特許第6405114号(P6405114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6405114可食体用インクジェット印刷方法および可食体用インクジェット印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405114
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】可食体用インクジェット印刷方法および可食体用インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20181004BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20181004BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20181004BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 9/44 20060101ALN20181004BHJP
   B41J 2/165 20060101ALN20181004BHJP
【FI】
   B05D1/26 Z
   B05C5/02
   B05C11/10
   B05D7/00 K
   !A61K9/44
   !B41J2/165
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-95584(P2014-95584)
(22)【出願日】2014年5月3日
(65)【公開番号】特開2015-211947(P2015-211947A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141886
【氏名又は名称】株式会社京都製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】東 裕晃
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3944858(JP,B2)
【文献】 特開2013−013711(JP,A)
【文献】 特開2013−122401(JP,A)
【文献】 特開昭61−010457(JP,A)
【文献】 特表2008−521660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B05C 5/00−21/00
A61K 9/00−9/72
B41J 2/015−2/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の印刷ヘッドにより可食体に印刷を行う可食体インクジェット印刷方法において、
前記第1の印刷ヘッドでの印刷後の検査で印刷不良となった可食体の個数をカウントして得られる印刷不良率が一定レベルを超えていなくても、運転開始からの時間で定まる一定の設定時間が経過するごとに、前記第1の印刷ヘッドから前記第2の印刷ヘッドに切り替えて前記第2の印刷ヘッドにより印刷を開始するとともに、前記第1の印刷ヘッドについてインク吐出口内部に残留していた残留インクまたは気泡を排出する短時間の第1のメンテナンス処理を行い、
前記印刷不良率が一定レベルを超えたときには、前記第1の印刷ヘッドから前記第2の印刷ヘッドに切り替えて前記第2の印刷ヘッドにより印刷を開始するとともに、前記第1の印刷ヘッドについて、インク吐出口内部に残留していた残留インクまたは気泡を排出する、前記第1のメンテナンス処理よりも長時間の第2のメンテナンス処理を行い、
前記第1、第2のメンテナンス処理を繰り返し行うようにした
ことを特徴とする可食体インクジェット印刷方法。
【請求項2】
請求項1において、
可食体が経口投与剤である
ことを特徴とする可食体インクジェット印刷方法。
【請求項3】
請求項1において、
可食体が複数列で供給されており、印刷不良が列ごとに検出されている
ことを特徴とする可食体インクジェット印刷方法。
【請求項4】
可食体用インクジェット印刷装置であって、
可食体に印刷を行う第1、第2の印刷ヘッドと、
前記第1、第2の印刷ヘッドのインク吐出口内部に残留していた残留インクまたは気泡を排出するためのメンテナンス処理を行うメンテナンス機構と、
