特許第6405254号(P6405254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6405254魚釣用リールおよび魚釣用リールの操作ノブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405254
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】魚釣用リールおよび魚釣用リールの操作ノブ
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20181004BHJP
   A01K 89/033 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   A01K89/015 F
   A01K89/015 N
   A01K89/033
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-15526(P2015-15526)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-136931(P2016-136931A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野上 雅行
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−278532(JP,A)
【文献】 特開2011−072237(JP,A)
【文献】 特開2009−171914(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3005455(JP,U)
【文献】 実開昭59−059774(JP,U)
【文献】 特公昭49−016319(JP,B1)
【文献】 実用新案登録第2576090(JP,Y2)
【文献】 米国特許第06402073(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 − 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に設けられた操作軸に連結され、前記リール本体のフレームおよび外側板の上方に延出するアーム部と、前記アーム部に固定され、前記フレームおよび前記外側板の上方に配置される操作ノブと、を含む操作レバーを備えた魚釣用リールであって、
前記アーム部と前記操作ノブには、固定時の前記操作ノブの回転を規制する回り止め規制部が設けられており、
前記操作ノブは、前記回り止め規制部を介して前記アーム部に左右方向から着脱可能であり、
前記回り止め規制部は、前記アーム部と前記操作ノブとの一方に設けられた孔からなる受け部と、他方に設けられ前記受け部に挿入される係合突部とを備えており、
前記受け部は、内周面の一部に平面を有しており、
前記係合突部は、外周面の一部に前記受け部の平面に当接する平面を有していることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記回り止め規制部は、前記アーム部と、前記操作ノブとの連結部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
釣糸の係止が可能な環状の弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記操作ノブの外周に設けられた環状の凹部内に装着されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
釣糸の係止が可能な環状の弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記アーム部と前記操作ノブとの間に挟持されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
魚釣用リールに備わる操作用のアーム部に固定され、リール本体のフレームおよび外側板の上方に配置される魚釣用リールの操作ノブであって、
前記アーム部の取付部に係合し、固定時の回転を規制する回り止め規制部を備え、
前記回り止め規制部を介して前記アーム部に左右方向から着脱可能であり、
前記回り止め規制部は、
