(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ディーゼルエンジンであるエンジンと,前記エンジンにより駆動される発電機本体と,前記発電機本体に主供給回路を介して接続された出力端子台を備え,前記出力端子台に接続された電気機器に対し,前記発電機本体で発生した電力を供給可能に構成したエンジン駆動発電機において,
前記エンジンの排気路中に設けられ,酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタを備えた連続再生型の排気ガス後処理装置と,
前記ディーゼルパティキュレートフィルタに対する粒子状物質の堆積量が所定の堆積量となったとき,前記エンジンに対する吸気絞りを行って該エンジンの排気ガス温度を上昇させ前記排気ガス後処理装置の強制再生を実行する強制再生手段と,
前記発電機本体が発電した電力によって作動する電気ヒータを設け,
前記吸気絞りを伴った前記エンジンの運転時において前記酸化触媒の入口温度が前記酸化触媒に堆積した粒子状物質の燃焼温度以上となる前記発電機本体の発電電力を最低発電電力として予め求めておき,前記電気ヒータの消費電力を前記最低発電電力以上に設定し,
前記強制再生手段による前記強制再生の実行中,前記エンジンの運転状態を監視して,前記エンジンが所定の低負荷量運転状態にあるときに前記電気ヒータをONにし,前記エンジンに所定の必要負荷量以上の負荷がかかったときに前記電気ヒータをOFFとすることを特徴とするエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生方法。
前記強制再生の開始から所定時間が経過した後,前記強制再生の終了まで,前記エンジンに対する燃料の追加噴射を行うことを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生方法。
前記エンジンの運転状態の監視を,エンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit)が出力する負荷率信号又は燃料噴射量信号,前記エンジンの排気温度,前記排気ガス後処理装置内の温度,又は,主供給回路を流れる電流値のいずれか1つ,又は2つ以上の組合せに基づいて行うことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生方法。
前記エンジンが前記低負荷運転状態を所定時間継続したときに前記電気ヒータをONにすることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載のエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生方法。
前記エンジンにかかる負荷が前記必要負荷量以上となったとき,直ちに前記電気ヒータをOFFにすることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載のエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生方法。
ディーゼルエンジンであるエンジンと,前記エンジンにより駆動される発電機本体と,前記発電機本体に主供給回路を介して接続された出力端子台を備え,前記出力端子台に接続された電気機器に対し,前記発電機本体で発生した電力を供給可能に構成したエンジン駆動発電機において,
前記エンジンの排気路中に設けられ,酸化触媒とディーゼルパティキュレートフィルタを備えた連続再生型の排気ガス後処理装置と,
前記ディーゼルパティキュレートフィルタに対する粒子状物質の堆積量が所定の堆積量となったとき,前記エンジンに対する吸気絞りを行って該エンジンの排気ガス温度を上昇させて前記排気ガス後処理装置の強制再生を実行する強制再生手段と,
前記発電機本体が発電した電力によって作動する電気ヒータを設けると共に,
前記吸気絞りを伴った前記エンジンの運転時において前記酸化触媒の入口温度が前記酸化触媒に堆積した粒子状物質の燃焼温度以上となる前記発電機本体の発電電力を最低発電電力として予め求めておき,前記電気ヒータの消費電力を前記最低発電電力以上に設定し,
前記強制再生手段に,前記強制再生手段による前記強制再生の実行中,前記エンジンの運転状態を監視し,前記エンジンが所定の低負荷運転状態にあるときに前記電気ヒータをONにし,前記エンジンに所定の必要負荷量以上の負荷がかかったときに前記電気ヒータをOFFとするヒータ制御手段を設けたことを特徴とするエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生装置。
前記強制再生手段が,前記強制再生の開始から所定時間が経過した後,前記強制再生の終了まで,前記エンジンに対する燃料の追加噴射を行うことを特徴とする請求項9記載のエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生装置。
前記制御信号出力手段が,前記エンジンのエンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit),前記エンジンの排気温度又は前記排気ガス後処理装置内の温度を検知する温度検知手段,及び,前記主供給回路に取り付けた変流器のいずれか1つ,又は2つ以上の組合せからなり,
前記制御信号が,前記ECUの負荷率信号又は燃料噴射量信号,前記温度検知手段の温度検知信号,及び前記変流器の二次電流のいずれか1つ,又は2つ以上の組合せであることを特徴とする請求項14記載のエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生装置。
前記開閉手段が,1又は複数の前記制御信号に基づいて前記エンジンの負荷状態を判断して開閉動作を制御するコントローラを備えることを特徴とする請求項15記載のエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生装置。
前記ヒータ制御手段が,前記エンジンが前記低負荷運転状態を所定時間連続したときに前記電気ヒータをONにすることを特徴とする請求項9〜16いずれか1項記載のエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生装置。
前記ヒータ制御手段が,前記エンジンにかかる負荷が前記必要負荷量以上となったとき直ちに前記電気ヒータをOFFにすることを特徴とする請求項9〜17いずれか1項記載のエンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生装置。
【背景技術】
【0002】
発電機本体と,これを駆動するエンジンを共に備えたエンジン駆動発電機は,商用電源を確保できない屋外の作業現場,例えば土木・建築現場や,屋外イベント会場等で電源を確保する際に使用されていると共に,停電時や災害時における非常用の電源としても使用されている。
【0003】
このようなエンジン駆動発電機では,発電機本体を駆動するエンジンとして一般にディーゼルエンジンが使用されているが,ディーゼルエンジンでは,その構造上,燃焼時にガソリンエンジンと比べて多くのPMが排気ガスと共に排出される。
【0004】
このPMは大気汚染や健康被害の原因となることから,排出ガス規制によりディーゼルエンジンから排出されるPMの規制値(単位出力当りの質量[g/kWh])が定められている。
【0005】
この排出規制に対応するために,ディーゼルエンジンの排気路中には,ディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter: 以下「DPF」という。)と呼ばれるフィルタを備えた排気ガス後処理装置を設け,PMの排出量の低減が図られている。
【0006】
この排気ガス後処理装置は,内蔵するDPFによって排気ガス中のPMを捕集することでPMの排出量を減少させるものであることから,使用を継続することでDPFに対するPMの堆積が進行して目詰まりを起こす。
【0007】
そして,この目詰まりによって排気抵抗が高まると,エンジンの出力低下や燃費の悪化を招くことから,濾材に堆積したPMを除去してDPFを再生する処理が必要となる。
【0008】
