(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
断面台形、断面三角形、又は断面矩形の素材が隙間を空けて螺旋状に巻かれて筒状に形成されたろ過部を有し、そのろ過部の軸芯方向で互いに相隣なる前記素材の隣接輪同士の間の隙間を介してろ過した流体を内部へ取水する取水フィルターであって、
前記素材としては、長繊維強化樹脂線材束が用いられており、
前記ろ過部は、その軸芯方向から見て円環状に形成されていることを特徴とする取水フィルター。
前記長繊維強化樹脂線材束は、前記素材に比して微小な断面台形、断面三角形、又は断面矩形のいずれか1つからなる長繊維強化樹脂線材を複数組み合わせた集合体、若しくは前記素材に比して微小な断面台形、断面三角形、又は断面矩形の長繊維強化樹脂線材を複数組み合わせた集合体で形成されている請求項1に記載の取水フィルター。
前記ろ過部の半径方向内側及び半径方向外側の少なくとも一方には、当該ろ過部に対しその軸芯方向と平行に延びる繊維強化樹脂製の支持部材が溶着されている請求項1又は請求項2に記載の取水フィルター。
前記ろ過部の半径方向外側には、断面台形、断面三角形、又は断面矩形の素材が前記ろ過部の素材と同一の隙間を空けて螺旋状に巻かれて筒状に形成された外側ろ過部が設けられており、
前記外側ろ過部の素材としては、前記ろ過部の素材と同じ長繊維強化樹脂線材束が用いられているとともに、
前記外側ろ過部は、その軸芯方向から見て円環状に形成され、前記ろ過部の半径方向外側に対し半径方向内側が溶着されている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の取水フィルター。
前記長繊維強化樹脂線材形成工程において、前記長繊維束に樹脂を含浸させて断面台形、断面三角形、又は断面矩形の長繊維強化樹脂線材を形成している請求項7に記載の取水フィルターの製造方法。
前記素材を、前記ガイドを介して前記マンドレル上で硬化させたろ過部に対しそれと同一の隙間を空けて螺旋状に巻き付けて、当該ろ過部の半径方向外側に筒状の外側螺旋状体を形成する外側螺旋状体形成工程と、
前記ろ過部の半径方向外側で前記外側螺旋状体を硬化させて筒状の外側ろ過部を形成する外側ろ過部形成工程と、
を具備している請求項5〜請求項10のいずれか1つに記載の取水フィルターの製造方法。
前記長繊維強化樹脂線材形成装置は、前記長繊維束に樹脂を含浸させて断面台形、断面三角形、又は断面矩形の長繊維強化樹脂線材を形成している請求項15に記載の取水フィルターの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来の取水フィルターでは、金属線を使用しているため、金属に対する腐食性の流体(例えば、海水や、各種処理施設内の未処理廃液又は処理中廃液などの流体)中において長期間使用することができない、といった問題がある。
【0005】
加えて、前記取水フィルターでは、大型化すると、それに伴い重量が増大して自重により変形し易くなる。そのため、取水フィルターに、ろ過部の軸芯方向へ延びる支持部材などを接合して変形を防止することが考えられる。しかし、これでは、ろ過部の隣接輪同士の間の隙間が支持部材によって遮られることになり、取水フィルターの開口率(取水フィルターの単位面積に対して流体が通過する領域の断面積の割合)を大きくすることができない。しかも、重量が増大した取水フィルターでは、設置作業が非常に困難なものとなる。
【0006】
更に、前記取水フィルターでは、ろ過部の隣接輪同士の間に突起を介在させているため、ろ過部の隣接輪の直径や隣接輪同士の間の間隔を変更する際に、突起の位置や突出量を変更しなければならず、製造が非常に煩雑なものとなる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属に対する腐食性の流体中においても長期間使用でき、大型化に伴う重量の増大による変形を支持部材に依存することなく防止して取水フィルターの開口率の拡大化及び設置作業の簡単化を図り、かつろ過部の隣接輪の直径や隣接輪同士の間の間隔を簡単に変更して製造の簡単化を図ることができる取水フィルター及びその製造方法並びに製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明が講じた解決手段は、取水フィルターとして、断面台形、断面三角形、又は断面矩形の素材が隙間を空けて螺旋状に巻かれて筒状に形成されたろ過部を有し、そのろ過部の軸芯方向で互いに相隣なる前記素材の隣接輪同士の間の隙間を介してろ過した流体を内部へ取水するものを前提とする。そして、前記素材として、長繊維強化樹脂線材束を用い、前記ろ過部を、その軸芯方向から見て円環状に形成することを特徴としている。
【0009】
また、前記長繊維強化樹脂線材束は、前記素材に比して微小な断面台形、断面三角形、又は断面矩形のいずれか1つからなる長繊維強化樹脂線材を複数組み合わせた集合体、若しくは前記素材に比して微小な断面台形、断面三角形、又は断面矩形の長繊維強化樹脂線材を複数組み合わせた集合体で形成されていてもよい。
【0010】
また、前記ろ過部の半径方向内側及び半径方向外側の少なくとも一方に、当該ろ過部に対しその軸芯方向と平行に延びる繊維強化樹脂製の支持部材が溶着されていてもよい。
【0011】
更に、前記ろ過部の半径方向外側に、断面台形、断面三角形、又は断面矩形の素材が前記ろ過部の素材と同一の隙間を空けて螺旋状に巻かれて筒状に形成された外側ろ過部を設け、前記外側ろ過部の素材として、前記ろ過部の素材と同じ長繊維強化樹脂線材束が用いられているとともに、前記外側ろ過部は、その軸芯方向から見て円環状に形成され、前記ろ過部の半径方向外側に対し半径方向内側が溶着されていてもよい。
【0012】
