特許第6405251号(P6405251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405251
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】貯湯式給湯機
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   F24H9/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-12404(P2015-12404)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-138675(P2016-138675A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(74)【代理人】
【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100191112
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 弘之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝
(72)【発明者】
【氏名】渡部 史生
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4924054(JP,B2)
【文献】 特開2011−149580(JP,A)
【文献】 特開2007−107738(JP,A)
【文献】 特開2013−096623(JP,A)
【文献】 特開2012−112605(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065162(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 1/18
F24H 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段で加熱された湯水を内部に貯湯する、略円筒形の缶体と、
前記缶体の径方向外周部の少なくとも一部を覆うように設けられる、横断面略円弧状の真空断熱材片と、
前記真空断熱材片の縁部を、前記缶体の径方向外側表面に貼り付ける貼付具と
を有する貯湯式給湯機において、
前記真空断熱材片のうち前記貼付具による貼付領域又はその近傍領域の径方向内側表面と、前記缶体の前記径方向外側表面との間に、挟み込むように温度検出具を設けた
ことを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記貼付具は、粘着面を、前記真空断熱材片の縁部の径方向外側表面から前記缶体の前記径方向外側表面にわたって貼り付けた、粘着テープである
ことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記温度検出具は、全方位の温度を検出可能なサーミスタである
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記真空断熱材片は、平板状形状の断熱材母材を横断面略円弧状に曲げて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記温度検出具は、前記真空断熱材片のうち前記貼付具による貼付領域の前記径方向内側表面と、前記缶体の前記径方向外側表面との間に、挟み込むように設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の貯湯式給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給湯用の湯水を貯湯する缶体の外周部に温度検出具と断熱材とを設けた貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯機においては、特許文献1に記載のように、缶体の外周部に、前記缶体内に貯湯されている湯水の温度を検出するための温度検出具と、前記缶体の放熱による温度低下を防ぐための断熱材(発泡成形断熱材及び真空断熱材)を設けたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4924054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、缶体の外周部に対してその周方向の一部に発泡成形断熱材を設け、その設置箇所以外に真空断熱材を巻回し、温度検出具を発泡成形断熱材に設けている。ここで、発泡成形断熱材よりも真空断熱材の方が保温性能が高いことから、例えば缶体の外周部のほぼ全周にわたって真空断熱材を巻回する構成も考えられる。この場合、例えば、横断面がそれぞれ略円弧状の(言い替えれば部分円筒面をそれぞれ有する)複数の真空断熱材を缶体の外周部を覆うように配置し、各真空断熱材の縁部を適宜の貼付具によって缶体の外側表面に貼り付ける。そして、缶体の外側表面と真空断熱材の内側表面の間に、温度検出具を設けることとなる。
