(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のリチウムイオン二次電池に係る負極には、負極活物質やバインダなどを含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用される。
【0012】
本発明における負極活物質には、球状で、その表面が非晶質炭素で被覆された天然黒鉛である黒鉛Aと、バルクメソフェーズ黒鉛化物である黒鉛Bと、球状で、その表面が非晶質炭素で被覆された天然黒鉛である黒鉛C(ただし、平均粒径は黒鉛Aとは異なる)が用いられる。
【0013】
黒鉛Aは、十分に黒鉛の結晶子が発達した天然黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆した黒鉛であるので、高容量でかつ充電時のリチウム受け入れ性が高い特長をもつ。
【0014】
黒鉛Aの平均粒子径は、18〜28μmである。この平均粒径である黒鉛Aであれば、後述する、比較的平均粒径の小さい黒鉛Cと併用することで、黒鉛粉としての充填性(タップ密度)が高くなり、負極合材層の高密度化が容易となる。高密度化を容易にすることで、合材層をプレス処理する際の負極活物質粒子が受けるダメージ(粒子の潰れ、割れなど)を軽減し、高密度化された空隙率の低い負極合材層中においても、十分な細孔を確保することができる。その結果、非水電解液の十分な浸透性を確保することができる。
【0015】
黒鉛Aは、例えば鱗片状の天然黒鉛を従来公知の手法で球形化し、その表面を有機化合物で被覆し、800〜1500℃で焼成した後、解砕し、篩を通して整粒することによって得ることができる。なお、前記被覆する有機化合物としては、芳香族炭化水素;芳香族炭化水素を加熱加圧下で重縮合して得られるタールまたはピッチ類;芳香族炭化水素の混合物を主成分とするタール、ピッチまたはアスファルト類;などが挙げられる。前記天然黒鉛を前記有機化合物で被覆するには、前記有機化合物に前記天然黒鉛を含浸・混捏する方法が採用できる。また、プロパンやアセチレンなどの炭化水素ガスを熱分解により炭素化し、これを天然黒鉛の表面に堆積させる気相法によっても、黒鉛Aを作製することができる。
【0016】
黒鉛Aは、球状でその表面が非晶質炭素で被覆された天然黒鉛であり、平均粒径が18〜28μmであれば、特に制限はないが、X線回折における(002)面間距離であるd
002が0.338nm以下、BET法における比表面積が3〜5m
2/g、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm
−1のピーク強度に対する1360cm
−1のピーク強度比であるR値(I
1360/I
1580)が0.15〜0.50であるとより好ましい。
【0017】
ここで、平均粒子径とは、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これら微粒子を分散させて測定した平均粒子径(D
50%)である。また、比表面積はBET法によるもので、測定装置例は日本ベル社製「ベルソープミニ」などが挙げられる。また、R値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm
−1のピーク強度に対する1360cm
−1のピーク強度比であるR値(I
1360/I
1580)のことを指し、波長514.5nmのアルゴンレーザー〔例えば、Ramanaor社製「T−5400」(レーザーパワー:1mW)〕を用いて得られるラマンスペクトルにより求めることが出来る。
これ以降の「平均粒子径」「比表面積」「R値」は、全て上述の方法によって求められる。
【0018】
黒鉛Aの負極活物質中の含有量は、20〜85質量%が好ましい。この範囲であると、黒鉛Bと黒鉛Cは後述する適切な量を負極活物質中に含有でき、本願発明の効果を発揮することが出来る。
【0019】
黒鉛Bは、バルクメソフェーズの人造黒鉛であり、比表面積が低いため、黒鉛表面と非水電解液との過度な副反応がおこらず、充放電効率が高いこと、さらに高温下での充放電特性に優れる特長をもつ。
【0020】
充放電効率が高く、反応性(特に高温下)の低い黒鉛Bを併用することで、高温下の充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。また、バルクメソフェーズの人造黒鉛は、配向性が低いので負極活物質粒子の過度な潰れを抑制する効果があり、前述の黒鉛Aと同様に、非水電解液の十分な浸透性を確保することができる。
【0021】
黒鉛Bの平均粒径は10〜20μmであり、負極活物質中における含有量が5〜20質量%である。詳細は不明であるが、この平均粒径である黒鉛Bを所定の含有量とすることで、高い充放電サイクル特性と非水電解液の浸透性を確保することができることを見出した。
【0022】
黒鉛Bは、バルクメソフェーズの人造黒鉛であり、平均粒径が10〜20μmであれば、特に制限はないが、X線回折における(002)面間距離であるd
002が0.338nm以下、BET法における比表面積が1〜3m
2/g、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm
−1のピーク強度に対する1360cm
−1のピーク強度比であるR値(I
1360/I
1580)が0.15〜0.50であるとより好ましい。
【0023】