前記第1の印刷ヘッドでの印刷後の検査で印刷不良となった可食体の個数をカウントして得られる印刷不良率が一定レベルを超えていなくても、運転開始からの時間で定まる一定の設定時間が経過するごとに、前記第1の印刷ヘッドから前記第2の印刷ヘッドに切り替わって前記第2の印刷ヘッドにより印刷が開始されるとともに、前記第1の印刷ヘッドについて短時間の第1のメンテナンス処理が行われ、前記印刷不良率が一定レベルを超えたときには、前記第1の印刷ヘッドから前記第2の印刷ヘッドに切り替わって前記第2の印刷ヘッドにより印刷が開始されるとともに、前記第1の印刷ヘッドについて前記第1のメンテナンス処理よりも長時間の第2のメンテナンス処理が行われ、前記第1、第2のメンテナンス処理が繰り返し行われるように、前記メンテナンス機構を制御する制御手段と、
を備えた可食体用インクジェット印刷装置。
【請求項5】
請求項4において、
可食体が経口投与剤である、
ことを特徴とする可食体インクジェット印刷装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記メンテナンス機構が、前記インク吐出口に対して吸引または加圧を行うパージ手段と、前記印刷ヘッドの前記ヘッド面をワイプするワイプ手段とを有している、
ことを特徴とする可食体インクジェット印刷装置。
【請求項7】
請求項4において、
可食体を複数列で供給する供給手段と、
前記供給手段の列ごとに印刷不良を検出する検出手段と、
をさらに備えた可食体インクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤やカプセル等の経口投与剤および食品等の可食体(つまり人が食べることができるもの)のインクジェット印刷方法およびインクジェット印刷装置に関し、詳細には、可食体に対して高精度の印刷処理を効率よく行えるようにするための手法および構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第2751374号公報には、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドのノズル内に混入した気泡やノズル内で乾燥・固形化したインクを吸引パージにより取り除くためのパージ方法が記載されている(同公報の第2頁第4欄第27〜33行および第1図参照)。また、同公報には、印字処理中に気泡が検出された場合の処理についても記載されている(同公報の第3頁第6欄第12〜17行および第3図(B)参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記公報に記載のものでは、印字処理中に気泡を検出するといっても、どの程度の大きさの気泡がどの程度の出現頻度で現れた場合に気泡として検出するのか等について全く記載されていない。その一方、微細な気泡についてまですべて検出してそのたびに印刷を停止していたのでは、非効率的である。また、気泡の大きさや出現頻度等と印字精度との関係について検証するのも非常に面倒である。
【0004】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、経口投与剤および食品等の可食体に対して高精度の印刷処理を効率よく行える可食体用インクジェット印刷方法および可食体用インクジェット印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る可食体用インクジェット印刷方法は、第1、第2の印刷ヘッドにより可食体に印刷を行う可食体用インクジェット印刷方法において、第1の印刷ヘッドでの印刷後の検査で印刷不良となった可食体の個数をカウントして得られる印刷不良率が一定レベルを超えていなくても、運転開始からの時間で定まる一定の設定時間が経過するごとに、第1の印刷ヘッドから第2の印刷ヘッドに切り替えて第2の印刷ヘッドにより印刷を開始するとともに、第1の印刷ヘッドについてインク吐出口内部に残留していた残留インクまたは気泡を排出する短時間の第1のメンテナンス処理を行い、印刷不良率が一定レベルを超えたときには、第1の印刷ヘッドから第2の印刷ヘッドに切り替えて第2の印刷ヘッドにより印刷を開始するとともに、第1の印刷ヘッドについて、インク吐出口内部に残留していた残留インクまたは気泡を排出する、第1のメンテナンス処理よりも長時間の第2のメンテナンス処理を行い、第1、第2のメンテナンス処理を繰り返し行うようにしている(請求項1参照)。