【0005】
このとき、温度検出具による高い検出を確保するためには、なるべく温度検出具を缶体の外表面に密着させることが好ましい。しかしながら、前記のように真空断熱材の縁部を貼り付けによって缶体に取り付ける場合、そのままでは真空断熱材が缶体の外側表面から離れて缶体との間に隙間が生じやすくなるため、温度検出具の缶体の外側表面への密着度が低下し、検出精度が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の請求項1では、加熱手段で加熱された湯水を内部に貯湯する、略円筒形の缶体と、前記缶体の径方向外周部の少なくとも一部を覆うように設けられる、横断面略円弧状の真空断熱材片と、前記真空断熱材片の縁部を、前記缶体の径方向外側表面に貼り付ける貼付具と、を有する貯湯式給湯機において、前記真空断熱材片のうち前記貼付具による貼付領域又はその近傍領域の径方向内側表面と、前記缶体の前記径方向外側表面との間に、挟み込むように温度検出具を設けたものである。
【0007】
また、請求項2では、前記貼付具は、粘着面を、前記真空断熱材片の縁部の径方向外側表面から前記缶体の前記径方向外側表面にわたって貼り付けた、粘着テープである。
【0008】
また、請求項3では、前記温度検出具は、全方位の温度を検出可能なサーミスタである。
【0009】
また、請求項4では、前記真空断熱材片は、平板状形状の断熱材母材を横断面略円弧状に曲げて構成されているものである。
【0010】
また、請求項5では、前記温度検出具は、前記真空断熱材片のうち前記貼付具による貼付領域の前記径方向内側表面と、前記缶体の前記径方向外側表面との間に、挟み込むように設けられているものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の請求項1によれば、内部に湯水を貯湯する略円筒形の缶体の径方向外周部に保温用の真空断熱材片が設けられ、さらに、缶体内部の湯水の温度を検出するための温度検出具が設けられる。温度検出具による高い検出精度を確保するためには、なるべく温度検出具を缶体に密着させることが好ましい。
【0012】
ここで、前記真空断熱材は、横断面略円弧状の横断面を備えており(言い替えれば部分円筒面を構成しており)、その縁部が貼付具によって前記缶体の外側表面に貼り付けられている。このように真空断熱材の縁部が貼付によって缶体に取り付けられる場合、貼付領域(言い替えれば縁部)及びその近傍領域は缶体の外側表面に対して比較的密着し缶体との間に隙間は生じにくいものの、前記貼付領域から離れるに従って缶体の外側表面から離れ缶体との間に隙間が生じやすくなる傾向となる。
【0013】
そこで請求項1においては、(上記のように隙間が生じにくい)貼付領域又はその近傍領域と缶体外側表面との間に挟み込むように、前記温度検出具を設ける。これにより、温度検出具を缶体に対し高い密着度で密着させることができるので、検出精度を向上することができる。
【0014】
また、請求項2によれば、粘着テープの裏面側に位置する粘着面を、真空断熱材片の縁部の表面から缶体の表面にわたって貼り付けることで、容易かつ堅固に前記真空断熱材片を缶体に取り付けることができる。そして、その堅固な取り付けにより、前記温度検出具を缶体に対し確実に密着させて検出精度を確実に向上することができる。
【0015】
前記温度検出具が全方位検出型のサーミスタである場合には、サーミスタの周囲に隙間が存在すると、空気の温度を検出してしまう結果、検出精度が特に低下しやすい。そこで、請求項3によれば、前記のように温度検出具であるサーミスタを、貼付領域及びその近傍領域において缶体に密着させることで、前記サーミスタの周囲に生じうる空気層をなくすことができる。この結果、さらに検出精度を向上することができる。
【0016】
また、請求項4によれば、真空断熱材片が、平板状形状の断熱材母材を適宜の方法で横断面略円弧状に曲げることによって製作される。この場合、前記曲げた状態で前記缶体の外周部を覆うように真空断熱材片を配置したとしても、材質上、その後にもとの平板状の形状に戻ろうとする復元力が作用する場合がある。このような復元力が作用すると、真空断熱材片と缶体の外周部との間に特に隙間が空きやすい傾向となるため、前記温度検出具の缶体への密着度が低下して検出精度が低下しやすい。そこで、このような場合に、前記の手法によって温度検出具を缶体に対し確実に密着させることで、特に検出精度の向上効果が大きくなる。
