特許第6405265号(P6405265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6405265-防舷材 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405265
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】防舷材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/228 20060101AFI20181004BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C08J9/228CET
   F16F7/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-37129(P2015-37129)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-193802(P2015-193802A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-67534(P2014-67534)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】常盤 知生
(72)【発明者】
【氏名】川上 弘起
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−067142(JP,A)
【文献】 特開平05−285965(JP,A)
【文献】 特開2010−046920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/228
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体と、発泡粒子成形体の略全面を被覆する表皮材とからなり、該表皮材はオレフィン系熱可塑性エラストマーから形成されており、該表皮材が、発泡粒子成形体の表面に沿って発泡粒子成形体を被覆していると共に、発泡粒子成形体と接着しておらず、該表皮材がブロー成形体であり、該表皮材の平均厚みが1〜5mmである表皮材被覆発泡成形体から構成される防舷材
【請求項2】
前記発泡粒子成形体の空隙率が5%以下であり、融着率が20〜70%である請求項1に記載の防舷材
【請求項3】
前記発泡粒子成形体の見掛け密度が15〜50kg/mである請求項1又は2に記載の防舷材
【請求項4】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーのデュロメータA硬さが85以下である請求項1〜のいずれかに記載の防舷材
【請求項5】
前記ブロー成形体内でポリスチレン系樹脂発泡粒子を加熱融着させてなる請求項1〜のいずれかに記載の防舷材
【請求項6】
容積が100Lを超える請求項1〜5のいずれかに記載の防舷材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材被覆発泡成形体からなる防舷材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂発泡粒子を加熱融着させた発泡粒子成形体は、軽量性と剛性などの機械的強度とのバランスに優れることから、魚箱や家電梱包の緩衝材、土木資材として幅広く使用されており、また、断熱性能にも優れることから建築用断熱材としても使用されている。
【0003】
さらに、前記発泡粒子成形体が、中空成形体からなる表皮材で被覆された表皮材被覆発泡成形体が知られている。該表皮材被覆発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂やポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする中空成形体をブロー成形等により形成し、得られた中空成形体内の中にポリスチレン系樹脂発泡粒子等の発泡粒子を充填し、次に中空成形体内に加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱し、発泡粒子相互を融着させることにより得られるものである(特許文献1など)。このような表皮材被覆発泡成形体は、意匠性に優れると共に、中空成形体の中空部が発泡粒子成形体で充填されているため、軽量でありながらも、曲げ剛性や曲げ強度等の機械的物性にも優れるものである。
【0004】
さらに、該表皮材被覆発泡成形体においては、該表皮材の素材として発泡粒子と同種の樹脂を用いて、表皮材と発泡粒子成形体とを融着させることによって、例えばポリスチレン系樹脂発泡粒子に対して表皮材としてポリスチレン系樹脂を用いることによって、得られた表皮材被覆発泡成形体は、曲げ剛性や曲げ強度などの機械的物性がより向上したものとなる。このような表皮材被覆発泡成形体は、その優れた特性を生かして、浴室天井部材などに使用されている(特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−328550号公報
【特許文献2】特開2010−46920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記発泡粒子成形体の用途のひとつに、曲げ変形や圧縮変形により衝撃エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材がある。該エネルギー吸収部材には、自動車のバンパー芯材やティビアパッドのような小型のものから、船舶に取り付けられる防舷材などの大型のものまで、様々なサイズや形状のものがある。かかるエネルギー吸収部材は、限られたストロークの中で十分なエネルギーを吸収できることが要求されるものである。
【0007】
しかし、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体を大型で、かつ衝突時に大変形が想定されるエネルギー吸収部材として用いる場合、内部まで十分に融着させると反力が大きくなり過ぎるおそれがある。一方、融着を不十分にすると大変形時に発泡粒子成形体が破壊され一体性が失われてエネルギーが吸収できなくなって、所望のエネルギー吸収性能が発現されなくなってしまうおそれがある。
【0008】