また、前記目的を達成するため、本発明が講じた解決手段は、取水フィルターの製造方法として、長繊維束に樹脂を含浸させて断面台形、断面三角形、又は断面矩形の長繊維強化樹脂線材束からなる素材を形成する素材形成工程と、前記素材を、マンドレルに設けられたガイドを介して当該マンドレルに対し隙間を空けて螺旋状に巻き付けて筒状の螺旋状体を形成する螺旋状体形成工程と、前記マンドレル上で前記螺旋状体を硬化させて筒状のろ過部を形成するろ過部形成工程と、を具備することを特徴としている。
【0013】
また、前記マンドレルは、その軸芯回りに一方向へ回転駆動可能とされ、前記螺旋状体形成工程において、前記マンドレルを軸芯回りに回転駆動させて、当該マンドレルに対し隙間を空けて前記素材を螺旋状に巻き付けて筒状の螺旋状体を形成していてもよい。
【0014】
これに対し、本発明が講じたその他の解決手段は、取水フィルターの製造方法として、長繊維束に樹脂を含浸させた長繊維強化樹脂線材を形成する長繊維強化樹脂線材形成工程と、前記長繊維強化樹脂線材を、マンドレルに設けられたガイドを介して当該マンドレルに対し隙間を空けて螺旋状に複数回巻き付けて、当該長繊維強化樹脂線材の集合体である長繊維強化樹脂線材束からなる前記素材を巻き付けたような筒状の螺旋状体を形成する螺旋状体形成工程と、前記マンドレル上で前記螺旋状体を硬化させて筒状のろ過部を形成するろ過部形成工程と、を具備することを特徴としている。
【0015】
また、前記長繊維強化樹脂線材形成工程において、前記長繊維束に樹脂を含浸させて断面台形、断面三角形、又は断面矩形の長繊維強化樹脂線材を形成していてもよい。
【0016】
また、前記マンドレルは、その軸芯回りに正逆方向へ回転駆動可能とされ、前記螺旋状体形成工程において、前記マンドレルを軸芯回りに正方向へ回転駆動させて当該マンドレルに対し隙間を空けて前記長繊維強化樹脂線材を螺旋状に巻き付けたのち、前記マンドレルを軸芯回りに逆方向へ回転駆動させて当該マンドレルに対し隙間を空けて前記長繊維強化樹脂線材を螺旋状に巻き付けることを繰り返し行って、前記長繊維強化樹脂線材の集合体である長繊維強化樹脂線材束からなる素材を巻き付けたような筒状の螺旋状体を形成していてもよい。
【0017】
また、前記マンドレルは、その軸芯方向と平行に延びて繊維強化樹脂製の支持部材を収容する溝を備え、前記螺旋状体形成工程において、前記マンドレルに対し前記螺旋状体を形成する際に、前記マンドレルの溝に収容された前記支持部材を前記螺旋状体の半径方向内側に溶着していてもよい。
【0018】
また、前記素材を、前記ガイドを介して前記マンドレル上で硬化させたろ過部に対しそれと同一の隙間を空けて螺旋状に巻き付けて、当該ろ過部の半径方向外側に筒状の外側螺旋状体を形成する外側螺旋状体形成工程と、前記ろ過部の半径方向外側で前記外側螺旋状体を硬化させて筒状の外側ろ過部を形成する外側ろ過部形成工程と、を具備していてもよい。
【0019】
更に、前記マンドレルは、縮径可能に分割され、前記ろ過部形成工程において、前記マンドレル上で前記ろ過部を硬化させたのちに、当該マンドレルを分割して縮径させて、前記マンドレル上から前記ろ過部を離脱させていてもよい。
【0020】
また、前記目的を達成するため、本発明が講じた解決手段は、取水フィルターの製造装置として、長繊維束に樹脂を含浸させて断面台形、断面三角形、又は断面矩形の長繊維強化樹脂線材束からなる素材を形成する素材形成装置と、前記素材形成装置により形成された素材を巻き付けるマンドレルと、前記素材を、前記マンドレルに対し隙間を空けて螺旋状に巻き付けて筒状の螺旋状体を形成する螺旋状体形成装置と、を備える。そして、前記マンドレルに対し前記素材を螺旋状に巻き付けた螺旋状体を前記マンドレル上で硬化させて筒状のろ過部を形成することを特徴としている。
【0021】
また、前記マンドレルは、その軸芯回りに一方向へ回転駆動可能に構成され、前記螺旋状体形成装置により螺旋状体を形成する際に前記マンドレルを軸芯回りに回転駆動させて、当該マンドレルに対し隙間を空けて前記素材を前記螺旋状体形成装置により螺旋状に巻き付けて筒状の螺旋状体を形成していてもよい。
【0022】
これに対し、本発明が講じたその他の解決手段は、取水フィルターの製造装置として、長繊維束に樹脂を含浸させた長繊維強化樹脂線材を形成する長繊維強化樹脂線材形成装置と、前記長繊維強化樹脂線材形成装置により形成された長繊維強化樹脂線材を巻き付けるマンドレルと、前記長繊維強化樹脂線材を、前記マンドレルに対し隙間を空けて螺旋状に複数回巻き付けて、当該長繊維強化樹脂線材の集合体である長繊維強化樹脂線材束からなる素材を巻き付けたような筒状の螺旋状体を形成する螺旋状体形成装置と、を備える。そして、 前記マンドレルに対し前記長繊維強化樹脂線材を螺旋状に複数回巻き付けた螺旋状体を前記マンドレル上で硬化させて筒状のろ過部を形成することを特徴としている。
【0023】
また、前記長繊維強化樹脂線材形成装置は、前記長繊維束に樹脂を含浸させて断面台形、断面三角形、又は断面矩形の長繊維強化樹脂線材を形成していてもよい。
【0024】
また、前記マンドレルは、その軸芯回りに正逆方向へ回転駆動可能に構成され、前記螺旋状体形成装置により螺旋状体を形成する際に、前記マンドレルを軸芯回りに正方向へ回転駆動させて当該マンドレルに対し隙間を空けて前記長繊維強化樹脂線材を螺旋状に巻き付ける一方、前記マンドレルを軸芯回りに逆方向へ回転駆動させて当該マンドレルに対し隙間を空けて前記長繊維強化樹脂線材を螺旋状に巻き付けることを繰り返し行って、前記長繊維強化樹脂線材の集合体である長繊維強化樹脂線材束からなる素材を巻き付けたような筒状の螺旋状体を形成していてもよい。
【0025】
