特許第6405169号(P6405169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405169
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ねじ締め装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   B23P19/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-187788(P2014-187788)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-59978(P2016-59978A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】坂根 圭
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 拓夫
(72)【発明者】
【氏名】冨沢 文男
(72)【発明者】
【氏名】戸張 正崇
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−186541(JP,A)
【文献】 特開2003−305663(JP,A)
【文献】 特開平08−323561(JP,A)
【文献】 特開2008−261801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ締め用モータにより回転する駆動ビットを備えたねじ締めユニットと、移動用サーボモータの回転を往復移動に変換してこの往復移動によりねじ締めユニットを前進後退させる移動ユニットと、前記ねじ締め用モータおよび移動用サーボモータを制御する主制御部と、複数個の基準トルク値および当該基準トルク値毎に駆動ビットに付加する基準推力を記憶する記憶部とを備えたねじ締め装置であって、前記主制御部は所定締付位置での設定締付けトルク値が入力されると、この設定締付けトルク値を挟む2個の基準トルク値およびこれら基準トルク値それぞれに対応する基準推力を呼出して、設定締付けトルク値に対する推力を線形補間により算出する推力算出部を備えることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項2】
前記設定締付けトルク値は、設定本締めトルク値であることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め装置。
【請求項3】
前記設定締付けトルク値は、設定仮締めトルク値であることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定締付けトルク値に対応してあらかじめ用意された推力を駆動ビットに付加するとともに、設定締付けトルク値が変更されても、その変更に応じて新たな推力を算出することができるねじ締め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、被締結部材をねじにより相手部材に締結する際には、ねじ締め用モータにより回転する駆動ビットを備えたねじ締め装置が使用されている。このねじ締め装置にあっては、図12に示すようにねじ54の頭部54bが被締結部材(図示せず)に着座する際に駆動ビット53eの持つ回転力Frがねじ54の駆動穴54aの傾斜面54aaに作用して、駆動ビット53eに駆動穴54aから離脱する方向のせり上がり力の垂直成分Fco(以下、カムアウト力という)が発生する(特に、十字穴の場合顕著に現れる)。そのため、このカムアウト力Fcoにより駆動ビット53eがねじ54の駆動穴54aから離脱するのを防止するため、駆動ビット53eに常に一定推力を加えるようにした特許文献1に記載のねじ締め装置が創案されている。
【0003】
このねじ締め装置は、駆動ビットを備えたねじ締めユニットと、ACサーボモータの回転を昇降動作に変換して駆動ビットに推力を付与する推力付与手段とを有している。この推力付与手段によれば、ACサーボモータの電流値を調整することにより任意の推力を駆動ビットに付与することができるので、設定締付けトルク値が変更になっても新たな設定締付けトルク値に応じて駆動ビットに加える推力をあらかじめ調整することができる。このようなねじ締め装置にあっては、図13に示すようにねじ嵌合開始時、仮締め工程、本締め工程それぞれに応じた高低の推力を駆動ビットに付与するようなことも可能となっている。このように推力を切り替えるのは、前述した駆動ビット53eの回転力Fr、すなわち締付けトルク値が低ければカムアウト力Fcoが小さく、締付けトルク値が高ければカムアウト力Fcoが大きくなるからである。この推力の切り替えにより、締付け時の全工程で駆動ビットがねじの駆動穴から離脱するのを防止して、高品質な締付けを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3797598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このねじ締め装置ではねじ嵌合開始時、仮締め工程および本締め工程において駆動ビットに発生するカムアウト力Fcoが不明なことから、各工程で発生する締付けトルク値に合わせて駆動ビットに付与する推力の設定ができず、高低の差を設けるもののそれぞれ経験値から得られる十分に大きな値が設定されている。そのため、近来電子機器にみられるように製品の軽量化が進み、その構成部品が取付けられる相手部材も薄板化していることから、駆動ビットの押圧による相手部材のたわみが大きくなり、その破損を招いたり、相手部材に取付けられた他の部品の動作に悪影響を及ぼしたりするなどの問題の発生する恐れが生じている。
【0006】
