特許第6405013号(P6405013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6405013微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6405013
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 67/00 20060101AFI20181004BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 71/28 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 71/30 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 71/50 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20181004BHJP
   B01D 69/06 20060101ALI20181004BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B01D67/00
   B01D71/48
   B01D71/56
   B01D71/26
   B01D71/28
   B01D71/30
   B01D71/50
   B01D71/34
   B01D71/42
   B01D71/68
   B01D69/08
   B01D69/06
   B22F9/24 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-174573(P2017-174573)
(22)【出願日】2017年9月12日
【審査請求日】2017年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】517320082
【氏名又は名称】▲ばく▼創淨化科技股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】517320093
【氏名又は名称】謝果治
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】謝果治
(72)【発明者】
【氏名】蔡建瑩
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102489168(CN,A)
【文献】 国際公開第2010/108837(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/076385(WO,A1)
【文献】 特開2017−125252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
B01D 53/22
B22F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法であって、その製造プロセス方法は、
.ナノ亜鉛前駆体を取得し、前記ナノ亜鉛前駆体を水に溶かす手順と、
.少なくとも1つの還元剤及び少なくとも1つの界面活性剤を前記ナノ亜鉛前駆体が溶けた水の中に添加することで、前記ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元し、ナノ亜鉛粒子を含む液体を形成する手順と、
.溶解グラフト方式により、前記ナノ亜鉛粒子を含む液体と高分子物質をそれぞれマスターバッチ製造プロセス装置の中に置き、前記マスターバッチ製造プロセス装置により、前記ナノ亜鉛粒子を含む液体及び前記高分子物質をそれぞれ加工して揮発状態にした後、さらに前記マスターバッチ製造プロセス装置により吸気混合を行い、揮発状態になった前記ナノ亜鉛粒子を含む液体と揮発状態になった前記高分子物質をポンピングプロセスにおいて混合するとともに、少なくとも1つのグラフト剤を添加して混合し、グラフト結合させることで、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチを完成させる手順と、
d. 前記ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチをフィルム製造装置によりナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターにする手順と、からなる
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記ナノ亜鉛前駆体は、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛のうちの1つであるとともに、水に溶ける
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記還元剤は、ヒドラジン化合物(hydrazinecompounds)、グルコン酸(dextrose)、アスコルビン酸ナトリウム(sodium ascorbate)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Sodium carboxymethyl cellulose 、略称CMC)、二酸化硫黄(SO)、強還元剤(NaBH)のうちの1つまたは1つ以上を使用する
