【実施例】
【0060】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、専ら、本発明を例示するためのものである。本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明なことであろう。
【0061】
<実験例1.金属イオンの発熱能評価>
人体に摂取される経口用または注射剤用金属イオンは、塩に結合された結合物の形態であるか、或いは炭水化物(carbohydrate)またはタンパク質といった高分子と結合された結合物の形態である。金属イオンと結合される塩としては、クエン酸塩(citrate)、塩化物(chloride)、硫酸塩(sulfate)、フマル酸塩(fumarate)などを例示することができ、これによる結合物としては、硫酸第一鉄(ferrous sulfate)、フマル酸第一鉄(ferrous fumarate)、グルコン酸第一鉄(ferrous gluconate)などを例示することができる。
【0062】
金属イオンに結合される炭水化物としては、単糖類であるグルコン酸塩(gluconate)、二糖類であるスクロース(sucrose)、マルトース(maltose)、多糖類であるイソマルトシド(isomaltoside)、カルボキシマルトース(carboxymaltose)、デキストラン(dextran)、デンプン(starch)、セルロース(cellulose)などの糖類(saccharides)があり、金属イオンに結合されるタンパク質としては、トランスフェリン(transferrin)、アルブミン(albumin)などを例示することができる。
【0063】
本実験例では、金属イオンと塩の結合物である硫酸第一鉄(ferrous sulfate)の溶液を、次のとおり準備し、電磁波処理の後に温度を測定することにより、金属イオン結合物の発熱能を確認した。また、金属イオンと炭水化物の結合物であるグルコン酸鉄(iron gluconate)、マグネシウムスクロース(magnesium sucrose)、鉄スクロース(iron sucrose)、鉄イソマルトシド(iron isomaltoside)、鉄カルボキシマルトース(iron carboxymaltose)、鉄デキストラン(iron dextran)、鉄デンプン複合体(iron starch complex)の溶液を次のとおり準備し、電磁波処理の後に温度を測定することにより、金属イオン結合物の発熱能を確認した。
【0064】
硫酸第一鉄(ferrous sulfate)溶液は、1gのFeSO
47H
2Oを蒸留水10mlに入れて30分以上攪拌して溶かし、0.22μmのフィルターを通過させて製造した後、滅菌蒸留水で希釈して使用した。
【0065】
グルコン酸鉄(iron gluconate)溶液(グルコン酸第二鉄ナトリウム複合体(sodium ferric gluconate complex))は、Sanofi社のFerrlecit製品を滅菌蒸留水で希釈して使用した。
【0066】
マグネシウムスクロース(magnesium sucrose)溶液は、MgCl
2H
2O 83.6mgとスクロース(sucrose)150mgを蒸留水10mlに入れて30分以上攪拌して溶かし、0.22μmのフィルターを通過させて製造した後、蒸留水を用いて希釈して使用した。
【0067】
鉄スクロース(iron sucrose)溶液(水酸化第二鉄−スクロース複合体(ferric hydroxide sucrose complex))を得るためには、まず、砂糖100mgを蒸留水50mlに入れ、90℃で溶かした後、攪拌し続けながら5M NaOH1mlを添加してスクロース(sucrose)水溶液を製造した。この後、FeCl
3 0.9gを蒸留水50mlに入れて20分以上攪拌して溶かした0.01M FeCl
3水溶液を、90℃のスクロース(sucrose)水溶液に添加した。さらに、この後、5M NaOH溶液を1滴ずつ滴下してpH12に調整した。次に、80℃で2時間反応させた後、5,000rpmで5分間遠心分離して水酸化第二鉄−スクロース複合体(ferric hydroxide sucrose complex)を得、蒸留水で洗浄し、乾燥させた後に使用した。
【0068】
鉄イソマルトシド複合体(iron isomaltoside complex)、鉄カルボキシマルトース複合体(iron carboxymaltose complex)及び鉄デンプン複合体(iron starch complex)も、鉄スクロース(iron sucrose)を製造した方法にて、炭水化物のみを変えて製造して準備した。
【0069】
