(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載された構成は、手元から離れた側に位置決め用切欠部及び位置決め用突部が設けられた構成であるため、印刷用版を装着する際に、位置決め用切欠部と位置決め用突部の位置がずれてしまい、位置決め用切欠部の角が位置決め用突部にぶつかって位置決め用切欠部が変形してしまうという虞があった。
【0006】
また、手元から離れた位置に位置決め用切欠部が設けられているので、目視によって版胴の位置決め用突部に位置決め用切欠部を案内させて、印刷用版を版胴に装着させることは困難な場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、金属製、特にアルミニウム合金製飲料缶の印刷に用いられる印刷用版を変形させることなく版胴に容易に挿入させるための版装着治具の提供を目的とする。
【0008】
即ち、本発明は下記[1]〜[5]に記載の構成を有する。
【0009】
[1] 円筒状に成形された印刷用版を版胴の外周に挿入するための版装着治具であって、
前記印刷用版と係合して周方向に位置決めする第1位置決め手段と、
前記第1位置決め手段と周方向に位置決めされ、且つ前記版胴と係合して周方向に位置決めされる第2位置決め手段と、
を備えることを特徴とする版装着治具。
【0010】
[2] 前記第1位置決め手段を有する本体外輪と、
前記第2位置決め手段を有する本体内輪と、を備え、
前記本体外輪は、軸方向にスライド動作可能に前記本体内輪に外嵌され、
前記本体内輪は、その外周面で前記印刷用版を支持することを特徴とする前項1に記載の版装着治具。
【0011】
[3] 前記本体内輪および前記本体外輪は、特定の角度位置でのみ嵌合するよう構成されることを特徴とする前項2に記載の版装着治具。
【0012】
[4] 前記第1位置決め手段は、前記本体外輪と着脱可能に設けられることを特徴とする前項2または3に記載の版装着治具
[5] 版装着治具を用いて円筒状に成形された印刷用版を版胴に挿入する版装着方法であって、
第1位置決め手段によって前記印刷用版を前記版装着治具に係合させて、前記印刷用版を前記版装着治具に対して周方向に位置決めし、
前記第1位置決め手段と周方向に位置決めされた第2位置決め手段によって、前記版胴を前記版装着治具に係合させて、前記版胴を前記版装着治具に対して周方向に位置決めした後、
前記版胴の外周に前記印刷用版を装着させることを特徴とする版装着方法。
【発明の効果】
【0013】
上記[1]に記載の発明によれば、円筒状に成形された印刷用版を版胴の外周に挿入するための版装着治具であって、印刷用版と係合して周方向に位置決めする第1位置決め手段と、第1位置決め手段と周方向に位置決めされ、且つ版胴と係合して周方向に位置決めされる第2位置決め手段と、を備えるので、予め第1の位置決め手段によって印刷用版を版装着治具の適切な位置に係合させ、第2の位置決め手段によって版胴と版装着治具を適切な位置で係合させるだけで、印刷用版を版胴の適切な位置に容易且つ確実に装着させることができる。
【0014】
版装着治具によって印刷用版を版胴の適切な位置に確実に装着させることができるので、印刷用版が版胴に挿入される際にぶつかるなどして印刷用版が変形することがない。
【0015】
上記[2]に記載の発明によれば、第1位置決め手段を有する本体外輪と、第2位置決め手段を有する本体内輪と、を備え、本体外輪は、軸方向にスライド動作可能に本体内輪に外嵌され、本体内輪は、その外周面で印刷用版を支持するので、印刷用版が本体内輪の外周面に支持された状態で本体外輪を軸方向にスライド動作させるだけで、版胴に対する適切な位置を維持したまま印刷用版を版胴側に押し出すことができ、印刷用版をより容易に版胴に装着させることができる。
【0016】
上記[3]に記載の発明によれば、本体内輪および本体外輪は、特定の角度位置でのみ嵌合するよう構成されるので、本体内輪及び本体外輪が、必ず互いに適切な角度位置でのみ嵌合するように案内される。
【0017】
また、印刷用版を版胴に装着する場合であっても、嵌合状態にある本体内輪及び本体外輪が不本意に回転することがなく、位置ずれすることがない。
