(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バネ部材は、前記第1係合部と前記第2係合部との間に設けられたコイル部を備え、このコイル部に前記ブラケットを回動可能に支持する回動軸部が挿通されていることを特徴とする、請求項1記載のエキスパンションジョイント装置。
前記ブラケットを回動可能に支持する回動軸部は、前記支持部材または前記ブラケットに一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載のエキスパンションジョイント装置。
前記カバー材が前記固定面に対して略平行に配置され、前記ブラケットの回動軸が前記カバー材と前記固定面との間に位置していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエキスパンションジョイント装置。
前記カバー材が前記固定面に対して略直交するように配置され、前記ブラケットの回動軸から前記カバー材の天面までの距離が、前記ブラケットの回動軸から前記固定面までの距離よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエキスパンションジョイント装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の構造では、ホルダー材を取り付けるときにバネ部をホルダー材に係合させなければならないため、バネ部の付勢力に抗してホルダー材を取り付けなければならず作業性が悪かった。
そこで、本発明は、バネ部材を備えたエキスパンションジョイント装置において、従来よりも取り付けを容易とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0006】
請求項1記載の発明は、躯体間の隙間部を覆うエキスパンションジョイント装置であって、一方の躯体の固定面に固定される支持部材と、前記支持部材に回動可能に取り付けられるブラケットと、前記ブラケットに支持されて前記隙間部を覆うカバー材と、前記カバー材が前記隙間部を覆う方向に前記ブラケットを付勢するバネ部材と、
前記一方の躯体に取り付けられて前記支持部材に係合するフレーム材と、を備え、前記バネ部材は、前記支持部材に係合する第1係合部と、前記ブラケットに係合する第2係合部と、の2つの係合部を備え、前記2つの係合部の一方のみを前記支持部材または前記ブラケットに係合させ
て前記バネ部材の付勢力が働いていない状態で前記支持部材
と前記ブラケットと前記バネ部材とを予め組み付けたユニットを
前記フレーム材に固定した後に、
前記バネ部材の解放端部を使用して形成された他方の前記係合部を
左右に押し広げて前記支持部材または前記ブラケットに係合可能であることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、前記バネ部材は、前記第1係合部と前記第2係合部との間に設けられたコイル部を備え、このコイル部に前記ブラケットを回動可能に支持する回動軸部が挿通されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2に記載の発明の特徴点に加え、前記ブラケットを回動可能に支持する回動軸部は、前記支持部材または前記ブラケットに一体的に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、
前記支持部材は、前記バネ部材によって前記フレーム材との係合方向に付勢されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、上記した請求項
1〜4のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、
前記フレーム材は、前記一方の躯体の固定面に当接する底板部と、前記底板部から突出したリブ状の支持面部と、前記支持面部に対向するように前記底板部から突出した鉤状部と、を備え、前記支持部材は、
前記支持面部に当接してネジ固定されるネジ固定面
と、前記鉤状部に係合する引掛部と、を備え、
