(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検査部は、前記検査対象面に対して打音検査を行う打音検査部、および/または、前記検査対象面に対して肉厚測定を行う肉厚測定部を有する請求項1または2に記載の水中検査システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1,2の打音検査装置は、陸上で打音検査を行うもので、水中で行うものではない。引用文献3の水中検査システムは、水中で打音検査を行うが、水中にある構造物の表面には、苔や錆や貝類や藻などの検査を行う上での障害物が付着しており、構造物を打撃する際、その部分を含めて打撃するため、構造物の正確な打音が得られない。
【0006】
引用文献4の水中構造物の検査装置は、検査位置を決定し、その検査位置付近に高水圧ノズルを移動させ、高水圧ノズルから高圧水を噴射して被検査面を清掃してから、超音波探触子による板厚測定を行うが、高水圧ノズルと超音波探触子とを横方向に並べて配置しているため(引用文献4の第1図(A)参照)、高水圧ノズルと超音波探触子とをそのたびに横方向に移動させなければならず、実際の検査工程においてその移動操作が煩雑になってしまう。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、水中の構造物に対し検査対象面から検査障害物を除去してから検査対象面で検査を行う際に、同一領域において簡単かつ確実に検査障害物除去と検査とを行うことができる水中検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための水中検査システムは、水中の構造物を検査するための水中検査システムであって、水中の構造物の検査対象面に対して検査を行う検査部と、前記検査のために前記検査対象面から検査障害物を除去する検査障害物除去部と、を装置本体に備え、
さらに前記装置本体が水中において3次元方向に移動可能なように構成された推進機構を前記装置本体に備え、前記検査障害物除去部および前記検査部が検査障害物除去および検査を行うために前記検査対象面に対向したとき、前記装置本体が前記推進機構により前記検査対象面に押し付けられることで保持され、前記検査部と前記検査障害物除去部とは回動することで互いの位置が入れ替わるように構成され、前記検査障害物除去部が前記検査対象面の一部から検査障害物を除去してから、前記検査部は回動することで、前記検査障害物が除去された検査障害物除去領域において検査を行うようにセットされることを特徴とする。
【0009】
この水中検査システムによれば、検査部と検査障害物除去部とは回動することで互いの位置が入れ替わるので、検査障害物除去部が検査対象面の一部から検査障害物を除去してから、検査部を回動させることで、その検査障害物を除去した検査障害物除去領域において検査部が検査を行うことができる。このため、水中の検査対象面において同一領域で検査障害物除去と検査とを簡単かつ確実に行うことができる。
【0010】
上記水中検査システムにおいて、前記検査部と前記検査障害物除去部とがターレット機構により回動して互いの位置を入れ替えることが好ましい。
【0011】
また、前記検査部は、前記検査対象面に対して打音検査を行う打音検査部、および/または、前記検査対象面に対して肉厚測定を行う肉厚測定部を有することが好ましい。なお、打音検査部と肉厚測定部との両方を有する場合、検査障害物除去部とともに、ターレット機構により回動して位置を入れ替えるように構成できる。
【0012】
また、前記検査障害物除去部は回転駆動される回転部を有し、前記回転部が前記検査対象面に接触して回転駆動されることで前記
検査対象面の一部において検査障害物を除去することが好ましい。
【0013】
また、前記回転部は交換可能なカップブラシから構成されることが好ましく、検査対象面の状態に応じて適切な材質のカップブラシに交換し、苔、錆、貝、藻、ぬめりなどの検査障害物を検査対象面から効率的に除去することができる。
【0014】
また
、前記検査部、前記検査障害物除去部および前記推進機構を遠隔操作する操作
部を備えることが好ましい。推進機構により水中で3次元方向に移動可能である装置本体を操作部で遠隔操作することができる。
