(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405087
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】粒子ビーム描画プロセスおよび特に電子ビーム描画プロセスにおけるショット雑音の影響のシミュレーション
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20181004BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
H01L21/30 541E
H01J37/305 B
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-257608(P2013-257608)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-123729(P2014-123729A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2016年10月19日
(31)【優先権主張番号】1262228
(32)【優先日】2012年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506423291
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(73)【特許権者】
【識別番号】513315488
【氏名又は名称】アゼルタ ナノグラフィクス
【氏名又は名称原語表記】ASELTA NANOGRAPHICS
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルダン ジェローム
【審査官】
道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−294716(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/035892(WO,A1)
【文献】
特開2011−211197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20;1/00−1/86
H01J 37/30−37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子ビーム描画プロセスにおけるショット雑音の影響をシミュレーションする方法であって、前記プロセスは、粒子から成るビームを用いて予め設定されたパターンでサンプルの表面に前記粒子を堆積させるステップであって、前記パターンはピクセルへ細分化され、粒子の名目照射量は前記ピクセルのそれぞれと関連付けられ、前記プロセスは、前記ピクセルのそれぞれに実際に堆積した正規化照射量の標準偏差のマップσdを計算するステップを含み、前記標準偏差のマップは、各ピクセルと関連付けられた前記名目照射量のマップM0および前記プロセスを特徴付ける点広がり関数PSFから計算されることを特徴とし、前記方法はコンピュータによって実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記標準偏差のマップσ
dは、次式、
【数1】
を適用することによって計算され、ここで
【数2】
は、座標(i
0,j
0)のピクセルに対応する要素であって前記マップσ
dに属する要素であり、psf
i,jは、座標(i,j)のピクセルの点広がり関数PSFの値であり、〈m
i,
j〉は、堆積した粒子の数で表され、座標(i,j)のピクセルと関連付けられた名目照射量の前記マップM
0に属する要素であり、総和は、〈m
i,
j〉>0となるすべてのピクセルにわたって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
座標(i,j)の各ピクセルと関連付けられた名目照射量〈m
i,
j〉は、0および正の整数Nから唯一つ選ばれた値を有し、前記標準偏差のマップσ
dは、次式、
【数3】
を適用することによって計算される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記描画プロセスを用いて前記サンプル上に生成された少なくとも1つの構造体のエッジに対する位置範囲を決定するステップをさらに備え、前記決定するステップは、
シミュレーションされた照射量の第1および第2マップD1、D2を計算するステップと、
前記サンプル上に少なくとも1つのパターン構造を画定するために、前記マップのそれぞれをしきい値照射量値と比較するステップと、
前記パターン構造のそれぞれのエッジを識別するステップとを備え、
前記位置範囲は、前記エッジ間に含まれ、それゆえに識別され、
