(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404961
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】薬物懸濁液用の薬物送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
A61M5/31 530
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-14343(P2017-14343)
(22)【出願日】2017年1月30日
(62)【分割の表示】特願2015-500677(P2015-500677)の分割
【原出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-94184(P2017-94184A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年2月9日
(31)【優先権主張番号】13/422,315
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー ダブリュ.グロスコープ
(72)【発明者】
【氏名】ライオネル ベドリン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シー.ラティガン
【審査官】
家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−213608(JP,A)
【文献】
特開昭61−48377(JP,A)
【文献】
特開平9−99034(JP,A)
【文献】
特許第3325565(JP,B2)
【文献】
再公表特許第2005/089837(JP,A1)
【文献】
特開2003−52823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端および遠位端を有する筒であり、薬剤を収容するためのリザーバを少なくとも部分的に画定し、前記薬剤が、液体キャリアに固体を懸濁させた懸濁液を含む、筒と、
前記リザーバと流体連通した針であり、患者に注射するための遠位端および前記リザーバ内の近位端を有する針と、
前記リザーバ内に提供されたプランジャであり、前記リザーバからの前記懸濁液を前記針を通して押し出すために選択的に移動可能なプランジャと、
前記懸濁液と連通するように前記リザーバ内に配置された少なくとも1つの撹拌機構であり、前記プランジャが移動する間、前記懸濁液を撹拌するように構成された撹拌機構とを備え、
前記撹拌機構は、前記筒の内側に画定された螺旋形の単一の溝であり複数回巻いた溝と、前記筒内に配置された静止栓であり、該静止栓を貫通する連続する流れ経路を画定する静止栓とを含み、前記流れ経路は、前記懸濁液が前記螺旋形の単一の溝を通って前記静止栓の周りを回って移動することを可能にすることを特徴とする薬物送達装置。
【請求項2】
前記溝は、少なくとも部分的に前記針の前記近位端よりも近位側に位置することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記静止栓は、前記静止栓に画定された1または複数の溝を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
近位端および遠位端を有する筒であり、薬剤を収容するためのリザーバを少なくとも部分的に画定し、前記薬剤が、液体キャリアに固体を懸濁させた懸濁液を含む、筒と、
前記リザーバと流体連通した針であり、患者に注射するための遠位端および前記リザーバ内の近位端を有する針と、
前記リザーバ内に提供されたプランジャであり、前記リザーバからの前記懸濁液を前記針を通して押し出すために選択的に移動可能なプランジャと、
前記懸濁液と連通するように前記リザーバ内に配置された少なくとも1つの撹拌機構であり、前記プランジャが移動する間、前記懸濁液を撹拌するように構成された撹拌機構とを備え、
前記撹拌機構は、前記筒内に配置された環状構成要素であり、該環状構成要素の内側に螺旋形の単一の溝であり複数回巻いた溝が画定された環状構成要素と、前記環状構成要素内に配置された静止栓であり、該静止栓を貫通する連続する流れ経路を画定する静止栓とを含み、前記流れ経路は、前記懸濁液が前記螺旋形の単一の溝を通って前記静止栓の周りを回って移動することを可能にすることを特徴とする薬物送達装置。
【請求項5】