【0006】
本発明においては、インク吐出口内部の残留インクや気泡の排出といったメンテナンス処理を行うタイミングを、印刷不良率が一定レベルを超えたときおよび運転開始からの時間で定まる一定の設定時間が経過するごとに設定したので、微細な気泡についてまですべて検出してそのたびに印刷を停止する場合と比べ、可食体に対して高精度の印刷処理を効率よく行えるようになる。また、一方の印刷ヘッドのメンテナンス処理時に他方の印刷ヘッドで印刷処理を行うので、一方の印刷ヘッドのメンテナンス処理時においても、印刷処理を中断することなく印刷処理を続行でき、これにより、より効率よく高精度の印刷処理を行えるようになる。
【0007】
本発明では、可食体が経口投与剤である(請求項2)。
【0008】
本発明では、可食体が複数列で供給されており、印刷不良が列ごとに検出されている(請求項参照)。
【0009】
本発明に係る可食体用インクジェット印刷装置は、可食体に印刷を行う第1、第2の印刷ヘッドと、第1、第2の印刷ヘッドのインク吐出口内部に残留していた残留インクまたは気泡を排出するためのメンテナンス処理を行うメンテナンス機構と、第1の印刷ヘッドでの印刷後の検査で印刷不良となった可食体の個数をカウントして得られる印刷不良率が一定レベルを超えていなくても、運転開始からの時間で定まる一定の設定時間が経過するごとに、第1の印刷ヘッドから第2の印刷ヘッドに切り替わって第2の印刷ヘッドにより印刷が開始されるとともに第1の印刷ヘッドについて短時間の第1のメンテナンス処理が行われ、印刷不良率が一定レベルを超えたときには、第1の印刷ヘッドから第2の印刷ヘッドに切り替わって第2の印刷ヘッドにより印刷が開始されるとともに第1の印刷ヘッドについて第1のメンテナンス処理よりも長時間の第2のメンテナンス処理が行われ、第1、第2のメンテナンス処理が繰り返し行われるようにメンテナンス機構を制御する制御手段とを備えている(請求項参照)。
【0010】
本発明においては、制御手段の制御により、メンテナンス機構によるメンテナンス処理を、第1の印刷ヘッドでの印刷後の検査で印刷不良となった可食体の個数をカウントして得られる印刷不良率が一定レベルを超えたときおよび、印刷不良率が一定レベルを超えていなくても運転開始からの時間で定まる一定の設定時間が経過するごとに行うので、微細な気泡についてまですべて検出してそのたびに印刷を停止する場合と比べ、高精度の印刷処理を効率よく行えるようになる。また、一方の印刷ヘッドのメンテナンス処理時に他方の印刷ヘッドで印刷処理を行うので、一方の印刷ヘッドのメンテナンス処理時においても、印刷処理を中断することなく印刷処理を続行でき、これにより、より効率よく高精度の印刷処理を行えるようになる。
【0011】
本発明では、可食体が経口投与剤である(請求項5参照)
【0012】
本発明では、メンテナンス機構が、インク吐出口に対して吸引または加圧を行うパージ手段と、印刷ヘッドのヘッド面をワイプするワイプ手段とを有している(請求項参照)。
【0013】
本発明では、可食体を複数列で供給する供給手段と、供給手段の列ごとに印刷不良を検出する検出手段とをさらに備えている(請求項参照)。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、インク吐出口内部の残留インクや気泡の排出といったメンテナンス処理を行うタイミングを、印刷不良率が一定レベルを超えたときおよび印刷不良率が一定レベルを超えていなくても運転開始からの時間で定まる一定の設定時間が経過するごとに設定したので、可食体に対して高精度の印刷処理を効率よく行えるようになる。また、一方の印刷ヘッドのメンテナンス処理時に他方の印刷ヘッドで印刷処理を行うので、一方の印刷ヘッドのメンテナンス処理時においても、印刷処理を中断することなく印刷処理を続行でき、これにより、より効率よく高精度の印刷処理を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例による経口投与剤用インクジェット印刷装置の正面概略構成図である。
図2】前記印刷装置(図1)の平面概略構成図である。
図3】前記印刷装置(図1)の作動を説明するための斜視概略図である。
