる。上記の物品9の分解装置の構成により、液体2の電気伝導度の変化と分解に伴う物品9の形状変化とに合わせるように、電流計7で計測された放電電流が一定になるように調整が可能となる。
【0024】
図2は、液体中に少なくとも正電極4及びアース電極5を備え、液体中の電極4,5間の放電経路上もしくは放電によって発生する衝撃波が伝播する領域に基板もしくは基板を含む物品9を設置し、正電極4から複数回放電させる事によって物品9を分解する際に、放電電流のピーク値が、基板もしくは基板を含む物品9から基板上の部品を破壊することなく部品を分解できる所定の範囲の値で一定になるように、放電電極4,5間の距離を変更する工程を表す図である。なお、放電電流のピーク値は、放電動作時に流れる電流の最大値のことである。電流最大値は、条件によってはノイズ成分を除去して設定しても良い。基板もしくは基板を含む物品9から基板上の部品を破壊することなく部品を分解できる放電電流のピーク値は、後で詳細を述べる。
【0025】
上記の工程は、
電極4又は5の位置を初期位置へ移動させるステップS001と、
任意の放電電圧と放電電流の立ち上がりからゼロ電位に戻るまでの時間である放電電流の幅(以下、パルス幅と略す)で放電させるステップS002と、
上記ステップS002後の放電回数の合計値が、あらかじめ設定した目標放電回数に到達しているかを制御部10で判定するステップS003と、
上記ステップS002の放電の放電電流ピーク値が、所定の範囲に収まっているかを制御部10で判定するステップS004と、
上記ステップS002の放電の放電電流ピーク値が、所定の値を下回っているかを制御部10で判定するステップS005と、
上記ステップS005で放電電流ピーク値が、所定の値を下回った際に電極間距離を制御部10の制御の下に電極間距離調整機構8で狭めるステップS006と、
上記ステップS005で放電電流ピーク値が所定の値未満でない場合に制御部10の制御の下に電極間距離調整機構8で電極間距離を広げるステップS007との7個のステップで構成される。
【0026】
まず、ステップS001で、電極4又は5の位置を初期位置へ移動させる。電極を移動させる初期位置は、放電電流のピーク値が所定の値を超えず、なおかつ放電が起こる範囲であればよい。
【0027】
次いで、ステップS002で、任意の放電電圧と放電電流の立ち上がりからゼロ電位に戻るまでの時間である放電電流の幅(以下、パルス幅と略す)で放電させる。放電の電圧とパルス幅とは、好ましくは処理物の材質又は硬さ、又は目標とする分解状態と放電回数を踏まえて、あらかじめ見出した条件が好ましい。特に、好ましいパルス幅については、詳細を後に述べる。
【0028】
次いで、ステップS003で、上記ステップS002後の放電回数の合計値が、あらかじめ設定した目標放電回数に到達しているかを制御部10で判定する。放電回数の合計値が、あらかじめ設定した目標放電回数に到達していると制御部10で判定すると、処理を終了する。放電回数の合計値が、あらかじめ設定した目標放電回数に到達していないと制御部10で判定すると、ステップS005に進む。任意の目標放電回数は、回数が少ないと基板もしくは基板を含む物品9が十分に分解されず、逆に回数が多いと基板もしくは基板を含む物品9が細かい粉塵等が発生し、液体の浄化などの処理が必要になるため、適した放電回数をあらかじめ見出しておくことが好ましい。
【0029】
ステップS004において上記ステップS002の放電の放電電流ピーク値が、所定の値を下回っているか、すなわち、所定の範囲に収まっているかを制御部10で判定する。放電電流ピーク値が所定の範囲に収まっていないと制御部10で判定する場合、ステップS005に進む。放電電流ピーク値が所定の範囲に収まっていると制御部10で判定する場合、ステップS002に戻る。
【0030】
ステップS005において、放電電流ピーク値が所定の値未満かどうか、すなわち、所定の範囲に収まっているかを制御部10で判定する。放電電流ピーク値が、所定の範囲に収まっていると制御部10で判定する場合、ステップS006に進む。放電電流ピーク値が、所定の範囲に収まっていないと制御部10で判定する場合、ステップS007に進む。
【0031】
ステップS006にて、制御部10の制御の下に電極間距離調整機構8により、正電極4及びアース電極5間の距離を狭める。電極4,5を接近させることで、放電電流間の抵抗が下がるため、放電電流ピーク値が上がり、次の放電が所定の範囲に収まる可能性が高まる。
【0032】
ステップS006の後、再度、ステップS002に戻り、放電を実施する。なお、放電電流のピーク値の測定は、放電電極間以外に回路の一部を流れる電流、例えばアース電極とGNDの間の配線を流れる電流などを測定しても良い。
【0033】
