(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のハンマーは、同一の形状及びサイズを有するハンマーで構成され、対応する前記鍵の音階に応じて、前記各ハンマーの前記軟質部における所定部位が、対応する前記発音体に衝突するよう、その際の当該各ハンマーの回動角度が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の玩具ピアノの発音装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような玩具ピアノでは通常、ハンマーは木材や合成樹脂で構成されている。合成樹脂製のハンマーは一般に、表面硬度が木製のものに比べて高く、そのため、発音体に衝突することによって発生する音において、その周波数成分のうちの最も低い基音に対し、不適正な倍音の周波数成分が多くなる傾向があり、良好な音色が得られないことがある。また、音色は、ハンマーが発音体に衝突する際の両者の接触時間と密接な関係を有しており、基音の周波数成分が多く、豊かでまろやかな良好な音色を得るためには、適切な接触時間を確保する必要がある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、押鍵時にハンマーが発音体に衝突する際の両者の接触時間を容易に調整することができ、それにより、良好な音色を得ることができる玩具ピアノの発音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、鍵盤が操作されることによって音を発する玩具ピアノの発音装置であって、鍵盤が載置された筬と、鍵盤を構成し、各々が前後方向に延びるとともに、筬に揺動自在に支持され、左右方向に並設された複数の鍵と、各々が対応する鍵の音階に応じて所定長さ延びるとともに複数の鍵に対応するように左右方向に並設され、押鍵時に音を発するための複数の発音体と、複数の鍵に対応するように左右方向に並設され、押鍵時に押鍵された鍵に連動して、対応する発音体に衝突することにより、発音体から音を発生させる複数のハンマーと、を備え、複数のハンマーの各々は、合成樹脂から成り、押鍵時に発音体に衝突する衝突面付近の所定位置に左右方向に貫通する空洞部が形成されることにより、ハンマーの衝突面と空洞部の間に、ハンマー自体の硬さよりも見掛け上軟らかい軟質部を有して
おり、複数の発音体の各々は、複数の鍵の後方において、上下方向に延びるように設置されており、複数のハンマーの各々は、複数の鍵の各々の後端部に、左右方向に延びる支軸を中心として回動自在に支持されかつ垂下した状態に設けられ、押鍵に伴って後方に回動するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、各々が前後方向に延びるとともに、載置された筬に揺動自在に支持され、左右方向に並設された複数の鍵によって、鍵盤が構成されている。また、対応する鍵の音階に応じて所定長さ延びる複数の発音体が、複数の鍵に対応するように左右方向に並設されている。さらに、複数のハンマーが、複数の鍵に対応するように左右方向に並設されている。押鍵時に鍵が押し下げられると、それに連動するハンマーが、対応する発音体に衝突する。これにより、その発音体が振動し、押鍵された鍵の音階に対応する音が発生する。
【0010】
上記の各ハンマーは、合成樹脂から成り、押鍵時に発音体に衝突する衝突面付近の所定位置に、左右方向に貫通する空洞部が形成されている。これにより、ハンマーの上記衝突面と空洞部の間に、ハンマー自体の硬さよりも見掛け上軟らかい軟質部が生成される。この軟質部を介して、ハンマーが発音体に衝突すると、その軟質部は、発音体からの反力によって拉げ、一時的に変形する。その結果、空洞部が形成されないことで軟質部を有していないハンマーによって発音体を打つ場合に比べて、ハンマーと発音体の接触時間を長くすることができる。このように、ハンマーの所定位置に空洞部を形成するという、比較的簡単な構成により、押鍵時にハンマーが発音体に衝突する際の両者の接触時間を容易に調整することができ、それにより、豊かでまろやかな良好な音色を得ることができる。
【0012】
