(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る液面レベル検出器の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る液面レベル検出器100の内部構成の概略を模式的に示す正面断面図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この液面レベル検出器100は、図示しない容器内に収容した水や油などの各種液体を被検出液体Lとしてこれらの被検出液体Lの液面レベルを検出するための検出装置である。なお、
図1においては、被検出液体Lを二点鎖線で示している。
【0020】
(液面レベル検出器100の構成)
液面レベル検出器100は、本体101を備えている。本体101は、後述するフロート検出センサ110およびフロート120をそれぞれ保持する部品であり、樹脂材を有底円筒状に形成して構成されている。この本体101は、主として、ステム102、フロートストッパ103、フランジ部104、取付部105および収容部106によって構成されている。
【0021】
ステム102は、フロート検出センサ110を収容するとともにフロート120を保持する部分であり、有底筒状に延びて形成されている。このステム102は、被検出液体Lの液面レベルの検出環境や検出仕様に応じて必要とされるフロート120の変位ストロークに対応する長さおよびフロート120の保持に必要な太さの円筒状に形成される。また、このステム102の図示下側の先端部には、フロートストッパ103が形成されている。
【0022】
フロートストッパ103は、フロート120のステム102からの脱落を防止するための部分であり、液面レベル検出器100を被検出液体Lに浸漬した場合にステム102の最下端となる部分にフロート120が嵌合して摺動する部分よりも太い外径に張り出して形成されている。より具体的には、フロートストッパ103は、フロート120における径方向突出部121の内径よりも若干大きな外径から先端部に向かってテーパ状に小径化する円錐形に形成されている。この場合、フロートストッパ103の外径は、径方向突出部121の内径に対して0.2mm〜1mmだけ大きな外径に形成するとよい。
【0023】
フランジ部104は、フロート120の変位を規制するとともに液面レベル検出器100の設置に用いられる部分であり、主として、小径部104aおよび大径部104bによって構成されている。小径部104aは、ステム102上を図示上側に上昇変位するフロート120を受け止めて変位を規制する部分でありステム102の上端部に張り出した状態で形成されている。また、大径部104bは、液面レベル検出器100を所定の設置場所に押し付けられる部分であり、小径部104aよりも張り出して形成されている。なお、フランジ部104は、小径部104aおよび大径部104bの機能を有していれば、小径部104aまたは大径部104bの一方の張出部で構成することもできる。
【0024】
取付部105は、液面レベル検出器100を所定の設置場所に取り付ける部分であり、外周面に雄ネジが形成された筒状に形成されている。そして、これらのステム102、フランジ部104および取付部105の各内部には、収容部106が形成されている。
【0025】
収容部106は、フロート検出センサ110を収容する部分であり、取付部105における図示上側端部に開口するとともにステム102におけるフロートストッパ103に対応する部分まで延びる有底穴で構成されている。この収容部106には、フロート検出センサ110が収容されている。
【0026】
フロート検出センサ110は、フロート120の接近を検出して検出信号を出力する素子である。本実施形態においては、フロート検出センサ110は、フロート120が形成する磁界に反応して電気信号を出力するリードスイッチによって構成されている。すなわち、フロート検出センサ110は、フロート120が形成する磁界を感知して電気信号からなる検出信号を出力する感知部111と、感知部111が出力する検出信号を伝達する電線部112とで構成されている。この場合、感知部111は、防水のために樹脂材でモールドされた状態で本体101におけるステム102内に配置されている。したがって、本体101におけるステム102は磁気的に中立(透磁率が「1」)に近い非磁性で構成されている。
【0027】
フロート120は、被検出液体Lの液面レベルに応じてステム102に沿って変位する部品であり、被検出液体L中で浮く浮力を有する筒状に形成されている。この場合、フロート120に形成されたステム貫通孔121は、ステム102の外径よりも十分に大きな内径に形成されており、ステム102が貫通した状態でフロート120がステム102に沿って変位可能な大きさでかつフロートストッパ103が挿通可能な大きさに形成されている。本実施形態においては、ステム102の外径が4.5mmに対してフロート120のステム貫通孔121の内径が5.7mmに形成されている。
【0028】