一方、ステップS005において、放電電流ピーク値が所定の値未満でない(所定の範囲に収まっていない)と制御部10で判定する場合、ステップS005の前に実施するステップS004の判定を踏まえると、放電電流ピーク値が所定の値を上回っていることになるため、放電電流ピーク値を下げるために、ステップS007で、制御部10の制御の下に電極間距離調整機構8により、電極間距離を広げる。電極間距離を広げることで、電極間の抵抗が上がるため、放電電流のピーク値を下げることができる。上記ステップS007の後、再度、放電ステップS002に戻り、放電を行う。
【0034】
この
図2のように処理することにより、放電電流ピーク値を所定の範囲内で一定に保つことができる。
【0035】
図3は、液体中に少なくとも正電極4及びアース電5を備え、液体中の電極間の放電経路上もしくは放電によって発生する衝撃波が伝播する領域に基板もしくは基板を含む物品を液体中に設置し、電極から複数回放電させる事によって物品9を分解する際に、放電電流のピーク値が所定の範囲内で一定になるように、パルス電源6により放電電圧を変更する工程を表す図である。ここでは、パルス電源6は、放電条件調整装置の一例、例えば放電電圧調整機構として機能する。
【0036】
ステップS001からステップS005のステップの処理内容は、
図1と同じであるため、詳細な説明は省略する。ステップS005で放電電流ピーク値が所定の値未満(所定範囲内)であると制御部10で判定する場合、制御部10の制御の下にパルス電源6により電圧を上げるステップS008を実施する。電圧を上げることで、同じ電極間距離であっても放電時の電流が増え、放電電流ピーク値を上げることができる。ステップS008の後、放電するステップS002を再度実施する。
【0037】
ステップS005で放電電流ピーク値が所定の値未満(所定範囲内)ではないと制御部10で判定する場合、放電電流ピーク値を下げるためにステップS009にて制御部10の制御の下にパルス電源6により電圧を下げる。その後、放電するステップS002を再度実施する。
【0038】
このように
図3の処理を行うことにより、放電電流ピーク値を所定の範囲内で一定に保つことができる。
【0039】
次に、基板を破砕することなく基板から部品を分離できる、放電電流ピーク値について説明する。
【0040】
部品がはんだ付けで実装された基板について、
図1に示す物品の分解装置を用いて分解処理試験を行った。
【0042】
製作条件としては、基板上に、部品として16ピンのIC素子の16ピンすべてを基板にはんだ付けし、はんだ強度が1kgf/個となるようにした基板を用いた。このときの実装後の素子の高さは5mmにした。この条件で一つの基板上に5個のIC素子を実装した。
【0043】
一例として、物品9を、
図1に示す装置にて、放電電圧250kV、パルス周波数1Hz、パルス回数10回で放電させて分解した。放電電流ピーク値は、正電極4とアース電極5間の距離を変更する事により、7kAから34kAの間の任意の値で一定に保持した。物品9はアース電極5上に載置した状態で処理した。
【0044】
上記分解処理試験の評価は、試験後の個々の物品に対して、基板からのIC素子の分離と、基板の分解の2つの観点で評価した。
図4は、この実験により、放電電流ピーク値を変更したときの基板からのIC素子の分離と基板の分解の評価結果である。
図4において、基板からのIC素子の分解は、放電後に5個のIC素子が全て基板から分離した場合を「○」とし、分離しなかった場合を「×」で示す。また基板の分解については、基板が2つ以上の破片に分解しなかった場合を「○」2つ以上の破片に分解した場合を「×」で示す。なお分解処理試験で物品9は分解されてしまうため、1〜9の実験条件ごとに、同一条件で製作した物品9を1つずつ使用し、上記分解処理試験で合計9個の物品を用いた。
【0045】
図4から、放電電流ピーク値が10kA以上30kA以下のときに、基板を分解することなく基板から部品を分離できることがわかる。
【0046】
次に、基板を含む物品、例えば樹脂ケース内に部品がはんだ付けされている基板が固定されている物品から、基板を分解することなく、基板から部品を分離できる放電電流ピーク値について説明する。
【0047】
基板を含む物品について
図1に示す物品の分解装置を用いて分解処理試験を行った。
【0049】
製作条件としては、下記試料1及び試料2の二種類の試料で製作している。試料1は、50×100×t30mmの大きさのABS樹脂ケース内に基板をネジ止めして設置し、基板を設置したABSケースの蓋は4箇所のネジ止めによって固定した。基板は、部品として16ピンのIC素子の16ピンすべてを基板にはんだ付けし、はんだ強度が1kgf/個となるようにしたものを用いた。このときの実装後の素子の高さは5mmにした。この条件で一つの基板上に5個のIC素子を実装した。