【0015】
また、前記検査障害物除去部および前記検査部が検査障害物除去および検査を行うために前記検査対象面に対向したとき、装置本体が前記推進機構により前記検査対象面に押し付けられることで保持されること
により、装置本体が保持された状態で検査対象面の同一領域において検査障害物除去と検査とを行うことができる。
【0016】
また、前記検査対象面に対応して装置本体の姿勢を保持するために伸縮調整可能な検査対象面対応ロッドを備えることが好ましい。これにより、検査対象面が直立面、傾斜面、曲面、段差面などのいずれの場合であっても、検査対象面対応ロッドを長さ調整してから検査対象面に当てることで装置本体の姿勢を保持することができる。
【0017】
また、前記検査対象面から画像情報を取得するカメラを備えることが好ましい。たとえば、水中カメラを備える場合には、検査対象面に光を照射する照明部をさらに備え、また、水中が混濁している場合でも画像情報を取得可能な超音波カメラを備える。なお、水中における移動操縦のために装置周囲を撮影する操縦用カメラを別途備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水中検査システムによれば、水中の構造物に対し検査対象面から検査障害物を除去してから検査対象面で検査を行う際に、同一領域において簡単かつ確実に検査障害物除去と検査とを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態による水中検査システムを示す斜視図である。
図2は
図1の水中検査システムの上面図(a)、正面図(b)および側面図(c)である。
【0021】
図1、
図2(a)〜(c)に示すように、水中検査システム10は、水中に没する水中検査装置本体10aを有し、この装置本体10aは、下面に配置された環状のフレーム31と、上面に配置された環状のフレーム32と、フレーム32の上部に配置された平板状の浮力体33と、を備える。
【0022】
さらに、装置本体10aは、フレーム31とフレーム32との間に検査機器などを搭載し、全体として略矩方体状に構成されている。浮力体33は、水中において装置本体10aに適度な浮力が作用するようにその容量が決められる。装置本体10aは、全体寸法をたとえば、長さ80cm×幅50cm×高さ50cm程度とすることができるが、これらは一例であって、適宜変更可能である。
【0023】
水中検査システム10の装置本体10aは、その正面側(
図2(b))に、水中の構造物の検査対象面に対し打音検査を行う打音検査部11と、検査対象面に対し超音波探触子による肉厚測定を行う肉厚測定部12と、検査前に検査対象面に付着している錆、苔、ヌメリ、貝、藻などの検査障害物を除去する検査障害物除去部13と、検査対象面を撮影し画像情報を取得する計測カメラ14と、計測カメラ14の周囲に配置されて検査対象面を照明するLEDなどからなる複数の照明部15と、水が混濁していた場合でも検査対象面から画像情報の取得が可能な超音波カメラ16と、を有している。
【0024】
また、装置本体10aは、水中において3次元方向に移動するためにプロペラやモータなどから構成される推進部(スラスター)17,18,19を備え、フレーム31,32の間に配置された推進部17は装置を横(X)方向に移動させ、フレーム31,32の間に配置された推進部18は前後(Y)方向に移動させ、浮力体33内に配置された推進部19は上下(Z)方向に移動させる。
【0025】
また、装置本体10aは、その正面側から検査対象面(
図8参照)側へ突き出るようにして設けられ長さ変更可能な複数本の検査対象面対応ロッド35a〜35dを有している。上側の検査対象面対応ロッド35a,35bは、装置本体10aの上面側のフレーム32の左右端部近傍に固定され、下側の検査対象面対応ロッド35c,35dは、装置下面側のフレーム31の左右端部近傍に固定されている。検査対象面対応ロッド35a〜35dは、たとえば、伸縮機構を有して長さを伸縮自在に調整可能な伸縮棒から構成できる。このような伸縮棒は、公知の構造から構成可能で、たとえば、入れ子構造の一対の鋼管から構成でき、入れ子部分において管長手方向に所定ピッチで孔を管の径方向に貫通させて設け、手動により一対の鋼管を出し入れして目標長さに決めてから孔にロックピンを差し込むことで棒全体の長さを調整することができる。