本発明の目的は、上記問題を解決することであり、設定締付けトルク値に対応して最適な推力を駆動ビットに付加して駆動ビットがねじの駆動穴から離脱するのを防止するとともに、設定締付けトルク値が変更されてカムアウト力が変わっても、変更された設定締付けトルク値に対応して新たな推力を算出することができるねじ締め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、ねじ締め用モータにより回転する駆動ビットを備えたねじ締めユニットと、移動用サーボモータの回転を往復移動に変換してこの往復移動によりねじ締めユニットを前進後退させる移動ユニットと、前記ねじ締め用モータおよび移動用サーボモータを制御する主制御部と、複数個の基準トルク値および当該基準トルク値毎に駆動ビットに付加する基準推力を記憶する記憶部とを備えたねじ締め装置であって、前記主制御部は所定締付位置での設定締付けトルク値が入力されると、この設定締付けトルク値を挟む2個の基準トルク値およびこれら基準トルク値それぞれに対応する基準推力を呼出して、設定締付けトルク値に対する推力を線形補間により算出する推力算出部を備えている。
【0008】
この構成によれば、駆動ビットにはねじの駆動穴から離脱するのを防止するために、設定締付けトルク値に対応してあらかじめ用意した最適な推力を付加することができる。そのため、締付けの際に相手部材が過剰に押圧されることがなく、相手部材の破損を招いたり、相手部材に取付けられた他の部品の動作に悪影響を及ぼしたりすることがなく、高品質な締付作業を行うことができる。また、各締付位置での設定締付けトルク値が変更になると、駆動ビットに発生するカムアウト力が変わり、このカムアウト力を打ち消すために駆動ビットに付加する推力を変更する必要が生じる。前記カムアウト力はねじ締め用モータに発生する電磁力、すなわちねじ締め用モータに流れる電流値におおむね比例するので、カムアウト力を抑える推力もねじ締め用モータに流れる電流値、言い換えれば締付けトルク値におおむね比例することとなる。そのため、前記設定締付けトルク値を挟む基準トルク値およびこれら基準トルク値に対応する基準推力を呼出して、これら基準トルク値およびこれらに対応する基準推力から、変更された設定締付けトルク値に対する新たな推力を線形補間により算出することができる。これにより、各締付位置において設定締付けトルク値が変更される度に、設定締付けトルク値に対応する最適な推力を算出できるので、作業者は締付け作業に先立って、駆動ビットに発生するカムアウト力を測定する必要がなく、作業現場で煩雑で面倒な作業が不要となって、使い勝手のよいねじ締め装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明は本締め工程での締付けに際して、駆動ビットがねじの駆動穴から離脱するのを防止するため、前記設定締付けトルク値を本締めトルク値とすることが望ましい。
【0010】
さらに、本発明は仮締め工程での締付けに際して、駆動ビットがねじの駆動穴から離脱するのを防止するため、前記設定締付けトルク値を設定仮締めトルク値とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した本発明によれば、所定締付けトルク値で締付けを行う際に設定締付けトルク値に対応してあらかじめ用意された推力を駆動ビットに付加して駆動ビットがねじの駆動穴から離脱するのを防止するとともに、所定締付位置での新たな設定締付けトルク値に対しても最適な推力を算出することができるねじ締め装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るねじ締め装置の制御装置を構成する主制御部の設定モード時の動作を説明するフローチャート。
図2】本発明の実施形態に係るねじ締め装置の構成を示す概略説明図。
図3】本発明の実施形態に係る移動用ACサーボモータの回転力Frと推力Ftとの関係を示す模式図。
図4】本発明の実施形態に係るねじ締め装置の制御装置を構成する主制御部のねじ締めモード時の動作を説明するフローチャート。
図5】本発明の実施形態に係る移動用ACサーボモータ駆動部のねじ締めモード時の動作を説明するフローチャート。
図6】本発明の実施形態に係るねじ締め用モータ駆動部の動作を説明するフローチャート。
図7】本発明の実施形態に係る基準トルク値―基準推力テーブル。
図8】本発明の実施形態に係る主制御部、移動用ACサーボモータ駆動部およびねじ締め用モータ駆動部並びに操作部間の信号の授受説明図。
図9】本発明の実施形態に係るねじ締め装置のねじ締めモード時の概略動作を説明する信号波形図。
図10】本発明の実施形態に係る設定締付けトルク値に対する推力を算出する線形補間の説明図。
図11】本発明の他の実施形態に係る駆動ビットに発生するカムアウト力を打ち消す推力の測定に際しての概略動作を説明する信号波形図。
図12】ねじ締め装置に係る駆動ビットがねじの駆動穴の傾斜面に作用する状態を説明する説明図。
図13】従来のねじ締付工程における推力の付加状態を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るねじ締め装置の一例として、ロボットの先端ユニットとして使用されるねじ締め装置を図面に基づき説明する。このねじ締め装置1は、図2に示すようにロボットの先端アーム(図示せず)に固定される基台2aを備えた移動ユニット2を有している。この移動ユニット2の基台2aには、上部ブラケット2bと下部ブラケット2cとが取付けられている。前記上部ブラケット2bには、移動用ACサーボモータ2d(以下、移動用モータという)がその駆動軸2eを下方にしてかつ上部ブラケット2bを貫通するように取付けられている。また、前記移動用モータ2dにはパルスエンコーダ2fが連接されており、移動用モータ2dの現在位置が検出可能に構成されている。さらに、前記移動用モータ2dの駆動軸2eには第1連結具2gを介して下部ブラケット2cに回転可能に保持されたスクリュウシャフト2hが連結されている。このスクリュウシャフト2hは前記基台2aのほぼ全長にわたって延びるリニアガイド2jに摺動自在に案内された軸受台2kに螺合しており、移動用モータ2dの回転が軸受台2kの往復移動に変換される構成となっている。