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyl trimethylammonium bromide、略称CTAB)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecyl Sulfate、略称SDS)、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、略称PVP)、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3−(trimethoxysilyl)propyl methacrylate)、メタンスルホン酸(MSMA、Sodium Hydrogen.Methylsulfonate)、L−(−)−ジベンゾイル酒石酸 Dibenzoyl−L−tartaric acid(DBTA)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3−aminopropyltrimethoxy−silane、略称APTMS)、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3−Mercaptopropyl)trimethoxysilane、略称(MPTMS))のうちの1つまたは1つ以上を使用する
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記高分子物質は、PET、PA6、PP、PE、ABS、PC、PVDF、PS、PES、PVC、PANのうちの1つのプラスチック材料である
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記手順Cにおいて、前記溶解グラフト方式は、二軸式ポンピング機構及び少なくとも6つの吸入孔を備えるマスターバッチ製造プロセス装置によって行われ、前記二軸式ポンピング機構は真空状態であり、前記ナノ亜鉛粒子を含む液体と前記高分子物質をそれぞれ前記マスターバッチ製造プロセス装置の中に入れ、前記ナノ亜鉛粒子を含む液体と前記高分子物質の重量比は、1:10から1:1の間であり、さらに前記マスターバッチ製造プロセス装置により、前記ナノ亜鉛粒子を含む液体及び前記高分子物質をそれぞれ加工して揮発状態にした後、揮発状態になった前記ナノ亜鉛粒子を含む液体と揮発状態になった前記高分子物質を前記二軸式ポンピング機構及び前記6つの吸気孔によりポンピングプロセスにおいて混合・結合させ、この時前記グラフト剤を添加して混合し、グラフト結合させることで、前記ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチを完成させる
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記手順bにおいて、前記ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンを前記ナノ亜鉛粒子に還元する方法は、Zn2+濃度範囲が1×10−5mole〜1×10−3moleの間である亜鉛イオンを1つのガラスびんに入れ、イオン水(DI)を加え、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度を1mM〜10000mMに設定し、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)の濃度を1Mm〜10000mMに設定し、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)の濃度を1〜20wt%に設定し、加熱攪拌装置によって均一に攪拌した後、還元剤のピロ亜硫酸ナトリウムNaを1〜5グラム加え、強還元剤(NaBH)は、0.01〜10Mの溶液であるとともに、攪拌プロセスにおいて、さらに還元剤をそれぞれ加え、還元剤が高ph値である場合、0.1〜40μlの濃塩酸を滴加する必要があり、この時、溶液のPH値は約1〜5に調整され、引き続き攪拌するとともに50度〜90度の熱水浴に入れ、磁石電動加熱攪拌装置によって加熱攪拌することで、ナノ亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元する
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記手順bにおいて、前記ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンを前記ナノ亜鉛粒子に還元する方法は、ソノケミカル法によって、前記ナノ亜鉛前駆体を反応フラスコに入れるとともに、前記反応フラスコを超音波槽ultrasonic ovenに置き、超音波によって震盪させ活性酸素を生成・還原して金属イオンを還元することで、ナノ亜鉛金属粒子を生成し、さらに金属塩類水溶液を前記反応フラスコの中に入れ、前記界面活性剤を加え、前記ナノ亜鉛金属粒子を安定させ、前記反応フラスコを超音波振動装置に入れ、8〜15分振動させることで反応を完成させ、ナノ亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元する
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記手順bにおいて、前記ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンを前記ナノ亜鉛粒子に還元する方法は、電気化学法が利用され、粒径の大きさは電解装置の電流を制御することで調整され、これにより前記ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンを前記電気化学法によってナノ亜鉛粒子に還元する
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記グラフト剤は、無水マレイン酸、無水酢酸、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、アクリル酸のうちの1つである
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法において、
