(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
接着剤組成物は、幅広い目的に有用である。接着剤組成物の有用な種類の1つは、感圧接着剤(PSA)である。PSAが高いタック値を有し、かつ優秀な剪断性能も有すれば望ましいであろう。しかしながら、これまでに、PSAが高いタックを有する場合、望ましい水準に満たない剪断性能を有することが一般的に観察されている。
【0002】
米国第2013/0065070号は、イタコン酸エステルモノマーから得ることができるビニルポリマーを含有する水性乳濁液、かかる水性乳濁液を作製するためのプロセス、該水性乳濁液から得られるコーティング、及びコーティングされた基材を記載する。米国第2013/0065070号により開示されるビニルポリマーは、45〜99重量%のイタコン酸エステルモノマーを含有する。許容可能な剪断性能レベルを維持し、かつ増加したタック値を有する接着剤組成物を提供することが所望される。基材を一緒に結合するためにかかる接着剤組成物を使用することも所望される。
【0003】
以下は、本発明の陳述である。
【0004】
本発明の第1の態様は、ポリマーを含む水性接着剤組成物であって、
(a)該ポリマーの乾燥重量に基づいて80〜99重量%の、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位と、
(b)該ポリマーの乾燥重量に基づいて0.1〜10重量%の、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの混合物の重合単位と、
(c)該ポリマーの乾燥重量に基づいて0.1〜15重量%の、イタコン酸の1つ以上のジアルキルジエステルの重合単位と、
(d)該ポリマーの乾燥重量に基づいて0〜20重量%の、1つ以上の他のモノマーの重合単位と、を含むポリマーを含む、該水性接着剤組成物である。
【0005】
本発明の第2の態様は、基材を一緒に結合する方法であって、
(A)水性接着剤組成物の層を第1の基材に適用することと、
(B)該水性接着剤組成物の該層を乾燥させて乾燥接着剤層を生成することと、
(C)該乾燥接着剤層を第2の基材と接触させることと、を含み、
該接着剤組成物が、
(a)1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位と、
(b)アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの混合物の重合単位と、
(c)イタコン酸の1つ以上のジアルキルジエステルの重合単位と、
(d)任意選択的に、1つ以上の他のモノマーの重合単位と、を含むポリマーを含む、方法である。
【0006】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0007】
本明細書において使用される場合、以下の用語は、文脈による別段の指示が明確にない限り、指定された定義を有する。
【0008】
材料のガラス転移温度(Tg)は、試験法ASTM D7426−08(American Society of Testing and Materials,Conshohocken,PA,USA)に従って、中点法及び10℃毎分の温度走査速度を使用する示差走査熱量測定によって決定される。
【0009】
本明細書において使用される場合、「ポリマー」は、より小さな化学的繰り返し単位の反応生成物からなる比較的大きな分子である。ポリマーは、直鎖状、分岐鎖状、星形、ループ状、超分岐鎖状、架橋状、またはそれらの組み合わせである構造を有し得、ポリマーは、1種類の繰り返し単位を有してもよく(「ホモポリマー」)、または、2種類以上の繰り返し単位を有してもよい(「コポリマー」)。コポリマーは、ランダムに、順序正しく、ブロック状に、他の配置で、または任意の混合物もしくはその組み合わせにおいて配置された、様々な種類の繰り返し単位を有し得る。
【0010】
ポリマー分子量は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、ゲル浸透クロマトグラフィーすなわちGPCとも呼ばれる)などの標準的な方法によって測定され得る。ポリマーは、1000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。ポリマーは極めて高いMwを有し得、いくつかのポリマーは1,000,000超のMwを有し、典型的なポリマーは1,000,000以下のMwを有する。いくつかのポリマーは架橋されており、架橋ポリマーは無限のMwを有すると見なされる。
【0011】
ポリマーのゲル含有量及び膨潤度(DS)は、次のように定義される。
【0012】
【数1】
【0013】
式中、W
0は、ゲル含有量の試験を行う前のポリマーの乾燥重量であり、W
1は、ポリマーの乾燥重量の重量を単位として150倍の量のメチルエチルケトンに30℃で24時間浸漬させた後のポリマーの重量であり、W