前記金属イオン結合物を金属イオン10mg/mlの濃度で準備した後、0.1mlの96ウェルプレートに3ウェルずつ分注した。この際、対照群としては蒸留水0.1mlを使用した。96ウェルプレートを、高周波温熱癌治療器(EHY−2000、Oncothermia)にて、100Wのエネルギードーズ(energy dose)で5分間露出させた後、5分後に温度を熱画像カメラ(E60、韓国レンタル、韓国)で測定し、電磁波処理の前と後の温度変化における差を表1に示した。
【0070】
【表1】
表1より、金属イオン炭水化物複合体に高周波を処理すると、対照群である蒸留水処理群よりも温度が3〜6℃以上上昇することを確認することができた。
【0071】
<実験例2.金属イオンのアポトランスフェリン結合能の評価>
金属イオンのアポトランスフェリン結合能を評価するために、鉄イオン(ferric iron、Fe III+)の濃度に応じてトランスフェリン結合能(Unsaturated Iron−Binding Capacity、UIBC)を次のとおり測定した。
【0072】
まず、鉄イオン水溶液を作るために、FeCl
3(Sigma Aldrich、USA)3.6gを蒸留水400mlに入れて20分以上攪拌して溶かした後、5M NaOH溶液を1滴ずつ滴下して攪拌し続けながらpH9に調整した。赤褐色の沈殿物が見えたら、90℃で2時間攪拌した後、5,000rpmで5分間遠心分離することにより、沈殿した水酸化第二鉄(ferric hydroxide)を得、蒸留水で洗浄した後、乾燥させた。粉末状の水酸化第二鉄(ferric hydroxide)を蒸留水に溶かして濃度1、10、50、200、500g/dLの鉄イオン水溶液(ferric hydroxide solution)を準備した。各濃度の鉄イオン水溶液にアポトランスフェリン(apotransferrin)(Sigma Aldrich、USA)を200mg/dLとなるように添加し、ボルテックス(vortex)により1分間混ぜた後、37℃で30分間アポトランスフェリン(apotransferrin)と鉄イオンを反応させた。
【0073】
アポトランスフェリンの鉄イオン結合能(Unsaturated Iron−binding capacity)を測定するために、フェロジン比色法(Ferrozine colorimetric method)を利用した。鉄標準液(iron standard)としては塩化第一鉄(Ferrous chloride)を塩酸ヒドロキシルアミン(Hydroxylamine hydrochloride)に500g/dLの濃度で準備し、実験群ではアポトランスフェリン(apotransferrin)と鉄イオンの反応液を準備した。まず、0.5Mのトリス緩衝液(Tris buffer)(pH8)2mlをすべての試験管に分注した。次に、ブランク(blank)の試験管には蒸留水1mlを入れ、標準液(standard)の試験管には0.5mlの蒸留水及び0.5mlの鉄標準液(iron standard)を入れ、テスト対象(test)の試験管には、アポトランスフェリン(apotransferrin)と鉄イオンの反応液0.5ml、及び0.5mlの鉄標準液(iron standard)を入れた。この後、ボルテックス(vortex)により1分間混合した。
【0074】
560nmにて分光光度計(spectrophotometer)の値をゼロとした後、吸光度A1を測定した。次に、16.6mM濃度のフェロジン-塩酸ヒドロキシルアミン(Ferrozine Hydroxylamine hydrochloride)溶液を50Lずつ入れた後、ボルテックス(vortex)により1分間混合した。すべての試験管を37℃で10分間培養した後、560nmにて吸光度A2を測定した。560nmでの吸光度A
560は、吸光度A2から吸光度A1を差し引いた値で計算し、表2に示した。
【0075】
UIBC(Unsaturated Iron−binding capacity)は次の式で計算された。
【0076】
UIBC=[standard conc.]−[ standard conc.]×Test A
560/Standard A
560
【0077】
【表2】
表2での如く、鉄イオンとアポトランスフェリンの混合溶液では、鉄イオンがアポトランスフェリンと結合してモノフェリック(monoferric)トランスフェリンとジフェリック(diferric)トランスフェリンになることで、鉄イオンとの結合能(Unsaturated Iron−binding capacity、UIBC)が500μg/dLから119μg/dLに減少することを確認することができた。
【0078】
<実験例3:金属イオンが非共有結合されたアポトランスフェリンの温度発熱能の評価>
「金属イオンが非共有結合されたアポトランスフェリン」(トランスフェリン)の発熱能を評価するために、鉄が結合されていないアポトランスフェリン、及び、鉄が結合されているアポトランスフェリンの水溶液に電磁波処理を行なった後、温度を測定した。鉄イオンが結合されていないアポトランスフェリン(Sigma Aldrich、USA)の水溶液を0、0.04、0.2、1、5mg/mlの濃度に希釈した後、各濃度ごとに0.1mlを96ウェルプレートに分注して準備した。