前記取付部が挿入される孔であって内周面の一部に回り止めとして機能する平面を有する受け部、または前記取付部に挿入される突部であって外周面の一部に回り止めとして機能する平面を有する係合突部を備えることを特徴とする魚釣用リールの操作ノブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールおよび魚釣用リールの操作ノブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、両軸型の魚釣用リールとしては、スプ−ルを巻き取り駆動可能にするクラッチオン位置と、スプールをフリー状態にするクラッチオフ位置とに切り換えるクラッチ機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
クラッチ機構は、例えば、リール本体の外側板に設けられたクラッチレバーを備えており、このクラッチレバーの操作によってクラッチオン位置とクラッチオフ位置とに切り換えることができる。クラッチレバーは、アーム部と、アーム部の端部に固着された操作ノブとを備えている。アーム部と操作ノブとは、強度を確保するためにカシメ等によって固着されている。また、アーム部と操作ノブとを鍛造成形によって一体に形成したものも知られている。
【0003】
キャスティング操作時には、操作ノブに指を当ててクラッチオフ位置にクラッチレバーを操作し、釣糸の放出を行う。釣糸放出操作の終了後には、ハンドルを回転操作することで、クラッチオン位置にクラッチレバーが戻され、クラッチ機構が復帰される。
【0004】
ところで、両軸型の魚釣用リールを用いた釣りとして、近年、重いジグと呼ばれるルアーを高速で巻き取るジギング釣りが人気である。ジギング釣りでは、釣竿をシャクリつつ手でハンドルのツマミを握持して高速で回転操作し、クラッチレバーを操作してクラッチオフ位置にして釣糸の放出を行い、その後、クラッチオン位置にしてシャクリを繰り返す操作が行われる。例えば、底取りを意識したジギング釣りでは、海底の起伏に合わせてジグを上下させるために、クラッチのオンオフ操作が頻繁に繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−100624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記のようにクラッチのオンオフ操作が頻繁に繰り返される釣りでは、操作性向上の観点から、釣人の操作し易い位置にクラッチレバーの操作ノブが配置されることが望ましい。しかしながら、操作し易い位置は、釣人それぞれで異なるため、各釣人の好みやニーズに対応しようとすると、数種類の魚釣用リールを用意しなければならず、コスト高となってしまう。このことは、魚釣用リールに備わるその他の操作レバーについて、ニーズに対応しようとした場合にも同様である。なお、釣人のニーズに対応してクラッチレバーの全体を交換することも考えられるが、クラッチレバー全体の取り外し作業や取り付け作業が煩雑であるとともにコスト面からも好ましくない。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、釣人のニーズに対応した操作レバーを安価にしかも簡単に変更することができ、操作性の向上を図ることができる魚釣用リールおよび魚釣用リールの操作ノブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明の魚釣用リールは、リール本体に設けられた操作軸に連結され、前記リール本体のフレームおよび外側板の上方に延出するアーム部と、前記アーム部に固定され、前記フレームおよび前記外側板の上方に配置される操作ノブと、を含む操作レバーを備えた魚釣用リールであって、前記アーム部と前記操作ノブには、固定時の前記操作ノブの回転を規制する回り止め規制部が設けられており、前記操作ノブは、前記回り止め規制部を介して前記アーム部に左右方向から着脱可能であり、前記回り止め規制部は、前記アーム部と前記操作ノブとの一方に設けられた孔からなる受け部と、他方に設けられ前記受け部に挿入される係合突部とを備えており、前記受け部は、内周面の一部に平面を有しており、前記係合突部は、外周面の一部に前記受け部の平面に当接する平面を有していることを特徴とする。
【0009】
この魚釣用リールによれば、アーム部に対して操作ノブが着脱可能であるので、釣人の好みやニーズに合わせて操作ノブを付け替えることができる。また、回り止め規制部によって、アーム部に対して回り止め規制された状態に操作ノブを固定することができる。
【0010】
また、前記回り止め規制部は、前記アーム部と、前記操作ノブとの連結部分に設けられているとよい。このようにすると、アーム部に操作ノブを連結する際に、アーム部に操作ノブが回り止め規制されて固定される。