また、前記マンドレルは、その軸芯方向と平行に延びて繊維強化樹脂製の支持部材を収容する溝を備え、前記螺旋状体形成装置により螺旋状体を形成する際に、前記マンドレルの溝に収容された前記支持部材が前記螺旋状体の半径方向内側に溶着されていてもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上、要するに、隙間を空けて螺旋状に巻かれて筒状に形成されるろ過部の素材として長繊維強化樹脂線材束を用い、このろ過部をその軸芯方向から見て円環状に形成することで、金属に対する腐食性の流体中においても長期間使用できる。また、大型化に伴う重量の増大による変形を支持部材に依存することなく防止して、取水フィルターの開口率の拡大化及び設置作業の簡単化を図ることができる。しかも、ろ過部の隣接輪の直径や隣接輪同士の間の間隔を簡単に変更でき、製造の簡単化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0029】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る取水フィルターの両端に閉塞部及び接続部を取り付けた状態での概略構成を示す斜視図、
図2は取水フィルターの縦断側面図、
図3は取水フィルターを軸芯方向から見た側面図をそれぞれ示している。
【0030】
まず、
図1及び
図2を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る取水フィルターについて説明する。
【0031】
図1〜
図3において、1は取水フィルターであって、この取水フィルター1は、たとえば線状に形成された断面略正三角形の素材10を軸芯方向に一定の間隔を隔てて螺旋状に巻回して筒状に形成されたろ過部11を備えている。素材10は、長繊維強化樹脂線材束から構成され、ろ過部11の外周が当該ろ過部11の軸芯方向から見て円環状となっている。そして、ろ過部11は、その軸芯方向に隣接する素材10の隣接輪同士の間に隙間を存している。この場合、ろ過部11としては、外径が100〜500mmに、軸芯方向の長さが1000〜6000mmにそれぞれ設定されている。
【0032】
ろ過部11の軸芯方向一方端(
図1では右端)には、ろ過部11の内部を閉塞する閉塞部12が設けられている一方、ろ過部11の軸芯方向他方端(
図1では左端)には、ろ過部11の内部を連通させるように接続する接続部13が設けられている。この接続部13は、雄ねじ131を有し、ろ過部11を他方向に連続させる他のろ過部(図示せず)又は取水管(図示せず)に設けられた接続部の雌ねじに対し螺着により接続される。
【0033】
取水フィルター1は、海底に埋設され、取水フィルター1の外側に砂利、この砂利の外側に砂などのろ過材を配置した多重ろ過材を用いるろ過システムに使用される。このようなろ過システムにあっては、多重ろ過材を通過した海水を取水フィルター1内にろ過部11の素材10の隣接輪同士の間の隙間(スリット)を介して導入する。このとき、素材10の隣接輪同士の間の隙間は、その外側の砂利の大きさよりも狭く設定されていて、取水フィルター1内へのろ過部11の隙間を介した砂利の侵入を防止している。
【0034】
素材10としては、断面正三角形(例えば一辺の長さが3〜60mm)の長繊維強化樹脂線材束が用いられている。また、長繊維強化樹脂線材束を構成する長繊維束としては、例えば線径0.1〜100μmのガラス繊維、ケプラー繊維、カーボン繊維、又はこれらを組み合わせた混合繊維等が使用される。この長繊維束に含浸される樹脂としては、熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等)が使用されている。また、長繊維強化樹脂線材束の樹脂含有量は、40〜70重量%である。更に、閉塞部12及び接続部13も、素材10と同じ長繊維強化樹脂線材束を用いて形成されている。なお、長繊維に含浸される樹脂として、熱可塑性樹脂を使用したが、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等)が使用されていてもよい。
【0035】
そして、ろ過部11は、素材10の断面を構成している2辺の一端同士の交点をろ過部11の半径方向内側にし、かつ当該2辺の他端同士を連結する残る1辺がろ過部11の半径方向外側にした状態でろ過部11の軸芯方向と平行となるように、素材10の向きを維持しつつ螺旋状に巻回して形成されている。このように素材10を巻回することで、ろ過部11の素材10の隣接輪同士の間の隙間は、その径方向内側での間隔よりも半径方向外側での間隔の方が狭くなっている。このため、ろ過部11の外方の海水を素材10の隣接輪同士の間の隙間から取り入れる際に海水と共に侵入しようとする異物は、海水の流れに押されても素材10の隣接輪同士の間の隙間に対し半径方向外側からは挟まり難くなり、異物による取水フィルター1の開口率の低下を効果的に回避している。
【0036】
ここで、取水フィルター1を製造する製造装置の概略構成を
図4に基づいて説明する。
図4は、取水フィルター1を製造する製造装置の概略構成を示す斜視図であって、この製造装置2は、長繊維束14に樹脂を含浸させて長繊維強化樹脂線材束からなる素材10を形成する素材形成装置21と、この素材形成装置21により形成された素材10を巻き付けるマンドレル22と、素材形成装置21からの素材10を、マンドレル22に対し隙間を空けて螺旋状に巻き付けて筒状の螺旋状体16を形成する螺旋状体形成装置としてのフィランメントワインディング装置23とを備えている。
【0037】
素材形成装置21は、長繊維束14が巻回された4つのリール211,211,…と、各リール211から巻き出された長繊維束14を1本にまとめる集合装置(図示せず)と、この集合装置により1本にまとめられた長繊維束141を通過させ、当該長繊維束141に熱可塑性樹脂を含浸するレジンバス212と、このレジンバス212により熱可塑性樹脂が含浸された長繊維束141を加熱し、長繊維強化樹脂線材束からなる素材10を形成する加熱装置213と、この加熱装置213により加熱された素材10を冷却する冷却装置214と、この冷却装置214により冷却された素材10を引き取ってフィランメントワインディング装置23に送る引取装置215とを備えている。
