(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用が、過脂化メラニンキャップの産生量及び/又は分解量で評価される、請求項1に記載のスクリーニング方法。
被験物質を添加した細胞における過脂化メラニン含有メラノソーム凝集塊の面積が、前記被験物質を添加しなかった細胞における過脂化メラニン含有メラノソーム凝集塊の面積と比較して小さい場合に、前記被験物質は過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用を有すると判定する、請求項3に記載のスクリーニング方法。
【背景技術】
【0002】
皮膚において表皮の最下部である基底層に位置するメラノサイト(色素細胞)のメラノソーム内において合成・蓄積されたメラニンは、メラノソームの成熟に伴い細胞膜へ輸送され、樹状突起(デンドライト)を介して隣接するケラチノサイト(表皮角化細胞)に受け渡される。ケラチノサイトは分裂して徐々に皮膚表面へ押し上げられ、最後は細胞核のない角質細胞に変化して垢となって剥がれ落ち、これによりメラニンは体外に排出される(ターンオーバー)。
【0003】
メラニン合成から排出に至るこの一連の過程におけるメラニン産生亢進、輸送障害、過剰又は不均一な蓄積、排出障害等は、日焼け後の色素沈着、シミ、くすみ等の肌の美しさを妨げるトラブルの原因と深く関連すると考えられており、その機序の解明とそれをターゲットとする美白成分に関する研究が盛んになされている。
本発明者らも、これまでに、皮膚を含む生体組織に発生する活性酸素及び生体構成成分の脂質から産生する過酸化脂質がメラニンに結合して脂化メラニンとなること、脂化メラニンは従来知られていた真正メラニンや亜メラニンよりも色調が濃く、皮膚色素沈着症状をより悪化させることを明らかにし、脂化メラニン産生抑制作用を有する成分を新たな美白剤として提案している(特許文献1)。
【0004】
ところで、メラニンを含有する構造体であるメラノソームは、ケラチノサイトの細胞核が帽子をかぶったような形態で分布することが知られており、この凝集塊は「メラニンキャップ」と呼ばれる。メラニンキャップは、ケラチノサイトの細胞核を紫外線等の刺激から保護する役割を担うと同時に、過剰に形成された場合は皮膚の色を暗くする作用も有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、メラニンキャップはケラチノサイトの分化と表皮上方への移動に伴って消失するため、メラニンキャップによる皮膚の暗色化もケラチノサイトの分化によって治まるものと考えられる。しかしながら、表皮角層において多層的に色素沈着がみられる場合があり、従来の美白剤でも効果が得られないことがある。前述のように、メラニン合成から色素沈着に至る過程は様々な要素が関わる多段階のものなので、新たな機序に基づく美白剤の創出がさらに求められている。
そこで、本発明は多層的な色素沈着に対しても有効な、新たな機序に基づく美白剤をスクリーニングする方法、及び多層色素沈着を改善する作用を有する美白剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を進めたところ、過脂化メラニンもメラニンキャップを形成すること、過脂化メラニンキャップは通常メラニンキャップよりも強固であり、ケラチノサイトが分化しても消失し難いことも明らかにした。そして、この過脂化メラニンキャップが、肌の色をより暗く、シミをより濃く見せていることを見出し、過脂化メラニンキャップを形成させない、あるいは分解する作用を有する物質が、多層色素沈着改善剤となりうることに想到し、本発明を完成した。
なお、本明細書において「過脂化メラニン」とは、過酸化脂質とメラニンが結合したものをいい、上記特許文献1の「脂化メラニン」と同義である。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用を指標とする、多層色素沈着改善剤のスクリーニング方法(以降、「本発明のスクリーニング方法」とも記す)。
[2]前記過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用が、過脂化メラニンキャップの産生量及び/又は分解量で評価される、[1]に記載のスクリーニング方法。
[3]前記過脂化メラニンキャップの産生量及び/又は分解量が、過脂化メラニン含有メラノソーム凝集塊の面積で表される、[2]に記載のスクリーニング方法。
[4]被験物質を添加した細胞における過脂化メラニン含有メラノソーム凝集塊の面積が、前記被験物質を添加しなかった細胞における過脂化メラニン含有メラノソーム凝集塊の面積と比較して小さい場合に、前記被験物質は過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用を有すると判定する、[3]に記載のスクリーニング方法。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の方法により過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用を有すると判定された物質を含有する組成物。
[6]皮膚外用剤である、[5]に記載の組成物。
[7]化粧料(ただし、医薬部外品を含む)である、[5]又は[6]に記載の組成物。[8]美白用である、[5]〜[7]のいずれかに記載の組成物。