また、上記の構成によれば、複数の鍵の後方において、各発音体が上下方向に延びるように設置されているので、前後方向に水平に延びる発音体を有する前述した従来のグランド型の玩具ピアノと異なり、玩具ピアノの奥行き寸法を大きくすることがない。また、各ハンマーは、鍵の後端部に、左右方向に延びる支軸を中心として回動自在に支持されかつ垂下した状態に設けられ、押鍵時に後方に回動することによって、対応する発音体に前方から衝突する。これにより、鍵の後端部には、ハンマーの重さによる荷重が常に作用するので、鍵の押し下げが解除されたときには、その鍵を、押鍵前の元の状態(離鍵状態)に迅速に戻すことができる。以上のように、本発明によれば、奥行き寸法が短く、全体としてコンパクトに構成することができ、特にアップライト型に適した玩具ピアノの発音装置を得ることができる。
【0013】
請求項
2に係る発明は、請求項
1に記載の玩具ピアノの発音装置において、複数のハンマーは、同一の形状及びサイズを有するハンマーで構成され、対応する鍵の音階に応じて、各ハンマーの軟質部における所定部位が、対応する発音体に衝突するよう、その際の各ハンマーの回動角度が設定されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、複数のハンマーが、同一の形状及びサイズを有するハンマーで構成されているので、全てのハンマーを単一種類の金型などを用いて、比較的低コストで作製することができる。
【0015】
また、ハンマーが発音体に衝突する場合において、対応する鍵の音階に応じて、ハンマーの回動角度が設定されており、各ハンマーの軟質部における所定部位が、対応する発音体に衝突する。例えば、ハンマーの軟質部の中央付近が発音体に当接するように衝突すると、その軟質部は、発音体からの反力によって拉げ、比較的大きく一時的に変形する。これにより、ハンマーが発音体に衝突する際の両者の接触時間が比較的長くなる。一方、ハンマーの軟質部の端部付近が発音体に当接するように衝突すると、その軟質部は、上記の場合に比べて、変形量が小さく、それにより、ハンマーが発音体に衝突する際の両者の接触時間が短くなる。
【0016】
上記の接触時間については一般に、低音側では長く、高音側では短い方が、良好な音色を得られることが確認されている。したがって、同一構成のハンマーを用いる場合、発音体に衝突するハンマーの軟質部において、低音側では中央付近が、高音側では端部付近が当接するよう、各ハンマーが対応する発音体に衝突するときの回動角度を設定することにより、低音から高音にわたって良好な音色を得ることができる。
【0017】
請求項
3に係る発明は、請求項
2に記載の玩具ピアノの発音装置において、複数のハンマーは、離鍵状態において前後方向に同一の位置に設置されており、複数の発音体は、対応する鍵の音階に応じて、前後方向の設置位置が設定されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、離鍵状態において、全てのハンマーが前後方向に同一の位置に左右方向に並設される一方、全ての発音体が、対応する鍵の音階に応じて、前後方向の設置位置が設定された状態で、左右方向に並設されている。すなわち、上下方向に延びる発音体が、鍵及びハンマーに近い前寄りの位置に設置されている場合には、その発音体に回動するハンマーが衝突するときの回動角度は比較的小さくなる一方、発音体が後ろ寄りの位置に設置されている場合には、その発音体に回動するハンマーが衝突するときの回動角度は比較的大きくなる。このように、左右方向に並設された複数の発音体の前後方向の設置位置を設定するだけで、発音体に衝突するときの各ハンマーの回動角度を簡単に調整でき、前述した請求項
2の作用、効果を容易に得ることができる。
【0019】
請求項
4に係る発明は、
請求項1から3のいずれかに記載の玩具ピアノの発音装置において、複数のハンマーの各々は、後方に凸状に形成されかつ後端部の側面形状が半円状のハンマー本体部を有しており、空洞部は、ハンマー本体部に、円弧状又は円形に形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の玩具ピアノの発音装置において、空洞部は、ハンマー本体部の後端部において、上下方向の中央部又は下部に形成されていることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による玩具ピアノの発音装置を適用したアップライト型の玩具ピアノの外観を示しており、