黒鉛Cは、黒鉛Aと同様に十分に黒鉛の結晶子が発達した天然黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆した黒鉛であるので、高容量でかつ充電時のリチウム受け入れ性が高い特長をもつ。
【0024】
黒鉛Cの平均粒子径は、5〜13μmであり、負極活物質中における含有量が10〜15質量%である。この平均粒径で球状である黒鉛Cであれば、前述した、比較的平均粒径の大きい球状の黒鉛Aと併用することで、黒鉛粉としての充填性(タップ密度)が高くなる。充填性が高くなることで、負極活物質粒子間の接点が十分に確保できるので、負極合材層の剥離強度を高くすることができ、プレス処理した際、プレスロールに負極合材層が付着する生産トラブルを抑制することができる。さらに、黒鉛Aより平均粒径が小さいので、充電時のリチウム受け入れ性は黒鉛Aより優れ、より低温下における充放電特性を向上させることができる。
【0025】
特に好ましくは、タール、ピッチまたはアスファルト類を天然黒鉛の表面に堆積し、高温で熱処理したものが好ましい。
【0026】
黒鉛Cは、黒鉛Aと同様の手法で得ることができる。また、黒鉛Cは、球状でその表面が非晶質炭素で被覆された天然黒鉛であり、平均粒径が5〜13μmであれば、特に制限はないが、X線回折における(002)面間距離であるd
002が0.338nm以下、BET法における比表面積が3〜5m
2/g、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm
−1のピーク強度に対する1360cm
−1のピーク強度比であるR値(I
1360/I
1580)が0.40〜0.75であるとより好ましい。
【0027】
本発明における負極活物質には、前述した黒鉛A、黒鉛Bおよび黒鉛Cが含有されていれば、他の天然黒鉛や人造黒鉛を本発明の目的を逸脱しない範囲で含んでもよい。また、黒鉛以外の炭素質材料(熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体など)やSiまたはSnの単体、SiまたはSnを含む合金、SiまたはSnを含む酸化物なども本発明の目的を逸脱しない範囲で含んでもよい。
【0028】
黒鉛A,B,Cの合計量が負極活物質全量中50質量%以上であれば上述した本願の効果を特に発揮できるため好ましい。
【0029】
負極合剤層に係るバインダとしては、例えば、負極の使用電位範囲において、Liに対して電気化学的に不活性であり、他の物質にできるだけ影響を及ぼさない材料が選択される。具体的には、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ポリイミド、ポリアミドイミドなどが好適なものとして挙げられる。これらのバインダは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、負極合剤層には、導電助剤として、アセチレンブラックなどの各種カーボンブラックやカーボンナノチューブ、炭素繊維などを添加してもよい。
【0031】
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や水などの溶剤に分散させた負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。ただし、負極の製造方法は、前記の方法に制限される訳ではなく、他の製造方法で製造してもよい。
【0032】
負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましく、負極合剤層の密度(集電体に積層した単位面積あたりの負極合剤層の質量と、厚みから算出される)は、1.0〜1.9g/cm
3であることが好ましい。電池の高容量化を図る意味で、より好ましくは1.58〜1.8g/cm
3である。
【0033】
従来は負極合材層の密度を1.58g/cm
3以上に高くすると、合材層の空隙が少なくなること、細孔が小さくなるなどの理由で後述する非水電解液の負極合材層中への浸透性が悪くなり、十分な電池の充放電特性を確保できなくなる。しかし、前述した本発明の黒鉛A、黒鉛Bおよび黒鉛Cを所定の比率で混合したものを負極合材層に用いることで、合材層の密度を高くしても非水電解液の浸透性が良好であり、優れた低温下または高温下における充放電特性を確保することができる。
【0034】
また、負極合剤層の組成としては、例えば、負極活物質の量が80〜95質量%であることが好ましく、バインダの量が1〜20質量%であることが好ましく、導電助剤を使用する場合には、その量が1〜10質量%であることが好ましい。
【0035】
負極の集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は5μmであることが望ましい。
【0036】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水電解液を備えており、かつ負極に用いられる負極活物質が前記のものであればよく、その他の構成および構造については特に制限はなく、従来から知られているリチウムイオン二次電池で採用されている構成および構造を適用することができる。
【0037】