このようなDPFの再生方式の1つとして,排気ガス後処理装置内の入口側に酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst:以下「DOC」という)を設け,その下流側にDPFを収容することで,DOCの触媒作用によって連続的にDPFを再生する「連続再生型」と呼ばれる排気ガス後処理装置が提案されている。
【0009】
この連続再生型の排気ガス後処理装置は,エンジンの作動中,排気ガスの熱によりDOCの温度が活性温度以上に上昇すると,DOCの作用によってNO
2を生成し,NO
2を酸化剤としてPMを燃焼させることにより,酸素によるPMの自己燃焼温度よりも低い温度でDPFを再生することができ,エンジンの作動中,排気ガスの熱によりPMを連続的に燃焼させて除去しようというものである。
【0010】
しかし,このような連続再生型の排気ガス後処理装置であっても,エンジンが低負荷の運転状態で長時間運転される等して,排気ガス温度がDOCの活性化温度を下回った状態で長時間運転されると,NO
2が生成されず,PMを燃焼できないことから,DPFに対するPMの堆積が進行する。
【0011】
そして,DPFに対し一定量を超えたPMが堆積して排気抵抗が高まった後に,エンジンが高負荷運転に移行すると,高い排気抵抗の影響により通常の高負荷運転時と比べて排気ガス温度が高温となり,DPFに堆積した多量のPMが自己燃焼を開始して高温を発し,この熱によってDPFにクラックや溶損が発生する。
【0012】
そのため,連続再生型の排気ガス後処理装置においても,DPFに対するPMの堆積量が所定量以上となったとき,燃料の後噴射や噴射時期の遅延により排気ガス温度を上昇させ排気ガス後処理装置内のDOCの温度を活性温度以上に上昇させることで,DPFに堆積したPMを,NO
2を酸化剤として強制的に燃焼させる,強制再生方式を併用することも行われている(特許文献1)。
【0013】
なお,前述した特許文献1に記載の強制再生方式は,自動車の走行中等,エンジンにかかる負荷が変動する状態で行う強制再生(以下,「負荷変動型強制再生」という。)であるところ,このような負荷変動型強制再生を行う場合,エンジンが低負荷運転で排気ガス温度が低い状態で強制再生を開始するとDPFの再生が完了するまでには長時間かかり,また,エンジンの負荷変動に伴い後噴射による燃料噴射量が増減し,或いは一時的な高負荷運転時には後噴射が停止する動作を繰り返すことにより酸化触媒の温度が不安定となって活性温度以上の状態を保持できず,NO
2を安定/継続して生成できずPMを完全に燃焼させることができない場合があること,更には,強制再生の実行中にもかかわらずオペレータがエンジンを停止すると,DPFの再生も中断されることから,DPFに堆積したPMを除去しきれずに依然としてPMの堆積が進行する場合があり,大量に堆積したPMが急激に自己燃焼することでDPF本体や濾材が破損するおそれがある点に鑑み,本出願の出願人は,エンジン駆動圧縮機に設けた排気ガス後処理装置の再生方法として,DPFに所定量以上のPMが堆積したことを表示する警告灯の点灯等に基づき,オペレータにより強制再生の開始を指令するスイッチ操作等が行われることで,エンジンにかかる負荷を一定に維持した状態,従って,DPF内の温度を安定させた状態で行う強制再生(以下,このような強制再生を「定負荷型強制再生」という。)を行う,排気ガス後処理装置の再生方法について出願をしている(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述した排気ガス後処理技術は,自動車のディーゼルエンジンの排気ガス処理を中心として発展してきたものであるが,エンジン駆動発電機等のディーゼルエンジンを搭載する産業機械においてもPMの排出は同様に抑制されるべきものであり,環境に対する負荷の少ない製品の提供が求められる今日において,エンジン駆動発電機でも排気ガス後処理装置の搭載が求められている。
【0016】
しかし,エンジン駆動発電機に対し,前述の連続再生型排気ガス後処理装置をそのまま搭載したところ,DOCの活性性能が比較的早期に低下してしまい,前述した強制再生を行っても,DPFに堆積したPMを十分に燃焼・除去することができなくなるという,自動車に対する搭載時には生じていなかった新たな問題の発生が確認された。
【0017】
このように,DOCの活性性能が低下し,強制再生によってもDPFに堆積したPMを完全に除去することができずに取り残しが生じると,DPFが次の目詰まりを起こす迄の期間が短くなり,燃料の後噴射等を伴う強制再生の実施頻度が増えることで,燃費が悪化すると共に,燃料噴射量の増加に伴って未燃焼燃料の発生量も増加し,このようにして発生した未燃焼燃料がエンジンオイルに混入するオイルダイリューション現象が起こり易く,エンジンオイルの早期劣化やこれに伴うエンジンの損傷が起こり得る。
【0018】
このように,エンジン駆動発電機に搭載した排気ガス後処理装置では,DOCの活性化性能が早期に低下してしまう原因を調べたところ,エンジン駆動発電機に搭載した排気ガス後処理装置では,DPFに対してだけでなく,DOCに対してもPMの堆積が生じていることが確認された。
【0019】
そこで,更に,DOCに対しPMが堆積する原因を検討したところ,エンジン駆動発電機のディーゼルエンジンと自動車に搭載されるディーゼルエンジンとでは使用態様が相違することにより,エンジン駆動発電機のエンジンの方が,自動車に搭載されているディーゼルエンジンに比較して,排気ガスの下限温度が低くなることが原因であるとの結論に至った。
【0020】
すなわち,エンジンの燃焼室内における燃焼温度や排気ガス温度は,エンジンにかかる負荷が増大する程高くなり,逆にエンジンにかかる負荷が減少する程低くなるところ,自動車では,長時間の駐車や停車を行う場合にはエンジンについても停止するため,エンジンが長時間無負荷運転(アイドリング運転)を継続することは希である一方,低速走行等の低負荷での運転が行われている場合でも,エンジンは車重が加わった車輪を回転させていることから,ある程度負荷がかかった状態で運転され,排気ガス温度はある程度高い温度に維持されている。
【0021】
これに対し,エンジン駆動発電機では,接続された電気機器を停止する等して電力の消費が行われていない状態にあっても,電気機器の次回の起動に備えエンジンを停止せずに待機運転が行われており,また,比較的消費電力が少ない電気機器が1つでも接続されて使用されていればエンジンを停止せずに運転を継続する場合があることから,電力を消費していない状態での運転,又は,消費電力が僅かな状態での運転が比較的長時間,継続して行われ得る。
【0022】
そして,発電機本体の回転に必要なトルクは,発電機本体の出力電力の増加と共に増大し,出力電力がゼロのときにはエンジンには殆ど負荷がかかっていないため,エンジン駆動発電機に搭載されているエンジンは,自動車のエンジンに比較してより低負荷での運転,従って,エンジンの排気ガス温度がより低い状態での運転が常態で行われ得る。
【0023】
ここで,使用するDOCの性能等による差はあるものの,DOCに堆積したPMを燃焼させるためには,DOCの入口付近の温度を一般に約350℃以上,好ましくは400℃以上に上昇させることが必要となる。
【0024】
これに対し,DOCの活性性能の低下が確認されたエンジン駆動発電機のDOC入口温度を測定したところ,燃料の後噴射を行っていない通常運転時の排気温度はもちろん,燃料の後噴射を行って排気温度を上昇させた強制再生時においても,発電機の発電電力が低い運転状態,従って,エンジンが低負荷の状態で運転されている場合には,DOCの入口温度がPMの燃焼に必要な温度に達していないことが確認された。
【0025】
そのため,エンジン駆動発電機に搭載した排気ガス後処理装置では,燃料の後噴射を行って排気ガス温度を上昇させても,DPFの再生を行う以前にDOCに堆積したPMを除去することができておらず,しかも,このような燃料の後噴射を行って排気ガス中の未燃燃料を増大させると,DOCに堆積したPMにこの未燃燃料が付着して更なるPMの堆積が助長されるという悪循環を引き起こすことが確認された。
【0026】
その結果,DOCの活性性能が低下して,DPFに堆積したPMについても除去することができないという更なる悪循環が引き起こされる。
【0027】