前記シミュレーションされた照射量のマップは、k>0の場合にkσdをそれぞれ決定論的照射量のマップD0に加えることおよび決定論的照射量のマップD0から引くことによって計算され、前記決定論的照射量のマップD0は、前記関連付けられた名目照射量のマップM0と前記点広がり関数PSFとを畳み込むことによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
k=3である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ショット雑音のマップδnを決定論的照射量のマップD0に加えることによって、シミュレーションされた照射量のマップDを計算するステップをさらに備え、
前記決定論的照射量のマップD0は、前記名目照射量のマップM0と前記点広がり関数PSFとを畳み込むことによって得られ、
前記ショット雑音のマップδnは、前記標準偏差のマップσdに、前記点広がり関数PSFによって与えられた相関長を有する正規化誤差マップEnを1要素ずつ掛けることによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
行列であって前記行列に属する要素が、前記パターンに属する各ピクセルと関連付けられた、単一の標準偏差の独立なガウス確率変数である行列εと、前記点広がり関数を畳み込むことによって、かつその結果を因数
【数4】
で割って正規化することによって、前記正規化誤差マップは計算される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シミュレーションされた照射量のマップを計算するステップは、マザー誤差マップEと呼ばれる単一の正規化誤差マップの行および列のランダム円順列によって得られた正規化誤差マップEnを用いて、複数回繰り返される、請求項6および7のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
このように得られた前記正規化誤差マップEnは、レジストの物理化学モデルの入力変数として用いられる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプル上に少なくとも1つのそれぞれのパターン構造を画定するために、前記シミュレーションされた照射量のマップのそれぞれをしきい値照射量値と比較するステップをさらに備える請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記パターン構造のそれぞれのエッジを識別するステップをさらに備える請求項10に記載の方法。
【請求項12】
a) 前記決定論的照射量のマップD0、前記正規化照射量の標準偏差のマップσd、および前記マザー誤差マップEを計算してコンピュータメモリ内に格納するステップと、
b) 前記マザー誤差マップEの行および列の円順列と前記正規化照射量の標準偏差のマップσdと畳み込むことによって、前記ショット雑音のマップδnを計算するステップと、
c) 前記決定論的照射量のマップD0を前記ショット雑音のマップδnに加えることによって、シミュレーションされた照射量のマップDを計算するステップとを備え、
前記ステップb)およびc)は、前記マザー誤差マップEの行および列の種々の円順列で複数回繰り返される、請求項8、10または11のうちの一項に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子ビーム描画プロセスは、電子ビーム描画プロセスである請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記描画プロセスは、前記ビームのベクトルアドレッシングを用い、前記方法は、前記パターンをピクセルに概念的に細分化しかつ前記ピクセルのそれぞれが受ける照射量を決定する工程も備える請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のうちの一項に記載の方法を実装するコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
請求項1から14のうちの一項に記載の方法を実行するようにプログラミングされたコンピュータ。
【請求項17】
請求項1から14のうちの一項に記載の方法を用いてショット雑音の影響をシミュレーションする先行工程を備える粒子ビーム描画プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子ビーム描画プロセスにおいてショット雑音の影響をシミュレーションする計算方法に関する。本方法は、特に電子ビーム描画に適用されるが、より一般的には、X線描画、レーザビーム描画、イオンビーム描画など、ショット雑音の影響を受けやすい(光子を含む)粒子から成るビームを用いる任意の描画プロセスにも適用される。ショット雑音がビームの離散的性質に起因していることが想起されるが、それゆえに使用される照射量が少数の粒子に相当するという事実を考慮に入れることが、いっそう重要である。
【背景技術】
【0002】
