特許第6405188号(P6405188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理研香料ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405188
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】燃料用複合着臭剤
(51)【国際特許分類】
   C10L 3/00 20060101AFI20181004BHJP
   C10L 1/185 20060101ALI20181004BHJP
   C10L 1/182 20060101ALI20181004BHJP
   C10L 1/19 20060101ALI20181004BHJP
   C10L 1/04 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C10L3/00 C
   C10L1/185
   C10L1/182
   C10L1/19
   C10L1/04
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-216930(P2014-216930)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-84392(P2016-84392A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390015853
【氏名又は名称】理研香料ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125748
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 徳明
(74)【代理人】
【識別番号】100177161
【弁理士】
【氏名又は名称】日比 敦士
(74)【代理人】
【識別番号】100191972
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 友梨
(72)【発明者】
【氏名】村 悠平
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−132813(JP,A)
【文献】 特開平08−060167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00− 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス又は液体燃料に臭いを付ける燃料用複合着臭剤であって、
1−オクテン−3−オール;並びに;
2−オクテン−4−オン、1−オクテン−3−イルアセテート、ピルビンアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジメチルアセタール、2−シクロヘキシルプロパナール、ホルムアルデヒドジエチルアセタール、3−メチル−3−ペンテン−2−オン、ヒドラトロピックアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドエチル−シス−3−ヘキセニルアセテート、t−2−ノネナール、5−エチリデン−2−ノルボルネン、エチルイソバレレート、メチルイソバレレート、3−ヒドロキシ−2−ブタノイン、2,3−ブタンジオン、及び、1−オクテン−3−オンよりなる群から選ばれた少なくとも1種又は2種以上の化合物を含有することを特徴とする燃料用複合着臭剤。
【請求項2】
上記燃料用複合着臭剤が、更に、メルカプタン化合物及び/又はスルフィド化合物を含有するものである請求項1に記載の燃料用複合着臭剤。
【請求項3】
上記燃料ガスが、都市ガス、液化天然ガス、工業用ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、水素ガス、又は、燃料電池用ガスである請求項1又は請求項2に記載の燃料用複合着臭剤。
【請求項4】
上記液体燃料が、ガソリン、ナフサ、バイオ燃料、軽油、又は、灯油である請求項1又は請求項2に記載の燃料用複合着臭剤。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の燃料用複合着臭剤を含有するものであることを特徴とする燃料ガス又は液体燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス又は液体燃料に臭いを付ける、少なくとも2種の化合物を含有する燃料用複合着臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスや液体燃料は生活に欠かせないものであり、近年、その種類や用途は多種多様となっており、燃して(熱にして)使用するものも、燃して使用せずに燃料電池用として電気化学反応に使用するものもある。