このような問題に対し,本発明の発明者らは,前述した悪循環を断つために,燃料の後噴射を行わずに排気ガス温度を上昇させることで先にDOCに堆積したPMを燃焼・除去してDOCを再生した後に,燃料の後噴射を行ってDPFの再生を行うという,二段階の処理を伴った新規な再生方法を試みた。
【0028】
そして,DOCの再生時,燃料の後噴射を伴わずに排気ガス温度を上昇させるために,エンジンの吸気を絞ることを試みた。
【0029】
しかし,表1及び
図5に示すように,エンジンが低負荷の運転状態にある場合,吸気絞りのみによってはDOCの入口温度を,DOCに堆積したPMの燃焼温度以上(350℃以上,好ましくは400℃以上)に上昇させることができない場合があり,DOCの再生という新たな課題の達成には,更なる工夫が必要であることが判明した。
【0030】
【表1】
【0031】
本発明は,DOCを搭載した連続再生型の排気ガス後処理装置を,自動車ではなくエンジン駆動発電機に搭載したことで新たに生じた前述の問題を解消するために成されたものであり,比較的簡単な方法,装置構成により,前述した強制再生時に排気ガス後処理装置に設けたDOCに堆積したPMを確実に除去できるようにすることで,DOCの活性性能が低下することを防止し,これにより強制再生時にDPFに堆積したPMを確実に除去してDPFの再生を行うことができるようにすることで,DPFの再生不良に伴う強制再生の頻度過多や,これに伴う燃費の悪化,オイルダイリューションの発生等を防止し得る,エンジン駆動発電機における排気ガス後処理装置の再生方法,及び前記方法を実施するための再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0033】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動発電機1における排気ガス後処理装置の再生方法は,
ディーゼルエンジンであるエンジン20と,前記エンジン20により駆動される発電機本体3と,前記発電機本体3に主供給回路70を介して接続された出力端子台71を備え,前記出力端子台71に接続された電気機器5に対し,前記発電機本体3で発生した電力を供給可能に構成したエンジン駆動発電機1において,
前記エンジン20の排気路中に設けられ,酸化触媒(DOC)とディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備えた連続再生型の排気ガス後処理装置7と,
前記DPFに対するPMの堆積量が所定の堆積量となったとき,前記エンジン20に対する吸気絞りを行って該エンジン20の排気ガス温度を上昇させて前記排気ガス後処理装置の強制再生を実行する強制再生手段と,
前記発電機本体3が発電した電力によって作動する,例えば,前記エンジン20の冷却水を加熱するための電気ヒータ44を設け,
前記吸気絞りを伴った前記エンジン20の運転時において前記DOCの入口温度が前記DOCに堆積したPMの燃焼温度以上となる前記発電機本体3の発電電力を最低発電電力として予め求めておき,前記電気ヒータ44の消費電力を前記最低発電電力以上に設定し,
前記強制再生手段による前記強制再生の実行中,前記エンジン20の運転状態を監視して,前記エンジンが所定の低負荷量運転状態にあるときに前記電気ヒータ44をONにし,前記エンジン20に所定の必要負荷量以上の負荷がかかったときに前記電気ヒータ44をOFFとすることを特徴とする(請求項1)。
【0034】
前記強制再生において,前記強制再生の開始から所定時間が経過した後,前記強制再生の終了まで,前記エンジン20に対する燃料の追加噴射を行うものとしても良い(請求項2)
【0035】
なお,本発明において「追加噴射」とは,主噴射の後に行われる追加の燃料噴射であって排気ガス温度を上昇させる効果のある燃料噴射全般を含み,主噴射との間に燃料を噴射していない時間が明確に存在する後噴射,ポスト噴射,アフター噴射(JIS D 0116-5:2008)のみならず,主噴射と連続して行う燃料噴射をも含む。
【0036】
上記強制再生は,
前記主供給回路70を開閉する遮断器72を設け,
前記遮断器72を閉じた状態(出力端子台71に電力を出力可能とした状態)で行うようにしても良く(請求項3),又は,前記遮断器72を開いた状態(出力端子台71に対する出力を断った状態)で行うものとしても良い(請求項4)。
【0037】
更に,前記主供給回路70を開閉する遮断器72を設け,
前記DPFに対するPMの堆積量が所定の第1堆積量となったとき,前記遮断器72を閉じた状態(出力端子台71に電力を出力可能とした状態)で前記強制再生を行うと共に,
前記DPFに対するPMの堆積量が,前記第1堆積量よりも多い所定の第2堆積量となったとき,前記遮断器72を開いた状態(出力端子台71に対する電力供給を断った状態)で前記強制再生を行うようにしても良い(請求項5)。
【0038】
前述したエンジン20の運転状態の監視は,エンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit)が出力する負荷率信号又は燃料噴射量信号,前記エンジンの排気温度,前記排気ガス後処理装置内の温度,又は,主供給回路70を流れる電流値のいずれか1つ,又は2つ以上の組み合わせに基づいて行うものとすることができる(請求項6)。
【0039】
前記電気ヒータ44のON操作は,前記エンジン20が前記低負荷運転状態を所定時間継続したときに行うことが好ましく(請求項7),前記電気ヒータ44のOFF操作は,前記エンジン20にかかる負荷が前記必要負荷量以上となったとき,直ちに行うことが好ましい(請求項8)。
【0040】
また,本発明の排気ガス後処理装置の再生装置は,
ディーゼルエンジンであるエンジン20と,前記エンジン20により駆動される発電機本体3と,前記発電機本体3に主供給回路70を介して接続された出力端子台71を備え,前記出力端子台71に接続された電気機器5に対し,前記発電機本体3で発生した電力を供給可能に構成したエンジン駆動発電機1において,
前記エンジン20の排気路中に設けられ,酸化触媒(DOC)とディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備えた連続再生型の排気ガス後処理装置7と,
前記DPFに対するPMの堆積量が所定の堆積量となったとき,前記エンジン20に対する吸気絞りを行って該エンジンの排気ガス温度を上昇させて前記排気ガス後処理装置7の強制再生を実行する強制再生手段と,
前記発電機本体3が発電した電力によって作動する,例えば前記エンジン20の冷却水を加熱するための電気ヒータ44を設けると共に,
前記吸気絞りを伴った前記エンジン20の運転時において前記DOCの入口温度が前記DOCに堆積したPMの燃焼温度以上となる前記発電機本体3の発電電力を最低発電電力として予め求めておき,前記電気ヒータ44の消費電力を前記最低発電電力以上に設定し,
前記強制再生手段に,前記強制再生手段による前記強制再生の実行中,前記エンジン20の運転状態を監視し,前記エンジンが所定の低負荷運転状態にあるときに前記電気ヒータ44をONにし,前記エンジン20に所定の必要負荷量以上の負荷がかかったときに前記電気ヒータ44をOFFとするヒータ制御手段30を設けたことを特徴とする(請求項9)。
【0041】
前記強制再生手段が,前記強制再生の開始から所定時間(一例として10分)が経過した後,前記強制再生の終了まで,前記エンジン20に対する燃料の追加噴射を行うものとしても良い(請求項10)。
【0042】
更に,前記主供給回路70を開閉する遮断器72を設け,
前記強制再生手段が,前記遮断器72を閉じた状態(出力端子台71に対する電力供給を可能にした状態)で前記強制再生を行うように構成することができ(請求項11),又は,前記強制再生手段が,前記遮断器72を開いた状態(出力端子台71に対する電力供給を断った状態)で前記強制再生を行うように構成することもできる(請求項12)。
【0043】
この場合,前記強制再生手段に,
前記DPFに対するPMの堆積量を判定する堆積状態判定手段82と,
前記堆積状態判定手段82が,前記DPFに対するPMの堆積量が所定の第1堆積量になったと判定したとき,前記遮断器72を閉じた状態(出力端子台に対し電力供給を可能とした状態)で前記強制再生を行う,負荷変動型強制再生実行手段83と,
