(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力量ベクトル(u)形式の複数の入力量に非線形に依存する、技術的な系の出力量(y)についてのモデルを算出する方法であって、モデルとして、複数のモデルパラメータを有する一つのモデル構造が設定され、前記モデルパラメータが、前記技術的な系における複数の試験台実験からの測定出力量に基づいて反復法で最適化され、複数の前記試験台実験が実験計画に従って遂行され、当該実験計画は、各反復ステップ(k)について前記モデルの推定出力量(y^)からそれぞれ作成される方法において、
以下の方法ステップ、
現行の前記反復ステップ(k)に対して有効な前記モデルを用いて、複数の入力量ベクトル(ucand)の集合(Ucand)から、推定出力量(y^(ucand))の集合(y^(Ucand))が算出されること、
出力量の当該集合(y^(Ucand))から、予め設定された目標出力量範囲(COR)内の推定出力量(y^(ucand))をもたらす、目標入力量ベクトル集合(Ucand,COR)の目標入力量ベクトル(ucand,COR)が特定されること、
前記目標入力量ベクトル集合(Ucand,COR)から、次の反復ステップ(k+1)のために、新たな入力量ベクトル(unew)が、既に選択された入力量ベクトル(uapp)の集合(Uapp)を補うために選択され、そのときに、前記新たな入力量ベクトル(unew)は、予め定められた、距離に基づいた選択基準に基づいて選択されること、
このように拡張された、選択された入力量ベクトル(uapp)による前記集合(Uapp)が実験計画として用いられることで、試験台実験に基づいて出力量(yapp)の測定データが生成され、当該測定データを用いて前記モデルが最適化されること、が行われ、及び
上記の方法ステップが、設定された停止条件が満たされるまで反復的に繰り返されることを特徴とする方法。
【背景技術】
【0002】
多くの技術的な系の出力量は、多次元、非線形で複数のパラメータに依存する。典型的な例が、内燃機関であり、この場合には、例えばNOxの排出、排気ガス中のスス、燃費等といった多くの特性値(出力量)が、回転数、トルク、温度、スロットルバルブの状態、燃料圧力等といった様々な入力量(または動作点)に依存する。一般に、技術的な系(システム)とは、例えば複数のアクチュエータの複数の設定値といった所定数の特定の入力量が、例えば特性値やセンサで測定可能な量といった所定数の特定の出力量を左右し、入力量と出力量との間に何らかの関数的な関係が存在するような系(システム)のことを意味する。このような技術的な系を開発する際に、専ら試験台上でのみ開発を行うことは、かなりの費用がかかる。というのも、種々の入力量に依存しかつ相互依存もする多くの非線形の出力量を最適化するのは、手作業ではなかなかできないことだからである。これは想定され得る一つの開発目標である。そのため、このような技術的な系、つまりは入力量とシステムパラメータに依存する特定の出力量を、幾つかの数学的なモデルにより模倣的に構築することが既に試みられている。これらのモデルに基づくと、入力量の変動やモデルパラメータの変動による影響をシミュレーションして詳しく調べることができ、さらに幾つかの最適化を試みることができ、そしてその後に、例えば試験台でそれらの最適化が検証される。これに関して、いわゆるモデルベース法(モデルベース実験計画法(model based design of experiments))が、例えば特許文献1から公知となっているが、この方法は、数学的な方法及び測定値に基づいて非線形の技術的な系のモデルを同定するというものである。その際には、例えば公知のローカルモデルネットワーク(LMN)や公知の多層パーセプトロン(MLP)等の何らかのモデル構造が選択され、試験台実験(オンライン)から得られるデータに基づいてモデルパラメータが推定される。このとき、上記モデルは、出力量を反復的に生成し、この出力量が実験計画で用いられることにより、次の反復ステップのために新たな入力量が生成され、この新たな入力量が、技術的な系のための試験台において使用を開始される。試験台実験の出力量は、次に、特定の境界条件を考慮して、モデルパラメータを改善するのに用いられる。設定された停止条件を満足するまで、つまり、モデルパラメータが十分正確に推定されたとされるまで、これが繰り返される。その際、モデルパラメータを推定するのに重要なのは、全ての出力範囲において十分なモデル品質を得るために、技術的な系の全てのダイナミックレンジ(Dynamik)と全ての出力範囲を実験計画がカバーすることである。