【0014】
前記軸受台2kにはドライバ台3aが一体に取付けられており、このドライバ台3aにはねじ締めユニット3が一体に前進後退可能に固定されている。前記ねじ締めユニット3は、ドライバ台3aに取付けられたねじ締め用モータ3bを有し、このねじ締め用モータ3bの駆動軸3cは前記ドライバ台3aを貫通する構成となっている。また、前記ねじ締め用モータ3bの駆動軸3cには第2連結具3dを介して駆動ビット3eが連結されており、この駆動ビット3eがねじ締め用モータ3bの回転を受けて回転するように構成されている。さらに、この駆動ビット3eはその移動路上に開放可能に配置された一対のチャック爪(図示せず)を貫通し、これに保持されたねじ4の駆動穴4aに嵌合して、このねじ4を相手部材5の所定の締付位置にねじ込むように構成されている(図9参照)。
【0015】
前記移動用モータ2dは、位置情報と電流値とが指令値として供給されると、現在位置が前記位置情報に一致し、かつその電流値を超えないようにパワー供給を受け、後記パワー供給停止指令信号を受けるとパワー供給が停止されてブレーキ作動状態となるように構成されている。また、前記ねじ締め用モータ3bは後記ねじ締め用モータ駆動部11とアナログ接続されており、ねじ締め用モータ3bの負荷電流がアナログ情報としてねじ締め用モータ駆動部11で読み込まれてA−D変換されて、刻々記憶される構成となっている。
【0016】
前記ねじ締め装置1は、前記移動ユニット2およびねじ締めユニット3の動作を制御する制御装置6を有している。この制御装置6は、推力算出部12を備えた主制御部7と、各種作動指令信号を出力する操作部8と、ねじ締めに必要な情報(以下、ねじ締め情報という)およびねじ締めユニット3の移動に必要な情報(以下、移動情報という)を記憶する記憶部9とを有している。前記操作部8は、ねじ締めモードキー8aおよび設定モードキー8bを備えた操作画面を有し、ねじ締めモードキー8aがタッチされると、ねじ締めモード信号Sg1(図8参照)が主制御部7に出力されるように構成されている。
【0017】
前記操作部8は、設定モードキー8bがタッチされると、主制御部7に設定モード信号Sg21(図8参照)が出力されるように構成されている。また、この操作部8の操作画面は後記設定画面表示指令信号により縮小されて設定画面(図示せず)に切り替わる構成となっている。この設定画面は、前述のねじ締め情報、移動情報、前記移動用モータ2dおよびねじ締め用モータ3bの精密な制御に必要となる各種制御パラメータ(以下、制御パラメータという)並びに締付けポイント番号B(図7参照)の各入力部(図示せず)を有している。前記締付けポイント番号Bは、相手部材5の締付位置に対応して設けられており、締付位置の位置情報、すなわちロボットの先端ユニットの移動先位置情報のほか、ねじ締め情報、移動情報並びに制御パラメータを呼出すインデックスとなっている。さらに、前記設定画面は各入力部に値を入力するテンキー部(図示せず)と、各入力部の値をキャンセルするキャンセル選択信号Sg23(図8参照)、前記値を保存する保存選択信号Sg24(図8参照)のいずれかを出力する保存/キャンセル選択キー(図示せず)とを備えている。
【0018】
前記ねじ締め情報は、設定締付けトルク値の一例をなす設定仮締めトルク値Tn(図10(a)参照)に対応する仮締め設定電流値Is1(初期値=0)、仮締め回転数N1(図9参照)、設定締付けトルク値のもう一つの例をなす本締めトルク値Tm(図10(b)参照)に対応する本締め設定電流値Is2(初期値=0)、本締め回転数N2(図9参照)、ねじ4の種類等の情報(図7参照)でなっている。また、前記移動情報は図9に示すように、待機位置P0、ねじ嵌合時推力Ft1、ねじ締め開始位置P1、仮締め推力(ねじ嵌合時推力よりも低い値で、初期値=0)Ft2、本締め位置P4、本締め推力(仮締め推力よりも高い値で、初期値=0)Ft3および復帰時推力Ft4(図4図8および図9参照)でなっている。前記各推力は移動用モータ2dに供給される電流値で規定されており、図3に示すようにこの電流値により移動用モータ2dの回転子(図示せず)に発生する回転力Frの反力Fcがスクリュウシャフト2hのねじ部傾斜面2haから軸受台2kのめねじ部斜面2kaに作用して前進方向の推力Ftが得られる構成となっている。
【0019】
前記記憶部9は、相手部材5の締付位置に対応する締付けポイント番号B(図7に示す番号1,2,3,4…)毎に、前述の入力画面から入力される情報を記憶している。また、この記憶部9は設定画面から入力される設定仮締めトルク値Tnまたは設定本締めトルク値Tm(図10参照)に対する推力Ft2,Ft3を算出するため、ねじの種類、例えば一般ねじ、タッピングねじそれぞれに対して基準トルク値Tsに対する基準推力Ds(B,Ts),Es(B,Ts)(図7参照)をテーブルとして記憶している。前記基準推力Ds(B,Ts),Es(B,Ts)は、前述の設定仮締めトルク値Tnまたは設定本締めトルク値Tmで駆動ビット3eが駆動される時に発生するカムアウト力Fcoを打ち消すのに最適な値を有している。
【0020】
また、前記制御装置6は図2に示すように移動用ACサーボモータ駆動部10(以下、移動用モータ駆動部という)と、ねじ締め用モータ駆動部11と、ねじ供給装置(図示せず)の動作を制御するねじ供給装置駆動部13と、前述の移動用モータ2dおよびパルスエンコーダ2fが接続される入出力部14とを有している。
【0021】
前記主制御部7は、操作部8からねじ締めモード信号Sg1が出力される時、すなわちねじ締めモード時には、図4図8および図9に示すように、次のステップS1〜S15の動作を行う。
S1)操作部8からのねじ締めモード信号Sg1が入力しているか否かを判断し、ねじ締めモード信号Sg1が入力してない時この入力を待つ一方、ねじ締めモード信号Sg1が入力している時ステップS2に移る。
