【実施例1】
【0018】
まず、本発明であるゲートバルブが設置される半導体製造装置について説明する。
図1は、複数のチャンバ間にゲートバルブが設置された半導体製造装置の概観を示す斜視図である。
【0019】
図1に示すように、半導体製造装置100は、複数のチャンバ110を備え、プロセスごとに各チャンバ110に基板を搬送して処理が行われる。例えば、複数のチャンバ110が一直線に配列されたインライン型や、複数のチャンバ110が搬送室の周りに星状に配置されたクラスタ型などがあり、チャンバ110の数が多くなっても場所を取らないクラスタ型が主流である。
【0020】
クラスタ型の半導体製造装置100においては、搬送室となるトランスファーチャンバ110aの周りに、真空予備室となるロードロックチャンバ110bや処理室となるプロセスチャンバ110cなどが配置される。
【0021】
トランスファーチャンバ110aとロードロックチャンバ110b及びプロセスチャンバ110cとの間にはゲートバルブ200が介される。また、ロードロックチャンバ110bの入口にはドアバルブ120が設けられる。なお、トランスファーチャンバ110a、ロードロックチャンバ110b及びプロセスチャンバ110cには、それぞれ真空ポンプ130が排気バルブ140を介して取り付けられる。
【0022】
予め、トランスファーチャンバ110a及びプロセスチャンバ110cは、排気バルブ140を開くことで真空ポンプ130により所定の圧力まで減圧される。基板は、ドアバルブ120を開くことで外部からロードロックチャンバ110bに搬入される。そして、ロードロックチャンバ110bは、排気バルブ140を開くことで真空ポンプ130によりトランスファーチャンバ110aと同じ圧力まで減圧される。
【0023】
基板は、ゲートバルブ200を開くことでロードロックチャンバ110bからトランスファーチャンバ110aに移送され、さらにプロセスに応じて各プロセスチャンバ110cに移送される。基板は、あるプロセスチャンバ110cで処理を終えたら、トランスファーチャンバ110aに返送され、また別のプロセスチャンバ110cに移送される。
【0024】
ゲートバルブ200は、基板を一のチャンバ110から搬出し、隣接する他のチャンバ110に搬入するときに開き、基板が移送されたら閉じる。ゲートバルブ200は、一のチャンバ110から他にチャンバ110に、気体やパーティクル等が移動しないように密閉する。
【0025】
次に、本発明である制御方法が実施されるゲートバルブについて説明する。
図2は、ゲートバルブの概観を示す斜視図である。
図3は、ゲートバルブの構造を示す断面図である。
図4は、ゲートバルブの動作を説明する断面図である。なお、正面側を前、背面側を後とし、
図3及び
図4においては、右側が前となる。
【0026】
図2に示すように、ゲートバルブ200は、チャンバ110と繋がる開口部220を塞ぐ弁体300と、開口部220の縁に設けられ弁体300が押し付けられる弁座230と、弁体300と弁座230の間を封止するシール材400と、を有する。ゲートバルブ200としては、矩形状の開口部220に対して、弁体300が上下に移動する角型などがある。
【0027】
弁体300は、ゲートバルブ200の枠体210内に収容される。枠体210の上部には、正面(及び背面)に開口部220が空けられ、枠体210の下部には、弁体300を開いたときに格納する格納部240を有する。枠体210の下側には、弁体300を開閉動作させる駆動部250を設ける。
【0028】
開口部220は、例えば、横長の孔など基板を通過させるのに必要な幅と高さで空いていれば良い。駆動部250は、例えば、アクチュエータ等で弁体300を上下に移動させる昇降機構を備えていれば良い。格納部240は、弁体300を下降させたときに、開口部220が開放されるように、枠体210内に空間が確保されていれば良い。
【0029】
図3に示すように、中空な枠体210の前後に空けた開口部220をチャンバ110の出入口に当接させる。弁体300は、駆動部250から枠体210内に延びる弁ロッド310に支持され、開口部220を塞ぐ位置に配置される。開口部220の縁に設けられた弁座230と、弁体330の縁とが、一部重なるように、弁体330を開口部220より大きいサイズにする。
【0030】
弁体330の縁には、開口部220を囲むように環状のシール材400が取り付けられ、開口部220を閉じるときは、シール材400を潰すようにして弁体330が弁座230に押し付けられる。例えば、弁体300及び弁座230が金属製のとき、シール材400をゴム等の樹脂製にすれば、チャンバ110の気密性が維持される。
【0031】
図4に示すように、ゲートバルブ200の開動作は、(a)弁座230からシール材400を引き剥がすための弁体300の後退動作と、(b)開口部220を開放するための弁体300の下降動作などからなる。
【0032】
シール材400は弁座230に対して吸着されているので、弁体300を後方に移動させてシール材400を強い力で一気に引き剥がすと、弁ロッド310の下端を支点として弁体300が振動し、さらにそれが伝わってゲートバルブ200も振動する。なお、シール材400の引き剥がしと、弁体300及びゲートバルブ200の振動に伴い、大きな音も発生する。
【0033】