【0018】
上記[4]に記載の発明によれば、第1位置決め手段は、本体外輪と着脱可能に設けられるので、印刷用版との係合によって磨耗するなどした場合であっても、本体外輪から取り外して交換が可能であり、印刷用版との適切な係合状態を常時維持することができる。
【0019】
上記[5]に記載の発明によれば、版装着治具を用いて円筒状に成形された印刷用版を版胴に挿入する版装着方法であって、第1位置決め手段によって印刷用版を版装着治具に係合させて、印刷用版を版装着治具に対して周方向に位置決めし、第1位置決め手段と周方向に位置決めされた第2位置決め手段によって、版胴を版装着治具に係合させて、版胴を版装着治具に対して周方向に位置決めした後、版胴の外周に印刷用版を装着させるので、予め第1の位置決め手段によって印刷用版を版装着治具の適切な位置に係合させ、第2の位置決め手段によって版胴と版装着治具を適切な位置に係合させるだけで、印刷用版を版胴の適切な位置に容易且つ確実に装着させることができる。
【0020】
版装着治具によって印刷用版を版胴の適切な位置に案内することができるので、印刷用版が版胴に挿入される際にぶつかるなどして印刷用版が変形することがない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、版装着治具10について説明するための説明図、
図2〜5は、版装着治具10の構成を説明するための説明図、
図6は、版装着治具10の構成を説明するための斜視図、
図7〜10は、版装着治具10の使用方法について説明するための説明図、
図11は、別実施形態に係る版装着治具20について説明するための斜視図である。
【0024】
まず、
図1〜11を参照して、円筒状に成形された印刷用版1を版胴2の外周に挿入するための版装着装置について説明する。
【0025】
以降では、
図6,11に示す版装着治具10,20の上下を上下とし、同図の左側を先端、右側を後端として説明する。
【0026】
また、
図8に示す印刷用版1及び版胴2の上下を上下とし、同図の右側を前面、左側を後面として説明する。
【0027】
版装着装置は、印刷対象物に対して印刷を行う印刷機、印刷機に用いられる印刷用版1に対して印刷模様を彫刻する彫刻機に共通して備えられるものである。
【0028】
版胴2に装着される印刷用版1としては、円筒状に形成された印刷用版1、特に、小径の印刷用版1が用いられる。
【0029】
印刷される被印刷物は飲料用金属缶であり、特にアルミニウム又はアルミニウム合金製の平板を、ドロー&アイアニング(DI)成形した有底円筒状の飲料用金属缶が好適に印刷される。
【0030】
版装着装置は、印刷機の機枠から前方に突出するように設けられた図示しない版駆動軸と、版駆動軸の先端部側から嵌め込まれて、版駆動軸の外周面に固定される版胴2と、を備えている。
【0031】
版駆動軸は、その基端部側が印刷機の機枠に回転支持され、公知の駆動手段により所定方向に所定速度で回転させられる。
【0032】
版胴2は、円筒状に形成され、版駆動軸が挿通させられる挿通孔がその中心に設けられている。
【0033】
版胴2の外周には、版駆動軸と同心の円筒状の版装着面22が形成されており、版装着面22には、後述する印刷用版1が着脱可能に設けられる。
【0034】
版胴2は、重量軽減のために内部が取り除かれて空洞になっており、外周に版装着面22が形成された円筒部と、を備えている。
【0035】
版胴2は、挿通孔に版駆動軸を嵌め合わせた状態で版駆動軸に固定され、版駆動軸と一体となって回転する。
【0036】
版装着面22は、装着された印刷用版1の内面との摩擦抵抗による固定力を確保するため、その表面粗さはRa1μm以下程度で静摩擦を保つことが望ましい。
【0037】
また、その表面粗さを小さく保ち、かつ表面に傷が付きにくい点を考慮すると、版装着面22は、ハードクロム塗装(メッキ)することが好ましい。
【0038】
版胴2は、その前面が開口した状態になっており、前面側へ行くほど版装着面22の径よりも徐々に小径に形成された案内部27が前面側に設けられている。
【0039】
印刷用版1には、弾性材料で円筒状に形成された版本体11と、版本体11の外周部の一部に形成された版部12とが備えられている。