前記溝は、少なくとも部分的に前記針の前記近位端よりも近位側に位置することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記静止栓は、前記静止栓に画定された1または複数の溝を含むことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物懸濁液から出てくる固体に関連した問題に対処するための薬物送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の薬物または薬剤(本明細書ではこれらの用語が相互に交換可能に使用される)は粉末形態または乾燥形態(例えば凍結乾燥された形態)で提供されることが好ましい。このような粉末化された薬物は一般的に、注射によって個体に送達することを可能にするために液体希釈剤または液体キャリアに懸濁させる。粉末薬物は、注射の前に希釈剤と混ぜ合わされ、溶液形態で投与される。薬物送達システムは通常、薬物溶液を収容するための大径のリザーバ(reservoir)、例えば注射器筒または薬物カートリッジを有する。
【0003】
共通の容器またはリザーバの別々のチャンバに入れられた希釈剤および乾燥物質を提供する先行技術装置であって、溶液を形成する際に希釈剤が乾燥物質へ流れることによってそれらが混合されることを可能にするようにこの容器が構成された先行技術装置は既に開発されている。例えば、Vetterの特許文献1は、混合用に構成されたインジェクタを対象としており、Ahlstrandらの特許文献2は、混合用の薬物カートリッジを対象としている。
【0004】
しかしながら、固/液懸濁物中の固体と液体の密度の違いのために2つの懸濁物成分の相対速度が異なることがあり、したがって溶液から固体粒子が分離する可能性がある。さらに、ある種の薬物は、混合され、次いである期間、保管されることがある。保管期間中、固体は、液体キャリアから分離する傾向を示すことがある。液体から固体が分離することは多くの理由から問題である。例えば、この分離の結果、不十分な量または過剰な量の薬物が個体に送達される可能性がある。さらに、液体から固体が分離されるときには、重力が、針カニューレの開口または他の投与開口部に近いリザーバの下端(通常は患者端)に向かって固体を移動させる可能性がある。針開口が詰まる原因となる可能性があるため、針開口または投与開口部の近くにこのように固体が集まることは望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,874,381号明細書
【特許文献2】米国特許第4,968,299号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様では、薬剤を収容するためのリザーバを含み、近位端および遠位端を有し、前記薬剤が、液体キャリアに固体を懸濁させた懸濁液を含む薬物送達装置が提供される。前記薬物送達装置は、前記リザーバと流体連通した針であり、患者に注射するための遠位端および前記リザーバ内の近位端を有する針をさらに含む。前記針の前記近位端よりも遠位側に、前記針を少なくとも部分的に取り巻いて、集積表面が画定されている。前記集積表面は、懸濁液から出てきた固体を使用中に集めるようにサイズおよび形状が決められた遠位方向に延びる凹部を画定する。有利には、本発明を使用すると、前記集積表面が、前記針の前記近位端から離隔された位置に固体が集積すること可能にし、それによって前記針を詰まらせる可能性を最小化する。
【0007】
本発明の第2の態様では、近位端および遠位端を有する筒を含む薬物送達装置がここで提供される。前記筒は、薬剤を収容するためのリザーバを少なくとも部分的に画定し、前記薬剤は、液体キャリアに固体を懸濁させた懸濁液を含む。針が、前記リザーバと流体連通し、針は、患者に注射するための遠位端および前記リザーバ内の近位端を有する。前記リザーバ内にプランジャが提供され、前記プランジャは、前記リザーバからの前記懸濁液を前記針を通して押し出すために選択的に移動可能である。さらに、前記薬物送達装置は、前記懸濁液と連通するように前記リザーバ内に配置された少なくとも1つの撹拌機構を含み、前記撹拌機構は、前記プランジャが移動する間、前記懸濁液を撹拌するように構成されている。有利には、本発明を使用すると、前記懸濁液を撹拌してその混合を引き起こし、それによって前記懸濁液中の溶解していない固体の量を最小化する撹拌機構を提供することができる。
【0008】
当業者には理解されるとおり、本明細書に記載された本発明のさまざまな態様は、単独でまたは任意の組合せで使用することができる。
【0009】
本発明のこれらの特徴およびその他の特徴は、以下の詳細な説明および添付図面を検討することによってより十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】注射器として示された本発明の薬物送達装置の略図である。
【
図2】薬物カートリッジを含むペンインジェクタとして示された本発明の薬物送達装置の略図である。
【
図3】本発明とともに使用可能なセプタムの拡大図である。
【