図4】前記印刷装置(図1)の作動を説明するための斜視概略図である。
図5】前記印刷装置(図1)の作動を説明するための斜視概略図である。
図6】前記印刷装置(図1)のメンテナンス機構の一例を示す概略図である。
図7】前記印刷装置(図1)のメンテナンス機構の他の例を示す概略図である。
図8】前記印刷装置(図1)の制御装置の概略ブロック構成図である。
図9】前記制御装置(図8)による制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および図2は、本発明の一実施例による経口投与剤用インクジェット印刷装置の概略構成を示している。
これらの図に示すように、インクジェット印刷装置1は、錠剤やカプセル等の経口投与剤Wに印刷を行うための装置であって、矢印方向に搬送される経口投与剤Wにインクジェット方式で印刷を行う印刷ヘッド2と、印刷ヘッド2の搬送方向上流側に配置され、経口投与剤Wを検出するための検出用センサ3と、印刷ヘッド2の搬送方向下流側に配置され、印刷処理後の経口投与剤Wを検査するための検査用センサ4と、検出用センサ3の搬送方向上流側に配置され、供給される経口投与剤Wをカウントするカウンタ5とを有している。なお、図2では、検出用センサ3および検査用センサ4を直線状の検出ラインおよび検査ラインでそれぞれ示している。検出用センサ3および検査用センサ4は、例えばエリアセンサカメラやラインセンサカメラから構成されている。また、経口投与剤Wとしては、ここでは円盤状(つまり平面形状が円形状のもの)を例にとっている。
【0017】
経口投与剤Wは、搬送方向(図1図2矢印方向)のみならずこれと直交する方向(図1紙面垂直方向、図2上下方向)にも配置されており、搬送面全体に分布している。経口投与剤Wを搬送する搬送コンベアは、複数本(この例では8本)のベルト6から構成されており、各経口投与剤Wは、隣り合う各ベルト6間の各間隙6c上に配置されている。すなわち、各経口投与剤Wは、複数列(この例では7列)で搬送されている。また、ここでは、経口投与剤Wが搬送方向にランダムなピッチで配置されるとともに、搬送方向と直交する方向に整列していない例を示している。なお、これら複数本のベルト6の代わりに、搬送方向の直交方向に延設された幅広の1本のベルトを用いるようにしてもよい。
【0018】
印刷ヘッド2は、図3ないし図5に示すように、2つの印刷ヘッド2Aおよび2Bから構成されている。なお、これらの図においては、図示の便宜上、搬送ベルト6を幅広の1本のベルトで表している。印刷ヘッド2A、2Bは、搬送方向に沿って並設されており、印刷ヘッド2Aが搬送方向上流側に配置され、印刷ヘッド2Bが搬送方向下流側に配置されている。印刷ヘッド2A、2Bはいずれも、搬送ベルト6の搬送面上に配置される印刷位置と、当該搬送面上から奥側(各図紙面奥側)に後退した待機位置とを採り得るようになっている。図3では、印刷ヘッド2Aが印刷位置に配置されかつ印刷ヘッド2Bが待機位置に配置された状態が示され、図5では、これとは逆に、印刷ヘッド2Bが印刷位置に配置されかつ印刷ヘッド2Aが待機位置に配置された状態が示されている。図4では、双方の印刷ヘッド2A、2Bが印刷位置に配置された状態が示されている。各印刷ヘッド2A、2Bは、図示しない駆動機構(例えばサーボモータとボールネジを用いた機構等)により、印刷位置と待機位置との間を移動可能になっている。
【0019】
印刷ヘッド2のメンテナンス機構について、図6および図7を用いて説明する。
これらの図に示すように、印刷ヘッド2の内部には、インク吐出用の複数のノズル20が設けられている(各図では一部のノズルのみ図示)。ノズル20は、印刷ヘッド2のヘッド面20Aに開口しており、当該開口部がインク吐出口20aになっている。
【0020】
図6に示すメンテナンス機構においては、印刷ヘッド2の内部において、ノズル20の上流側端から加圧洗浄液を供給することで、ノズル20のインク吐出口20a内部に残留していた残留インク50(または気泡)を加圧洗浄液とともに印刷ヘッド2の外部に排出する(押し出す)加圧パージを行うことにより、メンテナンス処理を実行している。
【0021】