【0011】
また、釣糸の係止が可能な環状の弾性部材を、前記操作ノブの外周に設けられた環状の凹部内に装着するのがよい。このようにすると、環状の弾性部材を用いて操作ノブに釣糸を係止することができる。
【0012】
また、釣糸の係止が可能な環状の弾性部材を、前記アーム部と前記操作ノブとの間に挟持するのがよい。このようにすると、アーム部と操作ノブとに挟まれて弾性部材が軸方向に潰れる状態となり、釣糸の保持力を増大させることができる。
【0013】
また、本発明の魚釣用リールの操作ノブは、魚釣用リールに備わる操作用のアーム部に固定され、リール本体のフレームおよび外側板の上方に配置される魚釣用リールの操作ノブであって、前記アーム部の取付部に係合し、固定時の回転を規制する回り止め規制部を備え、前記回り止め規制部を介して前記アーム部に左右方向から着脱可能であり、前記回り止め規制部は、前記取付部が挿入される孔であって内周面の一部に回り止めとして機能する平面を有する受け部、または前記取付部に挿入される突部であって外周面の一部に回り止めとして機能する平面を有する係合突部を備えることを特徴とする。
【0014】
この操作ノブによれば、アーム部に対して着脱可能であるので、釣人の好みやニーズに合わせて付け替えることができる。また、回り止め規制部によって、操作ノブをアーム部に対して回り止め規制された状態に固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の魚釣用リールによれば、釣人の好みやニーズに合わせた操作ノブに簡単に付け替えることができ、操作性の向上を図ることができる魚釣用リールが得られる。しかも、操作レバー全体を交換する必要がなく、操作ノブを付け替えるだけでよいので、安価である。また、回り止め規制部によって、アーム部に対して回り止め規制された状態に操作ノブを固定することができるので、操作時のガタつきや操作ノブのアーム部に対する緩みが防止され、好適な操作性を確保することができる。
【0016】
また、回り止め規制部がアーム部と操作ノブとの連結部分に設けられた構成では、アーム部に操作ノブを連結する際に、回り止め規制部によってアーム部に操作ノブが回り止めされるので、別途回り止め規制のための特別な固定を行う必要がなく、組付性がよい。したがって、好適な操作性を確保しつつ、操作ノブの交換性に優れた魚釣用リールが得られる。
【0017】
また、操作ノブの環状の凹部内に環状の弾性部材が係止される構成では、環状の弾性部材を用いて操作ノブに釣糸を係止することができるので、釣糸の取り回しがよく使い勝手に優れた魚釣用リールが得られる。また、弾性部材が操作ノブのすべり止めとして機能し、操作レバーの操作性が向上する。
【0018】
また、アーム部と操作ノブとの間に弾性部材が挟持される構成では、弾性部材が操作ノブの軸方向に潰れる状態となって釣糸の保持力を増大させることができるので、操作レバーに釣糸をより好適に係止することができる。特に、使用する釣糸が細径である場合にも好適に係止することができる。また、弾性部材の反力によって、操作ノブの緩みが好適に抑制される。
【0019】
また、本発明の魚釣用リールの操作ノブによれば、釣人の好みやニーズに合わせて簡単に付け替えることができ、操作性の向上を図ることができる。しかも、操作レバー全体を交換する必要がないので、安価である。また、操作ノブは、回り止め規制部によって、アーム部に対して回り止め規制された状態に固定することができるので、操作時のガタつきが防止され、好適な操作性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールの全体構成を示す縦断面図である。
図2】(a)はクラッチレバーを示す拡大後面図、(b)は(a)の縦断面図である。
図3】(a)は操作ノブを示す拡大後面図、(b)は拡大右側面である。
図4】(a)はクラッチレバーの斜視図、(b)はアーム部側から見たクラッチレバーの分解斜視図、(c)は操作ノブ側から見たクラッチレバーの分解斜視図である。
図5】(a)(b)はクラッチレバー操作時の様子を示す説明図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールの操作ノブを示す図であり、(a)は要部拡大縦断面図、(b)は操作ノブ側から見たクラッチレバーの分解斜視図、(c)は操作ノブに釣糸を掛けた状態を示す斜視図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る魚釣用リールの操作ノブを示す図であり、(a)は要部拡大縦断面図、(b)はOリングが配置される部分をさらに拡大した縦断面図、(c)は操作ノブ側から見たクラッチレバーの分解斜視図、(d)はアーム部側から見たクラッチレバーの斜視図である。