【0040】
版本体11は、弾性材料製シートが円筒状に形成されて両端部が重ね合わされて接合されることにより構成され、版部12は、接合部13を除く版本体11の外周面の所定箇所に設けられている。
【0041】
弾性材料製シートは、磁性あるいは非磁性の適当な金属等の長方形状の弾性材料製シートからなり、例えば、市販のブリキ板(Fe)が採用され、シートの厚さは、円筒状に形成できて、かつ弾性力により円筒状を保持できる程度であればよく、この例では、約0.26mmである。
【0042】
版本体11には、版部12となる樹脂層がその片面に形成されており、この樹脂層は、例えばポリビニルアルコール系、ビニルエステル系またはポリアミド系等の樹脂を採用することができ、ショアD硬度で例えば硬化後D20〜80程度のものが好適である。
【0043】
例えば、通常のオフセット印刷用のUV硬化樹脂(紫外線硬化樹脂)を採用すると、それ以外の硬化樹脂のような溶剤や高圧スチームによる煩雑な洗浄作業を必要とせず、一般に水洗浄で容易に洗浄作業を行うことができる。
【0044】
樹脂層の厚さは、印刷の版部12として必要な厚みがあればよく、この例では、弾性材料製シートの片面に厚さ0.4〜0.6mmの層を接着させている。
【0045】
円筒状に形成された印刷用版1は、版胴2の前面側から嵌め込まれることによって、版胴2の外周面である版装着面22に装着される。
【0046】
印刷用版1の版部12は、印刷用版1が版胴2に装着されたときに版装着面22に密着する版本体11の外面部分に形成されている。
【0047】
成形された印刷用版1の軸方向長さ寸法は、版胴2の軸方向長さ寸法よりも短い寸法に設定される。
【0048】
印刷用版1は、両端部を重ね合わせて接合された部位が、後述する版胴2の版固定部材装着面23の形成された位置に合わせて版胴2に装着されるようになっている。
【0049】
版胴2には、円筒部の一部が取り除かれて、平坦な面が形成されてなる版固定部材装着面23が設けられており、円筒部の外周の版固定部材装着面23を除く部分が印刷用版1の装着される版装着面22となっている。
【0050】
版固定部材装着面23には、後に詳述するが、版胴2の外周面に径方向内外へ移動可能に設けられた、印刷用版1を固定するための図示しない版固定部材が設けられている。
【0051】
版固定部材装着面23は、版装着面22を含む円筒面よりも径方向内側に位置している。
【0052】
版装着面22の外径と、印刷用版1の内径は、略同等の寸法となるように設定される。
【0053】
版胴2が版固定部材装着面23を有しているため、版装着面22と版固定部材装着面23を合計した周長は、版胴2の版装着面22が形成する円筒面の周長より短くなる。
【0054】
印刷用版1の内周面の周長は、版胴2の版装着面22と版固定部材装着面23を合計した周長よりも僅かに大きく、版胴2の版装着面22が形成する円筒面の周長より僅かに小さい寸法に設定されている。
【0055】
これにより、版胴2に対する印刷用版1の挿入を容易なものとするとともに、版固定部材に押された部位が印刷用版1の他の部位より径方向外側に突出する事態を回避することができるようになっている。
【0056】
版固定部材装着面23には、版固定部材装着面23の軸方向長さの大部分にわたり、軸方向に長い方形状で、両側壁及び底壁が平坦面に形成された溝部26が形成されている。
【0057】
溝部26には、図示しない版固定部材が版胴2の径方向に移動可能に嵌め込まれる。
【0058】
版固定部材には、例えば、その内部に版胴2の軸方向に延びる回転軸が設けられ、当該回転軸が、版固定部材の内部において回転可能に構成されている。
【0059】
版固定部材は、軸方向に長い方形状に形成され、版胴2の径方向に移動しうるように版固定部材装着面23に形成された溝部26に嵌められ、回転軸の回転に伴って、版胴2の内部で版胴2の径方向に位置移動可能に構成される。
【0060】
版固定部材は、版胴2の溝部26の軸方向両端壁に対して周方向及び軸方向にほぼ隙間なく嵌まり、周方向両側壁及び軸方向両端壁の面と平行に版胴2の径方向に移動する。
【0061】