前記堆積状態判定手段82が,前記DPFに対するPMの堆積量が,前記第1堆積量よりも多い所定の第2堆積量になったと判定したとき,前記遮断器72を開いた状態(出力端子台に対する電力供給を断った状態)で前記強制再生を行う定負荷型強制再生実行手段84とを設けることができる(請求項13)。
【0044】
前記ヒータ制御手段30は,
前記発電機本体3と前記電気ヒータ44間を接続するヒータ用電源回路74を開閉する開閉手段32と,
前記開閉手段32の動作を制御する制御信号を出力する制御信号出力手段によって構成することができ(請求項14),
この制御信号出力手段としては,前記エンジン20のエンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit),前記エンジンの排気温度又は前記排気ガス後処理装置内の温度を検知する温度検知手段,及び,前記主供給回路70に取り付けた変流器31のいずれか1つ,又は2つ以上を組み合わせて使用することができ,前記制御信号として,前記ECU80の負荷率信号又は燃料噴射量信号,前記温度検知手段の温度検知信号,及び前記変流器31の二次電流のいずれか1つ,又は2つ以上を組み合わせて使用することができる(請求項15)。
【0045】
この場合,前記開閉手段32に,1又は複数の前記制御信号に基づいて前記エンジン20の負荷状態を判断して開閉動作を制御するコントローラ32aを設けるものとしても良い(請求項16)。
【0046】
前記ヒータ制御手段30は,前記エンジン20が前記低負荷運転状態を所定時間連続したときに前記電気ヒータ44をONにするように構成しても良く(請求項17),前記エンジン20にかかる負荷が前記必要負荷量以上となったときには,直ちに前記電気ヒータ44をOFFにするように構成しても良い(請求項18)。
【発明の効果】
【0047】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の再生装置によってエンジン駆動発電機1に搭載した排気ガス後処理装置7を再生したことで,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0048】
吸気絞りを伴ったエンジンの運転時においてDOCの入口温度がDOCに堆積したPMの燃焼温度以上となる発電機本体3の発電電力を最低発電電力として予め求めておき,この最低発電電力以上の消費電力を有する電気ヒータ44を設け,強制再生手段によるエンジン20の吸気絞りを伴った排気ガス後処理装置7の強制再生の実行時に,エンジン20が所定の低負荷運転状態にあるきに前記電気ヒータ44をONにすることで,電気ヒータ44の消費電力分,発電機本体3の発電量が増加してエンジン20にかかる負荷が増大することで,排気ガス後処理装置7に設けたDOCの入口温度を,燃料の追加噴射を行うことなく,DOCに堆積したPMを燃焼させるために必要な温度以上に確実に上昇させることができた。
【0049】
特に,前記電気ヒータ44が,エンジン20の冷却水を加熱するためのヒータである場合,冷却水の加熱によってエンジン20が暖まることによってもエンジン20の排気ガス温度を上昇させることができた。
【0050】
このようにして,PMの更なる堆積を助長するおそれがある燃料の追加噴射を断った状態で,DOCの入口温度を,DOCに堆積したPMを燃焼させるために必要な温度以上に上昇させることで,DOCの活性性能を原状あるいは原状近くまで回復させることができ,その結果,強制再生時にDPFの再生不良が発生することを防止でき,DPFが早期に目詰まりを生じて強制再生の頻度過多や,これに伴う燃費の悪化,オイルダイリューション等の発生を好適に防止することができた。
【0051】
なお,前述した強制再生は,エンジン20の吸気絞りと,電気ヒータ44のON,OFF制御のみで行うものとしても良いが,好ましくは前述したように,前記強制再生の開始から所定時間が経過した後,前記強制再生の終了まで,エンジン20の吸気絞りや電気ヒータのON,OFF制御と共に,前記エンジン20に対する燃料の追加噴射を行うものとしても良い。この構成では,DOCに対するPMの堆積を助長するおそれのある燃料の追加噴射を行わずに,エンジン20の吸気制御と電気ヒータ44のON,OFFによる排気ガス温度制御によって,先ず,DOCに堆積したPMを除去してDOCの活性性能を回復させておき,その後,DPFに堆積したPMの除去に効果的な燃料の追加噴射を行うことで,DOCの再生と,これに続くDPFの再生をより効率良く行うことができた。
【0052】
主供給回路70に遮断器72を設け,この遮断器72を閉じた状態を維持して出力端子台71に対する電力を供給可能とした状態で前述した強制再生を行うことで,電気機器5に対する電力の供給を継続したまま強制再生を行う,従来技術として説明した負荷変動型の強制再生を行うことができた。
【0053】
また,前記遮断器72を開いた状態,従って,出力端子台71に対する電力供給を断った状態で強制再生を行うことで,電気ヒータ44の消費電力に対応する負荷のみがかかった,定負荷状態で強制再生を行うことで,排気温度が安定した状態で強制再生を行う,本願出願人の先行出願技術として説明した定負荷型の強制再生を容易に実行することができた。
【0054】
なお,前述した遮断器72を閉じた状態で行う強制再生と,遮断器72を開いた状態で行う強制再生を,DPFに対するPMの堆積量(第1堆積量,第2堆積量)に応じて段階的に行う構成では,排気ガス後処理装置7の再生をより確実に行うことができた。
【0055】
前述の電気ヒータ44のON,OFFを制御するヒータ制御手段30は,前記発電機本体3と前記電気ヒータ44間を接続するヒータ用電源回路74を開閉する開閉手段32と,前記開閉手段32の動作を制御する制御信号を出力する制御信号出力手段という,比較的簡単な構造によって実現可能であり,前述の制御信号出力手段として,ECU80,エンジンの排気温度又は排気ガス後処理装置内の温度を検知する温度検知手段等,既存のエンジン駆動発電機1に設けられている構成を利用することで,装置構成の簡略化と部品点数の減少に伴う低コスト化を実現することができた。
【0056】
前述のヒータ制御手段30が,エンジンが低負荷運転状態を所定時間継続したときに前記電気ヒータをONにする構成にあっては,瞬間的な消費電力の増減によって電気ヒータ44のON,OFFが無駄に行われることを防止でき,これにより構成機器の寿命を延ばすことかできた。
【0057】
一方,電気ヒータ44をOFFとするタイミングを遅延させた場合,エンジン駆動発電機1の定格出力に対応する電気機器5を出力端子台71に接続すると,電気ヒータ44の消費電力分,電力消費量が過剰となってしまうこととなるが,前述したようにエンジン20にかかる負荷が所定の必要負荷量以上となったときに直ちに電気ヒータ44をOFFにする構成としたことで,このような問題が生じることもない。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に,添付図面を参照しながら,本発明の排気ガス後処理装置の再生装置を備えたエンジン駆動発電機について説明する。
【0060】
〔エンジン駆動発電機の基本構成〕
図1は排気ガス後処理装置を備えたエンジン駆動発電機1の概略図であり,図示の例において,エンジン駆動発電機1は,フレーム11とボンネット12によって構成されたパッケージ10内に必要な機器を収容したパッケージ型のエンジン駆動発電機1として構成している。
【0061】
パッケージ10を構成する前述のフレーム11は,エンジン駆動発電機1の構成機器を搭載するための基台であり,このフレーム11上に,エンジン(水冷式のディーゼルエンジン)20,前記エンジン20によって駆動される発電機本体3の他,冷却ファン21,ラジエータ22,マフラー23,エンジン20の冷却水を加熱する電気ヒータ44,その他のエンジン駆動発電機1の構成機器を搭載すると共に,これらの機器を搭載したフレーム11上を箱型のボンネット12によって覆うことでパッケージ化している。
【0062】
前述のパッケージ10内の空間は,仕切壁13によって作業機室10aと排風室10bの2室に区画されており,このうちの作業機室10a内にはエンジン20や発電機本体3を収容すると共に,排風室10b内にはエンジンの排気系統を構成する機器のうち,マフラー23と,エンジン20の冷却水を加熱する電気ヒータ44を収容している。
【0063】