【0003】
しかし、技術的な系の多くの特性値は、特定の範囲においてのみ重要である。それは、何か法律が存在してその法律が特性値に対して特定の変数領域において規準を設けているといった理由であれ、あるいは、或る特性値は特定の変数領域においてのみ説得力があるといった理由であれ、理由は何にしてもである。その典型的な例が、内燃機関のNOx排出やススの排出であり、これらは、内燃機関の特定の運転範囲において、立法機関により定められた制限値を守らなければならない。従って、このような特性値のモデルは、上記の目標とする出力範囲(目標出力範囲)(Zielausgangsbereich)内だけは正確でなければならないだろうが、取り得る全ての出力の範囲に対してまではその必要がない。
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る、モデルに基づいて(モデルベースで)モデルを同定する方法は、モデルを構築はするものの、それは全ての出力範囲に対して有効なものであり、そのことが一方で、高いコスト、それも特に、必要な試験台実験のためのコストにつながっている。他方、モデルを同定する際に少なすぎる訓練データしか目標出力範囲で使われなかったがために、事もあろうに目標出力範囲では十分正確とは言えない結果をモデルが出してくることがあり得る。そのため、このようなモデルは、上記の目標出力範囲に対しては限られた条件でしか使うことができない。
【0005】
非特許文献1より、メタモデルが狭い目標範囲付近で出力量をできるだけ正確に推定するように実験計画を作成する方法が明らかになっている。メタモデルとしてクリギングモデルが用いられ、目標範囲は等高線(Konturlinie)として定められる。そのため、当該モデルは、等高線近傍では極めて正確に推定することにはなるものの、この方法が適さないような、もっと大きな目標出力範囲内になるとそうは行かない。この方法では、逐次実験計画法が適用され、新たな入力量は、既知の入力量及びそれに対応して算出された出力量の双方に依存した最適化基準に従って選択される。そのため、この方法は試験台実験なしで済まされる。従って、この方法の目的は、実際の系(実システム)における試験台実験からの正確な測定値に基づいて最適化を行なうというのでもなく、むしろ、設定された等高線に或る関数をフィッティングすることにある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による方法について、先ずは、或るモデル構造を持つ一つのモデルを選択する必要がある。そのモデル構造を用いて、特性値つまりは特定の入力量に依存した出力量についての技術的な系の振る舞いが推定されなければならない。本方法の以下の記載は、いわゆる公知のローカルモデルネットワーク(local model network, LMN)に基づいて説明がなされる。もっとも、本方法は、同じようにして他の公知のモデル構造、例えば、多層パーセプトロン、サポートベクターマシン、あるいはガウス過程に置き換えることができる。ローカルモデルネットワークは、より低額な電子計算機費用、技術的な系の既存知識の利用可能性及びロバストな方法で実験計画に使えるモデルパラメータの点で優れており、それ故に本発明による方法に特に適している。こういうわけで、以下に、モデル構造として、ローカルモデルネットワーク(LMN)に基づいて発明を説明する。
【0015】
ローカルモデルネットワーク(LMN)は、次のI個の局所モデルから構成される。
【0017】
(以下、本明細書において、文字上の∧の記号は文字の右肩に記載する場合もある。)
【0018】
これらは、局所的にのみ、つまり特定の入力量に対してのみ効力を持つ。ここで、uは、全ての入力量を含む、技術的な系のn次元の入力量ベクトルを指し、θ
jは、j番目の局所モデルのモデルパラメータである。ここで、局所モデルy^
j(u;θ
j)は、交互作用項を有する二次重回帰モデルであるが、ただし、例えば、線形ないし三次の重回帰モデルといった、局所モデルに関する他のモデル構造も用いることができる点に留意すべきである。ローカルモデルネットワークの出力y^(u)は、局所モデルy^
j(u;θ
j)の出力の重み付け和であり、系の出力に関する推定値である。そのために、次の効力関数(Gueltigkeitsfunktion)を定義する。
【0020】
(以下、本明細書において、文字上の〜の記号は文字の右肩に記載する場合もある。)
【0021】
この効力関数は、局所モデルy^
j(u;θ
j)の効力範囲(有効な範囲)を規定し、x