前記ナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターは、中空纖維のメンブレンフィルター形式、平板のメンブレンフィルター形式、またはその他のメンブレンフィルター形式にする
ことを特徴とする微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法に関し、特に、まずナノ亜鉛粒子を還元取得する方法に関する。その方法は、少なくとも1つの還元剤及び少なくとも1つの界面活性剤をナノ亜鉛の前駆体が溶解した水に添加し、ナノ亜鉛の前駆体である亜鉛イオンを還元して亜鉛粒子にすることによって、ナノ亜鉛粒子を含む液体を取得する。さらに吸気混合方式によって、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチを形成する。その方法は、マスターバッチ製造プロセス装置によって、ナノ亜鉛粒子を含む液体及び高分子物質をそれぞれ加工して揮発状態にした後、同時にポンピングプロセスにおいて混合するとともに、少なくとも1つのグラフト剤を添加して混合し、グラフト結合させることで、ナノ亜鉛粒子を高分子と安定して結合させることができ、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチが完成する。さらに、フィルム製造装置により、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチからナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターを製造することで、ナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターを液体または気体を濾過する用途で使用することができ、ナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターにより抗菌及び細菌の増殖を抑制する機能が達成される。
【背景技術】
【0002】
亜鉛は、強力な抗菌性の栄養剤であり、微量の栄養物質である。亜鉛が抗菌性になるのは主に以下の理由による。亜鉛は人体の酸化防止成分であり、4つの亜鉛原子からなり、ヒドロキシルフリーラジカルに傷つけられないよう細胞膜と組織を保護することができるため、その解毒機能と抗菌效果は完全に亜鉛による。その上、亜鉛は細菌源の代謝を変えることができることで、菌数が回復する機会が大幅に減少する。このように、亜鉛によって細菌の発生を防ぐことができる。
【0003】
よって、亜鉛元素が菌細胞の死滅を促進することはすでに実証されている。そのため業者はすでに研究開発を進め、亜鉛元素を物品に結合させることで、亜鉛元素と結合された物品が抗菌及び菌を抑制する機能を備えることができている。
【0004】
亜鉛元素とプラスチックの結合を例とすると、亜鉛元素とプラスチックを結合する従来の製造プロセス方法では、主にまずマスターバッチを有機溶媒の中に入れ、マスターバッチを有機溶媒で溶解させることで、プラスチック溶液が形成される。さらに亜鉛元素をプラスチック溶液中に添加して混合するとともに、プラスチック造粒装置に置くことで、亜鉛元素を含むプラスチック粒を製造する。
【0005】
さらに、完成した亜鉛元素を含むプラスチック粒を利用して、各種の物品(例えば、繊維製品、容器等)を製造することで、亜鉛元素を含むプラスチック溶液によって製造された物品には、抗菌また菌を抑制する機能が備わる。
【0006】
しかしながら、従来の亜鉛元素とプラスチックを結合する製造プロセス方法では、マスターバッチが溶解した後のプラスチック溶液は、比較的濃厚な液体であるため、亜鉛元素がプラスチック溶液中に添加された時、亜鉛元素がプラスチック溶液と均一に混合されないという問題が生じる。さらに、従来の亜鉛元素は亜鉛イオンの状態であるため、さらにプラスチック溶液と安定して結合することができず、従来の亜鉛元素を含むプラスチック溶液によって製造された物品(例えば、繊維製品)は、水で洗うことによって徐々に亜鉛元素が流されてしまいやすい。それにより、従来の亜鉛元素を含むプラスチック溶液によって製造された物品の抗菌または菌を抑制する機能は徐々に低下し、さらには抗菌または菌を抑制する能力がなくなってしまう。例えば、亜鉛元素を含むメンブレンフィルターは、初めは単位粒子600ppm以上の基準に達するが、長時間水で洗い流されるのに伴い、亜鉛元素が徐々に流されてなくなり、亜鉛元素を含むメンブレンフィルターは、単位粒子600ppm以上の基準を満たさなくなる。
【0007】
さらに、中国特許第CN102205209B号明細書の抗菌高分子スーパーメンブレンフィルターとその製備方法の特許明細書では、主に先に高分子フィルム制御液を製造する。無機担体(例えば沸石類)と抗菌剤(例えば亜鉛金属イオン)が配合されて生成される長期的な徐放作用を備える抗菌粒子を前記高分子フィルム制御液に加える。そのうち、前記無機担体と抗菌剤は、配合されて生成される長期的な徐放作用を備える抗菌粒子であり、重量計によって前記高分子フィルム制御液における高分子の重量の0.01−0.1%が占められる。そのうち、前記抗菌粒子の粒径は、0.01−10μmである。さらに、乾湿式または湿式紡糸技術を採用して非溶媒誘起相分離法(NIPS)または熱誘起相分離法の工程(TIPS)により、前記抗菌高分子スーパーメンブレンフィルターを製造する。よって、上述の方法により製造されたスーパーメンブレンフィルターは、水を濾過して浄化するのに用いることができる上、長期的な抗菌效果を備える。飲用水の処理、家庭における浄水器、食品と薬物の濾過及び浄化に広く適用することができる。
【0008】