【0050】
試料2は、50×100×t30mmの大きさのABS樹脂ケース内に、上記試料1で用いたものと同じ基板をネジ止めして設置し、基板を設置したABSケースの蓋は嵌め合いで固定した。
【0051】
上記処理物を、
図1に示す装置にて、放電電圧250kV、パルス周波数1Hzで放電させて分解した。放電電流ピーク値は、正電極4とアース電極5間の距離を変更する事で、8kAから34kAの範囲の任意の値で一定に保持した。物品9はアース電極5上に載置した状態で処理した。
【0052】
パルス回数は30回と50回の2種類の分解処理を実施した。実験条件1〜7がパルス回数30回の条件であり、実験条件8〜14がパルス回数50回の条件であり、合計14条件で実験を行った。
【0053】
各条件では、物品9の分解処理が進むにつれ、樹脂ケースの分解、基板からの部品の分離、基板の分解が順次、または条件によっては同時に起こる。
【0054】
上記分解処理試験の評価は、試験後の個々の物品に対して、樹脂ケースの分解と、基板からのIC素子の分解と、基板の分解の3つの観点で評価した。
図5は放電電流ピーク値と放電回数を変更したときの樹脂ケースの分解と、基板からのIC素子の分離と、基板の分解の評価結果である。
【0055】
樹脂ケースの分解については、樹脂ケースの蓋がケースから分離したものを「○」分離しなかったものを「×」で示す。基板からのIC素子の分離は、放電後に5個のIC素子が全て基板から分離した場合を「○」とし、分離しなかった場合を「×」で示す。樹脂ケースが分解しなかった場合は、上記ABSケースの蓋を外し、内部の基板の状態を確認して評価した。
【0056】
また基板の分解については、基板が2つ以上の破片に分解しなかった場合を「○」2つ以上の破片に分解した場合を「×」で示す。樹脂ケースが分解しなかった場合は、上記ABSケースの蓋を外し、内部の基板の状態を確認して評価した。
【0057】
なお、分解処理試験で物品9は分解されてしまうため、1〜14の実験条件ごとに、同一条件で製作した試料1及び試料2を各1つずつ使用し、上記分解処理試験で合計28個の物品を用いた。
【0058】
図5から、樹脂ケースの破壊には放電電流ピーク値の影響が無く、分解しなかった樹脂ケースもパルス回数を増やせば分解できることが分かる。一方で放電電流ピーク値が10kA以上30kA以下であれば、基板を分解することなく、基板からICを分離できることがわかる。
【0059】
次に、電極間距離及び放電電圧が及ぼす放電電流ピーク値への影響について説明する。
【0060】
図1に示す物品の分解装置を用いて影響を検証した。ただし、物品9は存在しない状態で検証した。
【0061】
液体2は水道水を用い、放電した際の放電電流ピーク値を測定した。
【0062】
正電極4とアース電極5間の距離は、10、20、30mmとした。
【0063】
放電電圧は100、230、350kVとした。
【0064】
図6に結果を示す。
図6はパルスパワー放電において電圧と電極間距離が及ぼす放電電流ピーク値への影響を示すグラフである。この図から、正電極4とアース電極5間の距離と放電電圧により放電電流ピーク値が制御できる。電極間距離を広げると放電電流ピーク値を下げる事ができ、逆に電極間距離を狭めると放電電流ピーク値を上げる事ができる。また放電電圧を上げると放電電流ピーク値を上げる事ができ、逆に放電電圧を下げると放電電流ピーク値を下げる事ができる。
【0065】
放電電流最大値を制御するための数式は、下記のような手順で求めることができる。
【0066】
まず、
図7中の3本の線分それぞれについて原点を通る直線で近似し、放電電流ピーク値(Imax)と放電電圧(E)の関係式を書き(1)式の通り求める。
【0067】
Imax=a×E (1)
ここでaは電極間距離ごとに求められる近似直線の傾きであり、物品9の有無及び種類によって変わる。
【0068】
次に、傾きaと電極間距離(x)との関係を2次関数で近似すると、下記の数式(2)の定数b、c、dを求める事ができる。2次関数で近似することにより、直線近似より正確に近似することができるとともに、他の関数よりは簡便な近似が可能である。
【0069】
a=bx
2+cx+d (2)
数式(1)、(2)から、放電電流ピーク値(Imax)を求めるために、下記数式(3)を求める事ができる。
【0070】
Imax=(bx
2+cx+d)×E (3)
図7に示すデータからは、Imaxの単位をkA、電圧の単位をkV、電極間距離の単位をmmとするならば、定数b、c、dは下記の値になる。
【0071】
b=−1.64×10
−5
c=2.90×10
−4
d=4.75×10
−2