【0026】
水中の構造物の検査対象面が水平位置にある装置本体10aに対し傾斜している場合、その傾斜に対応して、
図2(c)のように、予め検査対象面対応ロッド35a、35bを長めに調整し、検査対象面対応ロッド35c、35dを短めに調整しておくことで、装置本体10aを傾斜した検査対象面に対応して押し付け、装置本体10aの姿勢を水平に保持することができる。
【0027】
また、水中の構造物の検査対象面が直立面である場合、検査対象面対応ロッド35a〜35dを同じ長さに調整しておくことで、装置本体10aを直立面である検査対象面に押し付け、装置本体10aの姿勢を水平に保持することができる。
【0028】
また、装置本体10aは、装置本体10aをワイヤやロープで水中に吊り下げるために浮力体33内に設けられた吊りクランプ36と、浮力体33の上面端部に設けられて装置本体10aの水中位置を測定するための超音波センサ21と、装置側面から光を照射するためのLEDなどからなる照明部23と、を備える。
【0029】
次に、
図1,
図2の打音検査部11、肉厚測定部12、検査障害物除去部13について
図3〜
図5を参照して説明する。
図3は
図1,
図2の打音検査部、肉厚測定部、検査障害物除去部を示す要部斜視図である。
図4は
図3の打音検査部、肉厚測定部、検査障害物除去部を示す要部側面図である。
図5は
図3の打音検査部、肉厚測定部、検査障害物除去部を示す要部正面図である。
【0030】
図3〜
図5のように、打音検査部11は、全体が円柱状に構成され、検査対象面を連続動作式ハンマーで打撃を与える打撃部11aと、その打音を受信するハイドロフォン11bと、を先端面に備える。
【0031】
肉厚測定部12は、全体が小型の円柱状に構成され、超音波探触子を有し、その前面12aが検査対象面に当てられた状態で鋼材などの肉厚を測定することができる。
【0032】
検査障害物除去部13は、回転駆動されるカップブラシが装着された回転部13aと、回転部13aを回転駆動する円筒状のモータ13bと、を備える。モータ13bによる回転部13aの回転によりカップブラシが、検査前に検査対象面に押し当てられて回転することで、検査対象面の一部から検査障害物を除去する。回転部13aのカップブラシは、たとえば、多数の硬い鋼線から構成される。
【0033】
また、回転部13aに装着されるカップブラシは、交換可能に構成され、検査対象面におけるケレン、錆落とし、ぬめり・苔・貝類・藻除去などの用途別に応じて適切な材質からなるカップブラシを装着することができる。
【0034】
打音検査部11と肉厚測定部12と検査障害物除去部13とは、ターレット機構により回動して互いの位置を入れ替えるように構成されている。ターレットは、打音検査部11と肉厚測定部12と検査障害物除去部13を円板状のターレット板に取り付け、回転して同位置に交換するようになっている。
【0035】
すなわち、装置本体10aのターレット機構は、
図3,
図4のように、回転軸22aを回転させるターレットモータ22を備え、回転軸22aには打音検査部11と肉厚測定部12と検査障害物除去部13のモータ13bを各外周面で保持する円板状のターレット板22bが連結されている。
【0036】
ターレットモータ22が回転すると、回転軸22aがターレット板22bとともに所定角度回転することで、打音検査部11と肉厚測定部12と検査障害物除去部13とが、
図5の円周C上で回動する。かかる回動により、たとえば、検査障害物除去部13が
図5の位置で検査対象面から検査障害物を除去した後、打音検査部11が回動方向rに所定角度だけ回動し、検査障害物除去部13の位置に移動してセットされ、その位置が検査位置となって、検査対象面に対し打音検査を行うことができる。また、肉厚測定部12が回動方向r’(または回動方向r)に所定角度だけ回動し、検査障害物除去部13の位置に移動し、その検査位置で検査対象面に対し肉厚測定を行うことができる。
【0037】
また、検査位置にある打音検査部11、肉厚測定部12は、
図2(c)のように装置本体10aの正面から見て、上下左右の検査対象面対応ロッド35a〜35d間のほぼ中央に位置する。このため、検査対象面対応ロッド35a〜35dを同じ長さに調整しておくことで、装置本体10aを曲面のある検査対象面に押し付けた場合(後述の