図8】第1変形例の魚釣用リールの操作ノブを示す図であり、(a)は要部拡大縦断面図、(b)はアーム部側から見たクラッチレバーの分解斜視図、(c)は操作ノブ側から見たクラッチレバーの分解斜視図である。
図9】第2変形例の魚釣用リールの操作ノブを示す図であり、(a)はアーム部側から見たクラッチレバーの分解斜視図、(b)は操作ノブ側から見たクラッチレバーの分解斜視図である。
図10】第3変形例の魚釣用リールの操作ノブを示す図であり、(a)は要部拡大縦断面図、(b)はアーム部側から見たクラッチレバーの分解斜視図、(c)は操作ノブ側から見たクラッチレバーの分解斜視図である。
図11】第4変形例の魚釣用リールの操作ノブを示す図であり、(a)は要部拡大縦断面図、(b)はアーム部側から見たクラッチレバーの分解斜視図、(c)は操作ノブ側から見たクラッチレバーの分解斜視図である。
図12】第5変形例の魚釣用リールの操作ノブクラッチレバーを示す図であり、(a)はアーム部側から見たクラッチレバーの分解斜視図、(b)は操作ノブ側から見たクラッチレバーの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、「上下」「左右」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。また、以下では、操作ノブが設けられる操作レバーとして、リール本体の右側板に設けられたクラッチレバーを例にして説明するが、操作ノブが設けられる操作レバーをクラッチレバーに限定する趣旨ではなく、また、リール本体の右側板に設けられるものに限定する趣旨ではない。
【0022】
(第1実施形態)
図1に示すように、魚釣用リールのリール本体1は、左右フレーム2a,2bと、これら左右フレーム2a,2bに装着される左右側板(外側板)3a,3bと、を備えている。左右フレーム2a,2bは、複数の支柱を介して一体化されており、下部の支柱には、リール脚2cが設けられている。リール脚2cは、図示しない釣竿のリールシートに装着される。左右フレーム2a,2bは、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属材から形成されている。
【0023】
左右フレーム2a,2b間には、スプール軸5が軸受6a,6bを介して回転可能に支持されている。スプール軸5には、釣糸が巻回されるスプール5aが取り付けられている。スプール5aは、ハンドル7aの回転操作に連動して回転する。ハンドル7aは、右側板3bから突出したハンドル軸7の端部に取り付けられている。
【0024】
右フレーム2bと右側板3bとの間には空間が形成され、この空間には、駆動機構10、公知のドラグ機構13およびクラッチ機構20が配設されている。
駆動機構10は、ハンドル7aの回転運動をスプール軸5に伝達する。駆動機構10は、駆動歯車11と、この駆動歯車11に噛合するピニオン12とを備えている。駆動歯車11は、釣糸巻き取り時にハンドル7aが回転操作されると、ハンドル軸7の時計周りに回転する。また、駆動歯車11は、ドラグ機構13により付与されたドラグ力に抗して図示しない釣糸が引き出された際に、ハンドル軸7の反時計回りに回転する。ドラグ機構13は、公知のように、駆動歯車11に係合しており、駆動歯車11に当接する複数の摩擦板13aを備えている。ドラグ機構13は、魚釣時にスプール5aから釣糸が繰り出された際にスプール5aに所定のドラグ力を付与する。
ハンドル軸7の端部には、回動操作可能にドラグレバー14が取り付けられている。ドラグレバー14の回動操作で駆動歯車11に対する圧接力が調節され、スプール5aに対するドラグ力が調節される。
【0025】
ハンドル軸7には、公知のように、右側板3bとの間に設けられた一方向クラッチ(楔作用を利用した転がり式一方向クラッチ)Kが装着されている。ハンドル軸7は、この一方向クラッチKによって釣糸巻き取り方向の回転が許容され、釣糸繰り出しに伴う逆回転が防止されている。
【0026】
ピニオン12は、スプール軸5と同軸上に設置されており、ピニオン軸(スプール軸5であってもよい)12aに沿って軸方向に移動可能となっている。ピニオン軸12aは、スプール軸5と一体に設けられており、軸覆い部材3cの内面に当付くことで軸方向における移動が規制されている。そして、軸覆い部材3cが回動操作されることでピニオン軸12aに対して所定の押圧力がブレーキ力として付与されるように構成されている。
