特許第6405198号(P6405198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405198
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】シールド機の切羽地山緩み検出方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20181004BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20181004BHJP
   G01N 23/203 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   E21D9/093 F
   G01D21/00 D
   G01N23/203
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-230544(P2014-230544)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-94722(P2016-94722A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】野本 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−085800(JP,A)
【文献】 特開2000−346953(JP,A)
【文献】 特開平05−263584(JP,A)
【文献】 特開平01−075949(JP,A)
【文献】 山口柏樹,土質力学,技報堂出版株式会社,1982年 4月 1日,1版9刷,PP.14−15,図−1.7、式(1.5)〜(1.8)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00〜 9/14
G01N 23/00〜 23/2276
G01D 18/00〜 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機の前部に設けられ、ガンマ線と中性子線を発信する線源棒と、前記線源棒から発せられたガンマ線と中性子線を受信し、放射線量から土の湿潤密度と水分密度(含水量)を求める放射線測定手段としての検出器とを具備するもので、ガンマ線と中性子線を発信する線源棒は、前記シールド機のスキンプレート内側に周方向に間隔を存して複数個設け、放射線の放射方向がそれぞれ異なり、また、線源棒のスキンプレート外方への突出装置を付加した切羽地山緩み検出装置を使用し、
シールド機の前部からガンマ線と中性子線を発し、線源棒から出たガンマ線と中性子線が、土の中を進行する過程で散乱を繰り返し、検出器に到達する放射線量から湿潤密度と含水量を求めて地山崩落面の予測を行うことを特徴とするシールド機の切羽地山緩み検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉式シールド工法において切羽の安定を乱す原因となる切羽地山の緩みを検知する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
密閉式シールド工法における切羽の安定は切羽の土圧や切羽周辺に充填される泥水圧のバランスをとって確保している。
【0003】
これに対し、自然条件や人為的原因(特に都市部における近接工事の影響等)で切羽地山に緩みが発生していると、シールド機がそこを通過する際に土圧や泥水圧のバランスを乱す原因となり、その結果、極端な場合はバランス維持が不可能となって過剰な土砂取込みや地上噴出をもたらし、地面陥没や近接構造物の破損をもたらす虞があった。
【0004】
そのため、緩みが懸念される箇所においては、バランスを逸しないよう慎重に掘進する必要があったが、注意力による対応の不安と作業効率が低下する問題があり、対策が求められていた。
【0005】
下記特許文献はシールド機の掘進による地山の崩落を検知することができる検知装置および検知方法として提案されたもので、シールド機の前部に設けられ、超音波を発信する超音波発信手段と、前記超音波発信手段から発せられ、地山崩落面で反射した超音波を受信する超音波受信手段と、前記超音波受信手段の出力信号に基づいて地山崩落面の形状を認識する手段と、を具備するものである。
【特許文献1】特開平6−307187号公報
【0006】
この特許文献1は、図7図9に示すように、シールド機1のカッタフェイス3に超音波センサ7a〜7dが設けられ、スキンプレート5に超音波センサ7e、7fが設けられる。9は回転軸、10は回転角度を検出する回転角度検出器である。
【0007】
各超音波センサ7a〜7fから超音波が発せられ、崩落面11で反射した超音波が超音波センサ7a〜7fで受信され、受信された信号を処理することにより、各超音波センサから崩落面11までの距離が算出される。
【0008】