図10参照)、打音検査部11、肉厚測定部12を押し付け力の偏りがなく均等に検査対象面Sに押し付けることができ、検査・測定の精度を確実に維持できる。
【0038】
また、打音検査部11の先端面、肉厚測定部12の前面および検査障害物除去部13の先端面は、同一面に当たるようになっているが、検査障害物除去部13には伸縮機構が設けられ、検査障害物除去のとき、回転部13aが上述の同一面から突き出て検査対象面に当接して検査障害物除去を行うようになっている。
【0039】
ターレット機構は、
図1〜
図5のように打音検査部11と肉厚測定部12と検査障害物除去部13とを、ターレットモータ22、回転軸22a、ターレット板22bとともに装置本体10a内に一体的に組み込んで構成されている。このターレット機構は、装置本体10a内で角度調整可能になっていて、打音検査部11と肉厚測定部12と検査障害物除去部13の各延長軸が検査対象面に対しほぼ直交するように角度調整されて取り付けられ、たとえば、
図2(c)のように水平方向から傾斜した回転部13aの先端面、打音検査部11の先端面、肉厚測定部12の前面の角度θを調整することができる。かかる角度θの調整により傾斜した検査対象面に対応することができる。
【0040】
次に、水中検査システム10の操作系・制御系について
図6のブロック図を参照して説明する。
図6のように、水中検査システム10は、装置本体10aに搭載された各部11〜23を遠隔操作するための操作部1と、装置本体10aを操縦するときに周囲の画像を表示させる液晶パネルなどからなる操作表示部5と、各部11〜23を制御するためのパソコンなどからなる制御部2と、各種画像信号や検査データや測定データなどを画面表示するための液晶パネルなどからなる表示部3と、を備える。装置本体10aの各部11〜23に対し必要な電力を供給し、また、必要に応じて電気信号を送受信するためのケーブルCBが操作部1に接続されている。
【0041】
操作部1,操作表示部5,制御部2および表示部3は、船上、水上または陸上側に設置され、装置本体10aの各部11〜23を遠隔操作し制御し画報情報を表示する。制御部2は、ハードディスクやRAMなどからなるメモリを有し、画像情報を含む検査結果・測定結果をメモリに記録する。すなわち、打音検査部11による打音がメモリに記録され、再生されることで、その検査位置におけるコンクリート構造物の内部・表面の空洞や剥離やジャンカや亀裂などの欠陥の有無が判定される。かかる判定は、制御部2がインストールされたプログラムにより自動的に行うことができ、また、熟練者が実際に再生音を聴いて行うようにしてもよい。また、肉厚測定部12により測定された肉厚測定値がメモリに記録される。
【0042】
また、制御部2は、水中位置測定装置4を有し、水中位置測定装置4は、水中の所定位置に設置された基準となる超音波センサ(図示省略)により装置本体10aの超音波センサ21からの超音波信号の伝搬時間を計測し、距離換算情報より座標計算を行い、装置本体10aの水中位置をほぼリアルタイムに測定する。かかる水中位置情報により構造物の検査対象面における検査位置情報を得ることができる。
【0043】
図1〜
図6の水中検査システム10の動作について
図7〜
図9を参照して説明する。
図7は
図1〜
図6の水中検査システム10による検査時の工程S01〜S10を説明するためのフローチャートである。
図8は検査対象面に対し検査障害物除去部の角度調整をした装置本体を示す概略図である。
図9は検査対象面の一部から検査障害物を除去した検査障害物除去領域を示す概略図である。
【0044】
水中のコンクリート構造物に対し打音検査を行い、
図8のように検査対象面Sが傾斜している場合を例として説明する。
【0045】
まず、検査前の調査により得た検査対象面Sの傾斜角度に対応して、たとえば、検査対象面対応ロッド35a、35bを長めにし、検査対象面対応ロッド35c、35dを短めに調整するとともに、検査障害物除去部13の回転部13aの先端面、打音検査部11の先端面、および肉厚測定部12の前面の角度θ(
図2(c))を検査対象面Sに対応して調整しておく(S01)。
【0046】