【0003】
燃料ガスや液体燃料は、可燃性や爆発性を有するものの、臭気が極めて弱いため、漏洩しても気付かない場合があり、漏洩による引火、爆発等の災害を未然に防止する十分な対策が要求される。
【0004】
そこで、従来、この対策の簡便な方法として、燃料ガスや液体燃料に、特有な臭気を有する化合物を着臭剤として添加することにより、もし燃料ガスや液体燃料が漏洩した場合であっても、人間の嗅覚で容易に感知(認知)し得るようにすることが行われてきた。
これらの着臭剤としては、メルカプタン類、スルフィド類(サルファイド類)、チオフェン類等が使用されてきた。
【0005】
しかし、従来用いられている一般的な着臭剤であるメルカプタン類、スルフィド類(サルファイド類)、チオフェン類等は、硫黄原子(S)を含有しており、それらが添加された燃料ガスや液体燃料の燃焼により、硫黄酸化物が生成され、それが大気中に放出されることで、環境汚染の一因となっていた。
【0006】
また、燃料ガスや液体燃料に、上記の硫黄含有化合物を添加して使用した場合等に、特に燃料電池用の燃料に対して上記の硫黄含有化合物を添加して使用した場合に、触媒を被毒したり、燃料電池材料に影響を与えたりして、その寿命を短くすると言った問題点があった。
【0007】
そこで、特許文献1には、燃料電池用の水素ガスに臭いを付ける付臭剤として、硫黄原子を含まない種々の化合物が挙げられており、また、特許文献2には、硫黄原子と窒素原子を含まない燃料ガス用付臭剤として、種々の化合物が挙げられている。
しかしながら、それらの化合物は、臭いが弱かったり(無かったり)、不快な臭いがしなかったり(不快さが劣ったり)、従来のガス臭とはかけ離れた臭いであったりすると言った問題点があった。
【0008】
一方、特許文献3に記載の発明は、飲食品用添加剤としてのミート系フレーバー組成物の発明であるが、その中に含有されていてもよい化合物として、1−オクテン−3−オールが挙げられている。
また、特許文献4には、香料としてマツタケ様の臭いの強い(S)−1−オクテン−3−オールを選択的に製造する技術が開示されている。
しかしながら、これらは、飲食品への添加物を対象としたものであり、触媒を被毒しない、燃料電池材料に影響を与えない、従来の不快なガス臭がする等の性能に考慮した、燃料電池用の燃料の着臭剤ではなかった。
【0009】
また、特許文献5には、燃料ガスや液体燃料に臭いを付ける燃料用着臭剤の1つとして、1−オクテン−3−オールが挙げられている。
しかしながら、この発明は、単に臭いが強いこと、及び、燃料電池の触媒を被毒せずそれらに悪影響を及ぼさないことを基準になされたものであり、不快な臭いがする(臭いの不快さに優る)、従来のガス臭と類似している等と言った性質まで考慮してなされたものではなかった。
【0010】
近年、燃料電池用の水素ガスを始めとした燃料ガスや液体燃料に関し、それらの漏洩による引火、爆発等の災害を未然に防止するために、環境汚染の原因となる硫黄原子を含有しない着臭剤への要求は、ますます高くなってきているが、前記公知技術では、不十分であり、更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−155488号公報
【特許文献2】国際公開第2003/044135号
【特許文献3】特開2005−015683号公報
【特許文献4】特開2007−228916号公報
【特許文献5】特開2007−297431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、燃焼しても硫黄酸化物が殆ど発生しないため環境を汚染することなく、また、燃料電池用の燃料ガス等に使用しても、燃料から水素ガスに改質する際の触媒を被毒せず、また燃料電池材料等にも悪影響を及ぼさず、また、着臭剤としての臭い(臭質)に関して優れた燃料用複合着臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物を必須成分として、そこに特定の化合物群から選ばれた化合物を混合して用いることによって、硫黄原子を含む化合物を含有させなくても、生活臭と明瞭に区別でき、不快な臭いがし、従来のガス臭と類似している燃料用複合着臭剤ができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
燃料ガス又は液体燃料に臭いを付ける燃料用複合着臭剤であって、
1−オクテン−3−オール;並びに;
2−オクテン−4−オン、1−オクテン−3−イルアセテート、ピルビンアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジメチルアセタール、2−シクロヘキシルプロパナール、ホルムアルデヒドジエチルアセタール、3−メチル−3−ペンテン−2−オン、ヒドラトロピックアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドエチル−シス−3−ヘキセニルアセテート、t−2−ノネナール、5−エチリデン−2−ノルボルネン、エチルイソバレレート、メチルイソバレレート、3−ヒドロキシ−2−ブタノイン(アセトイン)、2,3−ブタンジオン(ジアセチル)、及び、1−オクテン−3−オンよりなる群から選ばれた少なくとも1種又は2種以上の化合物