2は、完全に乾燥した膨潤ポリマーの重量である。
【0014】
本明細書において使用される場合、「ポリマーの重量」とは、ポリマーの乾燥重量を意味する。
【0015】
互いと反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、本明細書では「モノマー」として知られる。そのように形成された繰り返し単位は、本明細書ではモノマーの「重合単位」として知られる。
【0016】
ビニルモノマーは構造Iを有し、
【0017】
【化1】
【0018】
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4の各々は独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基など)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、別の置換もしくは非置換の有機基、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0019】
ビニルモノマーには、例えば、スチレン、置換スチレン類、ジエン類、エチレン、他のアルケン類、ジエン類、エチレン誘導体類、及びそれらの混合物が含まれる。エチレン誘導体類には、例えば、置換もしくは非置換のアルカノン酸類のエテニルエステル類(例えば、酢酸ビニル及びネオデカン酸ビニルを含む)、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸類、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、塩化ビニル、ハロゲン化アルケン類、及びそれらの混合物の非置換型もしくは置換型が含まれる。本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。「置換(の)」とは、少なくとも1つの結合した化学基、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基類、及びそれらの組み合わせなどを有することを意味する。置換モノマーには、例えば、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー、ヒドロキシル基類を有するモノマー、他の官能基類を有するモノマー、及び官能基類の組み合わせを有するモノマーが含まれる。(メタ)アクリレート類は、(メタ)アクリル酸の置換もしくは非置換のエステル類またはアミド類である。
【0020】
本明細書において使用される場合、アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の脂肪族エステル類、脂肪族基上に1つ以上の置換基を有する(メタ)アクリル酸の脂肪族エステル類、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、及びそれらの混合物から選択されるモノマーである。
【0021】
本明細書において使用される場合、「アルキル(メタ)アクリレートモノマー」は構造IIを有し、
【0022】
【化2】
【0023】
式中、R
5は、水素またはメチルであり、R
6は、アルキル基である。本明細書において使用される場合、「アルキルアクリレートモノマー」は構造IIを有し、R
5は水素である。本明細書において使用される場合、「アルキルメタクリレートモノマー」は構造IIを有し、R
5はメチルである。
【0024】
本明細書において使用される場合、「イタコン酸のジアルキルジエステル」は構造IIIを有し、
【0025】
【化3】
【0026】
式中、R
7及びR
8の各々は、1個以上の炭素原子を有するアルキル基である。R
7及びR
8は互いと同一であってもよく、または互いと異なっていてもよい。
【0027】
本明細書において使用される場合、「アクリル」ポリマーは、重合単位の30%以上がアクリルモノマーから選択され、また重合単位の5%以上がアクリルモノマー及びビニル芳香族モノマーからなる群から選択されるポリマーである。これらの百分率は、ポリマーの重量に基づく重量を単位とする。
【0028】
粘着付与剤は、500〜10,000の分子量を有し、かつ0℃以上のガラス転移温度を有する有機化合物である。
【0029】
感圧接着剤(PSA)は、接着剤と基材とを接触させるように圧力が適用されると基材との結合を形成する接着剤である。この結合は、さらなる材料の添加または熱の適用を伴わずに生じる。本明細書において使用される場合、感圧接着剤物品は、感圧接着剤が第1の基材に接着され、かつ第2の基材との接触を作るためにPSAの表面(「利用可能面」)が利用可能である物品である。PSAの利用可能面は、剥離材料と接触している場合も、接触していない場合もある。剥離材料は、PSAと弱い結合を形成し、かつ利用可能面が露出するように容易に除去され得る材料である。
【0030】