このフロート120は、フロート検出センサ110を作動させるために磁界を生じさせるように構成されている。具体的には、フロート120は、耐薬品性を有する樹脂材にストロンチウムフェライトなどのフェライト磁石や希土類磁石などの粉末を適量混合してリング状に射出成形されて構成されている。この場合、フロート120は、フロート120の軸方向(図示上下方向)の両端部がそれぞれN極およびS極になるように着磁するとよい。
【0029】
なお、フロート120は、被検出液体Lに浮く浮力を有して構成されていればよい。したがって、フロート120は、例えば、樹脂材を筒状体に形成してこの筒状体の一部(例えば、内周面や両端面)に磁石を埋め込み、または貼り付けて構成することもできる。
【0030】
このフロート120には、ステム貫通孔121におけるフロートストッパ103側の端部にステム貫通孔121の周方向に沿って均等配置された4つの径方向突出部122が形成されている。これら4つの径方向突出部122は、フロート120のステム貫通孔121の内周面がステム102の外周面に貼り付くことを防止するとともにフロート120のステム102からの脱落を防止するための部分であり、フロート120のステム貫通孔121の内周面およびフロート120におけるフロートストッパ103側の端面に対してそれぞれ張り出して形成されている。
【0031】
より具体的には、各径方向突出部122は、フロート120のステム貫通孔121における内周面から径方向内側、すなわち、ステム102側に張り出す内周面がステム102の外周面に対応する曲面で形成されている。本実施形態においては、各径方向突出部122は、内径が5mm、すなわち、フロート120のステム貫通孔121における内周面に対して0.35mmだけ張り出している。
【0032】
また、各径方向突出部122は、フロート120における図示下端面からステム貫通孔121の周方向に沿う円弧状に突出して形成されている。この場合、各径方向突出部122は、各径方向突出部122の内側にステム102が挿通される際にステム102に押されて径方向外側に弾性変形可能な厚さおよび突出量で形成される。本実施形態においては、各径方向突出部122は、フロート120における図示下端面から0.75mmだけ張り出すとともに、この張り出した部分が外径7mm、すなわち、厚さが1mmに形成されている。なお、この各径方向突出部122の大きさ、形状、形成数は、液面レベル検出器100の使用に応じて適宜設定されることは当然である。
【0033】
また、フロート120は、本体101におけるフランジ部104側の図示上端面には、フロート120の周方向に沿って4つの軸方向突出部123がそれぞれ形成されている。これら4つの各軸方向突出部123は、フロート120における図示上端面がフランジ部104に貼り付くことを防止するための部分であり、フロート120の図示上端面に対してそれぞれ張り出し半球状に形成されている。本実施形態においては、各軸方向突出部123は、フロート120における図示上端面に対して1mmの突出量で形成されている。
【0034】
(液面レベル検出器100の製造)
次に、液面レベル検出器100の製造過程について説明する。液面レベル検出器100を製造する作業者は、まず、本体101、フロート検出センサ110およびフロート120をそれぞれ用意する。この場合、本体101は、樹脂材の射出成形によってステム102、フロートストッパ103、フランジ部104、取付部105および収容部106が一体的に成形されている。また、不トート120は、樹脂材の射出成形によってステム貫通孔121、径方向突出部122および軸方向突出部123が一体的に成形された筒状に形成される。
【0035】
次に、作業者は、フロート検出センサ110を本体101内に取り付ける。具体的には、作業者は、フロート検出センサ110における感知部111を本体101におけるステム102の内側の収容部106内に配置して図示しない接着剤を用いて固定する。
【0036】
次に、作業者は、フロート120を本体101に組み付ける。具体的には、作業者は、
本体101におけるフロートストッパ103をフロート体120におけるステム貫通孔121の軸方向突出部123側から挿入して径方向突出部122を貫通させる。この場合、径方向突出部122は、フロートストッパ103に押圧されることによって径方向外側に弾性変形するとともに、フロートストッパ103の通過によって弾性変形が解消されて元の位置に復帰する。これにより、作業者は、フロート体120を本体101のステム102上に軸方向に摺動可能かつフロートストッパ103によって脱落不能な状態で保持させることに液面レベル検出器100を完成させることができる。
【0037】
(液面レベル検出器100の作動)
次に、上記のように構成した液面レベル検出器100の作動について説明する。液面レベル検出器100の使用者は、まず、液面レベル検出器100を被検出液体Lを収容する図示しない容器に取り付けるとともに、フロート検出センサ110の電線部112を液面レベル検出器100からの検出信号を利用する図示しない制御装置やブザーなどの出力装置に電気的に接続する。この場合、使用者は、被検出液体Lにおける液面レベルを検出する位置にフロート検出センサ110における感知部111が位置するようにステム102を鉛直向きに配置して本体101を取付部105を介して取り付ける。