を含有することを特徴とする燃料用複合着臭剤を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、上記燃料用複合着臭剤を含有するものであることを特徴とする燃料ガス又は液体燃料を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記問題点を解消し、上記課題を解決し、人体への毒性がない、ガスが燃焼した後に臭いが残らない、ガス管等を腐食させない等と言った着臭剤として基本的な性質を有しつつ、燃料ガスや液体燃料を燃焼させても硫黄酸化物が殆ど発生せず環境の汚染を確実に防止することのできる燃料用複合着臭剤を提供できる。
【0017】
更に、本発明によれば、例えば空気(大気)で1000倍に希釈したときの「臭気強度2」(何の臭いであるか分かる弱い匂い)を与える着臭剤の濃度を適度に低めることができる(十分低い濃度で「臭気強度2」となる);危険を知らせるために不快な臭いがし、すなわち臭いの不快さに優れており微量でもガス漏れと分かる(以下、この基準を単に「不快度」と略記する場合がある);一般に存在する臭い(生活臭)と明瞭に区別できる;従来のガス臭と類似している(以下、この基準を単に「ガス臭としての臭質」と略記する場合がある);等と言った効果を奏する燃料用複合着臭剤を提供できる。
【0018】
また、本発明の燃料用複合着臭剤を、燃料電池用の負極活物質(還元剤)である水素ガス、メタンガス等の直接の燃料ガス自体に使用しても燃料電池材料に悪影響を及ぼさないため、燃料電池自体や燃料電池の材料(構成材)の寿命を短くすることがない。
【0019】
また、水素ガス等の燃料電池に直接使用される燃料ガス(負極活物質、還元剤)は、液化石油ガス、天然ガス等の燃料ガスを、白金触媒等の触媒を用いて改質して得られた水素ガスを用いることが多いが、その際の原料となる燃料ガスに使用しても(含有させても)、触媒を被毒せず、寿命を短くすることがない。
従来の硫黄(S)原子を含む化合物よりなる着臭剤を使用すると、燃料電池に使用されている触媒を劣化させる問題点を有していたが、本発明の着臭剤は、硫黄(S)原子を含まないようにもできるため、硫黄(S)原子を含まないことによって、触媒劣化等の発生を防止することができる。
更に、メルカプタン化合物及び/又はスルフィド化合物を、そこに含有させても、一定量以下であれば、良好な燃料電池用の燃料用複合着臭剤を提供することができる。
【0020】
また、燃料電池用燃料ガスに限らず、本発明の燃料用複合着臭剤に、更にメルカプタン化合物及び/又はスルフィド化合物を含有させることによって、不快さが増し、生活臭と区別できて従来のガス臭と類似させることが可能である。
また、環境汚染の可能性のあるメルカプタン化合物及び/又はスルフィド化合物の含有量を、「従来の硫黄(S)原子を含む着臭剤」より減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0022】
本発明は、燃料ガス又は液体燃料に臭いを付ける燃料用複合着臭剤であって、
1−オクテン−3−オール;並びに;
2−オクテン−4−オン、1−オクテン−3−イルアセテート、ピルビンアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジメチルアセタール、2−シクロヘキシルプロパナール、ホルムアルデヒドジエチルアセタール、3−メチル−3−ペンテン−2−オン、ヒドラトロピックアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドエチル−シス−3−ヘキセニルアセテート、t−2−ノネナール、5−エチリデン−2−ノルボルネン、エチルイソバレレート、メチルイソバレレート、3−ヒドロキシ−2−ブタノイン(アセトイン)、2,3−ブタンジオン(ジアセチル)、及び、1−オクテン−3−オンよりなる群から選ばれた少なくとも1種又は2種以上の化合物;
を含有することを特徴とする燃料用複合着臭剤である。
【0023】
ここで、「燃料ガス」とは、20℃において、又は、燃料として使用するときに、ガスの状態、すなわち気体の状態である燃料を言う。
また、「液体燃料」とは、20℃において、又は、燃料として使用するときに、液体の状態である燃料を言う。
ここで、「燃料」とは、そこからエネルギーを取り出す材料を言い、燃して使用するものも、熱にしてその熱を加熱・発電等に利用するものも、燃して使用せずに燃料電池用等として電気化学反応に使用するものも、燃料電池用の水素ガス等のガスを改質によって製造するための原料として使用するものも含まれる。