図示の実施形態において,エンジン20の排気系統は,エンジン20の排気口に接続された排気ガス後処理装置7,前記排気ガス後処理装置7に接続された排気管27,前記排気管27に接続されたマフラー23によって構成されており,このうちの排気ガス後処理装置7と排気管27を前述した作業器室10a内に配置すると共に,マフラー23を排風室10b内に収容する構成としている。
【0064】
排気系統を構成する機器の配置は,図示の構成に限定されず,例えば排気ガス後処理装置7をマフラーと共に排風室10b内に収容する構成を採用しても良いが,排気ガス後処理装置7をエンジン20の排気口より離した位置に設ける場合,排気ガス後処理装置7に導入される排気ガス温度が低下してDOCの入口温度が低下してDOCに堆積したPMを燃焼させるためにはエンジン20に対しより大きな負荷をかけることが必要となり燃費の悪化等を招くことから,排気ガス後処理装置7は,図示のようにエンジン20の排気口近くに配置した構成とすることが好ましい。
【0065】
前述の仕切壁13には,作業機室10aと排風室10bとを連通する連通口14が開口しており,この連通口14に対向してエンジン20を冷却した冷却水を熱交換するラジエータ22を配置し,このラジエータ22に向かう冷却風を発生させる冷却ファン21を作業機室10a内に配置している。
【0066】
従って,冷却ファン21が回転して冷却風が発生すると,作業機室10a内の空気がラジエータ22を通過して,ラジエータ22内の冷却水と熱交換された後,排風室10bに導入され,排風室10bの上部に設けられた放気口15を介してパッケージ10外に放出される。
【0067】
〔冷却水の循環流路及び電気ヒータ〕
水冷式のディーゼルエンジンである前述のエンジン20には,シリンダーブロック等に冷却水の流路となるウォータジャケット25が形成されていると共に,このウォータジャケット25内を通過した冷却水を熱交換によって冷却するためのラジエータ22が設けられており,従って,前記ウォータジャケット25とラジエータ22間が配管等によって連通されて,冷却水の循環流路が形成されている。
【0068】
この冷却水の循環流路の構成例を,
図2に示す。
図2に示すように,この冷却水の循環通路は,前述のウォータジャケット25を流路の一部とし,このウォータジャケット25に対する冷却水の循環を行うためのエンジン側流路40と,前述のラジエータ22を流路の一部とし,前記エンジン側流路40より導入された冷却水を,ラジエータ22を通過させた後に,再度,エンジン側流路40に戻すラジエータ側流路50によって構成されている。
【0069】
前述のエンジン側流路40は,図示の例ではウォータジャケット25と,前記ウォータジャケット25の入口25aに一端41aが連通された入口流路41,前記ウォータジャケット25の出口25bに一端42aが連通された出口流路42,及び,前記出口流路42の他端42bとサーモスタット26を介して一端43aを連通すると共に,前記入口流路41の他端41bに他端43bを連通するバイパス流路43を備えており,前述の入口流路41に,流路内で冷却水の流れを生じさせる冷却水ポンプ47を設けている。
【0070】
このように構成されたエンジン側流路40には,更に,エンジン側流路40内を流れる冷却水を加熱する電気ヒータ44を設けており,図示の例では,前述の出口流路42に連通された分岐流路46と,バイパス流路43に連通されたる分岐流路45を設け,この分岐流路45,46間に電気ヒータ44を設けている。
【0071】
この電気ヒータ44はヒータ本体441とこのヒータ本体441を包囲して内部に冷却水を導入するケース442を備え,このケース442を介して分岐流路45と分岐流路46を接続することで,出口流路42より分岐流路46を介してケース442内に導入された冷却水をヒータ本体441によって加熱した後,分岐流路45を介してバイパス流路43に導入することができるように構成されている。
【0072】
なお,
図2の例では電気ヒータ44を,出口流路42に連通した分岐流路46と,バイパス流路43に連通した分岐流路45間に設ける構成を示したが,電気ヒータ44は,前記構成に限定されず,入口流路41,出口流路42,あるいはバイパス流路43に設けるものとしても良く,また,分岐流路45,46を設けることなく,これらの流路41,42,43中に直接設けるものとしても良く,エンジン側流路40内の冷却水を加熱することができるものであれば,いずれの位置に設けても良い。もっとも,好ましくは,ウォータジャケット25に導入する前の冷却水を加熱することができるよう,バイパス流路43又は入口流路41に設ける。
【0073】
上記電気ヒータ44としては,後述する「最低発電電力」以上の消費電力を有するものを選定することが必要である。
【0074】
この「最低発電電力」とは,本発明の再生装置を搭載するエンジン駆動発電機1を運転して実測する等して予め求めておくもので,後述する強制再生手段による吸気制御が行われたエンジン20の運転状態において,発電機本体3によって発電される電力量を変化(消費電力を変化)させてDOCの入口温度の変化を測定する等して,発電された電力量の変化とDOC入口温度の変化の対応関係を求め,この対応関係より,DOCの入口温度が,DOCに堆積したPMの燃焼に必要な温度となる,発電機本体3の発電電力を,前述した「最低発電電力」として予め取得しておく。
【0075】
一例として,表1に示した測定結果に基づいて電気ヒータ44の消費電力を設定する場合を例にとり説明する。なお,使用するDOCの性能等によっても相違するが,DOCに堆積したPMの燃焼に必要なDOCの入口温度は一例として約350℃以上であり,より好ましくは400℃以上である。
【0076】
図5は,表1に示した測定結果をグラフにしたものであり,
図5のグラフより,吸気絞り時のエンジン20では,発電機本体3が約9kWの発電時にDOCの入口温度は約350℃を達成していることから,このエンジン駆動発電機1において,前述した「最低発電電力」は9kWであり,このエンジン駆動発電機1に搭載する電気ヒータ44としては,消費電力が9kW以上のもの,例えば10kWのものを選定する。
【0077】
このように,上記測定に使用したエンジン駆動発電機では,電気ヒータ44として消費電力が9kW以上,一例として10kWの消費電力の電気ヒータを設けることで,この電気ヒータ44を発電機本体3に接続した状態で,かつ吸気を絞った状態でエンジン20の運転を行えば,燃料の追加噴射を行うことなくDOCの入口温度を確実に350℃以上の温度(377℃:表1参照)に迄上昇させることができ,DOCに堆積したPMを燃焼させてDOCの活性性能を維持することができる。
【0078】
前述のラジエータ側流路50は,
図2の例ではラジエータ22と,このラジエータ22の導入口22aに一端51aが連通された導入流路51と,前記ラジエータ22の排出口22bに一端52aが連通された排出流路52によって構成され,このうちの導入流路51の他端51bを,サーモスタット26を介してエンジン側流路40の出口流路42の他端42bに連通すると共に,排出流路52の他端52bをエンジン側流路40の入口流路41の他端41bに連通している。なお,前述したサーモスタット26は冷却水の温度に応じてラジエータ側流路50へ導入する冷却水量を調整するもので,エンジン20内の冷却水温度が所定の温度(例えば80℃)以上となるまで,ラジエータ側流路50に対する冷却水の導入を行わずに,エンジン側流路40内のみで冷却水を環流させる。
【0079】
〔強制再生手段〕
前述した排気ガス後処理装置7は,
図3に示すように,エンジン20の排気口側に接続される入口7aと,排気管27に接続される出口7bを備えたケーシング内に,入口7a側に酸化触媒(DOC)を収容すると共に,出口7b側にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を収容した,所謂「連続再生型」として構成されたもので,本発明のエンジン駆動発電機1には,この排気ガス後処理装置7のDPFに対しPMが所定の堆積量以上堆積したとき,エンジン20の吸気を絞って排気ガス温度を上昇させる,強制再生を実行するための強制再生手段が装備されている。
【0080】
