(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の一形態を得るに至った経緯)
発明者は「背景技術」にて記載した従来の燃料電池システムに関して鋭意検討したところ、以下の知見に至った。
従来の燃料電池システムの構成では、例えば、燃焼器に異常が発生し、燃焼器から排出された燃焼排ガスの温度が過昇温すると、燃焼排ガスにより加熱される脱硫器も過昇温してしまう場合がある。このとき、例えば、特許文献2の燃料電池システムでは、燃焼用空気を水添脱硫器の冷媒として用いており、水添脱硫器が過昇温になると、水添脱硫器の冷却量を増加させるため、燃焼用空気の供給量が通常よりも多くなる。すると、場合によっては、燃焼器での燃焼性が不安定になり、これにより、改質反応で生成される燃料ガス量も不安定になり、最終的には燃料電池システムの発電が不安定になる可能性がある。
また、特許文献3の燃料電池システムでは、燃料電池に供給される酸化剤ガスを水添脱硫器の冷媒として用いており、水添脱硫器が過昇温になると、水添脱硫器の冷却量を増加させるため、酸化剤ガスの供給量が通常よりも多くなってしまう。すると、燃料電池内の熱バランスが大幅に変化して、最終的には燃料電池システムの発電が不安定になる可能性がある。
このように燃料電池システムの発電に利用されるガスを水添脱硫器の冷媒として使用すると、水添脱硫器が過昇温したときに、その供給量が通常よりも大きく変化し、最終的に燃料電池システムの発電の安定性が低下してしまう可能性がある。
【0013】
そこで、本発明者はこの問題に関し、鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。すなわち、燃料電池システムの発電に利用されないガスを冷媒に使用することで、燃料電池システムの発電の安定性が従来よりも向上することを見出した。また、排ガスに上記冷媒を供給して、排ガスと冷媒との混合ガスを使用して水添脱硫器と熱交換するように構成することで、水添脱硫器の温度制御性が向上することを見出した。
【0014】
本開示の第1の態様は、原料中の硫黄化合物を除去する水添脱硫器と、前記水添脱硫器により硫黄化合物が除去された原料を改質して得られた燃料と、供給された酸化剤ガスとを用いて電気化学反応により発電する燃料電池と、当該燃料電池を含む燃料電池システムで流通する排気ガスの有する熱を利用して前記水添脱硫器を加熱する加熱器と、前記排気ガスを前記加熱器に導くための導入経路と、排気ガスに前記燃料電池システムの発電に利用されないガスを冷却ガスとして供給するガス供給器と、を備え、前記ガス供給器により供給された冷却ガスと排ガスとの混合ガスが前記加熱器内を流れるよう構成されている、燃料電池システムを提供する。
【0015】
ここで、水添脱硫器は、充填する脱硫触媒に応じて、所望される加熱温度の範囲が決まっているため、水添脱硫器を適切な温度範囲となるように温度管理する。
【0016】
上記構成によると、導入経路を備えるため、この導入経路によって導かれた排気ガスが有する熱を利用して加熱器は水添脱硫器を加熱することができる。また、ガス供給器を備えるため、機器の異常または発電時の負荷の変化に伴い排気ガスの温度が通常の運転時よりも高温となるような場合であっても、この排気ガスの温度を水添脱硫器の脱硫触媒に応じた所望の温度まで低下させるように制御することができる。このため、加熱器は水添脱硫器の温度を脱硫触媒に応じた適切な温度範囲に維持するように制御することができる。更に、上記構成では、ガス供給器により供給された冷却ガスと排ガスとの混合ガスが加熱器内を流れるよう構成されている。従来のように、冷却ガス単独で脱硫器を冷却する場合は、加熱器が存在するため、脱硫器全体を冷却するよう冷却器を配設することが困難である。従って、脱硫器を冷却するために、冷却ガスの供給量を増加させると、加熱器で加熱された箇所と冷却器で冷却された箇所とで温度差が生じ、脱硫器全体の温度ばらつきが生じやすい。ここで、上記のように、冷却ガスと排ガスとの混合ガスが加熱器内を流れるよう構成されていれば、この混合ガスと脱硫器との熱交換で脱硫器の温度が調整されるため、従来よりも脱硫器全体の温度ばらつきを低減しながら、脱硫器の過昇温を抑制できる。
【0017】
また、通常よりも高温となった排気ガスを冷却させる冷媒として用いられる冷却ガスは、燃料電池システムの発電に利用されるものではないため、水添脱硫器の過昇温を抑制するために流量を増加させても、燃料電池システムの発電の安定性が損なわれる可能性は低い。
【0018】
よって、本開示の第1の態様は、従来よりも燃料電池システムの発電の安定性が向上する。
【0019】
なお、燃料電池システムを流通する排気ガスとは、例えば、燃焼部を備える構成の場合、燃料電池において未利用の燃料と空気とをこの燃焼部で燃焼させて生成した燃焼排ガスが挙げられる。あるいは、燃料電池において未利用の空気(カソードオフガス)などが挙げられる。
また、燃料電池システムの発電に利用されないガスとは、燃料電池システムの発電に利用されるガスとは異なるガスである。ここで、燃料電池システムの発電に利用されるガスは、燃料電池システムの発電に直接利用されるガス及び間接的に利用されるガスを含む。直接利用されるガスとは、例えば、燃料電池に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスである。間接的に利用されるガスとは、例えば、燃料ガスの生成に利用されるガスであり、具体的には、改質反応に利用される反応ガス、改質反応熱を供給するための燃焼に利用されるガス等が例示される。改質反応に利用されるガスは、例えば、原料、水蒸気、空気等である。燃焼に利用されるガスは、燃料、燃焼用空気、燃料電池から排出されたオフ燃料ガス、オフ酸化剤ガス等である。また、冷却ガスは、排ガスよりも温度が低い。また、上記構成では、前記ガス供給器により供給された冷却ガスと排ガスとの混合ガスが前記加熱器内を流れるよう構成されていれば、いずれの形態であっても構わない。例えば、ガス供給器は、導入経路及び加熱器の少なくとも一方に冷却ガスを供給するよう構成されていてもよい。