前記引掛部を前記鉤状部に引っ掛けた状態で、前記引掛部を支点にして前記支持部材を揺動させることで、前記支持面部と前記ネジ固定面とを重ね合わせて係合可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、前記カバー材が前記固定面に対して略平行に配置され、前記ブラケットの回動軸が前記カバー材と前記固定面との間に位置していることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、上記した請求項1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、前記カバー材が前記固定面に対して略直交するように配置され、前記ブラケットの回動軸から前記カバー材の天面までの距離が、前記ブラケットの回動軸から前記固定面までの距離よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、バネ部材が2つの係合部を備え、前記2つの係合部の一方のみを支持部材またはブラケットに係合させた状態で支持部材を一方の躯体に固定した後に、係合していない他方の前記係合部を前記支持部材または前記ブラケットに係合可能である。このような構成によれば、従来のようにバネの付勢力がかかった状態で取り付けを行う必要がなく、ブラケットを取り付けた後でバネの付勢力を働かせることができるので、取り付け時に余計な力を入れる必要がなく、作業を容易とすることができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記バネ部材は、第1係合部と第2係合部との間に設けられたコイル部を備え、このコイル部に前記ブラケットを回動可能に支持する回動軸部が挿通されている。このような構成によれば、バネ部材とブラケットの回動軸部とが同芯となっているので、スムーズな回動を実現することができる。また、バネ部材のコイル部に回動軸部が挿通されているので、回動軸部が案内棒の役目を果たし、コイル部の座屈の心配がない。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、前記ブラケットを回動可能に支持する回動軸部は、前記支持部材または前記ブラケットに一体的に形成されている。このような構成によれば、回動軸部を形材によって形成することができ、部品点数を減らせるとともに、強度不足の不安もない。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は上記の通りであり、
前記支持部材は、前記バネ部材によって前記フレーム材との係合方向に付勢されている。このような構成によれば、バネ部材の2つの係合部を係合させたときに、第2係合部によってブラケットを閉じようとする力が働くとともに、第1係合部によって支持部材をフレーム材に係合させようとする力が働くので、支持部材をより強固にフレーム材に固定することができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は上記の通りであり、前記支持部材は、
前記支持面部に当接してネジ固定されるネジ固定面
と、前記鉤状部に係合する引掛部と、を備え、
前記引掛部を前記鉤状部に引っ掛けた状態で、前記引掛部を支点にして前記支持部材を揺動させることで、前記支持面部と前記ネジ固定面とを重ね合わせて係合可能に構成されているので、
作業を容易とすることができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は上記の通りであり、前記カバー材が前記固定面に対して略平行に配置され、前記ブラケットの回動軸が前記カバー材と前記固定面との間に位置している。このような構成によれば、ブラケットの回動軸の位置をできるだけカバー材の端部(一方の躯体側の端部)に近付けることができる。このため、カバー材の反対側の端部(他方の躯体側の端部)が上方に移動するようにブラケットが回動するときの可動範囲が大きく確保され、より大きい揺れに対応することができる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は上記の通りであり、前記カバー材が前記固定面に対して略直交するように配置され、前記ブラケットの回動軸から前記カバー材の天面までの距離が、前記ブラケットの回動軸から前記固定面までの距離よりも小さくなるように形成されている。このような構成によれば、カバー材の天面方向に立ち上がり部分が設けられていないので、カバー材と固定面との干渉が起きにくくなっている。このため、他方の躯体側のカバー材の端部が上方に移動するようにブラケットが回動するときの可動範囲が大きく確保され、より大きい揺れに対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態に係るエキスパンションジョイント装置10は、隙間部Gを設けて配置された2つの躯体30,40間に設けられ、この互いに相対する2つの躯体30,40の間の隙間部Gを覆うために設けられる。本実施形態においては、
図1(a)に示すように、いずれも壁躯体である一方の躯体30及び他方の躯体40の間にエキスパンションジョイント装置10を設けている。
【0023】