【0024】
本発明の燃料用複合着臭剤は、燃して使用する燃料に配合して、硫黄(S)を含有する着臭剤の量を減量したり無くしたりするために好ましく用いられるが、燃料電池用等の用途に用いると、触媒を被毒せず、材料に悪影響を与えず、寿命を短くすることがないために好ましい。
【0025】
燃料ガスとしては、前記定義範囲内に入るものであれば特に限定はないが、都市ガス、液化天然ガス、工業用ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、水素ガス、燃料電池用ガス等が挙げられる。なお、上記の燃料ガスの例示は、一部重複する場合もある。
【0026】
「都市ガス」とは、ガスホルダー、ガスの貯蔵所、採掘拠点等から供給されている燃料ガスを言う。日本国においては、ガス事業法上の一般ガス事業者(企業)が供給する燃料ガスを言う。ガスを構成する分子種は限定されず、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、一酸化炭素等、又は、それらの混合物等が挙げられる。なお、日本国で用いられている都市ガスには限定されない。
【0027】
「液化天然ガス」とは、気体である天然ガスを冷却して、輸送、貯蔵等を目的として液体にしたもの、及び、それを気体にしたものを言う。
本発明の燃料用複合着臭剤は、液体である液化天然ガスにも、該液化天然ガスを気体にしたものにも含有される。
本発明の燃料用複合着臭剤は、液化天然ガスを使用した都市ガスにも好適に使用される。
【0028】
「工業用ガス」とは、工業用に用いられる燃料ガス一般を言う。それを使用する工場内において、本発明の燃料用複合着臭剤を混合する場合も含まれる。
【0029】
「液化石油ガス」とは、プロパン(炭素数3個)及びブタン(炭素数4個)を主成分とし、圧縮することにより常温で容易に液化できる燃料ガスを言い、「LPガス」と呼ばれることもある。本発明の燃料用複合着臭剤は、気体である液化石油ガスにも、該液化石油ガスを圧縮して液体にしたものにも含有され得る。
「液化石油ガス」には、天然ガスと共に産出される(天然ガスから分離される)石油由来のものも、それ以外のものも、石油の精製過程で分離されるものも含まれる。
本発明の燃料用複合着臭剤は、一般ボンベ、カセットコンロ用ガスカートリッジ等に入れた家庭用・業務用・工業用・農林水産業用の液化石油ガスに含有される他;フォークリフト、ブルドーザー、耕運機等を含む自動車用;ヒートポンプ、吸収式等による冷暖房用;燃してタービンを利用した発電、燃料電池による発電等の発電用;コジェネレーションシステム用;等の液化石油ガスに含有される。
【0030】
「ジメチルエーテル」は、都市ガス用、自動車用、産業用等に用いられる燃料ガスである。
「水素ガス」は、水素燃料エンジンを搭載した自動車用、ロケット用等の、燃して使用する燃料ガスの他、燃料電池用の負極活物質である燃料ガスにも使用される。
【0031】
「燃料電池用ガス」とは、燃料電池の燃料として直接使用される水素ガス、メタンガス、固体酸化物型燃料電池における一酸化炭素等の他、「触媒等を用いて改質して燃料電池の燃料として直接使用される水素ガス等を生成させるための原料」となる、液化天然ガス、液化石油ガス等の燃料ガスも含まれる。
【0032】
液体燃料としては、前記定義範囲内に入るものであれば特に限定はないが、本発明の燃料用着臭剤は、石油の分留物である燃料又はバイオ燃料に臭いを付けるのに用いられる。「石油の分留物である燃料」としては、ガソリン、ナフサ、軽油又は灯油が挙げられる。なお、上記の液体燃料の例示は、一部重複する場合もある。
【0033】
「ガソリン」とは、石油を分留して得られる、おおむね沸点が30℃〜220℃の範囲にあり、炭素数が4〜10個の炭化水素の混合物である液体燃料である。自動車用ガソリン、航空用ガソリン等を含む。
「ナフサ」とは、石油を分留して得られる、おおむね沸点が30℃〜80℃の範囲にあり、炭素数が5〜7の炭化水素である軽質ナフサと、おおむね沸点が80℃〜180℃の範囲にあり、炭素数が6〜12の炭化水素である重質ナフサとを含む。
本発明の燃料用複合着臭剤は、オイルライター用、ホワイトガソリン等に使用される重質ナフサにも用いられる。
【0034】
「軽油」とは、石油を分留して得られる、おおむね沸点が180℃〜350℃の範囲にあり、炭素数は主に10〜20であり、主としてディーゼルエンジンの燃料として使用される。
【0035】
本発明の燃料用複合着臭剤は、必須成分として1−オクテン−3−オールを含有する。 本発明の燃料用複合着臭剤における「1−オクテン−3−オール」は、光学異性体があり、本発明における「1−オクテン−3−オール」には、(R)−1−オクテン−3−オールも、(S)−1−オクテン−3−オールも、それらの混合物も含まれる。「それらの混合物」には、(R)体と(S)体が等量含まれて光学活性(旋光性)を失ったラセミ体も含まれる。
【0036】