【0020】
また、本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記燃料電池に供給される酸化剤ガスを、前記排気ガスが有する熱を利用して加熱する熱交換器を備え、前記導入経路は、前記熱交換器によって熱利用された後の排気ガスを前記加熱器に導くように構成されていてもよい、燃料電池システムを提供する。
【0021】
上記構成によると、熱交換器を備えているため酸化剤ガスを燃料電池の動作温度に応じた適切な温度となるように加熱(予熱)して燃料電池に導くことができる。また、この熱交換器によって排気ガスが有する熱の一部がこの酸化剤ガスの予熱に利用されるため、水添脱硫器を加熱するのに適切な温度まで排気ガスの温度を低下させることができる。すなわち、本開示の第2の態様では、高温の排気ガスを、水添脱硫器を加熱するのに適切な温度まで低下させて加熱器に導くことができる。
【0022】
また、本開示の第3の態様は、上記した第1または2の態様において、制御器と、前記水添脱硫器の温度を検知する検知器と、を備え、前記制御器は、前記検知器により検知された温度が上限温度以上となると、前記冷却ガスの供給量が大きくなるように前記ガス供給器を制御するように構成されていてもよい、燃料電池システムを提供する。
【0023】
上記構成によると、制御器と検知器とを備えているため、検知器によって検知された温度が上限温度以上となると、制御器は、冷却ガスの供給量が大きくなるようにガス供給器を制御することができる。このため、水添脱硫器の温度が上限温度以上とならないように維持することが可能となる。このため、水添脱硫器の脱硫触媒が過昇温状態のまま放置されることが抑制され、水添脱硫器において高効率に脱硫を行うことができる。このため、本開示の第3の態様では、脱硫効率を高めるために脱硫触媒の量を増やす必要がなく、必要最小限に抑えることができ、水添脱硫器の小型化を図ることができる。なお、上記検知器は、水添脱硫器の温度を直接的に検知する検知器及び間接的に検知する検知器を含む。水添脱硫器の温度を直接的に検知する検知器は、水添脱硫器の温度を検知する検知器であり、水添脱硫器に設けられる。水添脱硫器の温度を間接的に検知する検知器は、水添脱硫器の温度と相関する物理量(例えば、温度)を検知する検知器であり、例えば、加熱器の温度を検知する検知器等が挙げられる。
【0024】
また、本開示の第4の態様は、上記した第1−第3のいずれか1つにおいて、前記排気ガスは、前記燃料電池の発電時に未利用だった燃料ガスと酸化剤ガスとを燃焼させた燃焼排ガスを含んでもよい、燃料電池システムを提供する。
【0025】
上記構成によると、排気ガスは燃料電池の発電時に未利用だった燃料と酸化剤ガスとを燃焼させた燃焼排ガスであるため、この燃焼排ガスが有する熱を利用して加熱器は水添脱硫器を加熱することができる。
【0026】
また、本開示の第5の態様は、上記した第1−第3のいずれか1つにおいて、前記排気ガスは、前記燃料電池の発電時に未利用だった酸化剤ガスを含んでもよい、燃料電池システムを提供する。
【0027】
ここで、燃料電池の発電時に未利用だった酸化剤ガスは、燃料電池の高温な動作温度などによって加熱され高温となっている。
【0028】
上記構成によると、排気ガスは燃料電池の発電時に未利用だった酸化剤ガスであるため、この未利用の酸化剤ガスが有する熱を利用して加熱器は水添脱硫器を加熱することができる。
【0029】
また、本開示の第6は、上記した第2の態様において、前記ガス供給器は、前記熱交換器よりも下流かつ前記加熱器よりも上流の前記導入経路に前記冷却ガスを供給するように構成されていてもよい、燃料電池システムを提供する。
【0030】
上記構成によると、前記熱交換器よりも下流側でかつ前記加熱器よりも上流側の位置、すなわち加熱器に流入する前に排気ガスに冷却ガスを供給することができる。このため、機器の異常または発電時の負荷の変化に伴い排気ガスの温度が通常の運転時よりも高温となるような場合であっても、適切な温度まで排気ガスの温度を低下させて加熱器に供給することができる。
【0031】
また、本開示の第7の態様は、上記した第1−第5の態様のいずれか1つにおいて、前記ガス供給器は、前記加熱器内に前記冷却ガスを供給するように構成されていてもよい、燃料電池システムを提供する。
【0032】
上記構成によると、加熱器内に前記冷却ガスを供給することができる。このため、機器の異常または発電時の負荷の変化に伴い排気ガスの温度が通常の運転時よりも高温となるような場合であっても、加熱器内において適切な温度まで排気ガスの温度を低下させることができる。なお、上記第6の態様及び第7の態様は、例示であって、ガス供給器により供給された冷却ガスと排ガスとの混合ガスが前記加熱器内を流れるよう構成されていれば、いずれの態様であっても構わない。
【0033】
また、本開示の第8の態様は、上記した第1の態様、第6の態様または第7の態様において、前記水添脱硫器と前記加熱器とは互いに一以上の面で接触しており、前記水添脱硫器および前記加熱器の一部または全体を覆う断熱部を備えるように構成されていてもよい、燃料電池システムを提供する。
【0034】
上記構成によると、水添脱硫器と加熱器とは互いに一以上の面で接触しているため、この接触した面を通じて加熱器から水添脱硫器に排気ガスが有する熱を効率よく伝えることができる。また、水添脱硫器と加熱器とを覆う断熱部を備えるため、水添脱硫器および加熱器の両者における放熱を防ぐことができる。
【0035】
本開示の第9の態様は、上記した第1の態様、第6の態様または第7の態様において、前記加熱器は、その内部に前記水添脱硫器を収容するための筐体と、該筐体内において前記排気ガスを流通させるための流通路と、を備え、前記流通路は、前記水添脱硫器の外周を前記排気ガスが流通するように設けられるように構成されていてもよい、燃料電池システムを提供する。
【0036】
上記構成によると、排気ガスが筐体内に収容されている水添脱硫器の外周を流通するため、加熱器は、水添脱硫器を全体的に均一に加熱することができる。