しかしながら、上述の特許明細書は、主に沸石等の粉体を担体とする無機抗菌剤であり、膜形成溶媒に混入する過程で、銀、銅、亜鉛等の抗菌剤が溶けだし、イオン状態になるとともに、相変化する水浴の段階において大幅に流失して、メンブレンフィルターに含まれる抗菌剤の適当な当量を正確に制御することができなくなる。上述の特許明細書は、均一相の成膜液に、沸石等の粉体を担体とする無機抗菌剤を添加するが、静置して泡を消すプロセスにおいて、すぐに粉体の沈殿現象が生じ、成膜液の均一相性に影響を及ぼすことにより、メンブレンフィルターが含む抗菌剤の当量の適合性に欠ける。同時に、微細粉体の分散性を確実にすることが難しく、粉体が一箇所に集中する条件下では、メンブレンフィルターの物理特性と濾過精度は変化し、その使用効果に影響が及ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許第CN102205209B号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の従来技術における問題と欠陥を解決するため、本発明が開示する微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法における製造プロセス方法は、以下の手順からなる。ナノ亜鉛前駆体を取得するとともに水に溶かす手順。少なくとも1つの還元剤及び少なくとも1つの界面活性剤をナノ亜鉛の前駆体が溶解した水に添加することによって、前記ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンを亜鉛粒子に還元して、ナノ亜鉛粒子を含む液体にする手順。さらにナノ亜鉛粒子を含む液体と高分子物質をそれぞれマスターバッチ製造プロセス装置の中に入れ、マスターバッチ製造プロセス装置によって、ナノ亜鉛粒子を含む液体及び高分子物質をそれぞれ加工して揮発状態にした後、さらにマスターバッチ製造プロセス装置によって吸気混合を行い、揮発状態になったナノ亜鉛粒子を含む液体と揮発状態になった高分子物質をポンピングプロセスにおいて混合するとともに、少なくとも1つのグラフト剤を添加して混合し、グラフト結合させることで、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチを完成させる手順。最後に、さらにナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチをフィルム製造装置によりナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターにする手順。
【0012】
本発明の技術特性として、まずナノ亜鉛前駆体を還元してナノ亜鉛粒子を取得し、還元剤によってナノ亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元し、さらに界面活性剤によってケミカルグラフティング(chemical grafting)の方法でナノ亜鉛粒子と結合させ、その還原されたナノ亜鉛粒子がその他の粒子と再び結合しないようにする(つまりナノ亜鉛粒子とナノ亜鉛粒子の間で二次結合が生じるのを防ぐ)ことによって、安定したナノ亜鉛粒子を還元する。さらに吸気混合方式によって、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチを形成する。つまり、マスターバッチ製造プロセス装置によって、ナノ亜鉛粒子を含む液体及び高分子物質をそれぞれ加工して揮発状態にした後、同時にポンピングプロセスにおいて混合するとともに、ナノ亜鉛粒子を高分子物質と均一に安定して結合させることで、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチを完成させる。最後に、さらにナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチをフィルム製造装置によってナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターにする。
【発明の効果】
【0013】
このように、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチによって製造されたナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターは、液体または気体を濾過する用途で用いることができるとともに、亜鉛粒子により抗菌効果、菌を抑制する效果を備え、前記ナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターは、抗菌及び細菌の増殖を抑制する機能を達成する。同時に、ナノ亜鉛粒子と高分子物質を安定して結合させることができることで、前記ナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターは、溶媒、相変化、水浴によるナノ亜鉛粒子の流失が生じにくく、物品の抗菌力と菌を抑制する効果を長く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明における微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法のフローチャートである。
図2】本発明が例に挙げるポリビニルピロリドン(PVP)とナノ亜鉛粒子がグラフトプロセスを経た後の化学式の状態を示した図である。
図3】本発明が例に挙げるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とナノ亜鉛粒子がグラフトプロセスを経た後の化学式の状態を示した図である。
図4】本発明が例に挙げるナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元するプロセスの実施例を示した図である。
図5】本発明が例に挙げるナノ亜鉛粒子に無水マレイン酸グラフト剤とPVDFを添加したグラフト化学式の状態を示した図である。
