【文献】
          Am. J. Transplant.,2007年,vol.7, no.7,pp.1842-1848
        
        【文献】
          Hum. Immunol.,2008年,vol.69, no.12,pp.826-832
        
        【文献】
          Trends Mol. Med.,2010年,vol.16, no.3,pp.97-106
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  配列番号1のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドを表面において発現させた細胞、配列番号2のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドを表面において発現させた細胞、配列番号3のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドを表面において発現させた細胞、および配列番号4のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドを表面において発現させた細胞に結合するモノクローナル抗体であって、配列番号6のアミノ酸配列を含むMICBポリペプチドにさらに結合する抗体であり、かつ、該抗体と配列番号1の野生型MICAポリペプチドとの間の結合と比べて、E100A、D101S、N102A、S103A、T104S、R105A、N121A、E123S、T124AおよびE126Aからなる群から選択される1、2、3、4つ、またはそれ以上の変異を有する変異体MICAポリペプチドへの低減された結合を有する抗体。
  配列番号1のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドを表面において発現させたC1R細胞、配列番号2のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドを表面において発現させたC1R細胞、配列番号3のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドを表面において発現させたC1R細胞、および配列番号4のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドを表面において発現させたC1R細胞への結合についての2μg/ml以下のフローサイトメトリーにより測定され、4パラメーターロジスティックフィットを用いて計算されたEC50により特徴づけられる、請求項1に記載の抗体。
  配列番号48に示されるアミノ酸配列SDYAWNを含むHCDR1領域;配列番号51に示されるアミノ酸配列FVSYSGTTKYNPSLKSを含むHCDR2領域;配列番号53に示されるアミノ酸配列GYGFDYを含むHCDR3領域;配列番号54に示されるアミノ酸配列SATSSISSIYFHを含むLCDR1領域;配列番号55に示されるアミノ酸配列RTSNLASを含むLCDR2領域;および配列番号56に示されるアミノ酸配列QQGTTIPFTを含むLCDR3領域を含む、MICAポリペプチドおよびMICBポリペプチドに対して特異的に結合するモノクローナル抗体。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
  一態様において、本発明は、とりわけ、ヒトMICAアレルにわたる(ならびに非ヒト霊長類MICAに対する)高親和性を有する抗体の発見から生じる。
【0015】
  抗体は、特に、MICAの主なファミリーを表すことが決定される2つの主要なMICA群のそれぞれからの1つ以上のMICAアレルに結合する:NKG2Dに強力に結合するグループ1アレル(例として、MICA
*001、
*002、
*007、
*012、
*017および
*018)およびNKG2Dに弱く結合するグループ2(MICA
*004、
*006、
*008、
*009および
*019)。サブセットMICA
*001、
*004、
*007および
*008または
*001、
*004、
*007、
*008および
*019上に存在するエピトープに結合することにより、抗体は、ほとんど全ての個体に存在する両方の群のアレルをカバーする。任意選択で、抗体は、
*001を表面において発現するように作製された細胞への、
*004を表面において発現するように作製された細胞への、
*007を表面において発現するように作製された細胞への、および
*008を表面において発現するように作製された細胞への結合についての5μg/ml以下、任意選択で3μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下または0.5μg/ml以下のEC50を有する。
【0016】
  高親和性結合は、とりわけ、抗体がCDCおよびADCCを有効に媒介するのに有利である。本発明は、高いADCCおよび/またはCDC活性を誘導するために最適な抗体結合領域であり、さらに主要MICAアレルにわたり依然として見出されるα1および/またはα2ドメイン内のMICA上のエピトープを提供する。エピトープは、一般に、α1および/またはα2ドメインの側面上に存在し、NKG2D結合表面の完全に外側に存在し、またはNKG2D結合表面と部分的に重複している。さらに、ADCC/CDCの向上および複数アレル結合の特徴を示すα3エピトープが同定される。
【0017】
  MICAとNKG2Dとの相互作用を遮断する抗体の下位群も同定された。Fcγ受容体により結合されるFcドメインを含む場合のADCCおよびCDC活性の誘導またはFcγ受容体により実質的に結合されないFcドメインを含む場合の炎症促進活性の遮断に加え、それらの抗体は、NKG2DのsMICA誘導下方モジュレーションを遮断し得るそれらの能力について有用であった。
【0018】
  抗MICA抗体の存在下でMICA発現細胞と接触されるNKG2D発現免疫細胞中のNKG2D活性を誘導する細胞(例えば、腫瘍細胞、形質移入体(transfectand))の表面上のMICAの能力を遮断しない抗体の他の下位群も同定された。ADCCおよびCDC活性の誘導に加え、それらの抗体は、NKG2D発現免疫エフェクター細胞が(例えば、任意のFcγ受容体媒介機序に加えて)NKG2Dを介して標的細胞を溶解させ得るままになるようにNKG2Dの阻害を回避するそれらの能力について有用であった。
【0019】
  組換えおよび細胞表面結合MICAは、異なる立体構造をとることができると考えられ、細胞結合MICAの結合は、MICAタンパク質に対する遠隔効果を有し得る。特に驚くべきことに、NKG2Dによるシグナリングを誘導する細胞(例えば、腫瘍細胞、形質移入体)の表面上のMICAの能力の遮断は、組換えタンパク質を使用した場合のMICA−NKG2D相互作用を遮断する能力と常に相関しなかった(Biacore試験)。さらに、特に驚くべきことに、汎アレル抗体はα1α2ドメインの水平上のNKG2D結合帯域内で全く見出されなかった一方、NKG2Dによるシグナリングを誘導する細胞(例えば、腫瘍細胞、形質移入体(transfectand))の表面上のMICAの能力のMICA遮断は、結合エピトープの局在と相関しなかった。NKG2D相互作用区域から離れて局在する一部の抗体はNKG2D活性の誘導を遮断し得た一方、NKG2D結合区域近傍または部分的に重複する一部の抗体は、NKG2D活性の誘導を遮断しなかった。さらに、抗体は、それらのエピトープに応じてCDCを媒介する能力において異なった。
【0020】
  MICAのグループ1アレルは、一般に、残基129におけるMを有する一方、グループ2アレルは、残基129におけるVを有する。一実施形態において、MICAグループは、MICAポリペプチドの129位におけるメチオニン(M)またはバリン(V)残基の存在により特徴づけられ、Mは、NKG2Dに強力に結合するMICA形態に関連し、Vは、NKG2Dへのより弱い結合に関連する。
【0021】
  一実施形態において、本発明は、129位におけるメチオニンを有するMICAアレルおよび129位におけるバリンを有するMICAアレルと交差反応する抗体を提供する。一態様において、本発明は、129位におけるメチオニンを有するヒトMICAポリペプチドおよび129位におけるバリンを有するヒトMICAポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。任意選択で、抗体は、129位におけるメチオニンを有するヒトMICAポリペプチドを表面において発現するように作製された細胞への、および129位におけるバリンを有するヒトMICAポリペプチドを表面において発現するように作製された細胞への結合についての5μg/ml以下、任意選択で3μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下または0.5μg/ml以下のEC50を有する。
【0022】
  一実施形態において、抗体は、152位におけるバリンを有するMICBポリペプチドに(例えば、配列番号6のMICBポリペプチドに)さらに結合する。
【0023】
  発見された結合領域は、グルコシル化MICA、特にヒト腫瘍細胞により優位に発現されるグリコシル化を有するMICA上に存在したままである。
【0024】
  一実施形態において、本発明は、とりわけ、MICA発現腫瘍細胞のエフェクター細胞溶解(例えば、NK細胞および/またはT細胞)の誘導においてインビトロおよびインビボで有効である一方、MICAとNKG2Dとの相互作用を遮断する抗体の発見から生じる。NKG2D−MICA相互作用を遮断する抗体は、本明細書に示されるとおりそのような抗体がNKG2DのsMICA誘導下方調節を予防し得るという点で有利である。そのような遮断抗体は、例えば、循環中の高レベルの可溶性MICAを有する患者の治療に特に有用であり得る。別の実施形態において、本発明は、MICA発現腫瘍細胞のエフェクター細胞溶解(例えば、NK細胞および/またはT細胞)の誘導においてインビトロおよびインビボで有効であり、MICA発現細胞(例えば、腫瘍細胞)からのMICAのシェディングを実質的に遮断せずに免疫エフェクター細胞の表面上のNKG2D発現のsMICA誘導下方モジュレーションを阻害する抗体を提供する。そのような抗体は、MICAとNKG2Dとの相互作用を阻害することによりNKG2D発現のsMICA誘導下方モジュレーションを阻害し得る。任意選択で、抗体は、任意選択で9C10、19E9、12A10、18E8、14B4または10F3のCDR中の1つ以上のアミノ酸改変を有する軽鎖および重鎖CDRを含む。
【0025】
  別の実施形態において、本発明は、MICA発現細胞(例えば、腫瘍細胞)からのMICAのシェディングを実質的に遮断せずに、およびMICAとNKG2Dとの相互作用を実質的に遮断せずにMICA発現腫瘍細胞のエフェクター細胞溶解(例えば、NK細胞および/またはT細胞)の誘導においてインビトロおよびインビボで有効な抗体を提供する。任意選択で、抗体は、任意選択で6E4、20C6、16A8、15F9  10A7または14B4のCDR中の1つ以上のアミノ酸改変を有する軽鎖および重鎖CDRを含む。
【0026】
  一実施形態において、複数のMICAアレル(例えば、129位におけるメチオニンを有するMICAアレルおよび129位におけるバリンを有するMICAアレル;MICA
*001、
*004、
*007および
*008アレル)と交差反応し、そのようなMICAアレルに高親和性(例えば、ヒトMICAポリペプチドの前記アレルを表面において発現するように作製された細胞への結合についての5μg/ml以下、任意選択で3μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下または0.5μg/ml以下のEC50)で結合するα1α2ドメイン(NKG2D界面に関与するドメイン)に結合する抗体が提供される。任意選択で、抗体は、NKG2D界面の外側また部分的に外側に局在するが、完全にNKG2D界面内で局在しないα1α2ドメイン上の領域に結合する。
【0027】
  MICAアレルへの結合および関連EC50値は、例えば、本明細書の実施例3の方法に従ってフローサイトメトリーを使用して評価することができる。
【0028】
  別の実施形態において、本発明は、MICAとNKG2Dとの相互作用を実質的に遮断せずに(例えば、MICAおよびNKG2Dは、細胞の表面においてそれぞれ発現される)MICAのα1および/またはα2ドメインに結合する抗体の発見から生じる。そのような抗体は、任意選択で、MICAへの結合においてhNKG2Dと競合しないと特徴づけることができる。任意選択で、抗体は、NKG2D発現細胞中のNKG2D活性を誘導するMICAの能力を阻害しない。そのような抗体は、任意選択で、MICA発現標的細胞を溶解させるNKG2D発現エフェクター細胞(例えば、CD16陰性エフェクター細胞)の能力を減少させず、または遮断しないと特徴づけることができる。抗体は、任意選択で、腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断しない。
【0029】
  一実施形態において、非遮断α1α2ドメイン抗体は、K81およびD82からなる群から選択される1もしくは2つの残基、Q83およびK84からなる群から選択される1もしくは2つの残基、H109、Y111およびL116からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、任意選択で残基D113、Q131、S132およびQ136からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、S133、R134およびT137からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、ならびに/またはM140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、3もしくは4つの残基を含む配列番号1のMICAポリペプチド上のエピトープに結合する(例えば、抗体20C6および10A7)。
【0030】
  一実施形態において、非遮断α1α2ドメイン抗体は、R6およびN8からなる群から選択される1もしくは2つの残基、E97およびH99からなる群から選択される1もしくは2つの残基、E100、D101およびN102からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、S103、T104およびR105からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、任意選択で残基E115、ならびに/またはL178、R179およびR180からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基を含むエピトープに結合する(例えば、抗体15F9)。
【0031】
  一実施形態において、非遮断α1α2ドメイン抗体は、配列番号1のMICAポリペプチドのQ48およびW49からなる群から選択される1もしくは2つの残基、ならびに/または配列番号1のMICAポリペプチドのE51、D52、V53およびL54からなる群から選択される1、2、3もしくは4つの残基を含むエピトープに結合する(例えば、抗体6E4)。
【0032】
  別の実施形態において、本発明は、とりわけ、MICAのα3ドメインに結合し、MICAとNKG2Dとの相互作用を阻害しない(例えば、MICAおよびNKG2Dは、細胞の表面においてそれぞれ発現される)抗体の発見から生じる。任意選択で、抗体は、腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断しない。任意選択で、そのような抗体は、任意選択で、MICAへの結合においてhNKG2Dと競合しないと特徴づけることができる。
【0033】
  一実施形態において、非遮断α3ドメイン抗体は、S224、H225およびD226からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、T227、Q228およびQ229からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、ならびに/またはW230およびD232からなる群から選択される1もしくは2つの残基を含むエピトープに結合する(例えば、抗体16A8)。
【0034】
  別の実施形態において、本発明は、MICAのα1および/またはα2ドメインに結合し、MICAとNKG2Dとの相互作用を阻害する(例えば、MICAおよびNKG2Dは、細胞の表面においてそれぞれ発現される)抗体の発見から生じる。そのような抗体は、任意選択で、MICAへの結合においてhNKG2Dと競合すると特徴づけることができる。抗体は、任意選択で、腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断せずに免疫エフェクター細胞の表面上のNKG2D発現のsMICA誘導下方モジュレーションを阻害する。
【0035】
  一実施形態において、遮断α1α2ドメイン抗体は、E100、D101およびN102からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、S103、T104およびR105からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、N121およびE123からなる群から選択される1もしくは2つの残基、ならびに/またはT124およびE126からなる群から選択される1もしくは2つの残基を含むエピトープに結合する(例えば、抗体19E9、18E8および10F3)。
【0036】
  一実施形態において、遮断α1α2抗体は、配列番号1のMICAポリペプチドのN56、K57およびT58からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、ならびに/または配列番号1のMICAポリペプチドのR61およびR64からなる群から選択される1もしくは2つの残基を含むエピトープに結合する(例えば、抗体9C10および12A10)。
【0037】
  別の実施形態において、本発明は、とりわけ、MICAのα3ドメインに結合し、MICAとNKG2Dとの相互作用を阻害する(例えば、MICAおよびNKG2Dは、細胞の表面においてそれぞれ発現される)抗体の発見から生じる。任意選択で、抗体は、腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断しない。任意選択で、そのような抗体は、任意選択で、MICAへの結合においてhNKG2Dと競合すると特徴づけることができる。抗体は、任意選択で、免疫エフェクター細胞の表面上のNKG2D発現のsMICA誘導下方モジュレーションを阻害する。抗体は、実質的には、腫瘍細胞からのMICAのシェディングを遮断し得、または任意選択で、腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断し得ない。
【0038】
  一実施形態において、遮断α3ドメイン抗体は、T227、Q228およびQ229からなる群から選択される1、2または3つの残基を含むエピトープに結合する(抗体14B4)。
【0039】
  理論により拘束されるものではないが、MICA(例えば、sMICAまたは膜結合MICA)およびNKG2D下方調節とエフェクター細胞の損傷との因果関係を想定する科学文献にかかわらず、MICAは、それ自体、腫瘍の状況において、エフェクター細胞の実質的な損傷を常に引き起こすわけではないことが考えられる。特に、sMICAはNKG2Dの下方調節を引き起こし得る一方、インビボで生じるsMICAの濃度は多くの場合、低すぎてそれ自体、有意なNKG2D下方調節を引き起こし得ない(実施例9参照)。さらに、腫瘍の状況(例えば、確定または進行疾患)において、患者は、一般に、数ある効果のうち、NKG2Dの下方モジュレーションを引き起こす潜在性を有する多数の非MICA成分(例えば、TGF−ベータ)を介する免疫抑制状態である。結果的に、NKG2D−MICA相互作用を遮断し、または遮断しない、およびMICAシェディングを阻害しない薬剤は、それらがCDCおよび/またはADCCを誘導し得る限り、癌の治療において有効である。NKG2D−MICA相互作用を遮断しない抗体は有利である。それというのも、MICA発現腫瘍細胞は、(例えば、長期間の反復投与を有し、または高用量投与される治療について、免疫能が治療の間または治療後に患者中で再樹立する場合)存在する免疫担当エフェクター細胞上のNKG2Dにより認識可能なままである潜在性を有するためである。NKG2D−MICA相互作用を遮断する抗体は、そのような抗体がNKG2DのMICA誘導下方調節を予防し得るという点で有利である(実施例9参照)。そのような遮断抗体は、例えば、循環中の高レベルの可溶性MICAを有する患者の治療に特に有用であり得る。
【0040】
  一実施形態において、本発明は、MICAとNKG2Dとの間の結合(例えば、腫瘍細胞上の表面MICAとエフェクター細胞上の表面NKG2Dの相互作用)を検出可能に低減させず、例えば、MICAおよびNKG2Dの相互作用を実質的に遮断せずMICAポリペプチドに特異的に結合するMICA結合化合物、好ましくは、抗体(抗MICA抗体)を提供する。一実施形態において、本発明は、腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断せずにMICAポリペプチドに結合するMICA結合化合物(例えば、MICA結合ポリペプチド)を提供する。一実施形態において、本発明は、MICAとNKG2Dとの相互作用を実質的に遮断せずに、および腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断せずにMICAポリペプチドに結合するMICA結合化合物を提供する。
【0041】
  別の実施形態において、本発明は、主要MICAアレルMICA
*001、MICA
*004、MICA
*008ならびに任意選択でさらにMICA
*007および/またはMICA
*019を認識するヒトMICAに(特に、α1および/またはα2ドメイン中で)結合する抗体を提供する。一実施形態において、抗体は、任意選択で、非ヒト霊長類種(例えば、カニクイザル)のMICAをさらに認識する。一実施形態において、抗体は、任意選択で、配列番号6のアミノ酸配列を含むMICBポリペプチドをさらに認識する。任意選択で、別の実施形態において、それらの抗体は、MICBをさらに認識しない。任意選択で、抗体は、腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断しない。任意選択で、抗体は、MICAとNKG2Dとの相互作用を実質的に遮断しない。
【0042】
  一実施形態において、本発明は、ヒト腫瘍細胞により発現されるグリコシル化MICAポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。
【0043】
  一実施形態において、本発明は、非ヒト霊長類細胞により発現されるMICAポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。
【0044】
  一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドに特異的に結合する抗体(抗MICA抗体)であって、配列番号2(MICA
*004)のポリペプチドおよび/または配列番号4(MICA
*008)のポリペプチドに結合する抗体を提供する。一実施形態において、抗体は、配列番号1(MICA
*001)のポリペプチドにさらに結合する。一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、配列番号5(MICA
*019)のポリペプチドに結合する抗体を提供する。一実施形態において、抗体は、配列番号3(MICA
*007)のポリペプチドにさらに結合する。一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、配列番号2(MICA
*004)のポリペプチド、配列番号4(MICA
*008)のポリペプチドおよび配列番号5(MICA
*019)のポリペプチドに結合する抗体を提供する。一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、配列番号1(MICA
*001)のポリペプチド、配列番号2(MICA
*004)のポリペプチド、配列番号4(MICA
*008)のポリペプチド、および配列番号5(MICA
*019)のポリペプチドに結合し、任意選択で、配列番号3(MICA
*007)のポリペプチドにさらに結合する抗体を提供する。MICAアレルのグループ1およびグループ2の両方にわたるアレルMICA
*001、−
*004、および
*008、(および有利には、さらに
*007および
*019)に結合することにより、実質的に全部のヒト集団がそのような本発明の抗MICA剤による治療に好適である。任意の実施形態において、配列番号1〜5のポリペプチドは、O−グリカン(セリンまたはトレオニンに結合しているN−アセチルラクトサミン)を含み得る。任意の実施形態において、配列番号1〜5のポリペプチドは、コア2O−グリカン(N−アセチルガラクトサミンに連結しているN−アセチルグルコサミン分枝を含むO−グリカン)および/またはN結合グリカンを含み得る。一実施形態において、抗体は、MICAとNKG2Dとの相互作用を実質的に遮断せずに、および/または腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断せずにMICAポリペプチドに結合する。一実施形態において、抗体は、MICAのα1および/またはα2ドメインに結合する。一実施形態において、抗体は、MICAのα3ドメインに結合する。
【0045】
  好ましくは、化合物は、抗体、任意選択で、2つのIg重鎖および2つのIg軽鎖を含むテトラマー抗体である。好ましくは、抗体は、ヒトMICAポリペプチドについての10
−9M未満、好ましくは、10
−10M未満、または好ましくは、10
−11M未満の、任意選択で二価である結合親和性(K
D)を有する。好ましくは、抗体は、枯渇抗体であって、任意選択で、MICA発現腫瘍細胞に対するADCCおよび/またはCDCを誘導する抗体である。
【0046】
  具体的な実施形態において、本発明は、hNKG2D発現NKまたはT細胞のNKG2D媒介細胞毒性を実質的に阻害せずにNKまたはT細胞による(例えば、インビボまたはインビトロでの)MICA発現腫瘍細胞の枯渇を媒介する抗体を提供する。
【0047】
  具体的な実施形態において、本発明の抗体は、MICAへの結合においてhNKG2Dと競合しない。
【0048】
  具体的な実施形態において、本発明の抗体がMICA発現細胞上のMICAに結合している場合、MICA発現細胞は、結合時に例えばhNKG2Dの下方モジュレーションおよび/または内在化の刺激を介して細胞表面hNKG2Dの量を実質的に低減させず、高親和性および緩慢なオフレートを有し、カニクイザルおよび/またはアカゲザルMICAと交差反応し、枯渇アイソタイプ、例えば、ヒトIgG1などのものである。
【0049】
  一態様において、本発明は、MICAを特異的に結合する抗体であって、以下の特性:
(a)MICAポリペプチドへの結合についての10
−8M未満、好ましくは、10
−9M未満、または好ましくは、10
−10M未満のKdを有する;
(b)配列番号1のMICAポリペプチドの1〜88、89〜181および182〜274からなる群から選択されるドメインの残基に対応するセグメント中の少なくとも1つの残基に結合し、ならびに/または本明細書に記載のエピトープ(MICA上の1つ以上アミノ酸残基)に結合する;
(c)配列番号1〜5の配列をそれぞれ含む、MICA
*001、
*004、
*007、
*008、および
*019ポリペプチドの2、3、4または5つに結合する;
(d)腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断しない;
(e)MICAとNKG2Dとの相互作用(例えば、腫瘍細胞上の表面MICAとエフェクター細胞上の表面NKG2Dの相互作用)を実質的に遮断しない;
(f)エフェクター細胞(例えば、NKG2D+CD16−NK細胞)によるMICA発現細胞の溶解の実質的な減少を引き起こさない;
(g)MICAを表面上で発現する細胞に対する補体依存性細胞毒性(CDC)および/または抗体依存性細胞毒性(ADCC)を誘導する;ならびに
(h)MICAポリペプチドへの結合について、抗体6E4、20C6、16A8、15F9および10A7と競合する
の1つ以上(それらの任意の組合せ、または全てを含む)を有する抗体を提供する。
【0050】
  本明細書の実施形態のいずれかにおいて、本発明の抗体は、上記(a)〜(h)のいずれか1つ以上の特徴により特徴づけることができる。
【0051】
  一実施形態において、抗MICA抗体を試験する方法であって、(i)抗体がMICA発現細胞からのMICAのシェディングを遮断するか否かを評価することおよび/または(ii)抗体がMICAとNKG2Dとの相互作用を遮断するか否かを評価することを含む方法が提供される。ステップ(i)は、任意選択で、MICAポリペプチドに結合する抗体を、MICAポリペプチドを発現する細胞と接触させることを含み得る。ステップ(ii)は、任意選択で、MICAポリペプチドに結合する抗体を、NKG2Dポリペプチド(例えば、単離ポリペプチドまたは細胞の表面上で発現されたポリペプチド)の存在下で、MICAポリペプチド(例えば、単離ポリペプチドまたは細胞の表面上で発現されたポリペプチド)と接触させることを含み得る。
【0052】
  別の実施形態において、任意選択で、癌の治療のための、哺乳動物対象においてMICAポリペプチドに結合する抗体を産生する方法であって、a)複数の抗体を提供する、任意選択で、MICAポリペプチドを含む免疫原により非ヒト哺乳動物を免疫化するステップ;およびb)抗体を複数の抗体から選択する選択ステップを実施するステップを含み:
そのステップは:
(i)抗体がヒトMICAポリペプチド、任意選択で、配列番号1〜5のポリペプチドの1,2、3、4つもしくは全てに結合するか否かを試験し、抗体がヒトMICAポリペプチドに結合する場合にその抗体を選択すること;および/または
(ii)抗体がMICA発現細胞からのMICAのシェディングを遮断するか否かを試験し、抗体がシェディングを遮断しない場合にその抗体を選択すること;および/または
(iii)抗体がMICA(例えば、表面MICA)とNKG2Dとの相互作用を遮断するか否かを試験し、好ましくは、抗体がエフェクター細胞(例えば、NKG2D+CD16−NK細胞によるMICA発現細胞の溶解の実質的な減少を引き起こすか試験し、抗体がMICA(例えば、表面MICA)とNKG2Dとの相互作用を遮断しない場合、好ましくは、抗体がMICA発現細胞の溶解の実質的な減少を引き起こさない場合にその抗体を選択すること
を含む方法が提供される。
【0053】
  一態様において、本発明は、とりわけ、MICAアレルの2つの主なグループからの主要ヒトMICAアレルにわたる(ならびに非ヒト霊長類MICAおよびMICBに対する)高親和性を有する遮断抗MICA抗体の発見から生じる。一実施形態において、MICAグループは、MICAポリペプチドの129位におけるメチオニン(M)またはバリン(V)残基の存在により特徴づけられ、Mは、NKG2Dに強力に結合するMICA形態に関連し、Vは、NKG2Dへのより弱い結合に関連する。一実施形態において、本発明は、129位におけるメチオニンを有するMICAアレルおよび129位におけるバリンを有するMICAアレルと交差反応する遮断抗体を提供する。一態様において、本発明は、129位におけるメチオニンを有するヒトMICAポリペプチドおよび129位におけるバリンを有するヒトMICAポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体であって、MICA媒介hNKG2D活性を阻害する抗体を提供する。一実施形態において、抗体は、さらに結合し、抗体は、152位におけるバリンを有するMICBポリペプチドに(例えば、配列番号1のMICBポリペプチドに)結合する。好ましくは、前記抗体は、MICB媒介hNKG2D活性を阻害する。152位におけるバリンを有するMICBポリペプチドは、可溶性NKG2Dへの強力な結合を示すと報告されている。152位におけるバリンを有するMICBポリペプチドおよび129位におけるメチオニンを有するMICAポリペプチドに結合する抗体は、NKG2Dへの強力な結合を有するアレルから生じるより大きい感受性または重度の疾患を有する個体において有利であり得る。
【0054】
  本発明の遮断抗MICA抗体はまた、MICAの主なファミリーを表すことが決定される2つの主要MICAグループ:NKG2Dに強力に結合するグループ1アレル(例として、MICA
*001、
*002、
*007、
*012、
*017および
*018)およびNKG2Dに弱く結合するグループ2(MICA
*004、
*006、
*008、
*009および
*019)のそれぞれからの1つ以上の高率発生アレルと交差反応(結合)する。サブセットMICA
*001、
*004、
*007、
*008および
*019上に存在するエピトープに結合することにより、抗体は、ほとんど全ての個体に存在する両方のグループのアレルをカバーする。MICAのグループ1アレルは、一般に、残基129におけるMを有する一方、グループ2アレルは残基129におけるVを有する。
【0055】
  別の態様において、本発明は、とりわけ、他の抗MICA抗体または抗NKG2D抗体のいずれよりもNKG2D遮断において有意に有効であり、NKG2D媒介細胞毒性の遮断においてもMICAに結合する能力から予測されるよりも有効である、あるエピトープに対するMICAに対する(ならびに非ヒト霊長類MICAおよびMICBに対する)抗体の発見から生じる。特に、ピコモル濃度範囲の親和性を有する抗MICA抗体は、阻害において2log小さい親和性(K
D)を有する抗MICA抗体よりも4log良好であった。
【0056】
  本発明の遮断MICA抗体は、NKG2Dとのいかなる競合も、NKG2Dによるいかなる置換も、NKG2Dのいかなる残留結合も妨害する能力により特性づけることができる。他の高親和性NKG2DまたはMICA抗体は、それらのリガンド(例えば、それぞれMICA/ULPB/RAET1またはNKG2D)によりいくらかの置換を残し得る。さらに、NKG2D−MICA相互作用の結晶構造から観察されるとおり、NKG2Dは、ホモダイマーとして作用し、MICAα1α2プラットフォームドメインの頂部と相互作用する2つの対称表面(それぞれのNKG2D鎖上に1つ)を有する。2つのNKG2D鎖は、両方とも、非対称MICAプラットフォームドメインの明らかに異なる表面への結合により相互作用に寄与する(例えば、Li  et  al.(2001)Nature  Immunol.2(5):443−450参照)。したがって、本発明の抗体は、任意選択で、例えば、MICAポリペプチドへのNKG2Dホモダイマー中の両方のNKG2Dモノマーの結合を遮断(例えば、干渉、競合)することによりMICA−NKG2D相互作用を完全に遮断し得る。他のMICA抗体(またはNKG2D抗体)は、2つのNKG2D結合部位の一方のみを完全に遮断し得る。
【0057】
  本発明の遮断抗MICA抗体による治療は、枯渇抗体(例えば、IgG1またはIgG3アイソタイプ)として使用される場合にMICA発現細胞を枯渇させるためのそれらの使用に加え、他のリガンド(例えば、ULBP)への結合および後続の活性化に利用可能なNKG2D受容体の数を低減させることにより不所望なより広い免疫系阻害の惹起を低減させずにNKG2DのMICAおよび/またはB媒介活性化により駆動されると考えられる炎症病態においてMICA(およびMICB)を標的化する手段を提供する。そのような完全遮断抗MICA抗体の可能性は、NKG2D抗体の投与により引き起こされる全身性免疫抑制効果を引き起こさずに炎症の部位への(例えば、関節炎患者における関節または他の炎症部位中への)抗MICA抗体の局所送達の可能性も開く。
【0058】
  一実施形態において、本発明は、MICA発現細胞のエフェクター細胞溶解(例えば、NK細胞および/またはT細胞)の阻害においてインビトロおよびインビボで有効であり、MICAとNKG2Dとの相互作用を実質的に遮断する抗体。
【0059】
  一実施形態において、特に炎症または自己免疫障害の治療において使用される場合、本発明の抗体は、NKG2D活性化、NKG2Dシグナリング、NKG2D発現NK細胞もしくはT細胞の活性化、またはエフェクター細胞(例えば、NKG2D+CD16−NK細胞)によるMICA発現細胞の溶解を実質的に低減させ、または阻害する非枯渇抗体である。
【0060】
  一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドに特異的に結合し(抗MICA抗体)、MICAとhNKG2Dとの間の結合(例えば、細胞上の表面MICAとエフェクター細胞上の表面NKG2Dとの相互作用)を低減させる(例えば、実質的に排除する)MICA結合化合物、好ましくは、抗体を提供する。
【0061】
  一実施形態において、抗MICA抗体または結合化合物は、MICBポリペプチドにさらに特異的に結合し、MICBとhNKG2Dとの間の結合を低減させる(例えば、実質的に排除する)。
【0062】
  一実施形態において、本発明は、MICA(および任意選択でMICB)への結合においてhNKG2Dと競合し、hNKG2DのMICA(および任意選択でMICB)への結合を妨害する抗体を提供する。
【0063】
  一実施形態において、本発明は、MICA(および任意選択でMICB)ポリペプチドとhNKG2Dホモダイマーの両方のhNKG2D鎖との相互作用を阻害または遮断する抗体を提供する。任意選択で、抗体はMICAポリペプチド(および任意選択でMICBポリペプチド)のα1ドメインおよびMICAポリペプチド(および任意選択でMICBポリペプチド)のα1ドメインの両方と、hNKG2Dホモダイマーとの相互作用を遮断する(例えば、抗体は、MICAα1α2プラットフォームとhNKG2Dホモダイマーの両方のhNKG2D鎖との相互作用を阻害する)。
【0064】
  一実施形態において、本発明の抗体は、ポリペプチドのHCMVにも、UL18にも、ULBP1にも、ULBP2にも、ULBP3にも、ULBP4にも、ULBP5にも、ULBP6にも実質的に結合しない(Champsaur  et  al(2010)Immunol.Rev.235:267−285参照)。
【0065】
  一実施形態において、本発明は、129位におけるメチオニンを有するヒトMICAポリペプチド(例えば、天然MICAアレル)および129位におけるバリンを有するヒトMICAポリペプチド(例えば、天然MICAアレル)上の共通の決定基に特異的に結合し、任意選択で、152位におけるバリンを有するヒトMICBポリペプチド(例えば、天然MICBアレル)上の共通の決定基にさらに特異的に結合する抗体であって、MICAとNKG2Dとの間(および任意選択でMICBとNKG2Dとの間)の結合を低減させる(例えば、排除する)抗体を提供する。
【0066】
  さらなる実施形態において、本発明は、とりわけ、ヒトMICAに、好ましくは、α1α2プラットフォームドメイン(すなわち、α1および/またはα2ドメイン)中で結合し、主要MICAアレルMICA
*001、MICA
*004、MICA
*008ならびに任意選択でさらにMICA
*007および/またはMICA
*019を認識し、任意選択で、非ヒト霊長類種(例えば、カニクイザル)のMICAをさらに認識し、任意選択で、MICBをさらに認識する抗体の発見から生じる。一実施形態において、抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含むMICBポリペプチドをさらに認識する。任意選択で、抗体は、腫瘍細胞からのMICAのシェディングをさらに実質的に阻害しない。
【0067】
  一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドに特異的に結合する抗体(抗MICA抗体)であって、MICAとNKG2Dとの間の結合を低減させ(例えば、実質的に排除し)、配列番号2(MICA
*004)のポリペプチドおよび/または配列番号4(MICA
*008)のポリペプチドに結合する抗体を提供する。一実施形態において、抗体は、配列番号1(MICA
*001)のポリペプチドにさらに結合する。一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、配列番号5(MICA
*019)のポリペプチドに結合する抗体を提供する。一実施形態において、抗体は、配列番号3(MICA
*007)のポリペプチドにさらに結合する。一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、配列番号2(MICA
*004)のポリペプチド、配列番号4(MICA
*008)のポリペプチドおよび配列番号5のポリペプチド(MICA
*019)に結合する抗体を提供する。一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、配列番号1(MICA
*001)のポリペプチド、配列番号2(MICA
*004)のポリペプチド、配列番号4(MICA
*008)のポリペプチド、および配列番号5(MICA
*019)のポリペプチドに結合し、任意選択で、配列番号3(MICA
*007)のポリペプチドにさらに結合する抗体を提供する。MICAアレルのグループ1およびグループ2の両方にわたるアレルMICA
*001、−
*004、および
*008、(および有利にはさらに
*007および
*019)に結合することにより、実質的に全部のヒト集団が本発明のそのような抗MICA剤による治療に好適である。一実施形態において、抗体は、MICAのα1および/またはα2ドメインに結合する。
【0068】
  好ましくは、化合物は、抗体、任意選択で、2つのIg重鎖および2つのIg軽鎖を含むテトラマー抗体である。
【0069】
  好ましくは、抗体は、ヒトMICAおよび/またはMICBポリペプチド(例えば、本明細書において称されるいずれか1つ以上または全てのMICAおよび/またはMICBアレル)についての10
−9M未満、好ましくは、10
−10M未満、好ましくは、10
−11M未満、好ましくは、10
−12M未満、または好ましくは、10
−13M未満の、任意選択で一価または二価である結合親和性(K
D)を有する。好ましくは、抗体は、2つのIg重鎖および2つのIg軽鎖を含むテトラマー抗体であり、K
Dは二価である。任意選択で、抗体は、10、5、または1μg/ml以下の特定のMICAおよび/またはMICBポリペプチド、例えば、本明細書において称されるいずれか1つ以上または全てのMICAおよび/またはMICBアレル)を発現するように作製された細胞への結合についてのEC50を有する。好適な細胞な例は、C1R−MICA細胞である。
【0070】
  一実施形態において、特に抗体が炎症または自己免疫疾患の治療または予防において使用される場合、化合物は、非枯渇抗体(抗体が結合する細胞を枯渇させない抗体)である。好ましくは、抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。好ましくは、抗体は、Fcγ3A受容体(CD16)により結合され得る定常領域を含まず、例えば、ヒトIgG4サブタイプの抗体またはFcドメインを欠く抗体断片である。好ましくは、抗体は、ヒトIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。
【0071】
  一実施形態において、抗体は、非ヒト霊長類細胞により発現されるMICAポリペプチドに特異的に結合する。具体的な実施形態において、本発明の抗体は、ヒトMICAへの結合についての高親和性および緩慢なオフレートを有し、カニクイザル(Macaca  fascicularis)および/またはアカゲザル(Macaca  mulatta)MICAと交差反応する。
【0072】
  一態様において、本発明は、MICAに特異的に結合する抗体であって、以下の特性:
(a)MICAポリペプチドへの結合についての10
−9M未満、好ましくは、10
−10M未満、好ましくは、10
−11M未満、好ましくは、10
−12M未満、または好ましくは、10
−13M未満のK
Dを有し、好ましくは、それぞれのMICAポリペプチドアレルMICA
*001、
*004、および
*008、任意選択で、さらに
*007および/または
*019についての前記K
Dの親和性を有する;
(b)配列番号1のMICAポリペプチドの1〜88もしくは89〜181からなる群から選択されるドメインの残基に対応するセグメント中の少なくとも1つの残基に結合し、および/または本明細書に記載のエピトープ(MICA上の残基)に結合する;
(c)129位におけるメチオニンを有するヒトMICAポリペプチド(例えば、天然MICAアレル)および129位におけるバリンを有するヒトMICAポリペプチド(例えば、天然MICAアレル)に結合し、MICAとNKG2Dとの間の結合を低減させ(例えば、実質的に排除し);および/または152位におけるバリンを有するヒトMICBポリペプチド(例えば、天然MICAアレル)に結合する;
(d)配列番号1〜5の配列をそれぞれ含むMICA
*001、
*004、
*007、
*008、および
*019ポリペプチドの2、3、4または5つに結合する;
(e)腫瘍細胞からのMICAのシェディングを実質的に遮断しない;
(f)MICAとNKG2Dとの相互作用(例えば、腫瘍細胞上の表面MICAとエフェクター細胞上の表面NKG2Dとの相互作用)を阻害および/または実質的に遮断し、任意選択で、MICAとNKG2Dホモダイマー内の両方のNKG2D鎖との相互作用を遮断する;
(g)MICA媒介NKG2D活性化、NKG2Dシグナリング、NKG2D発現NKもしくはT細胞の活性化、またはエフェクター細胞(例えば、NKG2D+CD16−NK細胞)によるMICA発現細胞の溶解を低減させ、または阻害し得る;
(h)(例えば、mAbがCD16により結合されるか否かに応じて、抗体のFc領域の性質に応じて)MICAを表面上で発現する細胞に対する補体依存性細胞毒性(CDC)および/または抗体依存性細胞毒性(ADCC)を実質的に誘導し、または誘導しない;
(i)NKG2D発現細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)の表面上のNKG2D発現のsMICA媒介下方モジュレーションを低減させ、または阻害し得る;ならびに
(j)MICAポリペプチドへの結合について抗体9C10、19E9、12A10、18E8または10F3と競合する
の1つ以上(それらの任意の組合せ、またはそれらの全てを含む)を有する抗体を提供する。
【0073】
  本明細書の実施形態のいずれかにおいて、本発明の抗体は、上記(a)〜(j)のいずれか1つ以上の特徴により特徴づけることができる。
【0074】
  一実施形態において、抗MICA抗体を試験する方法であって、(i)抗体が残基129におけるメチオニンを有するMICAポリペプチドおよび残基129におけるバリンを有するMICAポリペプチドの両方(および任意選択で、さらに残基152におけるメチオニンを有するMICBポリペプチド)に高親和性で結合するか否かを評価すること、ならびに(ii)抗体がMICA(および任意選択で、MICB)とNKG2Dとの相互作用を遮断するか否かを評価することを含む方法が提供される。一実施形態において、抗MICA抗体を試験する方法であって、(i)抗体が配列番号1〜5の配列をそれぞれ含むMICA
*001、
*004、
*007、
*008、および
*019ポリペプチドの2、3、4または5つに高親和性で結合するか否かを評価することならびに(ii)抗体がMICAとNKG2Dとの相互作用を遮断するか否かを評価することを含む方法が提供される。ステップ(i)は、任意選択で、MICAポリペプチドに結合する抗体を、MICAポリペプチドを発現する細胞と接触させることを含み得る。ステップ(ii)は、任意選択で、MICAポリペプチドに結合する抗体を、NKG2Dポリペプチド(例えば、単離ポリペプチドまたは細胞の表面上で発現されたポリペプチド)の存在下で、MICAポリペプチド(例えば、単離ポリペプチドまたは細胞の表面上で発現されたポリペプチド)と接触させることを含み得る。ステップ(i)において前記MICAポリペプチドに結合し、ステップ(ii)においてMICAとNKG2Dとの相互作用を遮断する抗体は、炎症または自己免疫障害のための候補治療として同定および/または選択することができる。
【0075】
  別の実施形態において、任意選択で、癌の治療のための、哺乳動物対象においてMICAポリペプチドに結合する抗体を産生する方法であって、a)複数の抗体を提供する、任意選択で、MICAポリペプチドを含む免疫原により非ヒト哺乳動物を免疫化し、または抗体のファージディスプレイライブラリーを産生するステップ;およびb)抗体を前記複数の抗体から選択する選択ステップを実施することを含み、そのステップは、
(i)抗体がヒトMICAポリペプチド、任意選択で、MICA
*001、
*004、
*007、
*008、および
*019アレル、例えば、配列番号1〜5の配列をそれぞれ含むポリペプチドの1、2、3つもしくは全てに高親和性で結合するか否かを試験し、抗体が前記MICAポリペプチドに高親和性で結合する場合にその抗体を選択すること;ならびに/または
(ii)抗体がMICAと(例えば、表面MICA、MICA
*001、
*004、
*007、
*008、および
*019アレルのいずれか1、2、3つまたは全て)とhNKG2Dとの相互作用を遮断するか否か、および/もしくはNKG2D活性化、NKG2Dシグナリング、NKG2D発現NKもしくはT細胞の活性化、もしくはエフェクター細胞(例えば、NKG2D+T細胞、NKG2D+CD16+NK細胞、NKG2D+CD16−NK細胞)によるMICA発現細胞の溶解を低減させ、もしくは阻害するか否かを試験し、抗体がMICAとhNKG2Dとの相互作用を遮断する場合にその抗体を選択すること;ならびに/または
(iii)NKG2D発現細胞を抗体の存在下で可溶性MICAポリペプチドと接触させる場合、抗体がNKG2D発現細胞中のNKG2D下方モジュレーション(細胞表面発現の減少)を低減させ、もしくは阻害するか否かを試験し、抗体がNKG2D下方モジュレーションを低減させ、もしくは阻害する場合にその抗体を選択することを含む方法が提供される。
【0076】
  本方法は、任意選択で、抗体がMICA発現細胞からのMICAのシェディングを遮断するか否かを試験し、抗体がシェディングを遮断しない場合にその抗体を選択することを含む選択ステップ(iv)を含み得る。
【0077】
  一実施形態において、本発明の抗体は、R6、N8、Q48、W49、E51、D52、V53、L54、N56、K57、T58、R61、R64、K81、D82、Q83、K84、E97、H99、E100、D101、N102、S103、T104、R105、H109、Y111、D113、E115、L116、N121、E123、T124、E126、Q131、S132、S133、R134、Q136、T137、M140、N141、R143、N144、L178、R179、R180、S224、H225、D226、T227、Q228、Q229、W230およびD232(配列番号1〜5のいずれかのMICAに関する)からなる群から選択されるヒトMICAポリペプチドの1、2、3、4、5、6、7つ以上の残基を含むエピトープに結合する。
【0078】
  一実施形態において、本発明は、MICA結合化合物、好ましくは、MICAポリペプチドのα1および/またはα2ドメイン内で少なくとも部分的に、または任意選択で完全に結合する抗MICA抗体を提供する。α1およびα2ドメインは、配列番号1のMICAポリペプチドに関してアミノ酸残基1〜88(任意選択で、1〜85)および89〜181(例えば、86〜181)内にそれぞれ局在する。任意選択で、本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、MICAポリペプチドのα1ドメイン内のアミノ酸残基(配列番号1の残基アミノ酸残基1〜88(任意選択で、1〜85))に結合する。任意選択で、本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、MICAポリペプチドのα2ドメイン内のアミノ酸残基(配列番号1の残基アミノ酸残基89〜181(任意選択で、86〜181))に結合する。任意選択で、本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、MICAポリペプチドのα1およびα2ドメイン内のアミノ酸残基に結合する。
【0079】
  一実施形態において、抗体は、Q48およびW49からなる群から選択される1もしくは2つの残基、ならびに/またはE51、D52、V53およびL54からなる群から選択される1、2、3もしくは4つの残基を含むエピトープに結合する(抗体6E4)。
【0080】
  一実施形態において、抗体は、N56、K57およびT58からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、ならびに/またはR61およびR64からなる群から選択される1もしくは2つの残基を含むエピトープに結合する(抗体9C10および12A10)。
【0081】
  一実施形態において、抗体は、K81およびD82からなる群から選択される1もしくは2つの残基、Q83およびK84からなる群から選択される1もしくは2つの残基、H109、Y111およびL116からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、任意選択で残基D113、S133、R134およびT137からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、ならびに/またはM140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、3もしくは4つの残基を含むエピトープに結合する(抗体20C6)。
【0082】
  一実施形態において、抗体は、K81およびD82からなる群から選択される1もしくは2つの残基、Q83およびK84からなる群から選択される1もしくは2つの残基、H109、Y111およびL116からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、任意選択で残基D113、Q131、S132およびQ136からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、ならびに/またはM140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、3もしくは4つの残基を含むエピトープに結合する(抗体10A7)。
【0083】
  一実施形態において、抗体は、E100、D101およびN102からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、S103、T104およびR105からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、N121およびE123からなる群から選択される1もしくは2つの残基、ならびに/またはT124およびE126からなる群から選択される1もしくは2つの残基を含むエピトープに結合する(抗体19E9および18E8)。
【0084】
  一実施形態において、抗体は、R6およびN8からなる群から選択される1もしくは2つの残基、E97およびH99からなる群から選択される1もしくは2つの残基、E100、D101およびN102からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、S103、T104およびR105からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、任意選択で残基E115、ならびに/またはL178、R179およびR180からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基を含むエピトープに結合する(抗体15F9)。
【0085】
  一実施形態において、本発明は、MICAポリペプチドのα3ドメイン内で少なくとも部分的に結合するMICA結合化合物、好ましくは、抗MICA抗体を提供する。α3ドメインは、それぞれ配列番号1のMICAポリペプチドに関してアミノ酸残基182〜274内に局在する。一実施形態において、抗体は、T227、Q228およびQ229からなる群から選択される1、2または3つの残基を含むエピトープに結合する(抗体14B4および16A8)。一実施形態において、抗体は、S224、H225およびD226からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、T227、Q228およびQ229からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基、ならびに/またはW230およびD232からなる群から選択される1もしくは2つの残基を含むエピトープに結合する(抗体16A8)。
【0086】
  任意選択で、α1および/またはα2ドメイン内の上記残基のいずれかにおける変異を有するMICAポリペプチドへの抗体の結合は、配列番号1の野生型MICAポリペプチドへの結合と比較して実質的に低減される。
【0087】
  本発明は、抗MICA抗体の使用が例えばヒト対象における癌、炎症および自己免疫障害の治療に有用であり得ることを提供する。
【0088】
  一態様において、NKG2DとMICAとの間の相互作用を阻害しない抗体抗体、またはNKG2DとMICAとの間の相互作用を阻害する抗体は、枯渇抗体である。そのような抗体は、癌の治療において特に有用であるが、炎症および自己免疫障害において使用することもできる。抗体は、所望の効果または抗体の使用に応じて毒性剤または他の薬剤にカップリングさせてまたはさせないで使用することができる。一実施形態において、抗MICA抗体は、「ネイキッド抗体(naked  antibody)」であり、毒性剤にカップリングされておらず、任意選択で、ネイキッド抗体は、Fcγ受容体、例えば、CD16への結合を増加させるように改変されたFc領域を含む。一実施形態において、ネイキッドまたはカップリング抗体は、Fcγ受容体(例えば、CD16)に結合するヒトFc領域(例えば、IgG1)を含む重鎖を含む。任意選択で、そのような抗体は、MICAを表面上で発現する細胞に対する補体依存性細胞毒性(CDC)および/または抗体依存性細胞毒性(ADCC)を誘導する。
【0089】
  任意選択で、いずれかの実施形態において、抗体(例えば、IgG1、抗体断片など)は、細胞に対して毒性である毒性剤(例えば、化学療法剤)をさらに含む。
【0090】
  一態様において、エフェクター細胞中のMICA誘導NKG2D活性を阻害する抗体は、非枯渇抗体(抗体が結合する細胞を枯渇させない抗体)である。一態様において、抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。一態様において、抗体は、Fcγ3A受容体(CD16)により結合され得る定常領域を含まず、例えば、ヒトIgG4サブタイプの抗体またはFc断片を欠く抗体断片である。一実施形態において、抗体は、EUインデックスによる残基228のセリンからプロリンへの変異を含むIgG4重鎖を含む。好ましくは、抗体は、ヒトIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。そのような抗体は、炎症および自己免疫障害の治療において特に有用である。
【0091】
  本開示は、ヒトMICAに特異的に結合する抗体、抗体断片、および誘導体をさらに提供する。本発明は、そのような抗体組成物、その上癌、炎症障害および自己免疫障害を治療、予防および診断する本発明の方法のいずれかにおけるそれらの使用を提供する。
【0092】
  一実施形態において、抗体は、ヒトMICAポリペプチド(例えば、配列番号1〜5のMICA
*001、
*004、
*007、
*008、および
*019アレルの1、2、3つまたは全てのポリペプチド、好ましくは、MICA
*001、
*004および
*008のそれぞれ)についての10
−8M未満、好ましくは、10
−9M未満、または好ましくは、10
−10M未満の結合親和性(K
D)を有する。
【0093】
  本発明の実施形態のいずれかの一態様において、抗体は、抗体6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9および14B4からなる群から選択される抗体のそれぞれの重鎖および/または軽鎖の1、2または3つのCDRを有する重鎖および/または軽鎖を有し得る。
【0094】
  本発明の実施形態のいずれかの一態様において、抗体は、MICAポリペプチドへの結合について、モノクローナル抗体6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9および14B4のいずれか1つまたは任意の組合せと競合する。一実施形態において、本発明の抗体は、MICAポリペプチドへの結合について、以下からなる群から選択される抗体と競合する:
(a)それぞれ配列番号7および8のVHおよびVL領域を有する抗体(6E4);
(b)(a)それぞれ配列番号20および21のVHおよびVL領域を有する抗体(20C6);
(c)それぞれ配列番号33および34のVHおよびVL領域を有する抗体(16A8);
(d)それぞれ配列番号46および47のVHおよびVL領域を有する抗体(19E9);
(e)それぞれ配列番号57および58のVHおよびVL領域を有する抗体(9C10);
(f)それぞれ配列番号68および69のVHおよびVL領域を有する抗体(12A10);
(g)それぞれ配列番号79および80のVHおよびVL領域を有する抗体(10A7);
(h)それぞれ配列番号90および91のVHおよびVL領域を有する抗体(18E8);
(i)それぞれ配列番号101および102のVHおよびVL領域を有する抗体(10F3);
(j)それぞれ配列番号112および113のVHおよびVL領域を有する抗体(15F9);ならびに
(k)それぞれ配列番号123および124のVHおよびVL領域を有する抗体(14B4)。
【0095】
  一実施形態において、抗体は、ヒトに好適である。一実施形態において、抗体は、キメラであり、例えば、非ネズミ、任意選択で、ヒト定常領域を含有する。一実施形態において、抗体は、ヒトまたはヒト化である。本発明の実施形態のいずれかの一態様において、抗体のアイソタイプは、ヒトIgG、任意選択で、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。一実施形態において、抗体は、ヒトFcドメインを含み、またはFcγR(例えば、FcγRIIIA)により結合されるアイソタイプのもの、例えば、IgG1またはIgG3アイソタイプの抗体である。
【0096】
  本発明の実施形態のいずれかの一態様において、抗体は、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、単鎖抗体断片、または複数の異なる抗体断片を含む多重特異的抗体から選択される抗体断片である。任意選択で、本発明の抗体は、さらにテトラマー(2つの重鎖および2つの軽鎖)であり、したがって、二価である(例えば、IgG抗体)。
【0097】
  ある実施形態において、本発明の抗体は、毒性剤をさらに含む。一実施形態において、毒性剤を含む抗体は、MICAを発現する細胞の死滅を直接引き起こし得る。一実施形態において、抗体は、MICA発現細胞の少なくとも20%、30%、40%または50%の細胞死を、例えばインビトロアッセイにおいて(例えば、免疫エフェクター細胞の不存在下で)直接誘導し得る。
【0098】
  一態様において、本発明は、本発明の抗MICA抗体を使用して治療する方法を提供する。抗体は、本明細書における実施形態のいずれかにおいて予防的または治療的治療として使用することができ;治療有効量の抗体を予防有効量の抗体と交換することができる。一態様において、本発明は、癌、自己免疫障害または炎症障害を有する患者を治療する方法であって、患者に医薬有効量の本発明によるMICAポリペプチドに特異的に結合する抗原結合化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0099】
  本発明の治療方法および本発明による抗MICA抗体は、第2の治療剤、例として、癌を治療するために使用される場合に抗癌剤(例えば、化学療法薬、腫瘍ワクチン、腫瘍細胞上の腫瘍特異的抗原に結合する抗体、腫瘍細胞に対するADCCを誘導する抗体、免疫応答を強化する抗体など)、または自己免疫もしくは炎症の治療に有用な薬剤との組合せで個体を治療するために使用することができる。一実施形態において、第2の治療剤は、活性化受容体に結合し、それを活性化させ、またはエフェクター細胞(例えば、NK細胞、T細胞)上の阻害受容体に結合し、それを遮断する薬剤(例えば、抗体)である。一実施形態において、第2の治療剤は、腫瘍細胞上のNKG2Dリガンドの発現を上方調節する薬剤(例えば、化学療法剤)である。例えば、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を使用することができる。例えば、バルプロエートおよびヒドララジンは、MICA/B発現を増強し、シェディングを減少させる。(Chavez−Blanco  2011  Int  J  Oncol  39(6):1491−1499)。
【0100】
  循環中のsMICのレベルの増加の存在は、不良予後および/またはMIC発現腫瘍に関連している。本発明は、さらに、本発明の抗MICA剤(例えば、MICAポリペプチドに結合する抗体)を使用する治療に応答する癌を有する対象を選択する方法であって、前記対象中の腫瘍細胞がMICAポリペプチドをシェディングするか否かを(例えば、循環中のsMICのレベルを評価して)決定することを含み、腫瘍細胞からのMICAポリペプチドのシェディングの存在は、レスポンダー対象を示す方法に関する。
【0101】
  本発明は、さらに、本発明の抗MICA剤(例えば、MICAポリペプチドに結合する抗体)を使用する治療に応答する障害(例えば、癌、自己免疫障害、炎症障害)を有する対象を選択する方法であって、前記対象中の細胞(例えば、腫瘍細胞、炎症促進細胞など)がMICAポリペプチドを発現するか否かを決定することを含み、MICAポリペプチドの発現は、レスポンダー対象を示す方法に関する。一実施形態において、本方法は、前記対象中の細胞(例えば、腫瘍細胞、炎症促進細胞など)が、配列番号1〜5からなる群から選択されるMICAポリペプチドを発現するか否かを決定することを含む。一実施形態において、本方法は、前記対象中の細胞が、配列番号1〜5の配列をそれぞれ含むMICA
*001、
*004、
*007、
*008、および
*019ポリペプチドからなる群から選択されるMICAポリペプチドを発現するか否かを決定することを含み、MICAポリペプチドの発現は、レスポンダー対象を示す。一実施形態において、前記対象中の細胞がMICAポリペプチドを発現するか否かを決定するステップは、対象からの生物学的試料(例えば、生検の実施および/または癌細胞、血液もしくは任意の組織試料などの試料を得ることによる)を、本発明の抗MICA抗体(例えば、MICA
*001、
*004、
*007、
*008、および
*019ポリペプチドの1、2、3、4つまたは全てに結合する抗体)と接触させることを含む。一実施形態において、本方法は、前記対象がシェディングされたMICAを含むか否かを決定すること(例えば、循環中のsMICAを検出することまたはエキソソームの表面上(例えば、
*008アレル)のMICAの存在を検出することを含む。
【0102】
  任意選択で、本方法のいずれかにおいて、本方法は、レスポンダー対象にMICAポリペプチドに結合する抗体(例えば、本発明の抗MICA抗体)を投与することをさらに含む。
【0103】
  好ましい実施形態において、疾患関連細胞中のMICAポリペプチドの発現は、MICA特異的リガンドを使用して決定する。好ましくは、リガンドは、抗体、またはその断片もしくは誘導体である。
【0104】
  別の態様において、本発明は、患者がMICAポリペプチド、例えば、本発明の抗体により結合されるMICAポリペプチド(1つ以上のMICAアレル)を発現する疾患関連細胞(例えば、腫瘍細胞)を有するか否かを評価することを含む方法(例えば、診断アッセイ、レスポンダーアッセイなどを実施する方法)を含む。前記方法は、例えば、疾患関連細胞を含む患者からの生物学的試料を得ること、前記疾患関連細胞をそのような抗体と接触させること、および抗体が疾患関連細胞に結合するか否かを評価することを含み得る。MICAが疾患関連細胞により発現されるという知見は、患者がMICA発現細胞により特徴づけられる病態を有し、および/または本発明の抗MICA抗体による治療に好適であることを示す。患者は、MICA発現細胞により特徴づけられる特定の疾患に好適な治療によりさらに治療することができる。任意選択で、患者は、抗MICA抗体により治療する。一実施形態において、本方法は、癌を有する対象を選択するために使用し、疾患関連細胞は癌細胞である。
【0105】
  本発明は、患者を治療する方法であって、
a)患者が病原性MICA発現細胞を有するか否かを決定すること、および
b)患者が病原性MICA発現細胞を有すると決定された場合、本発明の抗原結合化合物(例えば、抗体)を投与すること
を含む方法も提供する。
【0106】
  本発明は、患者を治療する方法であって、
a)患者中でシェディングされたMICAのレベルを測定すること、および
b)患者がシェディングされたMICAの上昇されたレベルを有すると決定された場合、免疫エフェクター細胞上のNKG2Dの下方モジュレーションを引き起こすsMICAの能力を阻害する本発明の抗原結合化合物(例えば、抗体)を投与すること
を含む方法も提供する。
【0107】
  本発明のこれらおよび追加の有利な態様および特徴を本明細書の他箇所でさらに記載することができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0109】
導入
  本発明の抗体は、MICA発現細胞、特に腫瘍細胞および炎症または自己免疫プロセスに関与する細胞を直接および特異的に標的化し得る。本発明は、グループ1およびグループ2アレルの両方、さらにそれらのグループ内の主要ヒトMICAアレルにわたり結合するそのような特性を有する多数の抗体を提供する。さらに、特定のアプローチに有用な異なる抗体が提供される。一部の抗体は、MICA−NKG2D相互作用を遮断し、NKG2D表面発現の可溶性MICA(sMICA)誘導下方モジュレーションを妨害し;それにより、それらは患者におけるNKG2D発現を回復させるために有用である。そのような抗体は、リンパ球上のNKG2DによるMICAの結合により引き起こされるNKG2D活性化を遮断するそれらの能力について使用することもでき、炎症および自己免疫障害の治療において特に有利である。他の抗体は、MICAへの結合についてNKG2Dと競合せず、エフェクター細胞上のNKG2D機能の維持が望まれる場合に癌の治療において有利である。任意選択で、抗体は、MICA発現腫瘍細胞からのMICAのシェディングを遮断しない。任意選択で、抗体は、MICAのα1α2ドメイン(α1ドメインおよびα2ドメインから形成されるMICAタンパク質の一部)に結合する。さらに、MICAアレルにわたり存在し、高結合親和性のために抗体により標的化することができるα1α2ドメインおよびα3ドメイン上のエピトープが提供される。
 