また、カッタフェイス3の回転角度が検出される。パーソナルコンピュータは各超音波センサから崩落面11までの距離と回転角度とを用いて、崩落部13の形状を認識する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1の超音波発信手段と、前記超音波発信手段から発せられ、地山崩落面で反射した超音波を受信する超音波受信手段を用いた緩みによる崩落の早期発見が可能なシステムは、超音波の観測結果をコンピュータ処理して切羽面プロファイルとして再構成し、プロファイル上で崩落による異常凹凸面が発生していないかを判定するものである。
【0010】
ゆえに、崩落が発生しても超音波のエコーで異常がとらえられる程度の大きさになるまで判定できない。
【0011】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、崩落の検出でなく、崩落を誘引する緩みの存在を検出し、崩落の前段階での注意喚起ができるシールド機の切羽地山緩み検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための本発明のシールド機の切羽地山緩み検出方法は シールド機の前部に設けられ、ガンマ線と中性子線を発信する線源棒と、前記線源棒から発せられたガンマ線と中性子線を受信し、放射線量から土の湿潤密度と水分密度(含水量)を求める放射線測定手段としての検出器とを具備するもので、ガンマ線と中性子線を発信する線源棒は、前記シールド機のスキンプレート内側に周方向に間隔を存して複数個設け、放射線の放射方向がそれぞれ異なり、また、線源棒のスキンプレート外方への突出装置を付加した切羽地山緩み検出装置を使用し、シールド機の前部からガンマ線と中性子線を発し、線源棒から出たガンマ線と中性子線が、土の中を進行する過程で散乱を繰り返し、検出器に到達する放射線量から湿潤密度と含水量を求めて地山崩落面の予測を行うこと要旨とするものである。
【0013】
本発明によれば、地山崩落の予測は地山の密度・含水量を測定することで行えることを知見し、この地山の密度・含水量の測定をおこなうことで地山崩落の予測が可能となる。
【0014】
また、土の湿潤密度検出手段と水分密度(含水量)検出手段として、微少のRI(ラジオアイソトープ)を利用することが最適であり、線源棒から出たガンマ線と中性子線が、土の中を進行する過程で散乱を繰り返し、検出器に到達する放射線量から湿潤密度と含水量を求めることができる。
【0015】
さらに、放射線の放射方向がそれぞれ異なることでスキンプレート外周方向の幅の広い検知が可能である。
【0016】
これに加えて、掘削中の回転するシールド機からではなく、停止した状態のシールド機でスキンプレート外方へ線源棒を突出さて測定することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように本発明のシールド機の切羽地山緩み検出方法は、崩落の検出でなく、崩落を誘引する緩みの存在を検出し、崩落の前段階での注意喚起ができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のシールド機の切羽地山緩み検出方法に使用する装置の1実施例を示す説明図、図2図1のA線およびB線断面図、図3は同上C線断面図で、密閉式シールド工法に使用するシールド機15を示すものである。
【0019】
シールド機15の本体においては従来と変わらず、16はスキンプレート、17はカッタフェイスで、カッタフェイス17にはカッタービット18、特殊先行ビット19、最外周特殊先行ビット20、外周側面保護ビット21、トリムビット22などの各種ビット、および注入管23、コピーカッタ24などが設けられる。
【0020】
スキンプレート16の内部には、カッタ旋回電動モータ25、および、注入管27やゲート開閉ジャッキ28による排土口、スクリュ旋回モータ29などを有するスクリュー軸による排土機構26、シールドジャッキ30、中折れジャッキ31、(セグメント)エレクタ32、注入管33、テールパッキン34などを配設した。
【0021】
図中36はセグメントで、37は形状保持装置である。また、図2において、38は土圧計、39はマンホールを示す。
【0022】
本発明はこのようなシールド機15の前部、スキンプレート16の内側に、土の湿潤密度検出手段と水分密度(含水量)検出手段を設け、これらで土の湿潤密度と水分密度(含水量)を把握することで地山崩落面の予測を行うこととした。
【0023】
前記土の湿潤密度検出手段と水分密度(含水量)検出手段は、ガンマ線と中性子線を発信する線源棒40と、前記線源棒40の放射線源40aから発せられたガンマ線と中性子線を受信し、放射線量から土の湿潤密度と水分密度(含水量)を求める放射線測定手段としての放射線検出器41とからなる。
【0024】
このように土の湿潤密度検出手段と水分密度(含水量)検出手段は、線源棒40を設けてシールド機15の前部からガンマ線と中性子線を発し、線源棒40から出たガンマ線と中性子線が、土の中を進行する過程で散乱を繰り返し、放射線検出器41に到達する放射線量から湿潤密度と含水量を求めるものである。
【0025】
測定方式は、湿潤密度はガンマ線後方散乱方式、含水量は速中性子後方散乱方式で、測定範囲は湿潤密度:1.20〜2.50g/cm3、含水量:0.05〜0.80g/cm3である。
【0026】