描画によって画定された構造体のエッジは、ショット雑音が原因で、エッジの位置がプロセスの決定論的シミュレーションから予測される位置と正確には一致しない、不規則的な形状のエッジとなる。これにより、確実に製造することができる限界寸法(CD:critical dimension)上の制限は、より低くなる。
【0003】
従来、ショット雑音は、モンテカルロ方法を用いてシミュレーションされているが、ここでモンテカルロアルゴリズムが模式的に
図1に図示される。
【0004】
この雑音は、乱数発生器によってシミュレーションされて、独立な確率変数の行列B
n(要素b
i,jはポアソン分布に従う)で表され、同行列は、描画によって生成されたピクセル化(ピクセルで構成された)パターンであって要素がm
0i,jで示される行列M
0で表されたパターンに加えられる。次に、得られた雑音のあるパターンは、点広がり関数PSF(point spread function)(要素がpsf
ijで示された行列PSFでも表される)と畳み込まれ、このPSFは、ビーム分散の影響に依存するが、当該ビームおよびその現像プロセスによって露光された描画レジストの特性にも依存し、したがって現像プロセスを特徴付ける。実際には畳み込みM
0APSFは、フーリエ領域内で、雑音のあるパターンの2次元フーリエ変換(FT)に、予めメモリ内に格納されたPSFの2次元フーリエ変換を掛けることによって、次いでその結果の逆フーリエ変換(FT
−1):M
0APSF=TF
−1[TF(M
0)
*TF(PSF)]を実行することによって、従来は計算されている。このように、シミュレーションされた照射量のマップD
nは、雑音の存在下におけるレジストの露光である、確率過程の起こりうる1つの(添え字「n」の)生起に対して得られる。シミュレーションされた照射量D
nを、使用されたレジストに依存するしきい値と比較することによって、レジストの露光の表現、したがってレジストが現像されてレジストが堆積したサンプルがエッチングされた後で取得されることになる構造体の表現が、得られる。次いで従来の画像処理方法によって、当該構造体の輪郭を抽出することが可能となる。このプロセスは数100回繰り返され、同プロセスの統計学的研究を可能にするために、ショット雑音行列は繰り返すたびに変更される。
【0005】
本方法の実装は、雑音行列ごとに全工程が繰り返されなければならないし、実行される計算が再利用できないので、極めて資源集約的である。特に、ショット雑音を発生させると、確率変数は、パターンに属する各ピクセルと関連付けられる必要がある。B
nなどの確率変数の行列は、相関行列のコレスキ分解を用いて計算することができるが、この演算は、計算上の観点でおよびメモリ消費の点で高度に複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粒子ビーム描画プロセスにおいてショット雑音の影響をシミュレーションする方法であって、周知の従来技術の方法よりも単純で速い方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成可能にする本発明の一主題は、粒子ビーム描画プロセスにおいてショット雑音の影響をシミュレーションする方法であって、前記プロセスは、粒子から成るビームを用いて予め設定されたパターンでサンプルの表面に前記粒子を堆積させるステップであって、前記パターンはピクセルへ細分化され、粒子の名目照射量は前記ピクセルのそれぞれと関連付けら、前記方法は、前記ピクセルのそれぞれに実際に堆積した正規化照射量の標準偏差のマップσ
dを計算するステップであって、前記標準偏差のマップは、各ピクセルと関連付けられた前記名目照射量のマップM
0および前記プロセスを特徴付ける点広がり関数PSFから計算されることを特徴とし、前記方法はコンピュータによって実行されることを特徴とする、方法である。
【0008】
特に、前記標準偏差のマップσ
dは、次式、
【0009】
【数1】
【0010】
を適用することによって計算することができ、ここで
【0011】
【数2】
【0012】
は、座標(i
0,j
0)のピクセルに対応する前記マップσ
dに属する要素であり、psf
i,jは、座標(i,j)のピクセルの点広がり関数PSFの値であり、〈m
i,
j〉=m
0i,jは、堆積した粒子の数で表され、座標(i,j)のピクセルと関連付けられた名目照射量の前記マップM
0に属する要素であり、総和は、〈m
i,
j〉>0となるすべてのピクセルにわたって実行される。
【0013】
座標(i,j)の各ピクセルと関連付けられた名目照射量〈m
i,
j〉が、0および正の整数Nから唯一つ選ばれた値を有する特定の事例(すなわち露光しなければならないすべてのピクセルに所与の名目照射量が適用され、前記パターンに属する残りのピクセルにゼロの照射量が適用される場合)では、前記標準偏差のマップσ
dは、次式、
【0014】
【数3】
【0015】
を適用することによって計算することができ、同式は、前式から導き出されるが、より単純な形式を有する。