【0038】
これにより、液面レベル検出器100は、被検出液体Lの液面レベルの検出を開始する。具体的には、液面レベル検出器100は、被検出液体Lの液面レベルに応じてフロート120がステム102の軸方向に沿って上昇または下降する。そして、液面レベル検出器100は、フロート120がフロート検出センサ110の感知部111に近接することによって検出信号を出力して被検出液体Lの液面レベルが検出位置に達したことを検出する。
【0039】
この場合、液面レベル検出器100は、フロート120に径方向突出部122が形成されているため、ステム貫通孔121の内周面が被検出液体Lによってステム102の外周面に軸方向に連続的に貼り付くことが防止される。より具体的には、フロート120は、径方向突出部122のみ、または径方向突出部122とステム貫通孔121における径方向突出部122とは反対側の端部とがそれぞれ接触した状態でステム102上を変位する。これにより、液面レベル検出器100は、フロート120のステム102上での円滑な変位が確保されるため、被検出液体Lの液面レベルを精度良く検出することができる。
【0040】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、液面レベル検出器100は、フロート120におけるステム貫通孔121の内周面に同内周面に対して径方向内側に突出する径方向突出部122を有しているため、ステム貫通孔121の内周面とステム102の外周面とが軸方向に直接連続的に接触する面積が減少する。これにより、液面検出器100は、フロート120の内周面とステム102の外周面との間に介在する被検出液体Lの表面張力による密着力を低下させることができ、フロート120をステム102に対して変位し易くすることができる。この結果、液面レベル検出器100は、液面レベルの検出精度を高精度に維持することができる。
【0041】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付している。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、径方向突出部122は、ステム貫通孔121の端部から軸方向に張り出して形成した。しかし、径方向突出部122は、例えば、
図2に示すように、ステム貫通孔121の軸方向からはみ出さず内周面にのみ形成することもできる。この場合、径方向突出部122は、ステム貫通孔121における両端部側の少なくとも一方に形成すればよいが、
図2に示すように、ステム貫通孔121における両端部側に形成してもよい。
図2に示す液面レベル検出器100においては、径方向突出部122は、ステム貫通孔121の内周面における両端部側にそれぞれ4つずつ凸状の球面状に形成している。
【0043】
また、この場合、ステム102の先端部にフロート120の抜けを防止するためにフロートストッパ103をステム102と一体的に成形してもよいが、
図2に示すように、フロートストッパ103をステム102の先端部に凹状に凹んだリング状の切欠き溝103aを形成するとともに、この切欠き溝103aに平板リング状(または平板C字状)のストッパ板103bを嵌め込んで構成してフロート120の抜けを防止してもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、径方向突出部122は、内周面をステム102の外周面に対応する曲面状に形成した。しかし、径方向突出部122は、球面形、錘状(円錐、三角錐状、四角錐状など)、ステム貫通孔121の軸方向に沿って直線、蛇行状(波線状)、または螺旋状に凸状に突出して延びて形成することができる。また、径方向突出部122は、ステム貫通孔121の周方向に沿って直線、または蛇行状(波線状)に凸状に突出して延びるリング状に形成することもできる。これによれば、液面レベル検出器100は、径方向突出部122とステム102の外周面とが点接触または線接触するため、両者の接触面積を小さくして密着力を抑えることができる。これにより、液面レベル検出器100は、より効果的にフロートの変位のし易さを確保することができる。なお、軸方向突出部123についても径方向突出部122と同様に球面状のほか、錘状に形成することもできる。
【0045】
また、上記実施形態においては、径方向突出部122は、ステム貫通孔121の周方向に沿って4つ形成した。しかし、径方向突出部122は、ステム貫通孔121内または同ステム貫通孔121に隣接して少なくとも1つ形成されていればよい。この場合、径方向突出部122としては、ステム貫通孔121の周方向に連続した所謂リング状体、同リング状体を2分割以上して断続的に形成することもできる。また、径方向突出部122は、例えば、半球状に形成してステム貫通孔121の周方向に沿って複数(好適には3つ以上)均等に配置して形成することもできる。
【0046】
また、上記実施形態においては、液面レベル検出器100は、フロート120の図示上側端面に軸方向突出部123を設けた。しかし、液面レベル検出器100は、フロート120の両端部に軸方向突出部123を形成してもよいし、軸方向突出部123を省略(