図5】本発明とともに使用可能なセプタムの変形形態の上面図である。
【
図6】
図5の線6−6に沿って描かれた断面図である。
【
図7】杭打ち針構成(staked needle configuration)を有する本発明の変形形態を示す略図である。
【
図8A】本発明とともに使用可能な撹拌機構を示す略図である。
【
図8B】本発明とともに使用可能な撹拌機構を示す略図である。
【
図8C】本発明とともに使用可能な撹拌機構を示す略図である。
【
図8D】本発明とともに使用可能な撹拌機構を示す略図である。
【
図9】本発明とともに使用可能な撹拌機構の第2の実施形態を示す略図である。
【
図10】本発明とともに使用可能な撹拌機構の第2の実施形態を示す略図である。
【
図11】本発明とともに使用可能な撹拌機構の第3の実施形態を示す略図である。
【
図12】本発明とともに使用可能な撹拌機構の第3の実施形態を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図を参照すると、流体懸濁物中の薬物を個体へ送達するための薬物送達装置10が示されている。当業者には理解されるとおり、薬物送達装置10はさまざまな形態をとることができる。
図1および2を参照すると、薬物送達装置10は、注射器(
図1)またはペンインジェクタなど(
図2)の形態をとることができる。いずれに関しても、薬物送達装置10は、その中に懸濁液14が維持されたリザーバ12を含む。
【0012】
図1を参照すると、薬物送達装置10は筒16を含む。筒16は、近位端18および遠位端20を含む。本明細書で使用されるとき、用語「近位」は、注射部位から遠い方の構成要素の端(すなわち「非患者端」)を指し、用語「遠位」は、注射部位に近い方の端(すなわち「患者端」)を指す。当技術分野で知られているとおり、筒16の中に、それと液密係合(liquid-tight engagement)した1または複数のストッパ22を配置することができる。ストッパ22から近位方向にプランジャロッド24が、例えば筒16の近位端18のところでアクセスできるように延びている。ストッパ22とプランジャロッド24は合わせてプランジャ26を形成する。プランジャ26は、後述するように、リザーバ12から懸濁液14を押し出す目的に使用することができる。
【0013】
図3に最もよく示されているように、筒16の遠位端20に、リザーバ12へアクセスすることを可能にする開口28が画定されている。当技術分野ではよく知られているように、開口28はセプタム30によって密封される。セプタム30はエラストマー材料でできていることが好ましい。筒16は、ペン針アセンブリ34をその上に装着することができる首32を画定するために遠位端20に隣接した部分に狭められた直径を有するように形成することができる。ペン針アセンブリ34は、針カニューレ38が装着されたハブ36を含む。ハブ36は、ねじなどの協力して装着する部材(cooperating mounting member)を使用することによって、筒16、例えば首32に装着するように形成され、またはハブ36を(接着剤、融着などによって)それに貼り付けてもよい。あるいは、ハブ36を筒16と一体に形成してもよい。針カニューレ38は、筒16にハブ36が装着されたときにリザーバ12内に延びるように形成された近位端40と、患者に挿入するように形成された遠位端42とを含む。針カニューレ38は、セプタム30を貫いて延びてリザーバ12にアクセスする。筒16にペン針アセンブリ34を装着すると、針カニューレ38がセプタム30を刺し通す。管孔44が、針カニューレ38の長さに沿って延び、近位端40を遠位端42と連通させる。
【0014】
図1に示されているように、リザーバ12は、筒16、ストッパ22およびセプタム30を含むさまざまな構成要素の組合せによって画定することができる。当技術分野でよく知られているとおり、ペン針アセンブリ34が筒16に装着されているとき、特に針カニューレ38の近位端40がリザーバ12内に延びているときに、プランジャ26が遠位方向に進むと、懸濁液14が、針カニューレ38を通して押し出される。
【0015】
図2を参照すると、ペンインジェクタの形態の薬物送達装置10が示されている。
図1を参照して上で論じた要素には同様の符号が付けられている。ペンインジェクタの形態では、四角形の枠46として概略的に示されている用量設定機構を提供することができる。ペンインジェクタの用量設定機構は先行技術においてよく知られている。加えて、
図1には、手で動かすタイプのプランジャ26が示されている。
図1および2の両方の変形形態ならびに薬物送達装置10の他の可能な構成では、手動、半自動または自動で動くようにプランジャ26を構成することができる。
【0016】