【0110】
  MICA(PERB11.1)は、MHCクラスIポリペプチド関連配列A(例えば、UniProtKB/Swiss−Prot  Q29983参照)、その遺伝子およびcDNAならびにその遺伝子産物、またはその天然バリアントを指す。MICA遺伝子およびタンパク質の命名は、異なるアレルについての配列のアクセッション番号への参照と一緒に、Frigoul  A.and  Lefranc,M−P.Recent  Res.Devel.Human  Genet.,3(2005):95−145  ISBN:81−7736−244−5に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。MICA遺伝子およびタンパク質配列は、タンパク質およびDNAレベルにおける多型を含み、Dr.Bahramの実験室により維持されるhttp://mhc−x.u−strasbg.fr/human.htmからも利用可能である。
 
【0111】
  MICAのアミノ酸配列は、Bahram  et  al(1994)Proc.Nat.Acad.Sci.91:6259−6263およびBahram  et  al.(1996)Immunogenetics  44:80−81に最初に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。MICA遺伝子は多型性であり、細胞外α1、α2、およびα3ドメイン中の多数のバリアントアミノ酸の特有の分布を示す。MICAの多型をさらに定義するため、Petersdorf  et  al.(1999)は、共通のおよび希少なHLA遺伝子型を有する275個体の中でそのアレルを試験した。ヒトMICAの細胞外α1、α2、およびα3ドメインのアミノ酸配列を配列番号1〜5に示す。完全MICA配列は、23アミノ酸のリーダー配列、ならびに膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをさらに含む。選択ヒトMICAアレルの細胞外α1、α2、およびα3ドメインのアミノ酸配列を配列番号1〜5に示す。MICA
*001のアミノ酸配列を配列番号1に示し、それはGenbankアクセッション番号AAB41060に対応する。ヒトMICAアレルMICA
*004のアミノ酸配列を配列番号2に示し、それはGenbankアクセッション番号AAB41063に対応する。ヒトMICAアレルMICA
*007のアミノ酸配列を配列番号3に示し、それはGenbankアクセッション番号AAB41066に対応する。ヒトMICAアレルMICA
*008のアミノ酸配列を配列番号4に示し、それはGenbankアクセッション番号AAB41067に対応する。ヒトMICAアレルMICA
*019のアミノ酸配列を配列番号5に示し、それはGenbankアクセッション番号AAD27008に対応する。ヒトMICBのアミノ酸配列を配列番号6に示され、それはGenbankアクセッション番号CAI18747に対応する。
 
【0112】
  MICA遺伝子は、MhcSFおよびIgSFに属するタンパク質をコードする。このタンパク質は、膜貫通MHC−I−アルファ様(I−アルファ様)鎖であり、3つの細胞外ドメイン、2つの遠位G様ドメイン、G−アルファ1様(「D1」または「α1」とも称される)およびG−アルファ2様(「D2」または「α2」とも称される)、および細胞膜に近位のC様ドメイン(「D3」または「α3」とも称される)、ならびに3つの領域、結合領域、膜貫通領域および細胞質領域(IMGT(international  ImMunoGeneTics  information  system(登録商標))のIMGT  Scientific  Chart、http://imgt.orgおよびLeFranc  et  al.In  Silico  Biology,2005;5:45−60による標識)を含む。リーダー、ECD、TMおよびCYドメインを含むMICA成熟タンパク質は、360〜366アミノ酸から構成され、差は、膜貫通領域中のマイクロサテライト多型から生じる。α1、α2およびα3は、任意の好適な番号付与系(例えば、IMGT番号付与系)に従って定義することができる。一実施形態において、α1ドメインは、配列番号1のMICAポリペプチドの残基位置1〜88を含み;α2ドメインは、配列番号1のMICAポリペプチドの残基位置89〜181を含み;α3ドメインは、配列番号1のMICAポリペプチドの残基位置182〜274を含む。α1およびα2ドメインは、A、B、CおよびD鎖、AB、BCおよびCDターンならびにへリックスをそれぞれ含む。α3ドメインは、A、B、C、D、E、FおよびG鎖、BCループ、CD鎖、DEターンおよびFGループを含む。O−グリカン(セリンまたはトレオニンに結合しているN−アセチルラクトサミン)および/またはN−グリカンを含む、α1中に2つ、α2中に1つおよびα3ドメイン中に5つの8つの潜在的グリコシル化部位を有するMICAタンパク質は、高度にグリコシル化される。MICAは、ある細胞中で構成的に発現される一方、低レベルのMICA発現は、通常、宿主免疫細胞接着を生じさせない。しかしながら、MICAは、急速に増殖する細胞、例えば、腫瘍細胞上で上方調節される。全てのNKG2DリガンドのMICAは最も高度に発現され、それは広範な腫瘍タイプ(例えば、一般の癌種、膀胱癌、黒色腫、肺癌、肝細胞癌、膠芽細胞腫、前立腺癌、一般の血液悪性腫瘍、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病および慢性リンパ球性白血病にわたり見出されている。近年、Tsuboi  et  al.(2011)(EMBO  J:1−13)は、O−グリカン分枝酵素、コア2β−1,6−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(C2GnT)がMICA発現腫瘍細胞中で活性であることおよび腫瘍細胞からのMICAがコア2O−グリカン(N−アセチルガラクトサミンに連結しているN−アセチルグルコサミン分枝を含むO−グリカン)を含有することを報告した。
 