S2)ねじ締め情報(仮締め設定電流値Is1、仮締め回転数N1、本締め設定電流値Is2、本締め回転数N2)を記憶部9から呼出し、これらをねじ締め用モータ駆動部11に供給する。
S3)移動情報(待機位置P0、ねじ嵌合時推力Ft1、ねじ締め開始位置すなわち仮締め開始位置P1、仮締め推力Ft2、本締め位置P4、本締め推力Ft3、復帰時推力Ft4)を記憶部9から呼出し、これらを移動用モータ駆動部10に供給する。
S4)ねじ供給装置駆動部13に作動指令信号Sg2を出力する。
S5)移動用モータ駆動部10に 作動指令信号Sg3を出力する。
S6)ねじ締め用モータ駆動部11に作動指令信号Sg4を出力する。
S7)ねじ締め用モータ駆動部11から仮締め完了信号Sg5が入力しているか否かを判断し、仮締め完了信号Sg5が入力していない時仮締め完了信号Sg5が入力するのを待つ一方、仮締め完了信号Sg5が入力している時ステップS8に移る。
S8)移動用モータ駆動部に仮締め完了信号Sg5を出力する。
S9)ねじ締め用モータ駆動部11から本締め完了信号Sg6が入力しているか否かを判断し、本締め完了信号Sg6が入力している時ステップS14にジャンプする一方、本締め完了信号Sg6が入力していない時ステップS10に移る。
S10)ねじ締め用モータ駆動部11から締付NG信号Sg7が入力しているか否かを判断し、締付NG信号Sg7が入力してない時ステップS9に戻る一方、締付NG信号Sg7が入力している時ステップS11に移る。
S11)移動用モータ駆動部10に停止指令信号Sg8を出力する。
S12)操作部8に締付NG表示指令信号Sg9を出力する。
S13)移動用モータ駆動部10から待機位置復帰信号Sg10が入力しているか否かを判断し、これが入力していない時待機位置復帰信号Sg10を待つ一方、待機位置復帰信号Sg10が入力している時ステップS1に戻る。
S14)ステップS9で本締め完了信号Sg6が入力している時に移動用モータ駆動部10に停止指令信号Sg8を出力する。
S15)操作部8に締付完了表示指令信号Sg11を出力して、ステップS13に戻る。
【0022】
前記移動用モータ駆動部10は、ねじ締めモード時、図5図8および図9に示すように次のステップSS1〜SS16の動作を行う。
SS1)移動用モータ駆動部作動指令信号Sg3が入力しているか否かを判断し、これが入力していない時その入力を待つ一方、この作動指令信号Sg3が入力している時ステップSS2に移る。
SS2)ねじ締め開始位置P1およびねじ嵌合時推力Ft1を呼出す。
SS3)ねじ締め開始位置P1およびねじ嵌合時推力Ft1が得られる電流値を指令値として移動用モータ2dに供給する。
SS4)移動用モータ2dの現在位置がねじ締め開始位置P1に達しているか否かを判断し、移動用モータ2dの現在位置がねじ締め開始位置P1に達していない時ねじ締め開始位置P1に達するのを待つ一方、移動用モータ2dの現在位置がねじ締め開始位置P1に達している時ステップSS5に移る。
SS5)本締め位置P4および仮締め推力Ft2を呼出す。
SS6)本締め位置P4および仮締め推力Ft2が得られる電流値を指令値として移動用モータ2dに供給する。
SS7)主制御部7から仮締め完了信号Sg5が入力しているか否かを判断し、仮締め完了信号Sg5が入力していない時その入力を待つ一方、仮締め完了信号Sg5が入力している時ステップSS8に移る。
SS8)本締め位置P4および本締め推力Ft3を呼出す。
SS9)本締め位置P4および本締め推力Ft3が得られる電流値を指令値として移動用モータ2dに供給する。
SS10)移動用モータ駆動部停止指令信号Sg8が入力しているか否かを判断し、この停止指令信号Sg8が入力していない時その入力を待つ一方、この停止指令信号Sg8が入力している時ステップSS11に移る。
SS11)移動用モータ2dにパワー供給停止指令信号Sg12を出力する。
SS12)移動用モータ2dの待機位置P0および待機位置P0に復帰する時の復帰時推力Ft4を呼出す。
SS13)移動用モータ2dに待機位置P0と、復帰時推力P0とを指令値として供給する。
SS14)移動用モータ2dの現在位置が待機位置P0に復帰しているか否かを判断し、移動用モータ2dの現在位置が待機位置P0に復帰していない時その復帰を待つ一方、移動用モータ2dの現在位置が待機位置P0に復帰している時ステップSS15に移る。
SS15)主制御部7に待機位置復帰信号Sg10を出力する。
SS16)エンド。
【0023】
前記ねじ締め用モータ駆動部11は、ねじ締めモード時、図6図8および図9に示すように締付けトルク制御部11aを構成する次のステップST1〜ST14の動作を行う。
ST1)ねじ締め用モータ駆動部11の作動指令信号Sg4が入力しているか否かを判断し、この作動指令信号Sg4が入力していない時その入力を待つ一方、この作動指令信号Sg4が入力している時ステップST2に移る。
ST2)仮締め回転数N1、仮締め設定電流値Is1を呼出す。
ST3)ねじ締め用モータ3bに仮締め回転数N1に応じた電圧を供給する。(第1タイマ11bおよび第2タイマ11cを作動させる)
ST4)ねじ締め用モータ3bの負荷電流が仮締め設定電流値Is1に達したか否かを判断し、これが仮締め設定電流値Is1に達している時ステップST6にジャンプする一方、ねじ締め用モータ3bの負荷電流が仮締め設定電流値Is1に達していない時ステップST5に移る。
ST5)第1タイマ11bがタイムアップしたか否かを判断し、第1タイマ11bがタイムアップしてない時ステップST4に戻る一方、第1タイマ11bがタイムアップしている時ステップST10にジャンプする。
ST6)ステップST4でねじ締め用モータ3bの負荷電流が仮締め設定電流値Is1に達している時、主制御部7に仮締め完了信号Sg5を出力するとともに、本締め回転数N2、本締め設定電流値Is2を呼出す。
ST7)ねじ締め用モータ3bに本締め回転数N2に応じた電圧を供給する。