[9][1]〜[4]のいずれかに記載の方法により色素沈着改善作用を有すると判定された物質を組成物に配合する工程を含むことを特徴とする組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、新たな作用機序に基づく美白剤となり得る、多層色素沈着改善剤として有効な成分を探索できるスクリーニング法が提供される。また、本発明により、新たな作用機序に基づく美白剤となり得る、多層色素沈着改善剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のスクリーニング方法は、過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用を指標として、多層色素沈着改善剤をスクリーニングすることを特徴とする。
本発明者らは、通常メラニンと同様に、過脂化メラニンもケラチノサイトにおいてメラニンキャップ(核帽)を形成すること、そして過脂化メラニンキャップは通常メラニンキャップよりも色が濃いことを発見した(
図1)。さらに、過脂化メラニンキャップは通常メラニンキャップよりも強固であり、通常メラニンキャップはケラチノサイトの分化に伴って消失するのに対し(
図2)、過脂化メラニンキャップはケラチノサイトが分化しても消
失し難いことも明らかにした(
図3)。この過脂化メラニンキャップが表皮角層において多層的に蓄積することによって、肌の色をより暗く、シミをより濃く見せていることから、過脂化メラニンキャップの形成抑制作用及び/又は分解促進作用を有する物質は、多層色素沈着改善剤となり得る。
【0012】
本発明の好ましい態様において、指標とする前記過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用は、過脂化メラニンキャップの産生量及び/又は分解量で評価される。
より好ましい態様では、前記過脂化メラニンキャップの産生量及び/又は分解量は、例えば過脂化メラニン含有メラノソーム凝集塊の面積で表されることが特に好ましい。
さらに好ましい態様では、被験物質を添加した細胞における過脂化メラニン含有メラノソーム凝集塊の面積が、前記被験物質を添加しなかった細胞における過脂化メラニン含有メラノソーム凝集塊の面積と比較して小さい場合に、前記被験物質は過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用を有すると判定され、多層色素沈着改善剤となり得る。
なお、過脂化メラニン含有メラノソーム凝集塊の面積とは、例えば顕微鏡観察で取得した細胞におけるメラニン分布画像を画像解析して得た黒色領域の総面積、粒子毎の平均面積及び細胞数を用いて、単位細胞数当たりのメラニン凝集塊の平均面積を算出したものをいう。
【0013】
他の態様において、指標とする前記過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用は、過脂化メラニンキャップ形成及び/又は分解に関与するタンパク質の活性で評価されてもよい。
前記タンパク質の活性は、前記タンパク質をコードする遺伝子の発現量で表されることが好ましく、例えば、被験物質を添加した細胞における前記遺伝子の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該遺伝子の発現量と比較して変動する場合に、前記被験物質は過脂化メラニンキャップ形成抑制作用又は分解促進作用を有すると判定される。ここで、発現量の変動は、過脂化メラニンキャップ形成に係る遺伝子については発現量が小さくなること、及び過脂化メラニンキャップ分解に係る遺伝子については発現量が大きくなることを含む。さらに、前記発現量は、例えば当該遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、定量的な検出を行うことにより測定することができる。または、当該タンパク質の細胞内存在量を、常法で定量的に測定して、遺伝子の発現量としてもよい。
【0014】
スクリーニングに用いる細胞の種類は、過脂化メラニンキャップを保持しうる細胞であれば特に限定されないが、ケラチノサイト又はファイブロブラストが好ましく、ケラチノサイトがより好ましく、ヒト由来ケラチノサイトがさらに好ましい。細胞の培養の条件としては、通常の培養条件、例えば市販のKG2培地を用いる他、本発明のスクリーニング方法の実行を妨げない培養条件であれば、特段の限定なく適用することができる。
【0015】
本発明のスクリーニング方法が対象とする被験物質は、純物質、動植物由来の抽出物、またはそれらの混合物等のいずれであってもよい。
動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物又は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとし、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3−ブタンジオール、ポリプロピレ
ングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される一種又は二種以上が好適なものとして例示することができる。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位又はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却し後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0016】