【0038】
各リール211は、それぞれの軸に個別のモータ210が連結され、各モータ210を同期させて各リール211を軸回りに回転させることで、長繊維束14を巻き出している。加熱装置213は、予加熱装置216を備え、この予加熱装置216によって長繊維束141を予加熱している。この予加熱装置216により予加熱された長繊維束141は、加熱装置213の金型内で加熱されて断面三角形状の素材10として形成される。そして、予加熱装置216及び加熱装置213は、温度調整装置217により温度調整され、予加熱装置216により予加熱される長繊維束14の温度を230〜330°Cに、加熱装置213により加熱される長繊維束14の温度を260〜330°Cにそれぞれ制御している。
【0039】
冷却装置214は、空気又は水との熱交換により媒体を冷却する空冷式又は水冷式の媒体冷却部218を備え、冷却装置214との間での媒体の循環により、加熱装置213で加熱された素材10を10〜40°Cに冷却している。このとき、熱可塑性樹脂が含浸された素材10は、加熱装置213の加熱による熱可塑反応が停止され、可撓性を有した状態で引取装置215に送られる。引取装置215は、図示しないローラにより素材10に引っ張り力を付与する駆動モータ219を備え、この駆動モータ219により冷却装置214からの素材10に加えられる引張力を調整して、素材10を毎分200mmの速度で引き取っている。このとき、各リール211のモータ210も引取装置215の駆動モータ219と同期して回転し、素材10に対して無理な負荷が作用しないようにしている。
【0040】
また、マンドレル22は、モータ221によって軸芯回りに一方向へ回転駆動され、抜き差し自在な芯材(図示せず)を引き抜いた際に縮径可能となるように分割されている。
図5は製造装置2のマンドレル22の一部を切欠いた切欠断面図を示し、この
図5において、マンドレル22には、引取装置215から送られた素材10を巻回する螺旋状の巻回溝222(ガイド)が凹設されている。この巻回溝222は、素材10の断面形状と一致するV字状の断面形状に形成されている。
【0041】
更に、フィランメントワインディング装置23は、一方向へ回転駆動するマンドレル22の巻回溝222に対し引取装置215からの素材10を案内している。このとき、マンドレル22の巻回溝222間の間隔が素材10の隣接輪間に形成される隙間であり、マンドレル22の巻回溝222の始端から終端まで素材10を巻き付けて筒状の螺旋状体16を形成している。この種のフィラメントワインディング装置23の基本形態は、公知であり、その詳細な説明については省略する。
【0042】
また、マンドレル22の半径方向外方には、加熱装置223が設けられている。この加熱装置223は、マンドレル22の軸芯方向の長さとほぼ同じ長さに形成され、マンドレル22に巻き付けられた素材10を軸芯方向全域から加熱して速やかな硬化の促進に供される。また、加熱装置223は、図示しない温度調整装置により温度調整され、加熱装置223により加熱される素材10の温度を230〜330°Cに制御している。
【0043】
次に、取水フィルター1の製造方法を
図4に基づいて説明する。
先ず、素材形成工程として、素材形成装置21の各リール211を個別のモータ210により軸回りに回転させて当該各リール211から長繊維束14を巻き出し、集合装置で1本にまとめた長繊維束141をレジンバス212に通過させて熱可塑性樹脂を含浸する。それから、長繊維束141を予加熱装置216及び加熱装置213の金型内で260〜330°Cに加熱して断面三角形状の素材10を形成する。その後、素材10を、冷却装置214により10〜40°Cに冷却して熱可塑反応を停止させてから、可撓性を有した状態で引取装置215により毎分200mmの速度で引き取って、フィランメントワインディング装置23に送る。
【0044】
次いで、螺旋状体形成工程として、一方向へ回転駆動するマンドレル22の巻回溝222に対し引取装置215からの素材10をフィランメントワインディング装置23により案内する。つまり、フィランメントワインディング装置23により素材10をマンドレル22の巻回溝222の始端から終端までマンドレル22の回転に伴い案内して巻き付け、筒状の螺旋状体16を形成する。
【0045】
その後、ろ過部形成工程として、マンドレル22上で螺旋状体16(素材10)をその軸芯方向全域から加熱して硬化させ、筒状のろ過部11を形成する。しかる後、マンドレル22の芯材を引き抜き、当該マンドレル22を分割して縮径させることで、マンドレル22上からろ過部11を取り外す。
【0046】
したがって、本実施の形態では、隙間を空けて螺旋状に巻かれて筒状に形成されるろ過部11の素材10として、長繊維束14に対し熱可塑性樹脂を含浸した長繊維強化樹脂線材束が用いられ、このろ過部11がその軸芯方向から見て円環状に形成されているので、金属に対する腐食性の海水中においても取水フィルター1を長期間使用することができる。また、ろ過部11が長繊維束14に対し熱可塑性樹脂を含浸した長繊維強化樹脂線材束からなる素材10によって形成されていることにより、大型化に伴う重量の増大による変形を支持部材に依存することなく防止して、取水フィルター1の開口率の拡大化及び設置作業の簡単化を図ることができる。しかも、フィランメントワインディング装置23により素材10をマンドレル22の巻回溝222の始端から終端までマンドレル22の回転に伴い案内して巻き付けることで、筒状の螺旋状体16が形成されているので、ろ過部11の素材10の隣接輪の直径や隣接輪同士の間の間隔を巻回溝222やフィランメントワインディング装置23による案内動作の変更によって簡単に変更でき、製造の簡単化を図ることができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、素材10を軸芯方向に一定の間隔を隔てて螺旋状に巻回して筒状に形成されたろ過部11により取水フィルター1を構成したが、