【0079】
鉄イオンが結合されたアポトランスフェリンを準備するためには、次のとおり鉄イオン水溶液とアポトランスフェリンとを反応させた。FeCl
3(Sigma Aldrich、USA)3.6gを蒸留水400mlに入れて20分以上攪拌して溶かした後、5M NaOH溶液を1滴ずつ滴下して攪拌し続けながらpH9に調整した。赤褐色の沈殿物が見えたら、90℃で2時間攪拌しながら培養した後、5,000rpmで5分間遠心分離することにより、沈殿した水酸化第二鉄(ferric hydroxide)を得、蒸留水で洗浄した後、乾燥させた。粉末状の水酸化第二鉄(ferric hydroxide)を蒸留水に溶かして濃度100μg/dLの鉄イオン水溶液(ferric hydroxide solution)を準備した。鉄イオン水溶液にアポトランスフェリンを500mg/dLとなるように添加し、ボルテックス(vortex)により1分間混ぜた後、37℃で30分間アポトランスフェリンと鉄イオンとを反応させた。鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン溶液を0、0.04、0.2、1、5mg/mlの濃度に希釈した後、各濃度ごとに0.1mlを96ウェルプレートに分注して準備した。
【0080】
アポトランスフェリン水溶液のプレート、および鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン(トランスフェリン)水溶液のプレートを、高周波温熱癌治療器(EHY−2000、Oncothermia)にて100Wのエネルギードーズ(energy dose)で3分間曝す前と後の温度を熱画像カメラ(E60、韓国レンタル、韓国)で測定し、その温度変化における差を
図1〜
図4に示した。
【0081】
図1〜
図4に示すように、アポトランスフェリン水溶液の電磁波処理前後の温度変化は、すべての処理濃度で3℃未満に維持されたのに対し、鉄イオンが結合されているアポトランスフェリン(トランスフェリン)水溶液の電磁波処理前後の温度変化は、1mg/mlで4.4℃上昇し、5mg/mlでは10.9℃上昇したことを確認することができた。
【0082】
<実験例4:金属イオンが非共有結合されたアポトランスフェリンのin vitro癌細胞温度上昇能の評価>
金属イオンが非共有結合されたアポトランスフェリンによる温度上昇能をin vitroの細胞実験で評価した。トランスフェリン受容体が過剰発現されている癌細胞株NCI−H460(Califer Life Sciences)を培養した後、濃度1×10
3cells/mlの細胞懸濁液0.1mlを96ウェルプレートに分注し、37℃のCO
2培養器で12時間培養した。また、対照群としてヒト正常細胞のストロマ細胞(stromal cell)を培養して濃度3×10
3cells/mlの0.1mlを96ウェルプレートに分注し、37℃のCO
2培養器で12時間培養した。
【0083】
用意された正常細胞株プレート(plate)と癌細胞株プレート(plate)のそれぞれに、鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン(トランスフェリン)水溶液を0、0.04、0.2、1または5mg/mlとなるように添加した後、37℃のCO
2培養器で4時間培養した。トランスフェリンと細胞培養を完了したプレートをDMEM培地で洗浄して、細胞内に流入していないトランスフェリンを除去した。次いで、各プレートを高周波温熱癌治療器(EHY−2000、Oncothermia)にて100Wのエネルギードーズ(energy dose)で3分間曝したた後、温度変化を熱画像カメラ(E60、韓国レンタル、韓国)で測定し、その結果を
図5〜
図8に示した。
【0084】
図5〜
図8に示すように、正常細胞株における電磁波処理前後の温度変化は、すべての処理濃度で7℃前後に維持されたのに対し、癌細胞株における電磁波処理前後の温度変化は、1mg/mlで11.9℃上昇し、5mg/mlでは12.6℃上昇したことを確認することができた。
【0085】
すなわち、
図5〜
図8より、トランスフェリンを投与した後で電磁波を処理する場合、トランスフェリンの濃度に応じた温度上昇が正常細胞株よりも癌細胞株にさらに選択的であることを確認することができた。
【0086】
<実験例5:金属イオンのin vivo癌組織蓄積の評価>
金属イオンの投与時に実際に癌組織に蓄積されるかをin vivo動物実験で評価するために、まず、癌移植(tumor xenograft)動物モデルを次のとおり作製した。肺癌細胞株NCI−H460−luc2(Califer Life Sciences)を培養した後、5×10