【0113】
  Bauer  et  al  Science  285:727−729,1999は、NKG2Dについてのストレス誘導性リガンドとしてのMICAについての役割を提供した。本明細書において使用される「MICA」は、MICA遺伝子の任意のバリアント、誘導体、もしくはアイソフォームまたはそれらが指すコードされるタンパク質を含む任意のMICAポリペプチドを指す。MICA遺伝子は多型性であり、細胞外アルファ−1、アルファ−2、およびアルファ−3ドメイン中の多数のバリアントアミノ酸の特有の分布を示す。種々のアレルバリアントは、MICAポリペプチド(例えば、MICA)について報告されており、それらのそれぞれは、それぞれの用語、例として、例えば、ヒトMICAポリペプチドMICA
*001、MICA
*002、MICA
*004、MICA
*005、MICA
*006、MICA
*007、MICA
*008、MICA
*009、MICA
*010、MICA
*011、MICA
*012、MICA
*013、MICA
*014、MICA
*015、MICA
*016、MICA
*017、MICA
*018、MICA
*019、MICA
*020、MICA
*022、MICA
*023、MICA
*024、MICA
*025、MICA
*026、MICA
*027、MICA
*028、MICA
*029、MICA
*030、MICA
*031、MICA
*032、MICA
*033、MICA
*034、MICA
*035、MICA
*036、MICA
*037、MICA
*038、MICA
*039、MICA
*040、MICA
*041、MICA
*042、MICA
*043、MICA
*044、MICA
*045、MICA
*046、MICA
*047、MICA
*048、MICA
*049、MICA
*050、MICA
*051、MICA
*052、MICA
*053、MICA
*054、MICA
*055およびMICA
*056により包含される。野生型全長MICAと1つ以上の生物学的特性または機能をそれぞれ共有し、少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のヌクレオチドまたはアミノ酸同一性を共有する任意の核酸またはタンパク質配列も包含される。
 
【0114】
  本明細書において使用される「hNKG2D」および、特に記載のない限り、または文脈により矛盾がない限り、用語「NKG2D」、「NKG2−D」、「CD314」、「D12S2489E」、「KLRK1」、「キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーK、メンバー1」、または「KLRK1」は、ヒトキラー細胞活性化受容体遺伝子、そのcDNA(例えば、GenBankアクセッション番号NM_007360)、およびその遺伝子産物(GenBankアクセッション番号NP_031386)、またはその天然バリアントを指す。NKおよびT細胞中で、hNKG2Dは、タンパク質、例えば、DAP10(GenBankアクセッション番号AAG29425、AAD50293)とヘテロダイマーまたはより高次の複合体を形成し得る。本明細書においてhNKG2Dに起因する任意の活性、例えば、細胞活性化、抗体認識などは、ヘテロダイマーの形態のhNKG2D、例えば、hNKG2D−DAP10、またはそれら2つの(および/または他の)成分とのより高次の複合体にも起因し得る。
 
【0115】
  NKG2Dとの複合体中のMICAの三次元構造は、決定されている(例えば、Li  et  al.,Nat.Immunol.2001;2:443−451;コード1hyr、およびIMGT/3Dstructure−DB(Kaas  et  al.Nucl.Acids  Res.2004;32:D208−D210)参照)。MICAがNKG2Dホモダイマーとの複合体中に存在する場合、MICAα2の残基63〜73(IGMT番号付与)が配列され、ほぼ2つのへリックスのターンを付与する。NKG2Dの2つのモノマーは、MICAとの相互作用に等しく寄与し、それぞれのNKG2Dモノマー中の7つの位置がMICAα1またはα2へリックスドメインの1つと相互作用する。
 
【0116】
  本発明は、本発明の抗原結合化合物を使用する方法を提供し;例えば、本発明は、細胞増殖または活性を阻害する方法、分子を細胞(例えば、毒性分子、検出可能マーカーなど)に送達する方法、細胞を標的化、同定または精製する方法、細胞を枯渇、殺傷または排除する方法、細胞増殖を低減させる方法であって、細胞、例えば、MICAポリペプチドを発現する腫瘍細胞を、MICAポリペプチドに結合する本発明の抗原結合化合物に曝露することを含む方法を提供する。本発明の目的のため、「細胞増殖」は、細胞の成長または増殖の任意の態様、例えば、細胞成長、細胞分裂、または細胞周期の任意の態様を指し得ることが認識される。細胞は、細胞培養物(インビトロ)または哺乳動物(インビボ)、例えば、MICA発現病変を罹患する哺乳動物中に存在し得る。本発明は、MICAポリペプチドを発現する細胞の死滅を誘導し、またはその細胞を増殖もしくは活性を阻害する方法であって、細胞を、細胞の死滅を誘導し、および/または細胞の増殖を阻害するために有効な量の毒性剤に結合しているMICAポリペプチドに結合する抗原結合化合物に曝露させることを含む方法も提供する。したがって、本発明は、増殖疾患、およびMICAポリペプチドの細胞発現の病原性拡張により特徴づけられる任意の病態を罹患する哺乳動物を治療する方法であって、例えば、癌の治療のために、医薬有効量の本明細書に開示の抗原結合化合物を投与することを哺乳動物に含む方法を提供する。
 
【0117】
定義
  本明細書において使用される「a」または「an」は、1つ以上を意味し得る。特許請求の範囲において使用され、語「含む」とともに使用される場合、語「a」または「an」は、1つまたは2つ以上を意味し得る。本明細書において使用される「別の」は、少なくとも第2以上を意味し得る。
 
【0118】
  「含む」が使用される場合、これは、好ましくは、「〜から本質的になる」、より好ましくは、「〜からなる」により置き換えることができる。
 
【0119】
  本明細書全体内で「増殖疾患の治療」または「腫瘍の治療」、または「癌の治療」などは、抗MICA結合剤(例えば、抗体)に関して挙げられる場合、それらは、(a)増殖疾患を治療する方法であって、(好ましくは、薬学的に許容可能な担体材料中の)抗MICA結合剤を、そのような治療が必要とされる温血動物、特にヒトに、前記疾患の治療を可能とする用量(治療有効量)で、好ましくは、上記および下記で好ましいと規定される用量(量)で(少なくとも1つの治療のために)投与するステップを含む方法;(b)増殖疾患の治療のための、抗MICA結合剤の使用、または前記治療(特にヒト)において使用される抗MICA結合剤;(c)増殖疾患の治療のための医薬調製物の製造のための、抗MICA結合剤の使用、増殖疾患の治療のための医薬調製物の製造のために抗MICA結合剤を使用する方法であって、抗MICA結合剤を薬学的に許容可能な担体と混合することを含む方法、もしくは増殖疾患の治療に適切な有効用量の抗MICA結合剤を含む医薬調製物;または(d)a)、b)、およびc)の任意の組合せを意味し、本出願が出願される国において特許化の許容可能な主題に従う。
 
【0120】
  本明細書において使用される用語「癌」および「腫瘍」は、制御不能および進行性の増殖を含む細胞または組織の新たな成長と定義される。具体的な実施形態において、自然経過時に癌は致命的である。具体的な実施形態において、癌は侵襲性、転移性、および/または未分化(分化ならびに互いおよびそれらの軸のフレームワークへの配向の損失)である。
 
【0121】
  本明細書において使用される用語「生検」は、試験の目的のため、例えば、診断を確定するための臓器からの組織の取出と定義される。生検のタイプの例としては、吸引の適用によるもの、例えば、シリンジに取り付けられた針を介するもの;組織の断片の装置による取出によるもの;内視鏡を介する適切な装置による取出によるもの;例えば、病巣全体の外科的切除によるもの;などが挙げられる。
 
【0122】
  本明細書において使用される用語「抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を指す。重鎖中の定常ドメインのタイプに応じて、抗体は、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの1つに割り当てられる。これらのいくつかは、サブクラスまたはアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4などにさらに分類される。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、テトラマーを含む。それぞれのテトラマーは、2つの同一のポリペプチド鎖ペアから構成され、それぞれのペアは、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。それぞれの鎖のN末端は、主として抗原認識を担う約100〜110以上のアミノ酸からなる可変領域を定義する。可変軽鎖(V
L)および可変重鎖(V
H)という用語はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、「アルファ」、「デルタ」、「イプシロン」、「ガンマ」および「ミュー」と称される。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。IgGおよび/またはIgMは、それらが生理学的状況における最も一般的な抗体であるため、およびそれらが研究室の環境において最も容易に作製されるため、本発明において用いられる好ましいクラスの抗体であり、IgGが特に好ましい。好ましくは、本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト化、キメラ、ヒト、またはそれ以外ではヒトに好適な抗体が特に好ましい。「抗体」として、本明細書に記載の抗体のいずれかの任意の断片または誘導体も挙げられる。
 
【0123】
  用語「に特異的に結合する」は、抗体が、好ましくは、競合結合アッセイにおいて、タンパク質の組換え形態、その中のエピトープ、または単離標的細胞の表面上に存在する天然タンパク質のいずれかを使用して評価される場合、結合パートナー、例えばMICAに結合し得ることを意味する。競合結合アッセイおよび特異的結合を決定する他の方法は、下記にさらに記載され、当分野において周知である。
 
【0124】
  抗体が特定のモノクローナル抗体(例えば、6E4、20C6または16A8)「と競合する」と言われる場合、それは、抗体が、組換えMICA分子または表面発現MICA分子のいずれかを使用する結合アッセイにおいてモノクローナル抗体と競合することを意味する。例えば、試験抗体が結合アッセイにおいてMICAポリペプチドまたはMICA発現細胞への6E4、20C6または16A8の結合を低減させる場合、抗体は、6E4、20C6または16A8とそれぞれ「競合する」と言われる。
 
【0125】
  本明細書において使用される用語「親和性」は、抗体のエピトープへの結合強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab−Ag](式中、[Ab−Ag]は抗体−抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は未結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は未結合抗原のモル濃度である)として定義される解離定数K
Dにより与えられる。親和性定数K
aは、1/Kdにより定義される。mAbの親和性を測定する好ましい方法は、Harlow,et  al.,Antibodies:A  Laboratory  Manual,Cold  Spring  Harbor  Laboratory  Press,Cold  Spring  Harbor,N.Y.,1988)、Coligan  et  al.,eds.,Current  Protocols  in  Immunology,Greene  Publishing  Assoc.and  Wiley  Interscience,N.Y.,(1992、1993)、およびMuller,Meth.Enzymol.92:589−601(1983)に見出すことができ、その参照文献は参照により全体として本明細書に組み込まれる。mAbの親和性を測定する当分野において周知の1つの好ましい標準的方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置による分析によるもの)の使用である。
 
【0126】
  本明細書に関する範囲内で、「決定基」は、ポリペプチド上での相互作用または結合の部位を指定する。
 
【0127】
  用語「エピトープ」は、抗原決定基を指し、抗体が結合する抗原上の区域または領域である。タンパク質エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、および特異的抗原結合抗体またはペプチドにより有効に遮断されるアミノ酸残基、すなわち抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基を含み得る。それは、例えば、抗体または受容体と結合し得る複合抗原分子上の最も単純な形態または最小の構造領域である。エピトープは、直鎖または立体構造的/構造的であり得る。用語「直鎖エピトープ」は、アミノ酸の直鎖配列(一次構造)上で連続するアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。用語「立体構造的または構造的エピトープ」は、全てが連続しておらず、したがって、分子のフォールディング(二次、三次および/または四次構造)により互いに近接されるアミノ酸の直鎖配列の分離部分を表すアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。立体構造的エピトープは、三次元構造に依存する。したがって、用語「立体構造的」は、「構造的」と交換可能に使用されることが多い。
 
【0128】
  MICA発現細胞に関する用語「枯渇」は、殺傷、排除、溶解またはそのような殺傷、排除もしくは溶解を誘導して試料中または対象中に存在するMICA発現細胞の数に負に影響し得るプロセス、方法、または化合物を意味する。
 
【0129】
  本発明による「薬剤」または「化合物」は、小分子、ポリペプチド、タンパク質、抗体または抗体断片を含む。本発明に関する小分子は、一実施形態において、1000ダルトン未満、特に800ダルトン未満、より特定すると、500ダルトン未満の分子量を有する化学物質を意味する。用語「治療剤」は、生物学的活性を有する薬剤を指す。用語「抗癌剤」は、癌細胞に対する生物学的活性を有する薬剤を指す。
 
【0130】
  抗体に関する用語「ヒトに好適な」は、例えば本明細書に記載の治療方法にヒトにおいて安全に使用することができる任意の抗体、誘導体化抗体、または抗体断片を指す。ヒトに好適な抗体としては、全てのタイプのヒト化、キメラ、もしくは完全ヒト抗体、または抗体の少なくとも一部が、ヒトに由来し、またはそうでなければ一般に天然非ヒト抗体が使用される場合に誘発される免疫応答を回避するように改変されている任意の抗体が挙げられる。
 
【0131】
  本発明の目的のため、「ヒト化」または「ヒト」抗体は、1つ以上のヒト免疫グロブリンの定常および可変フレームワーク領域が、動物免疫グロブリンの結合領域、例えばCDRと融合している抗体を指す。そのような抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性を維持するが、非ヒト抗体に対する免疫反応を回避するように設計される。そのような抗体は、抗原チャレンジに応答して特異的ヒト抗体を産生するように「遺伝子操作」されたトランスジェニックマウスまたは他の動物から得ることができる(例えば、Green  et  al.(1994)Nature  Genet  7:13;Lonberg  et  al.(1994)Nature  368:856;Taylor  et  al.(1994)Int  Immun  6:579参照、それらの全教示は、参照により本明細書に組み込まれる)。完全ヒト抗体は、遺伝子または染色体形質移入(chromosomal  transfection)法、およびファージディスプレイ技術により構築することもでき、それらは全て当分野において公知である(例えば、McCafferty  et  al.(1990)Nature  348:552−553参照)。ヒト抗体は、インビトロで活性化されたB細胞により生成することもできる(例えば、米国特許第5,567,610号明細書および米国特許第5,229,275号明細書参照、それらは全て、参照により全体として組み込まれる)。
 
【0132】
  「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が異なるもしくは変化されたクラス、エフェクター機能および/もしくは種の定常領域、もしくはキメラ抗体に新しい特性を付与する完全に異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤などに結合するように定常領域もしくはその一部が変化、置換、もしくは交換されている抗体分子;または(b)可変領域、もしくはその一部が可変領域が異なるもしくは変化された抗原特異性を有する可変領域により変化、置換、もしくは交換されている抗体分子である。
 
【0133】
  用語「Fcドメイン」、「Fc部分」および「Fc領域」は、抗体重鎖、例えば、約アミノ酸(aa)230〜約aa450のヒトγ(ガンマ)重鎖、または他のタイプの抗体重鎖(例えば、ヒト抗体についてのα、δ、εおよびμ)におけるその相当配列、またはその天然アロタイプのC末端断片を指す。特に記載のない限り、免疫グロブリンについての一般に認められたKabatアミノ酸番号付与が、本開示全体に使用される(Kabat  et  al.(1991)Sequences  of  Protein  of  Immunological  Interest,5th  ed.,United  States  Public  Health  Service,National  Institute  of  Health,Bethesda,MD参照、「Kabat  EU」とも称される)。
 
【0134】
  用語「抗体依存性細胞媒介細胞毒性」または「ADCC」は、当分野において十分理解されている用語であり、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞毒性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を指す。ADCCを媒介する非特異的細胞毒性細胞としては、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好中球、および好酸球が挙げられる。
 
【0135】
  用語「補体依存性細胞毒性」または「CDC」は、当分野において十分理解されている用語であり、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を指す。補体活性化経路は、コグネイト抗原と複合体化している分子(例えば、抗体)への補体系の第1の補体(C1q)の結合により開始される。
 
【0136】
  MICAに関する用語「シェディング」は、MICAを発現する細胞の細胞表面からのMICAの可溶性細胞外ドメイン(ECD)断片の放出を指す。そのようなシェディングは、細胞表面からのECD断片の放出をもたらす細胞表面MICAのタンパク質分解開裂(例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、例えば、ADAM10および/またはADAM17の作用を介する)により引き起こされ得、または可溶性ECDもしくはその断片は、選択的転写産物によりコードされ得る。
 
【0137】
  用語「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」は、通常、天然状態で見出される場合に材料に付随する成分を実質的または本質的に有さない材料を指す。純度および等質性は、典型的には、分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを使用して決定される。調製物中に存在する優勢種であるタンパク質は、実質的に精製される。
 
【0138】
  用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において交換可能に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体である場合のアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
 
【0139】
  用語「組換え体」は、例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入もしくは天然核酸もしくはタンパク質の変化により改変されていること、または細胞がそのように改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)形態の細胞内で見出されない遺伝子を発現し、または発現され、もしくは全く発現されない下で他で異常発現される天然遺伝子を発現する。
 
【0140】
  本明細書において使用される「NK細胞」は、非慣用免疫に関与するリンパ球の下位集団を指す。NK細胞は、ある特徴および生物学的特性、例えば、特異的表面抗原、例として、ヒトNK細胞についてCD56および/またはCD16の発現、細胞表面上のアルファ/ベータまたはガンマ/デルタTCR複合体の不存在、特異的細胞溶解機序の活性化により「自己」MHC/HLA抗原を発現し得ない細胞に結合し、それを殺傷する能力、NK活性化受容体についてのリガンドを発現する腫瘍細胞または他の疾患細胞を殺傷する能力、ならびに免疫応答を刺激または阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力により同定することができる。これらの特徴および活性のいずれかを使用し、当分野において周知の方法を使用してNK細胞を同定することができる。NK細胞のいずれの下位集団も、NK細胞という用語により包含される。本発明に関する範囲内で、「活性」NK細胞は、生物学的に活性なNK細胞、例として、標的細胞を溶解し、または他の細胞の免疫機能を向上させる能力を有するNK細胞を指定する。例えば、「活性」NK細胞は、NK受容体を活性化させるためのリガンドを発現し、および/またはNK細胞上のKIRにより認識されるMHC/HLA抗原を発現し得ない細胞を殺傷し得る。NK細胞は、当分野において公知の種々の技術、例えば、血液試料からの単離、細胞吸着、組織または細胞回収などにより得ることができる。NK細胞を伴うアッセイのための有用なプロトコルは、Natural  Killer  Cells  Protocols(edited  by  Campbell  KS  and  Colonna  M).Human  Press.pp.219−238(2000)に見出すことができる。
 
【0141】
  本明細書において使用される「T細胞」は、胸腺中で成熟し、数ある分子のうち、T細胞受容体を表面上でディスプレイするリンパ球の下位集団を指す。T細胞は、ある特徴および生物学的特性、例えば、特異的表面抗原、例として、TCR、CD4またはCD8の発現、腫瘍または感染細胞の殺傷するあるT細胞の能力、免疫系の他の細胞を活性化させるあるT細胞の能力、および免疫応答を刺激または阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力により同定することができる。これらの特徴および活性のいずれかを使用し、当分野において周知の方法を使用してT細胞を同定することができる。本発明に関する範囲内で、「活性」または「活性化」TまたはNK細胞は、生物学的に活性なTまたはNK細胞、より特定すると、細胞溶解または例えば、サイトカインの分泌による免疫応答を刺激する能力を有するTまたはNK細胞を指定する。活性細胞は、多数の周知の方法のいずれか、例として、機能アッセイおよび発現ベースアッセイ、例えば、サイトカインの発現において検出することができる。
 
【0142】
  本発明に関する範囲内で、ポリペプチドまたはエピトープに「結合する」抗体という用語は、前記決定基に特異性および/または親和性を有して結合する抗体を指定する。
 
【0143】
抗体
  本発明の抗体は、異なるアレルにわたるヒトMICAに結合する抗体である。一実施形態において、抗体は、MICAとNKG2Dとの相互作用(例えば、腫瘍細胞上の表面MICAと、エフェクター細胞上の表面NKG2Dとの相互作用)を実質的に遮断せずにMICAポリペプチドに結合する(抗MICA抗体)。別の実施形態において、抗体は、MICAポリペプチドに結合し(抗MICA抗体)、MICAとNKG2Dとの相互作用を阻害し;好ましくは、抗体は、sMICAにより引き起こされる免疫細胞の表面上のNKG2Dの下方モジュレーションを阻害する。一実施形態において、抗体は、細胞表面(例えば、腫瘍細胞)からのMICAのシェディングを実質的に遮断せずに細胞の表面上のMICAポリペプチドに結合する。一実施形態において、抗体は、MICAのα1および/またはα2ドメインに結合する。一実施形態において、抗体は、MICAのα3ドメインに結合する。一実施形態において、抗体は、ヒトMICAアレル
*001、
*004および
*008、任意選択でさらに
*007および/または
*019についての任意選択で、10
−9M未満、好ましくは、10
−10M未満のKdにより特徴づけられる親和性を有する。
 
【0144】
  一実施形態において、抗体は、MICAポリペプチドへの結合について抗体6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9および14B4のいずれか1つ以上と競合する。好ましくは、抗体は、MICAポリペプチド上の実質的もしくは本質的に同一の、または同一のエピトープまたは「エピトープ部位」を認識し、それに結合し、またはそれについての免疫特異性を有する。
 
【0145】
抗体エピトープ
  別の実施形態において、抗体は、抗体6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9および14B4と実質的に同一のエピトープに結合する。別の実施形態において、抗体は、配列番号1〜5のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドの残基1〜88、残基89〜181、または残基182〜274に対応するセグメント中の少なくとも1つの残基と少なくとも部分的に重複し、またはそれを含む。一実施形態において、エピトープの全ての重要な残基は、配列番号1〜5のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドの残基1〜88、残基89〜181、または残基182〜274に対応するセグメント中に存在する。一実施形態において、抗体は、(a)α1および/またはα2ドメインならびに(b)α3ドメインのジャンクションをスパンするエピトープに結合し、エピトープの全ての重要な残基は、配列番号1〜5のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドの残基1〜181(例えば、残基1〜88(任意選択で、1〜85)または89〜181(任意選択で、86〜181))に対応するセグメント中に存在する。一実施形態において、抗体は、配列番号1〜5のアミノ酸配列を含むMICAポリペプチドの残基1〜88(任意選択で、1〜85)または残基89〜181(任意選択で、86〜181))に対応するセグメント中の1、2、3、4、5、6、7つ以上の残基を含むエピトープに結合する。好ましくは、抗体により結合される残基は、MICAポリペプチドの表面上に、例えば、細胞の表面上で発現されるMICAポリペプチド中に存在する。
 
【0146】
  一実施形態において、抗体は、R6、N8、Q48、W49、E51、D52、V53、L54、N56、K57、T58、R61、R64、K81、D82、Q83、K84、E97、H99、E100、D101、N102、S103、T104、R105、H109、Y111、D113、E115、L116、N121、E123、T124、E126、Q131、S132、S133、R134、Q136、T137、M140、N141、R143、N144、L178、R179、R180、S224、H225、D226、T227、Q228、Q229、W230およびD232(配列番号1〜5のいずれかのMICAに関する)からなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7つ以上の残基を含むエピトープに結合する。
 
【0147】
  一実施形態において、抗体は、以下を含むエピトープに結合する:
(a)R6およびN8からなる群から選択される1つ以上の残基;
(b)N56、K57、T58からなる群から選択される1つ以上の残基;
(c)R61およびR64からなる群から選択される1つ以上の残基;
(d)K81、D82からなる群から選択される1つ以上の残基;
(e)Q83、K84からなる群から選択される1つ以上の残基;
(f)E97、H99からなる群から選択される1つ以上の残基;
(g)E100、D101、N102からなる群から選択される1つ以上の残基;
(h)S103、T104、R105からなる群から選択される1つ以上の残基;
(i)D113、E115からなる群から選択される1つ以上の残基;
(j)N121、E123からなる群から選択される1つ以上の残基;
(k)T124およびE126からなる群から選択される1つ以上の残基;
(l)H109、Y111、L116からなる群から選択される1つ以上の残基;
(m)Q131、S132、Q136からなる群から選択される1つ以上の残基;
(n)S133、R134、T137からなる群から選択される1つ以上の残基;または
(o)M140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1つ以上の残基;
(p)S224、H225およびD226からなる群から選択される1つ以上の残基;
(q)T227、Q228およびQ229からなる群から選択される1つ以上の残基;および/または
(r)W230およびD232からなる群から選択される1つ以上の残基。
 
【0148】
  一実施形態において、抗体は、(a)〜(r)の2、3もしくは4つの任意の組合せを含むエピトープに結合する。
 
【0149】
  一実施形態において、抗体は、Q48、W49、E51、D52、V53およびL54からなる群から選択される1、2、3、4、5、または6つ以上の残基を含むエピトープに結合する。
 
【0150】
  一実施形態において、抗体は、N56、K57、T58、R61およびR64からなる群から選択される1、2、3、4、5、または6つ以上の残基を含むエピトープに結合する。
 
【0151】
  一実施形態において、抗体は、K81、D82、Q83、K84、H109、Y111、D113、L116、S133、R134、T137、M140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、3、4、5、または6つ以上の残基を含むエピトープに結合する。
 
【0152】
  一実施形態において、抗体は、K81、D82、Q83、K84、H109、Y111、D113、L116、Q131、S132、Q136、M140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、3、4、5、または6つ以上の残基を含むエピトープに結合する。
 
【0153】
  一実施形態において、抗体は、E100、D101、N102、S103、T104、R105、N121、E123、T124およびE126からなる群から選択される1、2、3、4、5、または6つ以上の残基を含むエピトープに結合する。
 
【0154】
  一実施形態において、抗体は、R6、N8、E97、H99、E100、D101、N102、S103、T104、R105、E115、L178、R179およびR180からなる群から選択される1、2、3、4、5、または6つ以上の残基を含むエピトープに結合する。
 
【0155】
  一実施形態において、抗体は、S224、H225、D226、T227、Q228、Q229、W230およびD232からなる群から選択される1、2、3、4、5、または6つ以上の残基を含むエピトープに結合する。一実施形態において、抗体は、T227、Q228およびQ229からなる群から選択される1、2、3、4、5、または6つ以上の残基を含むエピトープに結合する。
 
【0156】
  一実施形態において、抗体は、以下を含むエピトープに結合する:
(a)K81、D82からなる群から選択される1つ以上の残基、およびQ83、K84からなる群から選択される1つ以上の残基;
(b)K81、D82、Q83、K84からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基、およびH109、Y111、L116からなる群から選択される1、2、もしくは3つの残基;
(c)残基D113、およびK81、D82、Q83、K84からなる群から選択される1、2、3もしくは4つの残基;
(d)K81、D82、Q83、K84からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基、およびQ131、S132、Q136からなる群から選択される1、2、もしくは3つの残基;
(e)K81、D82、Q83、K84からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基、およびS133、R134、T137からなる群から選択される1、2、もしくは3つの残基;
(f)K81、D82、Q83、K84からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基、およびM140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、もしくは3つの残基;
(g)K81、D82、Q83、K84からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;H109、Y111、L116からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基;任意選択で、D113;およびQ131、S132、Q136からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基;
(h)K81、D82、Q83、K84からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;H109、Y111、L116からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基;任意選択で、D113;およびS133、R134、T137からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基;
(i)K81、D82、Q83、K84からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;H109、Y111、L116からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基;任意選択で、D113;およびM140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;
(j)K81、D82、Q83、K84からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;H109、Y111、L116からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基;任意選択で、D113;S133、R134、T137からなる群から選択される1、2もしくは3つの残基;およびM140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、3もしくは4つの残基;
(k)R6、N8からなる群から選択される1つ以上の残基、およびE100、D101、N102、S103、T104、R105からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;
(l)N121、E123、T124およびE126からなる群から選択される1、2、3もしくは4つの残基、ならびにE100、D101、N102、S103、T104、R105からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;または
(m)S224、H225およびD226からなる群から選択される1、2、もしくは3つの残基、T227、Q228およびQ229からなる群から選択される1、2、もしくは3つの残基、ならびにW230およびD232からなる群から選択される1もしくは2つの残基。
 
【0157】
  任意選択で、本発明の抗体のエピトープは、完全にMICAのα1および/またはα2ドメイン内に存在し得る。任意選択で、さらに、抗体は、MICAシェディングに要求されるα3ドメイン領域に実質的に結合しないと特徴づけることができる。
 
【0158】
  一実施形態において、本発明の抗体は、MICAポリペプチドアレル
*001、
*004および
*008(および任意選択でさらに
*007および
*019)の表面上に存在する1つ以上のアミノ酸に結合する。
 
【0159】
  MICA変異体が形質移入された細胞への抗MICA抗体の結合を計測し、野生型MICAポリペプチド(例えば、配列番号1〜5のいずれか1つ以上)に結合する抗MICA抗体の能力と比較することができる。抗MICA抗体と変異体MICAポリペプチドとの間の結合の低減は、結合親和性の低減(例えば、公知の方法、例えば、特定の変異体を発現する細胞のFACS試験により、または変異体ポリペプチドへの結合のBiacore試験により計測される場合)および/または抗MICA抗体の全結合能の低減(例えば、ポリペプチド濃度に対する抗MICA抗体濃度のプロットにおけるBmaxの減少により証明される場合)が存在することを意味する。結合の有意な低減は、変異残基が抗MICA抗体への結合に直接関与し、抗MICA抗体がMICAに結合する場合に結合タンパク質に近接することを示す。
 
【0160】
  一部の実施形態において、結合の有意な低減は、抗MICA抗体と変異体MICAポリペプチドとの間の結合親和性および/または能力が、その抗体と野生型MICAポリペプチドとの間の結合に対して40%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超または95%超だけ低減されることを意味する。ある実施形態において、結合は、検出可能な限界未満に低減される。一部の実施形態において、結合の有意な低減は、変異体MICAポリペプチドへの抗MICA抗体の結合が、抗MICA抗体と野生型MICAポリペプチドとの間で観察される結合の50%未満(例えば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%または10%未満)である場合に証明される。
 
【0161】
  一部の実施形態において、野生型MICAポリペプチド(例えば、配列番号1〜5の配列を含む)中の残基1〜88(任意選択で、1〜85)、残基89〜181(任意選択で、86〜181)、または残基182〜274(またはその部分配列)に対応するセグメント中の残基が異なるアミノ酸により置換されている変異体MICAポリペプチドについて有意に低い結合を示す抗MICA抗体が提供される。一部の実施形態において、野生型MICAポリペプチド(例えば、配列番号1〜5の配列を含む)中の残基1〜88(任意選択で、1〜85)、残基89〜181(任意選択で、86〜181)、または残基182〜274(またはその部分配列)に対応するセグメント中の残基が異なるアミノ酸により置換されている変異体MICAポリペプチドについて有意に低い結合を示す抗MICA抗体が提供される。
 
【0162】
  一部の実施形態において、R6、N8、Q48、W49、E51、D52、V53、L54、N56、K57、T58、R61、R64、K81、D82、Q83、K84、E97、H99、E100、D101、N102、S103、T104、R105、H109、Y111、D113、E115、L116、N121、E123、T124、E126、Q131、S132、S133、R134、Q136、T137、M140、N141、R143、N144、L178、R179、R180、S224、H225、D226、T227、Q228、Q229、W230およびD232からなる群から選択される残基が異なるアミノ酸により置換されている変異体MICA抗体について、野生型MICAポリペプチドと比較して有意に低い結合を示す抗MICA抗体が提供される。
 
【0163】
  一部の実施形態において、
(a)Q48、W49、E51、D52、V53およびL54からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;
(b)N56、K57、T58、R61およびR64からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;
(c)K81、D82、Q83、K84、H109、Y111、D113、L116、S133、R134、T137、M140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;
(d)K81、D82、Q83、K84、H109、Y111、D113、L116、Q131、S132、Q136、M140、N141、R143およびN144からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;
(e)E100、D101、N102、S103、T104、R105、N121、E123、T124およびE126からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;
(f)R6、N8、E97、H99、E100、D101、N102、S103、T104、R105、E115、L178、R179およびR180からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;または
(g)S224、H225、D226、T227、Q228、Q229、W230およびD232からなる群から選択される1、2、3、4つ以上の残基;
が異なるアミノ酸により置換されている変異体MICAポリペプチドについて、野生型MICAポリペプチドと比較して有意に低い結合を示す抗MICA抗体が提供される。
 
【0164】
  一部の実施形態において、
(a)R6およびN8からなる群から選択される残基;
(b)N56、K57、T58からなる群から選択される残基;
(c)R61およびR64からなる群から選択される残基;
(d)K81、D82からなる群から選択される残基;
(e)Q83、K84からなる群から選択される残基;
(f)E97、H99からなる群から選択される残基;
(g)E100、D101、N102からなる群から選択される残基;
(h)S103、T104、R105からなる群から選択される残基;
(i)D113、E115からなる群から選択される残基;
(j)N121、E123からなる群から選択される残基;
(k)T124およびE126からなる群から選択される残基;
(l)H109、Y111、L116からなる群から選択される残基;
(m)Q131、S132、Q136からなる群から選択される残基;
(n)S133、R134、T137からなる群から選択される残基;
(o)M140、N141、R143およびN144からなる群から選択される残基;
(p)S224、H225およびD226からなる群から選択される残基;
(q)T227、Q228およびQ229からなる群から選択される残基;ならびに/または
(r)W230およびD232からなる群から選択される残基;
が異なるアミノ酸により置換されている変異体MICAポリペプチドについて、野生型MICAポリペプチドと比較して有意に低い結合を示す抗MICA抗体が提供される。
 
【0165】
  任意の実施形態において、R6、N8、Q48、W49、E51、D52、V53、L54、N56、K57、T58、R61、R64、K81、D82、Q83、K84、E97、H99、E100、D101、N102、S103、T104、R105、H109、Y111、D113、E115、L116、N121、E123、T124、E126、Q131、S132、S133、R134、Q136、T137、M140、N141、R143、N144、L178、R179、R180、S194、E195、N197、S224、H225、D226、T227、Q228、Q229、W230またはD232置換は、それぞれR6A、N8A、W14A、Q48A、W49S、E51S、D52A、V53S、L54A、N56A、K57S、T58A、R61A、R64A、K81A、D82A、Q83A、K84A、E85A、E97A、H99A、E100A、D101S、N102A、S103A、T104S、R105A、H109A、Y111A、D113A、E115A、L116A、N121A、E123S、T124A、E126A、Q131A、S132A、S133A、R134S、Q136S、T137A、M140S、N141A、R143S、N144A、L178A、R179S、R180A、S224A、H225S、D226A、T227A、Q228S、Q229A、W230AまたはD232A置換として規定することができる。
 