図6】本発明が例に挙げるナノ亜鉛粒子に無水マレイン酸グラフト剤とPESを添加したグラフト化学式の状態を示した図である。
図7】本発明が例に挙げるナノ亜鉛粒子に無水マレイン酸グラフト剤とPANを添加したグラフト化学式の状態を示した図である。
図8】本発明が例に挙げるナノ亜鉛粒子に無水マレイン酸グラフト剤とPVCを添加したグラフト化学式の状態を示した図である。
図9】本発明の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法における第一検出・測定結果を示した図である。
図10】本発明の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法における第二検出・測定結果を示した図である。
図11】本発明の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法における第三検出・測定結果を示した図である。
図12】本発明の微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法における第四検出・測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
参照する図1に示すように、本発明は、微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法を開示し、その製造プロセス方法は以下の手順からなる。
【0016】
手順100は、水に溶かすことができるナノ亜鉛前駆体を取得するとともに、ナノ亜鉛前駆体を水に溶かす。前記ナノ亜鉛前駆体は、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛等のうちの1つであることができるとともに水に溶ける。例えば二酸化亜鉛は、水に溶けてZn2+(s)+2e→Zn(aq)となる。
【0017】
手順110は、少なくとも1つの還元剤及び少なくとも1つの界面活性剤をナノ亜鉛の前駆体が溶解した水に添加することにより、ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元し、ナノ亜鉛粒子を含む液体にする。つまり、還元剤によってナノ亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元し、さらに界面活性剤によってケミカルグラフティング(chemical grafting)の方式でナノ亜鉛粒子と結合させ、その還原されたナノ亜鉛粒子がその他の粒子と再び結合しないようにする(つまりナノ亜鉛粒子とナノ亜鉛粒子の間で二次結合が生じるのを防ぐ)ことによって安定したナノ亜鉛粒子を還元する。前記還元剤は、ヒドラジン化合物(hydrazinecompounds)、グルコン酸(dextrose)、アスコルビン酸ナトリウム(sodium ascorbate)、及びアスコルビン酸(ascorbic acid)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Sodium carboxymethyl cellulose 、略称CMC)、二酸化硫黄(SO)、強還元剤(NaBH)・・・等のうちの1つまたは1つ以上を使用することができる。
【0018】
前記界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyl trimethylammonium bromide、略称CTAB)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecyl Sulfate、略称SDS)、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、略称PVP)、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3−(trimethoxysilyl)propyl methacrylate)、メタンスルホン酸(MSMA、Sodium Hydrogen.Methylsulfonate)、L−(−)−ジベンゾイル酒石酸Dibenzoyl−L−tartaric acid(DBTA)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3−aminopropyltrimethoxy−silane、略称APTMS)、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3−Mercaptopropyl)trimethoxysilane 、略称(MPTMS))・・・等のうちの1つまたは1つ以上を使用することができる。
【0019】
手順120は、溶解グラフト方式によってナノ亜鉛粒子を含む液体と高分子物質をそれぞれマスターバッチ製造プロセス装置の中に入れ、マスターバッチ製造プロセス装置によってナノ亜鉛粒子を含む液体及び高分子物質をそれぞれ加工して揮発状態にした後、さらにマスターバッチ製造プロセス装置によって吸気混合を行い、揮発状態になったナノ亜鉛粒子を含む液体と揮発状態になった高分子物質をポンピングプロセスにおいて混合させるとともに、少なくとも1つのグラフト剤を添加して混合し、グラフト結合させることで、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチを完成させる。前記高分子物質は、プラスチック材料、例えばPETポリエチレンテレフタレート)、PA6(ポリアミド(NYLON)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン、PS(ポリスチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PAN(ポリアクリロニトリル)等その他のプラスチックの高分子物質であることができる。