ST8)ねじ締め用モータ3bの負荷電流が本締め設定電流値Is2に達したか否かを判断し、これが本締め設定電流値Is2に達している時ステップST12にジャンプする一方、ねじ締め用モータ3bの負荷電流が本締め設定電流値Is2に達していない時ステップST9に移る。
ST9)第2タイマ11cがタイムアップしたか否かを判断し、第2タイマ11cがタイムアップしてない時ステップST8に戻る一方、第2タイマ11cがタイムアップしている時ステップST10に移る。
ST10)ねじ締め用モータ3bへの電圧供給を停止する。第1,タイマ11bおよび第2タイマ11cをリセットする。
ST11)締付NG信号Sg7を主制御部7に出力して、ステップST14にジャンプする。
ST12)ステップST8でねじ締め用モータ3bの負荷電流が本締め設定電流値Is2に達している時、ねじ締め用モータ3bへの電圧供給を停止する。第1,タイマ11bおよび第2タイマ11cをリセットする。
ST13)本締め完了信号Sg6を主制御部7に出力する。
ST14)エンド。
【0024】
前記推力算出部12は、本発明の要部をなし、主制御部7の一部、すなわち設定モード時の動作の一部として構成されているもので、操作部8から設定モード信号Sg21が出力される時、すなわち設定モード時に、図1図8および図10に示すように、次のステップSP1〜SP19の動作を行う。
SP1)設定モード信号Sg21が入力しているか否かを判断し、設定モード信号Sg21が入力していない時その入力を待つ一方、設定モード信号Sg21が入力している時ステップSP2に移る。
SP2)操作部8に設定画面表示指令信号Sg22を出力する。
SP3)設定画面の締付けポイント番号Bの入力部に締付けポイント番号Bが入力されているか否かを判断し、締付けポイント番号Bが入力されていない時その入力を待つ一方、締付けポイント番号Bが入力されている時ステップSP4に移る。
SP4)入力された締付けポイント番号Bに対応する各種情報を記憶部9から呼出す。
SP5)呼出された情報を操作部8の設定画面の入力部にセットする。
SP6)呼出された情報中、仮締め設定電流値Is1を一時記憶仮締め値Tn0として、また本締め設定電流値Is2を一時記憶本締め値Tm0として一時記憶する。
SP7)操作部8からの保存/キャンセル選択信号が入力しているか否かを判断し、これが入力していない時その入力を待つ一方、キャンセル選択信号Sg23が入力している時ステップSP18にジャンプし、保存選択信号Sg24が入力している時ステップSP8に移る。
SP8)設定画面の入力部の各情報を呼出し、記憶部9に記憶(上書き保存)する。
SP9)設定仮締めトルク値Tnが一時記憶仮締め値Tn0に等しいか否かを判断し、これらが等しい時ステップSP18にジャンプする一方、設定仮締めトルク値Tnが一時記憶仮締め値Tn0と等しくない時ステップSP10に移る。
SP10)記憶部9の基準トルク値−基準推力テーブルから設定仮締めトルク値Tnを挟む基準トルク値Tsを境界仮締めトルク値Tsd1,Tsu1として、またこれら境界仮締めトルク値Tsd1,Tsu1に対する基準推力Ds(B,Ts)を基準仮締め推力Dsd1,Dsu1として呼出す。
SP11)境界仮締めトルク値Tsd1,Tsu1およびこれらに対応する基準仮締め推力Dsd1,Dsu1に基づき、設定仮締めトルク値Tnに対する仮締め推力Ft2を線形補間により算出する。
SP12)算出された仮締め推力Ft2を新たな設定仮締めトルク値に対する仮締め推力Ft2として記憶(上書き保存)する。
SP13)設定本締めトルク値Tmが一時記憶本締め値Tm0に等しいか否かを判断し、これらが等しい時ステップSP18にジャンプする一方、設定本締めトルク値Tmが一時記憶本締め値Tm0と等しくない時ステップSP14に移る。
SP14)記憶部9の基準トルク値−基準推力テーブルから設定本締めトルク値Tmを挟む基準トルク値Tsを境界本締めトルク値Tsd2,Tsu2として、またこれら境界本締めトルク値Tsd2,Tsu2に対する基準推力Ds(B,Ts)を基準本締め推力Dsd2,Dsu2として呼出す。
SP15)境界本締めトルク値Tsd2,Tsu2およびこれらに対応する基準本締め推力Dsd2,Dsu2に基づき、設定本締めトルク値Tmに対する本締め推力Ft3を線形補間により算出する。
SP16)算出された本締め推力Ft3を新たな設定本締めトルク値に対する本締め推力Ft3として記憶(上書き保存)する。
SP17)操作部8に推力算出完了表示指令信号Sg25を出力する。
SP18)ステップ7でキャンセル選択信号Sg23が入力している時、ステップ9で設定仮締めトルク値Tnが一時記憶仮締め値Tn0に等しい時またはステップ13で設定本締めトルク値Tmが一時記憶本締め値Tm0に等しい時もしくはステップ17に続いて、操作部8に操作画面表示指令信号Sg26を出力する。
SP19)エンド。
【0025】
上記ねじ締め装置1では、図2および図8に示すように通常の締付作業を行う場合、操作部8の操作画面のねじ締めモードキー8aがタッチされ、主制御部7にねじ締めモード信号Sg1が出力される。このねじ締めモード信号Sg1により、ねじ締め用モータ駆動部11に仮締め設定電流値Is1、仮締め回転数N1、本締め設定電流値Is2および本締め回転数N2が、また移動用モータ駆動部10には待機位置P0、ねじ嵌合時推力Ft1、ねじ締め開始位置(仮締め開始位置)P1、仮締め推力Ft2、本締め位置P4および本締め推力Ft3並びに復帰時推力Ft4が供給される(ステップS1〜S3参照)。続いて、ねじ供給装置駆動部13に作動指令信号Sg2が出力され(ステップS4および図8参照)、ねじ供給装置が作動して、ねじ4が駆動ビット3eの移動路上に配置された一対のチャック爪まで供給され、このチャック爪に保持される。その後、移動用モータ駆動部10、ねじ締め用モータ駆動部11それぞれに作動指令信号Sg3,Sg4が出力される(ステップS5およびS6並びに図8参照)。
【0026】