【0166】
  一部の実施形態において、抗MICA抗体は、変異体MICAポリペプチド(例えば、表Dの変異体1〜61のいずれか1つの変異体)について、または表Dの変異体1〜61のいずれか1つの変異残基を有するポリペプチドへの、野生型MICAポリペプチド(実施例4に示される、特定の抗MICA抗体が有意に低い結合を有する変異体または残基以外)と比較して有意に低い結合を示さないことにより特徴づけられる。
 
【0167】
抗MICA抗体の産生
  本発明の抗体は、当分野において公知の種々の技術により産生することができる。典型的には、これらは、MICAポリペプチド、好ましくは、ヒトMICAポリペプチドを含む免疫原による非ヒト動物、好ましくは、マウスの免疫化により産生される。MICAポリペプチドは、ヒトMICAポリペプチドの全長配列、またはその断片もしくは誘導体、典型的には、免疫原性断片、すなわち、MICAポリペプチドを発現する細胞の表面上で露出されるエピトープ、好ましくは、6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4抗体により認識されるエピトープを含むポリペプチドの一部を含み得る。そのような断片は、典型的には、成熟ポリペプチド配列の少なくとも約7つの連続アミノ酸、いっそうより好ましくは、その少なくとも約10の連続アミノ酸を含有する。断片は、典型的には、本質的に、受容体の細胞外ドメインに由来する。好ましい実施形態において、免疫原は、典型的には細胞の表面における脂質膜中の野生型ヒトMICAポリペプチドを含む。具体的な実施形態において、免疫原は、任意選択で、治療または溶解されるインタクトな細胞、特にインタクトなヒト細胞を含む。別の好ましい実施形態において、ポリペプチドは、組換えMICAポリペプチドである。具体的な実施形態において、免疫原は、インタクトな腫瘍細胞を含む。
 
【0168】
  非ヒト哺乳動物を抗原により免疫化するステップは、マウス中での抗体の産生を刺激する当分野において周知の任意の様式で実施することができる(例えば、E.Harlow  and  D.Lane,Antibodies:A  Laboratory  Manual.,Cold  Spring  Harbor  Laboratory  Press,Cold  Spring  Harbor,NY(1988)参照、その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。免疫原は、任意選択で、アジュバント、例えば完全または不完全フロイントアジュバントを有する緩衝液中で懸濁または溶解される。免疫原の量、緩衝液のタイプおよびアジュバントの量を測定する方法は、当業者に周知であり、本発明を決して限定するものではない。これらのパラメーターは、異なる免疫原について異なり得るが、容易に解明される。
 
【0169】
  同様に、抗体の産生を刺激するために十分な免疫化の局在および頻度も、当分野において周知である。典型的な免疫プロトコルにおいて、非ヒト動物に1日目および約1週間後に再度、抗原を腹腔内注射する。この後、約20日目、任意選択で、アジュバント、例えば、不完全フロイントアジュバントによる抗原のリコール注射を行う。リコール注射は静脈内で実施し、数日間連続して繰り返すことができる。この後、40日目、典型的にはアジュバントを用いずに静脈内または腹腔内のいずれかでブースター注射を行う。このプロトコルは、約40日後、抗原特異的抗体を産生するB細胞の産生をもたらす。免疫化において使用される抗原に指向される抗体を発現するB細胞の産生をもたらす限り、他のプロトコルを使用することもできる。
 
【0170】
  ポリクローナル抗体調製のため、血清を免疫化非ヒト動物から得、その中に存在する抗体を周知技術により単離する。血清を、固体支持体に結合している上記免疫原のいずれかを使用して親和性精製してMICAポリペプチドと反応する抗体を得ることができる。
 
【0171】
  代替的実施形態において、非免疫化非ヒト哺乳動物からのリンパ球を単離し、インビトロで成長させ、次いで細胞培養物中で免疫原に曝露させる。次いで、リンパ球を回収し、下記の融合ステップを実施する。
 
【0172】
  好ましいモノクローナル抗体について、次のステップは、免疫化非ヒト哺乳動物からの脾細胞を単離し、続いてそれらの脾細胞を不死化細胞と融合させて抗体産生ハイブリドーマを形成することである。非ヒト哺乳動物からの脾細胞の単離は、当分野において周知であり、典型的には、麻酔された非ヒト哺乳動物から脾臓を摘出し、それを小片に切断し、脾細胞を脾膜から細胞濾過器のナイロンメッシュを介して適切な緩衝液中に搾出して単一の細胞懸濁液を産生することを含む。細胞を洗浄し、遠心分離し、いかなる赤血球も溶解する緩衝液中で再懸濁させる。溶液を再び遠心分離し、最終的にペレット中の残留リンパ球を新たな緩衝液中で再懸濁させる。
 
【0173】
  リンパ球は、単離され、単一の細胞懸濁液中で存在する場合、不死細胞系と融合させることができる。これは、典型的には、マウス骨髄腫細胞系であるが、ハイブリドーマの作出に有用な多数の他の不死細胞系は当分野において公知である。好ましいネズミ骨髄腫系としては、限定されるものではないが、Salk  Institute  Cell  Distribution  Center,San  Diego,U.S.A.から入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍、American  Type  Culture  Collection,Rockville,Maryland,U.S.A.から入手可能なX63  Ag8653およびSP−2細胞に由来するものが挙げられる。融合は、ポリエチレングリコールなどを使用して行う。次いで、得られたハイブリドーマを、未融合の親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する選択培地中で成長させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含み(HAT培地)、それらの物質はHGPRT欠損細胞の成長を妨害する。
 
【0174】
  ハイブリドーマは、典型的には、マクロファージのフィーダー層上で成長させる。マクロファージは、好ましくは、脾細胞を単離するために使用される非ヒト哺乳動物のリッターメイトからのものであり、典型的には、ハイブリドーマをプレーティングする数日前に不完全フロイントアジュバントなどによりプライミングする。融合方法は、Goding,“Monoclonal  Antibodies:Principles  and  Practice,”pp.59−103(Academic  Press,1986)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
 
【0175】
  細胞は、コロニー形成および抗体産生に十分な時間、選択培地中で成長させておく。これは通常、約7〜約14日間である。
 
【0176】
  次いで、ハイブリドーマコロニーを、MICAポリペプチド遺伝子産物、任意選択で、抗体6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4により特異的に認識されるエピトープに特異的に結合する抗体の産生についてアッセイする。アッセイは、典型的には、比色ELISAタイプアッセイであるが、ハイブリドーマを成長させるウェルに適合させることができる任意のアッセイを用いることができる。他のアッセイとしては、ラジオイムノアッセイまたは蛍光活性化細胞選別が挙げられる。所望の抗体産生について陽性のウェルを試験して1つ以上の区別されるコロニーが存在するか否かを決定する。2つ以上のコロニーが存在する場合、細胞を再クローニングおよび成長させ、単一細胞のみが所望の抗体を産生するコロニーを生じさせていることを確保することができる。
 
【0177】
  本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されているハイブリドーマは、適切な培地、例えばDMEMまたはRPMI−1640中でより大量に成長させることができる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、動物中で腹水腫瘍としてインビボで成長させることができる。
 
【0178】
  モノクローナル抗体(または腹水)を含有する成長培地は、所望のモノクローナル抗体を産生するために十分に成長させた後、細胞から分離し、その中に存在するモノクローナル抗体を精製する。精製は、典型的には、ゲル電気泳動、透析、プロテインAもしくはプロテインG−セファロース、または固体支持体、例えば、アガロースもしくはセファロースビーズに結合している抗マウスIgを使用するクロマトグラフィーにより達成する(全ては、例えば、Antibody  Purification  Handbook,Biosciences,publication  No.18−1037−46,Edition  ACに記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。結合抗体は、典型的には、抗体含有画分の即時中和を伴う低pH緩衝液(pH3.0以下のグリシンまたは酢酸緩衝液)の使用により、プロテインA/プロテインGカラムから溶出させる。これらの画分は、必要に応じてプール、透析、および濃縮する。
 
【0179】
  外見上単一のコロニーを有する陽性のウェルを、典型的には、再クローニングおよび再アッセイして1つのモノクローナル抗体のみが検出および産生されていることを確保する。
 
【0180】
  抗体は、例えば、(Ward  et  al.Nature,341(1989)p.544、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるとおり、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択により産生することもできる。
 
【0181】
  MICA、特に、モノクローナル抗体6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4と実質的または本質的に同一のエピトープに結合する1つ以上の抗体の同定は、抗体競合をアッセイすることができる種々の免疫学的スクリーニングアッセイのいずれか1つを使用して容易に決定することができる。多くのそのようなアッセイは、定型的に実施され、当分野において周知である(例えば、1997年8月26日に交付された米国特許第5,660,827号明細書参照、具体的には参照により本明細書に組み込まれる)。本明細書に記載の抗体が結合するエピトープの実際的な決定は、本明細書に記載のモノクローナル抗体と同一または実質的に同一のエピトープに結合する抗体を同定するために決して要求されないことが理解される。
 
【0182】
  例えば、試験すべき試験抗体が異なる動物源から得られ、またはさらに異なるIgアイソタイプのものである場合、対照(例えば、6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4)および試験抗体を混合(または予備吸着)し、MICAポリペプチドを含有する試料にアプライする単純な競合アッセイを用いることができる。ウエスタンブロッティングに基づくプロトコルおよびBIACORE分析の使用は、そのような競合試験における使用に好適である。
 
【0183】
  ある実施形態において、対照抗体(例えば、6E4、20C6または16A8)を、変動量の試験抗体と、MICA抗原試料にアプライする前のある期間、予備混合する(例えば、約1:10または約1:100)。他の実施形態において、対照および変動量の試験抗体は、MICA抗原試料に曝露させる間、単純に混合することができる。(例えば、未結合抗体を除去するための分離または洗浄技術を使用することにより)結合抗体を遊離抗体から、(例えば、種特異的もしくはアイソタイプ特異的二次抗体を使用し、または6E4、20C6もしくは16A8を検出可能な標識により特異的に標識することにより)6E4、20C6または16A8を試験抗体から区別することができる限り、試験抗体が6E4、20C6または16A8の抗原への結合を低減させるか否かを決定することができ、それは試験抗体が6E4、20C6または16A8と実質的に同一のエピトープを認識することが示す。完全に無関連な抗体の不存在下での(標識)対照抗体の結合は、高値の対照として機能し得る。低値の対照は、標識(6E4、20C6または16A8)抗体を全く同一のタイプ(6E4、20C6または16A8)の未標識抗体とインキュベートすることにより得ることができ、この場合、競合が生じ、標識抗体の結合を低減させる。試験アッセイにおいて、試験抗体の存在下での標識抗体の反応性における有意な低減は、実質的に同一のエピトープを認識する試験抗体、すなわち、標識(6E4、20C6または16A8)抗体と「交差反応する」または競合する抗体を示す。6E4、20C6または16A8のMICA抗原への結合を、少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%、またはより好ましくは少なくとも約80%もしくは90%(例えば、約65〜100%)だけ低減させる任意の試験抗体を、約1:10〜約1:100の6E4、20C6または16A8:試験抗体の任意の比において、6E4、20C6または16A8と実質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体であるとみなす。好ましくは、そのような試験抗体は、6E4、20C6または16A8のMICA抗原への結合を、少なくとも約90%(例えば約95%)だけ低減させる。
 
【0184】
  競合は、例えばフローサイトメトリー試験により評価することもできる。そのような試験において、所与のMICAポリペプチドを担持する細胞は、最初に例えば、6E4、20C6または16A8と、次いで蛍光色素またはビオチンにより標識された試験抗体とインキュベートすることができる。飽和量の6E4、20C6または16A8とのプレインキュベーション時に得られる結合が、6E4、20C6または16A8とのプレインキュベーションなしの抗体により得られる(蛍光を介して計測される)結合の、約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%、20%または10%)である場合、抗体は、6E4、20C6または16A8と競合すると言われる。あるいは、飽和量の試験抗体とプレインキュベートされた細胞上の(蛍光色素またはビオチンによる)標識6E4、20C6または16A8抗体について得られる結合が、試験抗体とのプレインキュベーションなしの場合に得られる結合の、約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%、20%または10%)である場合、抗体は、6E4、20C6または16A8と競合すると言われる。
 
【0185】
  試験抗体を、MICA抗原が固定化された表面に飽和濃度において予備吸着およびアプライする単純な競合アッセイを用いることもできる。単純な競合アッセイにおける表面は、好ましくはBIACOREチップ(または表面プラズモン共鳴分析に好適な他の媒体)である。次いで、対照抗体(例えば、6E4、20C6または16A8)を、MICA飽和濃度において表面と接触させ、対照抗体のMICAおよび表面結合を計測する。対照抗体のこの結合を、試験抗体の不存在下での対照抗体のMICA含有表面への結合と比較する。試験アッセイにおいて、試験抗体の存在下での対照抗体によるMICA含有表面の結合の有意な低減は、試験抗体が対照抗体と実質的に同一のエピトープを認識し、その結果、試験抗体が対照抗体と「交差反応する」ことを示す。対照(例えば、6E4、20C6または16A8)抗体のMICA抗原への結合を少なくとも約30%以上、好ましくは約40%だけ低減させる任意の試験抗体を、対照(例えば、6E4、20C6または16A8)と実質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体であるとみなすことができる。好ましくは、そのような試験抗体は、対照抗体(例えば、6E4、20C6または16A8)のMICA抗原への結合を少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上)だけ低減させる。対照および試験抗体の順序は入れ替えることができ、すなわち、競合アッセイにおいて、最初に対照抗体を表面に結合させることができ、その後に試験抗体を表面と接触させることが認識される。好ましくは、MICA抗原についてより高い親和性を有する抗体を最初に表面に結合させる。それというのも、二次抗体について見られる結合の減少(抗体が交差反応していると想定)がより顕著な大きさであると予期されるためである。そのようなアッセイのさらなる例が、例えば、Saunal(1995)J.Immunol.Methods  183:33−41に提供され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
 
【0186】
  好ましくは、MICAエピトープを認識するモノクローナル抗体は、かなりの割合またはさらには全ての関連MICAアレル上に存在するエピトープと反応する。一態様において、本発明の抗MICA抗体は、MICA
*004および
*008、任意選択で、さらにMICA
*001、
*007および/または
*0019に結合する。
 
【0187】
  好ましい実施形態において、抗体は、MICA陽性細胞の発現により特徴づけられる疾患を有する1つまたは複数の個体、すなわち、本発明の抗MICA抗体を使用する本明細書に記載の方法の1つによる治療のための候補である個体からのMICA発現細胞に結合する。したがって、細胞上のMICAを特異的に認識する抗体を得たら、それをMICA陽性細胞(例えば、癌細胞)に結合するその能力について試験することができる。特に、患者を本抗体の1つにより治療する前、例えば、血液試料または腫瘍生検物中の患者から採取された悪性腫瘍細胞に結合する抗体の能力を試験し、治療が患者において有益になる確率を最大化することが有益である。
 
【0188】
  一実施形態において、本発明の抗体は、免疫アッセイにおいてバリデートしてMICA発現細胞、例えば、悪性腫瘍細胞に結合するそれらの能力を試験する。例えば、腫瘍生検を実施し、腫瘍細胞を回収する。次いで、細胞に結合する所与の抗体の能力を、当分野において周知の標準的方法を使用して評価する。個体または患者のかなりの割合(例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%以上)からのMICAを発現することが公知の細胞、例えば、腫瘍細胞のかなりの割合(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%以上)に結合することが見出される抗体は、患者中の悪性腫瘍細胞の存在またはレベルを決定するための診断目的のための本発明における使用、または本明細書に記載の治療方法における使用、例えば、悪性腫瘍細胞の数または活性を増加または減少させるための使用の両方に好適である。抗体の細胞への結合を評価するため、抗体は、直接または間接的に標識することができる。間接的に標識する場合、典型的には、二次標識抗体を添加する。
 
【0189】
  抗体がエピトープ領域内で結合するか否かの決定は、当業者に公知の手法において実施することができる。そのようなマッピング/特徴決定方法の一例として、抗MICA抗体についてのエピトープ領域を、MICAタンパク質中の露出アミン/カルボキシルの化学修飾を使用するエピトープ「フットプリンティング」により決定することができる。そのようなフットプリンティング技術の1つの具体例は、HXMS(質量分析により検出される水素−重水素交換)の使用であり、この場合、受容体およびリガンドタンパク質のアミドプロトンの水素/重水素交換、結合、および逆交換が生じ、タンパク質結合に関与する骨格アミド基は逆交換から保護され、したがって重水素化されたままになる。関連領域は、この箇所において、ペプシンタンパク質加水分解、高速マイクロボア高速液体クロマトグラフィー分離、および/またはエレクトロスプレーイオン化質量分析により同定することができる。例えば、Ehring  H,Analytical  Biochemistry,Vol.267(2)pp.252−259(1999)Engen,J.R.and  Smith,D.L.(2001)Anal.Chem.73,256A−265A参照。好適なエピトープ同定技術の別の例は核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)であり、この場合、典型的には、遊離抗原および抗原結合ペプチド、例えば抗体と複合体化された抗原の二次元NMRスペクトルにおけるシグナルの位置を比較する。抗原は、典型的には、NMRスペクトルにおいて、抗原に対応するシグナルのみが見られ、抗原結合ペプチドからのシグナルが全く見られないように、15Nにより選択的に同位体標識する。抗原結合ペプチドとの相互作用に関与するアミノ酸から生じる抗原シグナルは、典型的には、複合体のスペクトルにおける位置を、遊離抗原のスペクトルと比較してシフトさせ、結合に関与するアミノ酸をそのように同定することができる。例えば、Ernst  Schering  Res  Found  Workshop.2004;(44):149−67;Huang  et  al.,Journal  of  Molecular  Biology,Vol.281(1)pp.61−67(1998);およびSaito  and  Patterson,Methods.1996  Jun;9(3):516−24参照。
 
【0190】
  エピトープマッピング/特徴決定は、質量分析法を使用して実施することもできる。例えば、Downard,J  Mass  Spectrom.2000  Apr;35(4):493−503およびKiselar  and  Downard,Anal  Chem.1999  May  1;71(9):1792−1801参照。プロテアーゼ消化技術も、エピトープマッピングおよび同定に関して有用であり得る。抗原決定基関連領域/配列は、プロテアーゼ消化により、例えばトリプシンをMICAに対して約1:50の比またはpH7〜8における一晩消化において使用し、次いでペプチド同定のための質量分析(MS)分析を行うことにより決定することができる。続いて、抗MICA結合剤によりトリプシン開裂から保護されるペプチドを、トリプシン消化を受けた試料と、抗体とインキュベートされ、次いで、例えば、トリプシンによる消化を受けた試料との比較により同定することができる(それにより、結合剤についてのフットプリントが明らかになる)。他の酵素、例えば、キモトリプシン、ペプシンなどをさらに、または代替的に類似のエピトープ特徴決定方法において使用することができる。さらに、酵素消化は、潜在的な抗原決定基配列が、表面露出されておらず、したがって、免疫原性/抗原性に関して最も関連性が少ないMICAポリペプチドの領域内に存在するか否かを分析する迅速な方法を提供し得る。
 
【0191】
  部位特異的変異誘発は、結合エピトープの解明に有用な別の技術である。例えば、「アラニンスキャニング」において、タンパク質セグメント内のそれぞれの残基をアラニン残基により置き換え、結合親和性についての結果を計測する。変異が結合親和性の有意な低減をもたらす場合、それは結合に関与する可能性が最も高い。構造エピトープに特異的なモノクローナル抗体(すなわち、フォールディングされていないタンパク質に結合しない抗体)を使用し、アラニン置換がタンパク質のフォールディング全体に影響を与えないことを確認することができる。例えば、Clackson  and  Wells,Science  1995;267:383-386;およびWells,Proc  Natl  Acad  Sci  USA  1996;93:1−6参照。
 
【0192】
  エピトープ「フットプリンティング」に電子顕微鏡を使用することもできる。例えば、Wang  et  al.,Nature  1992;355:275−278は、天然ササゲモザイクウイルスのカプシド表面上のFab断片の物理的フットプリントを測定するため、低温電子顕微鏡観察、三次元画像再構成、およびX線結晶分析の協調的適用を使用した。
 
【0193】
  エピトープ評価のための「ラベルフリー」アッセイの他の形態としては、表面プラズモン共鳴(SPR、BIACORE)および反射干渉分光法(RifS)が挙げられる。例えば、Faegerstam  et  al.,Journal  Of  Molecular  Recognition  1990;3:208−14;Nice  et  al.,J.Chroma−togr.1993;646:159-168;Leipert  et  al.,Angew.Chem.Int.Ed.1998;37:3308-3311;Kroeger  et  al.,Biosensors  and  Bioelectronics  2002;17:937−944参照。
 
【0194】
  本発明の抗体と同一または実質的に同一のエピトープに結合する抗体は、本明細書に記載の例示的な競合アッセイの1つ以上において同定することができることにも留意すべきである。
 
【0195】
  脊椎動物または細胞中での抗体の免疫化および産生時、特定の選択ステップを実施して特許請求される抗体を単離することができる。これに関し、具体的な実施形態において、本発明はまた、そのような抗体を産生する方法であって、(a)非ヒト哺乳動物を、MICAポリペプチドを含む免疫原により免疫化するステップ;および(b)前記免疫化動物から抗体を調製するステップ;および(c)MICAに結合し得る、ステップ(b)からの抗体を選択するステップを含む方法に関する。
 
【0196】
  典型的には、本発明により提供される抗MICA抗体は、MICAポリペプチドについての約10
4〜約10
11M
−1(例えば、約10
8〜約10
10M
−1)の範囲の親和性を有する。例えば、特定の態様において、本発明は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置による分析による)により測定される場合、MICAに関して1×10
−9M未満の平均解離定数(K
D)を有する抗MICA抗体を提供する。より特定の例示的態様において、本発明は、MICAについて約1×10
−8M〜約1×10
−10M、または約1×10
−9M〜約1×10
−11MのKDを有する抗MICA抗体を提供する。
 
【0197】
  抗体は、例えば、約100、60、10、5、または1ナノモル濃度以下(すなわち、それらよりも良好な親和性)、好ましくは、ナノモル濃度以下、または任意選択で約500、200、100または10ピコモル濃度以下の平均KDにより特徴づけることができる。KDは、例えば、例えば、組換え産生ヒトMICAタンパク質をチップ表面上に固定化し、次いで溶液中の試験すべき抗体をアプライすることにより測定することができる。一実施形態において、本方法は、MICAへの結合について抗体6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4と競合し得る(b)からの抗体を選択するステップ(d)をさらに含む。
 
【0198】
  実施形態のいずれかの一態様において、本方法により調製される抗体は、モノクローナル抗体である。別の態様において、本発明の方法により抗体を産生するために使用される非ヒト動物は、哺乳動物、例えば、齧歯類、ウシ、ブタ、ニワトリ、ウマ、ウサギ、ヤギ、またはヒツジである。本発明の抗体は、6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4を包含する。さらに、本発明の抗体は、任意選択で、Salih  et  al.(2003)(Blood  102(4):1389−1396)に記載の抗体BAMO1またはBAMO3、Groh  et  al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci  USA  93:12445−12450、Groh  et  al.(1998)Science  279:1737−1740または国際公開第2008/131406号パンフレット(そのそれぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載の抗体2C10、3H5、6D4もしくは6G6以外の抗体、または例えばCDRもしくは抗原結合領域の全部もしくは一部を含む上記の誘導体であると規定することができる。
 
【0199】
  代替的実施形態によれば、MICAポリペプチド上に存在するエピトープに結合する抗体をコードするDNAは、本発明のハイブリドーマから単離し、適切な宿主中への形質移入に適切な発現ベクター中に配置する。次いで、宿主を抗体、またはそのバリアント、例えば、そのモノクローナル抗体のヒト化バージョン、抗体の活性断片、抗体の抗原認識部分を含むキメラ抗体、または検出可能部分を含むバージョンの組換え産生に使用する。
 
【0200】
  本発明のモノクローナル抗体、例えば、抗体6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4をコードするDNAは、慣用の手順を使用して(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離および配列決定することができる。DNAは、単離したら、発現ベクター中に配置することができ、次いでそれを他で免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞中に形質移入して組換え宿主細胞中でのモノクローナル抗体の合成を得る。本明細書の他箇所において記載されるとおり、そのようなDNA配列は、多数の目的のいずれかのため、例えば、抗体をヒト化するため、断片もしくは誘導体を産生するため、または例えば抗原結合部位中の抗体の配列を改変するために改変して抗体の結合特異性を最適化することができる。一実施形態において、本発明は、抗体(例えば、6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4)の軽鎖および/または重鎖をコードする単離核酸配列、ならびにそのような核酸を(例えば、ゲノム中で)含む組換え宿主細胞を含む。
 
【0201】
  抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現は、当分野において周知である(例えば、Skerra  et  al.,Curr.Opinion  in  Immunol.,5,pp.256(1993);およびPluckthun,Immunol.130,p.151(1992)参照。
 
【0202】
活性の評価
  抗原結合化合物を得たら、それを一般に、NKG2DとMICA(例えば、sMICAまたは膜結合MICA)との間の相互作用を遮断するその能力、細胞からのMICAのシェディングを遮断するその能力、NKG2DのsMICA誘導下方モジュレーションを阻害するその能力、MICA発現細胞の死滅を引き起こすその能力、MICA発現標的細胞に対するADCCもしくはCDCを誘導するその能力、ならびに/またはMICA発現標的細胞の増殖を阻害し、および/もしくはその排除を引き起こすその能力について評価する。
 
【0203】
  MICAとNKG2Dとの間の結合を低減させ、またはその相互作用を遮断する抗原結合化合物の能力の評価は、例えば、本明細書に提供される実施例におけるように本方法の任意の好適な段階において実施することができる。例えば、MICAを表面上で発現する腫瘍細胞を、NKG2Dを表面上で発現する細胞(例えば、エフェクター細胞)と、候補抗MICA抗体を添加してまたは添加せずに接触させることができる。MICA発現細胞およびNKG2D発現細胞との間の結合を評価することができ、結合を低減させない抗体を選択する。別の可能性は、単離MICAポリペプチドを単離NKG2Dポリペプチド、またはNKG2Dポリペプチドを表面において発現する細胞と接触させること、およびMICAとNKG2DポリペプチドまたはNKG2Dを発現する細胞との間の結合を評価することを含む。別の可能性は、単離NKG2DポリペプチドをMICAポリペプチドを表面において発現する細胞と接触させること、およびMICAポリペプチドまたはMICAを発現する細胞の間の結合を評価することを含む。
 
【0204】
  例えば、薬剤がMICAのNKG2Dとの相互作用と遮断するか否かを決定するため、以下の試験を実施する:MICAが形質移入された細胞系C1RまたはRMAを、増加濃度の試験抗MICAmAbの存在下または不存在下で可溶性NKG2D−Fc融合タンパク質とインキュベートする。細胞を洗浄し、次いでNKG2D−Fc融合タンパク質のFc部分を認識する二次抗体とインキュベートし、再度洗浄し、フローサイトメーター(FACScalibur,Beckton  Dickinson)上で標準的方法により分析する。抗MICAmAbの不存在下で、NKG2D−Fcタンパク質は、C1RまたはRMA細胞に十分結合する。NKG2DへのMICA結合を遮断する抗MICAmAbの存在下で、NKG2D−Fcの細胞への結合の低減が存在する。
 
【0205】
  好ましくは、MICAとNKG2Dとの間の結合を低減させ、またはその相互作用を遮断する抗原結合化合物の能力の評価は、NKG2D発現細胞(例えば、NKまたはT細胞)の機能に対する抗MICA抗体の効果を評価することにより実施することもできる。好ましくは、NKG2Dを発現するが、CD16を発現しないNKまたはT細胞を使用してCD16媒介ADCC効果のいかなる寄与も回避する。抗MICA抗体がMICA−NKG2D相互作用を低減させ、または遮断する場合、NKまたはT細胞のNKG2D媒介活性化を減衰させることが予期される。したがって、MICAとNKG2Dとの間の結合を低減させず、その相互作用も遮断しない抗体は、NKまたはT細胞のNKG2D媒介活性化を実質的に低減させず、遮断もしない。このことは、典型的な細胞毒性アッセイにより評価することができ、その例は本明細書に記載される。多数の細胞ベースアッセイのいずれか、例として、遺伝子発現ベース活性、細胞毒性ベースアッセイ、および増殖アッセイを使用してNKG2D活性を評価することができる。一態様において、インビトロアッセイは、ヒト患者からのNK細胞もしくはT細胞、または、受容体の発現が細胞の活性を検出可能に変化させ、例えば、細胞をNKG2Dリガンドにより活性化可能とする限り、例えば、NKG2Dコードトランス遺伝子が形質移入されたT細胞系を使用する。NKG2D活性を反映する任意の好適な生理学的変化を使用して試験化合物または抗体の有用性を評価することができる。例えば、種々の効果、例えば、遺伝子発現、サイトカイン産生、細胞成長、細胞増殖、pH、細胞内セカンドメッセンジャー、例えば、Ca2+、IP3、cGMP、もしくはcAMP、または活性、例えば、細胞毒性活性もしくは他のT細胞を活性化させる能力の変化を計測することができる。一実施形態において、受容体の活性は、NKG2D応答遺伝子、例えば、CD25、IFN−ガンマ、またはTNF−アルファの発現を検出することにより評価する(例えば、Groh  et  al.(2003)PNAS  100:9452−9457;Andre  et  al.(2004)Eur.J.Immunol  34:1−11参照)。一実施形態において、NKG2D活性は、NKG2D+TまたはNK細胞をMICA発現細胞および抗MICA抗体の存在下でインキュベートし、TまたはNK細胞によるTNF−アルファまたはIFN−ガンマの放出を阻害する化合物または試験抗体の能力を評価することにより評価する。
 
【0206】
  標的細胞のNKG2D媒介殺傷を評価する例示的な細胞毒性アッセイも、本明細書の実施例に記載される。ここでは、NKG2D+CD16−NK92細胞を低減させ、または阻害する抗MICA抗体の能力を使用し、51Crの標的細胞放出を計測することによりMICA
*019形質移入BaF/3のNK細胞媒介殺傷を評価する。インビトロ細胞毒性アッセイは、例えば、Coligan  et  al.,eds.,Current  Protocols  in  Immunology,Greene  Publishing  Assoc.and  Wiley  Interscience,N.Y.,(1992,1993)に記載の当分野において周知の標準的方法により実施する。MICA発現標的細胞を、
51Crにより標識してからNK細胞を添加し、次いで殺傷を、殺傷の結果としての細胞から培地への
51Crの放出に比例して推定する。MICAとNKG2Dとの間の結合を低減させ、またはその相互作用を遮断する薬剤の添加は、NKG2Dを介する活性シグナリングの開始および伝播の妨害をもたらす。したがって、そのような薬剤の添加は、標的細胞のNK媒介殺傷の減少をもたらす。
 
【0207】
  NKG2Dによる細胞の活性化(例えば、サイトカイン産生、細胞成長、細胞増殖、pH、細胞内セカンドメッセンジャー、MICA発現細胞のNK媒介殺傷)を低減させず、遮断もしない(例えば、低減なしまたは5%、10%、20%もしくは30%未満の低減)抗原結合化合物を「非遮断」mAbと命名する。NKG2Dによる細胞の活性化を低減させ、または遮断する抗原結合化合物を「遮断」mAbと命名する。
 
【0208】
  MICA発現細胞からのMICAのシェディングを遮断する抗原結合化合物の能力の評価は、本明細書に提供される実施例におけるように本方法の任意の好適な段階において実施することができる。一例において、細胞の試料を提供し、ELISA法を使用して可溶性細胞外MICAを検出する。一例において、本発明の抗原結合化合物を哺乳動物に投与し、循環sMICAの存在もしくは不存在、またはレベルを計測する。インビトロ検出アッセイの例は、Nolting  et  al.(2010)Virology  406(1):12−20に記載されている。手短に述べると、市販のMICA  Elisaキット(Bamomab,Munich,Germany)を使用することができる。プレートを捕捉抗MICAmAbのBAMO−1によりPBS中2μg/mlにおいて一晩コートし、次いで100μlの15%BSAの添加により37℃において2時間ブロッキングし、洗浄する。スタンダードおよび試料を添加し、プレートを37℃において2時間インキュベートする。プレートを洗浄し、検出mAbのBAMO−3を7.5%BSA−PBS中5μg/mlにおいて37℃において2時間添加する。次いで、プレートを洗浄し、抗マウスIgG2a−HRP(7.5%BSA−PBS中1:8000)を37℃において1時間添加する。次いで、プレートを洗浄し、Tetramethylbenzidine  Peroxidase  Substrate  System(KPL,Gaithersburg,MD)を使用して発色させる。吸光度を450nmにおいて計測する。
 