図6に示すように、ろ過部11の半径方向内側に、その軸芯方向の長さと略一致する長さに形成され、かつろ過部11の周方向を4等分する角度位置で当該ろ過部11の半径方向内側に接合された4本の支持部材27,27,…が設けられていてもよい。これらの支持部材27は、素材10と同じ繊維強化樹脂により形成されていれば、金属に対する腐食性の海水中での使用期間中においてろ過部11の剛性が効果的に高められる。この場合、マンドレル22にその軸芯方向と平行に延びて各支持部材27を収容する溝を設け、螺旋状体形成工程においてマンドレル22に対し螺旋状体16を形成する際に、マンドレル22の溝に収容された各支持部材27を螺旋状体16の半径方向内側に溶着して接合すればよい。
【0048】
一方、
図7に示すように、ろ過部11の半径方向外側に、その軸芯方向の長さと略一致する長さに形成され、かつろ過部11の周方向を4等分する角度位置で当該ろ過部11の半径方向外側に接合された4本の支持部材27,27,…が設けられていてもよい。この場合、各支持部材27は、螺旋状体形成工程においてマンドレル22上で形成した螺旋状体16が硬化する前に螺旋状体16の半径方向外側に溶着して接合すればよい。
【0049】
また、本実施の形態では、ろ過部11を長繊維束14に対し熱可塑性樹脂を含浸した長繊維強化樹脂線材束からなる素材10によって形成したが、ろ過部が長繊維束に対し熱可塑性樹脂を含浸した長繊維強化樹脂線材束からなる素材によって形成されていてもよい。その場合、予加熱装置216により予加熱される長繊維束14の温度を230〜330°Cに、加熱装置213により加熱される長繊維束14の温度を260〜330°Cに、冷却装置214により冷却される素材10の冷却温度を10〜40°Cにそれぞれ制御する必要がある。
【0050】
また、本実施の形態では、素材形成工程において、素材形成装置21の各リール211から長繊維束14を巻き出して1本にまとめた長繊維束141をレジンバス212に通過させて熱可塑性樹脂を含浸させたが、素材形成装置の各リールに巻き取る前の長繊維束に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させておき、この予め熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を各リールに巻き取っておいてもよい。この場合には、製造装置においてレジンバスにより熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させるサブ工程を不要にできる。
【0051】
また、本実施の形態では、素材形成工程において、長繊維束14に樹脂を含浸させて断面三角形の長繊維強化樹脂線材束からなる素材10を形成したが、長繊維束に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させて断面台形、若しくは断面矩形の長繊維強化樹脂線材束からなる素材が形成されていてもよい。
【0052】
更に、本実施の形態では、マンドレル22に巻回溝222を設けたが、可撓性を有する断面略台形状の帯条材を巻回したリールを製造装置に設け、
図8に示すように、リールから巻き解かれた帯条材28の幅広部がマンドレル22の表面に密接するようにフィラメントワインディング装置23を兼用してマンドレル22の軸芯方向に隙間を空けずに螺旋状に巻き付けて断面略正三角形状の巻回溝29が形成されるようにしてもよい。このとき、帯条材28による巻回溝29は、マンドレルに対し素材を巻き付ける際に事前に形成され、マンドレル22上からろ過部11を取り外した際に一緒に取り外され、その後で帯条材28をろ過部11から分離すればよい。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態を
図9及び
図10に基づいて説明する。
【0054】
本実施の形態では、長繊維強化樹脂線材束を、素材10に比して微小な断面三角形からなる長繊維強化樹脂線材を複数組み合わせた集合体で形成している。なお、長繊維強化樹脂線材束を除くその他の構成は前記第1の実施の形態と同じであり、同じ部分については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0055】
図9は本発明の第2の実施の形態に係る取水フィルターを製造する製造装置の概略構成を示す斜視図、
図10は製造装置のマンドレルの一部を切欠いた切欠断面図をそれぞれ示している。
【0056】
図9において、取水フィルター1の製造装置3は、長繊維束14に樹脂を含浸させて長繊維強化樹脂線材17を形成する長繊維強化樹脂線材形成装置31と、この長繊維強化樹脂線材形成装置31により形成された長繊維強化樹脂線材17を巻き付けるマンドレル32と、素材形成装置21からの素材10を、マンドレル22に対し隙間を空けて螺旋状に巻き付けて筒状の螺旋状体16を形成する螺旋状体形成装置としてのフィランメントワインディング装置33とを備えている。なお、
図10に示すように、素材10としては、微小三角形状の一例としての断面正三角形(例えば一辺の長さが1〜20mm)の長繊維強化樹脂線材17を9つ組み合わせた集合体が用いられている。
【0057】
長繊維強化樹脂線材形成装置31は、長繊維束14が巻回された1つのリール311と、リール311から巻き出された長繊維束14を通過させ、当該長繊維束14に熱可塑性樹脂を含浸するレジンバス312と、このレジンバス312により熱可塑性樹脂が含浸された長繊維束14を加熱し、長繊維強化樹脂線材17を形成する加熱装置313と、この加熱装置313により加熱された長繊維強化樹脂線材17を冷却する冷却装置314と、この冷却装置314により冷却された長繊維強化樹脂線材17を引き取ってフィランメントワインディング装置33に送る引取装置215とを備えている。