この強制再生手段としては,前述してエンジン20の吸気絞りと,後述する電気ヒータ44のON,OFF制御のみで排気ガス温度を必要な温度に上昇させて,前述したDOCに堆積したPMの燃焼のみならず,DPFに堆積したPMの燃焼についても併せて行うものとしても良いが,本実施形態の強制再生手段では,強制再生を開始してから所定の時間(一例として10分)が経過する迄は,前述したエンジンの吸気絞りと電気ヒータ44のON,OFF制御のみで強制再生を実行してDOCに堆積したPMを燃焼させ,その後,エンジン20の吸気絞りと電気ヒータ44のON,OFF制御に加え,更にエンジン20に対する燃料の追加噴射を行うことで,DPFに堆積したPMを燃焼させる構成を採用している。
【0081】
すなわち,強制再生の開始後,所定の時間が経過する迄は,DOCの再生に悪影響を与えるおそれのある燃料の追加噴射を断った状態でDOCを再生してその活性性能を確実に回復させておき,その後,DPFに堆積したPMの除去に効果的な燃料の追加噴射を開始することで,排気ガス後処理装置7の再生を効率的に行うことができるものとなっている。
【0082】
本実施形態にあっては,発電機本体3を駆動するエンジン20の運転を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)80に,エンジン20に設けた燃料噴射装置28を制御する燃料噴射制御手段85を実現させているだけでなく,強制再生時に,強制再生手段を構成する各部の動作を制御する,強制再生制御部81を実現させている(
図4参照)。
【0083】
ここで,前述の燃料噴射制御手段85は,エンジン20の燃料噴射装置28に対して出力する燃料噴射量信号を変化させて,エンジン20の燃焼室に対する燃料噴射量,燃料噴射タイミング,追加噴射等を制御するものである。
【0084】
この燃料噴射制御手段85が行う基本的な制御は,消費電力の変化(発電機本体3の発電電力の変化)に伴うエンジン20に対する負荷の増減によっても,回転速度検出手段29が検出する発電機本体3の回転速度が,周波数設定手段65によって設定された所定の周波数(50Hz又は60Hz)の電力を発生させる回転速度に維持されるように,燃料噴射装置28を制御して,エンジン20に対する燃料噴射を変化させる制御であるが,後述する強制再生制御部81による強制再生の実行時には,前記基本制御に加え,燃料噴射装置28に対し,燃料の追加噴射を行わせる制御を行う。
【0085】
また,前述の強制再生制御部81は,排気ガス後処理装置7のDPFに対するPMの堆積量を判定する堆積状態判定手段82と,前記堆積状態判定手段82の判定結果に従い,各部の動作を制御して強制再生を実行する強制再生実行手段(83,84)によって構成されており,出力端子台71に対する電力供給を継続した状態で強制再生を実行する負荷変動型の強制再生と,出力端子台71に対する電力供給を断った状態で強制再生を実行する定負荷型の強制再生という,2種類の異なる強制再生を実行可能とした本実施形態にあっては,前述した強制再生実行手段として,負荷変動型強制再生実行手段83と,定負荷型強制再生実行手段84を設けている。
【0086】
このうちの堆積状態判定手段82は,排気ガス後処理装置7のDPFの入口側に設けられた圧力検出手段Ps2と,DPFの出口側に設けられた圧力検知手段Ps1が検知した圧力の差に基づいて,DPFに対するPMの堆積量を推定する。または,エンジン20の燃料噴射量と負荷率およびエンジン回転速度等の運転状態をエンジン各所に設けた各種センサ等により検出し,各検出値の相関関係をECU80に予め入力された演算式によって,DPFに対するPMの堆積量を推定する。前記どちらか一方のPMの堆積量が予め設定された所定の堆積量に達すると,堆積量判定結果を出力する。
【0087】
本実施形態にあっては,強制再生として,前述した負荷変動型の強制再生と定負荷型の強制再生という,2種類の強制再生を実行可能とすると共に,強制再生の開始条件とするPMの堆積量を,前記2種類の強制再生でそれぞれ異なる量として設定していることから,前述の堆積状態判定手段82を,PMの堆積量が負荷変動型の強制再生の開始条件である第1堆積量以上となったこと,定負荷型の強制再生の開始条件である第2堆積量以上となったことをそれぞれ判定可能に構成している。
【0088】
また,負荷変動型の強制再生,及び,定負荷型の強制再生の終了条件として,DPFに対するPMの堆積量が所定の再生終了量以下となったことを要件とする場合には,この再生終了量以下に低下したことについても判定することができるよう,各判定の基準となる堆積量と,DPF前後の圧力差との対応関係をECU80に設けた記憶手段等に記憶させておく。
【0089】
なお,堆積状態判定手段82の判定結果は,後述する強制再生実行手段83,84に送信する他,
図3及び
図4に示したように,DPFが目詰まり状態になったことを表示する,例えば警告灯,液晶画面,警報器等から成る目詰まり表示手段63を設ける場合には,目詰まり表示手段63に対しても判定結果を出力して,目詰まり状態にあることの警告表示,あるいは,DPFに対するPMの堆積状態等を表示させるようにしても良い。
【0090】
前述した負荷変動型強制再生実行手段83は,堆積状態判定手段82が,DPFに対するPMの堆積量が前述した第1堆積量以上になったと判定した際に起動し,これにより,エンジン20の吸気系(例えばインテークマニホルド:図示せず)に設けた電子制御式の吸気絞り弁24に制御信号を出力してエンジン20の吸気量を絞ると共に,電気ヒータ44の電源回路である後述するヒータ用電源回路74に設けた開閉手段32に対し,該開閉手段32の動作を制御する制御信号(図示の例では,燃料噴射量信号をこの制御信号としても使用)を出力し,エンジン20の負荷状態に応じて電気ヒータ44をON/OFFさせる。
【0091】
また,この負荷変動型強制再生実行手段83は,強制再生の開始から所定時間(一例として10分)の経過後,前述した燃料噴射制御手段85に燃料の追加噴射を開始させる。
【0092】
なお,負荷変動型強制再生実行手段83による強制再生の実行中,後述する主供給回路70に設けた遮断器72(
図3参照)は閉状態に維持され,出力端子台71に接続された電気機器5に対する電力の供給は継続される。
【0093】
また,前述した定負荷型強制再生実行手段84は,本実施形態にあっては,前述した堆積状態判定手段82がDPFに対するPMの堆積量が第2堆積量以上となったことを判定し,かつ,オペレータが入力手段64を操作して定負荷型の強制再生の開始指令を入力したことを条件として起動する。
【0094】
この起動により定負荷型強制再生実行手段84は,後述する主供給回路70に設けた遮断器72(
図3参照)に対し制御信号を出力してこれを開き,出力端子台71に接続された電気機器5に対する電力の供給を停止し,エンジン20の吸気系(例えばインテークマニホルド:図示せず)に設けた電子制御式の吸気絞り弁24に制御信号を出力してエンジン20の吸気量を絞り,更に,前述した燃料噴射制御手段85にエンジン20の回転速度を所定の再生回転速度とする燃料噴射量の制御を実行させると共に,後述する開閉手段32に対し制御信号(図示の例では,燃料噴射量信号をこの制御信号としても使用)を出力して,電気ヒータ44をONにする。
【0095】
また,定負荷型強制再生実行手段84は,強制再生の開始から所定時間(一例として10分)の経過後,前述した燃料噴射制御手段85に燃料の追加噴射を開始させる。
【0096】
なお,
図4に示した例では,前述した遮断器72を電子制御式のものとし,定負荷型強制再生実行手段84からの制御信号によって定負荷型強制再生の実行時,この遮断器72を開くものと説明したが,この遮断器72の開閉操作は,オペレータが手動で行うようにしても良い。
【0097】
この場合,遮断器72が開/閉いずれの位置にあるかを検出する検出手段を設け,定負荷型強制再生実行手段84の起動条件として,前述した入力手段64による定負荷型の強制再生の開始指令の入力の他,遮断器72が開位置にあることを含め,遮断器72が閉位置にある場合,入力手段64による開始指令の入力によっても,定負荷型強制再生が実行されないようにしても良い。
【0098】
なお,前述した負荷変動型強制再生実行手段83及び,定負荷型強制再生実行手段84のいずれ共に,DPFに対するPMの堆積量が,所定の終了堆積量以下となったことを前記堆積状態判定手段82が判定した際に強制再生を終了するように構成しても良く,あるいは,強制再生の開始後,所定時間経過した後に強制再生を終了するように構成しても良く,更には,所定時間の経過と前記終了堆積量以下となったことの判定の双方の条件が満たされたときに終了するように構成するものとしても良い。