図7に示すメンテナンス機構10は、印刷ヘッド2のヘッド面20A側に開口するとともに下端に吸引孔11aが形成されたケース11を有している。吸引孔11aは、図示しないバキュームポンプ等に接続されている。ケース11の開口端面にはパッキン12が装着されており、ケース11は、ヘッド面20Aに沿って左右方向(図示矢印方向)に往復動可能に設けられている。メンテナンス処理の際には、ノズル20のインク吐出口20aを覆うようにケース11を配置するとともに、パッキン12を介してケース11を印刷ヘッド2のヘッド面20Aに圧接させる。この状態でケース11の吸引孔11aから吸引することにより、ノズル20のインク吐出口20a内部に残留していた残留インク(または気泡)を外部に吸引する(吸い出す)吸引パージを行い、吸引パージ後、ケース11を左右方向に往復動させることで、パッキン12によりヘッド面20Aをクリーニングするワイプを行い、このようにしてメンテナンス処理が実行される。
【0022】
インクジェット印刷装置1は、図8に示すような制御装置100を有している。制御装置100のI/Oポートには、カウンタ5と、検出用センサ3および検査用センサ4が接続されるとともに、各経口投与剤Wに印刷すべき印刷パターンを作成する画像処理部102と、キーボード等の他の入力部103とが接続されている。また、制御装置100のI/Oポートには、印刷ヘッド2Aと、その印刷処理を制御するIJPコントローラ104と、印刷ヘッド2Aを印刷位置および待機位置間で移動させるサーボモータ105と、印刷ヘッド2Bと、その印刷処理を制御するIJPコントローラ106と、印刷ヘッド2Bを印刷位置および待機位置間で移動させるサーボモータ107と、メンテナンス機構10と、モニター等の他の出力部108とが接続されている。
【0023】
次に、上述した経口投与剤用インクジェット印刷装置1のメンテナンス処理について、図9のフローチャートを用いて説明する。
プログラムがスタートすると、まず、ステップS1において、ベルト6(図1)により供給される経口投与剤Wについて、その個数のカウントがカウンタ5により開始される。このカウントは、複数列で搬送される経口投与剤Wのすべての列について行われる。
【0024】
次に、ステップS2では、印刷ヘッド2例えば印刷ヘッド2A(図3)による印刷処理時にドット欠けや滲み等の印刷不良があった場合において、不良品の個数(つまり不良数)のカウントが開始される。このカウントも経口投与剤Wのすべての列について行われる。
【0025】
次に、ステップS3では、経口投与剤Wの中に不良品が含まれている割合(つまり不良率)が高いか否か、すなわち、不良率が一定のレベルを超えたか否かが判断される。この不良率の判断においては、例えば、経口投与剤Wを100個カウントしたときにその100個の中に不良品が3個含まれていた場合(不良率:3%)や、100個カウントするまでに不良品が連続してまたは断続的に3個(不良率:3%以上)現れた場合には、印刷不良率が高いと判断する。
【0026】
ステップS3において、不良率が高くない(つまり、前記例では、経口投与剤Wを100個カウントしたときに不良数が2個以下である)と判断された場合には、ステップS4に移行する。ステップS4では、所定の設定時間が経過したか否かを判断する。この所定時間は、例えば、装置の運転を開始してからの時間が30分というように設定される。所定の設定時間が経過していなければ、ステップS3に戻る。
【0027】
ステップS3において、経口投与剤Wのいずれかの列で不良率が高いと判断された場合には、ステップS5に移行する。ステップS5では、サーボモータ107(図8)の駆動により印刷ヘッド2Bを印刷位置へ移動する(図4参照)。次に、ステップS6では、印刷処理を行う印刷ヘッドを印刷ヘッド2Aから2Bに切り替える。切替え後は、印刷ヘッド2Aによる印刷処理が停止されるとともに、IJPコントローラ106の制御により、印刷ヘッド2Bによる印刷処理が開始される。次に、ステップS7では、サーボモータ105(図8)の駆動により印刷ヘッド2Aを待機位置へ移動する(図5参照)。
【0028】
ステップS8では、待機位置に移動した印刷ヘッド2Aに対して、ロングパージが実行される。このロングパージの際には、図6の加圧パージまたは図7の吸引パージのいずれかが比較的長時間にわたって実行される。いずれのパージにおいても印刷ヘッド2A内のすべてのノズルについて実行されるため、経口投与剤Wのすべての列についてロングパージが実行されることになる。
【0029】