【0209】
  ADCC、CDCを誘導し、またはそうでなければ(毒性剤の送達による)MICA発現標的細胞の活性の排除もしくは阻害をもたらす抗原結合化合物の能力の評価は、例えば、本明細書に提供される実施例におけるように本方法の任意の好適な段階において実施することができる。この評価は、治療的使用が予定される抗体(または他の化合物)の同定、産生および/または発達に関与する種々のステップの1つ以上において有用であり得る。例えば、活性は、候補抗原結合化合物を同定するスクリーニング方法に関して、または抗原結合化合物を選択し、ヒトに好適とする(例えば、抗体の場合においてキメラまたはヒト化とする)方法、抗原結合化合物を発現する細胞(例えば、組換え抗原結合化合物を発現する宿主細胞)を得、機能抗体(または他の化合物)を産生するその能力について評価する方法、および/またはある量の抗原結合化合物を産生し、(例えば、産物のバッチまたはロットを試験するために)活性について評価すべき方法において評価することができる。一般に、抗原結合化合物は、MICAポリペプチドに特異的に結合することが公知である。このステップは、複数(例えば、高スループットスクリーニング法を使用して極めて多数またはより少数)の抗原結合化合物を試験することを含み得る。
 
【0210】
  CDCおよびADCCの試験を実施することができ、種々のアッセイ、例として、本明細書の実験実施例に記載のものにより測定することができる。ADCCの試験は、典型的には、結合した抗MICA抗体を有するMICA発現標的細胞(例えば、癌または他のMICA発現細胞)が補体の関与なしでエフェクター細胞(例えば、Fc受容体を担持する白血球)により認識される細胞媒介細胞毒性を評価することを含む。MICA抗原を発現しない細胞を任意選択で対照として使用することができる。NK細胞の細胞毒性の活性化は、サイトカイン産生(例えば、IFN−γ産生)または細胞毒性マーカー(例えば、CD107動員)の増加を計測することにより評価する。好ましくは、本発明の抗体は、標的(MICA発現)細胞の存在下で対照抗体(例えば、MICAに結合しない抗体、ネズミ定常領域を有するMICA抗体)と比較して少なくとも20%、50%、80%、100%、200%または500%のサイトカイン産生、細胞毒性マーカーの発現、または標的細胞溶解の増加を誘導する。別の例において、標的細胞の溶解は、例えば、クロム放出アッセイにおいて検出し、好ましくは、本発明の抗体は、標的細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%または50%の溶解を誘導する。
 
【0211】
抗体CDR配列
抗体6E4
  抗体6E4の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号7として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号8として列記する。ヒト鎖定常領域(それぞれ重鎖および軽鎖)に融合している抗体6E4の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号9および10としてそれぞれ列記する。具体的な実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体6E4と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体6E4の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体6E4は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、6E4のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。6E4の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、6E4の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。6E4の可変軽鎖可変領域または6E4の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体6E4の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0212】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号11〜13に記載のアミノ酸配列SYYAMS、GFTFSYもしくはGFTFSYYAMS、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号14〜15に記載のアミノ酸配列TISRGGNYIYYTDSVKGもしくはTISRGGNYIY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号16に記載のアミノ酸配列ISDYDGAWLAY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号17に記載のアミノ酸配列RSSQSIIHTNGNTYLE、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号18に記載のアミノ酸配列KISNRFS、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;配列番号19に記載のアミノ酸配列FQGSHVPWT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、または異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0213】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号7の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号8の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号7の重鎖可変領域(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)および配列番号8の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号11〜16に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号17、18および19に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号11〜16に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号17、18および19に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号7のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(h)配列番号8のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0214】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0215】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(h)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0216】
抗体20C6
  抗体20C6の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号20として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号21として列記する。重鎖定常領域(それぞれ重鎖および軽鎖に融合している抗体20C6の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号22および23としてそれぞれ列記する。一実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体20C6と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体20C6の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体20C6は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、20C6のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。20C6の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、20C6の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。20C6の可変軽鎖可変領域または20C6の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つのアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体16A8の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0217】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号24〜26に記載のアミノ酸配列TSGMGVG、GFSLSTSGもしくはGFSLSTSGMGVG、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号27〜28に記載のアミノ酸配列HIWWDDDKYYNPSLKもしくはHIWWDDDK、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号29に記載のアミノ酸配列RTQGYFDY、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号30に記載のアミノ酸配列RASQSISDYLH、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号31に記載のアミノ酸配列YASQSIS、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;および/または配列番号32に記載のアミノ酸配列QNGHSFPWT、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、もしくは異なるアミノ酸により置換されていてよく、または配列は、1つ以上のアミノ酸の挿入を含み得る)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0218】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号20の重鎖可変領域(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号21の軽鎖可変領域(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号20の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)および配列番号21の軽鎖可変領域(1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号24〜29に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号30、31および32にそれぞれ示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号24〜29に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号30、31および32に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号20のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(h)配列番号21のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0219】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0220】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(h)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0221】
抗体16A8
  抗体16A8の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号33として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号34として列記する。重鎖定常領域(それぞれ重鎖および軽鎖に融合している抗体16A8の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号35および36にそれぞれ列記する。一実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体16A8と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体16A8の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体16A8は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、16A8のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。16A8の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、16A8の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。16A8の可変軽鎖可変領域または16A8の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つのアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体16A8の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0222】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号37〜39に記載のアミノ酸配列RYAMS、GFTFSRもしくはGFTFSRYAMS、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号40〜41に記載のアミノ酸配列TIFSGGSYTYYPDSVもしくはTIFSGGSY、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号42に記載のアミノ酸配列PNWERTFDY、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号43に記載のアミノ酸配列KSSQSLLNSSNQKNYL、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号44に記載のアミノ酸配列FASTRES、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;および/または配列番号45に記載のアミノ酸配列QQHYSTPPT、もしくはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、もしくは異なるアミノ酸により置換されていてよく、または配列は、1つ以上のアミノ酸の挿入を含み得る)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0223】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号33の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号34の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号33の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)および配列番号34の軽鎖可変領域(1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号37〜42に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号43、44および45にそれぞれ示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号37〜42に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号43、44および45に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号33のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(h)配列番号34のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0224】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0225】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(h)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0226】
抗体19E9
  抗体19E9の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号46として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号47として列記する。
 
【0227】
  具体的な実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体19E9と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体19E9の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体19E9は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、19E9のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。19E9の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、19E9の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。19E9の可変軽鎖可変領域または19E9の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体19E9の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0228】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号48〜50に記載のアミノ酸配列SDYAWN、GYSITSDもしくはGYSITSDYAWN、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号51〜52に記載のアミノ酸配列FVSYSGTTKYNPSLKSもしくはFVSYSGTTK、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号53に記載のアミノ酸配列GYGFDY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号54に記載のアミノ酸配列SATSSISSIYFH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号55に記載のアミノ酸配列RTSNLAS、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;配列番号56に記載のアミノ酸配列QQGTTIPFT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、または異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0229】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号46の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号47の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号48〜53に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号54、55および56に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号48〜53に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号54、55および56に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号46のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号47のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0230】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0231】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(g)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0232】
抗体9C10
  抗体9C10の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号57として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号58として列記する。具体的な実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体9C10と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体9C10の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体9C10は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、9C10のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。9C10の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、9C10の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。9C10の可変軽鎖可変領域または9C10の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体9C10の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0233】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号59〜61に記載のアミノ酸配列RYWMN、GYSFTRもしくはGYSFTRYWMN、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号62〜63に記載のアミノ酸配列MIHPSDSETRLNQKFKDもしくはMIHPSDSETR、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号64に記載のアミノ酸配列GNFFYVMDY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号65に記載のアミノ酸配列RASQSIGTSIH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号66に記載のアミノ酸配列ASESISG、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;配列番号67に記載のアミノ酸配列QQSNFWPFT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、または異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0234】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号67の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号68の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号59〜64に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号65、66および67に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号59〜64に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号65、66および67に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号57のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号58のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0235】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0236】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(g)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0237】
抗体12A10
  抗体12A10の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号68として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号69として列記する。具体的な実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体12A10と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体12A10の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体12A10は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、12A10のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。12A10の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、12A10の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。12A10の可変軽鎖可変領域または12A10の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体12A10の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0238】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号70〜72に記載のアミノ酸配列NYWMN、GYSFTNもしくはGYSFTNYWMN、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号73〜74に記載のアミノ酸配列MIHPSDSETRLNQKFKDもしくはMIHPSDSETR、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号75に記載のアミノ酸配列DDFFTMDY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号76に記載のアミノ酸配列RASQNIVTSIH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号77に記載のアミノ酸配列YASESIS、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;配列番号78に記載のアミノ酸配列QQSNIWPLT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、または異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0239】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号68の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号69の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号70〜75に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号76、77および78に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号70〜75に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号76、77および78に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号68のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号69のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0240】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0241】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(g)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0242】
抗体10A7
  抗体10A7の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号79として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号80として列記する。具体的な実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体10A7と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体10A7の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体10A7は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、10A7のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。10A7の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、10A7の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。10A7の可変軽鎖可変領域または10A7の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体10A7の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0243】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号81〜83に記載のアミノ酸配列TSGMGVG、GFSLSTSGもしくはGFSLSTSGMGVG、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号84〜85に記載のアミノ酸配列HIWWDDDRYYNPSLKSもしくはHIWWDDDRY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号86に記載のアミノ酸配列RLNGYFDY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号87に記載のアミノ酸配列RASQSISDYLH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号88に記載のアミノ酸配列YASQSIS、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;配列番号89に記載のアミノ酸配列QNGHSFPFT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、または異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0244】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号79の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号80の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号81〜86に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号87、88および89に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号81〜86に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号87、88および89に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号79のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号80のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0245】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0246】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(g)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0247】
抗体18E8
  抗体18E8の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号90として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号91として列記する。具体的な実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体18E8と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体18E8の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体18E8は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、18E8のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。18E8の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、18E8の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。18E8の可変軽鎖可変領域または18E8の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体18E8の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0248】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号92〜94に記載のアミノ酸配列SDYSWH、GYSITSDもしくはGYSITSDYSWH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号95〜96に記載のアミノ酸配列NIHYSGRINYNPSLRSもしくはNIHYSGRIN、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号97に記載のアミノ酸配列RRTFGNFEDY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号98に記載のアミノ酸配列RSSSSVNYMH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号99に記載のアミノ酸配列ATSTLAS、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;配列番号100に記載のアミノ酸配列QQWSSNPLT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、または異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0249】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号90の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号91の軽鎖可変領域(1、2、3つまたは);ならびに/または
(c)配列番号92〜97に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号98、99および100に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号92〜97に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号98、99および100に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号90のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号91のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0250】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0251】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(g)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0252】
抗体10F3
  抗体10F3の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号101として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号102として列記する。具体的な実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体10F3と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体10F3の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体10F3は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、10F3のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。10F3の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、10F3の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。10F3の可変軽鎖可変領域または10F3の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体10F3の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0253】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号103〜105に記載のアミノ酸配列SYTMH、GYTFTSもしくはGYTFTSYTMH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号106〜107に記載のアミノ酸配列YINPSSGYTEYNQKFKDもしくはYINPSSGYTE、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号108に記載のアミノ酸配列GGDWDVDWFVY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号109に記載のアミノ酸配列SASSSISYMH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号110に記載のアミノ酸配列STSKLAS、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;配列番号111に記載のアミノ酸配列QHRSTYPFT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、または異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0254】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号101の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号102の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号103〜108に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号109、110および111に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号103〜108に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号109、110および111に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号101のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号102のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0255】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0256】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(g)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0257】
抗体15F9
  抗体15F9の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号112として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号113として列記する。具体的な実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体15F9と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体15F9の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体15F9は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、15F9のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。15F9の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、15F9の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。15F9の可変軽鎖可変領域または15F9の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体15F9の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0258】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号114〜116に記載のアミノ酸配列SGYSWH、GYSITSGもしくはGYSITSGYSWH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号117〜118に記載のアミノ酸配列FIHYSGSTDYNPSLKSもしくはFIHYSGSTD、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号119に記載のアミノ酸配列DYGHWYFDV、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号120に記載のアミノ酸配列KASQSVSYDVA、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号121に記載のアミノ酸配列YASNRYT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;配列番号122に記載のアミノ酸配列QQDYSSLT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、または異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0259】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号112の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号113の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号114〜119に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号120、121および122に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号114〜119に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号120、121および122に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号112のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号113のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0260】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0261】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(g)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0262】
抗体14B4
  抗体14B4の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号123として列記し、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号124として列記する。具体的な実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体14B4と本質的に同一のエピトープまたは決定基に結合する抗体を提供し;任意選択で、抗体は、抗体14B4の抗原結合領域を含む。本明細書の実施形態のいずれかにおいて、抗体14B4は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴づけることができる。1つの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、14B4のFabまたはF(ab’)
2部分を含む。14B4の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、14B4の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。14B4の可変軽鎖可変領域または14B4の軽鎖可変領域のCDRの1、2もしくは3つをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1、2、3、4または5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入または欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体14B4の抗原結合領域の一部または全部を含む軽鎖および/または重鎖可変領域のいずれかがヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト定常領域、任意選択で、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプに融合している抗体が提供される。
 
【0263】
  別の態様において、本発明は、抗体をコードする精製ポリペプチドであって、抗体は、配列番号125〜127に記載のアミノ酸配列SYWMN、GYSFTSもしくはGYSFTSYWMN、もしくはG、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR1領域;配列番号128〜129に記載のアミノ酸配列MIHPSDSETRLNQKFKDもしくはMIHPSDSETR、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR2領域;配列番号130に記載のアミノ酸配列EMGPYTLDY、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むHCDR3領域;配列番号131に記載のアミノ酸配列RASQNIDTSIH、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR1領域;配列番号132に記載のアミノ酸配列YASESIS、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR2領域;配列番号133に記載のアミノ酸配列QQSNYWPLT、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列(これらのアミノ酸の1つ以上は、欠失され、または異なるアミノ酸により置換されていてよい)を含むLCDR3領域を含むポリペプチドを提供する。
 
【0264】
  別の態様において、本発明は、ヒトMICAに結合する抗体であって、
(a)配列番号123の重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(b)配列番号124の軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(c)配列番号125〜130に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(d)配列番号131、132および133に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(e)配列番号125〜130に示される重鎖CDR1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)ならびに配列番号131、132および133に示される軽鎖CDR1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列(CDR中の1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(f)配列番号123のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である重鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい);ならびに/または
(g)配列番号124のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%同一である軽鎖可変領域(1、2、3つ以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸により置換されていてよい)
を含む抗体を提供する。
 
【0265】
  本明細書の実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10連続アミノ酸の配列により、および/または対応する配列番号に列記される特定のCDRもしくはCDRの組と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%配列同一性を共有するアミノ酸配列を有すると特徴づけることができる。
 
【0266】
  別の態様において、本発明は、MICA結合について上記(a)〜(g)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
 
【0267】
  本発明の抗体のいずれか、例えば、6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4において、規定の可変領域およびCDR配列は、保存的配列改変(1、2、3、4、5、6、7、8つ以上の配列改変)を含み得る。保存的配列改変は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特徴に有意に影響せず、変化もさせないアミノ酸改変を指す。そのような保存的改変としては、アミノ酸置換、付加および欠失が挙げられる。改変は、当分野において公知の標準的技術、例えば、部位特異的変異導入およびPCR媒介変異導入により本発明の抗体中に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、典型的には、アミノ酸残基を、類似の物理化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えるものである。規定の可変領域およびCDR配列は、1、2、3、4つ以上のアミノ酸挿入、欠失または置換を含み得る。置換を行う場合、好ましい置換は、保存的改変である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同一側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基により置き換えることができ、または変化された抗体は、保持された機能(すなわち、本明細書に記載の特性)について本明細書に記載のアッセイを使用して試験することができる。
 
【0268】
  用語「同一性」または「同一である」は、2つ以上のポリペプチドの配列間の関係において使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基の文字列間でのマッチの数によって決定された、ポリペプチド間の配列の関連性の程度を示す。「同一性」は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)により対処されるギャップアラインメント(存在する場合)を有する2つ以上の配列の小さい方の間での同一のマッチのパーセントの尺度である。関連するポリペプチドの同一性は、公知の方法により容易に計算することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、Computational  Molecular  Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford  University  Press,New  York,1988;Biocomputing:Informatics  and  Genome  Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic  Press,New  York,1993;Computer  Analysis  of  Sequence  Data,Part  1,Griffin,A.M.,and  Griffin,H.G.,eds.,Humana  Press,New  Jersey,1994;Sequence  Analysis  in  Molecular  Biology,von  Heinje,G.,Academic  Press,1987;Sequence  Analysis  Primer,Gribskov,M.and  Devereux,J.,eds.,M.Stockton  Press,New  York,1991;およびCarillo  et  al.,SIAM  J.Applied  Math.48,1073(1988)に記載のものが挙げられる。
 
【0269】
  同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大マッチを与えるように設計される。同一性を決定するための方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいて記述されている。2つの配列間の同一性を判定するための好ましいコンピュータプログラムの方法としては、GCGプログラムパッケージ、例としてGAP(Devereux  et  al.,Nucl.Acid.Res.12,387(1984);Genetics  Computer  Group,University  of  Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul  et  al.,J.Mol.Biol.215,403−410(1990))が挙げられる。BLASTXプログラムは、National  Center  for  Biotechnology  Information(NCBI)および他のソース(BLAST  Manual,Altschul  et  al.NCB/NLM/NIH  Bethesda,Md.20894;Altschul  et  al.、前掲)から公的に利用可能である。周知のSmith  Watermanアルゴリズムを使用して同一性を決定することもできる。
 
【0270】
  AbM(Oxford  MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアの定義)、KabatおよびChothiaの定義系による、本発明による抗体のCDRの配列を以下の表A中にまとめた。任意の好適な番号付与系を任意の他の表示の不存在下で、指定されたCDR領域に対して使用することができる一方、本明細書において使用される番号付与はAbmである。そのような番号付与は、以下の表示を使用して確立されている:CDR−L1:開始:約残基24、前の残基:常にCys、後の残基:常にTrp(典型的には、Trp−Tyr−Glnだけでなく、Trp−Leu−Gln、Trp−Phe−Gln、Trp−Tyr−Leu)、長さ:10〜17残基;CDR−L2:開始:L1の末端の後に常に16残基、前の残基:一般にIle−Tyr(それだけでなく、Val−Tyr、Ile−Lys、Ile−Phe)、長さ:常に7残基;CDR−L3、開始:L2の末端の後に常に33残基、前の残基:常にCys、後の残基:常にPhe−Gly−Xaa−Gly、長さ:7〜11残基;CDR−H1、開始:約残基26(Cysの後に常に4残基)(Chothia/AbM定義、Kabat定義は5残基後から開始する)、前の残基:常にCys−Xaa−Xaa−Xaa、後の残基:常にTrp(典型的には、Trp−Valだけでなく、Trp−Ile、Trp−Ala)、長さ:10〜12残基(AbM定義、Chothia定義は最後の4残基を除外する);CDR−H2、開始:CDR−H1のKabat/AbM定義の末端の後に常に15残基、前の残基:典型的にはLeu−Glu−Trp−Ile−Gly(しかし、多数の変動、Lys/Arg−Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala−Thr/Ser/Ile/Ala後の残基)、長さ:Kabat定義では16〜19残基;AbM(およびChothia)定義では、7残基前で終了する;CDR−H3、開始:CDR−H2の末端の後に常に33残基(Cysの後に常に2残基)、前の残基:常にCys−Xaa−Xaa(典型的にはCys−Ala−Arg)、後の残基:常にTrp−Gly−Xaa−Gly、長さ:3〜25残基。
 
【0271】
  本発明による抗体の可変鎖の配列を以下の表B中に列記し、リーダー配列をそれぞれの配列の開始において下線により示し(任意の抗体鎖を、リーダー配列の末端直後のアミノ酸位置において開始すると規定することができる)、それぞれのCDRを下線により示す。本明細書の任意の実施形態において、VLまたはVH配列は、シグナルペプチドまたはその任意の部分を含有するまたは欠くように規定または番号付与することができる。
 
【0272】
  一実施形態において、本発明の抗体は、ヒトIgG1またはIgG3アイソタイプのものである。一実施形態において、本発明の抗体は、その結合および/または機能特性を保持する抗体断片である。
 
【0280】
  本発明の実施形態のいずれかの一態様において、本発明の任意の抗体は、式(I)〜(VIII)から選択されるそれぞれの式によるCDR1、2および/または3配列を有する重鎖および/または軽鎖を含み得る。本明細書の任意の実施形態において、特定のHCDR1〜3またはLCDR−1〜3は、式(I)〜(VIII)の配列を有すると規定することができる。1つの好ましい実施形態において、抗体は、3つのLCDRを含む軽鎖および3つのHCDRを含む重鎖を含む。
 
【0281】
  一実施形態において、HCDR1は、式(I):
G−Xaa
1−Xaa
2−Xaa
3−Xaa
4−Xaa
5(配列番号261)
のアミノ酸配列を含み、
式中、Xaa
1は、PheまたはTyrであり得、Xaa
2は、ThrまたはSerであり得、Xaa
3は、Ile、LeuまたはPheであり得、Xaa
4は、SerまたはThrであり得、Xaa
5は、Asn、Tyr、Ser、ThrまたはArgであり得る。任意選択で、前記Xaa
1〜5のいずれか1、2または3つは、示されるアミノ酸のいずれかの保存的もしくは非保存的置換または欠失または挿入であり得る。
 
【0282】
  一実施形態において、HCDR1は、式(II):
Xaa
1−Xaa
2−Xaa
3−Xaa
4−Xaa
5(配列番号262)
のアミノ酸配列を含み、
式中、Xaa
1は、Asn、Ser、ThrまたはArgであり得、Xaa
2は、Gly、Asp、SerまたはTyrであり得、Xaa
3は、Thr、Tyr、Ala、Gly、Trpであり得、Xaa
4は、Ser、AlaまたはMetであり得、Xaa
5は、His、Trp、Gln、SerまたはAsnであり得る。任意選択で、前記Xaa
1〜5のいずれか1、2または3つは、示されるアミノ酸のいずれかの保存的もしくは非保存的置換または欠失または挿入であり得る。
 
【0283】
  一実施形態において、HCDR1は、式(III):
Xaa
1−Y−Xaa
2−M−Xaa
3(配列番号263)
のアミノ酸配列を含み、
式中、Xaa
1〜3は、それぞれ、示されるアミノ酸のいずれかの保存的もしくは非保存的置換または欠失または挿入であり得、Xaa
1は、Asn、Ser、ThrまたはArgであり得、Xaa
2は、Thr、Tyr、Ala、Gly、Trpであり得、Xaa
3は、His、Trp、Gln、SerまたはAsnであり得る。
 
【0284】
  一実施形態において、HCDR2は、式(IV):
Xaa
1−Xaa
2−Xaa
3−Xaa
4−Xaa
5−Xaa
6−Xaa
7−Xaa
8−Xaa
9−Xaa
10(配列番号264)
のアミノ酸配列を含み、
式中、Xaa
1は、Phe、Thr、His、Asn、TyrまたはMetであり得、Xaa
2は、ValまたはIleであり得、Xaa
3は、Ser、Phe、His、AsnまたはTrpであり得、Xaa
4は、Arg、Tyr、Ser、TrpまたはProであり得、Xaa
5は、Gly、AspまたはSerであり得、Xaa
6は、Thr、Gly、AspまたはSerであり得、Xaa
7は、Asn、Thr、Ser、Asp、ArgまたはGlyであり得、Xaa
8は、Tyr、Lys、Glu、Arg、IleまたはThrであり得、Xaa
9は、Ile、Thr、Tyr、AsnまたはAspであり得、Xaa
10は、Tyr、ArgまたはGluであり得る。任意選択で、前記Xaa
1〜10のいずれか1、2、3または4つは、示されるアミノ酸のいずれかの保存的もしくは非保存的置換または欠失または挿入であり得る。
 
【0285】
  一実施形態において、HCDR3は、式(V):
Xaa
1−Xaa
2−Xaa
3−Xaa
4−Xaa
5−Xaa
6−Xaa
7−Xaa
8−Xaa
9(配列番号265)
のアミノ酸配列を含み、
式中、Xaa
1は、Ile、Pro、Arg、Gly、AspまたはGluであり得、Xaa
2は、Ser、Tyr、Thr、Asn、Asp、Leu、Arg、GluまたはMetであり得、Xaa
3は、Asp、Glu、Trp、Gln、Phe、AsnまたはThrであり得、Xaa
4は、Tyr、Glu、Gly、Phe、Trp、HisまたはProであり得、Xaa
5は、Asp、Arg、Tyr、Thr、GlyまたはTrpであり得、Xaa
6は、Gly、Tyr、Thr、Phe、Val、MetまたはAsnであり得、Xaa
7は、Ala、Phe、Asp、MetまたはLeuであり得、Xaa
8は、Trp、Tyr、AspまたはGluであり得、Xaa
9は、Leu、Tyr、Asp、PheまたはValであり得る。任意選択で、前記Xaa
1〜9のいずれか1、2、3または4つは、示されるアミノ酸のいずれかの保存的もしくは非保存的置換または欠失または挿入であり得る。
 
【0286】
  一実施形態において、LCDR1は、式(VI):
Xaa
1−Xaa
2−Xaa
3−Xaa
4−Xaa
5−Xaa
6−Xaa
7−Xaa
8−Xaa
9−Xaa
10−Xaa
11(配列番号266)
のアミノ酸配列を含み、
式中、Xaa
1は、Ser、LysまたはArgであり得、Xaa
2は、SerまたはAlaであり得、Xaa
3は、ThrまたはSerであり得、Xaa
4は、SerまたはGlnであり得、Xaa
5は、AsnまたはSerであり得、Xaa
6は、Val、LeuまたはIleであり得、Xaa
7は、Asp、Asn、Val、Leu、GlyまたはSerであり得、Xaa
8は、Tyr、Ser、Asn、ThrまたはAspであり得、Xaa
9は、Asp、Met、Ile、SerまたはTyrであり得、Xaa
10は、Val、His、Tyr、Ser、Ile、またはLeuであり得、Xaa
11は、Ala、Phe、AsnまたはHisであり得る。任意選択で、前記Xaa
1〜11のいずれか1、2、3または4つは、示されるアミノ酸のいずれかの保存的もしくは非保存的置換、または欠失または挿入であり得る。
 
【0287】
  一実施形態において、LCDR2は、式(VII):
Xaa
1−Xaa
2−Xaa
3−Xaa
4−Xaa
5−Xaa
6−Xaa
7(配列番号267)
のアミノ酸配列を含み、
式中、Xaa
1は、Ser、Lys、Arg、Phe、TyrまたはAlaであり得、Xaa
2は、Ile、Thr、AlaまたはSerであり得、Xaa
3は、SerまたはGluであり得、Xaa
4は、Lys、Glu、Asn、Thr、GlnまたはSerであり得、Xaa
5は、Leu、Arg、SerまたはIleであり得、Xaa
6は、Tyr、Phe、Ala、Glu、IleまたはSerであり得、Xaa
7は、Thr、SerまたはGlyであり得る。任意選択で、前記Xaa
1〜7のいずれか1、2、3または4つは、示されるアミノ酸のいずれかの保存的もしくは非保存的置換または欠失または挿入であり得る。
 
【0288】
  一実施形態において、LCDR3は、式(VIII):
Xaa
1−Xaa
2−Xaa
3−Xaa
4−Xaa
5−Xaa
6−Xaa
7−Xaa
8−Xaa
9(配列番号268)
のアミノ酸配列を含み、
式中、Xaa
1は、PheまたはGlnであり得、Xaa
2は、His、AsnまたはGlnであり得、Xaa
3は、Ser、Gly、His、TrpまたはArgであり得、Xaa
4は、Asn、His、Tyr、ThrまたはSerであり得、Xaa
5は、Phe、Ser、Thr、His、IleまたはTyrであり得、Xaa
6は、Trp、Phe、Thr、Ile、Val、AsnまたはTryであり得、Xaa
7は、Proであり、Xaa
8は、Phe、Trp、ProまたはLeuであり得、Xaa
9は、Thrである。任意選択で、前記Xaa
1〜9のいずれか1、2、3または4つは、示されるアミノ酸のいずれかの保存的もしくは非保存的置換または欠失または挿入であり得る。
 
【0289】
  一実施形態において、本発明の抗体は、
a  配列番号266のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);および/または
b  配列番号267のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);および/または
c  配列番号268のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む軽鎖を含み得る。
 
【0290】
  一実施形態において、本発明の抗体は、
d  配列番号261、262および263から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);ならびに/または
e  配列番号264のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);ならびに/または
f  配列番号265のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)
を含む重鎖を含み得る。
 
【0291】
断片および誘導体
  本発明の抗体の断片および誘導体(特に記載がなくまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、本出願において使用される用語「抗体(antibody)」または「抗体(antibodies)」により包含される)、好ましくは6E4、20C6、16A8、9C10、19E9、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9または14B4様抗体は、当分野において公知の技術により産生することができる。「断片」は、インタクト抗体の一部、一般に抗原結合部位または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;連続アミノ酸残基の1つの不断配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体断片(本明細書において「単鎖抗体断片」または「単鎖ポリペプチド」と称される)、例として、限定されるものではないが、(1)単鎖Fv分子、(2)会合重鎖部分を有さない、1つの軽鎖可変ドメインのみを含有する単鎖ポリペプチド、または軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有するその断片、および(3)会合軽鎖部分を有さない、1つの重鎖可変領域のみを含有する単鎖ポリペプチド、または重鎖可変ドメインの3つのCDRを有するその断片;ならびに抗体断片から形成される多重特異的抗体が挙げられる。とりわけ、ナノボディ、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体または「dAb」が含まれる。
 
【0292】
  本抗体の断片は、標準的方法を使用して得ることができる。例えば、FabまたはF(ab’)2断片は、慣用技術に従って単離抗体のプロテアーゼ消化により産生することができる。免疫反応性断片は、公知の方法を使用し、例えば、インビボでクリアランスを遅延させ、より望ましい薬物動態学的特性を得るように改変することができ、断片をポリエチレングリコール(PEG)により修飾することができることが理解される。
 
【0293】
  あるいは、本発明の抗体を産生するハイブリドーマのDNAを、本発明の断片をコードするように改変することができる。次いで、改変DNAを発現ベクター中に挿入し、それを使用して適切な細胞を形質転換または形質移入し、次いでそれが所望の断片を発現する。
 
【0294】
  ある実施形態において、本発明の抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、発現ベクター中への挿入前、例えばヒト重鎖および軽鎖定常ドメインについてのコード配列を相同非ヒト配列の代わりに置換し、または免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列の全部もしくは一部を共有結合させることにより改変することができる。そのようにして、元の抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体を調製する。典型的には、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインと置換する。
 
【0295】
  したがって、別の実施形態によれば、本発明の抗体は、ヒト化されている。本発明による抗体の「ヒト化」形態は、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合部分配列など)であり、それらはネズミ免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)らの残基が元の抗体(ドナー抗体)のCDRからの残基により置き換えられている一方、元の抗体の所望の特異性、親和性、および能力を維持するヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
 
【0296】
  一部の例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられていてよい。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはインポートされたCDRもしくはフレームワーク配列のいずれにおいても見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能をさらに改良し、最適化するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含み、CDR領域の全部または実質的に全部は、元の抗体のそれらに対応し、FR領域の全部または実質的に全部は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれも含む。さらなる詳細については、Jones  et  al.,Nature,321,pp.522(1986);Reichmann  et  al,Nature,332,pp.323(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2,pp.593(1992);Verhoeyen  et  Science,239,pp.1534;および米国特許第4,816,567号明細書参照、それらの全開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
 
【0297】
  ヒト化抗体の作製に使用すべき軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減させるために極めて重要である。いわゆる「ベストフィット(best−fit)」法によれば、本発明の抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。次いで、マウスの配列に最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として認める(Sims  et  al.,J.Immunol.151,pp.2296(1993);Chothia  and  Lesk,J.Mol.196,1987,pp.901)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定の下位群の全てのヒト抗体のコンセンサス配列からの特定のフレームワークを使用する。同一フレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体について使用することができる(Carter  et  al.,PNAS  89,pp.4285(1992);Presta  et  al.,J.Immunol.,151,p.2623(1993))。
 
【0298】
  抗体がMICA受容体についての高親和性および他の好ましい生物学的特性を保持してヒト化されていることはさらに重要である。この目的を達成するため、好ましい方法によれば、親およびヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列および種々の概念的ヒト化産物の分析プロセスによりヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者には周知である。選択される候補免疫グロブリン配列の考えられる三次元構造を図示し、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の精査により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の推定される役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンのその抗原への結合能に影響を与える残基の分析が可能になる。このようにして、所望の抗体特性、例えば標的抗原についての親和性の増加が達成されるように、FR残基をコンセンサスおよびインポート配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接的に、最も実質的に関与する。
 
【0299】
  「ヒト化」モノクローナル抗体を作製する別の方法は、免疫化に使用されるマウスとしてXenoMouse(Abgenix,Fremont,CA)を使用することである。XenoMouseは、免疫グロブリン遺伝子が機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子により置き換えられている本発明によるネズミ宿主である。したがって、このマウスにより、またはこのマウスのB細胞から作製されたハイブリドーマ中で産生される抗体は、既にヒト化されている。XenoMouseは、米国特許第6,162,963号明細書記載されており、それは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
 
【0300】
  ヒト抗体は、種々の他の技術により、例えば免疫化のため、ヒト抗体レパートリーを発現するように遺伝子操作されている他のトランスジェニック動物を使用することにより(Jakobovitz  et  al.,Nature  362(1993)255)、またはファージディスプレイ法を使用する抗体レパートリーの選択により産生することもできる。そのような技術は、当業者に公知であり、本出願に開示されるモノクローナル抗体から出発して実施することができる。
 