【0058】
リール311は、その軸にモータ310が連結され、モータ310によりリール311を軸回りに回転させることで、長繊維束14を巻き出している。加熱装置313は、予加熱装置316及びレーザー加熱装置317を備え、予加熱装置316によって長繊維束14を予加熱し、予加熱した長繊維束14を加熱装置313の金型内に通す前にレーザー加熱装置317で加熱している。このレーザー加熱装置317により加熱された長繊維束14は、加熱装置313の金型内に通して断面三角形状の長繊維強化樹脂線材17として形成される。そして、予加熱装置316及びレーザー加熱装置317は、温度調整装置319により温度調整され、予加熱装置316により予加熱される長繊維束14の温度を230〜330°Cに、レーザー加熱装置317により加熱される長繊維束14の温度を260〜330°Cにそれぞれ制御している。
【0059】
冷却装置314は、空気又は水との熱交換により媒体を冷却する空冷式又は水冷式の媒体冷却部318を備え、冷却装置314との間での媒体の循環により、加熱装置313で加熱された長繊維強化樹脂線材17を10〜40°Cに冷却している。このとき、熱可塑性樹脂が含浸された長繊維強化樹脂線材17は、レーザー加熱装置317の加熱による熱可塑反応が停止され、可撓性を有した状態で引取装置215に送られる。引取装置215では、冷却装置314からの長繊維強化樹脂線材17に加えられる引張力が調整され、長繊維強化樹脂線材17が毎分200mmの速度で引き取られる。このとき、リール311のモータ310も引取装置215の引張力と同期して回転し、長繊維強化樹脂線材17に対して無理な負荷が作用しないようにしている。
【0060】
また、マンドレル32は、モータ321によって軸芯回りに正逆方向へ回転駆動され、抜き差し自在な芯材(図示せず)を引き抜いた際に縮径可能となるように分割されている。
図10に示すように、マンドレル32には、引取装置215から送られた長繊維強化樹脂線材17を巻回する際に案内される螺旋状の巻回溝322(ガイド)が凹設されている。この巻回溝322は、長繊維強化樹脂線材17の断面形状と相似しかつ9つ分の断面積を組み合わせた素材10の断面形状と一致するV字状の断面形状に形成されている。
【0061】
更に、フィランメントワインディング装置33は、製逆方向へ回転駆動するマンドレル32の巻回溝322に対し引取装置215からの長繊維強化樹脂線材17を案内している。このとき、マンドレル32の巻回溝322間の間隔が素材10の隣接輪間に形成される隙間であり、フィランメントワインディング装置33は、引取装置215から案内した長繊維強化樹脂線材17を正方向へ回転するマンドレル32の巻回溝322の始端から終端まで長繊維強化樹脂線材17を巻き付けると、長繊維強化樹脂線材17を180°反転させてから、逆方向へ回転するマンドレル22の巻回溝222の終端から始端まで長繊維強化樹脂線材17を巻き付けることを適宜繰り返して筒状の螺旋状体16を形成している。この手順の詳細については、取水フィルター1の製造方法の螺旋状体形成工程において説明する。
【0062】
また、マンドレル32の半径方向外方には、マンドレル32に巻き付けられた長繊維強化樹脂線材17をマンドレル32の軸芯方向全域から加熱する加熱装置232が設けられ、長繊維強化樹脂線材17の速やかな硬化の促進に貢献している。
【0063】
次に、取水フィルター1の製造方法を
図9に基づいて説明する。
先ず、長繊維強化樹脂線材形成工程として、長繊維強化樹脂線材形成装置31のリール311をモータ310により軸回りに回転させて当該リール311から巻き出した長繊維束14をレジンバス312に通過させて熱可塑性樹脂を含浸する。それから、長繊維束14を予加熱装置316及びレーザー加熱装置317で260〜330°Cに加熱し、加熱装置213の金型を通して断面三角形状の長繊維強化樹脂線材17を形成する。その後、長繊維強化樹脂線材17を、冷却装置314により10〜40°Cに冷却して熱可塑反応を停止させてから、可撓性を有した状態で引取装置215により毎分200mmの速度で引き取って、フィランメントワインディング装置33に送る。
【0064】
次いで、螺旋状体形成工程として、正逆方向へ回転駆動するマンドレル32の巻回溝322に対し引取装置215からの長繊維強化樹脂線材17をフィランメントワインディング装置33により9回繰り返し螺旋状に巻き付けて、長繊維強化樹脂線材17の集合体である長繊維強化樹脂線材束からなる素材10を巻き付けたような筒状の螺旋状体16を形成する。
【0065】
具体的には、フィランメントワインディング装置33により長繊維強化樹脂線材17をマンドレル32の巻回溝322に案内するに当たり、先ず、正方向へ回転するマンドレル32の巻回溝322の始端から終端まで長繊維強化樹脂線材17を案内して巻き付けると、マンドレル32を逆方向へ回転させ、先に巻き付けた長繊維強化樹脂線材17に対し辺同士が向き合うように巻回溝322の終端から始端までフィランメントワインディング装置23により180°反転させた長繊維強化樹脂線材17を案内して巻き付ける。その後、マンドレル32を正方向へ回転させ、2回目に巻き付けた長繊維強化樹脂線材17と巻回溝322の一側斜面(
図9では左側又は右側)との間に入り込むように巻回溝322の始端から終端までフィランメントワインディング装置23により180°反転させた長繊維強化樹脂線材17を案内して巻き付け、マンドレル32を逆方向へ回転させ、2回目に巻き付けた長繊維強化樹脂線材17と巻回溝322の他側斜面(