このエキスパンションジョイント装置10は、
図1(a)に示すように、一方の躯体30の固定面31に取り付けられるフレーム材11と、フレーム材11に係合することで一方の躯体30の固定面31に固定される支持部材13と、支持部材13に回動可能に取り付けられるブラケット15と、ブラケット15に支持されて隙間部Gを覆うカバー材16と、カバー材16が隙間部Gを覆う方向にブラケット15を付勢するバネ部材19と、他方の躯体40に固定されるシートホルダー20と、カバー材16の下方に配置される止水シート22と、を備える。
【0024】
本実施形態に係るフレーム材11は、長尺のアルミ押出形材であり、一方の躯体30の固定面31に、隙間部Gに沿って取り付けられる。このフレーム材11は、
図1(b)に示すように、躯体30の固定面31に当接する底板部11aと、底板部11aから突出したリブ状の支持面部11bと、支持面部11bに対向するように底板部11aから突出した鉤状部11cと、底板部11aの先端から斜め下方に延出した脚部11dと、を備えている。支持面部11bは、底板部11aから斜め方向に突出しており、上方(先端)に行くに従って鉤状部11cの方向に接近するように傾斜している。鉤状部11cは、底板部11aからほぼ垂直に突出しており、先端が支持面部11bの反対方向に略L字形に屈折している。鉤状部11cの先端が屈折することで、後述する支持部材13の引掛部13cを係合させられるようになっている。脚部11dは、一方の躯体30から他方の躯体40の方向へ突出する部分であり、この脚部11dの先端には止水シート22の端部を保持するためのシート固定部11eが設けられている。
【0025】
支持部材13は、フレーム材11よりも短尺に形成されたアルミ押出形材であり、フレーム材11に対して所定間隔で複数の支持部材13が取り付けられる。この支持部材13は、
図1(b)に示すように、断面略コ字形の脚部13aと、脚部13aから突出して設けられた首部13fと、首部13fの先端に設けられた丸棒状の回動軸部13eと、を備えている。脚部13aは、前記したフレーム材11の支持面部11b及び鉤状部11cに係合する部分であり、支持面部11bに係合するネジ固定面13bと、鉤状部11cに係合する引掛部13cと、を備えている。ネジ固定面13bは、支持面部11bに当接する部分である。このネジ固定面13bは、支持部材13をフレーム材11に取り付けたときに一方の躯体30の固定面31に対して傾斜するように形成されている。引掛部13cは、先端がネジ固定面13bの方向に略L字形に屈折している。この屈折した先端がフレーム材11の鉤状部11cに係合し、容易に支持部材13がフレーム材11から脱落しないようになっている。なお、引掛部13cのやや上方には、後述するバネ部材19を係合させるための肩部13dが設けられている。回動軸部13eは、ブラケット15を回動可能に支持する回動軸となる部分である。この回動軸部13eは、中間付近が首部13fに接続されて支持されるとともに、両端部が首部13fに支持されずに突出しており、この突出した両端部に後述するバネ部材19のコイル部19dを取り付け可能となっている。
【0026】
ブラケット15は、支持部材13よりもやや短尺に形成されたアルミ押出形材であり、支持部材13に対して回動可能に取り付けられる。このブラケット15は、
図1(a)に示すように、躯体30,40間の隙間部Gに架設するように配置される。このブラケット15は、
図1(b)に示すように、カバー材16が取り付けられる平坦部15cと、平坦部15cの一端に設けられた軸受部15aと、平坦部15cの他端に設けられた先端脚部15dと、を備える。平坦部15cは、上面にカバー材16を取り付けて、カバー材16を支持するための部位であり、隙間部Gに架設される桁の役割を果たす。この平坦部15cの上面には、後述するバネ部材19を係合させるバネ受部15bが凹設されている。軸受部15aは断面略C字形の部位であり、この軸受部15aが支持部材13の回動軸部13eを回動可能に保持することで、ブラケット15が支持部材13に対して回動可能となっている。先端脚部15dは、他方の躯体40の当接面41に接触して、他方の躯体40側においてブラケット15を支承する部位である。この先端脚部15dは、平坦部15cが略水平となるように、斜め下方に延設されて他方の躯体40の当接面41に接触している。
【0027】
カバー材16は、上記したブラケット15の上面に固定され、隙間部Gを覆う長尺部材である。本実施形態に係るカバー材16は、