【0020】
手順130は、前記ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチをフィルム製造装置によってナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターにする。
【0021】
前記手順110において、ナノ亜鉛粒子と前記界面活性剤が結合するプロセスは、ケミカルグラフティング(chemical grafting)の方法による。前記界面活性剤によってナノ亜鉛粒子に行うグラフトは、変性プロセスであり、目的はナノ亜鉛粒子がその他の粒子と結合しないようにすることである。
ナノ亜鉛粒子と界面活性剤がグラフトプロセスを経た後、ナノ亜鉛粒子は複合材料を形成する。例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)とナノ亜鉛粒子がグラフトプロセスを経ると、その化学式は(図2に示す通りである)。さらに、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とナノ亜鉛粒子がグラフトプロセスを経ると、その化学式は(図3に示す通りである)。
【0022】
前記手順110において、前記界面活性剤にカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を使用すると、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)によって水溶液に溶かすことができ、水溶液を粘着状にすることで、ナノ亜鉛粒子の粘着状の水溶液における運動速度が落ち、衝突・集合する確率が少なくなることで、安定した效果が達成される。同時に、温度を変えることができ、還元剤の濃度等の反応条件を調整できることで、ナノ亜鉛粒子の粒径分布を変えるのに用いられ、粒径をコントロールする目的が達成される。
【0023】
本発明が例として挙げる第1実施例は、さらに前記手順110の説明において、ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元する手順について具体的に説明する。そのうち、Zn2+濃度範囲が1×10−5mole〜1×10−3moleの間である亜鉛イオンを1つのガラスびんに入れ、イオン水(DI)を加え、前記ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度を1mM〜10000mMに設定し、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)の濃度を1Mm〜10000mMに設定し、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)の濃度を1〜20wt%に設定する。加熱攪拌装置によって均一に攪拌した後、還元剤のピロ亜硫酸ナトリウムNaを1〜5グラム加える。強還元剤(NaBH)は、0.01〜10Mの溶液である。攪拌プロセスにおいて、さらに還元剤をそれぞれ加える。この時注意すべき点として、還元剤が高ph値である場合、0.1〜40μlの濃塩酸を滴加する必要があり、この時、溶液のPH値は約1〜5に調整され、引き続き攪拌するとともに50度〜90度の熱水浴に入れる。磁石電動加熱攪拌装置によって加熱攪拌することで、ナノ亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元することができ、そのプロセスは図4に示す通りである。
【0024】
本発明が例として挙げる第2実施例は、さらに前記手順110の説明において、ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元する手順について具体的に説明する。そのうち、ソノケミカル法(超音波によって還原を促進する)によって、ナノ亜鉛前駆体を反応フラスコに入れるとともに、反応フラスコを超音波槽ultrasonic ovenに置き、超音波によって震盪させ活性酸素を生成・還原して金属イオンを還元することで、ナノ亜鉛金属粒子を生成する。さらに金属塩類水溶液を反応フラスコの中に入れ、前記界面活性剤を加え、ナノ亜鉛金属粒子を安定させる。反応フラスコを超音波振動装置に入れ、8〜15分振動させることで反応が完成し、ナノ亜鉛粒子を取得することができる。その反応メカニズムは、HO → − H + − OH (sonolysis 超音波分解) − OH (− H ) + RH → −R (reducing species) + HO (H) RH → −R (reducing species) + − H (sonolysis) −R (reducing species) + Zn(M−1)+ + H+ + R+ である。この反応メカニズムの駆動力は、衝撃波によってできた空気穴または空気穴と溶液の間に生成された・OHまたは・Hから来ており、炭素鎖分子を還元し、・R活性酸素を生成する。または界面間のRHが震盪されて・R活性酸素を形成し、金属イオンと酸化還元反応を起こし、金属イオンを0価の金属ナノ粒子に還元する。
【0025】
本発明が例として挙げる第3実施例は、さらに前記手順110の説明において、ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元する手順について具体的に説明する。そのうち、電気化学法によって、電解装置の電流を制御することで粒径の大きさを調整することができる。この電気化学法は、1994年Reetz、M.T.とHelbig、W.が電気化学法を用いて金属ナノ粒子を生成した。よって、本発明は、電気化学法によってナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元することができ、その過程は以下の通りである。
【化1】
【0026】