本発明のリチウムイオン二次電池に係る正極としては、例えば、正極活物質を含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に形成したものが挙げられる。正極合剤層は、正極活物質の他に、結着剤や、必要に応じて導電助剤を含有しており、例えば、正極活物質および結着剤(更には導電助剤)などを含む混合物(正極合剤)に、適当な溶剤を加えて十分に混練して得られる正極合剤含有組成物(スラリーなど)を、集電体表面に塗布し乾燥することで、所望の厚みとしつつ形成することができる。また、正極合剤層形成後の正極には、必要に応じてプレス処理を施して、正極合剤層の厚みや密度を調節することもできる。
【0038】
本発明では正極活物質として、従来から知られているリチウムイオン二次電池用の正極活物質を使用することが出来る。このような正極活物質の具体例としては、例えば、Li
1+xMO
2(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn
2O
4やその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO
4(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などが挙げられる。前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoO
2などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn
1/3Ni
1/3Co
1/3O
2、LiMn
5/12Ni
5/12Co
1/6O
2など)などを例示することができる。
【0039】
特に、リチウムイオン二次電池を、その使用に先立って、通常よりも高い終止電圧で充電するような場合には、高電圧に充電された状態での正極活物質の安定性を高めるために、前記例示の各種活物質が、更に安定化元素を含んでいることが好ましい。このような安定化元素としては、例えば、Mg、Al、Ti、Zr、Mo、Snなどが挙げられる。正極活物質には、上記のようなCoおよび/またはMnを含むリチウム含有酸化物のみを使用することができるが、Coおよび/またはMnを含むリチウム含有酸化物と他の正極活物質とを併用することもできる。
【0040】
Coおよび/またはMnを含むリチウム含有酸化物と併用し得る他の正極活物質としては、例えば、LiNiO
2などのリチウムニッケル酸化物;Li
4/3Ti
5/3O
4などのスピネル構造のリチウム含有複合酸化物;LiFePO
4などのオリビン構造のリチウム含有金属酸化物;前記の酸化物を基本組成とし各種元素で置換した酸化物;などが挙げられる。ただし、前記の効果をより良好に確保する観点からは、正極合剤層が含有する正極活物質全量中の、Coおよび/またはMnを含むリチウム含有酸化物の含有量が、50質量%以上であることが好ましい。
【0041】
正極は、前記の正極活物質と導電助剤とバインダとを含む混合物(正極合剤)に、適当な溶媒(分散媒)を加えて十分に混練して得たペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を、集電体に塗布し、所定の厚みおよび密度を有する正極合剤層を形成することによって得ることができる。なお、正極は、前記の製法により得られたものに限られず、他の製法で製造したものであってもよい。
【0042】
正極に係るバインダとしては、負極用のものとして例示した前記の各バインダを用いることができる。また、正極に係る導電助剤についても、負極用のものとして例示した前記の各導電助剤を使用できる。
【0043】
なお、前記正極に係る正極合剤層においては、正極活物質の含有量が、例えば、79.5〜99質量%であり、バインダの含有量が、例えば、0.5〜20質量%であり、導電助剤の含有量が、例えば、0.5〜20質量%であることが好ましい。
【0044】
本発明のリチウムイオン二次電池に使用される非水電解液としては、従来のリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液が好適に採用される。例えば、リチウム塩を非水系溶媒中に溶解させることで調製した溶液が使用できる。
【0045】
非水電解液に係るリチウム塩としては、LiPF
6、LiClO
4、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li
2C
2F
4(SO
3)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
nF
2n+1SO3(n≧2)、などの他のリチウム塩があげられる。特にLiPF
6は、解離度が高く、Liイオンの輸送率が高く、最も汎用性の高いリチウム塩である。非水電解液中のリチウム塩の濃度としては、0.6〜1.8mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.6mol/lとすることがより好ましい。
【0046】
溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン(γ-
BL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテルなどの非プロトン性有機溶媒を1種単独で、または2種以上を混合した混合溶媒として用いることができる。
【0047】
非水電解液としては、高温下における充放電特性を更に改善する目的で、例えば、非水系溶媒中に、上記のリチウム塩とLiBF
4、シアノ基を一つ以上含むニトリル化合物とを溶解させることで調製した溶液を使用してもよい。