図1(a)に示すように、ブラケット15に支持されて隙間部Gを覆う天面部16aと、天面部16aの両端に設けられた立ち上り部16bと、を備えている。立ち上り部16bの先端にはウェザーストリップ17が取り付けられており、ウェザーストリップ17が躯体30,40の表面に接触することで、カバー材16(立ち上り部16bの先端)と躯体30,40との間に隙間ができないようになっている。また、地震の揺れなどにより躯体30,40が変動することでカバー材16が躯体30,40に押し付けられたときには、ウェザーストリップ17が弾性変形することにより、変動を吸収しつつカバー材16の破損を防止できるようになっている。
【0028】
バネ部材19は、
図1(c)に示すような線材で形成されたバネであり、第1係合部19aと第2係合部19bとの2つの係合部を備え、更に、この第1係合部19aと第2係合部19bとの間に一対のコイル部19dを備えている。詳しくは、線材の両端は互いに対向するように略L字形に折り曲げられており、これにより第2係合部19bが形成されている。そして、両側の第2係合部19bから連続するようにコイル状に巻かれた一対のコイル部19dが設けられ、一対のコイル部19dを接続するように略コ字形の第1係合部19aが形成されている。このバネ部材19は、支持部材13とブラケット15とに係合し、コイル部19dに蓄えた付勢力によってこの2つの部材を互いに閉じ方向に引き寄せるように作用する。第1係合部19aは支持部材13に係合する部分であり、具体的には、支持部材13の肩部13dに係合する。また、第2係合部19bはブラケット15に係合する部分であり、具体的には、ブラケット15のバネ受部15bに係合する。本実施形態に係る第2係合部19bは左右に分割されており、両側から挟みこむようにブラケット15に係合するため、第2係合部19bを左右に押し広げることでブラケット15への係脱が可能となっている。
【0029】
なお、上記した支持部材13とブラケット15とバネ部材19とは、
図2(b)に示すように、予め組み付けられて使用される。具体的には、ブラケット15の軸受部15aを支持部材13の回動軸部13eに係合させることで、ブラケット15と支持部材13とを係合させる。このとき、ブラケット15は支持部材13よりもやや短尺に形成されているため、回動軸部13eの両端は軸受部15aから突出した状態となっている(
図3(b)参照)。この突出した回動軸部13eを、バネ部材19のコイル部19dに挿通することで、バネ部材19を支持部材13に取り付ける。このとき、第1係合部19aは支持部材13の肩部13dに係合した状態とし、第2係合部19bはブラケット15のバネ受部15bに係合させない。このように、2つの係合部の一方のみが係合した状態とすれば、バネ部材19の付勢力が働いていない状態となるため、後の組み付け作業が容易となる。
【0030】
シートホルダー20は、長尺のアルミ押出形材であり、
図1(a)に示すように、隙間部Gに沿って他方の躯体40に固定される。このシートホルダー20は、フレーム材11のシート固定部11eに対向するように、他方の躯体40から一方の躯体30の方向へ突出したシート保持部20aを備えている。このシート保持部20aは、フレーム材11の反対側で止水シート22の端部を保持するためのものである。
【0031】
止水シート22は、特にエキスパンションジョイント装置10を屋外にて使用した場合に、隙間部G内に雨水などが入り込まないようにするためのものである。この止水シート22は、一端をフレーム材11のシート固定部11eに、他端をシートホルダー20のシート保持部20aに保持されて、カバー材16の下方に配設される。エキスパンションジョイント装置10を屋内で使用する場合など、止水性を確保する必要がない場合には、この止水シート22は省略してもよい。止水シート22を省略する場合には、シートホルダー20も省略可能である。
上記したエキスパンションジョイント装置10は、以下のような手順で取り付けられる。
【0032】
まず、
図2(a)に示すように、フレーム材11を一方の躯体30の固定面31に固定する。具体的には、フレーム材11の底板部11aを一方の躯体30の固定面31に当接させ、底板部11aを貫通するフレーム材取付ネジ12を固定面31に螺着させることで、フレーム材11を一方の躯体30の固定面31に固定する。なお、止水シート22を取り付ける場合には、予め止水シート22をフレーム材11及びシートホルダー20に取り付けておき、シートホルダー20をホルダー取付ネジ21によって他方の躯体40の当接面41に固定する。
【0033】
次に、
図2(b)に示すように、予め組み付けておいた支持部材13とブラケット15とバネ部材19とで構成されるユニットを、フレーム材11に取り付ける。具体的には、
図2(c)に示すように、支持部材13の引掛部13cをフレーム材11の鉤状部11cに引っ掛け、この状態で引掛部13cを支点にして支持部材13を揺動させ、