6の細胞を6〜8週齢の雌BALB/c無胸腺ヌードマウス(athymic nude mouse)(ダムルサイエンス製)の皮下に注射した後、10日程度育てることで、癌組織が100mm
3以上成長するようにして癌移植(tumor xenograft)動物モデルを作製した。
【0087】
確立された癌移植(tumor xenograft)BALB/c無胸腺ヌードマウスに、実験例1で製造されたマグネシウムスクロース(magnesium sucrose)、鉄スクロース(iron sucrose)及び鉄デキストラン(iron dextran)の金属イオン水溶液を0.2mg/mlの濃度に希釈した後、1mg/kgの用量となるように0.1ml静脈注射した。24時間経過の後、ICP−MS測定のために、各組織を1g採取して氷浴で組織粉砕機によって粉砕した後、粉砕液1mlを−60℃、7μmHgの真空状態で24時間乾燥させた。乾燥した粉末に2mlの6N HClを添加した後、密閉されたガラス反応器の中に入れ、55℃の培養器で培養した。12時間以上経過した後、各試料をボルテックス(vortex)し、1,000rpmで15分間遠心分離させることにより、上澄み液を窒素ガスで乾燥させ、さらに0.01N HClを1ml入れてボルテックス(vortex)した後、1,000rpmで15分間遠心分離した。上澄み液を回収した後、正常組織と癌組織における金属イオンの濃度をICP−MS (Inductively coupled plasma mass spectrometry;Varian 800−MS、Palo Alto、US)で測定した。
【0088】
表3は、マグネシウムスクロース(magnesium sucrose)を、癌が誘導されたマウス(Tumor xenograft mouse)に投与した後、正常組織と癌組織の部位に蓄積された金属イオンの濃度をICP−MSで測定した結果である。
【0089】
【表3】
表3に示すように、マグネシウムスクロースを投与した際に癌組織のマグネシウムイオン(magnsium ion)の濃度が2.4倍以上増加した。
【0090】
表4は、鉄スクロース(iron sucrose)を、癌が誘導されたマウス(Tumor xenograft mouse)に投与した後、正常組織と癌組織の部位に蓄積された金属イオンの濃度をICP−MSで測定した結果である。
【0091】
【表4】
表4に示すように、鉄スクロース(iron scrose)を投与した際に癌組織の鉄イオン(iron ion)濃度が3.3倍以上増加し、これは肝、心臓、腎臓、胃、脳などの主要臓器よりも高かった。
【0092】
表5は、鉄デキストラン(iron dextran)を、癌が誘導されたマウス(Tumor xenograft mouse)に投与した後、正常組織と癌組織の部位に蓄積された金属イオンの濃度をICP−MSで測定した結果である。
【0093】
【表5】
表5に示すように、鉄デキストラン(iron dextran)を投与した際に癌組織における鉄イオンの濃度が対照群に比べて3.4倍以上増加し、これは肝、腎臓、心臓、胃、脳などの主要臓器での増加率よりも著しく高かった。
【0094】
<実験例6:金属イオンが非共有結合されたアポトランスフェリンのin vivo癌組織蓄積能の評価>
「金属イオンが非共有結合されたアポトランスフェリン」(トランスフェリン)の癌組織蓄積能を評価するために、鉄が結合されているトランスフェリンの水溶液をマウスに投与した後、正常組織と癌組織における金属イオンの濃度を測定した。鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン(トランスフェリン)の水溶液を4mg/mlにて準備した後、16mg/kgの用量で0.1ml静脈注射した。24時間経過の後、実験例5と同様の方法で各組織を採取し、金属イオンの濃度をICP−MS(Inductively coupled plasma mass spectrometry;Varian 800−MS、Palo Alto、US)で測定した。
【0095】
表6は、「鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン」(トランスフェリン)を、癌が誘導されたマウス(Tumor xenograft mouse)に投与した後、正常組織と癌組織部位に蓄積された鉄イオンの濃度をICP−MSで測定した結果である。
【0096】
【表6】
表6に示すように、鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン(トランスフェリン)を投与した際に癌組織における鉄イオンの濃度が対照群に比べて3.2倍以上増加し、これは肝、腎臓、心臓、胃、脳などの主要臓器における増加率よりも著しく高かった。
【0097】
<実施例1:温熱治療用感作剤の投与および電磁波を利用した癌温熱治療>