【0016】
前記方法は、前記描画プロセスを用いて前記サンプル上に生成された少なくとも1つの構造体のエッジに対する位置範囲を決定するステップをさらに備え、前記決定するステップは、
シミュレーションされた照射量の第1および第2マップD
1、D
2を計算するステップと、
前記サンプル上に少なくとも1つのパターン構造を画定するために、前記マップのそれぞれをしきい値照射量値と比較するステップと、
前記パターン構造のそれぞれのエッジを識別するステップとを備え、
前記位置範囲は、前記エッジ間に含まれ、それゆえに識別され、
前記シミュレーションされた照射量のマップは、k>0の場合にkσ
dをそれぞれ決定論的照射量のマップD
0に加えることおよび決定論的照射量のマップD
0から引くことによって計算され、前記関連付けられた名目照射量のマップM
0と前記点広がり関数PSFとを畳み込むことによって得ることができる。
【0017】
特に、kは、3に等しいように選ぶことができる。
【0018】
一変形例としてまたは加えて、前記方法は、ショット雑音のマップδ
nを決定論的照射量のマップD
0(既知であると仮定した点広がり関数の影響を含むが、雑音の影響ではない)に加えることによって、シミュレーションされた照射量のマップDを計算するステップをさらに備え、
− 前記決定論的照射量のマップD
0は、前記名目照射量のマップM
0と前記点広がり関数PSFとを畳み込むことによって得られ、
− 前記ショット雑音のマップδ
nは、前記標準偏差のマップσ
dに、前記点広がり関数PSFによって与えられた相関長を有する正規化誤差マップE
nを1要素ずつ掛けることによって得ることができる。
【0019】
特に、行列に属する要素が、前記パターンに属する各ピクセルと関連付けられた、単一の標準偏差の独立なガウス確率変数である行列εと、前記点広がり関数を畳み込むことによって、かつその結果を因数
【0020】
【数4】
【0021】
で割って正規化することによって、前記正規化誤差マップを計算することができる。
【0022】
統計学的研究を実行するために、前記シミュレーションされた照射量のマップを計算するステップは、マザー誤差マップEと呼ばれる単一の正規化誤差マップの行および列のランダム円順列によって得られた正規化誤差マップE
nを用いて、複数回繰り返すことができるが、誤差マップを計算することかつこの誤差マップを決定論的照射量のマップに加えることだけを繰り返さなければならないことは注目に値することであり、しかも誤差マップの計算はこのように従来技術の方法の事例よりもはるかに単純である。
【0023】
このように得られた前記正規化誤差マップE
nは、レジストの物理化学モデルの入力変数として用いることができる。
【0024】
一変形例として、前記方法は、前記サンプル上に少なくとも1つのそれぞれのパターン構造を画定するために、前記シミュレーションされた照射量のマップのそれぞれをしきい値照射量値と比較するステップ、および前記パターン構造のそれぞれのエッジを識別するステップをさらに備えることができる。
【0025】
有利なことに、前記方法は、
a)前記決定論的照射量のマップD
0、前記正規化照射量の標準偏差のマップσ
d、および前記マザー誤差マップEを計算してコンピュータメモリ内に格納するステップと、
b)前記マザー誤差マップEの行および列の円順列と前記正規化照射量の標準偏差のマップσ
dを1要素ずつ掛けることによって、前記ショット雑音のマップδ
nを計算するステップと、
c)前記決定論的照射量のマップD
0を前記ショット雑音のマップδ
nに加えることによって、シミュレーションされた照射量のマップDを計算するステップとを備え、
前記ステップb)およびc)は、前記マザー誤差マップEの行および列の種々の円順列で複数回繰り返すことができる。
【0026】
上述したように、前記粒子ビーム描画プロセスは、特に電子ビーム描画プロセスとすることができる。
【0027】
特に、前記描画プロセスは、前記ビームのベクトルアドレッシングを用いることができ、前記方法は、前記パターンをピクセルに概念的に細分化しかつ前記ピクセルのそれぞれが受ける照射量を決定する工程も備えることができる。
【0028】
本発明の別の主題は、このような方法を実装するコンピュータプログラム製品である。
【0029】
本発明のさらに別の主題は、このような方法を実行するようにプログラミングされたコンピュータである。
【0030】
本発明のさらに別の主題は、このような方法を用いてショット雑音の影響をシミュレーションする先行工程を備える粒子ビーム描画プロセスである。このようなプロセスは、特に電子または光電子部品、集積回路、微小電気機械式デバイス(MEMS)および/またはフォトリソグラフィマスクを製作するのに用いることができる。