【0048】
高温下において、正極活物質中のCoやMnが溶出する原因として、電解液中のLiPF
6が分解してフッ化水素(HF)が発生し、このHFが正極活物質の結晶構造を破壊してCo,Mnの溶出が起こっていることが考えられる。LiBF
4およびニトリル化合物が正極上に高温下においても安定性の高い被膜を作る化合物を非水電解質中に含有することで、HFと正極活物質とが反応するのを抑制し、CoやMnの溶出自体を抑制することが出来、高温サイクル特性や高温貯蔵特性を向上させることが出来る。
【0049】
LiBF
4はLiPF
6よりも高温下における安定性が高く、LiBF
4自身の分解によりHFの発生量が増加することはない。また、LiBF
4は低分子量のため、同じ効果を引き出すための添加量が他の添加剤に比べ少ない量で効果を発現することができる。また、LiBF
4は無機質の緻密な負極皮膜を形成するため、皮膜そのものが低抵抗となり、負荷特性が上昇を抑制することが出来る。更に、高温貯蔵時のガス発生に寄与しない。
【0050】
前記シアノ基を一つ以上含むニトリル化合物は、特に一般式(1)で示される化合物とすることが望ましい。
NC−(CH
2)
n−CN (1)
〔前記一般式(1)中、nは2〜4の整数である。〕
【0051】
一般式(1)の化合物は、例えば、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,4−ジシアノヘプタン、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,7−ジシアノヘプタン、2,6−ジシアノヘプタン、1,8−ジシアノオクタン、2,7−ジシアノオクタン、1,9−ジシアノノナン、2,8−ジシアノノナン、1,10−ジシアノデカン、1,6−ジシアノデカン、2,4−ジメチルグルタロニトリルなどである。
【0052】
これらの化合物は正極上に高温・高電圧下においても安定性の高い被膜を作ることが出来る。これにより、HFによって正極活物質の結晶構造を破壊されるのを抑制することが出来て、CoやMnの溶出を抑制することが可能になる。中でもアジポニトリル、スクシノニトリルは高温化での安定性が高く、汎用的で好ましい。
【0053】
前述の効果を得るためには、LiBF
4の非水電解液中の含有量は0.05質量%以上であり、0.1質量%以上がより好ましい。また、2.5質量%以下であり、0.5質量%以下がより好ましい。
【0054】
シアノ基を一つ以上含むニトリル化合物の非水電解液中の含有量は0.05質量%以上であり、0.1質量%以上がより好ましい。また、5質量%以下であり、2質量%以下がより好ましい。
【0055】
本発明のリチウムイオン二次電池に使用する非水電解液には、充放電サイクル特性の更なる改善や、高温貯蔵性や過充電防止などの安全性を向上させる目的で、1,3−プロパンスルトン、1,3−ジオキサン、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン等のフッ素化カーボネート、無水酸、スルホン酸エステル、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤(これらの誘導体も含む)を適宜加えることもできる。
【0056】
中でも、1,3−ジオキサンを含有していることが好ましい。これにより、リチウイオンム二次電池の高温化での充放電サイクル特性を更に高めることができる。
【0057】
リチウムイオン二次電池に使用する非水電解液における1,3−ジオキサンの含有量は、その使用による効果をより良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、非水電解液中の1,3−ジオキサンの量が多すぎると、電池の負荷特性が低下したり、充放電サイクル特性の向上効果が小さくなったりする虞がある。よって、リチウムイオン二次電池に使用する非水電解液における1,3−ジオキサンの含有量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0058】
また、ビニレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含有すると、充放電サイクル特性を更に向上させることが出来る。これらの非水電解液中の含有量は、それぞれ0.1〜5.0質量%、0.05〜5.0質量%が好ましい。
【0059】
また、非水電解液に下記一般式(2)で表わされるホスホノアセテート類化合物を含有することが好ましい。ホスホノアセテート類化合物は、LiBF
4と共にリチウムイオン二次電池の負極表面に皮膜を形成に寄与し、より強固な被膜を生成することで、負極活物質の劣化や非水電解液の劣化をより抑制することができる。
【0060】
【化1】
[一般式(2)中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を示し、nは0〜6の整数を示す。]
【0061】
前記一般式(2)で表わされるホスホノアセテート類化合物の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0062】
<前記一般式(2)においてn=0である化合物>