図2(d)に示すように支持面部11bとネジ固定面13bとを重ね合わせて係合させる。このように、予め組み付けておいたユニットをフレーム材11に装着する構造であるため、従来のように躯体へブラケット等を直止めする構造と比較して施工性がよく、位置出しの手間も省くことができる。
【0034】
次に、
図3(a)に示すように、支持面部11bとネジ固定面13bとが重なった部分に支持部材取付ネジ14を取り付けて、ネジ固定面13bをフレーム材11にネジ固定する。このとき、ネジ固定面13bが傾斜して設けられることで支持部材取付ネジ14の取り付けが容易となっている。
【0035】
次に、
図3(b)に示すように、バネ部材19の第2係合部19bをブラケット15のバネ受部15bに係合させる。第2係合部19bは、線材の解放端部19cを使用して形成されているため、この解放端部19cを外側に押し広げてブラケット15のバネ受部15bの前方に回り込ませれば、バネ部材19の第2係合部19bをブラケット15のバネ受部15bに係合させることができる。
【0036】
なお、このようにバネ部材19の第2係合部19bをブラケット15のバネ受部15bに係合させることで、第2係合部19bにおいてバネの付勢力がブラケット15に作用し、ブラケット15の先端脚部15dを他方の躯体40の当接面41に押し付けようとする力が働く。一方、第1係合部19aにおいては、バネの付勢力が支持部材13に作用し、支持部材13をフレーム材11に係合させようとする力が働くようになっている。すなわち、
図2(d)に示すように、第1係合部19aにバネの付勢力が作用すると、支持部材13の肩部13dが、フレーム材11及び固定面31の方向(
図2(d)における右下方向)に押し付けられるようになっている。このため、バネ部材19の付勢力が作用することで、支持部材13とフレーム材11との係合が外れにくくなっている。
【0037】
最後に、
図4に示すように、ブラケット15にカバー材16を取り付ける。具体的には、ブラケット15の平坦部15cの上にカバー材16を載置し、ブラケット15の平坦部15cとカバー材16の天面部16aとをカバー固定ネジ18で固定する。これにより、エキスパンションジョイント装置10の取り付けが完了する。
【0038】
このようなエキスパンションジョイント装置10によれば、例えば
図5(a)及び(b)に示すように、地震の揺れなどに起因して2つの躯体30,40が互いに水平方向に相対的に移動したとしても、ブラケット15の先端脚部15dやカバー材16の先端(ウェザーストリップ17)が他方の躯体40の当接面41上を摺動することで躯体30,40の変動を吸収することができる。
【0039】
また、
図6(a)及び(b)に示すように、2つの躯体30,40が互いに上下方向に相対的に移動したとしても、ブラケット15が回動することで躯体30,40の変動を吸収することができる。このとき、ブラケット15はバネ部材19によって常に他方の躯体40の当接面41に押し付けられているため、カバー材16で隙間部Gを塞いだ状態を維持したままでブラケット15を回動させることができる。
【0040】
また、本実施形態においては、ブラケット15の回動軸(回動軸部13e)がカバー材16と一方の躯体30の固定面31との間に位置している。言い換えると、一方の躯体30の上方において、カバー材16の端部寄りにブラケット15の回動軸が配置されている。これにより、回動支点がカバー材16の端部付近にあるので、
図6(b)に示すように、カバー材16の他方の躯体40側の端部が上方に移動するようにブラケット15が回動しても、ブラケット15の可動範囲が大きく確保されているので、より大きい揺れに対応することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、
図7に示すように、フレーム材11のシート固定部11eの高さとシートホルダー20のシート保持部20aの高さとが段違いとなるようにしている。これにより、2つの躯体30,40が互いに接近した場合であっても、シート固定部11eとシート保持部20aとが接触しにくい構造となっている。
【0042】
(変形例1)
上記した実施形態においては、カバー材16が一枚ものとして説明したが、隙間部Gの幅が大きい場合には、
図8(a)に示すように、複数の分割カバー16c,16dを組み合わせてカバー材16を構成してもよい。また、カバー材16に合わせてブラケット15を複数の分割片15e,15fを組み合わせて構成してもよい。
なお、分割したカバー材16やブラケット15は、例えばカシメ構造やジョイント構造で連結してもよい。
【0043】