前記移動用モータ駆動部10では、その作動指令信号Sg3を受けると、ねじ嵌合時推力Ft1およびねじ締め開始位置P1が呼出される(ステップSS1およびSS2並びに図8参照)。続いて、ねじ締め開始位置P1とねじ嵌合時推力Ft1が得られる電流値とが指令値として移動用モータ2dに供給され(ステップSS3参照)、移動用モータ2dはねじ締め開始位置P1を目標位置として、前記電流値が得られるようにパワー供給を受けて回転する。この移動用モータ2dの回転を受けて、スクリュウシャフト2hが回転し、これに螺合する軸受台2kが前記電流値、すなわちねじ嵌合時推力Ft1を保持しながらねじ締め開始位置P1まで前進する(図9中、信号波形We1参照)。この軸受台2kの前進により、この軸受台2kと一体のドライバ台3aに保持されたねじ締めユニット3の駆動ビット3eが待機位置P0から前進し、チャック爪に保持されたねじ4がねじ締め開始位置P1に押出される(図9参照)。
【0027】
前記ねじ締め用モータ駆動部11では、その作動指令信号Sg4を受けると、仮締め回転数N1および仮締め設定電流値Is1が呼出される(ステップST1およびST2並びに図8参照)。続いて、ねじ締め用モータ3bに仮締め回転数N1に対応した所定の電圧が供給され(ステップST3参照)、ねじ締め用モータ3bは仮締め回転数N1(高速低トルク)で回転し(図9中、信号波形Wd1参照)、この回転を受けて駆動ビット3eが回転する。これとともに、ねじ締め用モータ3bの負荷電流が仮締め設定電流値Is1に達したか否かの判断が行われる(ステップST4参照)。この時、第1タイマ11bおよび第2タイマ11cが作動して、仮締め不良および本締め不良の判定が開始される。
【0028】
この間、図12に示すように駆動ビット3eの回転方向の力Frがねじ4の駆動穴4aの傾斜面4aaに作用することにより、駆動ビット3eにはねじ4の駆動穴4aから離脱する方向のカムアウト力Fcoが作用するが、このカムアウト力Fcoは前述のねじ嵌合時推力Ft1により打ち消される。また、移動用モータ駆動部10では移動用モータ2dの現在位置がねじ締め開始位置P1に達したか否か、すなわち待機位置P0から前進した駆動ビット3eがねじ締め開始位置P1に達したか否が判断されており(ステップSS4参照)、この現在位置がねじ締め開始位置P1に達すると、本締め位置P4および仮締め推力Ft2が呼出される(ステップSS5参照)。続いて、移動用モータ2dに本締め位置P4と仮締め推力Ft2とが得られる電流値が供給され(ステップSS6および図8参照)、移動用モータ2dは仮締め推力Ft2を保持して回転する(図9中、信号波形We2参照)。この移動用モータ2dの回転を受けて、軸受台2kおよびこれと一体の駆動ビット3eとは前進するので、駆動ビット3eと嵌合するねじ4はその頭部が被締結部材15に着座するまで、すなわち仮締め完了時の位置P2まで仮締め推力Ft2が付加されながらねじ込まれる(図9参照)。
【0029】
その後、ねじ締め用モータ3bの負荷電流が仮締め設定電流値Is1に達するまでは、第1タイマ11bがタイムアップしたか否かが判断され(ステップST5参照)、前記第1タイマ11bがタイムアップしている時にはねじ締め用モータ3bへの電圧供給が停止され、締付けNG信号Sg7が主制御部7に出力される(ステップST10およびST11および図8参照)。同時に、第1タイマ11bおよび第2タイマ11cがリセットされ、仮締め不良判定および本締め不良判定が終了する。また、前記ねじ締め用モータ3bの負荷電流が仮締め設定電流値Is1に達する時に仮締めが完了し、ねじ締め用モータ駆動部11から主制御部7に仮締め完了信号Sg5が出力される(ステップST6および図8参照)。この仮締め完了時、すなわち駆動ビット3eが仮締め完了位置P2に位置する時、本締め回転数N2および本締め設定電流Is2が呼出され、ねじ締め用モータ3bを低速高トルクの本締め回転数N2に切り替えるように電圧が供給される(ステップST6およびST7並びに図9中、信号波形Wd2参照)。この仮締め完了信号Sg5により、移動用モータ駆動部10に仮締め完了信号Sg5が出力されるので、移動用モータ駆動部10では本締め位置P4および本締め推力Ft3が呼出される(ステップSS8および図8参照)。続いて、移動用モータ2dには本締め位置P4と本締め推力Ft3が得られる電流値とが指令値として供給され(ステップSS9および図8参照)、移動用モータ2dは本締め推力Ft3を保持して回転する(図9中、信号波形We3参照)。この移動用モータ2dの回転を受けて、軸受台2kおよび駆動ビット3eが本締め推力Ft3を保持しながら本締め位置P4を目標位置として前進する(図9参照)。
【0030】
前記軸受台2kが移動用モータ2dの回転を受けて前進する間に、ねじ締め用モータ駆動部11ではねじ締め用モータ3bの負荷電流が本締め設定電流値Is2に達したか否かの判断が行われており(ステップST8参照)、この負荷電流が本締め設定電流値Is2に達してない時には、第2タイマ11cがタイムアップしたか否かが判断される(ステップST9参照)。この判断において、第2タイマ11cがタイムアップしてない時には、前述のステップST8の判断が繰り返される。また、前記ステップST9の判断において前記第2タイマ11cがタイムアップしている時には、ねじ締め用モータ3bへの電圧供給が停止され、締付けNG信号Sg7が主制御部7に出力される(ステップST10およびST11並びに図8参照)。
【0031】
前記軸受台2kが移動用モータ2dの回転を受けて前進する間に、ねじ締め用モータ3bの負荷電流が本締め設定電流値Is2に達すると、すなわち駆動ビット3eが本締め完了位置P3に位置する時、ねじ締め用モータ3bへの電圧供給が停止され、ねじ締め用モータ3bは停止して、本締めが完了し、本締め完了信号Sg6が主制御部7に出力される(ステップST12およびST13並びに図8参照)。同時に、第1タイマ11bおよび第2タイマ11cがリセットされ、仮締め不良判定および本締め不良判定は終了する。