トリメチル ホスホノフォルメート、メチル ジエチルホスホノフォルメート、メチルジプロピルホスホノフォルメート、メチル ジブチルホスホノフォルメート、トリエチル ホスホノフォルメート、エチルジメチルホスホノフォルメート、エチル ジプロピルホスホノフォルメート、エチルジブチルホスホノフォルメート、トリプロピル ホスホノフォルメート、プロピル ジメチルホスホノフォルメート、プロピルジエチルホスホノフォルメート、プロピル ジブチルホスホノフォルメート、トリブチル ホスホノフォルメート、ブチルジメチルホスホノフォルメート、ブチル ジエチルホスホノフォルメート、ブチル ジプロピルホスホノフォルメート、メチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、エチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、プロピル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、ブチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノフォルメートなど。
【0063】
<前記一般式(2)においてn=1である化合物>
トリメチル ホスホノアセテート、メチル ジエチルホスホノアセテート、メチルジプロピルホスホノアセテート、メチル ジブチルホスホノアセテート、トリエチルホスホノアセテート、エチルジメチルホスホノアセテート、エチル ジプロピルホスホノアセテート、エチルジブチルホスホノアセテート、トリプロピルホスホノアセテート、プロピル ジメチルホスホノアセテート、プロピルジエチルホスホノアセテート、プロピル ジブチルホスホノアセテート、トリブチル ホスホノアセテート、ブチルジメチルホスホノアセテート、ブチル ジエチルホスホノアセテート、ブチルジプロピルホスホノアセテート、メチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、エチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、プロピルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、ブチル ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、アリル ジメチルホスホノアセテート、アリルジエチルホスホノアセテート、2−プロピニル ジメチルホスホノアセテート、2−プロピニル ジエチルホスホノアセテートなど。
【0064】
<前記一般式(2)においてn=2である化合物>
トリメチル 3−ホスホノプロピオネート、メチル 3−(ジエチルホスホノ)プロピオネート、メチル3−(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、メチル 3−(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリエチル 3−ホスホノプロピオネート、エチル3−(ジメチルホスホノ)プロピオネート、エチル 3−(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、エチル 3−(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリプロピル3−ホスホノプロピオネート、プロピル 3−(ジメチルホスホノ)プロピオネート、プロピル3−(ジエチルホスホノ)プロピオネート、プロピル 3−(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリブチル 3−ホスホノプロピオネート、ブチル3−(ジメチルホスホノ)プロピオネート、ブチル 3−(ジエチルホスホノ)プロピオネート、ブチル 3−(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、メチル3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、エチル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、プロピル 3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、ブチル3−(ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネートなど。
【0065】
<前記一般式(2)においてn=3である化合物>
トリメチル 4−ホスホノブチレート、メチル 4−(ジエチルホスホノ)ブチレート、メチル4−(ジプロピルホスホノ)ブチレート、メチル4−(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリエチル4−ホスホノブチレート、エチル 4−(ジメチルホスホノ)ブチレート、エチル4−(ジプロピルホスホノ)ブチレート、エチル 4−(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリプロピル 4−ホスホノブチレート、プロピル4−(ジメチルホスホノ)ブチレート、プロピル 4−(ジエチルホスホノ)ブチレート、プロピル ジブチルホスホノ)ブチレート、トリブチル4−ホスホノブチレート、ブチル 4−(ジメチルホスホノ)ブチレート、ブチル4−(ジエチルホスホノ)ブチレート、ブチル 4−(ジプロピルホスホノ)ブチレートなど。
【0066】