(変形例2)
隙間部Gが大きい場合には、揺れが発生したときの2つの躯体30,40の相対的な移動量も大きくなるため、2つの躯体30,40が互いに離れる方向に移動したときにブラケット15の先端脚部15dが他方の躯体40の当接面41から外れてしまうおそれがある。このような場合には、
図8(b)に示すように、他方の躯体40の当接面41から一方の躯体30の方向へ突出したガイド材23を設けるようにしてもよい。このガイド材23を設けることで、ブラケット15の長さを超えて隙間部Gが大きくなった場合でも、ブラケット15の先端脚部15dがガイド材23の上を摺動することで脱落せずにガイドされ、地震などの揺れがおさまったときにブラケット15の先端脚部15dを他方の躯体40の当接面41に戻すことができる。
【0044】
(変形例3)
上記した実施形態においては、一方の躯体30の固定面31に対してカバー材16を略平行に配置する例について説明したが、本発明に係るエキスパンションジョイント装置10は、
図9に示すようなコーナー部に使用してもよい。すなわち、一方の躯体30の固定面32に対してカバー材16を略直交するように配置してもよい。
【0045】
このとき、
図9に示すように、ブラケット15の回動軸(回動軸部13eの中心)からカバー材16の天面までの距離W1が、ブラケット15の回動軸から一方の躯体30の固定面32までの距離W2よりも小さくなるようにすることが望ましい。このように形成することで、
図9(b)に示すように、他方の躯体40側のカバー材16の端部が上方に移動するようにブラケット15が回動しても、カバー材16が一方の躯体30の固定面32に干渉しにくくすることができる。言い換えると、ブラケット15の可動範囲を大きく確保することができ、より大きい揺れに対応することができる。
なお、エキスパンションジョイント装置10をコーナー部に使用する場合には、
図10に示すようなフレーム材11や支持部材13を使用する。
【0046】
コーナー用のフレーム材11は、
図10(a)に示すように、躯体30の固定面32に当接する底板部11aと、底板部11aから突出したリブ状の支持面部11bと、支持面部11bに対向するように底板部11aから突出した背面部11fと、を備えている。支持面部11bは、底板部11aから斜め方向に突出しており、上方(先端)に行くに従って鉤状部11cの方向に接近するように傾斜している。背面部11fは、底板部11aからほぼ垂直に突出している。この背面部11fの内側には略L字形に突出した鉤状部11cが形成されている。また、この背面部11fの先端には止水シート22の端部を保持するためのシート固定部11eが形成されている。
【0047】
コーナー用の支持部材13は、
図10(a)に示すように、断面略コ字形の脚部13aと、脚部13aから突出して設けられた首部13fと、首部13fの先端に設けられた丸棒状の回動軸部13eと、を備えている。脚部13aは、前記したフレーム材11の支持面部11b及び鉤状部11cに係合する部分であり、支持面部11bに係合するネジ固定面13bと、背面部11fに対向する後脚部13gと、が対向して設けられている。ネジ固定面13bは、支持部材13をフレーム材11に取り付けたときに一方の躯体30の固定面32に対して傾斜するように形成されている。後脚部13gの外側には、鉤状部11cに係合する引掛部13cが略L字形で形成されている。
【0048】
このフレーム材11と支持部材13とを係合させるときには、
図10(b)に示すように、支持部材13の引掛部13cをフレーム材11の鉤状部11cに引っ掛け、この状態で引掛部13cを支点にして支持部材13を揺動させ、
図10(c)に示すように支持面部11bとネジ固定面13bとを重ね合わせて係合させる。
【0049】
なお、コーナー用の支持部材13にバネ部材19の第1係合部19aを係合させるときには、
図10に示すように、支持部材13の脚部13aの内側に係合させる。これにより、バネの付勢力が支持部材13に作用したときに、支持部材13をフレーム材11に係合させようとする力が働くようになっている。すなわち、
図10(c)に示すように、第1係合部19aにバネの付勢力が作用すると、支持部材13の脚部13aが、フレーム材11との係合方向(
図10(c)における右方向)に押し付けられるようになっている。このため、バネ部材19の付勢力が作用することで、支持部材13とフレーム材11との係合が外れにくくなっている。
【0050】
(落下防止ワイヤーについて)
上記した各実施形態において、カバー材16の落下を防止するためのワイヤー25を取り付けてもよい。例えば