【0099】
〔ヒータ制御手段〕
エンジン20の冷却水の循環流路中に設けられた前述の電気ヒータ44は,発電機本体3で発電された電力の供給を受けることができるよう,発電機本体3を電源とする電気回路中に組み込まれていると共に,この電気回路中に,発電機本体3と電気ヒータ間の回路を開閉制御するヒータ制御手段30を設け,電気ヒータ44のON,OFF制御を行うことができるように構成している。
【0100】
このように,電気ヒータ44やヒータ制御手段30が組み込まれた,エンジン駆動発電機の電気回路の構成例を
図3に示す。
【0101】
三相交流発電機である発電機本体3で発生した交流電力は,エンジン駆動発電機1のボンネット等に設けた出力端子台71を介して,機外に設けた電気機器5に対し供給できるように構成されており,発電機本体3で発生した電力を,前記出力端子台71を介して出力することができるようにするために,発電機本体3と出力端子台71間は,遮断器72を備えた主供給回路70によって接続されている。
【0102】
また,前述した電気ヒータ44のヒータ本体441に対し発電機本体3で発生した電力を供給するために,前記主供給回路70より分岐したヒータ用電源回路74を設け,エンジン20の冷却水を加熱する前述の電気ヒータ44に対し,発電機本体3で発生した電力を供給することができるように構成している。
【0103】
図示の実施形態にあっては,前述の主供給回路70中に,発電機本体3の結線端子と接続された中継端子台73を設け,この中継端子台73において主供給回路70よりヒータ用電源回路74を分岐させている。
【0104】
このようにして,発電機本体3に接続された電気ヒータ44は,電磁接触機等によって構成された開閉手段32によってヒータ用電源回路74を開閉することによりON,OFFの切替がされていると共に,ECU80において実現されている前述の強制再生制御部81からの制御信号によって開閉手段32の動作が制御され,前記エンジン20が所定の低負荷運転状態にあるとき前記電気ヒータ44をONとし,前記エンジン20にかかる負荷が所定の必要負荷量以上となったとき,前記電気ヒータ44をOFFとする制御を行うように構成されている。
【0105】
従って,前述した開閉手段32と,開閉手段32に対し制御信号を出力する制御信号出力部(本実施形態にあってはECU80)によって,電気ヒータ44のON,OFFを制御するヒータ制御手段30が実現されている。
【0106】
前述した強制再生時における電気ヒータのON,OFF制御を可能とするため,
図3に示す実施形態にあっては,前述したように,ECU80を,開閉手段32に対し制御信号を出力する制御信号出力手段として使用していると共に,このECU80がエンジン20の燃料噴射装置28に対して出力する燃料噴射量信号を,そのまま,開閉手段32に対しても出力して開閉手段32の制御信号として使用している。
【0107】
すなわち,エンジン20は大きな負荷を受けて運転されている程,エンジン20に対する燃料噴射量は増大し,負荷が小さくなる程,エンジンに対する燃料噴射量が減少することから,ECU80がエンジン20の燃料噴射装置28に対して出力する燃料噴射量信号の信号強度は,エンジン20の負荷状態に対応して変化する。
【0108】
従って,開閉手段32側の作動条件の設定により,燃料噴射量信号によってエンジン20が所定の低負荷運転状態のときに開閉手段32を閉じて電気ヒータ44をONとし,エンジン20にかかる負荷が所定の必要負荷量以上となったときに開閉手段32を開いて電気ヒータ44をOFFとする制御を行うことが可能である。
【0109】
なお,上記の例では,ECU80を制御信号出力手段とし,このECU80が出力する燃料噴射量信号を制御信号として開閉手段32の制御を行う場合を例として説明したが,開閉手段32の制御に使用する制御信号は,前述した燃料噴射量信号に限定されるものではなく,例えば,ECU80内で算出されたエンジン20の負荷率の変化に対応して信号強度が変化する信号を負荷率信号としてECU80に出力させ,この負荷率信号を制御信号として開閉手段32の動作を制御するようにしても良い。
【0110】
また,エンジン20にかかる負荷が大きくなる程,エンジン20の排気ガス温度が上昇し,負荷が小さくなる程,排気ガス温度が低下することから,エンジン20の排気ガス温度を検知する温度検出手段や,排気ガス後処理装置7内の温度を検知する温度検知手段を同様に開閉手段32に対し制御信号を出力する制御信号出力手段として使用すると共に,その検知信号を制御信号として開閉手段32に出力するものとしても良い。
【0111】
更に,エンジン20の負荷は,発電機本体3の発電電力が増大する程大きく,発電機本体3の発電電力が減少する程小さくなることから,主供給回路70に変流器を設ける等して前述した制御信号出力手段と成すと共に,この変流器の二次電流を制御信号として開閉手段32に対し出力するようにしても良い。
【0112】
更には,前述したECU80の出力信号,温度検知手段の検知信号,変流器の二次電流は,これらを単独で開閉手段32の制御信号として使用するものとしても良いが,例えば,開閉手段32にコントローラ32aを設け,これらの信号を複数組み合わせてコントローラ32aに入力すると共に,コントローラ32aによる演算処理によって入力された信号に基づいてエンジン20の運転状態を判断して,この判断結果に基づいて電気ヒータ44のON,OFFを制御するように構成するものとしても良く,図示の構成に限定されず,各種構成の変更が可能である。
【0113】
以上で説明したように,ヒータ制御手段30は,エンジン20にかかる負荷に応じて,電気ヒータのON,OFFを制御する。
【0114】
これにより,遮断器72を閉じた状態,従って,出力端子台71に接続された電気機器5に対する電力供給が継続された状態で行われる,負荷変動型強制再生実行手段83による強制再生時には,出力端子台71に接続された電気機器5による消費電力の増減に伴うエンジン20の負荷変動に応じて,電気ヒータ44のON,OFFが制御される一方,定負荷型強制再生実行手段84による強制再生時,遮断器72は開いた状態,従って,出力端子台71に接続される電気機器5に対する電力供給が断たれた状態であり,エンジン20は低負荷運転状態(無負荷運転状態)にあることから,定負荷型強制再生実行手段84による強制再生中,開閉手段23は常に閉状態に維持され,電気ヒータはON状態に保持される。
【0115】
これにより,発電機本体3は,電気ヒータ44の消費電力に対応した電力を発電し,この発電量に応じた一定の負荷(定負荷)がエンジン20に加わり,従って,エンジン20の排気ガス温度が安定することで,排気ガス後処理装置7のDOC温度を安定させた状態で強制再生を行うことができる。
【0116】
〔作用等〕
以上のように構成された本発明の排気ガス後処理装置7の再生装置を備えたエンジン駆動発電機1の動作について,更に具体的に説明する。
【0117】
なお,以下の説明では,一例として,電気ヒータ44の消費電力を10kWに設定し,前述した低負荷運転状態を,発電機本体3の発電量が10kW以下であるときのエンジン20の運転状態とすると共に,前述した必要負荷量を,発電機本体3の発電量が25kW(電気機器5の消費電力15kWと,電気ヒータ44の消費電力10kWの和)であるときのエンジン20にかかる負荷量として設定した場合を例として説明する。
【0118】
i) 負荷変動型の強制再生
排気ガス後処理装置7のDPF入口の圧力を検出する圧力検出手段Ps2と,DPFの出口側圧力を検出する圧力検出手段Ps1からの圧力検出信号を受信して,両圧力検出手段Ps1,Ps2が検出した圧力の差に基づいて,堆積状態判定手段82はDPFに対するPMの堆積量を判定する。
【0119】
堆積状態判定手段82が,所定の第1堆積量以上となったことを判定すると,この判定結果に基づき,目詰まり表示手段63には,DPFが,負荷変動型強制再生を必要とする目詰まり状態にあることを表示すると共に,負荷変動型強制再生実行手段83が起動し,吸気絞り弁24に制御信号を出力してエンジン20を所定の吸気を絞った状態での運転に移行すると共に,エンジン20の燃料噴射装置28に対し出力されている燃料噴射量信号を,ヒータ用電源回路74を開閉する開閉手段32に対しても出力させる。