【0031】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の(例として与えられた)添付された図面を参照して、与えられた説明を読み取ると、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】本発明の2つの実施形態による方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の方法を図示するのに用いられる、生成すべき描画パターンを示す。
【
図4A】
図3のパターンに属する各ピクセルと対応してサンプル上に実際に堆積した正規化照射量の標準偏差のマップσ
dの計算の有効性を正当化する。
【
図4B】
図3のパターンに属する各ピクセルと対応してサンプル上に実際に堆積した正規化照射量の標準偏差のマップσ
dの計算の有効性を正当化する。
【
図4C】
図3のパターンに属する各ピクセルと対応してサンプル上に実際に堆積した正規化照射量の標準偏差のマップσ
dの計算の有効性を正当化する。
【
図5】
図3のパターンに属する各ピクセルと対応してサンプル上に実際に堆積した正規化照射量の標準偏差のマップσ
dの計算の有効性を正当化する。
【
図6】
図3のパターンに属する各ピクセルと対応してサンプル上に実際に堆積した正規化照射量の標準偏差のマップσ
dの計算の有効性を正当化する。
【
図7】サンプル上の具体的な場所に実際に堆積した照射量の自己相関関数を図示する。
【
図8A】本発明によって得られた誤差マップである。
【
図8B】誤差マップの相関関数のグラフであり、ポアソン統計に従う雑音を含有する描画パターン用に得られた相関関数と比較している。
【
図9】
図9Aの本発明による方法によって決定された位置範囲であって電子ビーム描画によって生成された構造体のエッジの位置範囲を、
図9Bの従来技術による方法によって決定された位置範囲であって電子ビーム描画によって生成された構造体のエッジの位置範囲と比較することによって、本発明の技術的結果を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、「ラスタ画像」電子ビーム描画プロセス、すなわち描画レジストで覆われたサンプル上のピクセル化パターンを、「スポット」電子ビームを用いて一つ一つ掃引する描画プロセス、に関連して以下に説明される。しかしながら、上述したように、電子以外の粒子を用いたプロセスにも適用される。本発明は、ベクトルアドレッシングを用いた描画技術、例えば予め設定された形状(一般に長方形)および露光フィールドによって異なるサイズを有するビーム、にも適用可能である。この事例では、書き込みゾーンは、概念的にピクセルへ細分化(ピクセルに表現)されるが、照射量は当該の予め設定されたゾーンのそれぞれの内部で一様な分布を有すると仮定され、したがって各ピクセルが受ける照射量は決定され、それによってこの事例を結果的にラスタ画像プロセスの事例に変える。
【0034】
本発明によるプロセスのアルゴリズム表現が、
図2のフローチャートによって図示される。同図に見られるように、このプロセスは2つの主要部分を備え、これらの部分は任意の順序でまたは並列に実行することができ、一方は、点広がり関数の影響を含む(要素d
i,jの)決定論的照射量のマップ(または行列)D
0の計算であり、同関数は既知であると仮定されるが、雑音の影響ではなく(フローチャートの左側分岐)、他方は、ショット雑音のマップ(または行列)δ
nの計算(右側分岐)である。ショット雑音の具体的な例に対応する照射量マップD
nは、決定論的照射量のマップとショット雑音の当該の例に対応するマップδ
nとを単に加算するだけ、すなわちD
n=D
0+δ
nによって得られる。フローチャートの左側分岐は、所与の描画パターンM
0に対しておよび点広がり関数PSFによって特徴付けられた所与の描画プロセスに対して、1回だけ実行しなければならない工程に対応し、これは単に行列M
0とPSFを畳み込むだけの問題となる。このように計算されたマップD
0は、次いでメモリ内に格納することができる。以下で説明されるように、右側分岐は、1回だけ実行することができる工程であって中間結果に導いてメモリ内に格納するように意図される工程、およびショット雑音行列ごとに繰り返さなければならない工程を両方とも備える。工程の大半を共同利用し、中間結果をメモリ内に格納すると、全工程またはほぼ全工程が、雑音行列ごとに繰り返さなければならない
図1のアルゴリズムに比較して、利用される計算資源の点でかなり節約することが可能となる。
【0035】
本発明によれば、ショット雑音の行列δ
nの計算は、3つの部分、すなわち、座標(i
0,j
0)のピクセルに堆積した正規化照射量の標準偏差を各要素
【0037】
が表すマップσ
dの計算、「マザー」マップEと呼ばれる誤差マップであって点広がり関数PSFによって与えられた相関長を有する正規化誤差マップの計算、ならびにσ
dおよびEからδ
nを求める計算、に分割される。
【0038】
本発明の特に有利な一特徴によれば、マップσ
dは、パターンM
0および点広がり関数PSFから決定論的に計算され、したがってこの計算を実行しなければならないのは1回だけであり、それゆえに標準偏差のマップはメモリ内に格納可能な中間結果である。