本発明の燃料用複合着臭剤における「1−オクテン−3−オール」としては、臭いが強い(R)−1−オクテン−3−オール、又は、安価である点から(R)−1−オクテン−3−オールと(S)−1−オクテン−3−オールとの混合物が好ましい。
【0037】
1−オクテン−3−オールを、本発明の燃料用複合着臭剤の1成分として使用すると、毒性がない、燃焼後に臭いが残らない、ガス管等を腐食させない、硫黄を含まない等と言った基本的な性質を有すると共に、「不快度」に優れ、生活臭と明瞭に区別でき、従来のガス臭と類似している「ガス臭としての臭質」に優れた燃料用複合着臭剤を提供できる。
すなわち、1−オクテン−3−オールを単独で燃料用着臭剤として使用した場合に比較して、後記する特定の化合物と併用したときに、上記性質が特に増強される。
【0038】
また、1−オクテン−3−オールは、燃料用複合着臭剤の1成分として、「燃料電池用の水素ガスの原料となる燃料ガス等」に使用しても、該燃料ガスから水素ガス等への改質に用いられる触媒を被毒せず、また、燃料電池用の活物質である水素ガス等に使用しても、燃料電池の部材に悪影響を及ぼさない。
【0039】
本発明の燃料用複合着臭剤の必須成分である「1−オクテン−3−オール」と混合して使用する他方の成分は、2−オクテン−4−オン、1−オクテン−3−イルアセテート、ピルビンアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジメチルアセタール、2−シクロヘキシルプロパナール、ホルムアルデヒドジエチルアセタール、3−メチル−3−ペンテン−2−オン、ヒドラトロピックアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドエチル−シス−3−ヘキセニルアセテート、t−2−ノネナール、5−エチリデン−2−ノルボルネン、エチルイソバレレート、メチルイソバレレート、3−ヒドロキシ−2−ブタノイン(アセトイン)、2,3−ブタンジオン(ジアセチル)、及び、1−オクテン−3−オンよりなる群から選ばれた少なくとも1種又は2種以上の化合物である。
以下、上記化合物を、単に「併用化合物」と略記する場合がある。
【0040】
1−オクテン−3−オールと併用化合物との質量含有比率は、特に限定はないが、[1−オクテン−3−オール]/[併用化合物]=95/5〜10/90が好ましく、90/10〜15/85がより好ましく、85/15〜20/80が特に好ましく、70/30〜30/70が更に好ましい。
併用化合物が複数の化合物からなるときは、上記併用化合物の含有量はそれらの合計の含有量である。また、1−オクテン−3−オールが、光学異性体を含有するときは、それらの合計の含有量である。
【0041】
本発明は、前記燃料用複合着臭剤中に、1−オクテン−3−オールと併用化合物以外の「着臭剤等の化合物」が更に含有されることを排除するものではない。
【0042】
本発明の燃料用複合着臭剤は、硫黄(S)原子を含む化合物を含有しなくても、前記臭いに関する効果を発揮するが、硫黄(S)原子を含む化合物である「メルカプタン化合物及び/又はスルフィド化合物」を含有することも好ましい。このとき、メルカプタン化合物とスルフィド化合物の何れか一方又はそれらの両方を含有できる。
【0043】
この場合、硫黄(S)原子を含む化合物のみからなる着臭剤よりも、該硫黄(S)原子を含む化合物の燃料中の含有量を減らせる。
また、1−オクテン−3−オールや併用化合物やそれらの合計量の燃料中の含有量を減らせる;臭気強度や不快度の向上が図れる;「ガス臭としての臭質」に設定し易くすることが可能;等の効果を奏する。
【0044】
ここで、メルカプタン化合物は、特に限定はないが、具体的には、例えば、エチルメルカプタン、イソ−プロピルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、イソ−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン等が好ましく、これらの化合物は1種又は2種以上が用いられる。
また、スルフィド化合物は、特に限定はないが、具体的には、例えば、ジメチルスルフィド(ジメチルサルファイド、ジメチルチオエーテル)、ジエチルスルフィド(ジエチルサルファイド、ジエチルチオエーテル)、メチルエチルスルフィド(メチルエチルサルファイド、メチルエチルチオエーテル)等が好ましく、これらの化合物は1種又は2種以上が用いられる。
【0045】
本発明の燃料用複合着臭剤中に含まれる「メルカプタン化合物及び/又はスルフィド化合物」(両方用いる場合は、メルカプタン化合物とスルフィド化合物の合計量)は、燃料用複合着臭剤全体に対して、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。
100×[メルカプタン化合物及び/又はスルフィド化合物]/[燃料用複合着臭剤]の値(質量%)を、以下単に「混合比率」と略記する場合がある。