【0017】
また、請求項5によれば、貼付具による貼付位置(貼付領域)の真裏に温度検出具が設けられることとなるので、前記温度検出具を缶体に対しさらに確実に密着させ、検出精度をさらに確実に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の貯湯式給湯機の全体概略構成図
図2】缶体及びその周囲構造の詳細を表す分解斜視図
図3】真空断熱材片の製造時のロール加工設備を表す説明図
図4】サーミスタの周辺における、粘着テープを用いた真空断熱材片の取り付け状態を表す、図2中の矢印IV方向からの矢視図に相当する模式側面図
図5図4中の矢印Va方向から見た上面図、及び、図4中のVb−Vb断面による横断面図
図6図4中のVI−VI断面による縦断面図
図7】真空断熱材片と缶体との間に生じる隙間を説明する横断面図
図8】側部発泡断熱材片を取り付けた状態の缶体の横断面図、及び、サーミスタを露出するよう分解した状態を表す横断面図
図9】サーミスタを露出するよう分解した状態を表す斜視図
図10】貼付領域にサーミスタを位置させる変形例の横断面図
図11】金属テープを用いない変形例の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の一実施の形態を図1図9に基づいて説明する。
【0020】
本実施形態の貯湯式給湯機を備えた貯湯式給湯装置の全体概略構成を図1に示す。図1において、この貯湯式給湯装置100は、時間帯別契約電力の電力単価が安価な深夜時間帯に湯水を沸き上げて貯湯しこの貯湯した湯水を給湯に用いるもので、湯水を貯湯する缶体2(貯湯タンク)を備えた貯湯タンクユニット1と、缶体2内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット3と、台所や洗面所等にそれぞれ設けられた給湯栓4と、例えば給湯栓4の近傍に設けられた給湯リモコン5と、浴槽6と、を有する。
【0021】
前記貯湯タンクユニット1は、筐体となる外装ケース(図示省略)の内部に設置される前記缶体2と、缶体2の上部に接続された出湯管12と、缶体2の下部に接続された給水管13と、出湯管12からの高温水と給水管13から分岐されたバイパス管14からの低温水とを混合するミキシング弁15と、ミキシング弁15の下流に接続された給湯管16と、給湯管16から分岐され浴槽6に接続された湯張り管20と、湯張り管20の開閉を行う湯張り弁21と、出湯管12から分岐するよう接続されて缶体2の過圧を逃す過圧逃し弁23と、給湯管16に設けられた給湯温度センサ17と、給湯管16に設けられた給湯流量センサ18と、給水管13に設けられた給水圧を減圧する減圧弁24と、給水管13に設けられた給水温度センサ19と、湯張り管20を流れる流量を積算する湯張り流量センサ22と、マイクロコンピュータを備えてこの貯湯タンクユニット1の各種機器の制御を行う給湯制御部25とを有する。
【0022】
前記缶体2には、上下方向に沿って複数個のサーミスタ29が配置されている。これらのサーミスタ29が検出する温度情報によって、缶体2内にどれだけの熱量が残っているかが検知され、さらに缶体2内の上下方向の温度分布が検知される。この缶体2とサーミスタ29の構成については、後に詳述する。
【0023】
前記缶体2と前記ヒートポンプユニット3とは、湯水を循環させるヒーポン往き管26及びヒーポン戻り管27からなる加熱循環回路28により接続されている。前記ヒートポンプユニット3は、ヒートポンプ回路34と、ヒーポン循環ポンプ36と、それらの駆動を制御するヒーポン制御部39とを備えている。前記ヒートポンプ回路34は、二酸化炭素冷媒を圧縮する圧縮機30と、凝縮器としての冷媒−水熱交換器31と、電子膨張弁32と、強制空冷式の蒸発器33とで構成されている。前記加熱循環回路28の冷媒−水熱交換器31入口側には、冷媒−水熱交換器31に流入する湯水の温度を検出する熱交入口温度センサ37が設けられ、加熱循環回路28の冷媒−水熱交換器31出口側には、冷媒−水熱交換器31から流出する湯水の温度を検出する熱交出口温度センサ38が設けられている。
【0024】