ペンインジェクタ構成では通常、薬物カートリッジ48が提供される。薬物カートリッジ48は、筒16、ストッパ22およびセプタム30を含むことができ、リザーバ12を画定することができる。薬物カートリッジ48と
図1の構成の主な違いは、ペン針アセンブリ34が、筒16に装着されるのではなしに、薬物送達装置10の外筒52に画定された首50に装着されることである。
【0017】
懸濁液14は、個体に送達する薬剤を含む。懸濁液14は、液体キャリア中に保持された固体成分を含む。この1または数種の活性薬剤は、懸濁液14の固体成分中および/または液体キャリア中に存在することができる。懸濁液14は、完全に溶解した少なくともいくつかの固体を含むさまざまな程度に溶解した固体を含むことができ、または、それは、液体キャリア中に懸濁した固体粒子を含むことができる。懸濁液14は、それがリザーバ12内に配置される前に予め混合しておくことができ、または、それは、それがリザーバ12内に配置された後に混合することもできる。例えば、リザーバ12は、液体希釈剤および固体薬物を、別々の区画、例えば当技術分野で知られている再形成装置内の別々の区画に収納することができ、再形成装置では、個体へ送達される前にこれらの2つの成分が混合される。適当な再形成装置の例は例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれている特許文献1および2に記載されている。
【0018】
薬物送達装置10の保管中または使用中に、溶液から、懸濁液14の固体成分が出てくる可能性がある。
図3を参照すると、筒16の中に配置されたセプタム30が示されている。セプタム30は、近位方向を向いた表面54および遠位方向を向いた表面56を含む。近位方向を向いた表面54に、針カニューレ38を少なくとも部分的に取り巻く集積表面58が画定されていることが好ましい。
図1に示されているように、集積表面58は、針カニューレ38の近位端40がリザーバ12内にあるときに近位端40よりも遠位側に位置する。集積表面58は、懸濁液14から出てくる可能性がある固体を使用中に集めるようにサイズおよび形状が決められた遠位方向に延びる少なくとも1つの凹部60を画定する。
図4を参照すると、好ましい実施形態では、凹部60が連続しており、針カニューレ38を取り囲む。加えて、断面で見ると、凹部60が樋形である。集積表面58があると、懸濁液14から出てきた固体粒子、特に重力の影響下で筒16の遠位端20に向かって落下したそれらは、凹部60に集まることができる。凹部60は、固体粒子をその中に少なくとも部分的に沈めることができ、したがって懸濁液14に対する露出を最小化することができるウェルの働きをする。この低減された露出は、懸濁液14中の針カニューレ38の近位端40のすぐ近くで再び浮遊する固体粒子の能力を最小化する。
【0019】
近位方向を向いた表面54が、集積表面58に隣接して位置する近位方向に延びる突出部62をさらに含むことが好ましい。突出部62は、使用中に針カニューレ38がそれを貫いて延びるようにサイズおよび位置が決められていることが好ましい。
【0020】
当業者には理解されるとおり、凹部60は、1または複数の不連続な凹部として形成することを含め、さまざまな構成で形成することができる。例えば、凹部60は、近位方向を向いた表面54の1または複数のくぼみとして形成することができる。
【0021】
図5および6を参照すると、集積表面58に、1または複数のリブ64を、針カニューレ38から外側へ放射状に延びるように画定し、凹部60を少なくとも部分的に横切って延びるように配置することができる。特に
図6に示されているように、リブ64は、凹部60を1または複数の区画に分ける凹部60内の仕切りを画定することができる。この区画化は、凹部60の中に収容され得る固体粒子を懸濁液14からさらに隔離する。
【0022】
図7を参照すると、例えば杭打ち針構成で、針カニューレ38を筒16に直接に固定することができる。ここでは、筒16上、特に筒16の遠位端20のところに集積表面58を直接に画定することができる。筒16の遠位端20は、針カニューレ38の周りに位置する近位方向を向いた部分66を有することができる。集積表面58は、近位方向を向いた部分66に画定されていることが好ましい。近位方向を向いた部分66は次第に細くすることができ、かつ/またはアーチ状に形成することができる。集積表面58は前述のとおりに画定することができる。
【0023】
それによって固体粒子を集積させることができる方策を提供することに加えて、懸濁液14を撹拌し、それによって十分な混合を引き起こすことができ、固体粒子を懸濁液14中で再び溶解させることができる機能を提供することが望まれることがある。プランジャ26が移動すると、特にプランジャ26が遠位方向に移動すると撹拌を引き起こすように構成された撹拌機構をリザーバ12内に提供することができる。したがって、プランジャ26が移動する力の下で、懸濁液14が、針カニューレ38に向かって駆動されると、それによって懸濁液14は全体に遠位方向に流れる。