【0120】
吸気を絞った状態でのエンジン20の運転が所定時間(一例として10分)経過した後,負荷変動型強制再生実行手段83は,燃料噴射制御手段85に通常の燃料噴射制御の他,燃料の追加噴射を開始させる。
【0121】
負荷変動型強制再生実行手段83による強制再生の実行中,主供給回路70に設けられた遮断器72を閉状態に維持し,従って,出力端子台71に対する通電状態を維持する。
【0122】
強制再生の開始前,開閉手段32は開いた状態にあり,従って,電気ヒータはOFFの状態にある。この状態から,負荷変動型強制再生実行手段83の起動によって,開閉手段32に対しECUからの燃料噴射量信号が入力されると,開閉手段32は,ECU80から受信した燃料噴射量信号の信号強度に応じてヒータ用電源回路74を開閉する。
【0123】
強制再生の開始時において受信した燃料噴射量信号が,発電機本体3の発電量が10kW未満であるエンジン20の運転状態(低負荷運転状態)を示している場合,開閉手段32はヒータ用電源回路74を閉じ,電気ヒータをONにする。
【0124】
強制再生中に電気機器5側の消費電力が変化し,電気ヒータ44がONの状態で発電機本体3の出力が25kWを超えてエンジン20にかかる負荷が必要負荷量以上になると,この負荷の変化を示す燃料噴射量信号の変化に基づいて開閉手段32はヒータ用電源回路74を瞬時に開き,電気ヒータ44をOFFにする。
【0125】
また,強制再生中の消費電力の変動により,電気ヒータ44がOFFの状態で発電機本体3の出力が10kW以下になってエンジン20が低負荷運転状態になり,かつ,低負荷運転状態が所定時間(例えば3秒間)継続すると,開閉手段32はヒータ用電源回路74を閉じ,電気ヒータ44をONにする。
【0126】
このように,電気ヒータ44をOFFとする動作を瞬時に行うことで,出力端子台71にエンジン駆動発電機1の定格出力に対応する消費電力の電気機器5が接続された場合であっても,電気ヒータ44の消費電力分過剰となることを防止できる一方,電気ヒータ44をONとする動作に所定のタイムラグを持たせても問題が生じない。また,このようなタイムラグを設けることで,電気機器5がスターデルタ始動方式の電動機を備える場合等,始動時に電流が比較的短時間で変化する電気機器5等を接続した場合であっても,短時間でヒータのON/OFF動作が繰り返されることが防止される。
【0127】
ii) 定負荷型強制再生
前述した負荷変動型の強制再生では,DPFに堆積したPMが除去しきれずにDPFに対するPMの堆積が更に進行する等して,堆積状態判定手段82が,前記第1堆積量よりも多い,所定の第2堆積量の堆積がDPFに生じていることを判定すると,堆積状態判定手段82は,この判定結果を,目詰まり表示手段63に出力して所定の目詰まり表示を行わせる。
【0128】
堆積状態判定手段82による第2堆積量の判定により,定負荷型強制再生実行手段84は,ボタンスイッチ等によって構成される入力手段64の操作によってオペレータが定負荷型強制再生の開始指令を入力する迄,起動待機状態となる。
【0129】
目詰まり表示手段63による表示によってDPFが所定の目詰まり状態(第2堆積量)にあることを確認したオペレータは,エンジン駆動発電機1を使用した作業が終了する等して,エンジン駆動発電機1が定負荷型の強制再生を実行しても差し支え無い状態になると,入力手段64を操作して,定負荷型の強制再生の開始指令を入力する。
【0130】
起動待機状態にあった定負荷型強制再生実行手段84は,オペレータによる開始指令の入力によって起動し,定負荷型の強制再生を開始する。
【0131】
定負荷型強制再生実行手段84の起動により,主供給回路70に設けられている遮断器72に対し開信号が出力されて主供給回路70が開き,定負荷型の強制再生の実行中,出力端子台71に対する電力供給が停止する。
【0132】
また,定負荷型強制再生実行手段84は,吸気絞り弁24に制御信号を出力してエンジン20を所定の吸気を絞った状態での運転に移行すると共に,燃料噴射制御手段85に,エンジンの回転速度が所定の再生回転速度となる燃料の噴射量制御を実行させ,更に,開閉手段32に対し制御信号として燃料噴射量信号を出力し,開閉手段32が,燃料噴射量信号の信号強度に応じてヒータ用電源回路74を開閉する。
【0133】
また,定負荷型強制再生実行手段84は,吸気を絞った状態でのエンジン20の運転が所定時間(一例として10分)経過した後,燃料噴射制御手段85に前述した再生回転速度に対応した燃料噴射制御の他,燃料の追加噴射を開始させる。
【0134】
前述したように,定負荷型強制再生実行手段84による強制再生中,出力端子台71に対する電力供給は行われないため,電気ヒータ44がOFFの状態となっている強制再生の開始時,発電機本体3の発電量は0kWであるから,エンジン20は,所定の低負荷運転状態にあり,このようなエンジン20の運転状態を示す燃料噴射量信号を受信した開閉手段32は,ヒータ用電源回路74を閉じて電気ヒータ44をONにする。
【0135】
電気ヒータ44のONにより,発電機本体3は,電気ヒータ44の消費電力に対応した電力の出力を開始するが,電気ヒータ44の消費電力は10kWに設定されているため,電気ヒータ44のONによっても発電機本体3の発電電力は10kWで,電気ヒータ44のOFF条件である25kWに達することがない。
【0136】
そのため,定負荷型強制再生実行手段84による強制再生の実行中,電気ヒータは終始ONに維持され,エンジン20の排気ガス温度,従って,排気ガス後処理装置7内の温度が安定した状態での強制再生を実行することができる。
【0137】
〔その他の実施形態〕
図6は,エンジン駆動発電機1に設けた発電機本体3の巻線の接続パターンを切り換え可能に構成して,発電機本体3の出力電圧を可変とする,電圧切替手段75を設けた構成である。
【0138】
図3に示した構成例では,主供給回路70中に設けた中継端子台73において主回路よりヒータ用電源回路74を分岐する構成を採用していたが,
図6に示す実施形態では,発電機本体3に設けられている電気子巻線(u1,u2,v1,v2,w1,w2)の結線状態を,一例として三相200Vと,単相200Vのいずれかの接続パターンに切り換える電圧切替手段75を備え,この電圧切替手段75に,出力端子台71に接続された電気機器5に対する電力を供給する主供給回路70と,電気ヒータ44に対し発電機本体3で発生した電力を供給するヒータ用電源回路74を接続している。
【0139】
前述の電圧切替手段75は,一例として,多数のカム接点を備えたカムスイッチによって構成することができ,切替位置の変更により,主供給回路用端子台76に接続された主供給回路70に対し,スイッチの切替によって選択された三相200V,単相200Vの出力を選択して行えるように構成されている。
【0140】
なお,本実施形態では,前述した発電機本体の電気子巻線の結線状態の変更により,ヒータ電源回路用端子台77に接続されたヒータ用電源回路74の結線についても同時に切り替えることができるように構成している。
【0141】
一例として,本実施形態にあっては,
図7に示すように,電気ヒータ44のヒータ本体441を,3つの発熱体441a,441b,441cの組合せによって構成し,発電機本体3が三相200V結線の状態では,ヒータ本体441の各発熱体441a,441b,441cを
図7(A)に示すようにデルタ結線として,このデルタ結線の頂点をそれぞれ発電機本体3の電気子巻線のU,V,W相に接続する構成を採用する一方,発電機本体3を単相200Vの結線とした状態では,ヒータ本体441の発熱体441a,441b,441cを
図7(B)に示すように並列に接続すると共に,単相結線された発電機本体のU相,W相に接続する結線方法に自動で切り替わるようにすることで,電気ヒータ44のヒータ本体441に常に200V電圧を印加できるようにしている。
【0142】
なお,
図6に示す装置構成において,発電機本体3の電気子巻線の結線を,三相400V結線と三相200V結線間で切り替えられるように構成しても良く,この場合においても,結線状態の切替前後において,ヒータ用電源回路74に対し,常に一定電圧,例えば200Vの出力が行えるように構成する。