これに対し、前記表皮材被覆発泡成形体は、発泡粒子成形体が表皮材で覆われているので、発泡粒子成形体が破壊されても一体性が失われるということは無い。しかし、一体性が失われなくとも、表皮材内の発泡粒子成形体が破壊されてしまうと、所望のエネルギー吸収性能が再現性よく発現されなくなってしまう。そこで、巨大なエネルギーを繰り返して吸収可能なエネルギー吸収性能を有する表皮材被覆発泡成形体の開発が望まれている。
一方、大型のエネルギー吸収部材として従来の表皮材被覆発泡成形体を用いようとしたところ、小スケールでのエネルギー吸収挙動と、大スケールの実製品でのエネルギー吸収挙動が全く異なるという問題が、新たに見出された。即ち、小スケールのエネルギー吸収の挙動は実験による把握が容易であるのに対し、前記防舷材などの大型のエネルギー吸収部材として表皮材被覆発泡成形体を使用する場合、そのエネルギー吸収特性を調べるには、実際に船に取付けて衝突試験を行わなければならず、そのための大掛かりな設備が必要となることがわかった。そのため、原寸大での実験を繰り返して行うのは容易ではない。
【0009】
そこで、巨大な衝撃に対するエネルギー吸収特性を有し、さらに、設計どおりにエネルギー吸収特性を発現可能な表皮材被覆発泡成形体の開発が期待されている。
【0010】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、軽量で、優れたエネルギー吸収特性を有し、かつスケールアップ時に設計どおりのエネルギー吸収性能を再現性良く発現することができる、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体を芯材とする、防舷材として使用可能な表皮材被覆発泡成形体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下に示す、表皮材被覆発泡成形体からなる防舷材が提供される。
[1]ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体と、該発泡粒子成形体の略全面を被覆する表皮材とからなり、該表皮材は熱可塑性オレフィン系エラストマーから形成されており、該表皮材が、発泡粒子成形体の表面に沿って発泡粒子成形体を被覆していると共に、発泡粒子成形体と接着しておらず、該表皮材がブロー成形体であり、該表皮材の平均厚みが1〜5mmである表皮材被覆発泡成形体から構成される防舷材
[2]前記発泡粒子成形体の空隙率が5%以下であり、融着率が20〜70%である前記1に記載の防舷材
[3]前記発泡粒子成形体の見掛け密度が15〜50kg/mである前記1又は2に記載の防舷材
]前記オレフィン系熱可塑性エラストマーのデュロメータA硬さが85以下である前記1〜のいずれかに記載の防舷材
前記ブロー成形体内でポリスチレン系樹脂発泡粒子を加熱融着させてなる前記1〜のいずれかに記載の防舷材
容積が100Lを超える請求項1〜5のいずれかに記載の防舷材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表皮材被覆発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体と、該発泡粒子成形体の略全面を被覆する表皮材とからなり、該表皮材はオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されており、該表皮材が、該発泡粒子成形体の表面に沿って発泡粒子成形体を被覆しており、さらに該表皮材が、該発泡粒子成形体と接着していないことから、軽量かつエネルギー吸収性能に優れると共に、設計どおりのエネルギー吸収性能を再現性良く発現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、成形型の側面の一方からスチームピンを挿入した場合のスチームピンの配置の一例を示す模式図である。
図2図2は、一方の分割型の型面からスチームピンを挿入した場合のスチームピンの配置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の表皮材被覆発泡成形体について詳細に説明する。該表皮材被覆発泡成形体は防舷材として好適に使用できるものである。
該表皮材被覆発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に発泡粒子成形体ともいう。)と、該発泡粒子成形体の略全面を被覆する表皮材とからなるものである。
【0015】
該表皮材被覆発泡成形体の製造方法としては、例えば、パリソンをブロー成形することにより中空成形体(表皮材)を形成し、次いで、該中空成形体内にポリスチレン系樹脂発泡粒子を充填し、加熱して発泡粒子相互を融着させポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体を形成する方法が挙げられる。
【0016】
本発明の表皮材被覆発泡成形体の特徴は、前記表皮材がオレフィン系熱可塑性エラストマーから形成されており、さらに該表皮材が、該発泡粒子成形体の略全面を、発泡粒子成形体の表面に沿って被覆していると共に、発泡粒子成形体と接着していないことにある。なお、従来技術において、表皮材と発泡粒子成形体が接着している態様は、両者が熱融着している場合が殆どであり、本発明において、発泡粒子成形体と接着していないとは、表皮材と発泡粒子成形体が熱融着していない場合を意味する。
【0017】
該表皮材が軟質で、かつ発泡粒子成形体と接着していないので、該発泡粒子成形体が衝突時に十分に変形してエネルギーを吸収することができ、該表皮材も独自にエネルギーを吸収し、表皮材被覆発泡成形体全体としてエネルギー吸収特性が再現性良く発現する。そのため、小スケールでの実験結果から、大型のエネルギー吸収部材のエネルギー吸収特性を設計することが可能となる。
【0018】
さらに、該表皮材が、発泡粒子成形体の表面に沿って被覆していると共に、発泡粒子成形体と接着していないので、衝突時に表皮材により発泡粒子成形体が適度に拘束されるが、過度に拘束されて発泡粒子成形体が十分に変形できないということがないので、衝突初期からエネルギーを十分に吸収することができ、さらに衝突後期においても発泡粒子成形体が破壊されず、十分なエネルギー吸収特性を発現することができる。
これに対し、発泡粒子成形体と表皮材とが接着していると、発泡粒子成形体が表皮材に拘束されて衝撃時に発泡粒子成形体が十分に変形できないことがあり、衝突初期からエネルギーを十分に吸収することができ無くなったりするなど、再現性よく所望のエネルギー吸収特性を発現できなくなる。
なお、該表皮材が発泡粒子成形体と接着してはいなくても、表皮材と発泡粒子成形体の間に空間(隙間)があると、寸法精度が悪くなったり、施工時に不具合が生じたり、場合によっては衝突時に小さい歪で発泡粒子成形体が破壊してしまうおそれがある。