【0046】
混合比率が、上記上限以下であると、硫黄(S)原子を含む化合物による大気汚染等の影響が殆ど現れない。
また、特に、燃料電池に負極活物質(還元剤)として使用される水素ガス等を生成するための、液化天然ガス、液化石油ガス等の燃料ガス中の混合比率については、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、特に好ましくは0.001質量%以下にすると、改質に使用される触媒を被毒し難くなり、触媒寿命を短くすることがない。
【0047】
本発明の燃料用複合着臭剤は、燃料ガス又は液体燃料に含有させて、大気(空気)で、1000倍に希釈したときに、「臭気強度2」を与えるような濃度に設定することが好ましい。上記濃度は、「濃度」=[燃料用複合着臭剤の量]/「燃料の量」であり、より詳しくは以下である。
【0048】
本発明の燃料用複合着臭剤は、メルカプタン化合物、スルフィド化合物等の「硫黄(S)原子を含む化合物」を含有しないときは、「燃料ガス又は液体燃料」が燃料ガスの場合には、燃料ガス全体に対して、0.05g/Nm以上10g/Nm以下含有させることが好ましい。より好ましくは0.07g/Nm以上3g/Nm以下であり、特に好ましくは0.1g/Nm以上1g/Nm以下である。
【0049】
また、「燃料ガス又は液体燃料」が液体燃料の場合には、液体燃料全体に対して、50質量ppm以上10000質量ppm以下含有させることが好ましい。より好ましくは70質量ppm以上3000質量ppm以下であり、特に好ましくは100質量ppm以上1000質量ppm以下である。
なお、燃料ガスが液化石油ガスである場合には、燃料用複合着臭剤を配合時には、燃料ガスが液体である場合があるので、その場合には、上記液体燃料のときの好ましい濃度が適用される。
【0050】
また、本発明の燃料用複合着臭剤は、メルカプタン化合物、スルフィド化合物等の「硫黄(S)原子を含む化合物」を含有するときは、「燃料ガス又は液体燃料」が燃料ガスの場合には、燃料ガス全体に対して、0.001g/Nm以上1g/Nm以下含有させることが好ましい。より好ましくは0.003g/Nm以上0.3g/Nm以下であり、特に好ましくは0.01g/Nm以上0.1g/Nm以下である。
【0051】
また、「燃料ガス又は液体燃料」が液体燃料の場合には、液体燃料全体に対して、1質量ppm以上1000質量ppm以下含有させることが好ましい。より好ましくは3質量ppm以上300質量ppm以下であり、特に好ましくは10質量ppm以上100質量ppm以下である。
なお、燃料ガスが液化石油ガスである場合には、燃料用複合着臭剤を配合時には、燃料ガスが液体である場合があるので、その場合には、上記液体燃料のときの好ましい濃度が適用される。
【0052】
上記範囲の濃度の場合に、燃料ガス又は液体燃料を空気で1000倍(質量換算)に希釈したときに、着臭剤含有燃料を含有する大気として好適な「臭気強度2」を与えることができる。また、上記範囲の濃度の場合には、前記した本発明の効果を発揮し易い。
上記範囲より低いと、空気中に漏れ出した燃料ガス又は液体燃料の濃度が大きくならないと臭気を認知し難くなる場合がある。一方、上記範囲より高いと、空気中の燃料ガス又は液体燃料の濃度が十分小さい場合でも不快臭がしたり、燃料電池用ガスに用いた場合には、短時間に触媒を被毒したりする場合がある。
【0053】
本発明の燃料用複合着臭剤を含有する燃料ガス又は液体燃料は、前記効果を好適に発揮することができる。
1−オクテン−3−オールと併用化合物を、それぞれ独立に燃料ガス又は液体燃料に添加した後に、それぞれの燃料ガス又は液体燃料を混合したとしても、得られた燃料ガス又は液体燃料は、結果として、1−オクテン−3−オールと併用化合物の両方を含有することになるので、「本発明の燃料用複合着臭剤を含有する燃料ガス又は液体燃料」に該当することになる。
また、1−オクテン−3−オールと併用化合物とを別々に扱ったとしても、それらが結果的に混合されれば本発明に含まれる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
調製例1
表1、2に示した組成で、各成分を秤量して定量的に採取し、容器内で混合撹拌して、燃料用着臭剤又は燃料用複合着臭剤を調製した。
表1、2中の各成分の欄の数字は、質量部である。
【0056】
評価例1
<「安定性」の評価方法>
オートクレーブに、上記調製例1で調製した燃料用着臭剤又は燃料用複合着臭剤を、試料として50mL採取し、温度35℃で2週間加熱し、加熱前後の試料の各成分の化学変化(組成変化)をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0057】
<「安定性」の判定基準>
以下の判定基準で評価した。
○:全く組成変化が見られなかった。
×:組成変化が見られた。
【0058】
評価例2
[液体燃料又は液化石油ガスの場合]