【0037】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。
【0038】
(実施形態)
図1を参照して、実施の形態に係る燃料電池システム100について説明する。なお、本実施形態では、燃料電池1として固体酸化物形燃料電池を備えた燃料電池システムを例に挙げて説明するが、燃料電池1はこの固体酸化物形燃料電池に限定されるものではない。
図1は、実施の形態に係る燃料電池システム100の構成の一例を示したブロック図である。
【0039】
図1に示すように、燃料電池システム100は、燃料電池1(固体酸化物形燃料電池)と、水添脱硫器2と、加熱器3と、ガス供給器4と、制御器20とを備えてなる構成である。
【0040】
燃料電池1は、水添脱硫器2により硫黄化合物が除去された原料(原料ガス)を改質して得られた燃料と、空気供給経路9を通じて供給された酸化剤ガスとを用いて電気化学反応により発電するものである。燃料電池システム100では、原料経路8を通じて燃料電池1へと原料を供給できる構成となっている。この原料としては、都市ガスまたは、プロパンガスなどの炭化水素を主成分とするガスを用いることができる。なお、原料から硫黄成分が取り除かれ、改質反応により改質された改質ガスを本明細書では燃料と称する。
【0041】
燃料電池1は、燃料が供給される燃料極および酸化剤ガスが供給される空気極を有し、該燃料極と該空気極との間で電気化学反応を行って発電する燃料電池単セルを複数枚、直列に接続してセルスタックを形成してもよい。また、燃料電池1は、直列接続したセルスタックをさらに並列に接続させた構成としてもよい。
【0042】
燃料電池1を構成する燃料電池単セルとしては、例えば、イットリアをドープしたジルコニア(YSZ)、イットリビウム、またはスカンジウムをドープしたジルコニア、あるいはランタンガレート系の固体電解質からなる燃料電池単セルを用いることができる。例えば、燃料電池単セルがYSZの場合、厚みにもよるが、約600〜900℃の温度範囲にて、発電反応が行われる。
【0043】
なお、本実施形態に係る燃料電池システム100は、燃料電池1で未利用の燃料と酸化剤ガスとを燃焼させて燃焼排ガスを生成する燃焼器を備え、この燃焼排ガスを排気ガスとして導入経路6を通じて加熱器3に導く構成であってもよい。あるいは、燃料電池1の高温な動作温度によって加熱された未利用の酸化剤ガスを排気ガスとして導入経路6を通じて加熱器3に導く構成であってもよい。
【0044】
また、
図1では特に図示していないが、原料経路8において水添脱硫器2と燃料電池1との間に不図示の改質器を備え、水添脱硫器2により硫黄化合物が除去された原料を、この改質器が改質するように構成されていてもよい。あるいは固体酸化物形燃料電池は動作温度が約600から900℃と高温であるため、燃料極の主成分であるニッケルの触媒作用によって燃料電池1内で水蒸気改質(内部改質)を行う構成としてもよい。
【0045】
水添脱硫器2は、水素を利用して、原料中の硫黄化合物を除去する。つまり、水添脱硫器2は、いわゆる水添脱硫方式により原料に含まれる硫黄成分を除去する水添脱硫器である。水添脱硫器2に原料経路8が接続されており、この原料経路8を流通して外部から供給された原料が水添脱硫器2内に流入する。また、
図1では特に図示していないが、水添脱硫器2に流入する原料には水素が含まれている。この原料に含まれる水素は、外部から供給された水素であってもよいし、例えば、不図示の改質器において改質され、生成された改質ガスの一部であってもよい。
【0046】
また、水添脱硫器2には脱硫触媒が充填されており、この脱硫触媒としては、例えば、銅および亜鉛を含む脱硫触媒が挙げられる。なお、脱硫触媒は、水添脱硫を行うことができればこの脱硫触媒に限定されるものではなく、Ni−Mo系又はCo−Mo系触媒と酸化亜鉛との組み合わせであってもよい。Ni−Mo系又はCo−Mo系触媒と酸化亜鉛とを組み合わせた脱硫触媒の場合、水添脱硫器2は350〜400℃の温度範囲にて、燃料ガス中の有機硫黄を水添分解する。そして、水添脱硫器2は、生成したH2Sを、350〜400℃の温度範囲にてZnOに吸着させて除去する。
【0047】
例えば、原料が都市ガスの場合、付臭剤として硫黄化合物であるジメチルスルフィド(dimethl sulfide ;C
2H
6S,DMS)が含有されている。このDMSは、水添脱硫器2において、以下の反応式(式(1)、(2))によるZnSの形、または物理吸着の形で脱硫触媒によって除去される。
C
2H
6S+2H
2→2CH
4+H
2S ・・・(1)
H
2S+ZnO→H
2O+ZnS ・・・(2)
なお、付臭剤は、上述したDMSに限定されるものではなく、TBM(C
4H
10S)またはTHT(C
4H
8S)等の他の硫黄化合物であってもよい。
【0048】
充填する脱硫触媒が銅および亜鉛を含む場合、水添脱硫器2は、10〜400℃程度、もしくは、150〜300℃程度の温度範囲で脱硫を行う。この銅亜鉛系脱硫触媒は、水添脱硫能力に加えて物理吸着能力もあり、低温では主に物理吸着、高温では化学吸着(H
2S+ZnO→H
2O+ZnS)を行うことができる。この場合、脱硫後の燃料ガスに含まれる硫黄含有量は、1vol ppb(parts per billion)以下、通常は0.1vol ppb以下となる。
【0049】
このように、水添脱硫器2において、Ni−Mo系又はCo−Mo系触媒、あるいは銅および亜鉛のいずれかを含む脱硫触媒が充填されている場合、単位体積あたりの硫黄成分除去量が大きくなる。それゆえ、上述した脱硫触媒を用いる場合、所望の硫黄濃度まで硫黄を除去するために必要となる脱硫触媒の量を低減させることができる。
【0050】
また、燃料電池システム100の長時間の運転の後、水添脱硫器2の脱硫触媒が劣化した際には、この燃料電池システム100の性能が低下する。そこで、水添脱硫器2を、燃料電池システム100において着脱可能に設け、脱硫触媒が劣化した水添脱硫器2を新しい水添脱硫器と交換できる構成としてもよい。