本発明のスクリーニング方法における手順の一例を以下に挙げるが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
まず、B16マウスメラノーマ細胞から取り出したメラノソームを新生児ヒト皮膚ケラチノサイトに添加する。さらに、最終濃度1%になるように過酸化脂質を添加し、24時間インキュベーションする。その後、被験物質を添加し、24時間後、パラホルムアルデヒド等で細胞固定した後、蛍光染色する。その後、蛍光顕微鏡の蛍光観察と明視野観察で細胞核及びメラニン分布画像を取得し、画像解析ソフトImageJを用いて、二値化したメラニン分布画像の同視野面積における黒色領域の総面積及び細胞数を測定し、これらから単位細胞数当たりのメラニン凝集塊の平均面積を算出する。被験物質を添加した細胞におけるメラニン凝集塊の面積が、被験物質を添加しなかった細胞におけるメラニン凝集塊の面積(コントロール)に対して小さい場合、好ましくはコントロールに対して10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上小さい場合に、前記被験物質は過脂化メラニンキャップ形成抑制作用及び/又は分解促進作用を有すると判定する。該判定された物質は、多層色素沈着改善剤となり得る。
【0017】
本明細書において「多層色素沈着」とは、分化したケラチノサイトにおいても過脂化メラニンキャップが滞留した状態にあることをいう。また、多層色素沈着の「改善」には多層色素沈着の「改善」及び「予防」を含み、多層色素沈着の「改善」とはケラチノサイトにおける過脂化メラニンキャップの分解を促進することを含み、多層色素沈着の「予防」とはケラチノサイトにおける過脂化メラニンキャップの形成を抑制することを含む。多層色素沈着を改善又は予防することにより、肌の色みやシミが薄く又は明るくなり、美白効果が得られ得る。
本発明のスクリーニング方法で得られた多層色素沈着改善剤は、従来の美白剤では改善し難かった角層のうち上部に近い側にある分化したケラチノサイトにおける色素沈着に対しても美白効果を発揮し得るため、非常に有用である。
多層色素沈着が改善されたことは、細胞レベルでは、例えば、角層表面の細胞を顕微鏡観察する等して過脂化メラニンキャップが消失したことで確認することができる。また、肌組織レベルでは、色彩色差計、分光測色計等の周知の測色計による測定や目視評価等により確認することができる。
【0018】
本発明のスクリーニング方法により多層色素沈着改善作用を有すると判定された物質(多層色素沈着改善剤)は、任意の調製方法により組成物に含有させることができる。
組成物としては、化粧料、医薬部外品、医薬品などが好適に例示でき、日常的に使用できることから、化粧料、医薬部外品がより好ましい。その投与経路としては、特に限定されるものではないが、多層色素沈着改善作用を発揮するために皮膚への貯留性、標的部位への到達効率等を考慮し、経皮投与を採用して皮膚外用剤とすることが好ましい。
また、係る組成物は美白用途に好適に用いることができる。
【0019】
従来の美白剤や美白用皮膚外用剤は、チロシナーゼ合成阻害などにより、メラニンの生成を抑制して肌を美白へと導くものが主流であった。
それに対して、本発明のスクリーニングにより多層色素沈着改善作用を有すると判定さ
れた物質(多層色素沈着改善剤)は、従来知られていなかった過脂化メラニンキャップに働きかける、新しい作用機序に基づく美白剤となり得るものである。従来の美白剤では改善し難かった、角層のうち上部に近い側にある分化したケラチノサイトにおける多層的な色素沈着に対しても美白効果を発揮し得るため、非常に有用である。
【0020】
組成物の剤型としては、特に限定されず、ローション、乳液、クリーム、オイル等が挙げられる。
組成物中における、本発明の多層色素沈着改善剤の含有量(配合量)は、通常、0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%である。多層色素沈着改善剤の含有量(配合量)が少なすぎると所望の効果が得られにくい場合があり、多すぎると効果が頭打ちになるばかりか組成物の処方の自由度を損なう場合があるからである。
【0021】
本発明の組成物の製造に際しては、化粧料、医薬部外品、医薬品などの製剤化で通常使用される成分を配合することができる。
通常使用される成分としては、各種有効成分、油性成分、アルコール類、各種界面活性剤類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紛体類、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、有機変性粘土鉱物等が挙げられ、これらを任意に配合することができる。有効成分としては、シワ改善成分、抗炎症成分、動植物由来の抽出物等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の組成物には、本発明の多層色素沈着改善剤以外の、美白用成分も配合してもよい。例えば、アスコルビン酸類、過酸化水素、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン、カテコール等の美白成分、チロシナーゼ関連蛋白阻害剤、エンドセリン作用抑制剤、プロトンポンプ阻害剤、ステムセルファクター結合阻害剤等のメラニン生成抑制剤、デンドライト伸張抑制剤、メラニン移送又は放出抑制剤、インテグリン産生促進剤などが挙げられる。従来の美白用成分とは作用機序の異なる本発明の多層色素沈着改善剤と組み合わせることにより、相加・相乗効果が期待できる。