ピニオン12は、駆動歯車11の回転をスプール5a(スプール軸5)に伝達する部材である。ピニオン12の外周には、円周溝12bが形成されており、この円周溝12bに、後記するクラッチ機構20のヨーク26が係合して、ピニオン12を軸方向に移動させるように構成されている。すなわち、ピニオン12が軸方向に移動することで、スプール軸5との間で継脱がなされ、クラッチON状態(動力伝達状態)/クラッチOFF状態(動力遮断状態)に切り換えられるように構成されている。
【0027】
クラッチ機構20は、スプール5aを釣糸巻き取り状態と釣糸放出状態とに切り換えるものである。クラッチ機構20は、クラッチプレート25と、ヨーク26と、支持部材27と、クラッチレバー30(操作レバー)と、を備えている。
クラッチプレート25は、スプール軸5とピニオン12とのクラッチ係合を係脱させて、スプール5aへ伝達されるハンドル7aの回転力(動力)を伝達/遮断するものである。
【0028】
クラッチプレート25は、右フレーム2b上に支持部材27を介して移動可能に設けられている。クラッチプレート25は、公知のように、右側板3bに回動可能に振り分けばね(不図示)で振り分け付勢されているクラッチレバー30の連結ピン281と、クラッチプレート25の長孔251と、の係合によって、クラッチON位置(図1の位置)、およびクラッチOFF位置(不図示)に振り分け保持される。そして、クラッチプレート25は、クラッチレバー30の回動操作によって前記2つの位置を取り得るように構成されている。
【0029】
ハンドル軸7には、クラッチ復帰用回転体となるラチェット7bが固定されている。クラッチOFF状態でハンドル7aを巻き取り操作すると、ラチェット7bの回転によりクラッチ作動片(不図示)がクラッチON状態に振り分けられ、この振り分けによってクラッチプレート25がクラッチON位置に自動的に復帰する。なお、クラッチON位置に復帰したクラッチ作動片は、振り分けばね(不図示)のばね力でそのままクラッチON状態に保持される。
なお、クラッチの復帰は、クラッチレバー30を押し上げ操作することでも行うことが可能である。
【0030】
クラッチレバー30は、右側板3bに回動可能に取り付けられている。クラッチレバー30はクラッチカム282を有している。クラッチカム282には連結ピン281が嵌入固定されている。
【0031】
クラッチレバー30は、図2(a)(b)に示すように、アーム部31と、操作ノブ32と、固定ねじ33とを備えている。アーム部31と操作ノブ32との連結部分には、アーム部31と操作ノブ32との回り止めを規制する回り止め規制部が設けられている。回り止め規制部は、アーム部31側に設けられた受け部(取付部)31aと、操作ノブ32側に設けられ、受け部31aに係合する係合突部32aとから構成されている。回り止め規制部の詳細は後記する。
【0032】
アーム部31の基端部311には、支持孔312が形成されている、支持孔312には、左側(右側板3b側、図1参照)から支持軸(操作軸)283の先端部が挿入される。一方、支持孔312の右側(右側板3bと反対側)からは、固定ピン284が挿入される。固定ピン284は、支持孔312内において、支持軸283の先端凹部(不図示)に挿入され接着剤等によって固着される。これによって、アーム部31に支持軸283が抜け止め固定されている。
【0033】
アーム部31の先端部には、回り止め規制部を構成する受け部31aが凹設されている。受け部31aは、図4(b)(c)に示すように、左右方向に貫通する孔であり、断面略小判形状に形成されている。受け部31aは、図4(c)に示すように、一対の円弧面31b,31bと、円弧面31b,31bを繋ぐ平面31c,31cとを備えている。受け部31aの左開口は、図4(c)に示すように、アーム部31の左側面に開口している。また、受け部31aの右開口は、図4(b)に示すように、アーム部31の右側面に形成された大径の開口部313内に開口している。大径の開口部313内には、固定ねじ33の頭部が配置される。
なお、アーム部31の胴部には空洞部315が形成されている。
【0034】
操作ノブ32は、図2(a)に示すように、アーム部31の先端部の左側部に固定される。操作ノブ32は、図4各図に示すように、略円柱状を呈している。操作ノブ32の右側部には、図2(b)、図3(a)(b)に示すように、回り止め規制部を構成する係合突部32aが右側方に向けて突設されている。係合突部32aは、操作ノブ32の中心軸に沿って突出しており、断面略小判形状を呈している。係合突部32aは、アーム部31の受け部31aに対して係合可能であり、一対の円弧面32b,32bと、円弧面32b,32bを繋ぐ平面32c,32cとを備えている。