図2は、その玩具ピアノの内部構造を示している。両図に示すように、この玩具ピアノ1は、横長ボックス状に形成された木製のケース2と、このケース2の上下方向の中央よりも若干高い位置に設けられた鍵盤3と、この鍵盤3が操作されることによって音を発する発音装置4とを備えている。
【0023】
ケース2の左右両端部の所定高さには、前方に突出する左右の腕木5、5が設けられている。これらの腕木5、5の間には、平面形状が矩形状に形成された木製の棚板6が設けられ、また両腕木5、5の下側にはいずれも、それらを下方から支持するスタンド7、7が設けられている。棚板6の上面には、鍵盤3を支持するための筬8が載置された状態で固定されている。なお、棚板6の後端には、左右方向の全体にわたり、フェルトなどから成る緩衝材6aが取り付けられている。
【0024】
筬8は、例えば合成樹脂から成り、平面形状が井桁状に形成されている。この筬8の前後方向(
図2(a)の左右方向)の中央付近には、上方に所定長さ突出しかつ左右方向(
図2(a)の表裏方向、同図(b)の左右方向)の全体にわたって延びる鍵支持レール8aが設けられている。また、筬8には、鍵支持レール8aの前方及び後方の所定位置にそれぞれ、上方に所定長さ突出し、鍵盤3の後述する鍵9と同じ数分、左右方向に並設された前側鍵ガイド8b及び後ろ側鍵ガイド8cが設けられている。
【0025】
さらに、筬8の後端部には、後方に所定長さ突出しかつ筬8の左右方向の全体にわたって延びるストッパ8dが設けられている。このストッパ8dは、押鍵時に、後述するハンマー11の係止部15が下方から当接したときに、その係止部15の上方への移動を阻止するためのものである。加えて、ストッパ8dは、鍵盤3の後述する各鍵9の後端部が上方から当接することにより、鍵9の後方への揺動を阻止するとともに、全ての鍵9を適正な位置に保持する機能を有している。
【0026】
また、ストッパ8dの上面及び下面には、左右方向の全体にわたり、フェルトなどから成る緩衝材が取り付けられている。したがって、ストッパ8dにハンマー11の係止部15や鍵9の後端部が当接しても、その際に生じやすい雑音の発生を低減することができる。以上のように構成された筬8上に、鍵盤3が載置され、下方から支持されている。
【0027】
鍵盤3は、白鍵9a及び黒鍵9bから成る複数(本実施形態では32本)の合成樹脂製の鍵9で構成されている。
図3(b)に示すように、鍵9は、前後方向(同図の左右方向)に所定長さ延びており、後端部(同図の右端部)には、下方に所定長さ突出し、後述するハンマー11が連結されるハンマー連結部10が設けられている。このハンマー連結部10の所定位置には、左右方向に貫通し、ハンマー11の後述する支軸14が係合する軸孔10aが形成されている。また、鍵9の前後方向の中央よりも若干後ろ側の所定位置には、下方に開放する凹状の支点受け部9cが設けられており、前述した筬8の鍵支持レール8aに係合している。したがって、鍵9は、鍵支持レール8aの上端を支点として、前後に揺動自在に支持されている。
【0028】
なお、図示は省略するが、鍵9は、大部分が下方に開放する断面コ字状に形成されるとともに、後部が左右に分岐する二股状に形成されている。そして、前述した筬8の前側鍵ガイド8b及び後ろ側鍵ガイド8cがそれぞれ、鍵
9の前部及び後部に下方から挿入した状態で係合している。これにより、鍵9は、押鍵時に、左右の横振れが防止されながら、円滑に揺動する。
【0029】
発音装置4は、上記鍵盤3と、各鍵9の後端部のハンマー連結部10に回動自在に連結された複数のハンマー11と、鍵9の後方において、各々が上下方向に延び、ハンマー11で前方から打たれることによって音を発する複数の発音体21とを備えている。
【0030】
図3(b)に示すように、ハンマー11は、全体が所定種類の合成樹脂(例えばポリプロピレン)から成り、側面形状がほぼT字状に形成されたアーム12と、このアーム12の下端部に設けられ、後方に凸状に形成されたハンマー本体部13とを有している。アーム12の上端部には、左右両側(
図3(b)の表裏両側)に突出する支軸14が設けられている。また、アーム12の上端部には、支軸14の前方に、押鍵時に前述した筬8のストッパ8dに当接して係止される係止部15が設けられている。加えて、アーム12の上端部には、支軸14の後方に、押鍵時に発音体21側の後述するストッパ27に当接する当接部16が設けられている。