【0019】
ここで、「発泡粒子成形体の表面に沿って被覆」とは、表皮材と発泡粒子成形体とを接触させるが、接着させないことを要し、具体的には、表皮材と発泡粒子成形体の表面との間にできるだけ空間や空気溜り部が形成されないように、両者をできる限り密着させるという意味である。
なお、表皮材と発泡粒子成形体とが接着していない状態で、表皮材を発泡粒子成形体の表面に沿って被覆させるためには、表皮材の収縮率が発泡粒子成形体の収縮率以上となるように、それぞれの素材や成形条件を考慮した上で、中空ブロー成形体からなる表皮材内に発泡粒子を充填し、表皮材内で発泡粒子を加熱融着させて発泡粒子成形体を形成する方法を採用することが好ましい。
【0020】
また、該表皮材は発泡粒子成形体の略全面を被覆している。ここで、「略全面」とは、表皮材をブロー成形で製造する場合、後述するように、表皮材内に発泡粒子を充填するために形成される充填孔や、スチームピンを刺し込み挿入する際に形成されるスチームピン挿入跡が、表皮材に複数残るため、発泡粒子成形体の全面が被覆されない部分があることを意味する。その場合であっても、該複数の孔の面積の合計は、通常、表皮材の表面積の5%以下である。
【0021】
前記表皮材が発泡粒子成形体と接着していないことの具体的な程度としては、表皮材と発泡粒子成形体の剥離試験を行った場合、発泡粒子成形体の材料破壊率が1%以下であることが好ましく、材料破壊が起きないことが特に好ましい。
【0022】
前記剥離試験による材料破壊率は次のようにして求める。表皮材被覆発泡成形体から50mm×50mm×厚み50mm(表皮材を含む)の測定用試験片を切り出す。この試験片の上下面を接着剤にて接着強度測定用冶具に強固に接着させ、引張強度試験機テンシロンなどの測定装置を使用して、10mm/分の引張速度にて引張試験を行なう。このとき、表皮材を剥離させた発泡粒子成形体の剥離面に存在する発泡粒子の数(切断されている発泡粒子も1個として計測する)から、表皮と発泡粒子成形体とが界面剥離した発泡粒子の数を差し引き、その値を発泡粒子成形体の剥離面に存在する発泡粒子の数で除した値の百分率を表皮剥離試験における発泡粒子成形体の材料破壊率(%)とする。
【0023】
本発明において、発泡粒子成形体と表皮材とを接着させない構成は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体に対する表皮材として、ポリスチレン系樹脂に対する接着性の無いオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることにより達成される。
【0024】
本発明の表皮材被覆発泡成形体は、発泡粒子成形体がオレフィン系熱可塑性エラストマーの表皮材で覆われているので、外観品質、寸法安定性、耐候性、耐薬品性に優れるものである。
【0025】
本発明において、前記発泡粒子成形体はポリスチレン系樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう。)を加熱融着させることにより得ることができる。
【0026】
前記発泡粒子を構成する基材樹脂はポリスチレン系樹脂であり、該ポリスチレン系樹脂として、スチレン系モノマーの単独重合体または2種以上のスチレン系モノマーの共重合体、更に50重量%超のスチレン系モノマーと該モノマーと共重合可能な50重量%未満のスチレン系モノマー以外のコモノマー成分との共重合体が挙げられる。
【0027】
前記のスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、上記のスチレン系モノマー以外のコモノマー成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有不飽和化合物等が挙げられる。
【0028】
前記ポリスチレン系樹脂において、発泡性に優れる点、得られる発泡粒子の型内成形性に優れる点、汎用性などの点からスチレン成分単位の割合は60〜100重量%であることがさらに好ましく、70〜100重量%であることが特に好ましい。
【0029】
本発明においては、前記発泡粒子成形体の空隙率は5%以下であると共に、融着率は20〜70%であることが好ましい。
【0030】
本発明の表皮材被覆発泡成形体は、前記発泡粒子成形体が、前記表皮材により、その略全表面に沿って被覆されており、かつ発泡粒子成形体が空隙の少ない状態で、かつ特定の融着率の範囲にあることにより、優れたエネルギー吸収性能を発現できる。空隙率が大きな発泡粒子成形体は、脆くて大エネルギーの吸収特性が低いものとなるおそれがある。かかる観点から、該空隙率は3%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましい。
【0031】
発泡粒子成形体の融着率が高すぎると衝撃時の反力が大きくなりすぎることがある。また、発泡粒子間の空隙がなく、かつ容積の大きなポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体を得ようとする場合、融着率を高くすると、得られる発泡粒子成形体が収縮する傾向にある。そのため、中空成形体内で発泡粒子を融着させる場合、融着率が高すぎると成形後に発泡粒子成形体が過度に収縮してしまい、表皮材である中空成形体と発泡粒子成形体との間に隙間ができてしまい、所望のエネルギー吸収特性が得られなくなるおそれがある。かかる観点から、該融着率は50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下である。
【0032】
なお、表皮材で被覆されていない通常のポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体の場合、融着率が低いと小さい歪でも破壊されやすくなるので、所望のエネルギー吸収性能が発現されなくなる。本発明においては、特定の表皮材が、発泡粒子成形体と接着せずに、発泡粒子成形体の表面に沿って被覆していることから、発泡粒子成形体の融着率がある程度低くても、衝突による変形時に発泡粒子成形体が破壊されにくく、所望のエネルギー吸収能力が発現される。
【0033】
本発明において、発泡粒子成形体の空隙率は、以下の方法により求めるものとする。