【0035】
操作ノブ32には、図2(b)、図3(b)、図4(b)(c)に示すように、中心軸に沿うねじ穴32dが形成されている。ねじ穴32dは、係合突部32aの端面に開口している。ねじ穴32dには、固定ねじ33のねじ部33dが螺合可能である。
【0036】
操作ノブ32の組み付けは、図4(b)(c)に示すように、アーム部31の左右方向(アーム部31の支持軸238の軸方向と同方向)から行う。すなわち、アーム部31の受け部31aに、左側方から操作ノブ32を近づけ、係合突部32aを受け部31aに係合する。その後、アーム部31の右側方から固定ねじ33を近づけ、開口部313を通じて操作ノブ32のねじ穴32dに固定ねじ33のねじ部33dを螺合する。そして、固定ねじ33を締め付けることで、アーム部31に操作ノブ32が固定される。操作ノブ32は、回り止め規制部によって軸周りに回動不能に固定される。また、操作ノブ32は、軸方向においても、固定ねじ33の締め付けによってアーム部31にガタつきなく固定される。
【0037】
図5にクラッチレバー操作時の様子を示す。図5(a)では、操作ノブ32を操作する場合の親指Pの掛り具合を示している。クラッチレバー30の回動操作時には、親指Pの腹P1の一部分を操作ノブ32に掛けて、クラッチレバー30をオンオフ位置に回動させることができる。この場合、操作ノブ32の角部32mに親指Pの腹P1の一部を押し当てるようにしたオンオフ操作も可能である。
なお、角部32mは面取りされており、長時間、親指Pの腹P1を当て易くなっている。
【0038】
また、図5(b)では、図5(a)の操作ノブ32よりも軸方向(左右方向)に長い操作ノブ32Aに付け替えた例を示している。この例では、親指Pの腹P1の略全体を操作ノブ32に掛けるようにして、クラッチレバー30を回動操作することが可能となる。この場合、操作ノブ32Aと親指Pとの接触面積が大きくなるので、その分、操作性が向上する。また、操作ノブ32Aが左右方向に延在して、リール本体1を握持する手のひら側に近づくこととなるので、比較的手の小さい釣人でも、リール本体1を握持したまま、クラッチレバー30を容易に操作することが可能となる。
【0039】
以上、本実施形態の魚釣用リールおよび魚釣用リールの操作ノブ32によれば、釣人の好みやニーズに合わせた操作ノブ32(32A)に簡単に付け替えることができ、操作性の向上を図ることができる。しかも、クラッチレバー30の全体を交換する必要がなく、操作ノブ32を付け替えるだけでよいので、安価である。また、回り止め規制部によって、アーム部31に対して回り止め規制された状態に操作ノブ32を固定することができるので、操作時のガタつきや操作ノブ32のアーム部31に対する緩みが防止され、好適な操作性を確保することができる。
【0040】
また、アーム部31に操作ノブ32を連結する際に回り止め規制部によって操作ノブ32が回り止め固定されるので、回り止め規制のための特別な固定を行う必要がなく、組付性がよい。したがって、好適な操作性を確保しつつ、操作ノブ32の交換性に優れる。
【0041】
また、アーム部31に対して、操作ノブ32および固定ねじ33が左右方向から組み付けられる(左右方向と異なる上下方向からの組み付けを必要としない)ので、組み付けが簡単である。また、組み付け方向が一方向であるので、高い組付精度を要求されることがなく、生産性に優れる。したがって、操作ノブ32を付け替え可能な構成でありながら、製造コストの増加抑制を図ることができる。
【0042】
また、固定ねじ33は、操作ノブ32の軸方向に挿入されて螺合されるので、操作ノブ32の長さに合わせて、固定ねじ33のねじ部33dを長くすることができる。したがって、操作ノブ32を安定して支持することができる。また、固定ねじ33のねじ部33dを長くすることができるので、操作ノブ32の取付強度の向上を図ることができる。このことは、操作性の向上に寄与する。
【0043】
(第2実施形態)
図6を参照して第2実施形態の魚釣用リールに適用される操作ノブについて説明する。本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、操作ノブ32の外周に環状の弾性部材としてのOリング35を装着した点にある。
【0044】