版固定部材は、例えば、その径方向外側の端面が版装着面22と同じ曲率、或いは同程度の曲率の円筒面で形成され、印刷用版1の版部12を含む外表面が形成する円筒面の内側の範囲内で、版胴2に装着された印刷用版1の一部を径方向内側から径方向外側に押して拡径するようになっている。
【0062】
回転軸の先端部は、例えば、版胴2の前面を突き抜けるようにして、版胴2の後面側から版胴2の軸方向前面側に伸びる操作部を設け、回転軸が回転操作されるよう構成するとよい。
【0063】
版胴2の円筒部の後面の外周部には、印刷用版1の軸方向の装着位置を決めるためのエンドストッパー25が固定されている。
【0064】
エンドストッパー25は、版装着面22より径方向外側に少し張り出した円環状に形成され、印刷用版1を版胴2の前面側から嵌め込むと、印刷用版1の後面端部112が当接するように構成されている。
【0065】
エンドストッパー25が設けられることにより、印刷用版1の後面端部112を版胴2の所定位置に正確に且つ簡単に取付けられるようになる。
【0066】
版胴2の下側且つエンドストッパー25の手前側には、少なくとも印刷用版1の周方向の位置決めをするための周方向位置決め用突部21が設けられている。
【0067】
位置決め用突部21は、例えば、版胴2の径方向外側へ僅かに突出し、平面視で略半円形状の段部が形成されている。
【0068】
版胴2の案内部27、即ち、版胴2の前面側の端部には、後述する版装着治具10の嵌合雄部42が嵌合する嵌合雌部28が設けられている。
【0069】
嵌合雌部28は、版固定部材装着面23の前面側端部に設けられ、例えば、版固定部材装着面23と同幅でコ字状に切り欠いた形状に形成されている。
【0070】
印刷用版1は、版胴2の版装着面22に装着された際の後面端部112に位置決め用切欠部14が形成され、版胴2の位置決め用突部21と係合するようになっている。
【0071】
位置決め用切欠部14は、印刷用版1の接合部13を上部側とした場合に、印刷用版1の下部側、即ち、接合部13と対向する側に配置されている。
【0072】
位置決め用切欠部14は、印刷用版1の軸方向に延びる切欠きが形成されてなり、その奥端部14aが周方向位置決め用突部21の外周形状と一致する曲率を有する形状に形成されている。
【0073】
印刷用版1が版胴2の後面側端部まで装着されると、位置決め用切欠部14が位置決め用突部21に係合することによって印刷用版1の周方向及び版胴2の軸方向の位置決めができるようになっている。
【0074】
位置決め用切欠部14の幅寸法は、位置決め用突部21の幅寸法と略同等に設定されることが好ましい。
【0075】
位置決め用切欠部14は、その寸法が大き過ぎると版部12と重複してしまう虞があり、その寸法が小さ過ぎると、位置決め用突部21と係合させ難くなる虞があるため、位置決め用突部21に対する位置決め用切欠部14のクリアランスは、0μm〜100μmに設定されるような寸法であることが好ましい。
【0076】
印刷用版1には、前面端部111の上部側、接合部13の前面端部111に係合凹部15が設けられている。
【0077】
係合凹部15は、位置決め用切欠部14と軸方向に同一線上となるように配置されている。
【0078】
係合凹部15は、印刷用版1の軸方向に延びる切欠きが形成されてなり、その奥端部15aが後述する版装着治具10の係合凸部51の形状と一致する形状に形成されている。
【0079】
係合凹部15は、後面端部112の下部側に設けられた位置決め用切欠部14と軸方向同一線上に設けられている。
【0080】
係合凹部15及び位置決め用切欠部14は、このように軸方向に同一線上に配置されていながらも、印刷用版1を版装着治具10に装着した際に、係合凹部15が前面端部111の上部側に設けられ、位置決め用切欠部14が後面端部112の下部側に設けられることによって、印刷用版1の強度を著しく低下させることがない。
【0081】
また、係合凹部15は、弾性材料製シートの両端部が重ねられてなる接合部13に設けられているので、印刷用版1の強度を十分に維持することができる。
【0082】