〜は、入力量ベクトルuの選択された入力量を意味する。こうして、ローカルモデルネットワークy^(u)の出力は、よく知られているように次式になる。
【0023】
ローカルモデルネットワーク(LMN)は、入力量uと技術的な系の出力量yとの関係を推定するために、訓練データ(Trainingsdaten)を必要とする。訓練ユニット2内での訓練によって、モデルパラメータθ
jの他に、局所モデルy^
j(u;θ
j)の数I及びその効力関数Φ
j(x
〜)も特定することができる。このこと自体は、非特許文献2から十分に分かることなので、ここでは詳細には立ち入らない。訓練データは、以下に
図1に基づいて説明されるようにして作成される実験計画に由来するものである。
【0024】
前提となるのは、全ての取り得る出力量範囲においてモデルが正確な推定を行なわなければならないことではなく、或る定められた目標出力量範囲においてのみ、例えば内燃機関等が校正されて、特定の入力量に対する特定の出力量(例えば、NO
x排出やススの排出といったもの)が特定の基準を満たすようにしなければならないことである。従って、目標出力量範囲は分かっているのだが、それと対応関係にある、モデルの入力量は分からない。そのため、これらの入力量を同定し、さらに、モデルのモデルパラメータθ
jを(場合によってはさらに局所モデルの数Iとその効力関数をも)目標出力量範囲に関してパラメータ化する(パラメータを決定する)という実験計画が必要である。
【0025】
実験計画は、入力量の並び(場合によっては時間的な並びも)であり、それら入力量が、技術的な系の試験台において設定されるとともに技術的な系の所望の出力量がそれに伴い観察ないし測定される。例えばエンジン試験台等の試験台には、内燃機関等の技術的な系が設置され、場合によっては、電気的な動力計等の負荷装置が接続され、試験台ないし技術的な系ないし負荷装置は、実験計画に従って操作される。
【0026】
実験計画は、或る入力量ベクトル集合U
candからの入力量ベクトルu
candの反復的な選択に基づいている。入力量ベクトル集合U
candとしては、入力量範囲全体をできるだけ均一にカバーするような、考えられ得る入力量ベクトルu
candの任意の集合のいずれもが用いられ得る。入力量ベクトル集合U
candは、予め決められており、方法プロセスに関しては既知のものと仮定している。
【0027】
一つの入力量ベクトルu
candは、実験計画に一度だけ用いることができる。方法プロセスの開始時には、複数の入力量ベクトルu
startの集合U
startが設定される。かくして、各反復ステップにおいては、新たな入力量ベクトルu
newは、最初は入力量ベクトル集合U
startから、次には入力量ベクトル集合U
candから選択され、これらの入力量ベクトルu
newに対する技術的な系の反応は、技術的な系のための試験台1における試験台実験を通じて出力量y
newという形で測定される。既知とされた又は選択された入力量ベクトルu
app(新たな入力量ベクトルu
newを含む。)の集合U
app及び対応関係にある測定された出力量y
appの集合Y
appは、訓練ユニット2(例えば、ソフトウェア及び訓練実施ための実行アルゴリズムを備えた適格な電子計算機)内において、ローカルモデルネットワーク(LMN)の訓練(Training)のための訓練データ(Trainingsdaten)を形成する。こうして、各反復ステップkにおいて、ローカルモデルネットワーク(LMN)が、これらの訓練データにより訓練される。訓練は、相当数の反復ステップにおいてのみ、ローカルモデルネットワーク(LMN)の変更、例えば、ネットワーク次元Iの変更やモデルパラメータθ
jの変更をも引き起こし得る。モデルが変更される際には、モデルパラメータθ
j及び場合によっては局所モデルy^
j(u;θ
j)の数I並びにその効力関数Φ
j(x
〜)が、ローカルモデルネットワーク(LMN)の規則に従って更新される。これは、例えば、非特許文献2に記載されているとおりである。
【0028】
これにより、目標出力範囲に対する十分に正確なモデルLMN
finが得られるまで、既に選択された入力量ベクトルu
appの集合U
appが増え続けるとともに、対応関係にある測定された出力量y
appの集合Y
appが増え続ける。これは、例えば、訓練データの最大数や閾値(これ以下に目標出力範囲内の平均二乗モデル誤差が収まらなければならない。)といった、適切な停止条件により決めることができる。ここで、新たな入力量ベクトルu
newの選択は、次のような方法プロセスで行われる。
【0029】