【0051】
なお、水添脱硫器2において原料が流入する入口付近と出口付近とにはヘッダー(不図示)と呼ばれるものが配置されており、略均一な圧力で原料が脱硫触媒に流れ込み、脱硫触媒の通過後も略均一な圧力で出口から原料経路8に流入する構成となっている。
【0052】
以上のようにして水添脱硫器2によって脱硫された原料は、内部改質により改質される場合は燃料電池1へ、改質器により改質される場合はこの改質器へと供給される。なお、改質器は、部分酸化改質用として用いられるものであってもよいが、更に高効率な動作を実現するために、部分酸化改質反応だけでなく、水蒸気改質反応も行える仕様にしておくことが有利である。
【0053】
加熱器3は、燃料電池システム100で流通する排気ガスの有する熱を利用して水添脱硫器2を加熱するものである。具体的には、排気ガスは、導入経路6を通じて加熱器3に導かれ、この内部を流通することで、排気ガスが有する熱の一部を水添脱硫器2に与え、所望の温度まで昇温させる。すなわち、加熱器3の内部には、排気ガスが流通するための流通経路が形成されている。つまり、加熱器3の内部には、複数の邪魔板(不図示)が形成されており、邪魔板によって排気ガスは進路を複数回曲げられたのち、排気ガス排出経路7を流通して排出される。排出時、排気ガスの温度は低いほうが外部に排気する熱エネルギーは少ないことになり、200℃±50℃前後が望ましい。
【0054】
また、上述した水添脱硫器2および加熱器3の外装(容器)はステンレスなどの金属より構成されている。そして、互いに1面以上で面接触しており、排気ガスが加熱器3の内部に形成された流通経路を流通すると、排気ガスが有する熱は、この接触面を通じて加熱器3から水添脱硫器2へと伝熱する。これによって、水添脱硫器2の内部の脱硫触媒の温度が適切な温度に維持されることになる。
【0055】
ガス供給器4は、導入経路6を通じて加熱器3に導かれる排気ガスに冷却ガスを供給するものである。ガス供給器4は、例えば、燃料電池システム100の外部からの空気を冷却ガスとして供給するポンプと、このポンプから供給される冷却ガスの流量を調整する流量調整弁とから構成される。ポンプから供給される冷却ガスの流量を流量調整弁により調整し、流量が調整された冷却ガスが冷却ガス経路10を通じて導入経路6を流通する排気ガスと合流する。このように、冷却ガスと排気ガスとを混合させることで、この排気ガスの温度を低下させる冷却構造を有しており、この冷却構造によって、加熱器3および水添脱硫器2が所望の温度範囲内にあるように温度制御を行っている。従って、水添脱硫器2は所望の温度範囲は、水添脱硫器2の制御温度とも言える。本実施形態では、水添脱硫器2に充填する脱硫触媒が銅および亜鉛を含む場合は、この所望の温度範囲として200℃〜300℃の範囲を設定しているがこの温度範囲に限定されるものではない。所望の温度範囲は、脱硫触媒を構成する材料および水添脱硫器2において求められる脱硫の精度等を考慮して適宜設定される。
【0056】
なお、ガス供給器4はポンプと流量調整弁とからなる構成としたが、ポンプの代わりにブロワまたはファンなどの空気供給機能を有する別の機器を用いてもよい。また、流量調整弁は流量調整機能がある弁であればよく任意である。また、ポンプに流量調整弁と同等の流量調整機能が設けられている場合は、必ずしも流量調整弁を有する必要はない。また、本例では、冷却ガスを燃料電池システム100の外部からの空気としたが、これに限定されるものではない。燃料電池システム100の発電に利用されないガスならいずれのガスであってもよい。
【0057】
制御器20は、燃料電池システム100が備える各部の各種制御を行うものであり、例えば、ガス供給器4に指示して冷却ガスの供給を制御することができる。詳細は後述するが、特に本実施形態に係る燃料電池システム100では、制御器20は、検知された水添脱硫器2の温度が上限温度以上であると判定した場合、冷却ガスの供給量を大きくするようにガス供給器4を制御することができる。この制御器20は、例えば、MPU、CPUなどで例示できる演算処理部と、メモリなどで例示できる記憶部とを備え、CPU等がメモリに記憶されたプログラムを読み出し、実行することで各種制御を実行することができる。ここで、上記上限温度は、水添脱硫器2の制御温度の上限値である。
【0058】
また、
図2に示すように、本実施形態に係る燃料電池システム100は、さらに熱交換器5を備える。
図2は実施の形態に係る燃料電池システム100の構成の一例を示したブロック図である。
図2ではさらに熱交換器5を備えた燃料電池システム100の構成が示されている。
【0059】
熱交換器5は、排気ガスが有する熱を利用して、燃料電池1に供給する酸化剤ガスを加熱(予熱)するものである。すなわち、熱交換器5は、外部から供給された酸化剤ガスを、排気ガスとの熱交換により所定温度まで加熱する。例えば、熱交換器5を流通した後の酸化剤ガスは400〜800℃まで加熱される。そして、この加熱された酸化剤ガスが燃料電池1へと供給される。このように、熱交換器5をさらに備える構成の場合、燃料電池システム100では、熱交換器5により酸化剤ガスとの熱交換を行って保有する熱の一部が奪われた排気ガスが、加熱器3に導かれるように構成されている。このため、燃料電池システム100は、熱交換器5によって400〜800℃と高温の排気ガスを、水添脱硫器2を加熱するのに適切な温度まで低下させて加熱器3に導くことができる。
【0060】
また、
図3に示すように、実施形態に係る燃料電池システム100は、さらに検知器11を備える。
図3は実施の形態に係る燃料電池システム100の構成の一例を示したブロック図である。
図3ではさらに検知器11を備えた燃料電池システム100の構成が示されている。
【0061】
検知器11は、水添脱硫器2の温度を検知する。
図3では、水添脱硫器2の温度を検知する場合について示しているが、加熱器3の温度を検知してもよい。加熱器の温度を検知する形態としては、筐体に検知器11が備えられた構成であってもよいし、排気ガスが流通する加熱器3内に形成された流通経路に備えられた構成であってもよい。検知器11は検知結果を制御器20に通知する。