【0032】
前記主制御部7は、前記本締め完了信号Sg6が入力すると、前記移動用モータ駆動部10にその停止指令信号Sg8を出力するとともに操作部8に締付完了表示指令信号Sg11を出力する(ステップS14およびS15並びに図8参照)。そのため、移動用モータ駆動部10はこの停止指令信号Sg8を受けて、移動用モータ2dにパワー供給停止指令信号Sg12を出力し、移動用モータ2dへのパワー供給が停止される(ステップSS10およびSS11並びに図8参照)。続いて、移動用モータ駆動部10では移動用モータ2dの待機位置P0および復帰時推力Ft4が呼出されて、この待機位置P0および復帰時推力Ft4が指令値として移動用モータ2dに供給される(ステップSS12およびSS13並びに図8参照)。そのため、移動用モータ2dは待機位置P0に復帰するように、また前記復帰時推力Ft4が得られるようにパワー供給を受けて回転するので、軸受台2kおよびねじ締めユニット3の駆動ビット3eは復帰時推力Ft4を保持しながら待機位置P0に復帰する(図9中、信号波形We4参照)。これにともなって、主制御部7に待機位置復帰信号Sg10が出力され(ステップSS14およびSS15並びに図8参照)、この待機位置復帰信号Sg10の入力が主制御部7で確認され(ステップS13参照)、一連の締付作業が終了する。
【0033】
次に、本発明の要部の推力算出部の動作について説明する。前述の締付作業に先立って、ねじ締め情報、移動情報等を設定する際には、図1および図2並びに図8に示すように、操作部8の操作画面の設定モードキー8bがタッチされ、設定モード信号Sg21が主制御部7、すなわち推力設定部12に出力される。この推力設定部12は、前記設定モード信号Sg21を受けると、操作部8に設定画面表示指令信号Sg22を出力するので、操作画面が縮小されて、設定画面が表示される(ステップSP1およびSP2並びに図8参照)。この設定画面中の締付けポイント番号Bの入力部に締付位置に応じた締付けポイント番号Bが入力されるのを待ち、これが入力される時、記憶部9から締付けポイント番号Bに応じて設定仮締めトルク値Tnおよび設定本締めトルク値Tmを含むねじ締め情報、移動情報等が呼出される(ステップSP3およびSP4並びに図8参照)。これら情報が設定画面においてそれぞれ対応する設定項目の入力部にセットされ、表示されるとともに、前記情報中設定仮締めトルク値すなわち仮締め設定電流値Is1が一時記憶仮締め値Tn0として記憶される。また、同様に設定本締めトルク値すなわち本締め設定電流値Is2が一時記憶本締め値Tm0として一時記憶される(ステップSP5およびSP6参照)。
【0034】
その後、設定画面中の設定項目のうち、変更の必要な項目が生じてその設定項目の入力部に新たな値が入力されると、設定画面中の保存/キャンセル選択キーから、いずれかの選択信号が出力されるのを待つ(ステップSP7参照)。この時、キャンセル選択信号Sg23が出力されると、直ちに設定モードが終了し、操作部8に操作画面表示指令信号Sg26が出力され、操作部8は設定画面を閉じて操作画面に復帰する(ステップSP18および図8参照)。また、前記保存/キャンセル選択キーから、保存選択信号Sg24が出力される時には、設定画面に表示される各設定項目の入力部の値が記憶部9に記憶(上書き保存)される(ステップSP8および図8参照)。
【0035】
続いて、設定仮締めトルク値Tnの入力部の値と一時記憶仮締め値Tn0とが比較され、これらが等しい時、すなわち設定仮締めトルク値Tnに変更のない時、前述のキャンセル選択信号Sg23の場合と同様に、設定モードが終了し、操作部8は操作画面に復帰する(ステップSP9およびSP18参照)。前記設定仮締めトルク値Tnと一時記憶仮締めトルク値Tn0とが等しくない時、すなわち設定仮締めトルク値Tnが新たな値に変更される時、記憶部9内の基準トルク値―基準推力テーブル(図7参照)から設定仮締めトルク値Tnを挟む基準トルク値Ds(B,Ts)が境界仮締めトルク値Tsd1,Tsu1として、またこれら境界仮締めトルク値Tsd1,Tsu1に対応する基準推力Ds(B,Ts)が基準仮締め推力Dsd1,Dsu1として呼出される(ステップSP10参照)。これら境界仮締めトルク値Tsd1,Tsu1と、それぞれに対応する基準仮締め推力Dsd1,Dsu1とから、設定仮締めトルク値Tnに対応する仮締め推力Ft2が線形補間、すなわち次式(1)、
Ft2=Dsd1+(Dsu1−Dsd1)*(Tn−Tsd1)
/(Tsu1−Tsd1)―――――(1)
により算出される(ステップSP11および図10(a)参照)。例えば、締付けポイント番号Bが1であって、設定仮締めトルク値Tnが2.5N・mである時、図7(a)から境界仮締めトルク値Tsd1,Tsu1はそれぞれ2,3となり、基準仮締め推力Dsd1,Dsu1はそれぞれDs(1,2)、Ds(1,3)となるので、これら値を前記式(1)に代入すると、仮締め推力Ft2は、
Ft2=Ds(1,2)+((Ds(1,3)−Ds(1,2))*(2.5
−2)/(3−2)
として算出される。前記式(1)により算出された仮締め推力Ft2は、締付けポイント番号1での設定仮締めトルク値Tnに対する仮締め推力Ft2として記憶部9に記憶される(ステップSP12参照)。
【0036】
その後、設定仮締めトルク値Tnの場合と同様に、設定本締めトルク値Tmの入力部の値と一時記憶本締め値Tm0とが比較され、これらが等しい時、すなわち設定本締めトルク値Tmに変更のない時、設定モードが終了し、操作部8は操作画面に復帰する(ステップSP18参照)。また、前記設定本締めトルク値Tmと一時記憶本締めトルク値Tm0とが等しくない時、すなわち設定本締めトルク値Tmが変更される時、設定本締めトルク値Tmを挟む基準トルク値Ds(B,Ts)が境界本締めトルク値Tsd2,Tsu2として、またこれら境界本締めトルク値Tsd2,Tsu2に対応する基準推力Ds(B,Ts)が基準本締め推力Dsd2,Dsu2として呼出される(ステップSP14参照)。これらから、設定本締めトルク値Tmに対する本締め推力Ft3が、次式(2)