連続放電して物品の分解処理を進める際に、上記手順で式(3)の定数b、c、dを求め、電極間距離もしくは放電電圧の少なくとも一方にフィードバックすることで、放電電流ピーク値を一定に保つことができる。
【0072】
ただしb、c、dは定数であるが、分解処理に伴う物品9の形状の変化又は液体の電気伝導度の変化によって変動するため、複数回、好ましくは毎回の放電毎に数式を導出しながら電極間距離もしくは放電電圧の少なくとも一方にフィードバックをかけることで、放電電流ピーク値を一定に保つ事が望ましい。
【0073】
次に、基板を含む物品、例えば樹脂ケース内に部品がはんだ付けされている基板が固定されている物品を分解するために好ましいパルス幅について説明する。
【0074】
基板を含む物品について
図1に示す物品の分解装置を用いて分解処理試験を行った。分解処理試験の評価は、試験後の個々の物品に対し、放電電流の幅を変更したときの樹脂ケースの分解と、基板からの部品の分離と、樹脂ケースの過分解との、3つの観点で評価した。
【0075】
物品9として、
図5に示す分解処理試験で使用した試料2を使用した。製作条件の詳細は、既に説明しているため省略する。試料2を、
図1に示す装置にて、パルス回数30回で放電させて分解した。正電極4とアース電極5との間の距離は25mmとした。処理物70はアース電極5上に載置した状態で処理した。放電電圧を150kV〜350kVと変えるとともに
図1の装置の回路のコンデンサの数と容量、放電回路全体のインピーダンスを変更することで、放電電流最大値が23kAで一定にしつつ、パルス幅だけを変えて分解処理した。
【0076】
上記分解処理試験の評価は、試験後の個々の物品に対して、樹脂ケースの分解と、基板からのIC素子の分離と、樹脂ケースの過分解との、3つの観点で評価した。
図7は、放電電流の幅を変更したときの基板からの部品の分離と樹脂ケースの分解と、樹脂ケースの過分解との評価結果を示す図である。
【0077】
樹脂ケースの過分解は、分解後の樹脂材料の分別を踏まえると、起こらないほうが好ましい。
【0078】
樹脂ケースの分解については、樹脂ケースの蓋がケースから分離したものを「○」分離しなかったものを「×」で示す。基板からのIC素子の分離は、放電後に5個のIC素子が全て基板から分離した場合を「○」とし、分離しなかった場合を「×」で示す。樹脂ケースの過分解については、樹脂ケースが2つ以上の破片に分解しなかったものを「○」分解したものを「×」で示す。樹脂ケースからの蓋の分離は、樹脂ケースの過分解には含めない。
【0079】
なお、実験で物品9は分解されてしまうため、実験条件1〜6で合計6個の物品9を使用した。
【0080】
図7から、放電電流ピーク値が一定であっても、放電電流の波形の幅が1μs未満だと樹脂ケースの分解がほとんど進まない事がわかる。また、放電電流の波形の幅が9μsを超えると、樹脂ケースの過分解が起きることがわかる。
【0081】
このことから、放電電流の波形の幅が1〜9μsの条件であれば、樹脂ケースが分解でき、なおかつ樹脂ケースの過分解が防げる。
【0082】
以上のように、第1実施形態によれば、液体2中における放電によって基板もしくは基板を含む物品9を分解する際に、分解処理中の液体2の電気伝導度の変化と処理物の形状の変化とに対応するように一定回数の放電で物品9の分解を可能となる。また、様々な形状もしくは材料の基板もしくは基板を含む物品9を分解する場合でも、処理物の形状と材料に適した条件とで分解を行えるため、一定回数の放電で物品9の分解が可能となる。
【0083】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかる
図8の物品分解装置11は、
図1の装置に物品移動保持機構12を付加したものである。
【0084】
物品移動保持機構12は、未処理の物品9を、放電によって分解される場所に移動させるための搬送機能を有する。これにより、前記した作用効果に加えて、物品9を、放電によって分解される場所に連続的に搬送することが可能となり、連続的な分解処理が可能となる。また、物品移動保持機構12は、正電極4とアース電極5とに対して特定の位置で物品9を保持することが出来る。この際、物品移動保持機構12が直接物品9を保持しても良いし、物品9を保持する保持具または容器を物品移動保持機構12が保持してもよい。制御部10は、パルス電源6と、電流計7と、電極間距離調整機構8と、物品移動保持機構12とに接続される。制御部10は、電極間距離調整機構8を制御して、正電極4とアース電極5との間の距離のデータに基づいて、正電極4とアース電極5との間の距離を調整する。
【0085】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。