【0062】
制御器20は、検知器11から検知結果を受信すると、検知器11によって検知された温度が上限温度以上であるか否か判定する。そして、制御器20が、検知された温度が上限温度以上であると判定した場合、ガス供給器4により供給される冷却ガスの供給量を大きくするようにガス供給器4を制御する。この制御器20からの制御指示に応じて、ガス供給器4は、流量制御弁(開閉弁)の開度と、ポンプの出力とが所定の設定値となるように調整し、冷却ガスを、冷却ガス経路10を通じて導入経路6へ供給する。このように、排気ガスに冷却ガスを混入させることで、排気ガスの温度を下げることができる。また、供給する冷却ガスの流量を調整することで加熱器3に流入する排気ガスの温度を精度よく調整することが可能となる。ここで、上記上限温度は、水添脱硫器2の制御温度の上限値である。例えば、水添脱硫器2に充填する脱硫触媒が銅および亜鉛を含む場合は、上限温度は、300℃に設定される。
【0063】
逆に、検知器11によって検知された温度が下限温度以下まで下がっていると判定した場合、制御器20は、ガス供給器4に対して冷却ガスの供給を停止させるように制御する。この制御器20からの制御指示に応じて、ガス供給器4は、流量制御弁(開閉弁)を閉じ、ポンプによる冷却ガスの出力を停止させる。なお、実施形態では、この検知器11、ガス供給器4、冷却ガス経路10、および制御器20によって本開示の冷却構造を実現する。ここで、上記下限温度は、水添脱硫器2の制御温度の下限値である。例えば、水添脱硫器2に充填する脱硫触媒が銅および亜鉛を含む場合は、下限温度は、200℃に設定される。
【0064】
なお、上記では、検知器11による温度の検知結果に基づき、排気ガスに供給する冷却ガスの流量を調整する構成であったがこれに限定されるものではない。例えば、燃料電池システム100の運転開示時点からの時間の経過と、排気ガスに供給する冷却ガスの流量とを対応づけたテーブルを不図示のメモリなどに予め記憶しておき、このテーブルを参照して制御器20は、ガス供給器4から排気ガスに供給される冷却ガスの流量を調整する構成としてもよい。このように構成する場合、検知器11を備える代わりに、燃料電池システム100の運転開始からの時間を検知するタイマー等を備えることとなる。
【0065】
ところで、
図1から3では特に図示していないが、壁面に断熱部31を配した筐体30内(後述の
図4参照)に上記した燃料電池1、水添脱硫器2、加熱器3を設けた構成とすることができる。このように構成した場合、燃料電池1と水添脱硫器2と加熱器3とをそれぞれ同一の筐体30内に収容することができるため、放熱により排気ガスの熱利用の効率が低下することを防ぐことができる。以下、筐体30内に上記した燃料電池1、水添脱硫器2、および加熱器3を設けた構成を有する燃料電池システム100の実施例について
図4を参照して説明する。
【0066】
(実施例)
具体的には本実施形態に係る燃料電池システム100を
図4に示すように構成することができる。
図4は、実施例に係る燃料電池システム100の構成例を模式的に示す図である。
図4に示す例では、燃料電池システム100は、上記した燃料電池1、水添脱硫器2、加熱器3、ガス供給器4、および熱交換器5に加えて、燃焼器16、改質器14、蒸発器15、減圧器17、昇圧器33をさらに備え、燃料電池1、熱交換器5、改質器14、蒸発器15を断熱部31に囲まれた空間内に配置し、水添脱硫器2および加熱器3を断熱部31内に配置した構成となっている。
【0067】
この場合、燃料電池システム100が備える改質器14を以下のように構成してもよい。すなわち、改質器14は、部分酸化改質用として用いられるものであってもよいが、更に高効率な動作を実現するために、部分酸化改質反応だけでなく、水蒸気改質反応も行える仕様にしておく。例えば、原料経路8において、改質器14の上流側に蒸発器15を配置し、水添脱硫器2で脱硫された原料に改質水経路12を通じて供給された水(改質水)を混合させ改質器14に供給することができる構成とする。
【0068】
ここで、蒸発器15は、改質器14にて水蒸気改質反応を行うために設置したものである。蒸発器15は、燃焼器16から排出された排気ガスの熱及び燃焼器16からの輻射熱を利用して、改質水経路12から供給された水(改質水)を気化させ、水添脱硫器2から供給された脱硫後の原料と混合させる。そして、蒸発器15は、混合後の原料を改質器14へと導入する。
【0069】
なお、改質器14に充填される改質触媒としては、Al
2O
3(アルミナ)の球体表面にNiを含浸し、担持したもの、またはAl
2O
3の球体表面にルテニウムを付与したものを適宜用いることができる。
【0070】
ところで、燃料電池システム100の起動時では、改質器14において吸熱反応である水蒸気改質反応を行うためには熱エネルギーが不足している。そこで、燃料電池システム100の起動時は、改質水経路12から蒸発器15に水を供給させずに、改質空気経路13を通じて改質器14に導入した改質用空気を利用して、改質器14は以下の式(3)で表される部分酸化改質反応を行い、水素ガスおよび一酸化炭素を生成する。
C
nH
m + (n/2)O
2 → n・CO +(m/2)H
2(n,mは任意の自然数)・・・(3)
そして、これらの水素ガスおよび一酸化炭素を、原料経路8を通じて燃料電池1に供給し、酸化剤ガスと合わせて発電を行う。
【0071】
また、燃料電池システム100が起動して発電が進むにつれ、改質器14の温度が上昇していく。すなわち、上記の式(3)で表される部分酸化改質反応は発熱反応であり、更に、排気ガスにより、改質器14の温度が上昇させられる。そして、改質器14の温度が、例えば、400℃以上になれば以下の式(4)で表される水蒸気改質反応を並行して行うことが可能となる。
C
nH
m + n・H
2O → n・CO +(m/2+n)H
2(n,mは任意の自然数)・・・(4)