温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡粒子成形体から直方体サンプルを切り出し、該サンプルの外形寸法より嵩体積Va[cm]を求める。次いで該サンプルを温度23℃のエタノールの入ったメスシリンダー中に金網などの道具を使用して沈め、軽い振動等を加えることにより成形体中の空隙に存在している空気を脱気する。そして、金網などの道具の体積を考慮して水位上昇分より読みとられる該サンプルの真の体積Vb[cm]を測定する。求められたサンプルの嵩体積Va[cm]と真の体積Vb[cm]から、次式により空隙率[%]を求める。
空隙率[%]=〔(Va−Vb)/Va〕×100
【0034】
本発明において、発泡粒子成形体の融着率は、以下の方法により求めるものとする。
まず、発泡粒子成形体を割って破断面(発泡粒子100個以上が存在する破断面)を観察し、目視により内部で破断した発泡粒子と界面で剥離した発泡粒子の数をそれぞれ計数する。そして、内部で破断した発泡粒子数と界面で剥離した発泡粒子数の合計に対する内部で破断した発泡粒子数の割合(%)を算出し、これを融着率とする。
【0035】
また、前記発泡粒子成形体の見掛け密度は15〜50kg/mであることが好ましい。該見掛け密度が該範囲内であることにより、特に大エネルギーの吸収特性に優れたものとなる。かかる観点から、該見掛け密度の下限は、20kg/mがより好ましい。また、その上限は40kg/mがより好ましい。
【0036】
本発明において、前記表皮材はオレフィン系熱可塑性エラストマーから形成されている。表皮材が、高密度ポリエチレンやポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの剛性が高い熱可塑性樹脂で形成されていると、衝撃を受けた時に発泡粒子成形体の変形が阻害されて、十分なエネルギー吸収特性が得られないおそれや、設計どおりのエネルギー吸収特性が発現されないおそれがある。
【0037】
該オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリプロピレンなどのポリオレフィンのマトリックス中に、エチレン‐プロピレンゴムなどのオレフィンゴム成分が微分散しているものや、エチレンやプロピレンとその他のα−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。該オレフィン系熱可塑性エラストマーは、常温ではエラストマー(弾性体)であり、ゴム弾性を有している上に、一般の熱可塑性樹脂と同様な成形加工のできるものである。
【0038】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、株式会社住友化学製「エスポレックスTPEシリーズ」、三菱化学株式会社製「サーモラン」及び「ゼラス」、三井化学株式会社製「ミラストマー」、JSR株式会社製「JSR EXCELINK」、東洋紡株式会社製「Sarlink」等が挙げられる。
【0039】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーのデュロメータA硬さは85以下であることが好ましい。デュロメータA硬さがこの範囲であることは、該表皮材が軟質であることを意味する。軟質の表皮材で覆われている発泡粒子成形体は、衝撃を受けた時の変形がより阻害されにくくなる。かかる観点からデュロメータA硬さは82以下がより好ましく、更に好ましくは80以下である。また、その下限は概ね30であり、好ましくは45である。
【0040】
本発明において、デュロメータA硬さは、JIS K6253−3:2012に従い、23℃の環境下でタイプAデュロメータ硬さ試験により測定される。
【0041】
表皮材被覆発泡成形体の表皮材をブロー成形により製造する場合、該オレフィン系熱可塑性エラストマーのMFRは耐ドローダウン性の観点から、5.0g/10分以下が好ましく、4.0g/10分以下が更に好ましく、特に好ましくは3.0g/10分以下である。なお、MFRの下限は、概ね0.1g/10分である。
なお、本発明においてオレフィン系熱可塑性エラストマーのMFRは230℃、荷重5kgで測定した値をいう。
【0042】
また、前記表皮材の平均厚みは5mm以下であることが好ましい。該平均厚みが該範囲内であると、衝突時に発泡粒子成形体の変形がより阻害されにくくなる。一方、該平均厚みの下限は、中空な表皮材をブロー成形で製造する場合には、ブロー成形性の観点から概ね1mm程度である。
【0043】
なお、前記表皮材の平均厚みは、無作為に選択した10箇所以上の測定点(ただし、隅部などの他の部位と厚みが著しく異なる部位は除く)を定め、該測定点において測定された表皮材の厚みの算術平均値である。表皮厚みの測定方法としては、表皮被覆発泡成形体全体を測定点で切断してその表皮断面を厚みゲージなどにより直接計測して求める方法や、測定点の表皮材のみ切り出して切り出された表皮の厚みを厚みゲージなどにより直接計測して求める方法がある。また、表皮材と発泡粒子成形体の境界が不明瞭な場合には表皮被覆発泡成形体を破壊せずに超音波厚み計などにより測定する方法があり、これら以外にも従来公知の測定方法を採用することができる。
【0044】
本発明の表皮材被覆発泡成形体は、その表皮材がオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成され、しかも該表皮材は、発泡粒子成形体の表面に沿って発泡粒子成形体の略全面を被覆し、かつ表皮材と発泡粒子成形体とが接着していないので、該表皮材被覆発泡成形体は大きな衝撃を受けた際に、変形量−応力曲線(Strain−Stress曲線:S−S曲線)における初期の応力の立ち上がりが早く、かつ応力が高すぎず、初期の衝撃エネルギーを効率よく吸収できるとともに、大変形時にも応力が過度に高くなりすぎずに十分なエネルギーを吸収することができる。
【0045】
本発明の表皮材被覆発泡成形体において、曲げ試験における初期荷重の比である、曲げたわみ量2mmのときの荷重(F2)に対する曲げたわみ量が5mmのときの荷重(F5)の比(F/F)は1.5以上であることが、好ましく、より好ましくは2.0以上である。
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーからなる表皮材が発泡粒子成形体の表面に沿ってできる限り空間を形成しないように被覆されていれば、初期荷重の比は1.5以上となる。
なお、比(F/F)の上限は、概ね5であり、好ましくは3である。
【0046】
前記曲げ試験は、JIS K7221−2(2006年)に準拠する3点曲げ試験により行う。
【0047】