先ず、各反復ステップkにおける現行のローカルモデルネットワーク(LMN)に基づいて、現行のモデルから推定された出力量y^(u
cand)(y^
cand)が入力量ベクトル集合U
candに関して算出される。
次に、この結果から、全ての入力量ベクトルu
cand,CORが特定されるが、これら入力量ベクトルの推定出力量y^
cand,CORは、目標出力量範囲(custom output range, COR)(この範囲は、その境界y
minとy
maxとによって、COR=[y
min;y
max]によって定義されている。)内に入る。そして、これらの入力量ベクトルは、目標入力量ベクトル集合U
cand,CORに統合される。
【0031】
さて次に、この目標入力量ベクトル集合U
cand,CORから、各反復ステップkにおいて、毎回新しい入力量ベクトルu
newが選択される。その際に、入力量空間、出力量空間、あるいは入力・出力量空間においてできるだけ均一な分布が得られるようにする。この背景には、ローカルモデルネットワークLMN、つまり概してモデルは、訓練データの近傍においては、訓練データから遠く離れたところに比べて一層正確であるということがある。訓練データができるだけ均一に配分されると、結果としてモデルの不確実性が低減される。こういった理由から、新たな入力量ベクトルu
newの選択には、距離に基づいた基準(S最適計画法(S−optimales Design)又は最大最小距離計画法(maximin distance design)としても知られている。)が適用される。この場合、距離に基づいた選択基準の目標は、設計点(Designpunkt)(ここでは、入力量及び/又は出力量)同志の間の最小距離を最大にすることである。これに関しては、以下の三つの距離に基づいた選択基準を定めることができる。
【0032】
入力量範囲における距離に基づいた選択基準:
目標入力量ベクトル集合U
cand,CORから、各入力量ベクトルu
cand,CORが、新たな入力量ベクトルu
newとして選択され、このベクトルは、集合U
app内の既知の入力量ベクトルu
appに対する最小のユークリッド距離ができるだけ大きくなるというもので、以下の式が成り立つ。
【0034】
この基準は、入力量範囲において、選択された入力量ベクトルの均一な分布をもたらす。
【0035】
出力量範囲における距離に基づいた選択基準:
先ず、現行の有効なモデルを用いて入力量ベクトル集合U
cand,CORに対して出力量y^(u
cand,COR)が計算される。新たな入力量ベクトルu
newは、以下の出力量を有する。
【0037】
つまり、この出力量は、既知の出力量に対する最小のユークリッド距離ができるだけ大きくなるというもので、対応関係にある新たな入力量ベクトルu
newは、以下の式により与えられる。
【0039】
この基準は、目標出力量範囲において、出力量の均一な分布をもたらす。
【0040】
入力量範囲/出力量範囲における距離に基づいた選択基準:
ここでは、既に選択された入力量ベクトルU
appが、対応関係にある出力量Y
appだけ補われて、
【0042】
となり、目標入力量ベクトル集合U
cand,CORは、対応関係にある推定出力量y^(U
cand,COR)だけ補われて、
【0044】
となる。新たな入力量ベクトルu
newは、この基準により次のように与えられる。
【0046】
ここでは、既知の入力量に対する最小のユークリッド距離ができるだけ大きくかつ対応関係にある出力量の、既知の出力量に対する最小のユークリッド距離ができるだけ大きい入力量が求められる。この基準は、入力量範囲における入力量の均一な分布と、目標出力量範囲における出力量の均一な分布とをもたらす。
【0047】
このように訓練されたローカルモデルネットワークLMN
finは、こうして、目標出力量範囲内で所望の精度(選択された停止条件により設定されている。)で技術的な系の出力yを推定することができる。訓練されたモデルネットワーク(LMN)は、こうして、例えば技術的な系の開発のために、例えば、出力量について定められた制限値が守られるように内燃機関の制御ユニットを校正するのに用いることができる。
【0048】
図2乃至4により、一次元の入力量uに依存する風呂桶状の関数f(y=f(u))に基づき、さらには、入力量範囲/出力量範囲における距離に基づいた選択基準に基づき、本発明による方法を具体的に示す。この関数fは、入力量範囲u=[0;0.2]及びu=[0.8;1]内で強い非線形の振る舞いを見せるとともに、入力量範囲u=[0.2;0.8]内では略真直ぐである。モデル(ローカルモデルネットワークLMN)が十分正確にパラメータ化されなければならない目標出力量範囲は、例えば、y