上述した式(4)で示される水蒸気改質反応は、式(3)で示される部分酸化改質反応と比較すると、同じ量の炭化水素(C
nH
m)から生成できる水素量がより多くなり、その結果、燃料電池1での発電反応に利用可能な改質ガスの量が多くなる。つまり、水蒸気改質反応の方が効率よく改質ガスを生成することができる。また、式(4)に示す水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、式(3)に示す部分酸化改質反応による発熱と排気ガスが保有する熱等を利用し、必要な熱量を補いつつ、水蒸気改質反応を進行させる。そして、改質器14の温度が例えば、600℃以上になれば、式(4)の水蒸気改質反応に必要な熱量を排気ガスの有する熱等だけで補うことが可能となるため、水蒸気改質反応のみの運転に切り替えることができる。
【0072】
また、
図4に示す燃料電池システム100の構成において、改質器14から燃料電池1へ向かう原料経路8の途中(分岐部)で分岐させ、改質器14で生成された改質ガスの一部を原料経路8に戻すためのリサイクル経路19が設けられている。このため、水添脱硫器2へと供給される原料に水素を添加することが可能となり、水添脱硫器2は、この水素を利用して前述の水添脱硫を行うことができる。
【0073】
図4に示す燃料電池システム100の構成では、原料経路8とリサイクル経路19とに分岐する分岐部の近傍でかつ、該リサイクル経路19内に減圧器17が設けられている。減圧器17は、リサイクル経路19内を流通する改質ガスの流量を調整するものであり、例えば、キャピラリチューブなどにより実現できる。すなわち、減圧器17は、キャピラリチューブなどにより流路を細くし圧力損失を大きくさせることで、リサイクル経路19内を所望の流量だけ改質ガスが流通するように構成されている。減圧器17の位置は、筐体30の内部のほうが、温度が高く水分が凝縮しにくいため望ましいが、筐体30の外部でもよい。
【0074】
また、このリサイクル経路19の途中に凝縮器(不図示)を設けた構成としてもよい。凝縮器を備える構成の場合、リサイクル経路19を流通する改質ガスが低温化したとき、この凝縮器により水分を回収することができる。このため、結露水による経路内の水つまり、または昇圧器33の腐食または破損といった不具合を抑制することができる。
【0075】
(排気ガスの流れ、排気ガスの温度調整、ならびに脱硫器の昇温)
図4に示す燃料電池システム100の構成を例に挙げて、排気ガスの流れ、排気ガスの温度調整、ならびに脱硫器の昇温について説明する。具体的には、以下のように排気ガスを流通させて水添脱硫器2の加熱を行う。なお、
図4に示す燃料電池システム100の場合、水添脱硫器2の加熱に利用する排気ガスは、燃焼器16で未利用の燃料と空気とを燃焼させて生成した燃焼排ガスとなる。
【0076】
燃焼器16で生成した排気ガス(燃焼排ガス)の流量およびその温度については、燃料電池1における燃料及び酸化剤ガスの燃料利用率(発電時に、燃料として燃料電池1で消費される割合)を調整することにより、制御することが可能である。
図4に示した燃料電池システム100では、例えば、燃焼器16の温度範囲が約600〜900℃になるように、燃料電池1における燃料および酸化剤ガスの燃料利用率を設定する。
【0077】
このように所望の温度範囲となるように設定された燃焼器16で、未利用の燃料と酸化剤ガスとを燃焼して生成された排気ガスは、まず、改質器14および蒸発器15を加熱する。これにより排気ガスの有する熱の一部が消費される。さらに、熱の一部が消費された排気ガスが熱交換器5に流入し、この熱交換器5による酸化剤ガスと排気ガスとの熱交換によって、排気ガスが有する熱がさらに奪われ、水添脱硫器2を加熱するのに適切な温度まで低下させられる。このように温度がさらに低下させられた排気ガスは、導入経路6を流通して加熱器3へ供給される。
【0078】
すなわち、燃焼器16で生成された排気ガスの温度は、例えば約600℃〜900℃と高温である。しかし、この排気ガスによって改質器14および蒸発器15を加熱し、更に、熱交換器5によって酸化剤ガスとの熱交換を行うと、導入経路6に到達するまでに排気ガスの温度は低下する。
【0079】
特に、燃料電池1として固体酸化物形燃料電池を用いて、例えば1kWの発電を行う場合、50L/min以上の酸化剤ガスを外気温から約400〜800℃になるまで加熱するため、熱交換器5では大量の熱量が必要となる。そこで、この熱量を排気ガスの熱量によって賄う。
【0080】
以上のように、導入経路6を流通し、加熱器3に流入する際の排気ガスの温度は、燃焼器16で生成された排気ガスの流量と温度、改質器14および蒸発器15に吸熱される熱量、および熱交換器5に吸熱される熱量などを考慮して所望の値となるように制御されている。
【0081】
次に、加熱器3へ流入する際の所望される排気ガス温度について説明する。水添脱硫器2に銅および亜鉛を含む脱硫触媒を充填する場合、加熱器3に流入する際の排気ガス温度が約150〜350℃となるように、燃焼器16で生成する排気ガスの流量および温度、改質器14および蒸発器15にて吸熱される熱量、ならびに熱交換器5にて吸熱される熱量等を調整して、水添脱硫器2を、水添脱硫を行うのに適した温度(約150〜300℃)とする。
【0082】
一方、水添脱硫器2において、Ni−Mo系又はCo−Mo系触媒と酸化亜鉛とを組み合わせた脱硫触媒を充填する場合では、加熱器3に流入する際の排気ガス温度が約350〜450℃になるように、燃焼器16で生成する排気ガスの流量および温度、改質器14および蒸発器15にて吸熱される熱量、ならびに熱交換器5にて吸熱される熱量を調整する。
【0083】
このように、排気ガス経路に加熱器3を設置することにより、水添脱硫器2を、水添脱硫を行うのに適した所望の温度とすることができる。また、水添脱硫器2、加熱器3、導入経路6、および排気ガス排出経路7を可能な限り断熱部31に覆われるように設置する。このようにすれば、水添脱硫器2からの放熱を防ぐとともに筐体30内の500〜600℃の熱に水添脱硫器2が直接、曝されることを防ぐことができる。