また、本発明の表皮材被覆発泡成形体において、圧縮試験における5%圧縮時の圧縮応力Cと25%圧縮時の圧縮応力C25との比C25/Cが0.3〜2.5であることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.0である。また、25%圧縮時の圧縮応力C25と50%圧縮時の圧縮応力C50との比C50/C25が1.0〜2.0であることが好ましい。このような矩形波形を示すS−S曲線は、優れたエネルギー吸収特性を示す。
【0048】
前記圧縮試験は、JIS K7220(2006年)に準拠して行う。
【0049】
本発明の表皮材被覆発泡成形体は、前記の優れた耐衝撃性を有するので、例えば容積が100Lを超えるような特に大型の防舷材等の巨大な衝撃に対するエネルギー吸収特性が要求される用途に好適に用いることができるものである。
【0050】
本発明の表皮材被覆発泡成形体は、生産性に優れることから、前記表皮材をブロー成形で形成し、得られたブロー成形体内にポリスチレン系樹脂発泡粒子を充填し、該発泡粒子を加熱融着させることにより製造することが好ましい。
【0051】
次に、本発明の表皮材被覆発泡成形体の表皮材をブロー成形により製造する方法について詳しく説明する。但し、該表皮材被覆発泡成形体はブロー成形により製造されるものに限定されるものではない。
【0052】
本発明の表皮材被覆発泡成形体の表皮材をブロー成形により製造する場合、まず、押出機に備えられたダイの直下に位置する成形用分割型間に、オレフィン系熱可塑性エラストマーを押出してパリソンを形成し、分割型を型締めして該パリソンをブロー成形することにより中空成形体からなる表皮材を形成する。次いで、該表皮材内にポリスチレン系樹脂発泡粒子を充填し、表皮材内に挿入した複数の加熱媒体供給排出ピン(以下、スチームピンともいう。)からスチームなどの加熱媒体を供給、排出することにより該発泡粒子を加熱して発泡粒子相互を融着させ発泡粒子成形体を形成し、得られた成形体を、型を開いて取り出すことにより、表皮材被覆発泡成形体を得ることができる。なお、前記加熱媒体供給排出ピンとは、中空成形体内へスチームなどの加熱媒体を供給することもできれば、中空成形体内から加熱媒体を排出することもできるピンを意味する。
【0053】
以下、加熱媒体としてスチームを使用する場合について説明する。スチームによる加熱は、表皮材内に複数のスチームピンを挿入し、挿入された複数のスチームピンの一方を供給側とし他方を排出側として、供給側からスチームを供給して排出側を開放するか排出側から吸引を行うことによって行われる。加熱方法としては、供給側と排出側を固定して一方向からのみ加熱を行う一方加熱法、あるいは一方を供給側とし他方を排出側として一度スチーム加熱を行った後供給側と排出側とを交替してスチーム加熱を行う交互加熱法のどちらも採用することができる。発泡粒子成形体の各部位において均一に発泡粒子同士を融着させるためには、交互加熱法が好ましい。
【0054】
該スチームの供給は、通常、高圧のスチームをスチームチャンバーで所望の圧力に減圧調整し、この圧力を調整したスチームをスチームピンを通して表皮材内へと供給することにより行われる。
【0055】
前記スチームピンの表皮材内への挿入箇所及び挿入方向は特に限定されるものではないが、表皮材内において発泡粒子全体がスチームにより万遍なく加熱されるように、表皮材の形状に応じて、表皮材内へと挿入する箇所及び挿入方向が適宜決定される。意匠性などの観点から、スチームピンの挿入跡が表皮材に残ること避けたい場合にはスチームピンの挿入方向は少ないほど望ましく、スチームピンの挿入は一方向、或いは二方向から行うことが好ましい。
【0056】
図1及び図2に、スチームピンの配置の例を説明する模式図を示す。図において、1は成形型、11は型側面、12は成形空間部、2はスチームピンを示し、21は供給側スチームピン、22は排出側スチームピンをそれぞれ示す。
成形型の一方向からスチームピンを挿入する場合には、図1のように成形型の側面からスチームピンを挿入するか、図2のように、分割型の一方の型面からスチームピンを挿入することができる。また、図示しないが、二方向からスチームピンを挿入する場合には、成形型の両側の側面から、スチームピン同士を対向させてスチームピンを挿入することや、両方の型面からスチームピン同士を対向させてスチームピンを挿入することもできる。
【0057】
図1は成形型の一方の側面から、スチームピンを挿入した状態を示す例であり、図1では供給側のスチームピン21と排出側のスチームピン22とを交互に配した例を示す。図1(1)は外観斜視図を示し、図1(2)は、正面図を示す。図1(3)は、図1(2)におけるB−B線に沿う断面図を示し、金型の一方の側面に供給側のスチームピン21と排出側のスチームピン22が交互に配置された状態を示す。図1(4)は、図1(1)におけるA−A線に沿う断面図(金型のパーティング部での断面)を示す。
【0058】
図2は、分割型の一方の型面からスチームピンを挿入した状態を示す例である。図2は供給側スチームピン21と排出側スチームピン22とを列毎に交互に配置した例であり、図2(1)は、外観斜視図を示し、図2(2)は、図2(1)におけるA1−A1線に沿う断面図を示す。図2(3)は、図2(1)におけるB1−B1線に沿う断面図を示す。なお、図示しないが、供給側のスチームピンと排出側のスチームピンとを行毎に交互に配置してもよく、供給側のスチームピンと排出側のスチームピンとを市松模様状に交互に配置してもよい。
【0059】
発泡粒子成形体の型内成形においては、空隙率が5%以下であると共に、融着率を20〜70%に調整することが好ましい。その場合、前記スチームチャンバーにおけるスチームの圧力を0.05〜0.3MPa(G:ゲージ圧)とすることが好ましく、0.10〜0.18MPa(G)とすることがより好ましい。
【0060】
加熱媒体供給排出ピン(スチームピン)のスチーム供給排出口は、スチームピンの挿入方向が一方向である場合には、スチームピンの側面のみに設ければ良いが、スチームピンの挿入方向が相対向する二方向である場合には、側面のみではなくピンの先端にも供給排出口を有することが好ましい。
【0061】
該スチームピンの内径はスチーム供給量、スチーム排出量、スチーム流速が調整しやすいことから、2〜8mmが好ましく、2〜6mmがさらに好ましい。スチームピンの素材にもよるが、例えばスチームピンが鋼管である場合には、表皮被覆発泡成形体の成形時に必要な強度を確保するためには、スチームピンの肉厚は概ね2mm以上必要とされることから、スチームピンの直径は6.0mm以上であることが好ましく、8mm以上であることがより好ましい。一方、直径が大きすぎると成形体表面にスチームピンの痕跡が大きくなり、意匠性の面や耐衝撃性の面で不利になるため、スチームピンの外径は15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