min=0.15及びy
max=1により定められるものとする。
図2中の曲線3により、集合U
app内の選択された三つの開始入力量u
startを有する開始モデルが示されている。二本の破線が目標出力量範囲の目印となっている。各軸に関して、入力範囲及び出力範囲における点の頻度がバーの形で示されている。方法プロセスに基づいて新たに算出された入力量u-
newが
図2に同じように示されている。
図3には、集合U
app内の7個の入力量の選択によるモデルと、現行のモデルの反応が出力量y
appの形で示されている。
図4は、集合U
app内の11個の入力量の選択によるモデルを示し、このモデルで、プロセスが終了させられる(それ以上新たな入力量u-
newが考慮されない。)。
図2乃至4より、決められた目標出力量範囲内で方法プロセスがモデルを体系的にパラメータ化(モデルのパラメータを決定)し、その結果、目標出力量範囲の中ではモデルは非常に正確である一方、この範囲の外では不正確であることが分かる。頻度分布より、重要な目標出力範囲に対し、入力範囲及び出力範囲において点の分布が非常に均一であることも分かる(選択された選択基準による。)。加えて、出力関数の二つの弧を均一にカバーできることが分かる。
【0049】
図5乃至7により、距離に基づいた様々な選択基準を、それぞれ11個の選択された入力量により比較する。
図5は、目標出力量範囲を用いない従来技術による方法での結果を示す。入力量は、確かに均一に分布しているが、いずれの入力量も目標出力範囲内の出力量でパラメータ化されなかったので、モデルが目標出力量範囲では役立たないことが分かる。
図6では、入力量範囲における上述の距離に基づいた選択基準が適用され、その結果、目標出力量範囲内に出力量を持つ4個の入力量が選択される。
図7では、出力量範囲における上述の距離に基づいた選択基準が適用され、その結果、目標出力量範囲内に出力量を持つ6個の入力量が選択される。
【0050】
図8には、さらに、異なる方法の平均二乗誤差(MSE)が示されている(対数目盛による。)。図中、曲線4は、目標出力量範囲を用いない方法に係るMSEを示し、曲線5は、入力量範囲における距離に基づいた選択基準を用いた方法を、曲線6は、出力量範囲における距離に基づいた選択基準を用いた方法を、そして曲線7は、入力量範囲/出力量範囲における距離に基づいた選択基準を用いた方法を示す。目標出力量範囲を同時に考慮した、距離に基づいた選択基準は、モデル化誤差(Modellfehler)を著しく改善する点で、目標出力量範囲なしの方法と比べてモデルの品質を高めることは明らかである。ここで、定性的には、入力量範囲/出力量範囲における距離に基づいた選択基準が、他の距離に基づいた選択基準よりも優れているようである。
目標出力量範囲を用いたモデルベースの実験計画は、効率的な方法であり、この方法によれば、技術的なプロセスのモデルが目標出力量範囲においてパラメータ化され、それにより入力量範囲が低減し、これが、目標出力量範囲内のモデル品質をより向上するのにつながる。同時に、これにより、同じモデル品質を得るのに要求される試験台実験の必要とされる回数が低減される。
【0051】
以下に、特定の回転数と特定の負荷のときに、入力量として、スロットルバルブの状態(S)、燃料圧(p)及び排気再循環(Abgasrueckfuehrung(EGR))(入力量ベクトルu)に依存した、内燃機関(出力量y)のNOx排出の形態による実際例を取り挙げ、本発明による方法を説明する。目標出力量範囲として、NO
x排出がy
min=0.1x10
−5Kg/s及びy
max=0.4x10
−5kg/sに定められる。基礎になるモデル(ここでは、例えばローカルモデルネットワーク(LMN)の形態)は、本発明による方法に基づいて、目標出力量範囲に対して体系的にパラメータ化される。
図9において明らかなように、このモデルにより、出力量が本発明による方法によって目標出力量範囲において推定される。図中、曲線8は、11個の選択された入力量に関する結果を、目標出力量範囲を用いない方法について示し、曲線9は、入力量範囲における距離に基づいた選択基準を用いた結果を、曲線10は、出力量範囲における距離に基づいた選択基準を用いた結果を、曲線11は、入力量範囲/出力量範囲における距離に基づいた選択基準を用いた結果を示す。最後に、
図10により、一定のスロットルバルブ状態S=0.1及び特定の回転数及び特定の負荷に対して、算出されたモデルにより推定されたNO
x排出が示されている。