【0084】
さらにまた、断熱部31によって水添脱硫器2が覆われているため、加熱器3および水添脱硫器2における温度分布をできるだけ一様とし、ばらつきを抑制することができる。よって、水添脱硫器2における温度制御を容易とすることができる。
【0085】
しかしながら、上述のように水添脱硫器2、加熱器3、導入経路6、および排気ガス排出経路7を断熱部31内に設けた構成とした場合であっても、例えば、燃焼器16から高温の輻射熱および筺体30内部の排気ガスの有する熱がこの断熱部31を伝って水添脱硫器2を加熱してしまう。このため、水添脱硫器2は過昇温となってしまうことがある。例えば、燃焼器16の異常が発生し、この燃焼部を収容する筺体(内部筐体)内の温度が必要以上に高温になったとき、脱硫器における過昇となってしまうことがある。また、低負荷時(低発電量時)には、燃料電池1に供給される酸化剤ガスの流量が低下し、熱交換器5から排出される排気ガスの温度が上昇し、加熱器3に導入される排ガスの温度も上昇する。これにより、加熱器3および水添脱硫器2の温度が過昇温となってしまうことがある。
【0086】
そこで、実施例に係る燃料電池システム100では、上述したように、検知器11によって検知された温度が上限温度以上となると、制御器20からの制御指示により、ガス供給器4は、外部から冷却ガスを所定流量で導入経路6に流入させる。このとき、あらかじめ定められた時間内に所定の温度になるよう検知器11によりモニターするとともに、制御器20は検知器11により検知された温度に基づきフィードバック制御を行う。これにより、実施例に係る燃料電池システム100は、水添脱硫器2が過昇温にならないように温度制御を行うことができる。
【0087】
(変形例1)
次に、上記した実施例に示す燃料電池システム100の変形例1について
図5を参照して説明する。
図5は、実施例の変形例1に係る燃料電池システム100の構成の一例を模式的に示す図である。
【0088】
上述した実施例に係る燃料電池システム100は、ガス供給器4から供給された冷却ガスは、導入経路6の途中で、排気ガスと混合させられる構成であった。しかしながら、変形例1に係る燃料電池システム100は、加熱器3に排気ガスと冷却ガスとを分離して導き、この加熱器3内部にて排気ガスと冷却ガスとを混合させる構成とした点でのみ上述した実施例に係る燃料電池システム100とは異なる。
【0089】
変形例1に係る燃料電池システム100では、上記した構成により、冷却ガス経路10と導入経路6との合流部を設けて加熱器3に排気ガスと冷却ガスを事前に合流させて流入させなくてもよくなる。このため、導入経路6と冷却ガス経路10との配管の構成を大幅に簡素化することができ、燃料電池システム100の小型化が可能となる。
【0090】
(変形例2)
実施例に係る燃料電池システム100では、
図4に示すように加熱器3の上に水添脱硫器2が面接触するように配置された構成であり、水添脱硫器2はその底面で加熱器3の上面と面接触していた。しかしながら、水添脱硫器2および加熱器3の配置はこの構成に限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、水添脱硫器2および加熱器3はともに直方体形状をしている。そして、水添脱硫器2の加熱器3側に配される面(底面)と4つの側周面とを、加熱器3によって覆われた構成としてもよい。すなわち、変形例2に係る燃料電池システム100は、
図4に示す燃料電池システム100において、水添脱硫器2と加熱器3との配置構成が異なる点以外は同じ構成である。
【0091】
図6は、実施例の変形例2に係る燃料電池システム100における、水添脱硫器2および加熱器3の配置構成の一例を示す図である。
図6において、上段に水添脱硫器2および加熱器3の側面図を、下段にその平面図をそれぞれ示している。
【0092】
図6に示すように実施例の変形例2に係る燃料電池システム100では、水添脱硫器2と加熱器3との間の接触面を1面から5面に増やすことで、より加熱器3から水添脱硫器2への伝熱効率を向上させることができ、水添脱硫器2の温度制御を容易かつ高速、高精度に行うことができる。
【0093】
なお、
図6に示す実施例の変形例2に係る燃料電池システム100では、ガス供給器4から供給された冷却ガスを、導入経路6の途中で、排気ガスと混合させる構成であるが、上述した実施例1と同様に、加熱器3に排気ガスと冷却ガスとを分離して導き、この加熱器3内部にて排気ガスと冷却ガスとが混合させられる構成としてもよい。
【0094】
(変形例3)
さらに、水添脱硫器2および加熱器3は
図7に示すような配置構成としてもよい。すなわち、変形例3に係る燃料電池システム100は、
図4に示す燃料電池システム100の構成と比較して、水添脱硫器2と加熱器3との配置構成が
図7に示す構成となる点を除けば同じ構成である。
【0095】
図7は、実施例の変形例3に係る燃料電池システム100における、水添脱硫器2および加熱器3の配置構成の一例を示す図である。
図7において、上段に水添脱硫器2および加熱器3の側面図を、下段にその平面図をそれぞれ示している。
【0096】
図7に示すように、実施例の変形例3に係る燃料電池システム100では、水添脱硫器2を2つに分割された加熱器3によって上下から包み込んだ配置構成とする。このように構成することで、水添脱硫器2は加熱器3によって、ほぼ全体を覆われることとなり、水添脱硫器2と加熱器3との接触面積が大きくなるため、結果として加熱器3から水添脱硫器2へ伝わる熱の伝熱面積が増加することとなる。このため、実施例の変形例3に係る燃料電池システム100は、水添脱硫器2の温度ムラを低減することが可能となる。
【0097】
なお、
図7に示す実施例の変形例3に係る燃料電池システム100では、ガス供給器4から供給された冷却ガスを、導入経路6の途中で、排気ガスと混合させる構成であるが、上述した実施例1と同様に、加熱器3に排気ガスと冷却ガスとを分離して導き、この加熱器3内部にて排気ガスと冷却ガスとが混合させられる構成としてもよい。