前記手順120において、前記溶解グラフト方式では、ナノ亜鉛粒子を含む液体と高分子物質をそれぞれマスターバッチ製造プロセス装置の中に入れる。マスターバッチ製造プロセス装置は、二軸式ポンピング機構及び少なくとも6つの吸気孔を備えるとともに、二軸式ポンピング機構は真空状態である。そのうち、ナノ亜鉛粒子を含む液体と高分子物質をそれぞれマスターバッチ製造プロセス装置の中に入れる。ナノ亜鉛粒子を含む液体と高分子物質の重量比は、1:10から1:1の間であることができる。よって、マスターバッチ製造プロセス装置により、ナノ亜鉛粒子を含む液体及び高分子物質をそれぞれ加工して揮発状態にした後、揮発状態になったナノ亜鉛粒子を含む液体と揮発状態になった高分子物質を二軸式ポンピング機構及び6つの吸気孔によりポンピングプロセスにおいて混合・結合させる。この時、少なくとも1つのグラフト剤を添加して混合し、グラフト結合させることで、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチが完成する。グラフト剤の配合添加量は、高分子物質の重量濃度の0.1%〜5%に相当する。
【0027】
前記グラフト剤は、無水マレイン酸(Maleic anhydride、略称:MAA)であることができ、その分子式は、Cであり、その化学式は、
【化2】
である。
【0028】
前記グラフト剤は、無水酢酸(acetic anhydride、略称:AA)であることができ、その分子式は、(CHCO)Oであり、その化学式は、
【化3】
である。
【0029】
前記グラフト剤は、グリシジルメタクリレート(Glycidyl methacrylate、略称:GMA)であることができ、その分子式は、C10であり、その化学式は、
【化4】
である。
【0030】
前記グラフト剤は、アクリルアミド(Acrylamide、略称:AM)であることができ、その分子式は、CH=CHCONHであり、その化学式は、
【化5】
である。
【0031】
前記グラフト剤は、アクリル酸(略称:AAM)であることができ、その分子式は、Cであり、その化学式は、
【化6】
である。
【0032】
本発明が例として挙げる実施例は、本発明のナノ亜鉛粒子と、PVDF、PES、PAN、PVCのグラフト化学式について説明している。そのうち、図5に示すように、本発明のナノ亜鉛粒子に無水マレイン酸(MAA)グラフト剤とPVDFを添加したグラフト化学式について説明する。図6に示すように、本発明のナノ亜鉛粒子に無水マレイン酸(MAA)グラフト剤とPESを添加したグラフト化学式について説明する。図7に示すように、本発明のナノ亜鉛粒子に無水マレイン酸(MAA)グラフト剤とPANを添加したグラフト化学式について説明する。図8に示すように、本発明のナノ亜鉛粒子に無水マレイン酸(MAA)グラフト剤とPVCを添加したグラフト化学式について説明する。
【0033】
よって、本発明の技術特性は以下の点にある。まずナノ亜鉛前駆体を還元してナノ亜鉛粒子を取得し、その還元剤によってナノ亜鉛イオンをナノ亜鉛粒子に還元し、さらに界面活性剤によってケミカルグラフティング(chemical grafting)の方式でナノ亜鉛粒子と結合させ、その還原されたナノ亜鉛粒子がその他の粒子と再び結合しないようにする(つまりナノ亜鉛粒子とナノ亜鉛粒子の間で二次結合が生じるのを防ぐ)ことで、安定したナノ亜鉛粒子を還元する。さらに溶解グラフト方式を用いるとともに少なくとも1つのグラフト剤を加えることによって混合し、グラフト結合させることで、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチを形成する。ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチは、マスターバッチ製造プロセス装置によって、ナノ亜鉛粒子を含む液体及び高分子物質をそれぞれ加工して揮発状態にした後、同時にポンピングプロセスにおいて混合することによって、ナノ亜鉛粒子は高分子物質と均一に安定して結合され、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチが完成する。最後に、さらにナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチをフィルム製造装置によりナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターにする。前記ナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターは、中空繊維のメンブレンフィルター形式、平板のメンブレンフィルター形式、またはその他の形式のメンブレンフィルターにすることができる。
【0034】
注目すべき点として、溶解グラフト方式によって、ナノ亜鉛粒子と高分子ポリマーを接合することができると同時に、高分子ポリマーの力学性能に影響を及ぼさず、さらにはプラスチックが、例えば延性及び靭性の向上といった非常に優れた物理性能を備えるようにすることができる。このように、本発明は、成膜液にあらゆる形態の有機または無機抗菌剤を添加する従来の製造方法において生じる欠陥を防ぐことができる。本発明は主に、フィルムを製造する前にすでにナノ亜鉛粒子を高分子物質にグラフトすることで、上述の高分子物質が、DMF/DMAC/NMP等の膜形成溶媒の工程の後、均一相の成膜液を形成することができ、抗菌剤の分散不均一または一箇所に集中するという重大な問題を効果的に防止することができる。同時に、成膜液が相変化する水浴のプロセスにおいて、亜鉛粒子が溶出する量を効果的に減少させることができ、メンブレンフィルター製品の亜鉛を含む当量が確保され、微生物を抑制する濃度を備えることができる。例えば、本発明が製造するナノ亜鉛粒子のメンブレンフィルターは、単位粒子600ppm以上の基準を超えることができる。
【0035】