【0031】
ハンマー本体部13は、左右方向に所定の厚みを有するとともに、比較的大きな側面形状を有しており、発音体21側の後端部が半円状に形成されている。また、ハンマー本体部13の後端部の所定位置には、左右方向に貫通する円弧状の空洞部17が形成されている。この空洞部17が形成されることにより、ハンマー本体部13には、それ自体の後端面と空洞部17の間に、薄肉に形成されかつハンマー本体部13自体の硬さよりも見掛け上軟らかい軟質部13aが設けられている。
【0032】
以上のように構成されたハンマー11は、左右の支軸14、14が、鍵9の二股状のハンマー連結部10の軸孔10aに内側から挿入された状態で、ハンマー連結部10に支軸14を中心として回動自在に支持されかつ垂下した状態に設けられている。
【0033】
発音体21は、アルミなどの金属製のパイプから成り、鍵9の音階に応じて上下方向に所定長さ延びるとともに、鍵9に対応するように左右方向に並設されている。より具体的には、
図2(b)に示すように、発音体21は、低音側(左側)で長く、高音側(右側)で短い長さ寸法を有しており、鍵9と同じ数分(本実施形態では32本、
図2(b)では4本のみ図示)、左右方向に並設されている。また、これらの発音体21は、後述する枠体22を介して、ケース2内の後半部の所定位置に設置されている。
【0034】
図2に示すように、枠体22は、左右方向に並設された全ての発音体21を間にした状態で、互いに前後対称に構成された前枠23及び後枠24と、これらの前枠23及び後枠24の左右両端部をそれぞれ連結する連結枠25(
図2(b)では右側のもののみ図示)とを有している。
図2(b)に示すように、前枠23は、左右方向に延びる帯状の板材から成り、互いに上下方向に所定間隔を隔てて配置された上板23a及び下板23bを有している。一方、後枠24は、前枠23の上述した上板23a及び下板23bと同様の上板24a及び下板24bを有している。また、前枠23及び後枠24の上板23a、24a及び下板23b、24bの発音体21側の面にはいずれも、全ての発音体21を前後から挟持し、上下方向に不動な状態で支持するための発音体挟持部材26が取り付けられている。
【0035】
各発音体挟持部材26は、所定の軟質材(例えば発泡ウレタン、発泡ポリエチレン)から成る細長い棒状に形成され、傾斜しながら左右方向に延びている。そして、4つの発音体挟持部材26により、各発音体21は、長さ方向の所定の2箇所で前後から挟持されている。具体的には、発音体21の全体の長さをLとすると、両端から0.224Lの位置が挟持されている。これにより、各発音体21は、ハンマー11で打たれたときに、前後の発音体挟持部材26、26で挟持された上下2箇所を節として、最適に振動し、良好な音を発することができる。
【0036】
また、前枠23の上板23aの前面側には、押鍵時にハンマー11の回動を抑制するためのストッパ27が設けられている。具体的には、ストッパ27は、上板23aの前面上部に固定された左右方向に延びる取付部材28の下面に、左右方向に延びかつ全てのハンマー11に対応するように取り付けられている。このストッパ27は、弾性を有する材料(例えば発泡ウレタン)から成る細長い棒状に形成されている。加えて、ストッパ27の位置や弾性などは、押鍵時にハンマー11の当接部16がストッパ27に最初に当接したときにのみ、ハンマー本体部13が発音体21に衝突するように設定されている。
【0037】
次に、
図4及び
図5を参照して、玩具ピアノ1における発音動作、具体的には、押鍵時における鍵9及びハンマー11の動作について説明する。
図4(a)は、鍵9が押し下げられる前の状態、すなわち離鍵状態を示している。この離鍵状態では、ハンマー11の係止部15が、上方の筬8のストッパ8dとの間に隙間を隔てて対向している。
【0038】
上記の離鍵状態から、
図4(b)の白抜き矢印で示すように、鍵9の前端部を押し下げると、鍵9が前下がりに揺動し、鍵9の後端部、すなわちハンマー連結部10が上方に移動する。これに伴い、ハンマー11も上方に移動し、係止部15が筬8のストッパ8dに下方から当接する。
【0039】