なお、閉位置は、シール材400が弁座230に押し付けられている状態における弁体300の位置、開位置は、シール材400が弁座230から引き剥がされて後退した状態における弁体300の位置とする。また、潰し量は、開位置におけるシール材の厚さと、閉位置におけるシール材400の厚さの差分とする。
【0034】
弁体300が振動した状態で下降させると、弁ロッド310を昇降させる駆動部250に負担が掛かり、弁体300を格納部240へ収容しづらくなり、さらにゲートバルブ200に振動を伝達することになる。
【0035】
弁体300やゲートバルブ200が振動すると、枠体210内のパーティクルが舞い上がり、チャンバ110内に侵入するおそれも生じる。特に、チャンバ110内の気圧が低いとパーティクルが入り込みやすくなり、チャンバ110内に載置された基板が汚染されて製品の品質を劣化させる可能性がある。
【0036】
弁体300の振動を抑制するために、弁座230からシール材400を引き剥がした後、弁体300が閉位置から開位置に後退移動するまでの間に、弁体300を僅かな時間だけ一時停止させる制御を行う。なお、弁体300の一時停止は、1回の後退移動につき、複数回(例えば、2回)行っても良い。
【0037】
次に、本発明であるゲートバルブの制御方法について説明する。
図5は、ゲートバルブの制御方法において弁体を一時停止しなかったときの結果を示すグラフである。
図6は、ゲートバルブの制御方法において弁体を一時停止したときの結果を示すグラフである。
図7は、ゲートバルブの制御方法において弁体の一時停止を2回したときの結果を示すグラフである。
【0038】
図5〜
図7は、ゲートバルブ200を開動作させたときの弁体300の位置を時系列で示したものであり、ゲートバルブ200の正面からレーザ光を当てる等して、弁体300の表面における距離と、枠体210の表面における距離を測定し、その差分を弁体300の相対位置500としたものである。
【0039】
弁体300の閉位置510は、シール材400の潰し量530が0.2mmの状態で弁座230に押し付けられた位置であり、弁体300の開位置520は、閉位置から2.0mm離れた位置である。弁体300を閉位置510から開位置520に移動させた後、弁体300を下降させて格納部240に収容するまでが示されている。
【0040】
図5(a)に示すように、弁体300を閉位置510から開位置520まで移動させたとき、シール材400の潰し量530の範囲では弁体300が弁座230に吸着されており、弁体300の移動方向と反対側に引っ張られた状態である。なお、弁体300は、潰し量530が無くなる位置に達する前に早めにシール材400から剥がれるか、又は潰し量530を超えて遅めにシール材400から剥がれるが、いずれにしてもシール材400により付勢された状態となる。
【0041】
弁体300が弁座230から剥がれると勢い良く離れていくので、その撓りにより開位置520まで来た弁体300は振動540した状態となる。なお、振動540の幅は、約0.4mmになる。その後、弁体300の下降に伴いシール材400の部分が計測され、さらに弁体300が収納されることで奥の枠体210の内壁が計測されている。
【0042】
図5(b)に示すように、弁体300の閉位置510から開位置520までの移動時間を遅くした場合、弁体300自体の移動速度を多少変えても、シール材400により付勢された撓りの影響が大きいため、振動540の幅は、0.2mmより大きくなる。
【0043】
図6(a)に示すように、弁体300を閉位置510から開く方向に移動させて、シール材400の潰し量530が無くなる位置に達する前に弁体300を所定の時間(例えば、約200〜300ミリ秒)だけ一時停止550させ、その後、弁体300の移動を再開してときの弁体300の振動540の幅は、0.2mmより小さくなる。
【0044】
また、
図6(b)に示すように、弁体300を閉位置510から開く方向に移動させて、シール材400の潰し量530を超えて剥がれた後に弁体300を所定の時間(例えば、約200〜300ミリ秒)だけ一時停止550させ、その後、弁体300の移動を再開してときの弁体300の振動540の幅も、0.2mmより小さくなる。
【0045】
すなわち、弁体300がシール材400の潰し量530が無くなる位置近辺まで来て、シール材400が剥がれる直前又は直後の位置において、弁体300を一時停止550させることで、弁体300の振動540が大きく抑制される。
【0046】
図7(a)に示すように、まず弁体300をシール材400が剥がれる直前で一時停止550させ、その後、弁体300が開位置520に達する直前でさらに一時停止550aさせたときは、弁体300が開位置520に達することで生じる振動540も抑制される。
【0047】
また、
図7(b)に示すように、まず弁体300をシール材400が剥がれた直後で一時停止550させ、その後、弁体300が開位置520に達する直前でさらに一時停止550aさせたときも、弁体300が開位置520に達することで生じる振動540が抑制される。
【0048】
すなわち、シール材400が剥がれる直前又は直後の位置における弁体300の一時停止550により、シール材400の吸着に伴う弁体300の撓りによって振動540が大きくなることを抑制し、開位置520の直前における弁体300の一時停止550aにより、弁体300の停止に伴う振動540の発生自体を抑制する。