次に、吊りクランプ36に掛けられたロープで支持された装置本体10aを水中に投入する(S02)。操作部1の操作により、推進部17〜19を駆動しながら装置本体10aを検査対象面Sの目標位置近傍まで水中を移動させる(S03)。このとき、操縦用カメラ20からの画像を操作表示部5に表示させながら操作し、水中位置測定装置4で得た水中位置データにより装置本体10aの位置を最終的に確認することができる。
【0047】
次に、操作部1の操作により、推進部17〜19を駆動することで、
図8のように、装置本体10aを矢印方向Fに検査対象面Sに向けて駆動し、検査対象面対応ロッド35a〜35dを検査対象面Sに当てることにより、装置本体10aを傾斜した検査対象面Sに対応して水平に押し付け、装置本体10aを静止させ、装置本体10aの姿勢を確実に水平に保持することができる(S04)。このとき、回転部13aの先端面は検査対象面Sとほぼ平行である。
【0048】
次に、操作部1の操作により、検査障害物除去部13の回転部13aを回転駆動し、カップブラシが検査対象面Sに押しつけられて回転することで、検査対象面Sの一部から検査障害物を除去する(S05)。これにより、
図9のように、検査対象面Sの一部に検査障害物除去領域S1が円形状に形成される。
【0049】
次に、操作部1の操作により、ターレットモータ22を駆動し、回転軸22a、ターレット板22bを所定角度だけ回転させることで、打音検査部11を検査障害物除去部13が直前まで位置した位置まで回動させる(S06)。かかる回動により、打音検査部11は、検査障害物除去領域S1とほぼ同じ
図9の破線で示す位置に移動する。
【0050】
次に、操作部1の操作により、打音検査部11が検査障害物除去領域S1で打音検査を行い(S07)、続いて、照明部15からの光で照明しながら計測カメラ14により検査障害物除去領域S1を含む検査対象面Sを撮影する(S08)。なお、水が混濁している場合には、超音波カメラ16を用いることができる。また、カメラによる撮影は、検査障害物除去後で打音検査前に行ってもよい。かかるカメラによる検査対象面Sの撮影により水中における構造物の状態や清掃状態の把握を行うことができる。
【0051】
上述のようにして取得した打音検査結果および検査対象面Sの画像情報は、水中位置測定装置4で得た水中位置データ(検査位置データ)とともに制御部2へ送信され、制御部2のメモリに記録される(S09)。
【0052】
さらに検査を続ける場合には(S10)、工程S03に戻り、操作部1の操作により、推進部17〜19を駆動して装置本体10aを、たとえば、
図9の検査障害物除去領域S1の近傍の領域S2まで移動させてから、領域S2において同様に検査障害物除去と打音検査を行う。
【0053】
なお、検査対象物が水中の鉄鋼構造物である場合にも
図7の同様の工程により検査を行うことができる。この場合、回動工程S06で肉厚測定部12を検査障害物除去部13が直前まで位置した位置まで回動させてから、検査工程S07で肉厚測定部12により鉄鋼構造物の検査対象面において鋼板などの肉厚を測定する。
【0054】
本実施形態の水中検査システムによれば、水中にある構造物に対し打音検査や肉厚測定や画像取得による外観検査が可能な遠隔操作による水中調査ロボット方式の検査システムを実現することができる。
【0055】
また、検査対象面における検査障害物除去と検査の際に、打音検査部11または肉厚測定部12と検査障害物除去部13とは回動することで互いの位置が入れ替わるので、検査障害物除去部13が検査対象面の一部から検査障害物を除去してから、打音検査部11または肉厚測定部12を回動させることで、その検査障害物を除去した検査障害物除去領域において打音検査部11または肉厚測定部12が検査を行うことができる。このため、水中の検査対象面において同一領域で検査障害物除去と検査とを簡単かつ確実に行うことができる。
【0056】
また、装置本体10aが3次元方向に移動可能な推進部(スラスター)17〜19を有し、構造物側に装置本体10aを押し付けることで、装置本体10aを所定位置に静止させ、装置本体10aの位置を保持できるため、水中で動くことなく、検査対象面の同一領域に対して検査障害物除去および打音検査(または肉厚測定)を行うことができる。この装置本体10aの静止・保持のとき、検査対象面対応ロッド35a〜35dを検査対象面に当てることにより、検査対象面が傾斜していても装置本体10aを検査対象面に水平に押し付けることができ、装置本体10aの姿勢を確実に水平に保持できる。