図9では右側又は左側)との間に入り込むように巻回溝322の終端から始端までフィランメントワインディング装置23により180°反転させずに長繊維強化樹脂線材17を案内して巻き付ける。それから、マンドレル32を正方向へ回転させ、3回目に巻き付けた長繊維強化樹脂線材17に対し辺同士が向き合うように巻回溝322の始端から終端までフィランメントワインディング装置23により180°反転させた長繊維強化樹脂線材17を案内して巻き付けてから、マンドレル32を逆方向へ回転させ、4回目に巻き付けた長繊維強化樹脂線材17に対し辺同士が向き合うように巻回溝322の終端から始端までフィランメントワインディング装置23により180°反転させずに長繊維強化樹脂線材17を案内して巻き付ける。しかる後、マンドレル32を正方向へ回転させ、5回目に巻き付けた長繊維強化樹脂線材17と巻回溝322の一側斜面(
図9では左側又は右側)との間、5回目と6回目に巻き付けた長繊維強化樹脂線材17,17同士の間、6回目に巻き付けた長繊維強化樹脂線材17と巻回溝322の他側斜面(
図9では右側又は左側)との間にそれぞれ入り込むように巻回溝322の始端から終端、終端から始端、及び始端から終端までフィランメントワインディング装置23により180°反転させた状態で長繊維強化樹脂線材17を繰り返し案内して順に巻き付ける。これによって、長繊維強化樹脂線材17の集合体(長繊維強化樹脂線材束)からなる素材10を巻き付けたような筒状の螺旋状体16を形成する。
【0066】
その後、ろ過部形成工程として、マンドレル32上で螺旋状体16(素材10)をその軸芯方向全域から加熱して硬化させ、筒状のろ過部11を形成する。しかる後、マンドレル32の芯材を引き抜き、当該マンドレル32を分割して縮径させることで、マンドレル32上からろ過部11を取り外す。
【0067】
したがって、本実施の形態では、隙間を空けて螺旋状に巻かれて筒状に形成されるろ過部11の素材10として、長繊維束14に対し熱可塑性樹脂を含浸した長繊維強化樹脂線材17の集合体(長繊維強化樹脂線材束)が用いられ、このろ過部11がその軸芯方向から見て円環状に形成されているので、金属に対する腐食性の海水中においても取水フィルター1を長期間使用することができる。しかも、フィランメントワインディング装置33により長繊維強化樹脂線材17をマンドレル32の巻回溝322に対しマンドレル22の正逆回転に伴い案内して複数回繰り返し巻き付けることで、筒状の螺旋状体16が形成されているので、ろ過部11の素材10の隣接輪の直径や隣接輪同士の間の間隔を巻回溝222やフィランメントワインディング装置23による案内動作の変更によって簡単に変更でき、製造の簡単化を図ることができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、ろ過部11を長繊維束14に対し熱可塑性樹脂を含浸した長繊維強化樹脂線材17の集合体(長繊維強化樹脂線材束)からなる素材10によって形成したが、ろ過部が長繊維束に対し熱硬化性樹脂を含浸した長繊維強化樹脂線材の集合体(長繊維強化樹脂線材束)からなる素材によって形成されていてもよい。その場合、予加熱装置216により予加熱される長繊維束14の温度を60〜90°Cに、レーザー加熱装置317により加熱される長繊維束14の温度を60〜90°Cに、冷却装置214により冷却される長繊維強化樹脂線材17の冷却温度を10〜40°Cにそれぞれ制御する必要がある。
【0069】
また、本実施の形態では、素材形成工程において、長繊維強化樹脂線材形成装置31のリール311から巻き出した長繊維束14をレジンバス312に通過させて熱可塑性樹脂を含浸させたが、素材形成装置のリールに巻き取る前の長繊維束に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させておき、この予め熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束をリールに巻き取っておいてもよい。この場合には、製造装置においてレジンバスにより熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させるサブ工程を不要にできる。
【0070】
また、本実施の形態では、素材形成工程において、長繊維束14に樹脂を含浸させて断面三角形の長繊維強化樹脂線材17を形成したが、長繊維束に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させて断面台形、若しくは断面矩形の長繊維強化樹脂線材が形成されていてもよい。更に、本実施の形態では、断面三角形の長繊維強化樹脂線材を9つ組み合わせた集合体からなる素材を形成したが、長繊維強化樹脂線材の組み合わせる個数はこれに限定されるものではなく、いくつ組み合わせて素材が形成されていてもよく、また、長繊維束に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させて断面三角形、断面台形、及び断面矩形といった特定断面形状の長繊維強化樹脂線材を適宜組み合わせた集合体からなる素材が形成されていてもよい。また、長繊維束に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させた不特定断面形状の長繊維強化樹脂線材をマンドレルに対し巻回溝(ガイド)を介して複数回巻き付けて、当該長繊維強化樹脂線材の集合体である長繊維強化樹脂線材束からなる素材を巻き付けたような筒状の螺旋状体が形成されていてもよい。
【0071】
次に、本発明の第3の実施の形態を
図11に基づいて説明する。
【0072】
本実施の形態では、マンドレル32の巻回溝322に巻き付ける直前の素材10に対し加熱するレーザー加熱装置を製造装置に備えている。なお、レーザー加熱装置を除くその他の構成は前記第1の実施の形態と同じであり、同じ部分については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0073】
図11は本発明の第3の実施の形態に係る取水フィルターを製造する製造装置の概略構成を示す斜視図であって、この