前記給湯リモコン5には、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ40と、ふろ設定温度を設定するふろ温度設定スイッチ42と、前記ふろ設定温度の湯を湯張り量設定スイッチ41で設定された湯張り量だけ浴槽6へ湯張りして所定時間保温させるふろ自動スイッチ43と、適宜の表示を行う表示部45と、マイクロコンピュータを備え前記給湯制御部25と通信を行うリモコン制御部(図示せず)と、を備えている。
【0025】
次に、図2を用いて、前記缶体2及びその周囲構造の詳細について説明する。なお、図示の煩雑を避けるために、缶体2に接続される各種配管及び前記外装ケース等は省略している。この図2において、缶体2は全体が略円筒形に形成された金属製の中空缶であり、その周囲に、缶体2の径方向外周部をほぼ全周にわたって覆う2つの真空断熱材片52と、この真空断熱材片52と後述のサーミスタ29とを含めた缶体2全体を覆う4つの発泡断熱材片53,54,55,56と、発泡断熱材片53〜56で覆われた缶体2を上部に載置するベース部57と、が設けられている。
【0026】
真空断熱材片52は、例えばアルミフィルムの袋体の内部にグラスウールを芯材として充填させた上でほぼ真空状態とした構造体であり、平板状形状の断熱材母材をロール加工(詳細は後述)されることによって全体が略半円筒形(横断面略円弧状)に形成されている。図示する例では、2つの真空断熱材片52が、缶体2の径方向外側表面に対して、それぞれ対向する略180°の範囲(合わせて略360°全周の範囲)を覆っている。各真空断熱材片52の上縁部、下縁部、及び周方向両端の縁部は、例えばポリプロピレンフィルムからなる貼付具としての粘着テープ59によって缶体2に固定されている(図2中では煩雑防止のために前記周方向両端の縁部に貼り付ける粘着テープ59のみ図示)。
【0027】
前記真空断熱材片52の製作方法の一例を、図3を用いて説明する。前記したように、真空断熱材片52は、平板状形状の断熱材母材をロール加工することにより製作される。すなわち、図3に示すように、このロール加工を行うための加工設備には、2つの下ローラ61,62の間の上方に1つの上ローラ63が配置されている。平板形状(図示省略)の前記断熱材母材52′を、上ローラ63と各下ローラ61,62の間の2箇所の隙間に挿通させる。その後、上ローラ63を下方に移動させて断熱材母材52′を押圧しつつ(白抜き矢印参照)、各ローラ61,62,63を回転させて真空断熱材片52を搬送する(矢印参照)ことにより、断熱材母材52′を湾曲させ、全体が横断面略円弧状に曲がった前記真空断熱材片52を得ることができる。
【0028】
発泡断熱材片53〜56は、機械的な剛性を有する材料(例えば耐熱性発泡ポリスチレン)からなる成型品であり、前記缶体2の上面を覆うよう略半球形に形成された上部発泡断熱材片53と、前記缶体2の下面を覆うよう略半球形に形成された下部発泡断熱材片54と、前記缶体2の径方向外側表面に対してそれぞれ対向する180°の範囲で覆うよう略半円筒形に形成された2つの側部発泡断熱材片55,56とを含むものである。なお、図中では、前記下部発泡断熱材片54は前記ベース部57と一体に設けられているものである。また、前記2つの側部発泡断熱材片55,56の内径は、缶体2の外周表面を覆った前記真空断熱材片52の外径と略同じとなるように設定されており、発泡断熱材片55,56は、2つの前記真空断熱材片52の径方向外周部をほぼ全周にわたって覆う。
【0029】
以上の基本構成を備える貯湯式給湯装置100において、前記図2に示すように、缶体2の径方向外側表面に、缶体2内部の湯水の温度を検出するための5個のサーミスタ29が上下方向一列に配置されている。サーミスタ29は、例えば全体が樹脂で覆われ、直径が約3mm程度に形成されており、全方位(すなわち周囲360°方向)の温度が検出可能である。5個のサーミスタ29のそれぞれは、金属テープ58(図2では破線にて略示)で覆われるように缶体2の径方向外側の表面に貼り付けられて固定される。そして、前記真空断熱材片52は、このようにしてサーミスタ29が貼り付けられた状態の缶体2の外側表面を覆うようにしつつ、前記粘着テープ59によって缶体2に固定される。
【0030】
次に、前記サーミスタ29の周辺における、粘着テープ59を用いた真空断熱材片52の取り付け状態を、図4図5図6により説明する。なお、図示の煩雑を避けるために、缶体2、真空断熱材片52、サーミスタ29、金属テープ58、及び粘着テープ59のみを図示し、それら以外の部材の図示は省略している。
【0031】
図4図5、及び図6において、缶体2の径方向外周部に、2つの真空断熱材片52がほぼ全周にわたって配置されている。このとき、粘着テープ59の裏面側となる粘着面が各真空断熱材片52の上縁部52U、下縁部52L、及び周方向両端縁部52Sの径方向外側表面から缶体2の径方向外側表面にわたるように、粘着テープ59が貼り付けられ、これによって各真空断熱材片52が前記缶体2の径方向外側表面に取り付けられる。