ホスホノアセテート類化合物の中でも、2−プロピニルジエチルホスホノアセテート(PDEA)、エチルジエチルホスホノアセテート(EDPA)を使用することが好ましい。
【0067】
セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステルなどのポリエステル;などで構成された多孔質膜であることが好ましい。なお、セパレータは、100〜140℃において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましい。そのため、セパレータは、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100〜140℃の熱可塑性樹脂を成分とするものがより好ましく、ポリエチレンを主成分とする単層の多孔質膜であるか、ポリエチレンとポリプロピレンとを2〜5層積層した積層多孔質膜などの多孔質膜を構成要素とする積層多孔質膜であることが好ましい。ポリエチレンとポリプロピレンなどのポリエチレンより融点の高い樹脂を混合または積層して用いる場合には、多孔質膜を構成する樹脂としてポリエチレンが30質量%以上であることが望ましく、50質量%以上であることがより望ましい。
【0068】
このような樹脂多孔質膜としては、例えば、従来から知られている非水電解質二次電池などで使用されている前記例示の熱可塑性樹脂で構成された多孔質膜、すなわち、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸法などにより作製されたイオン透過性の多孔質膜を用いることができる。
【0069】
セパレータの平均孔径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であって、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。
【0070】
また、セパレータの特性としては、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mm
2の圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が、10〜500secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。更に、セパレータの強度としては、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。
【0071】
本発明のリチウムイオン二次電池は、従来のリチウムイオン二次電池と同様に充電の上限電圧を4.2V程度として使用することもできるが、充電の上限電圧を、これよりも高い4.4V以上に設定して使用することも可能であり、これにより高容量化を図りつつ、長期にわたって繰り返し使用しても、安定して優れた特性を発揮することが可能である。なお、リチウムイオン二次電池の充電の上限電圧は、4.5V以下であることが好ましい。
【0072】
本発明のリチウムイオン二次電池は、従来から知られているリチウムイオン二次電池と同様の用途に適用することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0074】
(実施例1〜13)
<正極の作製>
LiCoO
2 100質量部と、バインダであるPVDFを10質量%の濃度で含むNMP溶液20質量部と、導電助剤である人造黒鉛1質量部およびケッチェンブラック1質量部とを、二軸混練機を用いて混練し、更にNMPを加えて粘度を調節して、正極合剤含有ペーストを調製した。前記正極合剤含有ペーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、プレス処理を行って、正極合剤層の厚さおよび密度を調節し、アルミニウム箔の露出部にアルミ製のリード体を溶接して、長さ600mm、幅54mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、片面あたりの厚みが60μmであった。
【0075】
<負極の作製>
表1に示した平均粒子径である、黒鉛A(球状の表面が非晶質炭素で被覆された天然黒鉛)、黒鉛B(バルクメソフェーズ黒鉛化物)および黒鉛C(球状で、表面が非晶質炭素で被覆された天然黒鉛)を、表1に示した質量比率で、V型ブレンダーを用いて12時間混合し、負極活物質を得た。この負極活物質のタップ密度をパウダーテスター(ホソカワミクロン製、PT−R)にて測定した。タップ回数は180回とした。結果を表2に示す。
【0076】
前記負極活物質98質量部、CMC:1.0質量部、およびSBR:1.0質量部を、イオン交換水と混合して、水系の負極合剤含有ペーストを調製した。
【0077】
前記負極合剤含有ペーストを、厚みが8μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布(一部、片面のみ塗布した片面塗布部あり)した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、銅箔の両面に負極合剤層を形成した。その後、負極の剥離強度を90°剥離試験機(テスター産業)にて測定した。剥離強度の測定は、以下の手順通り実施した。負極の片面のみに負極合剤層が形成されている片面塗布部を長尺方向に10cm、幅方向に1cmのサイズに切り出して試料を作製する。この試料の片端から長尺方向に7cmまでで、かつ幅方向全面の領域に、両面テープの一方の面を貼り付け、両面テープの他方の面を、フェノール樹脂板に貼り付ける。前記試料のうち、両面テープを貼り付けていない他端から長尺方向に3cmまでの部分を垂直に折り立て、この部分を試験機のチャックで挟み、フェノール樹脂板に対して90°の角度で、5cm/minの速度で長尺方向に試料を引っ張り、負極合剤層が集電体から剥離したときの荷重を測定する。そして、得られた荷重(gf)を負極の幅(cm)で除して、剥離強度(gf/cm)を算出する。剥離強度の結果を表2に示す。