版装着治具10は、円筒状に成形された印刷用版1を版胴2の外周に挿入するための治具であり、印刷用版1を版装着治具10に装着固定させた状態で、版装着治具10を版胴2に装着固定して、印刷用版1を版胴2の外周に装着可能に構成されている。
【0083】
版装着治具10は、中空状に形成された本体内輪4及び本体内輪4に外嵌された本体外輪3を備え、本体外輪3が、本体内輪4の軸方向にスライド動作可能に本体内輪4に外嵌されている。
【0084】
尚、版装着治具10は、軽量になるため中空状に形成されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0085】
本体外輪3は、円筒状に形成され、その内周の一部の厚みを嵩増しさせて、平坦な面が形成された外輪平坦部31が設けられている。
【0086】
本体外輪3は、外輪平坦部31の先端側の縁壁3aの一部を切欠いてなる取付部33が形成されており、当該取付部33に版係合部5が取付け可能に構成されている。
【0087】
版係合部5は、本体外輪3とは別体で形成され、取付孔53が形成された板状部材からなり、版係合部5の取付孔53及び本体外輪3の取付部33に形成された取付孔331にねじ部材Sが螺合されて、本体外輪3の取付部33に取付固定される。
【0088】
版係合部5は、本体外輪3の取付部33に取り付けられる取付面52とは反対側の面に、版係合部5の中央部の上端から下端にかけて、取付部33から離間する方向に凸状に形成された係合凸部51が設けられている。
【0089】
係合凸部51は、印刷用版1の係合凹部15と係合するように構成され、これにより印刷用版1を周方向に位置決めして版装着治具10に装着させることができる。
【0090】
当該係合凸部51が、印刷用版1と係合して周方向に位置決めする第1位置決め手段として機能する。
【0091】
第1位置決め手段である係合凸部51(版係合部5)は、本体外輪3と着脱可能に設けられるので、印刷用版1との係合によって磨耗するなどした場合であっても、本体外輪3から取り外して交換が可能であり、印刷用版1との適切な係合状態を常時維持することができる。
【0092】
本体外輪3には、内周の一部、具体的には、外輪平坦部31の一部を切り欠くことによって、外輪平坦部31と内輪平坦部41との間で隙間が生ずるように、逃がし32が形成されている。
【0093】
これにより、本体外輪3を本体内輪4に外嵌する際に、外輪平坦部31と内輪平坦部41との間で生じる摩擦が低減し、本体外輪3を本体内輪4に嵌め易くなる。
【0094】
本体内輪4は、円筒状に形成され、その軸方向長さ寸法が、本体外輪3の軸方向長さ寸法より若干長くなるように設定されている。
【0095】
本体内輪4には、その外周の一部が取り除かれて、平坦な面が形成された内輪平坦部41が設けられている。
【0096】
内輪平坦部41は、版胴2の版固定部材装着面23と同幅に設定されている。
【0097】
本体内輪4の外径寸法は、印刷用版1の内径寸法及び本体外輪3の内径寸法よりも僅かに小さい寸法に形成され、且つ、版胴2の案内部27の外径よりも大きい寸法に形成されている。
【0098】
本体内輪4は、その外周面で印刷用版1を支持できるようになっている。
【0099】
また、内輪平坦部41の周方向幅寸法は外輪平坦部31の幅寸法よりも僅かに小さい寸法に形成されている。
【0100】
本体内輪4が本体外輪3に外嵌される際には、内輪平坦部41と外輪平坦部31が平行になるように位置合わせされて、本体内輪4に本体外輪3が嵌め込まれる。
【0101】
即ち、本体内輪4及び本体外輪3は、特定の位置、例えば、周方向に固定された特定の角度位置でのみ嵌合するよう構成されたガイド手段としてそれぞれ内輪平坦部41及び外輪平坦部31を備えている。
【0102】
本体内輪4及び本体外輪3は、特定の角度位置でのみ嵌合するようガイド手段として機能する外輪平坦部31及び内輪平坦部41を備えて構成されることにより、本体内輪4及び本体外輪3が、必ず互いに適切な角度位置でのみ嵌合するように案内される。
【0103】
また、印刷用版1を版胴2に装着する場合であっても、嵌合状態にある本体内輪4及び本体外輪3が不本意に回転することがなく、位置ずれすることがない。
【0104】