【0301】
  本発明の抗体は、重鎖/軽鎖の一部が元の抗体中の対応配列と同一または相同である一方、鎖の残部が、別種に由来し、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応配列と同一または相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体の断片に、それらが所望の生物学的活性および結合特異性を示す限り、誘導体化することもできる(Cabilly  et  al.、前掲;Morrison  et  al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,pp.6851(1984))。
 
【0302】
  本発明は、細胞に指向され、実施形態において、細胞中に内在化される抗MICA抗体分子を提供する。これらは、治療剤または検出可能な薬剤をMICA発現細胞にまたはその細胞中に送達し得るが、MICAポリペプチドが発現されない細胞にも細胞中にも送達し得ない。したがって、本発明は、治療剤または検出可能な薬剤(またはMICA発現細胞へ送達すべき関心対象のペイロードとして機能とする任意の他の部分にコンジュゲートされている本明細書に記載の抗MICA抗体を含む抗MICAイムノコンジュゲートも提供する。実施形態において、抗MICAイムノコンジュゲートのMICAについての親和性は、非コンジュゲート抗体についての親和性の少なくとも10、25、50、75、80、90、または95%である。これは、細胞表面MICAまたは単離MICAを使用して測定することができる。
 
【0303】
  本発明の抗体または抗体部分を誘導体化(または標識)することができる有用な検出可能な薬剤としては、蛍光化合物、種々の酵素、補欠分子族、発光材料、生物発光材料、蛍光発光金属原子、例えば、ユウロピウム(Eu)、および他のアンタニド(anthanide)、ならびに放射性材料(上記)が挙げられる。例示的な蛍光検出可能な薬剤としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−l−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリンなどが挙げられる。抗体は、検出可能な酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼなどにより誘導体化することもできる。抗体を検出可能な酵素により誘導体化する場合、それは、酵素が使用して検出可能な反応産物を産生する追加の試薬の添加により検出する。例えば、検出可能な薬剤セイヨウワサビペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加が検出可能な発色反応産物をもたらす。抗体は、補欠分子族(例えば、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン)により誘導体化することもできる。例えば、抗体は、ビオチンにより誘導体化し、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接的な計測を介して検出することができる。好適な蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリスリンが挙げられ;発光材料の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる。あるいは、抗MICA抗体は、抗MICA抗体に結合する二次抗体と会合させることができ、その場合、二次抗体は、検出可能な標識により誘導体化されており;前記二次抗体をインビトロまたはインビボで抗MICA抗体と接触させて結合させることは、抗MICAが標識抗体として機能することを可能とする。
 
【0304】
  検出可能な部分へのコンジュゲーションは、とりわけ、本発明の抗体を診断目的に使用する場合に有用である。そのような目的としては、限定されるものではないが、MICA発現細胞の存在についての生物学的試料、例えば、血液試料または組織生検物のアッセイ、および個体中のMICA発現細胞の存在、レベル、または活性の検出が挙げられる。そのようなアッセイおよび検出方法は、例えば、患者の細胞中のMICA発現を検出すること、および患者の細胞がMICAを発現することが決定された場合、続いて本発明のMICAモジュレート抗体を投与することを含む、本発明の診断/治療方法において使用することができる。
 
【0305】
  ある実施形態において、本抗体は、生物学的試料からMICA発現細胞を精製するために使用する。生物学的試料は、患者から、例えば、診断もしくはエクスビボ治療目的のため、または研究目的のためにそのような細胞源を得るために個体もしくは非ヒト霊長類から得ることができる。
 
【0306】
  1つのそのような一実施形態において、本発明の標識抗体は、FACS選別において使用し、MICA発現細胞を生物学的試料から精製または単離することが可能である。あるいは、一部の実施形態において、本発明の抗体の固体支持体へのコンジュゲーションは、生物学的試料、例えば血液試料からの、細胞表面上にMICA受容体を担持する細胞、または個体からの組織生検物からの細胞、の親和性精製におけるツールとして有用であり得る。この精製方法は、得られた精製細胞集団の場合の、本発明の別の代替的な実施形態である。
 
【0307】
  MICA発現細胞を単離または精製するために使用される方法にかかわらず、そのように実施する能力は、多数の目的のため、例えば、MICA関連障害を、例えば本明細書に記載の抗MICA抗体の投与前に、MICA発現細胞の数または活性を評価することにより診断するために有用である。さらに、精製MICA発現細胞は、例えば、細胞およびそれらの種々の特性および挙動をより良好に特徴づけ、ならびにそれらの挙動、活性、生存、または増殖をモジュレートするために使用することができる化合物または方法を同定するため、研究関連で有用である。
 
【0308】
改変定常領域
  ADCCおよびCDCを誘導する本発明の抗MICA抗体の能力の観点から、エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞毒性、マスト細胞脱顆粒、および食作用、ならびに免疫調節シグナル、例えば、リンパ球増殖および抗体分泌の調節に影響し得るFc受容体に結合するそれらの能力を増加させる改変を有する本発明の抗体を作製することもできる。典型的な改変としては、少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、置換、欠失、挿入)、および/または変化されたタイプのグリコシル化、例えば、低フコシル化を含む改変ヒトIgG1定常領域が挙げられる。そのような改変は、Fc受容体:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16)との相互作用に影響し得る。FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)およびFcγRIII(CD16)は、活性化(すなわち、免疫系向上)受容体である一方、FcγRIIB(CD32B)は、阻害(すなわち、免疫系減衰)受容体である。改変は、例えば、エフェクター(例えば、NK)細胞上のFcγRIIIaへのFcドメインの結合を増加させ得る。
 
【0309】
  抗MICA抗体は、好ましくは、任意選択で改変されているヒトIgG1またはIgG3アイソタイプのFcドメイン(またはその一部)を含む。ヒトIgG1Fc領域(GenBankアクセッション番号J00228)の230〜447位配列のアミノ酸配列を以下に示す:
PAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号134)。
 
【0310】
  残基230〜341(Kabat  EU)は、FcCH2領域である。残基342〜447(Kabat  EU)は、FcCH3領域である。抗MICA抗体は、1つ以上の位置中の1つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、欠失、挿入)を有するバリアントFc領域を含み得、その改変は、FcγR(例として、活性化および阻害FcγR)についてのバリアントFc領域の親和性およびアビディティーを増加させる。一部の実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸改変は、FcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAについてのバリアントFc領域の親和性を増加させる。別の実施形態において、バリアントFc領域は、同等の親抗体(すなわち、Fc領域中の1つ以上のアミノ酸改変を除き本発明の抗体と同一のアミノ酸配列を有する抗体)のFc領域よりも低い親和性でFcγRIIBにさらに特異的に結合する。例えば、アミノ酸310および435位におけるヒスチジン残基の一方または両方は、例えば、リジン、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、セリンまたはトレオニンにより置換されていてよく(例えば、PCT公開の国際公開第2007/080277号パンフレット参照);そのような置換定常領域は、活性FcγRIIIAへの結合を減少させずに阻害FcγRIIBへの結合の減少を提供する。一部の実施形態において、そのような改変は、親抗体に対してFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAについてのバリアントFc領域の親和性を増加させ、FcγyRIIBについてのバリアントFc領域の親和性も向上させる。他の実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸改変は、親抗体のFc領域に対してFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAについてのバリアントFc領域の親和性を増加させるが、FcγRIIBについてのバリアントFc領域の親和性を変化させない。別の実施形態において、前記1つ以上のアミノ酸改変は、親抗体に対してFcγRIIIAおよびFcγRIIAについてのバリアントFc領域の親和性を向上させるが、FcγRIIBについての親和性を低減させる。親和性および/またはアビディティーの増加は、(改変Fc領域を有さない)親分子の結合活性を細胞中で検出することができない低レベルのFcγRを発現する細胞中での検出可能なFcγRへの結合またはFcγR関連活性をもたらす。
 
【0311】
  一実施形態において、Fc領域のアミノ酸の前記1つ以上の改変は、1つ以上のFcγR受容体についての抗体の親和性およびアビディティーを低減させる。具体的な実施形態において、本発明は、バリアントFc領域を含む抗体であって、前記バリアントFc領域は、野生型Fc領域に対する少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、バリアントFc領域は、1つのFcγRにのみ結合し、前記FcγRは、FcγRIIIAまたはFcγRIIAである抗体を包含する。
 
【0312】
  FcγRについての分子、例えば、本発明の抗体の親和性および結合特性は、抗体−抗原またはFc−FcγR相互作用、すなわち、それぞれ抗体への抗原の特異的結合またはFcγRへのFc領域の特異的結合を測定する当分野において公知のインビトロアッセイ(生化学または免疫ベースアッセイ)、例として、限定されるものではないが、ELISAアッセイ、表面プラズモン共鳴アッセイ、免疫沈降アッセイを使用して測定することができる。
 
【0313】
  一部の実施形態において、バリアントFc領域を含む本発明の分子は、Fc領域のCH3ドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9つ以上のアミノ酸改変を有する)を含む。他の実施形態において、バリアントFc領域を含む本発明の分子は、アミノ酸231〜341から伸長すると定義されるFc領域のCH2ドメイン中の少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9つ以上のアミノ酸改変を有する)を含む。一部の実施形態において、本発明の分子は、少なくとも2つのアミノ酸改変(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9つ以上のアミノ酸改変を有する)を含み、少なくとも1つのそのような改変はCH3領域中に存在し、少なくとも1つのそのような改変はCH2領域中に存在する。本発明は、ヒンジ領域中のアミノ酸改変をさらに包含する。特定の実施形態において、本発明は、アミノ酸216〜230から伸長すると定義されるFc領域のCH1ドメイン中のアミノ酸改変を包含する。
 
【0314】
  Fc改変の任意の組合せ、例えば、米国特許第7,632,497号明細書;米国特許第7,521,542号明細書;米国特許第7,425,619号明細書;米国特許第7,416,727号明細書;米国特許第7,371,826号明細書;米国特許第7,355,008号明細書;米国特許第7,335,742号明細書;米国特許第7,332,581号明細書;米国特許第7,183,387号明細書;米国特許第7,122,637号明細書;米国特許第6,821,505号明細書および米国特許第6,737,056号明細書;PCT公開の国際公開第2011/109400号パンフレット;国際公開第2008/105886号パンフレット;国際公開第2008/002933号パンフレット;国際公開第2007/021841号パンフレット;国際公開第2007/106707号パンフレット;国際公開第06/088494号パンフレット;国際公開第05/1  15452号パンフレット;国際公開第05/110474号パンフレット;国際公開第04/1032269号パンフレット;国際公開第00/42072号パンフレット;国際公開第06/088494号パンフレット;国際公開第07/024249号パンフレット;国際公開第05/047327号パンフレット;国際公開第04/099249号パンフレットおよび国際公開第04/063351号パンフレット;ならびにPresta,L.G.et  al.(2002)Biochem.Soc.Trans.30(4):487−490;Shields,R.L.et  al.(2002)J.Biol.Chem.26;277(30):26733−26740およびShields,R.L.et  al.(2001)J.Biol.Chem.276(9):6591−6604)に開示される異なる改変の任意の組合せを作製することができる。
 
【0315】
  本発明は、バリアントFc領域を含む抗MICA抗体であって、バリアントFc領域は、分子が野生型Fc領域を含む分子に対して向上されたエフェクター機能を有するように、野生型Fc領域に対する少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9つ以上のアミノ酸改変を有する)を含み、任意選択で、バリアントFc領域は、221、243、247、255、256、258、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、300、301、303、305、307、308、309、310、311、312、316、320、322、326、329、330、332、331、333、334、335、337、338、339、340、359、360、370、373、376、378、392、396、399、402、404、416、419、421、430、434、435、437、438および/または439位のいずれか1つ以上における置換を含む抗体を包含する。
 
【0316】
  本発明は、バリアントFc領域を含む抗MICA抗体であって、バリアントFc領域は、分子が野生型Fc領域を含む分子に対して向上されたエフェクター機能を有するように、野生型Fc領域に対する少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9つ以上のアミノ酸改変を有する)を含み、任意選択で、バリアントFc領域は、329、298、330、332、333および/または334位のいずれか1つ以上における置換(例えば、S239D、S298A、A330L、I332E、E333Aおよび/またはK334A置換)を含む抗体を包含する。
 
【0317】
  一実施形態において、バリアントまたは野生型Fc領域を有する抗体は、抗体のFc受容体結合能を増加させる変化されたグリコシル化パターンを有し得る。そのような炭水化物改変は、例えば、変化されたグリコシル化機序を有する宿主細胞中で抗体を発現させることにより達成することができる。変化したグリコシル化機序を有する細胞は、当分野において記載されており、本発明の組換え抗体を発現し、それにより変化したグリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用することができる。例えば、Shields,R.L.et  al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740;Umana  et  al.(1999)Nat.Biotech.17:176−1、ならびに欧州特許第1,176,195号明細書;PCT公開の国際公開第06/133148号パンフレット;国際公開第03/035835号パンフレット;国際公開第99/54342号パンフレット参照、そのそれぞれは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
 
【0318】
  一般に、変化されたグリコシル化を有するそのような抗体は、抗体が、ある所望の特性、例として、限定されるものではないが、非改変抗体または天然定常領域を有し、ネズミ骨髄腫NSOおよびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Chu  and  Robinson,Current  Opinion  Biotechnol.2001,12:180−7)により生産される抗体、本明細書の実施例セクション、または組換え治療抗体を産生するために一般に使用される他の哺乳動物宿主細胞系において産生されるHEK293T発現抗体と比較して向上されたADCCおよびエフェクター細胞受容体結合活性を産生する特定のN−グリカン構造を有するように、「糖最適化(glyco−optimized)」されている。
 
【0319】
  哺乳動物細胞系中で産生されるモノクローナル抗体は、それぞれの重鎖のAsn297におけるN−結合グリコシル化部位を含有する。抗体上のグリカンは、典型的には、極めて低い分岐N−アセチルグルコサミン(分岐GlcNAc)を有しまたは有さず、高レベルのコアフコシル化を有する複雑な二分岐(biatennary)構造である。グリカン末端は、極めて低い末端シアル酸を含有しまたは含有せず、変動量のガラクトースを含有する。抗体機能に対するグリコシル化の効果の観点については、例えば、Wright  &  Morrison,Trend  Biotechnol.15:26−31(1997)参照。多数の研究が、抗体グリカン構造の糖組成の変化がFcエフェクター機能を変化させ得ることを示す。抗体活性に寄与する重要な炭水化物構造は、Fc領域N−結合オリゴ糖の最内部のN−アセチルグルコサミン(GlacNAc)残基へのアルファ−1,6結合を介して結合しているフコース残基であると考えられる(Shields  et  al.,2002)。
 
【0320】
  FcγR結合は、ヒトIgGl、IgG2またはIgG3タイプのFc領域中の保存Asn297において共有結合しているオリゴ糖の存在を要求する。近年、非フコシル化オリゴ糖構造は、インビトロADCC活性の大幅な増加に関連している。本発明による「Asn297」は、Fc領域中の約297位において局在しているアミノ酸アスパラギンを意味し;抗体のマイナー配列変異に基づき、Asn297は、上流または下流(通常、+3以下のアミノ酸)に局在している一部のアミノ酸でもあり得る。
 
【0321】
  歴史的に、CHO細胞中で産生される抗体は、非フコシル化集団の約2〜6%を含有する。YB2/0(ラット骨髄腫)およびLecl3細胞系(アルファ6−フコシルトランスフェラーゼの基質であるGDP−フコースまたはGDP糖中間体の欠損をもたらす欠損GDPマンノース4,6−デヒドラターゼを有するCHO系のレクチン変異体は、78〜98%の非フコシル化種を有する抗体を産生することが報告されている。他の例において、RNA干渉(RNAi)またはノックアウト技術を用いて細胞を遺伝子操作してFUT8mRNA転写産物レベルを減少させ、または遺伝子発現を完全にノックアウトすることができ、そのような抗体は、最大70%の非フコシル化グリカンを含有することが報告されている。
 
【0322】
  本発明は、Asn297における糖鎖によりグリコシル化されているMICAに結合する抗体であって、FcγRIIIへのFc部分を介する増加された結合親和性を示す抗体を含む。本発明の一実施形態において、抗体は、FcyRIIIaへの抗体結合および/またはADCCを改善するFc領域中の少なくとも1つのアミノ酸変化を含む定常領域を含む。
 
【0323】
  一態様において、本発明の抗体は、それらの定常領域中で低フコシル化されている。そのような抗体は、アミノ酸変化を含み得、またはアミノ酸変化を含み得ないが、そのような低フコシル化を生じさせるための条件下で産生または処理することができる。一態様において、本発明の抗体組成物は、本明細書に記載のキメラ、ヒトまたはヒト化抗体を含み、組成物中の抗体種の少なくとも20、30、40、50、60、75、85、90、95%または実質的に全ては、フコースを欠くコア炭水化物構造(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)を含む定常領域を有する。一実施形態において、フコースを有するコア炭水化物構造を含む抗体を有さない抗体組成物が提供される。コア炭水化物は、好ましくは、Asn297における糖鎖である。
 
【0324】
  一実施形態において、本発明は、本発明の抗体組成物、例えば、MICAに結合し、Asn297における糖鎖によりグリコシル化されている組成物であって、抗体は、部分的にフコシル化されている組成物を含む。部分的にフコシル化されている抗体は、Asn297における糖鎖内のフコースを欠く組成物中の抗MICA抗体の比率が20%〜90%、好ましくは、20%〜80%、好ましくは、20%〜50%、55%、60%、70%もしくは75%、35%〜50%、55%、60%、70%もしくは75%、または45%〜50%、55%、60%、70%もしくは75%であることを特徴とする。好ましくは、抗体は、ヒトIgG1またはIgG3タイプのものである。
 
【0325】
  糖鎖は、任意の特徴(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造の存在および比率)、例として、ヒト細胞からの抗体の、または齧歯類細胞、ネズミ細胞(例えば、CHO細胞)もしくは鳥類細胞中で組換え発現される抗体のAsn297に結合しているN−結合グリカンの特徴をさらに示し得る。
 
【0326】
  一実施形態において、抗体は、細胞系がコア炭水化物中のフコースを欠くタンパク質を産生するように、フコシルトランスフェラーゼ酵素を欠いている細胞中で発現させる。例えば、細胞系Ms704、Ms705、およびMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(アルファ(1,6)フコシルトランスフェラーゼ)を欠き、その結果、Ms704、Ms705、およびMs709細胞系中で発現される抗体はそれらのコア炭水化物上のフコースを欠く。これらの細胞系は、2つの置換ベクターを使用するCHO/DG44細胞中でのFUT8遺伝子の標的化破壊により作出された(Yamane  et  al.による米国特許出願公開第20040110704号明細書;およびYamane−Ohnuki  et  al.(2004)Biotechnol  Bioeng  87:614−22参照、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。他の例としては、FUT8遺伝子を機能的に破壊するためのアンチセンス抑制、二本鎖RNA(dsRNA)干渉、ヘアピンRNA(hpRNA)干渉またはイントロン含有ヘアピンRNA(ihpRNA)干渉の使用が挙げられる。一実施形態において、抗体は、細胞系中で発現される抗体がアルファ1,6結合関連酵素の低減または排除による低フコシル化を示すように、機能的に破壊された、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を有する細胞系中で発現させる。
 
【0327】
  一実施形態において、抗体は、遺伝子操作細胞系中で発現される抗体が抗体のADCC活性の増加をもたらす分岐GlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質(glycoprotem)改変グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−N−アセチルグルコサミニル−トランスフェラーゼIII(GnTHI))を発現するように遺伝子操作された細胞系中で発現させる(Umana  et  al.によるPCT公開の国際公開第99/54342号パンフレット;およびUmana  et  al.(1999)Nat.Biotech.17:176−180、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
 
【0328】
  別の実施形態において、抗体を発現させ、フコシダーゼ酵素を使用してフコシル残基を開裂させる。例えば、フコシダーゼアルファ−L−フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino,et  al.(1975)Biochem.14:5516−5523)。他の例において、抗体を産生する細胞系をグリコシル化阻害剤により処理することができ;Zhou  et  al.Biotech.and  Bioengin.99:652−665(2008)は、非フコシル化オリゴマンノースタイプNグリカンを有する抗体の産生をもたらすアルファ−マンノシダーゼI阻害剤、キフネンシンによるCHO細胞の処理を記載した。
 
【0329】
  一実施形態において、抗体は、フコシルを抗体のFc領域に結合するN−アセチルグルコサミンに付加するための低い酵素活性を天然で有し、またはその酵素活性を有さない細胞系、例えば、ラット骨髄腫細胞系YB2/0(ATCC  CRL1662)中で発現させる。細胞系の他の例としては、フコシルをAsn(297)結合炭水化物に結合させる能力の低減を有し、宿主細胞中で発現される抗体の低フコシル化ももたらすバリアントCHO細胞系、Led3細胞が挙げられる(国際公開第03/035835号パンフレット(Presta  et  al);およびShields,RX.et  al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。別の実施形態において、抗体は、鳥類細胞、好ましくは、低フコース含有量を有する抗体を天然に生じさせるEBx(登録商標)細胞(Vivalis,France)中で発現させる、例えば、国際公開第2008/142124号パンフレット。低フコシル化グリカンは、植物起源の細胞系中で産生することもでき、例えば、国際公開第07/084926A2号パンフレット(Biolex  Inc.)、国際公開第08/006554号パンフレット(Greenovation  Biotech  GMBH)、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
 
【0330】
診断および治療における使用
  ある実施形態において、本抗体は、生物学的試料からMICA陽性細胞を精製または同定するために使用する。生物学的試料は、患者から、例えば、診断もしくはエクスビボ治療目的のため、または研究目的のためにそのような細胞源を得るために個体もしくは非ヒト霊長類から得ることができる。
 
【0331】
  MICA陽性細胞は、多数の標準的方法のいずれかを用いて本抗体を使用して精製または同定することができる。例えば、末梢血細胞を、MICAに特異的な、および任意選択で典型的に細胞上に存在する他の細胞表面分子に対する標識抗体を使用するFACSスキャナーを使用して選別することができる。
 
【0332】
  さらに、本発明の抗体は、固体支持体にコンジュゲートまたは共有結合していてよく、患者または他の個体からの生物学的試料、例えば、血液試料または組織生検物からMICA陽性細胞またはMICAを発現する任意の細胞を精製または同定するために使用することができる。具体的には、生物学的試料を、試料内の細胞が抗体に結合することを可能とする条件下で抗体と接触させ、次いで細胞を固体支持体結合抗体から溶出させる。
 
【0333】
  MICA陽性細胞を単離、精製または同定するために使用される方法にかかわらず、そのように実施する能力は、多数の目的のため、例えば、MICA発現細胞の病原性拡張により特徴づけられる障害を、患者から得られるMICA陽性細胞の数もしくは活性もしくは他の特徴を評価することにより診断するため、または例えば、抗体を使用する本明細書に記載の治療の1つの前に患者の細胞の活性もしくは挙動をモジュレートする本発明の抗体、もしくはその断片もしくは誘導体の能力を評価するために有用である。さらに、精製MICA陽性細胞は、例えば、細胞ならびにそれらの種々の特性および挙動をより良好に特徴づけ、ならびにそれらの挙動、活性、または増殖をモジュレートするために使用することができる化合物または方法を同定するため、研究関連で有用である。本発明の抗体は、診断方法において、例えば、患者からの細胞、例えば、疾患細胞上のMICAポリペプチドを検出する方法においても有用であり得る。
 
【0334】
  本発明は、細胞の表面上のMICAポリペプチドに特異的に結合する本発明による抗原結合剤(例えば、抗体)を含む医薬組成物も提供する。抗体は、好ましくは、細胞の成長もしくは活性を阻害し、および/またはMICA陽性細胞の排除を、好ましくは、CDCおよび/またはADCCの誘導を介してもたらす。組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。
 
【0335】
  本発明は、MICA陽性細胞の成長もしくは活性の阻害、および/またはMICA陽性細胞の枯渇が必要とされる患者中のMICA陽性細胞の成長もしくは活性を阻害し、および/またはMICA陽性細胞を枯渇させる方法であって、前記患者に本発明による組成物を投与するステップを含む方法をさらに提供する。そのような治療方法は、多数の障害、例として、限定されるものではないが、癌の治療に使用することができる。
 
【0336】
  本明細書において実証されるとおり、非遮断抗MICA抗体は、エフェクター細胞によるMICA発現細胞の溶解の誘導において特に有効である。抗体は、MICAに結合し、それらがエフェクター細胞による溶解を誘導するエフェクター細胞上のFcγ受容体の活性化をエンゲージすることにより、それらがNK細胞反応性のNKG2D媒介活性化の中和を妨害するNKG2Dシグナリングを遮断しないことにより、またはNKG2Dシグナリングを遮断し、sMICA誘導NKG2D下方モジュレーションを低減させることによる二重の作用機構を有する。抗体は、好ましくは、結合するMICA発現細胞(例えば、腫瘍細胞)の枯渇をもたらすヒト重鎖定常領域配列を含み、好ましくは、CDCおよび/またはADCCを誘導するFc部分を含む。組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。そのような組成物は、本発明の「抗体組成物」とも称される。一実施形態において、本発明の抗体組成物は、上記の抗体実施形態に開示される抗体を含む。
 
【0337】
  一態様において、本発明の治療方法は、個体に、MICAに結合する抗原結合化合物を含む組成物を治療有効量で投与することを含む。治療有効量は、例えば、インビボでのMICA細胞の枯渇の増加、またはMICA発現細胞に対するNKG2D+エフェクター細胞(NK細胞)の活性化、反応性、細胞毒性および/またはIFNγ−産生の頻度の増加を引き起こすために十分であり得る。
 
【0338】
  本発明の方法は、有利には、癌および他の増殖疾患、例として、限定されるものではないが、癌種、例として、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌および皮膚癌、例として、扁平上皮癌腫;リンパ球系の造血腫瘍、例として、白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫;骨髄細胞系の造血腫瘍、例として、急性および慢性骨髄性白血病、ならびに前骨髄球性白血病;間葉起点の腫瘍、例として、線維肉腫および横紋筋肉腫;他の腫瘍、例として、神経芽細胞腫および神経膠腫;中枢神経系および末梢神経系の腫瘍、例として、星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘腫;間葉起点の腫瘍、例として、線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫;ならびに他の腫瘍、例として、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、および奇形癌の治療に利用される。本発明により治療することができる他の例示的障害としては、リンパ球系の造血腫瘍、例えば、T細胞およびB細胞腫瘍、例として、限定されるものではないが、T細胞障害、例えば、T前リンパ球性白血病(T−PLL)、例として、小細胞および脳状細胞タイプのもの;好ましくは、T細胞タイプの大型顆粒リンパ球性白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病性リンパ腫(ATLL);a/dT−NHL肝脾リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性および免疫芽球性亜型);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki1+)大細胞リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球性;およびリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)が挙げられる。
 
【0339】
  一部の実施形態において、抗MICA抗体または組成物の投与前に、患者の細胞上(例えば、腫瘍細胞)上のMICAの存在を評価し、例えば、患者中のMICA陽性細胞の相対レベルおよび活性を測定し、患者の細胞への抗体の結合効力を確認する。次いで、腫瘍細胞がMICAを発現する患者を、抗MICA抗体または組成物により治療することができる。このことは、障害の部位からPBLまたは腫瘍細胞の試料を得、例えば、イムノアッセイを使用して試験してMICAおよび任意選択で細胞上のさらなる他のマーカーの相対的優位性を測定することにより達成することができる。他の方法、例えば、RNAベースの方法、例えば、RT−PCRまたはノザンブロッティングを使用してMICAおよび他の遺伝子の発現を検出することもできる。
 
【0340】
  一実施形態において、患者のMICA陽性細胞の活性もしくは成長を阻害し、またはその細胞を枯渇させることが求められる場合、患者のMICA陽性細胞の増殖を阻害し、またはその細胞を枯渇させる抗MICA抗体の能力を評価する。MICA陽性細胞を抗MICA抗体または組成物により枯渇させる場合、患者を抗MICA抗体または組成物による治療に応答性であることを決定し、任意選択で、患者を抗MICA抗体または組成物により治療する。
 
【0341】
  治療は、抗体または化合物投与の複数のラウンドを含み得る。例えば、投与の初回ラウンド後、患者中のMICA発現細胞(例えば、悪性腫瘍細胞について)のレベルおよび/または活性を一般に再計測し、依然として上昇している場合、投与の追加のラウンドを実施することができる。このようにして、MICA検出および抗体または化合物投与の複数ラウンドを、例えば、障害が管理下になるまで実施することができる。
 
【0342】
  一部の実施形態において、本方法は、前記患者に、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、またはMICA発現細胞上に存在するポリペプチドに結合する二次抗体(例えば、枯渇抗体)から選択される適切な追加(第2)の治療剤を投与する追加のステップを含み得る。そのような追加の薬剤は、前記患者に、前記抗体と一緒に単一剤形として、または別個の剤形として投与することができる。抗体の投与量(または集合的に抗体および追加の治療剤の投与量)は、患者における治療応答を検出可能に誘導し、促進し、および/または向上させるために十分である。別個に投与する場合、抗体、断片、または誘導体および追加の治療剤は、望ましくは、患者に検出可能な併用治療利益をもたらす(例えば、タイミング、用量数などに関する)条件下で投与する。
 
【0343】
  腫瘍(例えば、固形腫瘍)治療のため、例えば、本発明の組成物の投与は、古典的なアプローチ、例えば、手術、放射線療法、化学療法などとの組合せで使用することができる。したがって、本発明は、本抗体を手術または放射線治療と同時に、その前もしくはその後に使用し;または慣用の化学療法剤、放射線療法剤もしくは抗血管新生剤、もしくは標的化免疫毒素もしくはコアギュリガンド(coaguligand)とともに、その前もしくはその後に患者に投与する併用療法を提供する。
 
【0344】
  例示的な抗癌抗血管新生剤は、受容体チロシンキナーゼ、例として、限定されるものではないが、FGFR(線維芽細胞成長因子受容体、FGF−1,2)、PDGFR(血小板由来成長因子受容体)、アンギオポエチン受容体(Ang−1,2)、HGFR(肝細胞成長因子受容体)、エフリン受容体(Eph)、VEGFR1、VEGFR−2,3PDGFR−α、PDGFR−β、CSF−1R、MET、Flt−3、c−Kit、bcr/abl、p38アルファおよびFGFR−1によるシグナリングを阻害する。さらなる抗血管新生剤としては、VEGF発現および産生の種々の調節物質、例えば、EGFR、flt−1、KDR、HER−2、COX−2、またはHIF−1αの1つ以上を阻害する薬剤を挙げることができる。別の好ましいクラスの薬剤としては、IMiD(免疫調節薬)、広範な効果、例として、免疫および非免疫関連効果の両方を有するサリドマイドに由来するアナログが挙げられる。IMiDクラスの代表例としては、CC−5013(レナリドミド、Revlimid(商標))、CC−4047(Actimid(商標))、およびENMD−0995が挙げられる。別のクラスの抗血管新生剤としては、シレンギチド(EMD121974、インテグリン阻害剤)、メタロプロテイナーゼ(MPP)、例えば、マリナスタット(marinastat)(BB−251)が挙げられる。別のクラスの抗血管新生剤としては、ファルネシル化阻害剤、例えば、ロナファルニブ(Sarasar(商標))、チピファルニブ(Zarnestra(商標))が挙げられる。他の抗血管新生剤、例えば、ベバクジマブ(Bevacuzimab)(mAb、阻害VEGF−A、Genentech);IMC−1121B(mAb、阻害VEGFR−2、ImClone  Systems);CDP−791(ペグ化DiFab、VEGFR−2、Celltech);2C3(mAb、VEGF−A、Peregrine  Pharmaceuticals);VEGFトラップ(可溶性ハイブリッド受容体VEGF−A、PlGF(胎盤成長因子)Aventis/Regeneron)も、好適であり得る。別の好ましいクラスの薬剤としては、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)クラス、例として、例えば、PTK−787(TKI、VEGFR−1、−2、バタラニブ、Novartis);AEE788(TKI、VEGFR−2およびEGFR、Novartis);ZD6474(TKI、VEGFR−1、−2、−3、EGFR、Zactima、AstraZeneca);AZD2171(TKI、VEGFR−1、−2、AstraZeneca);SU11248(TKI、VEGFR−1、−2、PDGFR、スニチニブ、Pfizer);AG13925(TKI、VEGFR−1、−2、Pfizer);AG013736(TKI、VEGFR−1、−2、Pfizer);CEP−7055(TKI、VEGFR−1、−2、−3、Cephalon);CP−547,632(TKI、VEGFR−1、−2、Pfizer);GW786024(TKI、VEGFR−1、−2、−3、GlaxoSmithKline);GW786034(TKI、VEGFR−1、−2、−3、GlaxoSmithKline);ソラフェニブ(TKI、Bay43−9006、VEGFR−1、−2、PDGFR  Bayer/Onyx);SU4312(TKI、VEGFR、PDGFR、Pfizer)、AMG706(TKI、VEGFR−1、−2、−3、Amgen)、XL647(TKI、EGFR、HER2、VEGFR、ErbB4、Exelixis)、XL999(TKI、FGFR、VEGFR、PDGFR、Flt−3、Exelixis)、PKC412(TKI、KIT、PDGFR、PKC、FLT3、VEGFR−2、Novartis)、AEE788(TKI、EGFR、HER2、VEGFR、Novartis)、OSI−930(TKI、c−kit、VEGFR、OSI  Pharmaceuticals)、OSI−817(TKI、c−kit、VEGFR、OSI  Pharmaceuticals)、DMPQ(TKI、ERGF、PDGFR、erbB2、p56、pkA、pkC)、MLN518(TKI、FLT3、PDGFR、c−KIT、CT53518、Millennium  Pharmaceuticals)、レスタウリニブ(lestaurinib)(TKI、FLT3、CEP−701、Cephalon)、ZD1839(TKI、EGFR、ゲフィチニブ、Iressa、AstraZeneca)、OSI−774(TKI、EGFR、エルロチニブ、Tarceva、OSI  Pharmaceuticals)、ラパチニブ(TKI、ErbB−2、EGFR、GD−2016、Tykerb、GlaxoSmithKline)が挙げられる。VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、PDGFR−α、β、Flt−3、c−Kit、p38アルファ、MET、c−RAF、b−RAF、bcr/ablおよびFGFR−1からなる群から選択される1つ以上の受容体チロシンキナーゼを阻害するチロシンキナーゼ阻害剤が最も好ましい。
 