【0032】
このとき、缶体2の径方向外側表面に上下方向に配置された前記5個のサーミスタ29のうち、最下段の1個を除く4個のサーミスタ29が、図6に示すように、真空断熱材片52の径方向内側表面と缶体2の外側表面との間に挟み込まれるように配置される。詳細には、図4及び図5で左・右に示される2つの真空断熱材片52のうち、図示右側に示される真空断熱材片52の図示左側端部の近傍において、粘着テープ59による貼付領域Cの近傍領域C′(図5(b)中の拡大図参照)の径方向内側表面と前記缶体2の径方向外側表面との間に、配置されている。
【0033】
ここで、上記のようなテープ貼り付けによる固定方式とした場合、真空断熱材片52のうち、前記粘着テープ59による貼付領域C(言い替えれば前記縁部52S)及びその近傍領域C′は缶体2の外側表面に対して比較的密着し缶体2との間に隙間Sは生じにくいものの、前記貼付領域Cから離れるに従って缶体2の外側表面から離れ缶体2との間に隙間Sが生じやすくなる傾向となる。このため、図7(a)に比較例として示すようにサーミスタ29を真空断熱材片52の周方向中央部付近に配置した(言い替えれば真空断熱材片52の周方向中央部の径方向内側表面と缶体2の径方向外側表面との間に挟み込まれるように配置した)場合には、缶体2の径方向外側表面に対するサーミスタ29の密着度が低下する。一般に、前記サーミスタ29による高い検出精度を確保するためには、なるべくサーミスタ29を缶体2の外表面に密着させることが好ましいため、上記のように密着度が低下するとサーミスタ29の検出精度が低下するおそれがある。
【0034】
本実施形態においては、上記のように隙間Sが生じにくい真空断熱材片25の粘着テープ59の貼付領域Cの近傍領域C′と、缶体2の外側表面との間に、前記サーミスタ29を設けている(図7(b)参照)。これにより、サーミスタ29を缶体2に対し高い密着度で密着させ、検出精度を向上することができる。
【0035】
なお、上記では2つの前記側部発泡断熱材片55,56が2つの真空断熱材片52の径方向外周側を覆うように設けられたが、これに限られず、3つ以上の発泡断熱材片を用いても良いし、例えばΩ状等の横断面形状を備えた1つの発泡断熱材片を用いても良い。また押圧対象となる真空断熱材片52についても、上記同様、2つには限られず、3つ以上であってもよいし、例えばΩ状等の横断面形状を備えた1つの真空断熱材片であってもよい。いずれの場合も、1つの真空断熱材片の粘着テープ59の近傍領域C′(又は貼付領域C)と缶体2の外側表面との間に前記サーミスタ29を設けることで、サーミスタ29を缶体2に対し高い密着度で密着させることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、真空断熱材片52のうち隙間Sが生じにくい粘着テープ59の貼付領域Cの近傍領域C′と、缶体2の外側表面との間に、挟み込むようにサーミスタ29を設ける。これにより、サーミスタ29を缶体2に対し高い密着度で密着させることができるので、検出精度を向上することができるものである。
【0037】
また、缶体2の使用開始後に、サーミスタ29の何らかの不具合の発生や信頼性保持のために適宜のメンテナンス(交換を含む)を行う場合がある。その際、前記のようにサーミスタ29が缶体2の径方向外側表面に設けられていることから、缶体2の外部から前記メンテナンス作業を行うためには、最外周の側部発泡断熱材片55,56とその内側の真空断熱材片52とを隔てた奥にあるサーミスタ29を外部に露出させなければならない。これには、強度成形品である前記側部発泡断熱材片55,56の取り外しや、その内側の前記真空断熱材片52の剥離などといった煩雑な分解作業が必要となる。
【0038】
本実施形態では、前記図5(b)に対応する図8(a)に示すように、2つの真空断熱材片52の径方向外周部を覆うように設けた2つの側部発泡断熱材片55,56は、例えば、それぞれの突き合わされた周方向端部どうしの径方向外側表面にわたって固定テープ60が貼り付けられることにより、互いに固定されている。したがって、前記メンテナンス作業の際には、図8(a)に対応する図8(b)や図9に示すように、前記固定テープ60による2つの側部発泡断熱材55,56の固定を解除して真空断熱材片52を露出した後、サーミスタ29が配置されている側の真空断熱材片52の周方向端部の一部をめくるだけでサーミスタ29の配置列全体を簡単に外部に露出させることができる。この工程では、側部発泡断熱材56の取り外しや缶体2からの真空断熱材片52の剥離などといった分解作業量を最小限に抑え、容易にサーミスタ29を外部に露出させることができるため、保守性に優れるものである。