この状態から、鍵9をさらに押し下げると、ハンマー11は、係止部15が筬8のストッパ8dによって上方への移動が阻止されるとともに、ハンマー11の支軸14が鍵9のハンマー連結部10によって引き上げられる。これにより、ハンマー11は、
図5(a)に示すように、支軸14を中心として反時計方向に回動する。またこの場合、同図に示すように、ハンマー11(ハンマー本体部13)が発音体21を打つ直前に、ハンマー11のアーム12の当接部16が発音体21側のストッパ27に下方から当接する。
【0040】
そして、
図5(b)に示すように、鍵9を最下位まで押し下げ、鍵9の前端下面が筬8の前端上面に当接したときには、ハンマー11は、アーム12の当接部16でストッパ27を押圧しながらさらに回動し、ハンマー本体部13を介して発音体21を前方から打つ。より具体的には、ハンマー本体部13は、軟質部13aを介して、発音体21に衝突する。この場合、ハンマー本体部13が発音体21に接触する時間を比較的長く確保でき、それにより、その発音体21から良好な音色の音を発生させることができる。
【0041】
なお、ハンマー11が上記のように反時計方向に回動して発音体21を打った後、その反動で一旦、時計方向に回動し、再度、反時計方向に回動することがある。この場合、前述したように、発音体21側のストッパ27は、ハンマー11の当接部16がストッパ27に最初に当接したときにのみ、ハンマー本体部13が発音体21に衝突するのを許容するので、それ以降、ハンマー11の当接部16がストッパ27に当接することで、ハンマー本体部13が発音体21を再度打つことはない。すなわち、ハンマー11が発音体21を1度打った後にさらに打つようないわゆる2度打ちが防止される。
【0042】
その後、鍵9の押し下げを解除すると、鍵9の後端部にハンマー11の重さによる荷重が作用する。これにより、その鍵9は、
図4(a)に示す元の離鍵状態に、迅速に戻る。
【0043】
次に、
図6及び
図7を参照して、押鍵時に回動するハンマー11とそれが衝突する発音体21との関係について、さらに詳細に説明する。
図6(a)は、上述した玩具ピアノ1の発音装置4におけるハンマー11及び発音体21を示している。この状態から、押鍵時に、押し下げられた鍵9に連動して、ハンマー11が後方に回動し、ハンマー本体部13が発音体21に衝突すると、同図(b)に示すように、ハンマー本体部13の軟質部13aの中央付近が発音体21に当接する。この場合、同図(b)において拡大して示すように、ハンマー本体部13の軟質部13aは、発音体21からの反力によって拉げ、比較的大きく一時的に変形する。これにより、ハンマー本体部13が発音体21に衝突する際の両者の接触時間を比較的長く確保することができる。
【0044】
図7(a)は、上述した
図6の発音体21の設置位置に対し、発音体21を後方に所定距離、移動して設置し、ハンマー11との間の距離を広げた状態を示している。この状態から、上述した
図6と同様にハンマー11が後方に回動し、ハンマー本体部13が発音体21に衝突すると、
図7(b)に示すように、ハンマー本体部13の軟質部13aの下端付近が発音体21に当接する。この場合には、発音体21に当接する軟質部13aの部位(下端付近)の見掛け上の硬度が、前述した
図6(b)の発音体21に当接する軟質部13aの部位(中央付近)の硬度に比べて高く、そのため、
図7(b)において拡大して示すように、
図6(b)の場合に比べて、軟質部13aの変形量が小さくなる。その結果、
図7において、ハンマー本体部13が発音体21に衝突する際の両者の接触時間は、
図6の場合、すなわち、離鍵状態におけるハンマー11と発音体21の間の距離が狭い
図6の場合に比べて、短くなる。
【0045】
前述したように、上記の接触時間については、低音側では長く、高音側では短い方が、良好な音色を得られることが確認されている。このため、低音側では、
図6に示すように、押鍵時にハンマー本体部13の軟質部13aの中央付近が発音体21に当接するよう、発音体21を設置することが好ましい。一方、高音側では、
図7に示すように、押鍵時にハンマー本体部13の軟質部13aの下端付近が発音体21に当接するよう、発音体21を設置することが好ましい。具体的には、上述した玩具ピアノ1の左右方向に並設された全ての発音体21について、低音側から高音側に向かって、鍵盤3やハンマー11との前後方向の距離を次第に大きくするように設置することが好ましい。これにより、ハンマー本体部13が発音体21に衝突する際の両者の接触時間は、低音側で長く、高音側ほど短くなり、それにより、低音から高音にわたって、良好な音色を得ることができる。