【0345】
  一実施形態において、第2の薬剤は、エフェクター細胞(例えば、NK細胞)活性化受容体の天然リガンドまたはNKG2D以外のNK細胞活性化受容体に結合し、その受容体を活性化させる抗体である。一実施形態において、薬剤は、標的細胞(例えば、感染細胞、腫瘍細胞、炎症促進細胞)の表面上のNKG2D以外のNK細胞活性化受容体の天然リガンドの存在を増加させる薬剤である。NK細胞活性化受容体としては、例えば、天然細胞毒性受容体、例えば、NKp30、NKp46、NKp44または活性化KIR受容体(KIR2DS受容体、KIR2DS2、KIR2DS4)が挙げられる。本明細書において使用される用語「活性化NK受容体」は、刺激された場合、NK活性に関連する当分野において公知の任意の特性または活性の計測可能な増加、例えば、サイトカイン(例えば、IFN−γおよびTNF−α産生、細胞内遊離カルシウムレベル、例えば、本明細書の他箇所に記載の再指向殺傷アッセイにおいて細胞を標的化する能力、またはNK細胞増殖を刺激する能力の増加を引き起こすNK細胞の表面上の任意の分子を指す。用語「活性化NK受容体」としては、限定されるものではないが、活性化形態またはKIRタンパク質(例えば、KIR2DSタンパク質)、NKp30、NKp46、NKp44、NKG2D、IL−2R、IL−12R、IL−15R、IL−18RおよびIL−21Rが挙げられる。
 
【0346】
  一実施形態において、抗癌剤は、腫瘍細胞の表面上のNKG2Dリガンドの発現を上方調節する化学療法剤または放射線である。これとしては、周知の化学療法、例として、イオン化およびUV照射、DNA複製の阻害剤、DNAポリメラーゼの阻害剤、クロマチン改変処理、ならびにアポトーシス誘導剤、例えば、HDAC阻害剤トリコスタチンAおよびバルプロ酸が挙げられる。好ましい治療は、DNA損傷応答経路を活性化させるもの、より好ましくは、ATM(毛細血管拡張性運動失調症変異)もしくはATR(ATM−およびRad3関連)タンパク質キナーゼ、もしくはCHK1、またはさらにCHK2もしくはp53を活性化させるものである。後者の例としては、イオン化放射、DNA複製の阻害剤、DNAポリメラーゼ阻害剤およびクロマチン改変剤または処理、例として、HDAC阻害剤が挙げられる。NKG2Dリガンドを上方調節する組成物は、Gasser  et  al(2005)Nature  436(7054):1186−90にさらに記載されている。NKG2Dは、数あるリガンドのうち、MHCクラスI関連MICAおよびMICB糖タンパク質と相互作用する活性化受容体である。MICAおよびMICB(Bauer  et  al.(1999)Science  285:727−729、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)は、抗原提示における役割を有さず、一般に、腸管上皮中にのみ見出され、ウイルスおよび細菌感染、悪性形質転換、ならびに増殖により許容タイプの細胞中でストレス誘導され得る。NKG2Dは、CD28と類似する会合DAP10アダプタータンパク質を介してシグナリングするC型レクチン様活性化受容体である。それは、ほとんどのナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、γδT細胞CD8T細胞およびT細胞上で発現されるが、一般に、CD4T細胞上では発現されない。他のNKG2Dリガンドとしては、例えば、最初はヒトサイトメガロウイルス糖タンパク質UL16についてのリガンドとして同定されたULBPタンパク質、例えば、ULBP−1、−2、および−3が挙げられる(Cosman  et  al,(2001)Immunity  14:123−133、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。さらなるNKG2Dリガンドとしては、ULBP様ファミリーのタンパク質のメンバーであるRAE1TGが挙げられる(Bacon  et  al(2004)J.Immunol.173:1078−1084)。
 
【0347】
  さらなる抗癌剤としては、アルキル化剤、細胞毒性抗生物質、例えば、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、植物誘導体、RNA/DNA代謝拮抗剤、および抗有糸分裂剤が挙げられる。好ましい例としては、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロスウレア(nitrosurea)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、トランス白金(transplatinum)、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または上記の任意のアナログもしくは誘導体バリアントを挙げることができる。
 
【0348】
  アルキル化剤は、高度に化学反応性であり、好適な物質との共有結合を急速に形成する化合物を形成する物質である。1つのそのような標的は、正常状態でなく二重らせんがヘリカーゼによりほどかれている場合のDNAである。これは、アルキル化に感受性であるDNAの「内側」を露出させる。ほとんどのアルキル化剤は、双極性であり、すなわち、それらは、DNAと反応し得る2つの基を含有する。したがって、それらは、DNAの一本鎖の2つの部分または2つの別個の鎖間の「架橋」を形成し得;いずれにしても、これは、複製プロセスに関与する酵素の作用を干渉し、それらの効果を完了させ得ない。次いで、細胞は、それが物理的に分裂し得ないため、または異常なDNAがアポトーシスを刺激するために死滅する。例としては、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド)、ニトロスウレア(nitrosurea)(例えば、カルムスチン、ロムスチン)、金属塩(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、エチレンアミン誘導体(例えば、チオテパ)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)およびトリアゼン(例えば、ダカルバジン)が挙げられる。
 
【0349】
  代謝拮抗剤は、核酸の合成に要求される天然代謝産物と構造または機能が類似する化学物質のグループである。代謝拮抗剤分子は、それらの正常代謝産物を模倣し、核酸合成を担う酵素を遮断し、またはDNA中に取り込まれ、不正確な遺伝コードを産生し、アポトーシスをもたらす。3つの主なクラスの代謝拮抗剤が存在する。ホレートは、プリン分子の合成に必要な物質である。ホレートアナログ(例えば、メトトレキサート、ラルトリトレキセド(raltritrexed))は、ホレート分子と類似し、メトトレキサートなどの物質を使用して酵素ジヒドロホレートレダクターゼを阻害し、プリンチミンの不十分な産生をもたらすことができる。ピリミジンアナログ(例えば、シタラビン、フルオロアシル(fluoroacil)(5−FU)、ゲムシタビン)は、ピリミジン分子と似ており、核酸の合成を阻害することにより(例えば、フルオロウラシル)、またはDNA中に取り込まれることにより(例えば、シタラビン)機能する。プリンアナログ(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、フルダラビン)は、ピリミジンアナログと類似の様式で機能するが、追加の(および負に特徴づけられる)作用機序を有し得る。
 
【0350】
  細胞毒性抗生物質は、それらが全て天然源、細菌のストレプトマイセス属(Streptomyces)のグループに由来するため、そう呼ばれる。それらは、異なる様式で核酸の機能および合成に影響する。アントラサイクリングループとしては、ドキソルビシン、ダウノルビシンおよびイダルビシンが挙げられる。それらは、DNAとインターカレートし、トポイソメラーゼII酵素に影響する。このDNAギラーゼは、DNA二重らせんをほどき、ねじり力が軽減されるとそれを再連結し;アントラサイクリンは、DNA−トポイソメラーゼII複合体を安定化させ、したがって鎖の再連結を妨害する。ダクチノマイシンおよびミトキサントロンは、類似の作用機序を有する。ブレオマイシンは、DNA鎖の断片化を引き起こす。マイトマイシンは、アルキル化剤と同様に機能し、DNA架橋を引き起こす。
 
【0351】
  植物誘導体としては、微小管の前駆体に結合し、それらの形成を妨害するビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチンが挙げられる。これは、有糸分裂のプロセスを阻害する。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)も、微小管に対して作用する。それらは、微小管をそれらのポリマー化状態で安定化させ、有糸分裂の停止も引き起こす。ポドフィルム属(Podophyllyum)誘導体、例えば、エトポシドおよびテニポシドはトポイソメラーゼIIを阻害する一方、イリノテカンおよびトポテカンはトポイソメラーゼIを阻害すると考えられる。
 
【0352】
  感染疾患を治療する場合、治療は、本発明による組成物を単独で、またはそのような疾患を治療するために公知の他の治療および/または治療剤、例として、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗生物質、抗寄生虫剤および抗原虫剤との組合せで用い得る。これらの方法が追加の治療剤による追加の治療を含む場合、それらの薬剤は、単一剤形としてまたは別個の複数剤形として本発明の抗体と一緒に投与することができる。別個の剤形として投与する場合、追加の薬剤は、本発明の抗体の投与前、投与と同時、または投与後に投与することができる。
 
【0353】
  本発明の方法および抗体、特にMICAとNKG2Dとの間の相互作用を遮断し、および/またはMICA誘導NKG2D活性を阻害する非枯渇抗体は、有利には、炎症および自己免疫障害の治療に利用することもできる。本発明のポリペプチド、抗体および他の化合物により治療することができる例示的な自己免疫または炎症病態または障害としては、限定されるものではないが、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、乾癬性関節炎、変形性関節炎、脊椎関節症(強直性脊椎炎)、全身硬化症(強皮症)、特発性炎症筋障害(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、血管炎、全身性血管炎、側頭動脈炎、アテローム性動脈硬化症、サルコイドーシス、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、悪性貧血、自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫介在性血小板減少症)、甲状腺炎(グレーブス病、橋本甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、糖尿病、免疫介在性腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎、自己免疫性卵巣炎)、自己免疫性精巣炎、自己免疫性ブドウ膜炎、抗リン脂質症候群、中枢および末梢神経系の脱髄性疾患、例えば、多発性硬化症、特発性脱髄性多発性神経障害またはギランバレー症候群、ならびに慢性炎症脱髄性多発性神経障害、肝胆汁性疾患、例えば、感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎および他の肝臓指向性ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、ウイルス性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、ウェゲナー肉芽腫、ベーチェット病、ならびに硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎またはクローン病、セリアック病、グルテン過敏性腸疾患、ならびにウィップル病、自己免疫性または免疫介在性皮膚疾患、例として、水疱性皮膚疾患、多形成紅斑および接触性皮膚炎、ヘルペス様皮膚炎、乾癬、尋常性天疱瘡、白斑(ロイコデルマ)、アレルギー性疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食品に対する過敏性および蕁麻疹、肺の免疫疾患、例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症および過敏性肺炎、慢性閉塞性肺疾患、ならびに移植関連疾患、例として、移植片拒絶および移植片対宿主病が挙げられる。
 
【0354】
  炎症または自己免疫疾患を本発明の抗MICA抗体により治療する場合、本発明の治療方法は、個体を第2の治療剤、例として、通常、抗体を投与する特定の治療目的に利用される薬剤により治療することをさらに含み得る。第2の治療剤は、通常、治療される特定の疾患または病態のための単剤療法においてその薬剤に典型的に使用される量で投与する。一実施形態において、第2の治療剤は、一般に許容される有効用量未満の用量で投与し;例えば、種々の実施形態において、組成物は、一般に許容される有効用量の約10%〜75%未満の投与量を含み、投与する。好ましくは、第2の治療剤は、タンパク質分解酵素、炎症性メディエーター、または炎症促進性サイトカイン、例えば、TNF−αおよび/もしくはインターロイキン−1(IL−1)を低減させる薬剤である。好ましくは、第2の治療剤は、DMARDまたはDMDであり、任意選択で、さらに、第2の治療剤は、メトトレキサート(Rheumatrex(商標)、Trexall(商標))、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil(商標))、スルファサラジン(Azulfidine(登録商標))、レフルノミド(Arava(商標))、腫瘍壊死因子阻害剤(例えば、可溶性TNFα受容体、例えば、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、中和(好ましくは、非枯渇)抗TNFα抗体、例えば、アダリムマブ(Humira(商標))またはセルトリズマブペゴル(Cimzia(商標))、T細胞共刺激遮断剤(例えば、アバタセプト(Orencia(商標))、インターロイキン−1(IL−1)受容体アンタゴニスト治療剤(アナキンラ(Kineret(商標))、抗BlyS抗体(Benlysta(商標))、プロテオソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、チロシンキナーゼ阻害剤、筋肉内金剤、または別の免疫調節もしくは細胞毒性剤(例えば、アザチオプリン(Imuran(商標)、シクロホスファミド、シクロスポリンA(Neoral(商標)、Sandimmune(商標))またはキナーゼ阻害剤(例えば、SYKキナーゼ阻害剤、例えば、ホスチマチニブ(fostimatinib)(R788)またはJAK1、JAK2阻害剤、例えば、INCB28050、タネズマブまたはタソシチニブ(CP−690,550))である。
 
【0355】
  本発明の治療方法において、本発明の抗原結合化合物および第2の治療剤は、別個に、一緒に、もしくは連続的に、またはカクテルで投与することができる。一部の実施形態において、本発明の抗原結合化合物は、第2の治療剤の投与前に投与する。例えば、本発明の抗原結合化合物は、第2の治療剤の投与の約0〜30日前に投与することができる。一部の実施形態において、本発明の抗原結合化合物は、第2の治療剤の投与の約30分〜約2週間、約30分〜約1週間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、約6時間〜約8時間、約8時間〜1日、または約1〜5日前に投与する。一部の実施形態において、本発明の抗原結合化合物は、治療剤の投与と同時に投与する。一部の実施形態において、本発明の抗原結合化合物は、第2の治療剤の投与後に投与する。例えば、本発明の抗原結合化合物は、第2の治療剤の投与の約0〜30日後に投与することができる。一部の実施形態において、本発明の抗原結合化合物は、第2の治療剤の投与の約30分〜約2週間、約30分〜約1週間、約1時間〜約2時間、約2時間〜約4時間、約4時間〜約6時間、約6時間〜約8時間、約8時間〜1日、または約1〜5日後に投与する。
 
【0356】
  本発明の抗原結合化合物は、キットに含めることができる。キットは、任意選択で、任意数の抗体および/または他の化合物、例えば、1、2、3、4、または他の任意数の抗MICA抗体および/または他の化合物をさらに含有し得る。キットの内容物についての本説明が決して限定されるものではないことが理解される。例えば、キットは、他のタイプの治療または診断剤を含有し得る。好ましくは、キットは、例えば本明細書に記載の方法を詳述する、抗体および/または薬剤を使用するための説明書も含む。
 
【0357】
医薬配合物
  これらの組成物中で使用することができる薬学的に許容可能な担体としては、限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝液物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。本発明の抗体は、患者におけるMICA発現細胞の活性をモジュレートする、例えば、阻害する方法において用いることができる。この方法は、前記組成物を前記患者と接触させるステップを含む。そのような方法は、予防および治療目的の両方において有用である。
 
【0358】
  患者への投与における使用のため、組成物は、患者への投与のために配合する。本発明の組成物は、経口投与、非経口投与、吸入スプレー投与、局所投与、直腸投与、経鼻投与、バッカル投与、経膣投与または移植されたリザーバーを介して投与することができる。本明細書において使用されるものとしては、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術が挙げられる。抗体は、例えば、約25mg〜500mgの量の単一用量で存在し得る。
 
【0359】
  本発明の組成物の無菌の注射可能な形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、好適な分散剤または浸潤剤および懸濁化剤を使用する当分野において公知の技術に従って配合することができる。無菌の注射可能な調製物は、例えば、1,3−ブタンジオール中溶液としての、非経口的に許容可能な非毒性の希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な溶液または懸濁液でもあり得る。用いることができる許容可能なビヒクルおよび溶媒のうち、水、リンガー液および等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、無菌固定油は、慣用的に溶媒または懸濁培地として用いられる。この目的のため、任意の無刺激性固定油、例として、合成モノもしくはジグリセリドを用いることもできる。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、薬学的に許容可能な天然油、例えば、特にポリオキシエチル化型のオリーブ油またはヒマシ油の場合と同様、注射剤の調製において有用である。これらの油性溶液または懸濁液は、薬学的に許容可能な剤形、例として、エマルジョンおよび懸濁液の配合において一般に使用される長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えばカルボキシメチルセルロースまたは類似の分散剤も含有し得る。他の一般に使用される界面活性剤、例えばTween、Spanおよび薬学的に許容可能な固体、液体、または他の剤形の製造において一般に使用される他の乳化剤またはバイオアベイラビリティー向上剤を配合の目的に使用することもできる。
 
【0360】
  本発明の組成物は、任意の経口的に許容可能な剤形、例として、限定されるものではないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液または液剤で経口投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用される担体としては、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが挙げられる。典型的には、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムも添加される。カプセル剤形態での経口投与のため、有用な希釈剤としては、例えばラクトースが挙げられる。経口使用に水性懸濁液が要求される場合、活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と合わせる。所望により、ある甘味剤、香味剤または着色剤を添加することもできる。
 
【0361】
  あるいは、本発明の組成物は、直腸投与のために坐剤の形態で投与することができる。これらは、薬剤を、室温において固体であるが直腸温度において液体であり、したがって直腸中で融解し、薬剤を放出する好適な非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。そのような材料としては、ココアバター、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
 
【0362】
  本発明の組成物は、治療の標的が、特に、局所適用により容易に接近可能である領域または器官、例として、眼、皮膚、または下部腸管の疾患を含む場合、局所投与することもできる。好適な局所配合物は、これらの領域または器官のそれぞれについて容易に調製される。局所適用のため、組成物は、1つ以上の担体中で懸濁または溶解された活性成分を含有する好適な軟膏剤に配合することができる。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、限定されるものではないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水が挙げられる。あるいは、組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体中で懸濁または溶解された活性成分を含有する好適なローション剤またはクリーム剤に配合することができる。好適な担体としては、限定されるものではないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、polysorbate60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
 
【0363】
  本抗体は、キット中に含めることができる。キットは、任意選択で、任意数の抗体および/または他の化合物、例えば、1、2、3、4、または他の任意数の治療抗体および/または化合物をさらに含有し得る。キットの内容物についての本説明が決して限定されるものではないことが理解される。例えば、キットは、他のタイプの治療化合物を含有し得る。好ましくは、キットは、例えば本明細書に記載の方法を詳述する抗体を使用するための説明書も含む。
 
【0364】
剤形
  本発明により使用されるアンタゴニストの治療配合物は、所望の純度を有するアンタゴニストを、任意選択の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤と混合することにより、凍結乾燥配合物または水溶液の形態で貯蔵のために調製する。配合に関する一般的な情報については、例えば、Gilman  et  al.(eds.),The  Pharmacological  Bases  of  Therapeutics,8
th  Ed.(Pergamon  Press,1990);Gennaro(ed.),Remington’s  Pharmaceutical  Sciences,18
th  Edition(Mack  Publishing  Co.,Easton,Pa.,1990);Avis  et  al.(eds.),Pharmaceutical  Dosage  Forms:Parenteral  Medications(Dekker,New  York,1993);Lieberman  et  al.(eds.),Pharmaceutical  Dosage  Forms:Tablets(Dekker,New  York,1990);Lieberman  et  al.(eds.)Pharmaceutical  Dosage  Forms:Disperse  Systems(Dekker,New  York,1990);およびWalters(ed.),Dermatological  and  Transdermal  Formulations(Drugs  and  the  Pharmaceutical  Sciences),Vol  119(Dekker,New  York,2002)参照。
 
【0365】
  許容可能な担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投与量および濃度においてレシピエントに非毒性であり、それらとしては、緩衝液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;酸化防止剤、例として、アスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;単糖、二糖、および他の炭水化物、例として、グルコース、マンノース、もしくはデキストリン;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
 
【0366】
  例示的抗体配合物は、例えば、国際公開第1998/56418号パンフレットに記載されており、それは、40mg/mLのリツキシマブ、25mMの酢酸塩、150mMのトレハロース、0.9%のベンジルアルコール、および0.02%のpolysorbate20(商標)をpH5.0において含み、2〜8℃における2年間の貯蔵の最小の保存可能期間を有する抗CD20抗体のための液体複数回用量配合物を記載する。別の関心対象の抗CD20配合物は、10mg/mLのリツキシマブを9.0mg/mLの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLのpolysorbate80(商標)、および注射滅菌水、pH6.5中で含む。
 
【0367】
  皮下投与に適合された凍結乾燥配合物は、例えば、米国特許第6,267,958号明細書(Andya  et  al.)に記載されている。そのような凍結乾燥配合物は、好適な希釈液により高タンパク質濃度に再構成することができ、再構成された配合物は本明細書において治療することができる哺乳動物に皮下投与することができる。
 
【0368】
  本明細書の配合物は、2つ以上の活性化合物(上記の第2の医薬)、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。そのような医薬のタイプおよび有効量は、例えば、配合物中に存在するB細胞アンタゴニストの量およびタイプ、ならびに対象の臨床パラメーターに依存する。好ましいそのような第2の医薬は、上記のとおりである。
 
【0369】
  活性成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、コロイド薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中で、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタアシレート)マイクロカプセル中で封入することもできる。そのような技術は、例えば、Remington’s  Pharmaceutical  Sciences、前掲に開示されている。
 
【0370】
  徐放性配合物を調製することができる。好適な徐放性調製物の例としては、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透明マトリックスが挙げられ、そのマトリックスは、形成品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLupron  Depot(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフィア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシブチル酸が挙げられる。
 
【0371】
  インビボ投与に使用することができる配合物は、無菌でなくてはならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過により容易に達成される。これらの組成物中で使用することができる薬学的に許容可能な担体としては、限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝液物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
 
【0372】
  本発明のさらなる態様および利点を以下の実験セクションに開示し、それは、説明としてみなすべきであり、本出願の範囲を限定するものとみなすべきではない。
 