<「臭気強度2を与える含有量」の評価方法>
液体燃料、又は、燃料ガスの中でも液化石油ガスの場合は、調製例1で調製した試料を、液化石油ガスに添加して臭いを付け、「どの程度の量を添加すればその臭いが何の臭いであるかが感知できる程度(臭気強度2)」となるかを、以下のように評価した。
すなわち、添加量を段階的に変化させて試料を添加した液化石油ガスを、15mの無臭室に、空気(大気)で1000倍に希釈される量だけ注入し、均一な濃度となるように撹拌した。
この希釈された液化石油ガスの臭気を、選定された6名のパネルが評価し、6段階臭気強度表示法による臭気強度が6段階のうちの「臭気強度2」となるときの試料の液化石油ガスへの添加量を求めた。「臭気強度2」となるときの試料の液化石油ガスへの添加量から、含有量[質量ppm]を算出し、結果を表1、2に示す。
【0059】
<<臭気強度の判定基準>>
「臭気強度」は、悪臭防止法等で定められたものであり、人間の臭気感覚を6段階で以下のように数値化したものである。
0:無臭
1:やっと感知できる臭い(検知閾値濃度)
2:何の臭いであるか分かる弱い臭い(認知閾値濃度)
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
【0060】
評価例3
[液化石油ガスを除く燃料ガスの場合]
<「臭気強度2を与える含有量」の評価方法>
調製例1で得られた試料を、液化石油ガス以外の燃料ガスである、液化天然ガス、工業用ガス、ジメチルエーテル、燃料電池用ガスに添加し、上記の液化石油ガスの場合と同様に、6段階臭気強度表示法による臭気強度が「臭気強度2」となるときの、試料の燃料ガスへの添加量を求めた。「臭気強度2」となるときの試料の燃料ガスへの添加量から、含有量[mg/Nm]を算出し、結果を表1、2に示す。
なお、「臭気強度の判定基準」は、上記したものと同一である。
【0061】
評価例4
<「不快度」の評価方法>
上記評価例2、3で、「臭気強度2」となる試料濃度で調製された「燃料ガス又は液体燃料」を、前記の無臭室内に、空気(大気)で1000倍に希釈される量だけ注入し、均一な濃度となるように撹拌し、臭いを嗅いでもらい以下の基準で、不快に感じる臭いか否かを判定した。結果を表1、2に示す。
【0062】
<<「不快度」の判定基準>>
9段階快・不快度評価 表示
−4:極端に不快 ○
−3:非常に不快 ○
−2:不快 ○
−1:やや不快 △
±0:快でも不快でもない ×
+1:やや快 ×
+2:快 ×
+3:非常に快 ×
+4:極端に快 ×
【0063】
「臭気強度2」となるような濃度で調製された「燃料ガス又は液体燃料」において、上記9段階快・不快度が、−2〜−4となるときに、着臭剤として効果的であると言えるので、「○」と表示する。
【0064】
評価例5
<「ガス臭としての臭質」の評価方法>
上記「不快度」の評価方法と同時にパネルに嗅いでもらった。すなわち、上記評価例2、3で、「臭気強度2」となる試料濃度で調製された「燃料ガス又は液体燃料」を、前記の無臭室内に、空気(大気)で1000倍に希釈される量だけ注入し、均一な濃度となるように撹拌し、臭いを嗅いでもらい、従来のガスの臭いに似ているか否かを以下の基準で判定した。結果を表1、2に示す。
【0065】
<<「ガス臭としての臭質」の判定基準>>
回答
○:従来のガス臭と酷似している。
△:従来のガス臭と類似している。
×:従来のガス臭とは異なる。
【0066】
評価例6
<総合評価>
上記した、「臭気強度2を与える含有量」、「安定性」、「臭気強度2を与える含有量」、「不快度」、「ガス臭としての臭質」を総合して以下の通り判定した。
◎:上記評価項目が全て良好「○」であって総合的に極めて良好
○:「不快度」と「ガス臭としての臭質」のうちどちらかが「△」
△:「不快度」と「ガス臭としての臭質」の両方が「△」
×:上記評価項目の何れか1種が不良「×」
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
<評価結果まとめ>
表1、2に評価結果を併せて示すように、燃料ガスであっても液体燃料であっても、臭気強度が「2」となるときの、着臭剤(試料)の添加量は、試料番号101〜127では、100mg/Nm、100質量ppmであった。
すなわち、試料番号101〜127では、燃料ガス又は液体燃料に、少量含有させるだけで、「臭気強度2」が達成できた。
【0070】
一方、試料番号401〜404、411〜429では、200mg/Nm、200質量ppmであり、試料番号405〜410では、1000mg/Nm、1000質量ppmであった。
試料番号401〜429では、問題になる量ではないが、試料番号101〜127に比べれば多めに含有させる必要があった。
【0071】
評価した全ての試料が「安定性」には優れていた。
また、試料番号101〜127では、「不快度」及び「ガス臭としての臭質」が何れも「○」であり、従って全て総合評価が「◎」であった。