【0062】
前記の通り、表皮材を発泡粒子成形体の表面に沿って被覆させるためには、発泡粒子成形体の収縮率を表皮材の収縮率よりも小さくすることが好ましい。発泡粒子成形体の収縮率は、発泡粒子の二次発泡能力を調整することにより調整することができる。例えば、成形収縮率1.5%以下のオレフィン系熱可塑性エラストマーから表皮材が形成される場合、発泡粒子の発泡剤含有量を、好ましくは発泡粒子1m当たり100〜400gに調整された発泡粒子を使用して、得られる発泡粒子成形体の収縮率を調整することにより、表皮材が発泡粒子成形体の表面に沿って被覆している表皮材被覆発泡粒子成形体を製造することができる。発泡粒子の発泡剤含有量は、より好ましくは発泡粒子1m当たり150〜350g、さらに好ましくは発泡粒子1m当たり200〜300gである。
【0063】
該発泡粒子中の発泡剤含有量は、120℃の雰囲気下にて発泡粒子を30分間加熱して発泡粒子内に存在する発泡剤を逸散させ、その重量減少分から求められる値である。加熱装置としては、タバイ株式会社製ギアオーブンGPH−200などが使用できる。
【0064】
発泡粒子の二次発泡性を調整し、発泡粒子相互の融着性、発泡粒子成形体の収縮率を制御するために、発泡粒子は、流動パラフィン、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル等のコーティング剤でコートされていることが好ましい。このような発泡粒子は、コーティング剤でコートされた発泡性樹脂粒子を予備発泡させることや予備発泡後の発泡粒子とコーティング剤とを混合することで得ることができる。
【0065】
発泡粒子成形体の各部位における融着率のバラツキを抑制するためには、供給側スチームピンと排出側スチームピンとの距離(ピッチ)を400mm以下とすることがより好ましい。供給側スチームピンと排出側スチームピンとの相互間距離が小さければ小さいほど、発泡粒子成形体の部位ごとの融着率のバラツキを抑制できるので、その距離は350mm以下であることがさらに好ましく、特に好ましくは300mm以下である。
【0066】
一方、スチームピン挿入跡は空隙部となるため、スチームピン間の距離が近すぎると表皮被覆発泡成形体内の空隙部が多くなり、成形体の機械的強度が低下するため好ましくない。かかる観点から、隣接する供給側スチームピンと排出側スチームピンの相互間距離は150mm以上であることが好ましい。
【0067】
前記見掛け密度15〜50kg/mの発泡粒子成形体を得るには、嵩密度15〜50kg/mの発泡粒子を使用することができる。
【0068】
本発明の発泡粒子成形体を得るためのポリスチレン系樹脂発泡粒子を製造する方法としては、通常汎用されている発泡粒子を製造する方法が採用される。例えば、密閉容器内でスチレン等のスチレン系モノマーを水性媒体中に懸濁剤と共に撹拌・分散させ懸濁重合を行い、その途中もしくは終了後に発泡剤、例えば脂肪族炭化水素や、可塑剤などを含浸させることにより発泡性スチレン系樹脂粒子を製造し、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱発泡させることにより、所要の嵩密度を有する発泡粒子を得ることができる。
【0069】
前記発泡粒子の製造に使用される発泡剤は、従来の発泡粒子の製造に使用される、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタンなどの飽和炭化水素、塩化メチル、塩化エチルなどの塩素化炭化水素、空気、二酸化炭素、窒素などの無機ガス等が使用できる。それらの発泡剤の中でも、発泡粒子内の残存発泡含有量を制御しやすいことから前記飽和炭化水素の使用が好ましい。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の防舷材として使用可能な表皮被覆発泡成形体について、実施例、比較例により詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0071】
実施例、比較例で用いた表皮材の製造会社名、グレード、物性については表1に、発泡粒子の基材樹脂の種類、物性については表2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
発泡粒子1の作製
ポリスチレンを基材樹脂とし、ブタン1.6重量%及びシクロヘキサン1.4重量%を含有する発泡性ポリスチレン樹脂粒子を、102℃の雰囲気下で予備発泡し、嵩密度21kg/m、平均粒子径3.1mmのポリスチレン系樹脂発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を常温下にて保存することにより、発泡粒子中の発泡剤を逸散させて、発泡粒子中の発泡剤含有量を調整し、表2に示す量とした。
なお、発泡粒子の平均粒子径は、発泡粒子群から無作為に選択した100個の発泡粒子についてそれぞれの最大径を計測し、各発泡粒子の最大径を算術平均値することにより求めた。
【0075】
発泡粒子2の作製
アクリロニトリル−スチレン共重合体を基材樹脂とし、ブタン2.8重量%及びシクロヘキサン2.3重量%を含有する発泡性樹脂粒子を、102℃の雰囲気下で予備発泡し、嵩密度25kg/m、平均粒子径3.0mmのポリスチレン系樹脂発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を常温下にて保存することにより、発泡粒子中の発泡剤を逸散させて、発泡粒子中の発泡剤含有量を調整し、表2に示す量とした。
【0076】
発泡粒子3の作製
ポリスチレンを基材樹脂とし、ブタン1.6重量%及びシクロヘキサン1.4重量%を含有する発泡性ポリスチレン樹脂粒子を、102℃の雰囲気下で予備発泡し、嵩密度21kg/m、平均粒子径3.1mmのポリスチレン系樹脂発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を常温下にて保存することにより、発泡粒子中の発泡剤を逸散させて、発泡粒子中の発泡剤含有量を調整し、表2に示す量とした。
【0077】
実施例1
内径65mmの押出機に、オレフィン系熱可塑性エラストマー〔株式会社住友化学製、商品名:エスポレックス、グレード:820、デュロメータA硬度78、メルトフローレイト(MFR):2.3g/10分(230℃、荷重5kg)〕を供給し、190℃で加熱、混練して溶融樹脂とした。次に、該溶融樹脂を押出機に付設され190℃に調整されたアキュムレータに充填した。次いで、ダイから溶融樹脂を押出して軟化状態のパリソンを、ダイ直下に配置された分割型平板状金型間に配置し、金型を型締めした。金型は50℃に温調した。その後、パリソンにブローピンを打ち込みブローピンから、0.50MPa(G)の加圧空気をパリソン内に吹き込むと同時にパリソン外面と金型内表面との間を減圧して、前記金型キャビティの形状が賦形された中空成形体を形成した。