図11に示すように、カバー材16にワイヤー止め金具26を金具固定ネジ27などで固定するとともに、他方の躯体40にもワイヤー止め金具26を固定する。そして、この一対のワイヤー止め金具26にワイヤー25の両端をそれぞれ固定すれば、仮にカバー材16がブラケット15から外れても、落下を防止することができる。
【0051】
なお、他方の躯体40にワイヤー止め金具26を固定するときに、ホルダー取付ネジ21を使用してシートホルダー20と一緒に固定してしまえば、部品点数と作業量を同時に削減することができる。
【0052】
(その他)
上記した実施形態においては、第1係合部19aを支持部材13に係合させた状態で支持部材13を一方の躯体30に固定し、その後に、第2係合部19bをブラケット15に係合させるようにしたが、これに限らず、第1係合部19aと第2係合部19bとを逆にしてもよい。すなわち、第2係合部19bをブラケット15に係合させた状態で支持部材13を一方の躯体30に固定し、その後に、第1係合部19aを支持部材13に係合させるようにしてもよい。
【0053】
また、上記した実施形態においては、ブラケット15を回動可能に支持する回動軸部13eを支持部材13に一体的に形成した構成としたが、これに限らず、回動軸部13eをブラケット15に一体的に形成してもよい。
【0054】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態によれば、バネ部材19が2つの係合部を備え、前記2つの係合部の一方のみを支持部材13またはブラケット15に係合させた状態で支持部材13を一方の躯体30に固定した後に、係合していない他方の前記係合部を前記支持部材13または前記ブラケット15に係合可能である。このような構成によれば、従来のようにバネの付勢力がかかった状態で取り付けを行う必要がなく、ブラケット15を取り付けた後でバネの付勢力を働かせることができるので、取り付け時に余計な力を入れる必要がなく、作業を容易とすることができる。
【0055】
また、前記バネ部材19は、第1係合部19aと第2係合部19bとの間に設けられたコイル部19dを備え、このコイル部19dに前記ブラケット15を回動可能に支持する回動軸部13eが挿通されている。このような構成によれば、バネ部材19とブラケット15の回動軸部13eとが同芯となっているので、スムーズな回動を実現することができる。また、バネ部材19のコイル部19dに回動軸部13eが挿通されているので、回動軸部13eが案内棒の役目を果たし、コイル部19dの座屈の心配がない。
【0056】
また、前記ブラケット15を回動可能に支持する回動軸部13eは、前記支持部材13または前記ブラケット15に一体的に形成されている。このような構成によれば、回動軸部13eを形材によって形成することができ、部品点数を減らせるとともに、強度不足の不安もない。
【0057】
また、前記一方の躯体30に取り付けられて前記支持部材13に係合するフレーム材11を備え、前記支持部材13は、前記バネ部材19によって前記フレーム材11との係合方向に付勢されている。このような構成によれば、バネ部材19の2つの係合部を係合させたときに、第2係合部19bによってブラケット15を閉じようとする力が働くとともに、第1係合部19aによって支持部材13をフレーム材11に係合させようとする力が働くので、支持部材13をより強固にフレーム材11に固定することができる。
【0058】
また、前記支持部材13は、前記フレーム材11の一部に当接してネジ固定されるネジ固定面13bを備え、前記ネジ固定面13bは傾斜して設けられているので、ネジ固定が容易にできる。
【0059】
また、前記カバー材16を前記固定面31に対して略平行に配置するときに、前記ブラケット15の回動軸が前記カバー材16と前記固定面31との間に位置するようにすれば、ブラケット15の回動軸の位置をできるだけカバー材16の端部(一方の躯体30側の端部)に近付けることができる。これにより、カバー材16の反対側の端部(他方の躯体40側の端部)が上方に移動するようにブラケット15が回動するときの可動範囲が大きく確保され、より大きい揺れに対応することができる。
【0060】
また、前記カバー材16が前記固定面31に対して略直交するように配置するときに、前記ブラケット15の回動軸から前記カバー材16の天面までの距離W1が、前記ブラケット15の回動軸から前記固定面31までの距離W2よりも小さくなるように形成すれば、カバー材16の天面方向に立ち上がり部分が設けられていないので、カバー材16と固定面31との干渉が起きにくくすることができる。これにより、他方の躯体40側のカバー材16の端部が上方に移動するようにブラケット15が回動するときの可動範囲が大きく確保され、より大きい揺れに対応することができる。