図8A〜8Dを参照すると、一実施形態では、撹拌機構が、懸濁液14と連通するように形成された1または複数の溝68である。数回巻いた螺旋形の単一の溝68が提供されることが好ましい。溝68は、筒16(
図8A)および/または筒16の内側に配置された環状構成要素67(
図8B)に形成することができる。構成要素67はエラストマー材料から形成することができる。筒16の内側に静止栓69を配置することができ(
図8A)、使用される場合には構成要素67の内側に静止栓69を配置することができる(
図8B)。静止栓69は、それを貫く連続する流れ経路を画定する際に溝68の部分を密封するように構成される。この流れ経路は、懸濁液14が静止栓69の周りを回って移動することができるように閉じられる。それに加えてまたはその代わりに、
図8Cおよび8Dに示されているように1または複数の溝68を栓69に形成することもできる。
【0024】
プランジャ26は、懸濁液14を押して、栓69の周りの溝68を通過させる。プランジャ26の遠位方向への移動は、懸濁液14が溝68に沿って全体に遠位方向に移動するような態様の遠位方向の運動量を懸濁液14に与える。溝68は、回転する様相を流れに提供し、したがって懸濁液14中での分離を最小化する際に乱流を引き起こす。溝68は、少なくとも部分的に針カニューレ38の近位端40よりも近位側に位置することが好ましい。このようにすると、針カニューレ38よりも近位側で懸濁液14の混合を実行することができ、それによって懸濁液14を混合する可能性を増大させることができ、次いで、混合された懸濁液が針カニューレ38を通して送達されるようにすることができる。溝68の他の構成も可能である。加えて、溝68を、完全にまたは部分的に針カニューレ38の近位端40よりも遠位側に配置することもできる。
【0025】
栓69は、概ね静止するのに十分な程度に、筒16および/または環状構成要素67に対してぴったりとはまることが好ましい。加えて、
図8Bに示されているように、環状構成要素67は、セプタム30に隣接して配置し、セプタム30に固定し、またはセプタム30と一体に形成することができ、セプタム30には任意選択で、針カニューレ38の近位端40を受け容れるポケット71が画定される。
【0026】
図9および10を参照すると、撹拌機構の第2の実施形態が示されている。具体的には、針カニューレ38の周りに、特に針カニューレ38の近位端40よりも近位側に、1または複数のひれ(fin)70を配置することができる。
図10に示されているように、ひれ70は、セプタム30から延びるように形成することができる。それに加えてまたはその代わりに、筒16にひれ70を形成すること、および/または筒16内に動かないように配置された環状栓にひれ70を形成することもできる。
【0027】
1または複数のひれ70を提供することができる。ひれ70はプレート状であることが好ましく、セプタム30または筒16の遠位端20から遠位方向に延びることが好ましい。さまざまな形状および構成のひれ70が可能である。ひれ70とひれ70の間には、プランジャ26が移動する力の下で懸濁液14がその中へ押し込まれる流路72が形成される。ひれ70は流れ面積を低減させ、したがって、針カニューレ38の近位端40へ移る際に懸濁液14を流路72内で加速させる。この速度の増大は懸濁液の維持に役立ち、それによってその中での分離を最小化する。加えて、ひれ70は、針カニューレ38の近位端40を通り過ぎた懸濁液40のいずれをも全体に遠位方向に導く。流体は、セプタム30および/または筒16の遠位端20に衝突し、そこから跳ね返るように導かれる。跳ね返った懸濁液14は、後から流れてくる懸濁液14と強制的に混合する。
【0028】
図11および12を参照すると、撹拌機構の他の実施形態では、リザーバ12内に少なくとも1つの静止羽根74が配置される。羽根74は中央ハブ76まで延びることができる。羽根74は間隔を置いて配置されて、それらの間に空隙78を画定する。懸濁液14が遠位方向に移動するとき、プランジャ26が移動する力の下で、懸濁液14は押されて空隙78を通過する。羽根74は、懸濁液14が空隙78を通過すると懸濁液14が加速されるように構成され、例えば曲げられ、ねじられかつ/または丸められる。ここでも、速度の増大は、懸濁液14中での分離を最小化するのを助ける。加えて、懸濁液14は乱流、したがって混合を経験し、その結果、懸濁液14中での分離が最小化される。
図11に示されているように、羽根74は、針カニューレ38の近位端40よりも近位側に位置することが好ましい。当業者には理解されるとおり、1または複数の羽根74を利用することができる。