なお、成形用金型として、縦150mm、横150mm、厚さ100mmの略直方体状の成形キャビティを有し、発泡粒子の充填フィーダ(口径18mmφ)及び2本のスチームピン(口径8mmφ)を備えた成形用金型を用いた。スチームピンのピッチは170mmとした。
【0078】
次いで、該中空成形体内に、スチームピン及び充填フィーダを分割金型の片方の型面からから他方の型面に向かって打設した後、ポリスチレン系樹脂発泡粒子:発泡粒子1(嵩密度21kg/m、平均粒子径3.1mm)を充填フィーダから充填した。尚、発泡粒子を充填する際には、中空成形体に挿入されたスチームピンの周壁部に設けられたスリット状のスチーム供給排出口より中空成形体内の気体を排気した。
発泡粒子充填後、中空成形体中に挿入されたスチームピンのうち一方のスチームピンよりスチームを吸引しながら、他方のスチームピンから表3に示す圧力のスチーム(0.14MPa(G))を10秒間供給した。次に、前記スチームを供給していたスチームピンから吸引しながら、スチームを吸引していたスチームピンから表3に示す圧力のスチーム(0.14MPa(G))を10秒間供給した。成形後金型を冷却した後、金型を開いて、表皮材被覆発泡成形体を得た。なお、スチームの圧力はスチームチャンバーにおける圧力である。成形サイクルを表3に示す。
【0079】
実施例2
発泡粒子をアクリロニトリル−スチレン共重合体発泡粒子:発泡粒子2(嵩密度25kg/m、平均粒子径3.0mm)とし、表3に示す成形条件にて成形した以外は、実施例1と同様に表皮材被覆発泡成形体を得た。
【0080】
実施例3
表皮材の基材樹脂を表1に示すポリオレフィン系熱可塑性エラストマー〔株式会社住友化学製、商品名:エスポレックス、グレード:4675、デュロメータA硬度60、メルトフローレイト(MFR):0.4g/10分(230℃、荷重5kg)〕とし、表3に示す成形条件にて成形した以外は、実施例1と同様に表皮材被覆発泡成形体を得た。
【0081】
比較例1
発泡粒子をポリスチレン系樹脂発泡粒子:発泡粒子3とし、成形条件を表3に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。得られた表皮材被覆発泡成形体は、表皮材と発泡粒子成形体との間に隙間が生じているため、圧縮試験の早い段階で発泡粒子成形体が破壊されてしまい、該表皮材被覆発泡成形体はエネルギー吸収特性が悪いものであった。
【0082】
比較例2
表皮材を形成するための原料としてPSジャパン株式会社製耐衝撃性ポリスチレン(商品名:PSJ‐ポリスチレン、グレード名:H0104、表中「HI」と記載)とPSジャパン株式会社製汎用ポリスチレン(商品名:PSJ‐ポリスチレン、グレード名:G9401、表中「GP」と記載)とを表1に示す配合割合にてドライブレンドして用い、185℃にて加熱溶融し表皮用溶融樹脂とした以外は、実施例1と同様にして表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。得られた表皮材被覆発泡成形体は、表皮材がポリスチレン系樹脂から形成されており、表皮材の内面と発泡粒子成形体とが接着しているため、圧縮試験の初期段階で圧縮応力が高くなりすぎ、さらに発泡粒子成形体が過度に拘束されてしまうため、圧縮試験の早い段階で発泡粒子成形体が破壊されてしまい、該表皮材被覆発泡成形体はエネルギー吸収特性が悪いものであった。
【0083】
比較例3
表皮材を形成するための原料として表1に示す旭化成ケミカルズ株式会社製高密度ポリエチレン〔商品名:サンテック‐HD、グレード名:B680、メルトフローレイト(MFR):0.03g/10分(190℃、荷重2.16kg)〕を用い、230℃にて加熱溶融し表皮用溶融樹脂とした以外は、実施例1と同様にして表皮材被覆発泡粒子成形体を得た。得られた表皮材被覆発泡成形体は、表皮材と発泡粒子成形体とは接着していないが、表皮材が高密度ポリエチレンから形成されているため、圧縮試験の初期段階で高い圧縮応力を示し、さらに発泡粒子成形体を拘束できていないため、圧縮試験の早い段階で発泡粒子成形体が破壊されてしまい、表皮材被覆発泡成形体はエネルギー吸収特性が悪いものであった。
【0084】
実施例、比較例における成形条件を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
実施例、比較例で得られた表皮材被覆発泡成形体の物性を表4、表5に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
表1〜5における各種物性の測定、評価は次のように行なった。
【0090】
[デュロメータ硬さ]
前記の方法により測定した。
【0091】
[発泡剤含有量]
発泡粒子中の発泡剤含有量は重量変化法により測定した。具体的には、装置として、タバイ株式会社製ギアオーブンGPH−200を使用した。約2gの発泡粒子をサンプルとして採取し、その重量を小数点第4位まで秤量し、初期重量W1[g]を求めた。このサンプルを、ダンパー開度を60%とし、オーブン内温度を120℃に調整したオーブン中に載置して30分間加熱した。加熱後、サンプルをオーブンから取り出し、その重量を小数点第4位まで秤量し、加熱後重量W2[g]を求めた。W1からW2を引き算することによりオーブン中での重量減少分[g]を求め、その値をW1で除し、単位換算することにより、発泡粒子1kgあたりの発泡剤含有量[g/kg]を求めた。この値に予め求めておいた発泡粒子の見かけ密度[kg/m]を乗ずることにより、発泡粒子中の1mあたりの発泡剤含有量[g/m]を求めた(n=5)。
【0092】
[発泡粒子の嵩密度]
水の入ったメスシリンダー内に重量:W[g]の発泡粒子群を、金網を使用して沈めることにより、水位上昇分から読取れる該発泡粒子郡の体積:V[L]を測定し、該発泡粒子郡の重量を該発泡粒子郡の体積にて除して見掛け密度を求め(W/V)、さらに1.6で割算し、単位を[kg/m]に換算することにより求めた(n=5)。
【0093】
[発泡粒子成形体の収縮率]
発泡粒子成形体の収縮率は次のようにして算出した。