操作ノブ32の外周面には、環状の凹部(凹溝)34が形成されている。凹部34は、操作ノブ32の先端部側(左端部側)に形成されている。凹部34内には、2本のOリング35,35が軸方向に並べて装着される。各Oリング35は、凹部34内から径方向に若干突出する(最外周部分が突出する)ように配置されている。つまり、釣人が操作ノブ32に指を載せたときに、載せた指にOリング35,35の感触が伝わるように、凹部34の深さや、Oリング35の太さが設定されている。
なお、Oリング35は、凹部34内において周方向に移動しないように、若干の張力をもって凹部34内に装着されている。
【0045】
本実施形態によれば、図6(c)に示すように、Oリング35を用いて操作ノブ32に釣糸Lを係止することができる。これにより、釣糸Lの取り回しがよく使い勝手に優れた魚釣用リールが得られる。また、Oリング35が操作ノブ32を操作する際のすべり止めとして機能する。したがって、クラッチレバー30の操作性が向上する。
【0046】
なお、Oリング35は軸方向に2本並べて配置したが、これに限られることはなく、1本でもよいし、3本以上配置してもよい。1本配置した場合には、凹部34の側壁34aとOリング35との間に釣糸Lを係止することができる。なお、Oリング35を2本以上配置した場合にも、凹部34の側壁34aとOリング35との間に釣糸Lを係止することが可能である。
【0047】
また、Oリング35は、凹部34内から径方向に若干突出する(最外周部分が突出する)ように配置したが、これに限られることはなく、凹部34内に収まる状態に配置してもよい。
【0048】
(第3実施形態)
図7を参照して第3実施形態の魚釣用リールに適用される操作ノブについて説明する。本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、アーム部31と操作ノブ32との間に環状の弾性部材としてのOリング35を装着した点にある。
【0049】
操作ノブ32の右端部には、操作ノブ32の外周面よりも小径とされた環状の段差面(凹部)36が形成されている。段差面36には、2本のOリング35,35が軸方向に並べて装着可能である。段差面36の軸方向の長さは、Oリング35を軸方向に2本並べた太さの合計(Oリング2本分の大きさ)よりも短くなるように設定されている。したがって、図7(a)に示すように、アーム部31に操作ノブ32を取り付けて、アーム部31の左側面31fに操作ノブ32の端面32fが当接した状態では、図7(b)に示すように、Oリング35,35が、アーム部31と操作ノブ32との間に挟持される。つまり、Oリング35,35は、アーム部31の左側面31fと、操作ノブ32の段差面36に連続する側面36aと、の間に挟持された状態となり、軸方向に弾力をもって潰れる状態となる。
【0050】
本実施形態によれば、図7(d)に示すように、Oリング35を用いて釣糸Lを係止することができる。これにより、釣糸Lの取り回しがよく使い勝手に優れた魚釣用リールが得られる。また、Oリング35が軸方向に潰れる状態となって釣糸Lの保持力を増大させることができるので、クラッチレバー30に釣糸Lをより好適に係止することができる。特に、使用する釣糸Lが細径である場合にも好適に係止することができる。また、挟持されるOリング35の反力によって、操作ノブ32の緩みが好適に抑制される。
【0051】
次に、本発明の変形例について図8図12を参照して説明する。
図8に示す第1変形例は、前記第1実施形態で説明した回り止め規制部の構成をアーム部31と操作ノブ32とで逆に配置したものである。すなわち、アーム部31側に係合突部31a1が設けられ、操作ノブ32側に受け部32a1が設けられている。アーム部31の係合突部31a1は、操作ノブ32の受け部32a1に係合可能である。
【0052】
この第1変形例においても、アーム部31に操作ノブ32を連結する際に、回り止め規制部によってアーム部31に操作ノブ32が回り止め固定される。
【0053】
図9に示す第2変形例は、アーム部31に設けられる受け部31a2を略正方形状に形成し、操作ノブ32に設けられる係合突部32a2を受け部31a2に対応して略正方形状の突部として形成したものである。受け部31a2の各内面31c2は、係合突部32a2の各外面32c2に対応している。
【0054】
第2変形例の操作ノブ32には、一対の平面部32g,32gが形成されている。一対の平面部32g,32gは、係合突部32a2の対応する外面32c2,32c2に平行である。
【0055】