本発明は、第一検出・測定の明細(図9に図示)を例に挙げている。前記検出・測定期日は2015年2月9日である。検出・測定結果から分かる通り、製造された亜鉛を含むプラスチック溶剤によって製造されたマスターバッチは、各単位に含まれる亜鉛の量が12700ppmに達する。
【0036】
本発明は、第二検出・測定の明細(図10に図示)を例に挙げている。前記検出・測定期日は2015年4月27日である。検出・測定結果から分かる通り、本発明のナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチによって製造された中空糸膜に含まれる亜鉛の量は、851ppmに達する。
【0037】
本発明は、第三検出・測定の明細(図11に図示)を例に挙げている。前記検出・測定期日は2016年9月30日である。検出・測定結果から分かる通り、本発明のナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチによって製造されたPS中空繊維膜は、含まれる亜鉛の量が845ppmに達する。
【0038】
このように、第1検出・測定、第2検出・測定、第3検出・測定による説明から分かる通り、結論として、本発明のメンブレンフィルター製造方法は、同じ工法、同じ配合、異なる時間及び異なる設備の條件下において、類似したまたは近い結果を得ることができるため、本発明のナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチは再現性があることが証明され、優位性を備えることは明らかである。
【0039】
本発明は、第四検出・測定の明細(図12に図示)を例に挙げている。前記検出・測定期日は2016年9月30日である。検出・測定結果から分かる通り、本発明のナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチが、成膜液が相変化する水浴製造プロセスにおいて洗い流した亜鉛元素は、僅か3ppmであり、採用した検査方法の最低値に関しては、洗い流した亜鉛元素が2ppmより小さい場合、装置は検出することができない。このように、本発明によるこれらの検査データを示すことで、結論として、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチは、亜鉛元素が洗い流されにくく、ほとんどすべての亜鉛元素が繊維膜糸中にとどまり、洗い流された含量として3ppmが検出されることから、洗い流される量は、非常に僅かであることが証明される。
【0040】
前記ナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターは、液体または気体を濾過する用途で用いることができ、亜鉛粒子によって抗菌效果を備えることで、前記ナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターは、細菌を分解し、細菌の増殖を抑制する機能を達成することができる。同時に、ナノ亜鉛粒子を高分子物質と安定して結合させることができることで、前記ナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターは、水で洗うことで徐々にナノ亜鉛粒子が流出してしまいにくく、物品の抗菌能力を効果的に維持することができる。
【0041】
注目すべき点として、本発明のナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターは、細菌の増殖を抑制することができ、ナノ酸化亜鉛によって一定して3.3eV の電力ギャップを帯びる。微生物細菌またはアンモニア分子と接触する時、この電力ギャップは、細胞の外層分子またはアンモニア体分子の切断を促進する。例えば、細菌外膜の代謝において、栄養等のメカニズムが失われることで、細胞が死亡する。これにより、細菌を分解し、細菌の増殖を抑制する機能が達成される。
【0042】
さらに、本発明のナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターが、アンモニア体分子の濾過に適用される場合、電力ギャップによって空気中の水分子HOが遊離する。この反応には、HOが必要であり、(−OH)活性酸素が形成される。この活性酸素は、NHと作用して、そのうちのHを奪うことで徐々にNH−を形成し、最後に、Nがさらにその他のNと結合して安定したN分子になる。NH分子全体の分解式は、
【化7】
である。最後に、遊離窒素原子が窒素原子と結合して、N + N → N 窒素になる。
【要約】
【課題】本発明は、微生物を抑制するメンブレンフィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】その方法は、ナノ亜鉛前駆体を取得するとともに水に溶かす手順と、それぞれ少なくとも1つの還元剤と界面活性剤をナノ亜鉛の前駆体が溶解した水に加え、ナノ亜鉛前駆体の亜鉛イオンを亜鉛粒子に還元し、ナノ亜鉛粒子を含む液体にする手順と、ナノ亜鉛粒子を含む液体と高分子物質をそれぞれマスターバッチ製造プロセス装置の中に置いて、ナノ亜鉛粒子を含む液体及び高分子物質をそれぞれ加工して揮発状態にした後、マスターバッチ製造プロセス装置により吸気混合を行い、少なくとも1つのグラフト剤を加えて混合し、グラフト結合させてナノ亜鉛粒子を高分子と安定して結合させ、ナノ亜鉛粒子を含むマスターバッチを完成させる手順と、それをフィルム製造装置によりナノ亜鉛粒子を含むメンブレンフィルターにする手順と、からなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8
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図10
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図12