癌細胞は、非正常な分裂を継続すべく、急速な細胞分裂に必要な栄養成分を急激に受け入れるが、代謝調節能が低い。実際、癌細胞は、トランスフェリン受容体を過剰発現させ、細胞分裂に必要な鉄を多く受け入れるが、熱調節能に劣り、正常細胞に比べて高熱に、相対的に敏感であることが知られている。したがって、癌細胞にのみ集中的に熱を加えると、癌細胞の選択的死滅が可能である。癌細胞に対する標的指向性を有するトランスフェリンは、癌細胞に過剰発現されたトランスフェリン受容体を介して癌細胞に鉄を集中的に伝達するが、この際、癌細胞に電磁波処理を行なう際の温度上昇による癌細胞死滅が可能であろうと予測された。
【0098】
本実施例1では、実験例で優れた温度上昇能が確認された金属イオン結合物を温熱治療用感作剤として用いて癌移植(tumor xenograft)動物モデルにおける温熱治療時の抗癌効能の可能性を確認した。
【0099】
このため、肺癌細胞株NCI−H460−luc2(Califer Life Sciences)を培養した後、5×10
6の細胞を6〜8週齢の雌BALB/c無胸腺ヌードマウス(athymic nude mouse)(ダムルサイエンス製)の皮下に注射した後、10日程度育てることで癌組織が100mm
3以上成長するようにして、癌の治療効能を研究するための癌移植(tumor xenograft)動物モデルを作製した。
【0100】
次に、温熱治療用感作剤組成物である鉄スクロース(iron sucrose)を実験例1の方法で準備した後、確立された癌移植(tumor xenograft)マウスに1mg/kgの用量となるように濃度0.2mg/mlの鉄スクロース(iron sucrose)水溶液を0.1ml静脈内注射した。
【0101】
また、温熱治療用感作剤組成物である「鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン」(トランスフェリン)を実験例3の方法で準備した後、確立された癌移植(tumor xenograft)マウスに20mg/kgの用量となるように濃度5mg/mlのトランスフェリン(transferrin)水溶液を0.1ml静脈注射した。
【0102】
対照群には生理食塩水を投与した。投与4時間後、高周波温熱癌治療器(EHY−2000、Oncothermia)にて100Wのエネルギードーズ(energy dose)で3分間照射した後、正常組織と癌組織の温度を熱画像カメラ(E60、韓国レンタル、韓国)で撮影し、その結果を
図9〜
図11に示した。
【0103】
図9〜
図11に示すように、対照群の場合、電磁波処理前後の正常組織と癌組織における温度がいずれも1℃程度上昇したレベルであって差がなかった。しかし、鉄スクロース(iron sucrose)投与群の場合、電磁波処理前後の温度変化が、正常組織では1℃、癌組織では1.9℃であって差があり、鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン(トランスフェリン)投与群の場合も、電磁波処理前後の温度変化が、正常組織では1℃、癌組織では2℃であって差があった。すなわち、
図9〜
図11から、温熱治療用感作剤を投与したマウスの癌組織に電磁波処理を行う場合、癌組織に伝達された鉄イオンの発熱に応じて正常組織よりも癌組織で温度上昇が増加することを確認することができた。
【0104】
次に、前記金属イオン結合物を温熱治療用感作剤として用いて温熱治療時の癌治療可能性を確認した。肺癌細胞株NCI−H460−luc2(Califer Life Sciences)を培養し、5×10
6の細胞を6〜8週齢の雌BALB/c無胸腺ヌードマウス(athymic nude mouse)(ダムルサイエンス製)の皮下に注射した後、10日程度育てることで癌組織が100mm
3以上成長するようにして、癌の治療効能を研究するための癌移植(tumor xenograft)動物モデルを作製した。
【0105】
次に、温熱治療用感作剤組成物である金属イオン結合物を実験例1の方法で準備した後、確立された癌移植(tumor xenograft)マウスに金属イオン単糖類結合物(iron gluconate)、金属イオン二糖類結合物(iron sucrose)、金属イオンオリゴ糖結合物(iron isomaltoside)、金属イオン多糖類結合物(iron carboxymaltose、iron dextran、iron starch)を1mg/kgの用量となるように0.1ml静脈注射した。
【0106】
また、温熱治療用感作剤組成物である鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン(トランスフェリン)を実験例3の方法で準備した後、確立された癌移植(tumor xenograft)マウスに20mg/kgの用量となるように0.1ml静脈注射した。
【0107】