組成物の製造は、常法に従ってこれらの成分を処理・配合することにより、困難なく行うことができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
<参考例1>通常メラニンキャップと過脂化メラニンキャップの比較
以下の手順で、通常メラニンキャップと過脂化メラニンキャップの比較を行った。
トリプシン処理によりB16マウスメラノーマ細胞5×10
6 cellsを回収し、PBS 3mLで懸濁した。遠心(1000rpm、2分間)し上清を除いた後、冷ホモジ
ナイズバッファー(0.25M sucrose、10mM Tris、10mM KCl
)2.5mLを加え細胞を懸濁した。氷浴上で、2.5mL注射筒と25G注射針で20
回ホモジナイズした後、遠心(700g、10分、4℃)した。上清を回収し、エッペンに90% percollを361.3μL、上清を800μL加え懸濁した(最終濃度
28% percoll)。遠心(20000g、45分、4℃)し、エッペンの底近く
に見える黒い層を回収し、単離メラノソームとした。
新生児ヒト正常ケラチノサイトを、4穴チャンバースライドにそれぞれ7.0×10
4
個/ウェルとなるように播種した。播種24時間後、最終濃度0.01%となるように単離メラノソームを添加したKG2培地(1000μL/ウェル)に交換し、24時間インキュベーションし、これを通常メラニンキャップとした。また上記条件において、最終濃度1%となるように過酸化脂質を添加し、24時間インキュベーションしたものについて
は、過脂化メラニンキャップとした。24時間後、培地を除きPBSで細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、封入した。それぞれについて共焦点顕微鏡にて観察し、メラニン分布画像を取得した。画像解析ソフトImageJを用いて、二値化したメラニン分布画像の同視野面積における黒色領域の総面積及び細胞数を測定し、これらから単位細胞数当たりのメラニン凝集塊の平均面積を算出した。
図1より、通常メラニンキャップよりも過脂化メラニンキャップの方が濃いことがわかる。また、通常メラニンキャップのメラニン凝集塊の平均面積を1とした場合、過脂化メラニンキャップの該平均面積は2.4であった。
【0025】
<参考例2>ケラチノサイトの分化によるメラニンキャップへの影響の検討
以下の手順で、ケラチノサイトの分化後の通常メラニンキャップと過脂化メラニンキャップの挙動変化の比較を行った。
参考例1と同様に新生児ヒト正常ケラチノサイトを用いて通常メラニンキャップ及び過脂化メラニンキャップを調製した。それらの培地を高カルシウムKG2培地(カルシウム濃度:1.45mM)に変更し、細胞分化を誘導した。24時間後、PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、封入した。共焦点顕微鏡にて、分化前後の各メラニン分布画像を取得し、画像解析ソフトImageJを用いて、二値化したメラニン分布画像の同視野面積における黒色領域の総面積及び細胞数を測定し、これらから単位細胞数当たりのメラニン凝集塊の平均面積を算出した。なお、分化前の該平均面積を1とする相対値で
図2及び3のグラフに示す。
通常メラニンキャップは細胞分化に伴って消失するのに対し(
図2)、過脂化メラニンキャップは細胞分化しても消失し難いことがわかる(
図3)。
【0026】
<実施例1>過脂化メラニンキャップを用いる多層色素沈着改善剤のスクリーニング
参考例1と同様に調製した過脂化メラニンキャップに、被験物質を添加して24時間インキュベーションした後、培地を除きPBSで細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定した後、蛍光染色した。また、被験物質を添加しない点以外は同様の操作を、過脂化メラニンキャップ及び参考例1と同様に調製した通常メラニンキャップについてもそれぞれ行った。その後、共焦点顕微鏡でメラニン分布画像を取得した。画像解析ソフトImageJを用いて、二値化したメラニン分布画像の同視野面積における黒色領域の総面積及び細胞数を測定し、これらから単位細胞数当たりのメラニン凝集塊の平均面積を算出した。被験物質を添加しなかった過脂化メラニンキャップの該平均面積を1とする相対値の結果を、表1に示す。
カミツレエキス、カッコンエキス、及びオウゴンエキスを添加したケラチノサイトにおいて、コントロールに対して20%以上メラニン凝集塊の平均面積が減少し、これらのエキスが過脂化メラニンキャップに対して形成抑制作用及び/又は分解促進作用を示したことがわかる。この結果より、これらが多層色素沈着改善剤となり得ることが推測される。一方、過脂化メラニン産生抑制作用を有するユズエキス(特許文献1)は、過脂化メラニンキャップに対して形成抑制作用及び/又は分解促進作用を示さなかった。
【0027】
【表1】