【0046】
以上詳述したように、本実施形態によれば、合成樹脂製の各ハンマー11において、ハンマー本体13の所定位置に空洞部17を形成することにより、ハンマー本体部13自体の硬さよりも見掛け上軟らかい軟質部13aが生成される。押鍵時に、押し下げられた鍵9に連動して、ハンマー11が後方に回動する場合、軟質部13aを介して、ハンマー本体部13が発音体21に衝突するので、その軟質部13aが拉げて一時的に変形することで、ハンマー本体部13と発音体21の接触時間を長くすることができる。このように、ハンマー本体部13の所定位置に空洞部17を形成するという、比較的簡単な構成により、押鍵時にハンマー11が発音体21に衝突する際の両者の接触時間を容易に調整することができ、それにより、豊かでまろやかな良好な音色を得ることができる。
【0047】
また、複数の鍵9の後方において、各発音体21が上下方向に延びるように設置されているので、前後方向に水平に延びる発音体を有する前述した従来のグランド型の玩具ピアノと異なり、玩具ピアノ1の奥行き寸法を大きくすることがない。また、各ハンマー11は、鍵9の後端部に、左右方向に延びる支軸14を中心として回動自在に支持されかつ垂下した状態に設けられ、押鍵時に後方に回動することによって、対応する発音体21に前方から衝突する。これにより、鍵9の後端部には、ハンマー11の重さによる荷重が常に作用するので、鍵9の押し下げが解除されたときには、その鍵9を、押鍵前の元の離鍵状態に迅速に戻すことができる。以上のように、本実施形態によれば、奥行き寸法が短く、全体としてコンパクトに構成することができ、特にアップライト型に適した玩具ピアノ1の発音装置4を得ることができる。
【0048】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。実施形態では、本発明の発音装置をアップライト型の玩具ピアノに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、空洞部が形成されることで軟質部が生成されるハンマーを備えた発音装置を、前述したグランド型の玩具ピアノに適用することも可能である。
【0049】
また、ハンマー11における空洞部17の位置及び形状については、前述したものに限定されるものではない。
図8は、同図(a)に示す前述した空洞部17を有するハンマー11に対し、ハンマー本体部13における空洞部17の位置及び/又は形状が異なる各種のハンマーを例示している。同図(a)のハンマー11Aでは、円弧状の空洞部17aがハンマー本体部13の後端部(同図の右端部)の下部に形成されているのに対し、同図(b)のハンマー11Bでは、同一形状の空洞部17bがハンマー本体部13の後端部における上下方向の中央部に形成されている。
【0050】
また、
図8(c)及び(d)にそれぞれ示すハンマー11C及び11Dでは、上記のハンマー11A及び11Bと異なり、空洞部17c及び17dが所定径を有する円形に形成されている。そして、ハンマー11Cでは、空洞部17cがハンマー本体部13の後端部の下部に形成される一方、ハンマー11Dでは、空洞部17dがハンマー本体部13の後端部における上下方向の中央部に形成されている。
【0051】
上記のように、ハンマー本体部13に形成される空洞部17については、その位置及び形状を、対応する鍵9の音階に応じて、適宜設定することにより、押鍵時にハンマー11が発音体21に衝突する際の両者の接触時間をきめ細かく調整することができる。また、離鍵状態において、全てのハンマー11及び発音体21の間で、前後方向の距離を同一に設定した場合でも、各ハンマー11の空洞部17を、対応する鍵9の音階に適した位置に形成することにより、押鍵時に各ハンマー11が発音体21に衝突する際の両者の接触時間を、鍵9の音階に応じて調整することができる。
【0052】
また、実施形態で示した玩具ピアノ1における筬8、鍵9、ハンマー11及び発音体21の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。