【0078】
前述の通り銅箔の両面に負極合剤層を形成した後、プレス処理を施し、負極合剤層の密度が1.7g/cm
3となるように厚みを調節し、銅箔の露出部にニッケル製のリード体を溶接して、長さ620mm、幅55mmの帯状の負極を作製した。得られた負極における負極合剤層は、片面あたりの厚みが70μmであった。
【0079】
(下から記載を移動させた)
プレス処理を施した実施例の各負極について、電解液の浸透時間を測定した。各負極の負極合材層表面に、前述の電解液を2μL滴下し、電解液が完全に負極合材層に浸透するまでに要した時間を電解液の浸透時間とした。測定は、それぞれ5回実施し、その平均を表2に示す。
【0080】
<非水電解液の調整>
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比=1:1:1で混合した溶媒に、LiPF
6を1.1mol/lの濃度になるように溶解させ、この溶液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを1.5質量%、ビニレンカーボネートを2.0質量%、2−プロピニル2−(ジエトキシホスホリル)アセテートを1.5質量%、1,3−ジオキサンを1.0質量%、アジポニトリルを0.5質量%、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)を0.15質量%となる量で添加し、非水電解液を調整した。
【0081】
<電池の組み立て>
前記帯状の正極を、厚みが16μmの微孔性ポリエチレンセパレータ(空孔率:41%)を介して前記帯状の負極に重ね、渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回構造の巻回電極体とし、この電極巻回体をポリプロピレン製の絶縁テープで固定した。次に、外寸が厚さ5.0mm、幅56mm、高さ60mmのアルミニウム合金製の角形の電池ケースに前記巻回電極体を挿入し、リード体の溶接を行うとともに、アルミニウム合金製の蓋板を電池ケースの開口端部に溶接した。その後、蓋板に設けた注入口から前記非水電解液を注入し、1時間静置した後注入口を封止して、
図1に示す構造で、
図2に示す外観のリチウムイオン二次電池を得た。
【0082】
ここで
図1および
図2に示す電池について説明すると、
図1は部分断面図であって、この
図1に示すように、正極1と負極2とはセパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状の巻回電極体6として、角形(角筒形)の電池ケース4に非水電解液と共に収容されている。ただし、
図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や、セパレータの各層、非水電解液などは図示していない。
【0083】
電池ケース4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この電池ケース4は正極端子を兼ねている。そして、電池ケース4の底部にはPEシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2およびセパレータ3からなる扁平状巻回電極体6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、電池ケース4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはポリプロピレン製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
【0084】
そして、この蓋板9は電池ケース4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池ケース4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、
図1の電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
【0085】
この実施例1の電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって電池ケース4と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、電池ケース4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
【0086】
図2は前記
図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この
図2は前記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この