図11において、4は取水フィルター1を製造する製造装置である。
【0074】
製造装置4は、フィランメントワインディング装置33により案内された素材10をマンドレル32の巻回溝322に対し巻き付ける直前に加熱するレーザー加熱装置41を備えている。このレーザー加熱装置41は、温度調整装置42により温度調整され、当該レーザー加熱装置41により加熱される素材10の温度を260〜330°Cに制御している。
【0075】
ここで、取水フィルター1の製造方法について説明するに、前記第1の実施の形態で述べた素材形成工程については同一であるので、螺旋状体形成工程につてのみ説明する。
【0076】
螺旋状体形成工程として、引取装置215から送られた素材10を、一方向へ回転駆動するマンドレル22の巻回溝222に対しフィランメントワインディング装置23により案内する。そして、マンドレル32の巻回溝322に対し素材10を巻き付ける直前にレーザー加熱装置41により加熱し、素材10を硬化させながら筒状の螺旋状体16を形成する。
【0077】
その後、ろ過部形成工程において、マンドレル22上で螺旋状体16(素材10)をその軸芯方向全域から加熱してさらに硬化させ、筒状のろ過部11を形成した後、マンドレル22の芯材を引き抜き、当該マンドレル22を分割して縮径させることで、マンドレル22上からろ過部11を取り外す。
【0078】
したがって、本実施の形態では、フィランメントワインディング装置23により素材10をマンドレル22の巻回溝222の始端から終端までマンドレル22の回転に伴い案内して巻き付ける直前にレーザー加熱装置41により加熱し、素材10を硬化させながら筒状の螺旋状体16が形成されているので、ろ過部11をより迅速に形成することができる。
【0079】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記各実施の形態では、製造装置2〜4の素材形成装置21及び長繊維強化樹脂線材形成装置31に予加熱装置216,316を設けたが、加熱装置又はレーザー加熱装置が、予加熱装置による予加熱を考慮した温度調整、具体的には予加熱を不要にした段階的な温度調整が可能であれば、予加熱装置を不要にして製造装置の簡素化を図ることが可能となる。
【0080】
また、前記各実施の形態では、製造装置2〜4の素材形成装置21及び長繊維強化樹脂線材形成装置31に冷却装置214,314を設けたが、加熱装置又はレーザー加熱装置が、冷却装置による冷却を考慮した温度調整、具体的には加熱後に冷却を不要とする段階的な温度調整が可能であれば、冷却装置を不要にして製造装置の簡素化を図ることが可能となる。
【0081】
また、前記各実施の形態では、海水を取水する取水装置1に取水フィルター1を適用した場合について述べたが、金属に対する腐食性の流体、例えば、各種処理施設内の未処理廃液又は処理中廃液などの流体をろ過する取水フィルターとして用いられていてもよい。
【0082】
また、前記各実施の形態では、ろ過部11として、外径を100〜500mmに、軸芯方向の長さを1000〜6000mmにそれぞれ設定した場合について述べたが、ろ過部の外径及び軸芯方向の長さはこれに限定されるものではない。
【0083】
更に、前記各実施の形態では、素材10が隙間を空けて螺旋状に巻かれたろ過部11の軸芯方向で互いに相隣なる素材10の隣接輪同士の間の隙間を介してろ過した流体を内部へ取水する取水フィルター1について述べたが、
図12に示すように、ろ過部11の半径方向外側に、断面三角形の素材50がろ過部11の素材10と同一の隙間を空けて螺旋状に巻かれて筒状に形成された外側ろ過部51を有する取水フィルター5であってもよい。また、外側ろ過部51の素材50としては、ろ過部11の素材11と同じ長繊維強化樹脂線材束が用いられ、外側ろ過部51は、その軸芯方向から見て円環状に形成され、ろ過部11の半径方向外側に対し半径方向内側が溶着されている。そして、取水フィルター5の製造方法としては、素材50を、マンドレル上で硬化させたろ過部11に対しそれと同一の隙間を空けて螺旋状に巻き付けて、当該ろ過部11の半径方向外側に筒状の外側螺旋状体を形成する外側螺旋状体形成工程と、ろ過部11の半径方向外側で外側螺旋状体を硬化させて筒状の外側ろ過部51を形成する外側ろ過部形成工程とを具備している。この場合、ろ過部11に対しそれと同一の隙間を空けて素材50を螺旋状に巻き付けて外側ろ過部51を形成しているので、ろ過部11及び外側ろ過部51の素材10,50の隣接輪同士の間の隙間を互いに一致させて取水フィルター5の開口率を確保しつつ、ろ過部11と外側ろ過部51とが互いに剛性を補い合って堅固に形成することが可能となる。
【0084】
また、前記各実施の形態では、製造装置2〜4に加熱装置213,313、予加熱装置216,316、冷却装置214,314、引取装置215、及びレーザー加熱装置41を設けたが、長繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維強化樹脂線材束からなる素材をフィランメントワインディング装置によりマンドレルに巻き付ける際には、加熱装置、予加熱装置、冷却装置、引取装置、及びレーザー加熱装置を不要にした製造装置を適用することも可能である。その場合には、マンドレルの半径方向外方において当該マンドレルに巻き付けた素材を軸芯方向全域から加熱する加熱装置のみが設けられていればよい。
【0085】
また、前記各実施の形態では、各リール211,311の軸にそれぞれモータ210,310を連結し、各モータ210,310により各リール211,311を軸回りに回転させて長繊維束14を巻き出したが、長繊維束を中取りの玉巻にし、その中心から長繊維束が取り出されるようにしてもよい。その場合には、モータが不要となって設備コストを低減させることが可能となる上、モータを引取装置の駆動モータと同期させる必要もなくなって制御の簡単化を図ることも可能となる。