本明細書において組成物は、該組成物が、該組成物の重量に基づいて25重量%以上の量の水を含有する場合に「水性」であると見なされる。
【0031】
水性乳化重合により作製されるポリマーは、本明細書では「ラテックス」ポリマーとして知られる。ラテックスポリマーは、連続水性媒体の全体に分布した粒子として存在する。
【0032】
物質は、本明細書では、その物質の量が本発明の組成物の総重量に基づいて0.1重量%未満である場合に「無視できる量」で存在するとされる。
【0033】
本明細書において、ある物質が0%〜X%で組成物中に存在すると記載されるとき、その物質が完全に不在であるか、または、存在する場合、X%未満の量で存在するかのいずれかであることが意図される。
【0034】
本発明の組成物はポリマーを含有する。好ましくは、このポリマーは、連続液体媒体中に分散された粒子の形態で存在する。好ましくは、連続液体媒体中の水の量は、連続液体媒体の重量に基づく重量を単位として50%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上である。好ましくは、ポリマー粒子の体積平均の平均粒径は、50nm〜1,000nmである。
【0035】
本発明において存在するポリマーは、モノマー(a)の重合単位を含有する。モノマー(a)は、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーであり、その構造は上記の構造IIに示されている。好ましくは、このポリマーは、少なくとも1つのアルキルアクリレートモノマーの重合単位を含有する。好ましくは、R
6が4個以上の炭素原子を有するアルキル基である、少なくとも1つのアルキルアクリレートモノマーが使用される。好ましくは、このポリマーは、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、またはそれらの混合物の重合単位を含有し、より好ましくは、このポリマーは、ブチルアクリレートの重合単位、及び2−エチルヘキシルアクリレートの重合単位を含有する。好ましくは、モノマー(a)の重合単位の量は、ポリマーの乾燥重量に基づく重量を単位として60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、85%以上である。好ましくは、モノマー(a)の重合単位の量は、ポリマーの乾燥重量に基づく重量を単位として95%以下である。
【0036】
好ましくは、このポリマーは、アルキルメタクリレートモノマーの重合単位を含有しないか、さもなければこのポリマーは、ポリマーの乾燥重量に基づく重量を単位として15%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下である量のアルキルメタクリレートモノマーの重合単位を含有するかのいずれかである。好ましくは、アルキルメタクリレートが使用される場合、このアルキルメタクリレートは、R
6が3個以下の炭素原子を有するアルキル基であるものである。より好ましくは、アルキルメタクリレートが使用される場合、このアルキルメタクリレートは、メチルメタクリレートである。
【0037】
本発明において存在するポリマーは、1つ以上のモノマー(b)の重合単位を含有する。モノマー(b)は、アクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの混合物である。好ましくは、モノマー(b)はアクリル酸である。モノマー(b)の重合単位の量は、ポリマーの乾燥重量に基づく重量を単位として0.1%以上、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.7%以上である。モノマー(b)の重合単位の量は、ポリマーの乾燥重量に基づく重量を単位として10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2.5%以下である。
【0038】
本発明において存在するポリマーは、モノマー(c)の重合単位を含有する。モノマー(c)は、イタコン酸の1つ以上のジアルキルジエステルであり、その構造は上記の構造IIIに示されている。好ましくは、R
7及びR
8の一方または両方が、4個以上の炭素原子を有するアルキル基である。好ましくは、R
7及びR
8の一方または両方が、8個以下の炭素原子を有するアルキル基である。好ましくは、R
7及びR
8は同一である。
【0039】
ポリマー中のモノマー(c)の重合単位の量は、ポリマーの乾燥重量に基づく重量を単位として0.1%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上である。ポリマー中のモノマー(c)の重合単位の量は、ポリマーの乾燥重量に基づく重量を単位として15%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下である。
【0040】