内輪平坦部41の先端側には、本体内輪4の軸方向外側へ突出するように本体内輪4と一体成形された嵌合雄部42が設けられている。
【0105】
嵌合雄部42は、版胴2の嵌合雌部28と嵌合するように構成され、これにより周方向に位置決めして版胴2に版装着治具10を装着させることができる。
【0106】
嵌合雄部42は、本体内輪4の軸方向外側へ突出した板状部分の角部を切り欠いた形状に形成され、内輪平坦部41と同幅に設定されている。
【0107】
嵌合雄部42は印刷用版1の版胴2への装着時には見えない箇所に位置しているため版胴2の嵌合雌部28に嵌め込み難いが、嵌合雄部42は、十分に幅の広い形状に形成されるので、例えば、嵌合雌部28の位置を確認しながら版胴2の嵌合雌部28を嵌め込む際などに案内させ易くなる。
【0108】
また、本体内輪4の軸方向外側へ突出した板状部分の角部を切り欠いた形状に形成されるので、版胴2の嵌合雌部28に嵌合させる際にぶつけて嵌合雄部42が変形するなどすることがない。
【0109】
当該嵌合雄部42が、版胴2と嵌合して周方向に位置決めする第2位置決め手段として機能する。
【0110】
本体内輪4の先端側には、本体内輪4を版胴2の前面側に支持させるため固定部43が設けられている。
【0111】
固定部43は、版胴2の内径と一致する曲率を有する部材が本体内輪4の軸方向外側へ突出して設けられ、径方向外側面が版胴2の内側に嵌め込まれるように形成されている。
【0112】
固定部43は、この例では、本体内輪4の嵌合雄部42が設けられた端部から約30°の位置と、更にそこから約180°の位置の合計2箇所に設けられている。
【0113】
固定部43の外側面は、版胴2の内径と等しい曲率を有する曲面で形成され、版胴2の内周面に当接するように形成されている。
【0114】
本体内輪4は、版胴2の内周面に当接するように形成された固定部43を備えることにより、版装着治具10を版胴2に支持させることができ、版胴2への印刷用版1の装着が容易になる。
【0115】
以下では、
図7〜10に基づいて版装着治具10の使用方法について説明する。
【0116】
まず、本体外輪3の外輪平坦部31が本体内輪4の内輪平坦部41と平行するように本体外輪3を本体内輪4に外嵌させることにより、本体外輪3及び本体内輪4が周方向に位置決めされる。
【0117】
本体外輪3は、少なくとも本体内輪4の外周面に嵌め込まれた印刷用版1を支持できる程度に、本体内輪4の外周面の一部が本体外輪3の先端部よりも突出するようずらしておく。
【0118】
この時、版装着治具10は、本体内輪4の嵌合雄部42が上部に位置するように配置しておく。
【0119】
本体内輪4の嵌合雄部42が上部に位置している状態では、本体外輪3の係合凸部51は上部中央に位置している。
【0120】
印刷用版1の接合部13と本体内輪4の内輪平坦部41とが同位置で嵌め合わされるように位置合わせして、印刷用版1を本体内輪4に外嵌する。
【0121】
内輪平坦部41と印刷用版1の接合部13とが同位置で嵌め合わされるように形成されているので、印刷用版1を版装着治具10に案内させ易い。
【0122】
この状態で、本体外輪3の係合凸部51に印刷用版1の係合凹部15が嵌るように、本体内輪4の外周面で支持させる、即ち、印刷用版1を版装着治具10に装着する。
【0123】
これにより、周方向に位置決めされた本体外輪3及び本体内輪4が、印刷用版1と周方向に位置決めされた状態となる。
【0124】
印刷用版1を版装着治具10に固定させた状態で、版装着治具10を版胴2に嵌め込ませる。
【0125】
版胴2の嵌合雌部28を上部に位置させて、版装着治具10に固定させた状態の印刷用版1を版胴2の外周に被せるようにして版装着治具10をスライド移動させる。
【0126】
版装着治具10の嵌合雄部42が版胴2の嵌合雌部28に嵌合すると、版胴2の前面端部が版装着治具10の本体内輪4の先端側の縁壁4aに当接する。
【0127】
版装着治具10の嵌合雄部42と版胴2の嵌合雌部28が嵌合されて、版装着治具10と版胴2が周方向に位置決めされることによって、印刷用版1が版胴2に対して適切な位置となるように周方向に位置決めされる。
【0128】