【0057】
本実施形態の水中検査システムにより検査が可能な水中にある構造物として、ダム、護岸構造物、岸壁構造物、海域制御構造物、海洋構造物などのコンクリート構造物や鉄鋼構造物があるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態では、検査障害物除去部13を1つだけ設けたが、本発明はこれに限定されず、カップブラシの材質などを変更した検査障害物除去部をターレット板に2つ設け、検査対象面から検査障害物を二段階で除去するようにしてもよい
【0059】
また、本実施形態では、検査部として、打音検査部11と肉厚測定部12を設けたが、本発明はこれに限定されず、これらの少なくとも一方を変えて、または、追加して、別種類の検査や測定を行う検査部や測定部を設けてもよい。
【0060】
また、
図9の検査障害物除去領域S1において打音検査部11、肉厚測定部12が検査、測定を行ったとき、続いて、ターレットモータ22を駆動し、回転軸22a・ターレット板22bをわずかに回転させることで、検査障害物除去領域S1内の異なる位置で検査、測定を行い、同じ検査障害物除去領域S1から複数の検査データ・測定データを得るようにしてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、
図8において検査対象面Sが傾斜面である場合を例にして装置本体10aの保持状態を説明したが、本発明はこれに限定されず、検査対象面がたとえば、カーブ面や段差面であってもよい。以下の
図10,
図11に示すように、検査対象面に円柱面や段差がある場合にも、検査対象面対応ロッド35a〜35dの長さ調整により対応可能である。
【0062】
図10は、本実施形態において円柱面の検査対象面に対して保持された装置本体を概略的に示す上面図(a)および斜視図(b)である。
図10(a)(b)のように、検査対象面Sが鋼管などの円柱面である場合、上下左右の検査対象面対応ロッド35a〜35dを同じ長さに調整することで、打音検査部11,肉厚測定部12が上下左右ロッド35a〜35dの間のほぼ中央に位置するため、打音検査部11,肉厚測定部12を押し付け力の偏りがなく均等に円柱面の検査対象面Sに押し付けることができる。また、装置本体10aの姿勢を水平に保持できる。なお、
図10(a)(b)は、円柱面を有する鋼管などが鉛直方向に延びて配置されている場合を例にしたが、鋼管などが水平方向に延びて配置されている場合も上述と同様にして装置本体10aを円柱面の検査対象面Sに押し付けることができる。
【0063】
図11は、本実施形態において段差のある検査対象面に対して保持された装置本体を概略的に示す上面図(a)および斜視図(b)である。
図11(a)(b)のように、上面から見て検査対象面Sが突き出し面SHとへこみ面SLとを有し、段差面SSが鉛直方向に延びている場合、上下の検査対象面対応ロッド35a、35c(
図1)を突き出し面SHに合わせて短めの同じ長さに調整し、その反対側の上下の検査対象面対応ロッド35b、35dをへこみ面SLに合わせて長めの同じ長さに調整することで、装置本体10aを
図11(b)のように、突き出し面SHとへこみ面SLとに対し平行に保持しかつ水平に保持して段差のある検査対象面Sに押し付けることができる。
図11(a)では、打音検査部11,肉厚測定部12または検査障害物除去部13は、突き出し面SHに対応しているが、検査対象面対応ロッド35a〜35dの長さを調整してへこみ面SLに対応するようにできる。なお、
図11(a)(b)は段差面SSが延長方向に延びる場合であるが、段差面が水平方向に延びる場合には、上側の左右の検査対象面対応ロッド35a、35bを段差の一方の面に合わせて同じ長さに調整し、下側の左右の検査対象面対応ロッド35c、35dを段差の他方の面に合わせて同じ長さに調整することで、同様にして対応することができる。
【0064】
また、本実施形態では、検査対象面対応ロッド35a〜35dは、たとえば、手動により伸縮調整する機構としたが、本発明はこれに限定されず、たとえば、油圧などによる伸縮機構を有するようにしてもよく、この場合は遠隔操作によりロッド長さが調整可能である。