本発明において存在するポリマーは、任意選択的に、モノマー(d)の重合単位を含有する。モノマー(d)は、モノマー(a)、(b)、及び(c)と共にコポリマーを形成することができ、かつモノマー(a)、(b)、(c)、及び(d)の全てと異なる任意のモノマーである。モノマー(d)が存在するとき、モノマー(d)は、例えば、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、置換アルキル(メタ)アクリレート類、イタコン酸、イタコン酸のアルキルモノエステル類、及びそれらの混合物であり得る。好ましくは、モノマー(d)の重合単位の量は、乾燥ポリマーの重量に基づく重量を単位として0%〜20%、より好ましくは0%〜10%、より好ましくは0%〜5%である。より好ましくは、モノマー(d)は不在である。
【0041】
モノマー(d)は、任意選択的に、1つ以上の多エチレン性不飽和モノマーを含有する。好ましくは、多エチレン性不飽和モノマーの重合単位の量は、0%〜3%、より好ましくは0%〜1%、より好ましくは0%〜0.2%、より好ましくは0%である。
【0042】
好ましくは、ポリマー中のアクリロニトリルの重合単位の量は、ゼロまたは無視できる量のいずれか、より好ましくはゼロである。好ましくは、ポリマー中の炭化水素モノマーの重合単位の量は、ゼロまたは無視できる量のいずれか、より好ましくはゼロである。好ましくは、ポリマー中のハロゲン化モノマーの重合単位の量は、ゼロまたは無視できる量のいずれか、より好ましくはゼロである。好ましくは、ポリマー中のアクリルアミドの重合単位の量は、ゼロまたは無視できる量のいずれか、より好ましくはゼロである。好ましくは、ポリマー中の(メタ)アクリル酸のアルコキシ置換アルキルエステル類の重合単位の量は、ゼロまたは無視できる量のいずれか、より好ましくはゼロである。
【0043】
モノマー(d)は、任意選択的に、イタコン酸の1つ以上の低級アルキルジエステルを含有する。イタコン酸の低級アルキルジエステルは、上記の構造IIIを有し、R
7及びR
8の両方が、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である。好ましくは、イタコン酸の低級アルキルジエステル類の重合単位の量は、ポリマーの重量に基づく重量を単位として0%〜1%、より好ましくは0%〜0.5%、より好ましくは0%〜0.1%、より好ましくは0%である。
【0044】
モノマー(d)は、任意選択的に、イタコン酸の1つまたはアルキルモノエステルを含有する。イタコン酸のアルキルモノエステルは、上記の構造IIIを有し、R
7及びR
8の一方が水素であり、他方がアルキル基である。好ましくは、イタコン酸のアルキルモノエステル類の重合単位の量は、ポリマーの重量に基づく重量を単位として0%〜5%、より好ましくは0%〜2%、より好ましくは0%〜1%、より好ましくは0%〜0.5%、より好ましくは0%である。
【0045】
好ましくは、モノマー(a)、(b)、(c)、及び(d)の量は、ポリマーの乾燥重量に基づく重量を単位として合計で100%になる。
【0046】
好ましくは、本発明の組成物中の上記のポリマーの量は、組成物の総重量に基づくポリマーの乾燥重量を単位として20%以上、より好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上である。好ましくは、本発明の組成物中の上記のポリマーの量は、組成物の総重量に基づくポリマーの乾燥重量を単位として60%以下である。
【0047】
好ましくは、ポリマーのゲル含有量は、80%未満、より好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下である。好ましくは、ポリマーの膨潤度は、16以上、より好ましくは20以上、より好ましくは30以上である。ポリマーがメチルエチルケトン中で完全に可溶性である場合、膨潤度は測定され得ず、そのような場合、膨潤度は100超であると見なされる。
【0048】
好ましくは、ポリマーのTgは、0℃以下、より好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20℃以下、より好ましくは−30℃以下である。好ましくは、ポリマーのTgは、−100℃以上である。
【0049】
好ましくは、ポリマーのMwは、50,000以上、より好ましくは70,000以上である。好ましくは、ポリマーのMwは、1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下である。
【0050】
本発明の組成物は、任意の方法によって作製されてよい。好ましくは、ポリマーは、水性乳化重合のプロセスによって作製される。好ましくは、ポリマーは、ラテックスポリマーである。
【0051】
本発明の組成物は、接着剤組成物として有用である。好ましくは、本発明の組成物は、感圧接着剤組成物として有用である。好ましくは、本発明の組成物の層が基材に適用されるとき、本組成物のその層が乾燥するかまたは乾燥させられた後、乾燥接着剤層を生成すること。好ましくは、その乾燥接着剤層は、感圧接着剤である。