この第2変形例では、操作ノブ32を軸周りに回動させて付け替えることができ、操作時に指を掛ける位置に平面部32gが位置するようにすることができる。この場合、平面部32gに指を掛けてクラッチレバー30を操作できるので、異なる操作感を演出することができ、釣人のニーズに対応することができる。
【0056】
図10に示す第3変形例は、操作ノブ32側からアーム部31側に固定ねじ33を螺合するように構成したものである。操作ノブ32には、固定ねじ33の頭部が収まる凹部32hやねじ部33dが挿通される挿通孔32d1が形成されている。アーム部31には、ねじ穴31dが形成されている。
【0057】
この第3変形例においても、アーム部31に操作ノブ32を連結する際に、回り止め規制部によってアーム部31に操作ノブ32が回り止め固定される。また、アーム部31に対して左側から操作ノブ32および固定ねじ33を組み付けることができるので、着脱が行い易い。
【0058】
図11に示す第4変形例は、前記第3変形例と同様に操作ノブ32側からアーム部31側に固定ねじ33を螺合するように構成したものである。回り止め規制部は、前記第1変形例と同様にアーム部31側に係合突部31a1が設けられ、操作ノブ32側に受け部32a1が設けられている。
【0059】
係合突部31a1には、円筒状の支軸部31eが設けられている。操作ノブ32には、支軸部31eに支持される円筒面32h1が形成されている。
【0060】
この第4変形例では、アーム部31の支軸部31eを介して操作ノブ32が支持されるので、操作ノブ32の支持剛性が向上する。支持剛性の向上は、操作性の向上に寄与する。
【0061】
図12に示す第5変形例は、前記第2変形例と同様に操作ノブ32を軸周りに回動させて付け替えることができるものであり、操作ノブ32に湾曲状に切り欠いた指載せ面32jを形成したものである。
【0062】
この第5変形例では、指載せ面32jが上側にくるように、アーム部31に操作ノブ32を固定すれば、指載せ面32jに指を載置して操作することが可能なクラッチレバー30とすることができる。また、これとは逆に、指載せ面32jを下側にして、円弧部32kが上側にくるように固定すれば、円柱状の操作ノブ32に類似した操作感とすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態や変形例に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、前記第1実施形態〜第3実施形態、前記各変形例において、アーム部31、操作ノブ32,32A、固定ねじ33の全体または適所に、色彩を付してもよい。この場合、目立つ色彩を付すことによって、操作ノブ32の目視が容易となり、操作性が向上する。
【0064】
また、前記第1実施形態〜第3実施形態、前記各変形例において、操作ノブ32,32Aの軸は、左右方向に延在するものとして、スプール軸5(ハンドル軸7)と平行に配置したものを示したが、これに限られることはなく、スプール軸5(ハンドル軸7)に対して上下方向、前後方向に角度を持たせて、略左右方向に延在するように配置してもよい。
このように構成することによって、操作ノブ32,32Aの配置バリエーションが増え、釣人のニーズに好適に対応した魚釣用リールとすることができる。
【0065】
また、前記第2実施形態および前記第3実施形態において、環状の弾性部材として断面丸形のOリング35を示したが、これに限られることはなく、釣糸Lを係止することが可能な断面形状であれば、角形等の種々の形状のものを採用することができる。また、釣糸Lを係止することが可能な溝部等が予め形成された環状の弾性部材を用いてもよい。
【0066】
また、前記第1実施形態〜第3実施形態、前記各変形例において、操作ノブ32,32Aは、円柱形状を基本形状としたものを示したが、これに限られることはなく、球状、四角柱形状、多角柱形状、円筒形状、中空形状等、種々の形状のものを採用することができる。また、操作ノブ32は、実施形態や変形例で示したものに比べて大径に形成してもよいし、小径に形成してもよい。さらに、操作ノブ32は、大径部とこれよりも小径とされた小径部とを併せ備えていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 リール本体
3a 左側板(外側板)
3b 右側板(外側板)
31 アーム部
32 操作ノブ
33 固定ねじ
31a 係合突部(回り止め規制部)
32a 受け部(回り止め規制部)
35 Oリング(環状の弾性部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12