まず、表皮材を設けずに、各実施例、比較例と同様な条件で発泡粒子成形体を単独で形成した。次に、金型の成形キャビティの対向する2辺間の距離150mmに対応する、得られた発泡粒子成形体の2辺間の距離dを測定し、以下の式により収縮率を算出した(n=5)。この収縮率は、0%で全く収縮せず、50%で一辺の長さが半分に収縮したことを意味する。
収縮率[%]=[(150−d)/150]×100
【0094】
[表皮材の収縮率]
表皮材の収縮率は次のようにして算出した。
まず、各実施例、比較例と同様な条件で、表1に示す各種樹脂を用いてパリソンを形成し、該パリソンをブロー成形して、中空成形体のみを形成した(スチームピンの打ち込み、発泡粒子の充填及びスチーム加熱は実施せず)。次に、金型のキャビティの対向する2辺間の距離150mmに対応する、得られた中空成形体の2辺間の距離dsを測定し、以下の式により表皮材の収縮率を算出した(n=5)。
収縮率(%)=[(150−ds)/150]×100
【0095】
[表皮材/発泡粒子成形体間の隙間]
得られた表皮材被覆発泡成形体の表皮材と発泡粒子間の隙間を目視にて観察し、隙間がないものを「無」、隙間があるものを「有」と評価した。
【0096】
[表皮材/発泡粒子成形体間の接着]
前記の方法により表皮材と発泡粒子成形体とを剥離させたとき、発泡粒子成形体の材料破壊が起こらなかったものを「無」、材料破壊率が1%以下(0は含まず)であったものを「わずかに有」、材料破壊率が1%を超えたものを「有」と評価した。
【0097】
[表皮材の平均厚み]
表皮被覆発泡成形体の表皮厚みは下記の方法により求めた。
得られた表皮材被覆発泡成形体の両面(150mm×150mmの面)について、一面当たり10箇所、両面で合計20箇所の測定点を無作為に選択した。各測定点において、表皮材被覆発泡成形体から表皮材を切り出し、切り出された表皮材の厚みを厚みゲージにより測定した。これら20箇所での測定値を算術平均した値を表皮材の厚み[mm]とした。

【0098】
[空隙率]
発泡粒子成形体の空隙率は、前記の方法により求めた(n=5)。
【0099】
[融着率]
発泡粒子成形体の融着率は、前記の方法により求めた(n=5)。
詳しくは、まず、表皮材被覆発泡成形体の中央部付近から、表皮材が含まれないようにして、発泡粒子成形体部分を約150mm(長さ)×75mm(幅)×25mm(厚み)の直方体形状に切り出し、長さ方向中央部において一方の表面(長さ約150mm、幅75mmの面の一方の面)に深さ2mmの切込みを、全幅を横切るように入れ、これを試験片とした。次いで、該試験片を用いて、JIS K7221−2(2006)に準拠して、支点間距離70mm、加圧くさびの速度200mm/分の条件にて3点曲げ試験を行い、試験片が破断するまで押圧した。次に、試験片の破断面を観察し、目視により内部で破断した(材料破壊した)発泡粒子数と、界面で剥離した発泡粒子数とをそれぞれ計測した。次いで、内部で破断した発泡粒子と界面で剥離した発泡粒子の合計数に対する内部で破断した発泡粒子の割合を算出し、これを百分率で表して融着率(%)とした。なお、当初の切込み2mm上に存在した発泡粒子はいずれにもカウントしなかった。
【0100】
[圧縮試験(5%圧縮応力C、25%圧縮応力C25、50%圧縮応力C50)]
圧縮応力は、JIS K7220(2006年)に準拠して、得られた表皮材被覆発泡成形体(サンプルサイズ:150×150×100mm)について、試験速度:40mm/minにて圧縮試験を行なうことにより求めた。60%圧縮されるまでの総エネルギー吸収量(EA量)は、圧縮試験によるS−S曲線(60%圧縮まで)を積分することによりエネルギー吸収量[kJ]を求め、表皮材被覆発泡成形体の容積[m]で割算することにより求めた。
また、発泡粒子成形体が破壊されると、圧縮応力が急激に低下する。圧縮応力が急激に低下したときの歪量を発泡粒子成形体破壊歪(表中「破壊歪[%]と記す)とした。
なお、表中の「−」は、発泡粒子成形体が破壊されたため、その歪量における圧縮応力を測定しなかったことを意味する。
【0101】
[曲げ荷重比(F/F)]
2mmたわみ時の曲げ荷重F及び5mmたわみ時の曲げ荷重F)は、JIS K7221−2(2006年)の3点曲げ試験に準拠し、得られた表皮材被覆発泡成形体(サンプルサイズ:150×150×100mm)について、スパン100mm、試験速度:20mm/minにて3点曲げ試験を行なうことにより求めた。
【0102】
表面平滑性の評価は、下記の基準に従い行った。
○:金型形状どおりに成形されており、表面に凹凸が見られない。
×:表皮材が浮いて湾曲している部分がある、又は表面に著しい凹凸が見られる。
【0103】
実施例4
本発明の実施例1と同じ構成にて、略直方体状の表皮材被覆発泡成形体(成形体寸法:長さ1080mm×幅800mm×厚み410mm)を作製した。なお、スチームピンの数は16本とし、4行×4列に配置し、スチームピンのピッチは長さ方向200mm、幅方向150mmとした。得られた成形体の表皮材平均厚みは2mmであり、発泡粒子成形体の見掛け密度は21kg/m、空隙率は1.5%、融着率は30%であり、表皮材が発泡粒子成形体の表面に沿って間隙なく該成形体を被覆しており、両者は接着していなかった。
【0104】
8個の前記表皮材被覆発泡積層体の夫々の長さ方向を構造体の長さ方向に一致させ、且つ幅方向を成形体の高さ方向と一致させると共に積層体の厚み方向の面を構造体の前面と接触させて、8個の積層体を構造体の前面に固定し、8個の表皮材被覆発泡成形体全体で長さ方向1080mm、幅方向8×410=3280mm、高さ方向800mmの積層体が固定された構造体を作成した。積層体を含む構造体全体の重量は6tであった。
【0105】
まず、表皮材被覆発泡成形体単体のエネルギー吸収特性から、構造体を10m/secで前面衝突させた際の加速度を数値計算により求めた。解析には非線形構造解析シミュレーションアプリケーションソフトであるLS−DYNAを使用した。計算で求められた構造体前面中央部分の加速度は12.58Gであった。
一方、実際に構造体の前面を10m/sで強固な壁体に衝突させ、その際の構造体前面中央部分の加速度を加速度センサーを用いて計測した。加速度センサーは共和電業製歪み式3軸型加速度変換機(AS−50TB)を使用した。構造体材前面中央部分の加速度は12.77Gであった。
数値計算で求めた加速度と、実際の衝突時の加速度は略等しい値となり、本発明の表皮材被覆発泡成形体を大型構造体のエネルギー吸収部材として用いた場合、数値計算に基づく設計どおりのエネルギー吸収性能が発現することがわかった。

【符号の説明】
【0106】
1 成形型
11 型側面
12 成形空間部
2 スチームピン
21 供給側スチームピン
22 排出側スチームピン



図1
図2