【0039】
また、本実施形態では特に、粘着テープ59の裏面側に位置する粘着面を、真空断熱材片52の縁部の表面から缶体2の表面にわたって貼り付ける。これにより、容易かつ堅固に真空断熱材片52を缶体2に取り付けることができ、その堅固な取り付けにより、サーミスタ29を缶体2に対し確実に密着させて検出精度を確実に向上することができるものである。
【0040】
また、本実施形態では特に、前記サーミスタ29は、全方位の温度を検出可能に構成されたものである。このように全方位検出型のサーミスタである場合には、サーミスタの周囲に隙間が存在すると、空気の温度を検出してしまう結果、検出精度が特に低下しやすい。本実施形態によれば、前記のようにサーミスタ2を、貼付領域Cの近傍領域C′において缶体2に密着させることで、サーミスタの周囲に生じうる空気層をなるべくなくすことができる。この結果、さらに検出精度を向上することができるものである。
【0041】
また、本実施形態では特に、前記図3を用いて説明したように、真空断熱材片52が、平板状形状の断熱材母材52′を横断面略円弧状に曲げることによって製作される。この場合、前記曲げた状態で缶体2の外周部を覆うように真空断熱材片52を配置したとしても、前記のように内部にグラスウールを芯材として充填している材質上、その後にもとの平板状の形状に戻ろうとする復元力が作用する場合がある。このような復元力が作用すると、前記図7(a)及び図7(b)を用いて説明したような、真空断熱材片52と缶体2の外周部との間の隙間Sが特に生じやすい傾向となるため、サーミスタ29の缶体2への密着度が低下して検出精度が低下しやすい。そこで、このような場合に、本実施形態の前記の手法によってサーミスタ29を缶体2に対し確実に密着させることで、特に検出精度の向上効果が大きくなるものである。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記図5(b)に対応する図10に示すように、サーミスタ29が、真空断熱材片52のうち粘着テープ59による貼付領域C(近傍領域C′でなく)の径方向内側表面と缶体2の径方向外側表面との間に、挟み込むように設けられてもよい。この場合、粘着テープ59による貼付位置Cの真裏にサーミスタ29が設けられることとなるので、サーミスタ29を缶体2に対しさらに確実に密着させ、検出精度をさらに確実に向上することができるものである。
【0043】
また、さらに上記図5(b)に対応する図11に示すように、金属テープ58を用いず、サーミスタ29を真空断熱材片52が直接押圧して缶体2へ密着させる構成としてもよい。この場合でも、隙間Sが生じにくい粘着テープ59の前記近傍領域C′(又は貼付領域Cでもよい)と缶体2の外側表面との間に挟み込むようにサーミスタ29を設けることで、上記同様、サーミスタ29の検出精度を向上させる効果が得られるものである。
【0044】
また、上記実施形態では、粘着テープ59が一方の面(裏面)にだけ粘着面を有し、その粘着面を真空断熱材片52の前記縁部52Sの径方向外側表面から缶体2の径方向外側表面にわたって貼り付けていたが、これに限られない。すなわち、前記粘着テープ59に代えて、両面に粘着面を有するいわゆる両面テープを用い、真空断熱材片52の前記縁部52Sの径方向内側表面を缶体2の径方向外側表面に粘着させても良い。この場合も、前記真空断熱片52のうち前記両面テープによる貼付領域(両面テープが貼り付けられた領域)又はその近傍領域の径方向内側表面と缶体2の径方向外側表面との間にサーミスタ29を設けていれば、前記実施形態と同等の効果が得られるものである。
【0045】
また、上記実施形態では、加熱手段をヒートポンプユニット3で構成した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、太陽熱、ガス、液体燃料による給湯機や、電熱ヒータによる電気温水器や、コージェネレーションシステムの廃熱回収装置等を前記加熱手段として用いても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 貯湯タンクユニット(貯湯式給湯機)
2 缶体
3 ヒートポンプユニット(加熱手段)
4 給湯栓
6 浴槽
12 出湯管
13 給水管
29 サーミスタ(温度検出具)
52 真空断熱材片
59 粘着テープ(貼付具)
100 貯湯式給湯装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11