図3参照)して構成することもできる。
【0047】
また、上記実施形態においては、液面レベル検出器100は、ステム102上に直接フロート120を設けて構成した。しかし、液面レベル検出器100は、例えば、
図3および
図4にそれぞれに示すように、ステム102の外側にフロートホルダ130を介してフロート120を設けて構成することもできる。
【0048】
ここで、フロートホルダ130は、フロート120を摺動自在な状態で保持する金属製または樹脂製の部品であり、断面形状がC字状に形成されて径方向に弾性変形可能な筒状に形成されている。このフロートホルダ130は、フロート120の変位範囲の両端部にフロート120における径方向突出部122の内径よりも大きな外径のフロートストッパ131がそれぞれ形成されている。フロートストッパ131は、フロート120の変位範囲を規制するとともにフロートホルダ130からの脱落を防止するための部品である。
【0049】
また、フロートホルダ130は、各フロートストッパ131に隣接してフロート補助磁石132a,132bが設けられるとともに、これらの各フロート補助磁石132a,132bに隣接して磁石ストッパ133が形成されている。各フロート補助磁石132a,132bは、フロート120の上方への変位を補助するためのリング状の磁石であり、フロート120の上方および下方にそれぞれ配置されている。
【0050】
これらのうち、フロート120に対して上方に配置されるフロート補助磁石132aは、対向するフロート120の上端面の着磁磁極とは異なる磁極が前記上端面に対向する向きで設けられる。また、フロート120に対して下方に配置されるフロート補助磁石132bは、対向するフロート120の下端面の着磁磁極と同じ磁極が前記下端面に対向する向きで設けられる。
【0051】
磁石ストッパ133は、フロート補助磁石132a,132bをフロートストッパ131とともに挟んで保持するための部分であり、フロート補助磁石132a,132bの内径よりも大きな外径に張り出したフランジ状に形成されている。これにより、フロート120は、フロート補助磁石132bによって上方に押されるとともにフロート補助磁石132aによって上方に吸引されて上方への変位が補助される。
【0052】
フロートホルダ130の内径は、ステム102の外径以下の大きさで形成されている。したがって、液面レベル検出器100を組み立てる作業者は、フロートホルダ130の外周面を押し潰して外径を弾性的に縮めた状態でフロート120およびフロート補助磁石132a,132bをそれぞれ嵌合させた後、フロートホルダ130をステム102に圧入して固定する。この場合、作業者は、フロートホルダ130をステム102に圧入のみで固定してもよいが、フロートホルダ130の外周部の一部を塑性変形させるカシメ加工、溶接または接着によってステム102上に固定することができる。
【0053】
このように構成した
図3に示す液面レベル検出器100においては、フロート120は、フロートホルダ130上を摺動して被検出液体Lの液面レベルを検出する。この場合、液面レベル検出器100は、ステム102の外周面上に断面がC字状のフロートホルダ130が設けられるとともに、このフロートホルダ130の両端部側にフロートストッパ131がそれぞれ形成されているため、ステム102の先端側にフロート120のステム102からの脱落を防止するための従来技術におけるストッパおよび同ストッパを保持するための切欠き溝が不要になり、液面レベル検出器100の製造作業負担を軽減できるとともにフロート120のステム102からの脱落およびステム102の切欠き溝の形成による強度低下も防止することができる。また、液面レベル検出器100は、切欠き溝が不要なためステム102の肉厚を薄くして軽量化することもできるとともにステム102の長尺化も可能にすることができる。
【0054】
なお、
図3に示す液面レベル検出器100においては、金属材料や樹脂材料でそれぞれ構成したハウジング部104と取付部105との筒状の一体物内に金属材料や樹脂材料で構成したステム102を挿し込んで本体101を構成することができる。また、
図3に示す液面レベル検出器100においては、フロート補助磁石132a,132bおよび磁石ストッパ133をそれぞれ省略して構成することもできる。また、
図3においては、液面レベル検出器100におけるステム102の中央部を省略して示している。
【0055】
また、上記実施形態においては、フロート検出センサ110を本体101におけるステム102の内部に配置して、フロート120の位置を検出するように構成した。すなわち、このフロート検出センサ110が、本発明に係るフロート検出手段に相当する。しかし、フロート検出センサ110は、フロート120の位置に基づいて検出信号を出力できればよいため、ステム102以外の場所、例えば、フランジ部104内に設けることもできる。また、フロート検出センサ110は、磁気以外を用いてフロート120の位置を検出することもできる。フロート検出センサ110は、例えば、ステム102やフランジ部104の外周部に機械的接触を検出するリミットスイッチで構成することもできる。