印刷用版1の前面端部111は、本体外輪3の先端側縁壁3aに当接したままの状態にあり、後面端部112は、版胴2の後面端部にまでは到達しておらず、版胴2の中間よりもエンドストッパー25寄りに位置した状態となる。
【0129】
続いて、印刷用版1の位置決め用切欠部14が版胴2の位置決め用突部21に係合されるまで、本体外輪3を版胴2側へ軸方向にスライドさせる。
【0130】
この時、版胴2の位置決め用突部21は下部中央に位置し、印刷用版1の位置決め用切欠部14も下部中央に位置しているので、印刷用版1を後面側へスライドさせるだけで確実に位置決め用切欠部14を位置決め用突部21に係合させることができる。
【0131】
位置決め用切欠部14が位置決め用突部21と係合すると、印刷用版1の係合凹部15と本体外輪3の係合凸部51との係合を解除して、本体外輪3を逆方向(版胴2から離間する方向)へスライド移動させて、版装着治具10及び版胴2の係合を解除して版装着治具10を取り外す。
【0132】
このように、第1位置決め手段を有する本体外輪3と、第2位置決め手段を有する本体内輪4と、を備え、本体外輪3は、軸方向にスライド動作可能に本体内輪4に外嵌され、本体内輪4は、その外周面で印刷用版1を支持するので、印刷用版1が本体内輪4の外周面に支持された状態で本体外輪3を軸方向にスライド動作させるだけで、版胴2に対する適切な位置を維持したまま印刷用版1を版胴2側に押し出すことができ、印刷用版1をより容易に版胴2に装着させることができる。
【0133】
上述した版装着治具10は、係合凸部51を有する版係合部5が本体外輪3と別体で設けられるように説明したが、係合凸部が本体外輪3に設けられた構成であってもよい。
【0134】
例えば、
図11に示す版装着治具20のように、本体外輪3の先端側の縁壁3aの上端から下端にかけて、連続した凸状に形成され、本体外輪3と一体成形された係合凸部35が設けられるのであってもよい。
【0135】
また、本体内輪4と本体外輪3の軸方向長さ寸法は、先の実施形態では、本体内輪4の軸方向の最大長さ寸法が本体外輪3の軸方向の最大長さ寸法よりも若干長いものを例に説明したが、
図11に示すように、本体内輪4の軸方向の最大長さ寸法が本体外輪3の軸方向の最大長さ寸法の例えば2倍以上の長さ寸法など、本体内輪4の長さ寸法が本体外輪3の長さ寸法よりも十分に長くなるよう設定されるのであってもよい。
【0136】
版装着治具10,20は、本体内輪4の長さ寸法が本体外輪3の長さ寸法よりも長く設定されている方が使い易いため好ましいが、本体内輪4の長さ寸法が本体外輪3の長さ寸法よりも短く設定されているのであってもよい。
【0137】
上述した位置決め用切欠部14は、印刷用版1の前面端部111の上部側に設けられた係合凹部15に対して軸方向同一線上の後面端部112の下部側に設けられるように説明したが、これに限定されるものではなく、位置決め用切欠部14の位置は、版装着治具10,20によって印刷用版1を装着可能な版胴2を有する印刷機或いは版装着装置の構成などによって決定するとよい。
【0138】
上述したように、版装着治具10,20は、円筒状に成形された印刷用版1を版胴2の外周に挿入するためのものであって、印刷用版1と係合して周方向に位置決めする第1位置決め手段と、第1位置決め手段と周方向に位置決めされ、且つ版胴2と係合して周方向に位置決めされる第2位置決め手段と、を備えるので、予め第1の位置決め手段によって印刷用版1を版装着治具10,20の適切な位置に係合させ、第2の位置決め手段によって版胴2と版装着治具10,20を適切な位置で係合させるだけで、印刷用版1を版胴2の適切な位置に容易且つ確実に装着させることができる。
【0139】
版装着治具10,20によって印刷用版1を版胴2の適切な位置に確実に装着させることができるので、印刷用版1が版胴2に挿入される際にぶつかるなどして印刷用版1が変形することがない。
【0140】
上述した版装着治具10,20を用いた版装着方法においても、上述と同様の作用効果を奏する。
【0141】
以上説明した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において具体的構成などを適宜変更設計できることは言うまでもない。