Ft3=Dsd2+(Dsu2−Dsd2)*(Tm−Tsd2)/
(Tsu2−Tsd2)―――――(2)
により算出される(ステップSP15および図10(b)参照)。例えば、締付けポイント番号Bが1であって、設定本締めトルク値Tmが11.5N・mである時、図7(a)から境界仮締めトルク値Tsd2,Tsu2はそれぞれ11,12となり、基準本締め推力Dsd2,Dsu2はそれぞれDs(1,11),Ds(1,12)となるので、これら値を前記式(2)に代入すると、本締め推力Ft3は、
Ft3=Ds(1,11)+(Ds(1,12)−Ds(1,11))*
(11.5−11)/(12−11)
として算出される。前記式(2)により算出された本締め推力Ft3は、締付けポイント番号1での設定本締めトルク値Tmに対する本締め推力Ft3として記憶部9に記憶される(ステップSP16参照)。続いて、操作部8に推力算出完了表示指令信号Sg25が出力されるとともに、操作画面表示指令信号Sg26が操作部8に出力され、設定作業が完了する(ステップ17およびステップ18並びに図8参照)。
【0037】
以上のように、本実施形態におけるねじ締め装置1はねじ締め用モータ3bにより回転する駆動ビット3eを備えたねじ締めユニット3と、移動用モータ2dの回転を往復移動に変換してこの往復移動によりねじ締めユニット3を前進後退させる移動ユニット2と、前記ねじ締め用モータ3bおよび移動用モータ2dを制御する主制御部7と、複数個の基準トルク値Tsおよび当該基準トルク値Ts毎に駆動ビット3eに付加する基準推力Ds(B,Ts)を記憶する記憶部9とを備えた構成であって、前記主制御部7は所定締付位置での設定仮締めトルク値Tnまたは設定本締めトルク値Tmでなる設定締付けトルク値が入力されると、これを挟む2個の基準トルク値Tsd1,Tsu1、Tsd2,Tsu2およびこれら基準トルク値Tsd1,Tsu1、Tsd2,Tsu2それぞれに対応する基準推力Dsd1、Dsu1,Dsd2,Dsu2を呼出して、設定仮締めトルク値Tnまたは設定本締めトルク値Tmに対する推力Ft2,Ft3を線形補間により算出する推力算出部を備えている。
【0038】
この構成によれば、駆動ビット3eにはねじ4の駆動穴4aから離脱するのを防止するために、設定仮締めトルク値Tnまたは設定本締めトルク値Tmに応じてあらかじめ用意した最適な推力Ft2,Ft3を付加することができる。そのため、締付けの際に相手部材5が過剰に押圧されることがなく、相手部材5の破損を招いたり、相手部材5に取付けられた他の部品の動作に悪影響を及ぼしたりすることがなく、仮締め工程、本締め工程のいずれであっても高品質な締付作業を行うことができる。また、各締付位置において前述の設定締付けトルク値が変更になると、駆動ビット3eに発生するカムアウト力Fcoが変わり、このカムアウト力Fcoを打ち消すために駆動ビット3eに付加する推力を変更する必要が生じる。前記カムアウト力Fcoはねじ締め用モータ3bに発生する電磁力、すなわちねじ締め用モータ3bに流れる電流値におおむね比例するので、カムアウト力Fcoを抑える推力もねじ締め用モータ3bに流れる電流値、言い換えれば締付けトルク値におおむね比例することとなる。そのため、前記設定締付けトルク値を挟む基準トルク値およびこれら基準トルク値に対応する基準推力を呼出して、これら基準トルク値およびこれらに対応する基準推力から、変更された設定締付けトルク値に対する新たな推力を線形補間により算出することができる。これにより、各締付位置において設定締付けトルク値が変更される度に、設定締付けトルク値に対する最適な推力を算出できるので、作業者は締付け作業に先立って、駆動ビット3eに発生するカムアウト力Fcoを測定する必要がなく、作業現場で煩雑で面倒な作業が不要となって、使い勝手のよいねじ締め装置1を提供することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態では駆動ビット3eに発生するカムアウト力Fcoを打ち消すのに最適な値を持つ基準トルク値−基準推力テーブルは、ねじ締め装置が持つ特有の特性としてあらかじめ記憶されているが、締付け作業に先立って相手部材5毎に基準トルク値Tsに対する基準推力Ds(B,Ts)を測定して、これを記憶してもよい。この基準推力Ds(B,Ts)の測定に際しては、前述のねじ締め装置1を用いることができる。この場合、ねじ締め装置1は図11に示すように移動用モータ2dにより仮推力Ft5が付加された状態(同図中の信号波形We5参照)の駆動ビット3eを待機位置P0からねじ締め開始位置P1を通り、仮締め完了時の位置P2まで移動させる構成と、前述のねじ締めモード時の回転数N1よりも低い仮締め回転数N3(中速中トルク)でねじ締め用モータ3bを回転させてあらかじめ締付けられたねじ4を増締めするとともに、仮締め完了時にねじ締め用モータ3bを仮締め回転数N3よりも低い本締め回転数N2に切り替える構成(図11中、信号波形Wd3およびWd4参照)と、を備えておればよい。その上で、駆動ビット3eの位置を仮締め完了時の位置P2に保持する間の移動用モータ2dのフィードバック電流値We6であって、駆動ビット3eが本締め完了時の位置P3に達する時のフィードバック電流値We6(Imf)を測定して、このフィードバック電流値We6(Imf)から推力を算出すればよい。
【0040】
その他、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…ねじ締め装置
2…移動ユニット
2d…移動用サーボモータ
3…ねじ締めユニット
3b…ねじ締め用モータ
3e…駆動ビット
7…主制御部
9…記憶部
12…推力算出部
Ts…基準トルク値
Ds(B,T)…基準推力
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13