その一方、ステップS4において、運転後所定の設定時間が経過したと判断された場合には、ステップS9に移行して、ステップS9〜ステップS12の処理を実行する。ステップS9〜ステップS12の各処理は、ステップS5〜ステップS8の各処理にそれぞれ対応しており、印刷処理を行う印刷ヘッドを印刷ヘッド2Aから2Bに切り替えるとともに印刷ヘッド2Aを待機位置へ移動させてパージを行うが、ステップS12での処理は、ステップS8のようなロングパージではなく、ショートパージである。すなわち、図6の加圧パージまたは図7の吸引パージのいずれかが比較的短時間実行される。これは、インク消費量を減らすためである。このショートパージについても、印刷ヘッド2A内のすべてのノズルで実行されるため、経口投与剤Wのすべての列で実行されることになる。
【0030】
ステップS8またはステップS12での処理後、ステップS13に移行する。ステップS13では、プログラムを終了するか否かを判断する。プログラムを終了しないと判断した場合には、ステップS3に戻り、ステップS3〜ステップS12の処理を繰り返して行う。一方、ステップS13での判断がyesとなれば、プログラムは終了する。
【0031】
このような本実施例によれば、インク吐出口20a内部の残留インクや気泡の排出といったメンテナンス処理を行うタイミングを、印刷不良率が一定レベルを超えたときまたは一定の設定時間ごとに設定したので、微細な気泡についてまですべて検出してそのたびに印刷を停止する場合と比べ、経口投与剤Wに対して高精度の印刷処理を効率よく行えるようになる。
【0032】
本実施例によれば、印刷ヘッド2が2つの印刷ヘッド2A、2Bから構成されており、一方の印刷ヘッドのメンテナンス処理時に他方の印刷ヘッドで印刷処理が行われるので、メンテナンス処理時においても印刷処理を中断することなく印刷処理を続行でき、これにより、さらに効率よく高精度の印刷処理を行えるようになって、夜間の無人の連続運転が可能になり、その結果、装置の稼働率を向上できる。
【0033】
本実施例においては、経口投与剤に印刷を行う場合を例にとって説明したが、錠剤やカプセル等の経口投与剤は一般に小形であるため、これに印字される文字も小さく、文字の鮮明さが要求される。そのため、このような経口投与剤の印刷に本発明を適用することで、小形の経口投与剤に対してドット欠けや滲みのない鮮明な印字処理を継続できるようになる。
【0034】
以上、本発明に好適な実施例について説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、本発明には種々の変形例が含まれる。以下に変形例のいくつかの例を挙げておく。
【0035】
前記実施例では、可食体として経口投与剤を例にとって説明したが、本発明は、その他の可食体(例えば食品等)にも同様に適用できる。
【0036】
前記実施例では、メンテナンス処理を実行するか否かの不良率の設定値に関して3%としたが、これはその他の数値(例えば2〜5%の範囲内の数値)を採用するようにしてもよい。
【0037】
前記実施例では、不良率が高い場合と所定の設定時間が経過した場合とで異なるパージを行う場合を示したが、双方の場合に同じパージを行うようにしてもよい。
【0038】
前記実施例では、印刷ヘッド2を2つの印刷ヘッド2A、2Bから構成した例を示したが、印刷ヘッド2は3つ以上の印刷ヘッドから構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明は、可食体用インクジェット印刷方法およびインクジェット印刷装置に有用であり、とくに可食体に対する高精度印刷処理の効率的な実行を要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0040】
1: インクジェット印刷装置

2、2A、2B: 印刷ヘッド

6: ベルト(供給手段)

10: メンテナンス機構
11a: 吸引孔
12: パッキン

W: 経口投与剤(可食体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特許第2751374号公報(第2頁第4欄第27〜33行および第3頁第6欄第12〜17行ならびに第1図および第3図(B)参照)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9