線源は、ガンマ線源:60Co(コバルト)、強さ:2.6MBq以下、密度測定、半減期:5.27年、中性子線源:252Cf(カリフォルニウム)、強さ:1.1MBq、密度測定、半減期2.65年で、測定時間:1分〜5分とする。
【0027】
放射線検出器41は、ガンマ線についてはSCカウンター、中性子線については:3He(ヘリウム−3)管とし、計数回路はガンマ線:0〜999999 cpm 中性子:0〜999999cpm、で、演算値は、湿潤密度・水分密度・乾燥密度・含水比・締固め度・空隙率・飽和度・平均値・最大値・最小値・標準偏差などが可能とした。
【0028】
図3に示すように、前記ガンマ線と中性子線を発信する線源棒40は、前記シールド機15のスキンプレート16の内側に周方向に間隔を存して複数個設け、放射線の放射方向がそれぞれ異なるようにする。
【0029】
図示の例では、放射線が鉛直上方に向かうように発せられるものを中心に左右に30°間隔で、4個ずつ、計9個を配置している。
【0030】
図4図5に示すように、線源棒40は鉛遮蔽体42で囲繞し、さらに、両側には油圧ジャッキ43を配して、渡し板44により線源棒40を移動させるようにして線源棒40のスキンプレート16の外方への突出装置45を付加した。
【0031】
その際、線源棒40には距離計46を設けた。
【0032】
次に前記装置を使用して行う本発明方法について説明する。前記RIによる土の湿潤密度検出手段と水分密度(含水量)検出手段は、測定対象との間に遮蔽物があってもキャリブレーション実験により測定結果の補正ができ、シールド機15のスキンプレート16程度であれば透過するので、シールド機15内からの地山測定が可能である。
【0033】
具体的には、シールド掘削中で図5に示すようにスキンプレート16内面に線源棒40と放射線検出器41を密着させた構成としている。
【0034】
線源棒40から出たガンマ線と中性子線が、土の中を進行する過程で散乱を繰り返し、放射線検出器41に到達する放射線量から湿潤密度と含水量を求めることができ、これらから緩みが検出できる。
【0035】
図6は本発明による緩み評価の流れを示すもので、前記RIによる土の湿潤密度検出手段と水分密度(含水量)検出手段のスキンプレート16に対するキャリブレーション実験を行い、シールド掘削中の測定(機内測定)を行う。
【0036】
このように緩みと疑われる密度・水分量であるかをリアルタイムに判定する。
【0037】
ところで緩みが検出された時は、対策のためにシールド掘削を止めて、その緩みをより精査する段階へと進む。
【0038】
図6に示すように、緩みと判定された場合、シールド掘削停止→精査の実施(機外測定)および貫入試験の実施→緩み状況の把握、対策の実施となる。
【0039】
精査の段階ではシールドの回転が止まっていることから、図4に示すように突出装置45により線源棒40をスキンプレート16の外方へ突出させて地山に挿入し、より正確な測定が行える。
【0040】
また、線源棒40の地山への貫入抵抗も緩み評価の指標として有用である。突出装置45の油圧ジャッキ43による線源棒40の押込み機構には、その反力を測定可能な圧力センサー(図示せず)を備え、貫入抵抗の測定を可能としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明のシールド機の切羽地山緩み検出方法で使用する装置の1実施例を示す説明図である。
図2図1のA線およびB線断面図である。
図3図1のC線断面図である。
図4】本発明で使用するシールド機の切羽地山緩み検出装置のシールドの回転停止状態を示す側面図である。
図5】本発明で使用するシールド機の切羽地山緩み検出装置のシールド掘削中の状態を示す側面図である。
図6】本発明による緩み評価の流れを示す説明図である。
図7】従来例を示すもので、シールド機の前部の斜視図である。
図8】従来例を示すもので、カッタフェイスの正面図である。
図9】従来例を示すもので、シールド機と地山の状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…シールド機
3…カッタフェイス
5…スキンプレート
7a〜7f…超音波センサ
9、10…回転角度検出器
11…崩落面
13…崩落部
15…シールド機
16…スキンプレート
17…カッタフェイス
18…カッタービット
19…特殊先行ビット
20…最外周特殊先行ビット
21…外周側面保護ビット
22…トリムビット
23…注入管
24…コピーカッタ
25…カッタ旋回電動モータ
26…排土機構
27…注入管
28…ゲート開閉ジャッキ
29…スクリュ旋回モータ
30…シールドジャッキ
31…中折れジャッキ
32…エレクタ
33…注入管
34…テールパッキン
36…セグメント
37…形状保持装置
38…土圧計
39…マンホール
40…線源棒
40a…放射線源
41…放射線検出器
42…鉛遮蔽体
43…油圧ジャッキ
44…渡し板
45…突出装置
46…距離計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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