【0039】
本発明の別の特に有利な特徴によれば、「マザー」マップEは、独立な確率変数の行列εおよび点広がり関数PSFから1回だけ計算された中間結果でもある。
【0040】
したがって、Eおよびσ
dからのδ
nの計算、ならびにD
nを見いだすことを可能にする和D
0+δ
n(Rで示されたフローチャートの部分)だけが、複数回繰り返されなければならない。しかしながら、以下に示されるように、これらの工程は極めて単純である。
【0041】
さらに、ほとんどの事例で、複数のショット雑音行列に対する照射量マップD
nを計算する必要さえない。電子ビーム描画によって生成された構造体のエッジに対する「起こりそうな」位置範囲を決定することだけが目的である場合、2つの極端な事例、すなわちパターンに属する各ピクセルが、予測される平均値よりも大幅に高い照射量を受ける事例、およびパターンに属する各ピクセルが、当該の平均値よりも大幅に低い照射量を受ける事例、を考慮することで十分であるとすることができる。これらの極端な事例は、k>0の場合に行列kσ
dを決定論的照射量のマップD
0に加えること、および決定論的照射量のマップD
0から引くことによって得られる。kを高くすればするほど、計算範囲外にエッジを得るリスクは低下するが、当該の範囲の幅は大きくなり、それゆえに必要以上に高いk値を選ぶと、プロセスの限界寸法の見積もりを過度に悲観的にすることを理解されたい。実際には、kの値は、大体においてk=3に設定されることになる。本方法のこの2番目の単純化された実施形態は、
図2のフローチャート内に点線で図示される。
【0042】
図2において、さらに
図1と同様に、畳み込み工程は、フーリエ領域内で実行される。これは、有利なことであるが、本方法の本質的な特徴ではない。
【0043】
本方法のこの全体の説明に続いて、σ
dの計算およびδ
nを決定するためのσ
dの用法が次に考察されることになる。本方法によって実行される残りの工程は、単純(畳み込みおよび総和)であり、特に注意を払う必要はない。
【0044】
標準偏差のマップσ
dの計算は、
図3に図示されたようなパターンの事例に関して最初に検証されることになり、同図で各ピクセルに堆積することが望ましい名目照射量は、0(白色ピクセル)または正の整数N(黒色ピクセル)となる。各ピクセルの「書き込み」中にサンプル上に実際に堆積した照射量は、ポアソンの法則に追随する確率分布を有する確率変数m
i,jによって事実上表され、同確率変数の平均値〈m
i,
j〉=m
0i,jは0またはNである。さらに、座標(i,j)のピクセルの書き込み中にサンプル上へ向けられたm
i,j電子は、点広がり関数PSFの有限の幅に起因して、事実上複数のピクセルに分布することになる。正規化照射量Dは、MとPSFを畳み込み、Nで割ることによって定義される。
【0046】
次いで行列Dの各要素d
i,jは、独立な確率変数の総和から生じ、独立な確率変数の数は、適用される中心極限定理に対して十分に多い。したがって、ガウス分布であって同ガウス分布の標準偏差σがパターンに属するすべてのピクセルの標準偏差の2乗和の平方根に等しいガウス分布に、Dの各要素は追随する。実際、厳密に言えば、正規化照射量の負値が禁じられているので、確率密度関数が厳密にはガウス分布とすることができないことに留意されたい。しかしながら、標準偏差が平均値に対して十分に小さい場合、これは無視することができる。
【0054】
であるので、上述した方程式は次の通りに単純化される。
【0056】
結論として、m
0i,jが0またはNである場合の事例(
図2のフローチャートで考察された事例であるが、非限定的例にすぎない事例として)では、標準偏差のマップσ
dは、名目照射量のマップM
0と関数PSF
2との畳み込みを計算することによって、次いでその結果の平方根を取ることによって得られる。
【0059】
によって与えられたPSFを用いて、
図3のパターンを2048回シミュレーションすることによってテストされていて、ここでrはビームの中心に対する半径方向の距離であり、α=25.2、β=297、η=0.48であり、名目照射量が30μC/cm
2の場合である。
【0060】
図4A、
図4Bおよび
図4Cは、座標(179,130)、(188、271)および(188、175)の3つのピクセルに実際に受けた照射量のヒストグラムを示し、
図4Aのヒストグラムは、もっとも高い非対称率または「歪度」を有するヒストグラムであり(すなわちこの照射量ヒストグラムは高照射量の方にもっとも大きいゆがみを有し)、
図4Bのヒストグラムは、もっとも低い歪度を有するヒストグラムであり(すなわちこの照射量ヒストグラムは低照射量の方にもっとも大きいゆがみを有し)、
図4Cのヒストグラムは、ゼロの歪度を有する(すなわちその照射量ヒストグラムは対称である)。線は、最大ガウス分布の補間を示す。特に、これらの図により、正規化照射量d