【実施例】
【0373】
実施例1:抗MICA抗体の生成
免疫化#1
  抗ヒトMICA抗体を得るため、Balb/cマウスを組換えヒトMICA細胞外ドメイン組換えFcタンパク質(MICA
*019アレル、R&D  Systemsから入手)により免疫化した。マウスは、50μgのMICAタンパク質および完全フロイントアジュバントのエマルジョンによる1回の一次免疫化を腹腔内で、50μgのMICAタンパク質および不完全フロイントアジュバントのエマルジョンによる二次免疫化を腹腔内で、ならびに最後に10μgのMICAタンパク質によるブーストを静脈内で受けた。免疫脾細胞を、ブーストの3日後にX63.Ag8.653不死化B細胞と融合させ、放射線照射された脾細胞の存在下で培養した。
【0374】
  一次スクリーン:成長クローンの上清(SN)を、MICA
*019構築物が形質移入されたBaf/3細胞系を使用するフローサイトメトリーによる一次スクリーンにおいて試験した。陽性上清を選択し、非形質移入Baf/3細胞系へのフローサイトメトリーによる結合の欠如について試験した。手短に述べると、FACSスクリーニングのため、上清中の反応抗体の存在を、PEにより標識されたヤギ抗マウスポリクローナル抗体(pAb)により明らかにした。
【0375】
  二次スクリーン:クローンの上清をさらにELISAアッセイを使用して試験してMICA細胞外ドメイン組換えFcタンパク質(R&D  Systems)とNKG2D細胞外ドメイン組換えFcタンパク質との間の相互作用を遮断する能力を評価した。初期スクリーニングから選択された潜在的に関心対象のハイブリドーマを、96ウェルプレート中で限定希釈技術によりクローニングした。得られた抗体上清IgG2bアイソタイプの9C10ならびにIgG1アイソタイプの6E4、20C6および19E9を得た。
【0376】
免疫化#2
  抗ヒトMICA抗体を得るため、Balb/cマウスを組換えヒトMICA細胞外ドメイン組換え−Hisタンパク質(MICA
*001アレル)により免疫化した。マウスは、50μgのMICAタンパク質および完全フロイントアジュバントのエマルジョンによる1回の一次免疫化を腹腔内で、50μgのMICAタンパク質および不完全フロイントアジュバントのエマルジョンによる二次免疫化を腹腔内で、ならびに10μgのMICAタンパク質による1回のブーストを静脈内で受けた。免疫脾細胞を、X63.Ag8.653不死化B細胞と融合させ、放射線照射された脾細胞の存在下で培養した。
【0377】
  一次スクリーン:成長クローンの上清(SN)を、異なるC1Rベース細胞系の細胞の混合物を使用するフローサイトメトリーによる一次スクリーンにおいて試験し、それぞれの細胞系に異なる構築物(MICA
*001、MICA
*004、MICA
*007またはMICA
*008のいずれか)を形質移入した。手短に述べると、FACSスクリーニングのため、上清中の反応抗体の存在を、PEにより標識されたヤギ抗マウスポリクローナル抗体(pAb)により明らかにした。
【0378】
  二次スクリーン:クローンの上清をさらにELISAアッセイを使用して試験し、組換えヒトMICA完全細胞外ドメイン組換え−Hisタンパク質(MICA
*001アレル)に結合せずにMICA細胞外ドメインα3組換えタンパク質に結合する能力を評価した。初期スクリーニングから選択された潜在的に関心対象のハイブリドーマを、96ウェルプレート中で限定希釈技術によりクローニングした。
【0379】
  IgG2aアイソタイプのクローン16A8を含むMICA細胞外ドメインα3抗体を得た。
【0380】
免疫化#3
  抗ヒトMICA抗体を得るため、Balb/cマウスを、MICA
*01、MICA
*04、MICA
*07またはMICA
*08が形質移入された1000万個のC1R細胞の1:1:1:1の比(250万個のそれぞれの形質移入細胞)におけるミックスにより免疫化した。マウスは、合計1000万個の形質移入細胞および完全フロイントアジュバントによる1回の一次免疫化を腹腔内で、1000万個の形質移入細胞(250万個のそれぞれの形質移入細胞)および不完全フロイントアジュバントによる二次免疫化を腹腔内で、ならびに最後に100万個の形質移入細胞(25万個のそれぞれの形質移入細胞)による1回のブーストを静脈内で受けた。免疫脾細胞をX63.Ag8.653不死化B細胞と融合させ、放射線照射された脾細胞の存在下で培養した。
【0381】
  一次スクリーン:成長クローンの上清(SN)を、異なるC1Rベース細胞系およびBaf/3細胞系の細胞の混合物を使用するフローサイトメトリーによる一次スクリーンにおいて試験し、それぞれの細胞系に異なる構築物(C1RについてMICA
*001、MICA
*004、MICA
*007またはMICA
*008のいずれかおよびBaf/3についてMICA
*019)を形質移入した。手短に述べると、FACSスクリーニングのため、上清中の反応抗体の存在を、PEにより標識されたヤギ抗マウスポリクローナル抗体(pAb)により明らかにした。
【0382】
  二次スクリーン:クローンの上清をさらにELISAアッセイを使用して試験し、組換えヒトMICA完全細胞外ドメイン組換え−Fcタンパク質(MICA
*019アレル)に結合せずにMICA細胞外ドメインα3組換えタンパク質に結合する能力を評価した。初期スクリーニングから選択された潜在的に関心対象のハイブリドーマを、96ウェルプレート中で限定希釈技術によりクローニングした。
【0383】
  得られた抗体上清IgG1アイソタイプの12A10、10A7、18E8、10F3および15F9ならびにIgMアイソタイプの14B4を得た。
【0384】
  続いて、抗体9C10、19E9、6E4、20C6、16A8、12A10、10A7、18E8、10F3、15F9および14B4をヒトIgG1アイソタイプにキメラ化した(それぞれ、CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6、CHG1−M−MIA−16A8、CHG1−M−MIA−12A10、CHG1−M−MIA−10A7、CHG1−M−MIA−18E8、CHG1−M−MIA−10F3、CHG1−M−MIA−15F9およびCHG1−M−MIA−14B4とも称する)。
【0385】
実施例2  −  固定化MICAタンパク質への結合
  組換えヒトMICA細胞外ドメイン組換えタンパク質モノマーまたはダイマー(MICA
*019アレル−Fcタンパク質またはMICA
*001−Hisタンパク質)のいずれか、ならびに他のNKG2DリガンドMICBおよびULBP1〜2への6E4、20C6および16A8の結合を、Biacore  T100装置を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)により分析して一価および二価親和性をそれぞれ得た。
【0386】
  タンパク質固定化のため、組換えタンパク質:MICA−Fc  MICB−Fc(R&D  Systems  1599−MB、アクセッション番号CAI18747、配列番号6)、ULBP1−Fc、ULBP2−Fcを、Sensor  Chip  CM5(チップ)上のデキストラン層中のカルボキシル基に共有結合により固定化した。チップ表面を、EDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN−ヒドロキシスクシンイミド(Biacore  GE  Healthcare))により活性化させた。タンパク質をカップリング緩衝液(10mMの酢酸塩、pH5.6)中で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(すなわち、結合試験について1000〜1600RU)に達するまで注入した。残留する活性化基の不活化は、100mMのエタノールアミンpH8(Biacore  GE  Healthcare)を使用して実施した。
【0387】
  抗体結合分析は、HBS−EP+(中性pH)を使用して実行した。抗MICA抗体(ランニング緩衝液中で10μg/mlの濃度に希釈)を、固定化組換え標的タンパク質を含有するデキストラン層上で10μl/分の一定流速において2分間注入し、2分間解離させてから10mMのNaOH、500mMのNaCl再生緩衝液の40μl/分の流速における10秒間の注入により再生させた。
【0388】
  二価親和性計測のため、MICA−Hisタンパク質を、Sensor  Chip  NTA(ニトリロ三酢酸(NTA)が事前に固定化されたカルボキシメチル化デキストラン)上でNi
2+/NTAキレート化を介して固定化した。抗MICA抗体をランニング緩衝液HBS−P中で濃度系列(0.01〜100nM)に希釈し、固定化抗原上に注入した。
【0389】
  それぞれのサイクルは、3つのステップからなるものであった。最初に、NTAチップをNiSO
4(500mM)により活性化させた。第2に、MICA−Hisタンパク質(ランニング緩衝液HBS−P中で10μg/mlに希釈)を、10μL/分の一定流速における2分間の注入を介して表面上に固定化した。次いで、抗体を固定化抗原上に40μl/分の流速において2分間注入した。続いて、ランニング緩衝液を抗体解離分析のために40μl/分において5分間注入した。それぞれのサイクル後、表面を0.5MのEDTA、pH8.3の60秒間の注入により再生させて表面から残留抗原および抗体を完全に剥離させた。得られたセンサーグラムを適切なモデルを使用するグローバルフィッティングにより分析した。
【0390】
  一価親和性計測のため、キメラ抗MICA抗体をプロテインGチップ上に捕捉させた。
【0391】
  親和性は、シングルサイクルカイネティクス(SCK)を使用して測定した。SCKサイクルは、以下のとおりであった:昇順でのMICA−HisまたはMICA−BirAの5つの系列希釈物(0.01〜100nM)の(または分析の間に減算すべきブランク注入のための緩衝液の)30μl/分における連続120秒間の注入。最後の濃度を注入した後、複合体を600秒間解離させてから適切な再生緩衝液の40μl/分における10秒間の注入により再生させる。再生後、チップをランニング緩衝液中で60秒間安定化させておく。曲線を、Biacore  T100  Evaluationソフトウェアを使用してフィッティングする。
【0392】
  ビオチン−コンジュゲートマウス抗体6E4(MICA
*001−Hisに対する)についてのMICA結合についてのpH7.4における二価平均K
D(M)は3.099
−11M)であった一方、一価親和性は2.0
*10
−9Mであった。ビオチン−コンジュゲートマウス抗体20C6(MICA
*001−Hisに対する)についてのpH7.4における二価平均K
D(M)は3.3
*10
−10Mであった一方、一価親和性は6.5
*10
−9Mであった。
【0393】
  ビオチン−コンジュゲートマウス抗体9C10(MICA
*001−Hisに対する)についてのMICA結合についてのpH7.4における二価平均K
D(M)は、6.2
*10
−13Mであった。ビオチン−コンジュゲートマウス抗体19E9(MICA
*001−Hisに対する)についてのMICA結合についてのpH7.4における二価平均K
D(M)は3.2
*10
−13Mであった一方、一価親和性は7.8
*10
−10Mであった。
【0394】
  CHG1−M−MIA−19E9抗体についてのMICA−BirAに対するpH7.4における一価親和性(平均KD)は、6.5
*10
−9M(n=3)であった。
【0395】
  CHG1−M−MIA−20C6抗体についてのMICA−BirAに対するpH7.4における一価親和性(平均KD)は、4
*10
−8M(n=3)であった。
【0396】
  CHG1−M−MIA−6E4抗体についてのMICA−BirAに対するpH7.4における一価親和性(平均KD)は、8.9
*10
−9M(n=4)であった。
【0397】
  CHG1−M−MIA2−16A8抗体についてのMICA−BirAに対するpH7.4における一価親和性(平均KD)は、1.15
*10
−8M(n=4)であった。
【0398】
  CHG1−M−MIA−15F9抗体についてのMICA−BirAに対するpH7.4における一価親和性(平均KD)は、6.1
*10
−8M(n=1)であった。
【0399】
  CHG1−M−MIA−12A10抗体についてのMICA−BirAに対するpH7.4における一価親和性(平均KD)は、5.3
*10
−8M(n=1)であった。
【0400】
  CHG1−M−MIA−18E8抗体についてのMICA−BirAに対するpH7.4における一価親和性(平均KD)は、5.4
*10
−8M(n=1)であった。
【0401】
  CHG1−M−MIA−10F3抗体についてのMICA−BirAに対するpH7.4における一価親和性(平均KD)は、8.3
*10
−9M(n=1)であった。
【0402】
実施例3  −  MICAアレルへの結合
  第1、第2および第3の免疫化系列から得られた抗体(CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6、CHG1−M−MIA−16A8、CHG1−M−MIA−12A10、CHG1−M−MIA−10A7、CHG1−M−MIA−18E8、CHG1−M−MIA−10F3、CHG1−M−MIA−15F9およびCHG1−M−MIA−14B4を含む)の結合を、Salih  et  al.(2003)Blood  102(4):1389−91396に記載されているMICA発現CR1形質移入細胞C1R−MICA
*001、C1R−MICA
*004、C1R−MICA
*007およびC1R−MICA
*008(Pr.A.Steinle,Eberhard−Karls  University  Tuebingen,Germany)への結合について試験した。結合は、フローサイトメトリーにより分析した。
【0403】
  フローサイトメトリー。細胞を回収し、PBS1×/BSA0,2%/EDTA2mMの緩衝液中である用量範囲の抗MICAmAbを使用して4℃において30分の間染色した。染色緩衝液中での2回の洗浄後、細胞をマウス抗ヒトIgG1−PEモノクローナル抗体(1/11)により4℃において30分間染色した。2回の洗浄後、染色をBD  FACS  Canto  II上で得、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0404】
  結果。抗体CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6、CHG1−M−MIA−12A10、CHG1−M−MIA−10A7、CHG1−M−MIA−18E8、CHG1−M−MIA−10F3,およびCHG1−M−MIA−15F9は、C1R−MICA
*001、C1R−MICA
*004、C1R−MICA
*007およびC1R−MICA
*008細胞のそれぞれに結合した(抗体CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6、CHG1−M−MIA−12A10、CHG1−M−MIA−10F3については
図1Aを、抗体CHG1−M−MIA−18E8,CHG1−M−MIA−15F9、CHG1−M−MIA−10A7については
図1B参照)。しかしながら、試験された他の抗体は、アレル特異的であり、MICA
*001、
*004、
*007および
*008の全てを認識しなかった。試験MICAアレルの全てを認識しない抗体の例として、2つの抗アルファ3ドメイン抗体CHG1−M−MIA−16A8およびCHG1−M−MIA−14B4を
図1Bに示す。EC50値を表Cにμg/ml(4パラメーターロジスティックフィットを使用して計算)で示す。
【0405】
【表8】
【0406】
実施例4  −  エピトープマッピング
  抗体を、種々のMICA
*001変異体への結合についてさらに試験した。MICA変異体を、PCRにより生成した(以下の表D参照)。全てのMx−Rプライマーを、以下の5’プライマーTACGACTCACAAGCTTACCGCCACCATGGGGCTGGGACCGGTCTTC(配列番号135)とともに使用した。全てのMx−Fプライマーを、以下の3’プライマーCCGCCCCGACTCTAGATTACTAGGCGCCCTCAGTGGAGC(配列番号136)とともに使用した。増幅された配列をアガロースゲル上で流し、次いでMacherey  Nagel  PCR  Clean−Up  Gel  Extractionキット(参照番号740609)を使用して精製した。変異体3を作出するため、第3のPCRを行うことが必要であった。これらのPCRに使用されるプライマーは、M3a−Fプライマー(5’−ACGGTGCTGTCCGCGGATGGATCTGTGCAGTCAG−3’)(配列番号137)とM3b−Rプライマー(5’−CCTGCTTTCTGGTCCTTGATATGAGCCAGGGTC−3’)(配列番号138)であった。次いで、それぞれの変異体について生成された2または3つのPCR産物を、ClonTech  InFusionシステム(参照番号639644)を用いて製造業者の説明書に従って制限酵素HindIIIおよびXBaIにより消化されたSELEXISpSUREtech192(HYGRO)ベクター中にライゲートした。
【0407】
  配列決定後、変異配列を含有するベクターを、Promega  PureYield(商標)Plasmid  Miniprep  System(参照番号A1222)を使用してミニプレップとして調製した。次いで、ベクターを、OZ  BIOSCIENCESのHYPE−5(商標)Transfection  Kit(参照番号HYR10003)を製造業者の説明書に従って使用してCHOK1SV細胞形質移入に使用した。形質移入は、300ngのDNAを1:8のHYPE−5:DNAの比において使用して実施した。
【0408】
【表9】
【0409】
【表10】
【0410】
【表11】
【0411】
【表12】
【0412】
【表13】
【0413】
【表14】
【0414】
  抗体は、非変異野生型MICAへの結合のいかなる損失も示さなかったが、1つ以上の変異体への結合を損失し、それにより、いくつかのエピトープを同定した。
【0415】
  抗体6E4は、Q48A、W49S、E51S、D52A、V53SおよびL54A置換を有する変異体10および11への結合の損失を有したが、他のいかなる変異体への結合も損失しなかった。したがって、6E4の主要エピトープは、残基Q48およびW49の1つ以上、ならびに/または残基E51、D52、V53およびL54の1つ以上を含む。これらの残基は、MICAのα1ドメイン内に存在する(エピトープは、α2またはα3ドメイン内の残基をさらに含み得る)。
【0416】
  図2Aは、暗陰影において抗体による結合の損失を(異なる組合せで)もたらした変異アミノ酸残基を含むMICAポリペプチドの図を示す。NKG2D結合部位を中位陰影において(およびMICAに結合しているリボンダイアグラムにおいても)MICAポリペプチドの頂部において示す。6E4は、NKG2D結合表面から離れたMICAの側面におけるα1ドメインに結合することを確認することができ、このことは、6E4がMICA−NKG2D相互作用を遮断しない知見と一致する。
【0417】
  抗体9C10および12A10は、N56A、K57S、T58A、R61AおよびR64A置換を有する変異体12および13への結合の損失を有したが、他のいかなる変異体への結合も損失しなかった。したがって、9C10および12A10の主要エピトープは、残基N56およびK57の1つ以上、ならびに/または残基T58、R61、およびR64の1つ以上を含む。これらの残基は、MICAのα1ドメイン内に存在する(エピトープは、α2またはα3ドメイン内の残基をさらに含み得る)。
【0418】
  図2Bは、暗陰影において9C10および12A10による結合の損失を(異なる組合せで)もたらした変異アミノ酸残基を含むMICAポリペプチドの図を示す。9C10および12A10は、考えられる部分的重複を有するNKG2D結合表面近傍のMICAの側面におけるα1ドメインに結合することを確認することができ、このことは、9C10および12A10がMICA−NKG2D相互作用を遮断する知見と一致する。
【0419】
  抗体20C6は、K81A  D82A  Q83A  K84A  H109A  Y111A  D113A  L116A  S133A  R134S  T137A  M140S  N141A  R143S  N144A置換を有する変異体16、17、21、60、27および28のそれぞれへの結合の損失を有したが、他のいかなる変異体への結合も損失しなかった。したがって、20C6の主要エピトープは、残基K81およびD82の1つ以上、残基Q83およびK84の1つ以上、残基H109、Y111およびL116の1つ以上、残基D113、残基S133、R134およびT137の1つ以上、ならびに/または残基M140、N141、R143およびN144の1つ以上を含む。これらの残基は、MICAのα1およびα2ドメイン内に存在する(エピトープは、α3ドメイン内の残基をさらに含み得る)。
【0420】
  抗体10A7は、20C6とのエピトープの部分的重複を有した。10A7は、K81A、D82A、Q83A、K84A、H109A、Y111A、D113A、L116A、Q131A、S132A、Q136S、M140S、N141A、R143SおよびN144A置換を有する変異体16、17、21、60、26および28のそれぞれへの結合の損失を有したが、他のいかなる変異体への結合も損失しなかった。したがって、10A7の主要エピトープは、残基K81およびD82の1つ以上、残基Q83およびK84の1つ以上、残基H109、Y111および(abd)L116の1つ以上、残基D113、残基Q131、S132およびQ136の1つ以上、ならびに/または残基M140、N141、R143およびN144の1つ以上を含む。これらの残基は、MICAのα1およびα2ドメイン内に存在する(エピトープは、α3ドメイン内の残基をさらに含み得る)。
【0421】
  図2Cは、暗陰影において20C6による結合の損失を(異なる組合せで)もたらした変異アミノ酸残基を含むMICAポリペプチドの図を示す。
図2Dは、暗陰影において10A7による結合の損失を(異なる組合せで)もたらした変異アミノ酸残基を含むMICAポリペプチドの図を示す。20C6および10A7は、考えられる部分的重複を有するNKG2D結合表面近傍のMICAの側面におけるα1およびα2ドメインに結合することを確認することができる。このことは、20C6がMICA  NKG2D相互作用を遮断する知見と一致する。
【0422】
  抗体19E9、18E8および10F3は、E100A、D101S、N102A、S103A、T104S、R105A、N121A、E123S、T124AおよびE126A置換を有する変異体19、20、23および24への結合を損失したが、他のいかなる変異体への結合も損失しなかった。したがって、19E9、18E8および10F3の主要エピトープは、残基E100、D101およびN102の1つ以上、残基S103、T104、およびR105の1つ以上、残基N121、およびE123の1つ以上、ならびに/または残基T124およびE126の1つ以上を含む。これらの残基は、MICAのα2ドメイン内に存在する(エピトープは、α1またはα3ドメイン内の残基をさらに含み得る)。
【0423】
  図2Eは、暗陰影において19E9、18E8および10F3による結合の損失を(異なる組合せで)もたらした変異アミノ酸残基を含むMICAポリペプチドの図を示す。19E9、18E8および10F3は、NKG2D結合表面近傍のMICAの側面におけるα2ドメインに結合することを確認することができ、このことは、19E9、18E8および10F3がMICA−NKG2D相互作用を遮断する知見と一致する。
【0424】
  抗体15F9は、R6A、N8A、E97A、H99A、E100A、D101S、N102A、S103A、T104S、R105A、E115A、L178A、R179SおよびR180A置換を有する変異体1、18、19、20、61および36への結合を損失したが、他のいかなる変異体への結合も損失しなかった。したがって、15F9の主要エピトープは、残基R6およびN8の1つ以上、残基E97およびH99の1つ以上、残基E100、D101およびN102の1つ以上、残基S103、T104およびR105の1つ以上、残基E115、ならびに/または残基L178、R179およびR180の1つ以上を含む。これらの残基は、MICAのα2ドメイン内に存在する(エピトープは、α1またはα3ドメイン内の残基をさらに含み得る)。
【0425】
  図2Fは、暗陰影において15F9による結合の損失を(異なる組合せで)もたらした変異アミノ酸残基を含むMICAポリペプチドの図を示す。15F9は、NKG2D結合表面下方のMICAの側面におけるα2ドメインに結合することを確認することができる。15F9は、sMICA−NKG2D相互作用を遮断する。
【0426】
  抗体16A8は、S224A、H225S、D226A、T227A、Q228S、Q229A、W230AおよびD232A置換を有する変異体45、46、および47への結合を損失したが、他のいかなる変異体への結合も損失しなかった。したがって、16A8の主要エピトープは、残基W230および/またはD232の1つ以上、残基T227、Q228およびQ229の1つ以上、残基S224、H225およびD226の1つ以上を含む。16A8のエピトープは、主としてMICAのα3ドメイン内に存在する。
【0427】
  図2Gは、暗陰影において16A8による結合の損失を(異なる組合せで)もたらした変異アミノ酸残基を含むMICAポリペプチドの図を示す。16A8は、NKG2D結合表面から離れたα3ドメインに結合することを確認することができる。
【0428】
  抗体14B4は、T227A、Q228S、およびQ229A置換を有する突然変異体46への結合を損失したが、他のいかなる突然変異体への結合も損失しなかった。したがって、14B4の主要エピトープは、残基T227、Q228およびQ229の1つ以上を含み、抗体16A8との部分的重複を有した。14B4のエピトープは、主としてMICAのα3ドメイン内に存在する。14B4は、NKG2D結合表面から離れたα3ドメインに結合することを確認することができる(しかしながら、14B4は、機能的遮断抗体である)。
【0429】
実施例5  −  NKG2D−MICA相互作用を遮断する抗MICA抗体の能力
A.表面プラズモン共鳴により評価された、抗MICA抗体の存在下でのNKG2D−FcへのMICA
*001−Hisの結合
  SPR測定を、Biacore  T100装置(Biacore  GE  Healthcare)上で25℃において実施した。全てBiacore実験において、HBS−EP+緩衝液(Biacore  GE  Healthcare)がランニング緩衝液として機能し、10mMのNaOH、500mMのNaClが再生緩衝液として機能し、センサーグラムをBiaevaluation  4.1およびBiacore  T100  Evaluationソフトウェアにより分析した。
【0430】
  溶液競合実験のため、ヒトNKG2D−Fc(R&D  systems)組換えタンパク質をCM5センサーチップ上に共有結合により固定化した。可溶性ヒトMICA
*01−BirAまたはヒトMICA
*019−Fc(R&D  systems)組換えタンパク質を、10μg/mlの一定濃度において5〜10モル濃度当量過剰の抗体とプレインキュベートし、NKG2D−Fcチップ上に10μl/分の流速において2分間注入した。それぞれのサイクル後、センサーチップを適切な再生緩衝液の5秒間の注入により再生させた。
図3は、結果の代表例を示し、結果を表Eにまとめる。
【0431】
B.NK92NK細胞系によるRaji−MICA
*08形質移入細胞のNKG2D依存性溶解を遮断する抗MICA抗体の能力
  NKG2D−MICA相互作用を遮断する抗MICA抗体の能力を評価した。抗体を、MICA
*008形質移入RajiのNKG2D+CD16−NK92細胞媒介殺傷を低減させ、または阻害する能力について、
51Crの標的細胞放出を計測することにより試験した。インビトロ細胞毒性アッセイを、例えば、Coligan  et  al.,eds.,Current  Protocols  in  Immunology,Greene  Publishing  Assoc.and  Wiley  Interscience,N.Y.,(1992,1993)に記載の当分野において周知の標準的方法により実施した。MICA発現標的細胞を
51Crにより標識してからNK細胞系を添加し、次いで殺傷を、殺傷の結果としての細胞から培地への
51Crの放出に比例するものとして推定した。MICAとNKG2Dとの間の結合を低減させ、またはその相互作用を遮断する薬剤の添加は、NKG2Dを介する活性シグナリングの開始および伝播の妨害をもたらした。したがって、そのような薬剤の添加は、標的細胞のNK媒介殺傷の減少をもたらす。市販の遮断抗NKG2D抗体のF(ab’)2断片を、NKG2D−MICA遮断の陽性対照として使用し、リツキシマブ(キメラヒトIgG1抗CD20)を陰性対照として使用して溶解がADCCを介して媒介されないことを確保し、抗MICAと同一の条件で産生された無関連キメラヒトIgG1の形態の追加の陰性対照を使用する。結果の例を
図4に示し、表Eにまとめる。
【0432】
  CHG1−M−MIA−20C6、CHG1−M−MIA−10A7は、組換え非グリコシル化MICA
*001−BirAと二価NKG2D−Fc組換えタンパク質との相互作用を遮断する一方、それらは、NK92によるRaji−MICA
*08のNKG2D媒介殺傷を遮断しない。第1の仮定は、これら2つの抗MICAが組換えMICA
*001についての最小の一価親和性を有し、したがって、細胞間細胞毒性アッセイにおいてNKG2D−MICA相互作用を遮断するために要求される試験されるものよりも多い量の抗体をもたらすことである。興味深いことに、このことは、抗体が、腫瘍の治療においてインビボで使用される場合、高用量においていくらかの遮断能力を有し得る(すなわち、mAb濃度がADCC/CDCによるMICA+細胞の有意な枯渇を引き起こすために十分であるため、ADCC/CDCが優勢な活性機序である時間において)が、インビボ抗体濃度が(高)用量の投与の数日/週後で減少するため、抗体は、非遮断性になり、患者の内因性NKG2D受容体が最適に機能することを可能とすることを暗示する。あるいは、Biacoreにおいて組換えタンパク質を使用して評価された遮断能力は、細胞膜に存在する天然完全グリコシル化タンパク質間の分子NKG2D−MICA相互作用の複雑性を予測し得ない。NKG2D−FcおよびMICA組換えタンパク質の両方は、試験の間それらの天然立体構造であり得ない。最後に、使用される2つの実験手順間で観察される遮断能力の差を担い得る四次構造に関していくらかの別々のアレル特異性が存在し得る。
【0433】
  さらに、エピトープは、NKG2D−MICA遮断能力を予測しない。それというのも、例えば、CHG1−M−MIA−19E9は、NKG2D結合部位上に直接存在しないエピトープを用いる両方のアッセイにおいて遮断抗MICA抗体であるためである(
図2E)。CHG1−M−MIA−14B4は、試験アレルに結合する場合、NKG2D−MICA相互作用を遮断しているが、そのエピトープはa3ドメイン上に存在し、このことはMICA立体構造がCHG1−M−MIA−14B4結合時に変化することを示唆する。CHG1−M−MIA−20C6についてのエピトープは、NKG2D結合部位近傍に存在するが、重複せず(
図2C、2Dおよび2F)、MICA
*008に対して機能的に遮断しないと考えられる。
【0434】
【表15】
【0435】
実施例6  −  抗MICA抗体とヒトMICB、ULBP1、ULBP2およびULBP3との交差反応
  交差結合試験のため、ヒトULBP−1−Fc(R&D  systems
*)、MICB−Fc(
*)、ULBP−2−Fc(
*)およびULBP−3−Fc(
*)組換えタンパク質を、CM5センサーチップの1〜4つのフローセル上でそれぞれ共有結合により固定化した。抗MICA抗体(10μg/mlの一定濃度)を4つのフローセル上に並行して10μl/分の流速において2分間注入した。それぞれのサイクル後、センサーチップを適切な再生緩衝液の5秒間の注入により再生させた。
【0436】
  図5Aは、MICBならびにCHG1−M−MIA−20C6およびCHG1−M−MIA−9C10のULPB−1、−2および−3に対する交差反応の不存在を示す。
図5Bは、CHG1−M−MIA−6E4およびCHG1−M−MIA−19E9がMICBに結合するが、ULBP−1、−2および−3に結合しないことを示す。
図5Cは、CHG1−M−MIA−16A8がMICBに弱いが有意に結合するが、ULBP−1、−2および−3に結合しないことを示す。試験されなかった抗体は、同一のエピトープ領域を共有する他の抗体と類似のプロファイルを有することが予期される。
【0437】
  表Fは、全ての試験抗MICA抗体についての結果をまとめる。
【0438】
【表16】
【0439】
実施例7  −  抗MICA抗体とカニクイザル(Macaca  fascicularis)MICタンパク質との交差反応
  第1、第2および第3の免疫化系列(CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6、CHG1−M−MIA−16A8、CHG1−M−MIA−12A10、CHG1−M−MIA−18E8、CHG1−M−MIA−10F3、CHG1−M−MIA−15F9およびCHG1−M−MIA−14B4を含む)から得られた抗体の結合を、カニクイザル(Macaca  fascicularis)MICホモログタンパク質への結合について試験した。MIC#9−1、MIC#9−2およびMIC#2−7を含む3つの配列をカニクイザル(Macaca  fascicularis)cDNAから連続的にクローニングし、マウス細胞系Baf/3中で形質移入した。結合をフローサイトメトリーにより分析し、NKG2D−Fc組換えタンパク質を対照として使用してカニクイザル(Macaca  fascicularis)MICタンパク質の表面発現を検出した。
【0440】
  フローサイトメトリー。細胞を回収し、PBS1×/BSA0,2%/EDTA2mMの緩衝液中である用量範囲の抗MICAmAbを使用して、またはNKG2D−Fc組換えタンパク質(R&D  systems)により4℃において30分の間染色した。染色緩衝液中での2回の洗浄後、抗MICA抗体とインキュベートした細胞をマウス抗ヒトIgG1−PEモノクローナル抗体(1/11)により4℃において30分間染色した。NKG2D−Fcとインキュベートした細胞は、ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(1/200)により4℃において30分間染色した。2回の洗浄後、染色をBD  FACS  Canto  II上で得、BD  FACSDivaソフトウェアを使用して分析した。
【0441】
  CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6、CHG1−M−MIA−16A8、CHG1−M−MIA−12A10、CHG1−M−MIA−10F3、CHG1−M−MIA−15F9およびCHG1−M−MIA−14B4抗体は、MIC#2−7カニクイザル(Macaca  fascicularis)タンパク質に結合する。MIC#2−7は、MICA
*019、MICA
*044、MICA
*001およびMICB
*002との99.6%、97.8%、95.6%および86.9%のタンパク質相同性をそれぞれ表す。MIC#2−7に加えて、CHG1−M−MIA−6E4はMIC#9−1にも結合する。CHG1−M−MIA−16A8は、試験された実験条件でMIC#9−2タンパク質に結合する。結果を
図6に示す。
【0442】
実施例8  −  MICAシェディングの阻害
  抗α3ドメイン16A8抗体を、市販のBAM03(Salih  et  al(2003)、前掲参照)と、MICAシェディングを遮断するその能力について比較した。C1R−MICA
*01およびC1R−MICA
*04細胞のミックスを、PBS1×中で洗浄して培養物中に存在する可溶性MICAを除去し、次いで完全培地中である用量範囲(0/1/3/10/30μg/ml)の16A8またはBAM03の存在または不存在下で一晩培養した。次いで、細胞培養上清を回収し、ELISAにおいて可溶性MICAの存在について試験した。16A8もBAM03も、ELISAにおいて使用された抗MICA抗体を干渉していない(データ示さず)。細胞とBAM03との一晩のインキュベーションは、上清中の可溶性MICA濃度の減少をもたらす一方、16A8は、可溶性MICAの減少を誘導しない。結果を
図7に示し、BAM03により媒介されるMICAシェディングの阻害を示し、16A8により媒介されるMICAシェディングの阻害を示さない。
【0443】
実施例9  −  NKG2D下方モジュレーションに対する抗MICA抗体の効果
  NK細胞上のNKG2DがsMICAにより下方調節され(Groh  et  al.(2002)Nature;Arreygue−Garcia(2008)BMC;Jinushi  et  al.(2005)J.Hepatol.)、より低い反応性のNK細胞をもたらすことが報告されている。可溶性MICAにより誘導される下方調節を模倣するため、以下の実験を実施した。
【0444】
  4人の健常ドナーからの解凍PBMCを、低温凝集(Rubinstien(1989)J.Clin.Lab.Immunol.)により単球の非特異的除去後にリンパ球において濃縮した。細胞(ウェル当たり1.10e5個の細胞)を、96ウェルプレート中で増加濃度の可溶性MICA
*019−Fc(R&D  systems)の存在下で、抗MICA抗体(10μg/mL単位でのCHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−20C6)の存在下または不存在下で4℃または37℃において24時間インキュベートした。可溶性MICAにより誘導されるNKG2D下方モジュレーションおよび抗MICA抗体によるその遮断をフローサイトメトリーにより評価した。細胞を以下のヒト特異的マウス抗体:抗CD14FITC、抗CD3Pacific  blue(Becton  Dickinson)、抗CD56PE−Cy7(BioLegend)、抗NKG2D  PE(Beckman  Coulter)により染色し、ゲーティングされたCD3−CD56+NK細胞上のNKG2D発現について分析した。
【0445】
  この実験設定において、NKG2Dは、増加用量の組換え二価MICA
*019
*Fcタンパク質(R&D  systems)の存在下でその初期レベルの30〜40%だけ下方モジュレートされる(
図8)。この効果は、培養培地中で2〜10μg/mlで確認され、癌患者からの血清中で観察される可溶性MICAの記載レベル(悪性障害において30〜1557pg/mlの範囲、n=296、Holdenrieder(2006)Int.J.Cancer)を大きく上回る。NKG2D下方モジュレーションは、一価MICA
*01−His組換えタンパク質を使用するこれらの実験条件で観察されない(データ示さず)。CHG1−M−MIA−9C10およびCHG1−M−MIA−19E9抗MICA抗体は、実施例5B(表E)の細胞毒性アッセイにおいてNKG2D−MICA相互作用を遮断し、NK細胞上で発現されたNKG2DとMICA
*019−Fcとの相互作用を遮断しており、したがって、MICA
*019−Fcタンパク質により誘導されるNKG2D下方モジュレーションを逆転させる(
図8)。CHG1−M−MIA−20C6抗MICAは、MICA
*019−Fc媒介NKG2D下方モジュレーションを逆転させない(
図8)。この抗体は表面プラズモン共鳴によるNKG2D−Fc/MICA
*019−Fc結合を遮断しているが(表E)、実施例5B(表E)の細胞毒性アッセイにおいてNKG2D/MICA
*08を遮断しておらず、初代細胞に対するNKG2D下方モジュレーションを逆転させておらず、このことは、組換えタンパク質を使用するNKG2D/MICA遮断実験が、少なくとも試験された実験条件において生物学的機能を予測し得ない事実を強調する。
【0446】
実施例10  −  抗MICA抗体は、CDCを介してMICA発現標的の殺傷を媒介し得る
  CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6およびCHG1−M−MIA−16A8を、MICA
*001完全タンパク質をコードするレンチウイルスが形質導入されたヒトRaji腫瘍細胞に対するCDCを媒介するそれらの能力について試験した。これらのRaji−MICA
*01細胞は、それらの細胞表面においてMICA
*01を発現する。
【0447】
  手短に述べると、100000個のRaji−MICA
*01細胞を示される用量の抗MICA抗体と4℃において1時間インキュベートした。次いで、20%(最終濃度)のHuman  Serum  Complement(Quidel)を含有する培養培地を細胞に添加し、37℃において3時間インキュベートした。細胞を洗浄し、7−AADとインキュベートして死滅細胞を染色した。細胞をBD  FACS  Canto  II上でのフローサイトメトリーにより得、BD  FACSDivaソフトウェアを使用して分析した。結果を示される条件における7−AAD陽性細胞の割合として表現する。
【0448】
  結果を
図9に示す。結果は、ヒト補体の存在下での示されるRaji−MICA
*01細胞の生存率を示す。結果は、CHG1−M−MIA−20C6、CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−6E4、およびCHG1−M−MIA−19E9が死滅細胞の数の増加を引き起こすことを示す(それぞれ、EC50値は、0.97、2、1.01および2.35μg/mlである)(
図9)。死滅細胞の最大割合は、試験される異なる抗MICAにより変動する(
図9)。特に、CHG1−M−MIA−16A8は、補体細胞毒性を媒介していない。これら5つの抗MICAは、同一オーダーのC1R−MICA
*01を染色するためのEC50値を有するため(表C)、補体媒介細胞毒性は、エピトープ依存的であると考えられる(9C10>20C6=6E4>19E9>>16A8)。
【0449】
実施例11  −  抗体は、ADCCを介してMICA発現標的を殺傷し得る
  CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6、CHG1−M−MIA−16A8、CHG1−M−MIA−12A10、CHG1−M−MIA−18E8、CHG1−M−MIA−10F3、CHG1−M−MIA−15F9およびCHG1−M−MIA−14B4を、MICA
*008が形質移入されたC1R腫瘍細胞(C1R−MICA
*008)に対するADCCを媒介するそれらの能力について試験した。
【0450】
  手短に述べると、ヒトCD16(Vアイソフォーム)が形質移入されたヒトNK細胞系KHYG−1の細胞溶解活性を、(Greiner)からのV底96ウェルプレート中で古典的な4時間の
31Cr放出アッセイにおいて評価した。手短に述べると、C1R−MICA
*008細胞を
51Cr(100μCi(3.7MBq)/1×10
6個の細胞)により標識し、次いでhCD16V(ヒトIgG1に結合させるため)が形質移入されたKHYGと、20に等しいエフェクター/標的比において示される濃度における抗体および10μg/mlのF(ab’)2のON−72(いかなるNKG2D媒介細胞毒性も遮断するため)の存在下で混合した。短時間の遠心分離および37℃における4時間のインキュベーション後、50μLの上清を取り出し、
51Cr放出をTopCount  NXTベータ検出器(PerkinElmer  Life  Sciences,Boston,MA)により計測した。全ての実験群をトリプリケートで分析し、特異的溶解の割合を以下のとおり決定した:100×(平均cpm実験放出−平均cpm自発放出)/(平均cpm全放出−平均cpm自発放出)。全放出の割合は2%のTriton  X100(Sigma)における標的細胞の溶解により得た。
【0451】
  結果を
図10Aに示す。CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6およびCHG1−M−MIA−16A8は、それぞれ、陰性対照(ヒトIgG1アイソタイプ対照抗体)と比較してヒトKHYG−1  hCD16V  NK細胞系によるC1R−MICA
*008細胞の特異的溶解を誘導し、それにより、それらの抗体はMICA
*008発現標的細胞に対するADCCを誘導することを示す。標的細胞溶解の程度は、細胞への抗体結合と相関する(
図10B)。
【0452】
実施例12  −  キメラ抗MICA9C10、19E9、6E4、20C6および16A8は、RAJI−MICA
*01Highゼノグラフトのマウスモデルにおいて抗腫瘍効力を示す
  抗体を、RAJI細胞が高レベルの抗原MICA
*01を発現するマウス長期RAJI−MICA
*01腫瘍モデルにおいて試験した。Nod  SCIDマウスに15.10
6個のRAJI−MICA
*01Highを静脈内(IV)移植し、対照アイソタイプ対照抗体(IC)またはキメラ抗体CHG1−M−MIA−9C10、CHG1−M−MIA−19E9、CHG1−M−MIA−6E4、CHG1−M−MIA−20C6、またはCHG1−M−MIA−16A8のいずれかにより、300μg/マウスの投与量において、腫瘍細胞移植日から3週間、IP2回/週で処理した。
【0453】
  RAJI−MICA
*01Highを、10%の熱不活化ウシ胎仔血清、1%のL−グルタミン、1%のナトリウム/ピルビン酸塩を補給された含有する完全RPMI1640培養培地中で、マウス中への注射前に抗体を用いずに培養した。
【0454】
  マウスを1週間に2回秤量した。カプラン・マイヤー生存曲線を確立して処理マウスの生存期間を評価した。
【0455】
  結果を
図11に示す。全てのキメラ抗体は、抗腫瘍活性を示した。アイソタイプ対照を受けた動物は、27日間の生存期間の中央値を有した一方、最小有効キメラ抗体(16A8)により処理されたマウスは77日間の生存期間の中央値を有した。全ての他の抗体については、動物の50%超が100日目において依然として生存し、このことは生存期間の中央値の計算を妨げ、極めて強力な抗腫瘍効果を示す。
【0456】
  全ての見出しおよび小見出しは、本明細書において便宜的に使用されるにすぎず、決して本発明を限定するものとして解釈すべきではない。上記要素のその全ての考えられる変形形態における任意の組合せは、本明細書に特に記載されず、または特に文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に特に記載のない限り、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個別に参照する略記方法として機能するものにすぎず、それぞれの別個の値は、あたかもそれが本明細書において個々に記述されるように、本明細書に組み込まれる。特に記載のない限り、本明細書に提供される全ての正確な値は、対応する近似値を代表する(例えば、特定の因子または計測値に関連して提供される全ての正確な例示値は、適宜「約」により修飾される、対応する近似測定値も提供するものとみなすことができる)。
【0457】
  本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特に記載されず、または特に文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。
【0458】
  本明細書に提供される任意および全ての例、または例示的な文言(例えば、「例えば」)の使用は、本発明をより良好に説明するものにすぎず、特に記載のない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の文言は、任意の要素が本発明の実施に不可欠であることを示すものとして、そのように明示されない限り、解釈すべきでない。
【0459】
  本明細書の特許文書の引用および組込みは、便宜的に行われるにすぎず、そのような特許文書の有効性、特許性および/または権利行使可能性に関するいかなる見解も反映するものではない。1つまたは複数の要素に対する参照などの用語を使用する本発明の任意の態様または実施形態の本明細書の記載は、特に記載されず、または文脈と明らかに矛盾しない限り、その特定の1つまたは複数の要素「からなる」、「本質的にその要素からなる」またはその要素を「実質的に含む」本発明の類似の態様または実施形態へのサポートを提供するものとする(例えば、特定の要素を含む本明細書に記載の組成物は、特に記載されず、または文脈と明らかに矛盾しない限り、その要素からなる組成物も記載するものとして理解すべきである)。
【0460】
  本発明は、適用可能な法律により許容される最大の程度までの、本明細書に提示される態様または特許請求の範囲に記載される、主題の全ての改変形態および均等物を含む。
【0461】
  本明細書に引用される全ての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が、あたかも参照により組み込まれることが個別具体的に示されるように、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0462】
  上記発明を、理解を明確にすることを目的として、説明および例として、いくらか詳細に記載したが、本発明の教示に照らして添付の特許請求の範囲の趣旨からも範囲からも逸脱することなくある変更および改変をそれに対して行うことができることは当業者に容易に明らかである。