【0098】
(変形例4)
さらに、水添脱硫器2および加熱器3は
図8に示すような配置構成としてもよい。すなわち、変形例4に係る燃料電池システム100は、
図4に示す燃料電池システム100の構成と比較して、水添脱硫器2と加熱器3との配置構成が
図8に示す構成となる点を除けば同じ構成である。
【0099】
図8は、実施例の変形例4に係る燃料電池システム100における、水添脱硫器2および加熱器3の配置構成の一例を示す図である。
図8において、上段に水添脱硫器2および加熱器3の側面図を、下段にその平面図をそれぞれ示している。
【0100】
図8に示すように加熱器3の筐体内に、水添脱硫器2が収容された配置構成となっている。すなわち、原料経路8が加熱器3内を挿通し水添脱硫器2に接続されている。また、導入経路6および排気ガス排出経路7それぞれが加熱器3の筐体内と連通するように接続されている。また、水添脱硫器2は、加熱器3の筐体の壁面と接触しないようにこの筐体内に収容され、水添脱硫器2と加熱器3の筐体との間に排気ガスが流通できるように流通経路が形成されている。例えば、水添脱硫器2は、加熱器3の筐体内において
図8に示すようにセラミック製の2つの支柱29によって支持されており、これにより水添脱硫器2の周囲に上述した流通経路が形成されるようにして配置することができる。なお、設ける支柱29の個数は2つに限定されるものではなく、安定して水添脱硫器2を支えることができる場合は、1つの支柱29が設けられる構成であってもよいし、2つよりも多い支柱29が設けられる構成であってもよい。また、支柱29の形状は
図8に示すように直方体であってもよいし、円柱であってもよい。
【0101】
また、支柱29を構成する材料はセラミックに限定されるものではなく、例えばステンレス鋼材(SUS)などの金属であってもよいし、300℃前後の温度に耐えうることが可能な樹脂などであってもよい。
【0102】
さらに水添脱硫器2を支持する部材は上述した支柱29に限定されるものではなく、ワイヤーまたは網などであってもよい。すなわち、水添脱硫器2を加熱器3の筐体内に支持できるものであればよい。
【0103】
図8に示すように原料は原料経路8を流通して水添脱硫器2に流入し、この流入側とは反対側となる位置に設けられた原料経路8を通じて流出する。一方、冷却ガスが混合された排気ガスは導入経路6を流通して加熱器3の筐体内に導かれ、この筐体内に収容されている水添脱硫器2の周囲に形成された流通経路を流れる。そして、排気ガス排出経路7を流通して外部に排出される。
【0104】
なお、加熱器3の筐体内に複数の邪魔板(不図示)が設けられており、冷却ガスが混合された排気ガスが、この筐体内を邪魔板により進路を複数回曲げられて加熱器3から排気ガス排出経路7に排出される構成としてもよい。邪魔板が設けられた構成の方が、加熱器3の筐体内において水添脱硫器2全体を排気ガスの有する熱により加熱できるように、この排気ガスを流通させることができるという点で有利である。
【0105】
このような構成とすることで、実施例の変形例4に係る燃料電池システム100は、加熱器3の筐体内を流通する排気ガスが有する熱によって、水添脱硫器2全体を均一に加熱することができる。また、加熱器3の筐体内を流通する排気ガスは、冷却ガス経路10を流通して導入経路6に流入した冷却ガスによって温度調整されている。これにより、加熱器3は、筐体内を流通する排気ガスの有する熱を利用して、水添脱硫器2を所望の温度範囲となるように加熱できる。このため、実施例の変形例4に係る燃料電池システム100は、水添脱硫器2全体を均一に適切な温度となるように加熱することができる。
【0106】
また、変形例4に係る燃料電池システム100は、実施例およびその変形例1から3に係る燃料電池システム100のように接触面を介して加熱器3から水添脱硫器2に排気ガスの有する熱を伝え、加熱する構成ではなく、水添脱硫器2の周辺を流通する排気ガスの熱により加熱する構成である。このため、変形例4に係る燃料電池システム100は、水添脱硫器2と加熱器3との接触面での取り付け加工精度に熱伝導が依存しないため、水添脱硫器2のより高精度な温度制御を行うことができる。
【0107】
なお、
図8では、加熱器3内に収容される水添脱硫器2の形状を直方体としたがこれに限定されるものではない。例えば、水添脱硫器2の形状は、円筒形状であってもよい。このように水添脱硫器2の形状を例えば、円筒形状に形成することができるため、水添脱硫器2の生産上での自由度が増す。
【0108】
また、
図8では、加熱器3内に収容される水添脱硫器2が1つであったが、複数個の水添脱硫器2が連結されて配置された構成としてもよい。また、連結される水添脱硫器2は、加熱器3における排気ガスの流入口から流出口に向かって直列に配置されてもよいし、並列に配置されてもよい。
【0109】
なお、
図8に示す実施例の変形例4に係る燃料電池システム100では、ガス供給器4から供給された冷却ガスを、導入経路6の途中で、排気ガスと混合させる構成であるが、上述した実施例1と同様に、加熱器3に排気ガスと冷却ガスとを分離して導き、この加熱器3内部にて排気ガスと冷却ガスとが混合させられる構成としてもよい。
【0110】
上記した
図5から
図8に示す変形例1から変形例4に係る燃料電池システム100では、水添脱硫器2および加熱器3には検知器11を省略して図示しているが、上述したように、加熱器3または水添脱硫器2に検知器11を備えていてもよい。そして、検知器11によって検知された加熱器3または水添脱硫器2、あるいは加熱器3を流通する排気ガスの温度に基づき、制御器20がガス供給器4に対して、流入させる冷却ガスの流量または温度をフィードバック制御する構成となっている。このような構成とすることで、変形例1から変形例4に係る燃料電池システム100では、水添脱硫器2の温度をより一層、高精度に制御することができる。
【0111】
上記説明から、当業者にとって、本開示の多くの改良、及び他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。