i,jがガウス分布に実質的に追随することを実証することが可能となり、ガウス分布は、まさに方程式1および2の導出が基づいている仮定であった。
【0061】
図5は、2048回のシミュレーションに基づいて測定された正規化照射量の標準偏差(垂直y軸)と、方程式1を用いて計算された標準偏差(水平x軸)との関係を示す。極めて1に近い傾斜および0のy切片を有する線形的な関係が観察される。
【0062】
図6の左側部分は、測定された標準偏差のマップと計算された標準偏差のマップとの差のグレースケール表現を示し、この差が、描画パターンの特徴(思い出させる目的で同図の右側部分に復元される)に依存しないことを質的に実証することが可能となっている。
【0063】
上述したように、方程式1または2を用いて計算された標準偏差のマップσ
dにより、電子ビーム描画によって生成された構造体のエッジに対する位置範囲を決定することが可能となる。さらに、σ
dの知識により、ショット雑音のマップδ
nを計算することが可能となる。特に、本発明の有利な一態様によれば、当該のマップδ
nは、σ
dと、ガウス分布を有しかつ1に等しい標準偏差を有する相関性のある確率変数の行列によって表される誤差マップE
nとを1要素ずつ掛けることによって得られ、すなわち
【0065】
であり、ここで「・×」は1要素ずつ実行する乗算演算子である。
【0066】
所要の自己相関特性を有する確率変数の行列を計算することができる複数のやり方があり、例えばプロセスの特徴的相関行列のコレスキ分解を実行し、そこから相関性のある確率変数を推定することが従来通りに可能となる。しかしながら、本発明の有利な一態様によれば、独立かつ同一に分布した、εで示される確率変数の行列を、点広がり関数PSFと畳み込むことによって、この行列を計算することが好ましい。さらに有利なことに、「マザー」行列Eと呼ばれる行列を与えるために、この計算を実行するのは1回だけでよい。当該の「マザー」行列の行および列の円順列によって、種々の行列E
nを得ることができる。結論として、フーリエ領域内で畳み込み計算を表すと、
【0069】
と書くことが可能であり、ここでC
k,lは、独立変数の行および列をそれぞれk回およびl回循環的に並べ換える演算子である。有利なことに、kおよびlは、ランダムに選ばれる。
【0070】
このように、描画プロセスの統計学的研究を実行するために複数回繰り返さなければならない工程は、(予めメモリ内に格納された)マザー行列Eの行および列の円順列を実行してE
nを決定すること、当該の行列E
nと(同様に予めメモリ内に格納された)標準偏差のマップσ
dとを1要素ずつ掛けてδ
nを見いだすこと、最後に(予めメモリ内に順々に格納された中間結果である)D
0とδ
nの和を実行してD
nを得ること、
【0073】
例として、
図7の左側部分は、同図の右側部分に見える十字形によって識別されたパターンに属するピクセルに対して計算された、正規化照射量の自己相関関数を示す。この計算により、相関長が点広がり関数の幅に質的に関連することを実証することが可能となる。
【0074】
図8Aは、本発明によって得られた誤差マップを示す(方程式4の適用によるマザーマップの計算、次いでそのマップの行および列の円順列)。
図8Bは、自己相関関数ACのプロットを示し、ACは、ポアソン分布を有するランダムパターンから計算された自己相関関数(AC
P)と事実上同一であると分かる。
【0075】
計算上の簡単さで注目に値するにもかかわらず、本発明の方法が、
図1のフローチャートによって図示された従来の方法の結果と事実上同一の結果を得ることが可能なことを、
図9Aおよび
図9Bにより実証することが可能となる。これらの2つの図は、電子ビーム描画によって生成された構造体Sを示し、より正確にはこの構造体は、エッジBSを有するほぼ直線的軌道を成している。特にショット雑音のために、これらのエッジの位置には不確定要素があり、こういう訳で各エッジは、位置範囲P
PLの境界を示す2本の線で表され、この範囲内に位置決めされた線Lは、プロセスの特定の実施形態に対して得られたエッジに一致する。
図9Aの事例では、位置範囲P
PLは、マップD
0+3σ
dおよびマップD
0−3σ
dを、プロセスに使用された描画レジストに対する照射量のしきい値と比較することによって画定され、σ
dは方程式2で与えられ、一方、線Lは、方程式6を適用することによって発生した照射量マップD
nから、しきい値処理することによって得られた。対照的に、
図9Bは、従来技術による完全なモンテカルロシミュレーションよって得られた。これらの2つの図間の類似点は著しいが、本発明によって得られた時間の節約は、従来のモンテカルロシミュレーションに比較して、約5000倍となる。
【0076】
動作中の影響の正確な統計学的研究を実行することが望ましい場合、照射量マップD
nは、複数の異なるショット雑音行列に対して計算されることになり、このように計算された各マップD
nは、レジスト感度の複雑な物理化学モデルの入力変数として、用いられることになる。