【0072】
一方、試料番号401〜429では、「不快度」及び「ガス臭としての臭質」の両方とも「○」になるものはなく、従って総合評価が「◎」になるものがなかった。
【0073】
すなわち、1−オクテン−3−オール;並びに;2−オクテン−4−オン、1−オクテン−3−イルアセテート、ピルビンアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジメチルアセタール、2−シクロヘキシルプロパナール、ホルムアルデヒドジエチルアセタール、3−メチル−3−ペンテン−2−オン、ヒドラトロピックアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドエチル−シス−3−ヘキセニルアセテート、t−2−ノネナール、5−エチリデン−2−ノルボルネン、エチルイソバレレート、メチルイソバレレート、3−ヒドロキシ−2−ブタノイン、2,3−ブタンジオン、及び、1−オクテン−3−オンよりなる群から選ばれた少なくとも1種又は2種以上の化合物を含有する本発明の燃料用複合着臭剤は、何れも総合評価が「◎」であり、燃料中への適度な含有量で、大気1000倍希釈で臭気強度2を与え、燃料用着臭剤として安定して用いることができ、更に、「不快度」及び「ガス臭としての臭質」が何れも良好なため、燃料用着臭剤としての性能に優れていることが分かった。
【0074】
必須成分である1−オクテン−3−オールを、2,3−ブタンジオン(ジアセチル)に代えた上で併用化合物を変化させた試料(試料番号418〜423)、1−オクテン−3−オンに代えた上で併用化合物を変化させた試料(試料番号424〜429)では、「不快度」及び「ガス臭としての臭質」の両方ともが「△」であり、総合評価が「△」であった。
すなわち、1−オクテン−3−オールを必須成分として、そこに併用化合物を加え、2種類の化合物を混合使用した場合に、特異的に、臭気強度2になる含有量、「不快度」及び「ガス臭としての臭質」の何れもが良好になることが分かった。
【0075】
また、燃料用複合着臭剤に、「硫黄原子(S)を含む化合物」を含まなくても、上記性能が良好なので、燃焼させても硫黄酸化物は発生せず、環境の汚染を確実に防止することができ、燃料電池用の燃料ガス等に使用しても触媒を被毒せず悪影響を及ぼさないため、触媒の寿命を減らすことがないことが分かった。
【0076】
試料番号201〜205では、メルカプタン化合物及び/又はスルフィド化合物を極微量含有させることで、臭質をよりガス臭に近づけることができることが分かった。
また、燃料用複合着臭剤(試料)の含有量を、50mg/Nm、50質量ppmに低減しても、臭気強度2を与えることが分かった。
また、メルカプタン化合物及び/又はスルフィド化合物は、極微量加えるだけでその効果を発揮するので、それらに含まれる硫黄(S)原子は極僅かであって無視できる程度に抑えることができ、上記の試料番号101〜127の燃料用複合着臭剤と同様に、燃焼させても硫黄酸化物は殆ど発生せず、環境の汚染を確実に防止することができ、燃料電池用の燃料ガス等に使用しても触媒を殆ど被毒せず悪影響を及ぼさないため、触媒の寿命を減らすことがないことが分かった。
【0077】
なお、評価例2では、本発明では燃料ガスに属するとした「液化石油ガス」で評価したが、液体燃料一般に関して、該液化石油ガスでの含有量[質量ppm]の結果は適用できることは技術常識から明らかである。
また、評価例3の含有量[mg/Nm]の結果は、燃料ガス一般に関して適用できることは技術常識から明らかである。
また、空気1Nmは約1×10gであり、1mgは10−3gなので、評価例2と評価例3の表1、2における数値は一致した。
【0078】
本発明の燃料用複合着臭剤は、燃料ガスに対して含有させても液体燃料に対して含有させても、前記表1に示した通りであり、総合評価が「◎」であって優れていることが分かった。
一方、一種の化合物しか使用していない試料(試料番号401〜417)、及び、必須成分を1−オクテン−3−オールから他のものに代えて2種併用した試料(試料番号418〜428)では、「不快度」、「ガス臭としての臭質」の何れか又は両方が、「△」若しくは「×」であり、総合評価が「○」、「△」又は「×」であった。
総合評価が「○」のものでも、全ての評価項目に優れていて総合評価が「◎」である試料番号101〜127、201〜205に比較すれば、相対的には劣っていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の特定化合物を含有する燃料用着臭剤は、臭気強度に優れ、不快臭がして、ガス臭としての臭質に優れるため、都市ガス、液化天然ガス、工業用ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、水素ガス、燃料電池用ガス等の上記燃料ガスや、種々の液体燃料に添加させて、燃料分野に広く利用されるものである。