4時間経過の後、高周波温熱癌治療器(EHY−2000、Oncothermia)にて100Wのエネルギードーズ(energy dose)で10分間温熱治療する過程を週3回、4週間にわたって行った。この際、無処理群と生理食塩水処理群を対照群とした。最終の週に癌組織の大きさを分析するために、バイオ蛍光イメージング(bioluminescence imaging)を行った。ルシフェラーゼ(luciferase)発現癌細胞株であるNCI−H460−luc2を発光させるために、D−ルシフェリン(luciferin)(Xenogen、USA)を150mgルシフェリン/kg/dの濃度でマウスに腹腔注射し、イソフルランガス(isoflurane gas)と酸素を混合して吸入麻酔させた後、Xenogen imager(IVIS 200)で、発光した癌細胞を重畳撮影し、Igor Pro imaging analysis softwareを用いて分析し、その結果を
図12に示した。
【0108】
図12は、本発明の実施例1によって、癌が誘導されたマウス(Tumor xenograft mouse model animal)に無処理(A)、生理食塩水(B)、グルコン酸鉄(iron gluconate(C))、鉄スクロース(iron sucrose(D))、鉄カルボキシマルトース(iron carboxymaltose(E))、鉄デキストラン(iron dextran(F))、鉄デンプン(iron starch(G))およびトランスフェリン(transferrin(H))を投与し、高周波温熱治療後のマウスモデルの癌組織の大きさをバイオ蛍光で分析した結果である。
【0109】
図12に示すように、無処理群(A)および生理食塩水処理群(B)とは異なり、金属イオン結合物投与群(C〜H)の場合、温熱治療後の癌の大きさが明らかに減少することを確認することができた。特に、鉄スクロース(iron sucrose(D))、鉄デキストラン(iron dextran(F))およびトランスフェリン(transferrin(H))処理群では、温熱治療による癌治療効果に最も優れていた。
【0110】
最後に、温熱治療感作剤として使用するときに抗癌効果に最も優れるものと確認された鉄スクロース(iron sucrose)、鉄デキストラン(iron dextran)およびトランスフェリン(transferrin)を、温熱治療用感作剤として用いて、電磁波を利用した温熱治療時の癌の完治可能性の有無を確認した。このため、tumor xenograft BALB/c無胸腺ヌードマウスに生理食塩水、鉄デキストラン(iron dextran)、鉄スクロース(iron sucrose)、および鉄イオンが結合されたアポトランスフェリン(transferrin)水溶液を、一日置きに週3回静脈内注射し、4時間経過の後、高周波温熱癌治療器(EHY−2000、Oncothermia)によって100Wのエネルギードーズ(energy dose)で30分以上温熱治療する過程を、4週間行なうとともに、1週間隔で癌組織の大きさをモニタリングした。鉄デキストラン(iron dextran)と鉄スクロース(iron sucrose)の投与群には、それぞれ濃度0.2mg/mlの鉄デキストラン(iron dextran)または鉄スクロース(iron sucrose)の水溶液を0.1ml静脈注射し、トランスフェリン(transferrin)投与群には、濃度5mg/mlのトランスフェリン(transferrin)水溶液を0.1ml静脈内注射した。このとき、無処理群と生理食塩水投与群を対照群とした。
【0111】
癌組織の大きさを分析するためには、バイオ蛍光イメージング(bioluminescence imaging)を1週間隔で行い、Igor Pro imaging analysis softwareを用いて分析した後、その結果を
図13に示した。
【0112】
図13に示すように、最初の癌組織の大きさと4週間後の癌組織の大きさをバイオ蛍光イメージで比較した結果、無処理対照群に比べて、生理食塩水処理群の場合は初期には多少癌の成長を阻害するかのように見えたが、時間経過に伴って効能が減少した。鉄デキストラン(iron dextran)を感作剤として投与した実験群と鉄スクロース(iron sucrose)を感作剤として投与した実験群の場合は、電磁波を利用した温熱治療時の癌の成長速度が明らかに減少することを確認することができた。トランスフェリン投与群の場合には、明らかに癌の成長を抑制し、大きさを減少させるが、試験終了時点である4週間後には完全に無くなるという、驚くべき抗癌効能を確認することができた。
【0113】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好適な実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求の範囲とそれらの等価物によって定義されるというべきである。