【0052】
本発明の組成物は、任意選択的に、1つ以上の粘着付与剤を含有する。いくつかの実施形態(本明細書では「粘着付与剤なしの」実施形態)では、粘着付与剤の量は、ゼロまたは無視できる量のいずれか、より好ましくはゼロである。他の実施形態、(本明細書では「粘着付与剤ありの」実施形態では)、粘着付与剤の量は、組成物の総重量に基づく重量を単位として、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上である。粘着付与剤ありの実施形態では、粘着付与剤の量は、組成物の総重量に基づく重量を単位として、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下である。
【0053】
本発明の組成物の層が基材に適用されるとき、それは任意の方法によって乾燥されてよい。例えば、この層は、移動する空気に任意選択的に晒されて、25℃で乾燥させられてよい。好ましくは、水の蒸発を加速するために、この層に熱が適用される。
【0054】
好ましくは、本発明の乾燥接着剤層の厚さは、2マイクロメートル以上、より好ましくは5マイクロメートル以上である。好ましくは、本発明の乾燥接着剤層の厚さは、2mm以下、より好ましくは1mm以下である。
【0055】
本発明の組成物は、様々な方法で基材を結合するために使用され得る。いくつかの例示的な実施形態は次のとおりである。
【0056】
一実施形態(本明細書では「実施形態I」)では、本発明の組成物は、剥離面に適用され、乾燥される。次いで、第2の基材が乾燥接着剤層と接触させられ、好ましくは圧力が適用される。かかる実施形態では、第2の基材は、プラスチックフィルムの紙のいずれかであることが好ましい。乾燥接着剤層が第2の基材に良好に接着することが企図される。第2の基材がプラスチックフィルムであるとき、乾燥接着剤層は、例えば、コロナ処理またはプライマーの適用など、接着を強化するように予め処理されているフィルムの表面と接触させられるのが好ましい。かかる実施形態では、次いで、例えば剥がすことによって剥離面が除去され、次いで、乾燥接着剤層が第3の基材と接触させられ、好ましくは圧力が適用される。第2の基材及び第3の基材が一緒に乾燥接着剤層によって有用に結合されることが企図される。
【0057】
好ましくは、実施形態Iにおいて本発明の組成物は、粘着付与剤を含有しないか、または無視できる量の粘着付与剤を含有し、より好ましくは、実施形態Iにおいて本発明の組成物は、粘着付与剤を含有しない。
【0058】
別の実施形態(本明細書では「実施形態II」)では、本発明の組成物は、第1の基材に適用され、乾燥される。実施形態IIでは、第1の基材は実施形態Iの第2の基材と同じである。次いで、乾燥接着剤層が剥離層と接触させられる。例えば、第1の基材は、乾燥接着剤層と接触している側面の反対の側面上に剥離面を有するプラスチックフィルムであり得、乾燥組成物の層を備えた第1の基材は、巻かれてテープを形成し得る。別の実施例では、第1の基材は紙であってよく、乾燥接着剤層は、第2の基材上の剥離面と接触させられてよい。剥離面は乾燥接着剤層との接触から解除され得、次いで乾燥接着剤層が最終の基材と接触させられて、第1の基材と最終の基材との間に有用な結合を形成し得ることが企図される。
【0059】
好ましくは、実施形態IIにおいて、本発明の組成物は粘着付与剤を含有する。
【0060】
以下は本発明の実施例である。
【0061】
以下の用語及び略語が以下の実施例で使用される。
BA=ブチルアクリレート
2−EHA=2−エチルヘキシルアクリレート
MMA=メチルメタクリレート
DBI=イタコン酸ジブチル
APS=過硫酸アンモニウム
NaPS=過硫酸ナトリウム
ラテックス1=アクリルラテックス、粒径は100nm、固形分重量=45%
A−102=CytecによるAEROSOL(商標)A−102界面活性剤、モノエステルスルホサクシネート類。
DS−4=RhodiaによるRHODACAL(商標)DS−4界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム。
t−BHP=tert−ブチルヒドロペルオキシド
t−AHP=tert−アミルヒドロペルオキシド
FINAT=Federation Internationale des fabricants et transformateurs d’Adhesifs et Thermocollants。
HDPE=高密度ポリエチレン
SS=ステンレス鋼
DT=滞留時間
【0062】
実施例1:発明Iの合成の合成
【0063】
モノマー乳濁液:2.52gの炭酸ナトリウムを、255gの脱イオン水(DI水)中に溶解させた。この撹拌溶液に、以下の化学物質:12.6gの氷アクリル酸、8.85gのA−102、15.19gのDS−4、504gの2−エチル−ヘキシルアクリレート、585.9gのブチルアクリレート、63gのイタコン酸ジブチル、及び94.5gのメチルメタクリレートをゆっくり添加することによって、乳化モノマー混合物を調製した。