図2では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のものしか図示していない。また、
図1においても、電極体の内周側の部分は断面にしていない。
【0087】
(実施例14)
プレス圧を変更して負極合材層の密度を1.8g/cm
3とした以外は実施例1と同様にして負極を作成した。この負極を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
尚、実施例1と同様に、タップ密度は負極活物質の時点で、剥離強度はプレス前の負極で、電解液の浸潤時間はプレス後の負極で測定した。
【0088】
(実施例15、16)
黒鉛A、黒鉛B、黒鉛Cの他に、表1に示す平均粒子径である黒鉛D(人造黒鉛)と黒鉛E(天然黒鉛)を表1に示す含有量で加えたこと以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
尚、実施例1と同様に、タップ密度は負極活物質の時点で、剥離強度はプレス前の負極で、電解液の浸潤時間はプレス後の負極で測定した。
【0089】
(比較例1〜12)
表1に示した平均粒子径D50%である黒鉛A(球状の表面が非晶質炭素で被覆された天然黒鉛)、黒鉛B(バルクメソフェーズ黒鉛化物)および黒鉛C(球状で、表面が非晶質炭素で被覆された天然黒鉛)を、表1に示した含有量で混合した負極活物質を用いたこと以外は、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
尚、実施例1と同様に、タップ密度は負極活物質の時点で、剥離強度はプレス前の負極で、電解液の浸潤時間はプレス後の負極で測定した。
【0090】
(比較例13)
黒鉛Cの代わりに、平均粒子径が8μmの鱗状黒鉛(黒鉛F)を表1に記載の含有量で用いたこと以外は、実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
尚、実施例1と同様に、タップ密度は負極活物質の時点で、剥離強度はプレス前の負極で、電解液の浸潤時間はプレス後の負極で測定した。
【0091】
(比較例14)
プレス圧を変更して負極合材層の密度を1.8g/cm
3とした以外は比較例9と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
尚、実施例1と同様に、タップ密度は負極活物質の時点で、剥離強度はプレス前の負極で、電解液の浸潤時間はプレス後の負極で測定した。
【0092】
実施例および比較例の各リチウムイオン二次電池について、下記の電池特性評価を行った。
【0093】
<初期充放電試験>
実施例および比較例のリチウムイオン二次電池を、25℃の恒温槽内に5時間静置し、その後、各電池について、4.4Vまで0.5Cの定電流で充電を行い、4.4Vに達した後は、電流が0.05Cに到達するまで4.4Vで定電圧充電を行った。この時の容量を充電容量とした。その後、0.2Cの定電流で、電圧が2.75Vに到達するまで放電を行った。この時の容量を放電容量とした。得られた放電容量を充電容量で除したものを充放電効率(%)とした。結果を表3に示す。
【0094】
<−5℃における充電受け入れ性試験>
実施例および比較例のリチウムイオン二次電池を、25℃の恒温槽内に5時間静置し、その後、各電池について、4.4Vまで1Cの定電流で充電を行い、4.4Vに達した後は、電流が0.1Cに到達するまで4.4Vで定電圧充電を行った。この時の充電容量を25℃における充電容量とした。その後、0.2Cの定電流で、電圧が2.75Vに到達するまで放電を行った。
【0095】
前記放電後の各電池を、−5℃の恒温槽内に5時間静置し、その後、各電池について、4.4Vまで1Cの定電流で充電を行い、4.4Vに達した後は、電流が0.1Cに到達するまで4.4Vで定電圧充電を行った。この時の充電容量を−5℃における充電容量とした。その後、25℃の恒温槽内に5時間静置し、0.2Cの定電流で、電圧が2.75Vに到達するまで放電を行った。
【0096】
以上の一連の操作を1サイクルとし、5サイクル目の−5℃における充電容量のうち、定電流充電領域における充電容量と、前記25℃における充電容量のうち、定電流充電領域における充電容量との比率を求めて、−5℃における充電受け入れ性(低温下での充電特性)として評価した。これらの結果を表3に示す。
【0097】
<45℃充放電サイクル特性評価>
実施例および比較例のリチウムイオン二次電池を45℃の恒温槽内に5時間静置し、その後、各電池について、0.5Cの電流値で4.4Vまで定電流充電し、引き続いて4.4Vで定電圧充電し(定電流充電と定電圧充電との総充電時間が2.5時間)、その後に0.2Cの定電流で2.75Vで放電を行って、初回放電容量を求めた。次に、各電池について、45℃で、1Cの電流値で4.4Vまで定電流充電し、引き続いて4.4Vの定電圧で電流値が0.1Cになるまで充電した後に、1Cの電流値で3.0Vまで放電する一連の操作を1サイクルとして、これを複数回サイクルした。そして、各電池について、前記の初回放電容量測定時と同じ条件で定電流−定電圧充電および定電流放電を行って、放電容量を求めた。そして、これらの放電容量を初回放電容量で除した値を百分率で表して、45℃サイクル容量維持率を算出し、500サイクルにおける容量維持率を調べた。これらの結果を表3に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】