【0064】
0.82gの炭酸ナトリウム及び300gの脱イオン水(本明細書では「DI水」)を含有する溶液を、熱電対、冷却凝縮器、及び撹拌器を備えた5口の3リットル丸底フラスコに入れ、窒素下で89℃に加熱した。20gのDI水中の2.81gのアンモニア過硫酸塩(APS)、及び10gのDI水中の41.5gのラテックス1をケトル内に投入した。温度が86℃であったとき、モノマー乳濁液及びAPS(50gのDI水中で2.81g)の溶液を、105分で供給した。40%のMEを供給したとき、DS−4(25gのDI水中で13.41g)の溶液を添加した。重合反応温度を88〜90℃に維持した。添加完了後、モノマー乳濁液を含んだ容器、及びフラスコ内に通じる供給パイプを35gのDI水で濯ぎ、この濯ぎ液をフラスコに戻し入れた。添加が完了したら、この反応混合物を60℃に冷却し、その後、34gのDI水中のt−BHP(70%、4.43g)+t−AHP(85%、1.21g)+0.2gのDS4の溶液、及びSSF(41gの水中で2.9g)を、撹拌しながら25分間かけて徐々に添加した。供給が完了したら、この反応物を室温に冷却した。アンモニア溶液を添加して、pH値を6.5〜7.5に調整した。
【0065】
実施例2:試験手順
【0066】
水ベースの接着剤及び紙を、いかなる事前処理もせずに使用した。この接着剤を、乾燥重量基準で18g/m
2の量で剥離ライナーにコーティングし、乾燥させた。したがって、この剥離ライナーは、結果として生じた接着剤層をその上に有した。接着剤層が該紙の粗面と接触して接着剤積層体をもたらすような様式で、この紙をPSAコーティングされた剥離ライナーで積層した。
【0067】
この接着剤積層体を、制御環境(22〜24℃、相対湿度45〜55%)の試験実験室内で少なくとも一晩にわたって調湿した後、性能試験を行った。欠陥モードを以下のとおり報告する。
A=接着欠陥。
Pt=紙の破れ。
C=凝集欠陥。
【0068】
熟成試験において、調製した接着剤積層体を、65℃、湿度80%の恒湿恒温オーブン内に4日間置いた。次いで、この積層体を制御温度環境に少なくとも一晩置いた。
【0069】
ループタック試験:試料を、ステンレス鋼(SS)または高密度ポリエチレン(HDPE)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)の試験プレート上で、FINAT試験法9番に従って試験した。
【0070】
剪断抵抗試験:FINAT試験法8番を剪断抵抗試験に使用した。Cは凝集欠陥を意味し、Aは接着欠陥を意味する。2.54cm(1インチ)×2.54cm(1インチ)の大きさのフィルムを、ステンレス鋼(SS)表面に接着した。報告される結果は、1kgの重量を用いた欠陥までの時間、及び欠陥モードである。試験は23℃で行った。
【0071】
実施例3:試験の結果
【0072】
以下の表1に示されるようにモノマー及び開始剤を変更して、実施例1に記載したように試料を作製した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に基づく観察は次のとおりである。比較配合物IC中、DBIは0%であり、一方で、発明配合物I中、DBIの量は5%のDBIである。発明配合物Iのループタック性能は、同様の剪断性能を有しながら、鋼及びHDPEパネル上の比較配合物Iよりも高い。比較配合物IIC及び発明配合物IIIは同じ開始剤を含有するが、異なるDBI量を含有する。発明配合物IIIは5%のDBI量を含有するが、比較配合物IIC中にはDBIが存在しない。発明配合物IIIのループタック性能は、比較配合物IICよりも高い。発明配合物IIIの剪断性能は許容可能であるが比較配合物IICよりも低い。発明配合物II及び発明配合物IIIにおいて、過硫酸ナトリウム(NaPS)及び過硫酸アンモニウム開始剤をそれぞれ使用して、タック/剪断のバランスを再均衡化した。発明配合物IIは、比較配合物IICと比較して同様のHDPEタック及びより高いループタックを呈する。発明配合物IIの剪断性能は、比較配合物IICよりも高い。比較配合物IIICにおいて、同時供給(cofeed)開始剤の全てを開始剤の反応器投入物内に移して、タック/剪断のバランスを再均衡化した。発明配合物IIIは、同様のHDPEタック及び比較配合物IIICよりも高い剪断性能を呈する。
【0075】
実施例4:さらなる試験の結果
【0076】
【表2】
【0077】
発明配合物IV、V、VI、及びVIIは、許容可能な剪断レベルを有する。また、発明配合物IV、V、VI、及びVIIは、比較配合物IVCのものに匹敵するか、またはそれよりも良好な、ステンレス鋼上のタックのレベルを有する。また、発明配合物IV、V、VI、及びVIIは、比較配合物IVCのものよりも良好なHDPE上のタックのレベルを有する。