【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0007】
手段1.所定の取付対象物に対し移動可能な状態で設けられた操作用の被操作部と、
上下動可能に構成され、自身の上下動に伴い槽体の排水口を開閉可能な栓蓋と、
前記被操作部及び前記栓蓋の間に設けられ、前記被操作部の変位を前記栓蓋側へと伝達する伝達体とを備えた排水栓装置であって、
前記伝達体は、
前記被操作部の移動に伴い、自身の軸方向に沿って移動可能な軸部と、
前記軸部の外周又は内周に配置されるとともに、前記軸部の周方向に沿って前記軸部に対し相対回動可能な回動部と、
前記軸部の運動を回動運動に変換し、前記回動部を回動させる運動方向変換部とを有し、
前記取付対象物及び前記槽体の少なくとも一方に対し前記軸部を相対回転不能に規制する回転規制部が設けられ、
前記運動方向変換部は、
前記軸部に設けられた軸側接触部と、
前記回動部に設けられ、前記軸側接触部に対し接触可能な回動側接触部とを具備するとともに、
前記軸側接触部のうち前記回動側接触部に接触する部位、及び、前記回動側接触部のうち前記軸側接触部に接触する部位の少なくとも一方は、前記軸部の移動方向に対し傾斜する傾斜面状をなし、
前記被操作部の移動に伴い、前記軸側接触部が前記回動側接触部を押圧することで、前記回動部が前記軸部に対し相対回動するように構成されていることを特徴とする排水栓装置。
【0008】
上記手段1によれば、軸側接触部及び回動側接触部の接触部分における少なくとも一方が傾斜面状とされており、軸側接触部が回動側接触部を押圧することで、軸部の軸運動を回動部の回動運動へと変換することができる。従って、傾斜面を利用した非常に簡素な構造により、運動方向変換部を実現することができる。これにより、装置の安定的な動作を図ることができるとともに、製造コストの増大抑制、及び、装置の小型化を効果的に図ることができる。
【0009】
また、回転規制部によって、取付対象物及び槽体の少なくとも一方に対し軸部を相対回転不能とすることができ、ひいては軸部を移動させたときに回動部をより確実に回動させることができる。これにより、上述の作用効果をより確実に発揮させることができる。
【0010】
手段2.前記被操作部、前記軸部、前記回動部、及び、前記運動方向変換部を具備するとともに、前記取付対象物に形成された貫通孔に対し前記被操作部及び前記軸部の少なくとも一方が挿通されてなる操作装置を有し、
前記軸部は、前記被操作部の移動方向に沿って前記被操作部に対し直列的に固定されており、
前記伝達体は、往復移動可能な伝達部材を有し、
前記軸部に対して前記回動部が相対回動したときに、前記回動部から前記伝達部材の一端部へと動力が加わり、前記回動部の回動方向の接線方向に沿って前記伝達部材の一端部が移動するように構成されていることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0011】
尚、「軸部が被操作部に対し固定」とあるのは、両者が別体で形成された後、被操作部を軸部へと固定する場合のみならず、両者が一体で形成されている場合も含む。また、軸部は、被操作部に対して必ずしも直接固定されている必要はなく、被操作部に対し間接的に(被操作部との間に何らかの部材が介在した状態で)固定されていてもよい。さらに、軸部は、被操作部に対し完全に不動な状態である必要はない。例えば、両者の間に若干の隙間が形成されていたり、両者の間にバネ等の緩衝材を設けたりすることで、軸部が被操作部に対し若干相対移動可能であってもよい。
【0012】
従来、栓蓋を遠隔操作するための操作装置は、被操作部及びこれと直列的に固定された軸部を有する操作部材と、被操作部の移動に伴い移動可能な伝達部材(例えば、ワイヤー等)とを備えている。また、操作装置としては、操作部材(被操作部及び軸部)の移動方向と、伝達部材のうち被操作部側に位置する端部の往復移動方向とが同一方向とされたものが知られている(例えば、特開2005−133331号等参照)。
【0013】
しかしながら、このような操作装置においては、被操作部(軸部)の移動方向に沿った操作装置の長さが比較的大きなものとなってしまう。そのため、安全性や美感の面から、操作装置(例えば、被操作部)が取付対象物(例えば、浴槽等の槽体や槽体の周辺に設けられた構造物)の表面から突出しないように構成すれば、操作装置が取付対象物の背面から奥側に大きく突出することとなってしまう。従って、操作装置を配設可能な位置は、取付対象物のうち奥行(内部スペース)が十分に存在する位置に限られてしまう(すなわち、操作装置の取付自由度が低下してしまう)おそれがある。
【0014】
一方で、操作装置が取付対象物の表面から突出するように構成すれば、取付対象物のうち奥行(内部スペース)の比較的小さな部位に対しても操作装置を取付けることができる。しかし、この場合には、安全性や美感の低下を招いてしまうおそれがある。つまり、従来の操作装置では、取付自由度と、安全性及び美感とは、いわばトレードオフの関係にあり、双方において良好な性能を得ることは困難である。
【0015】
この点、上記手段2によれば、操作装置に対し運動方向変換部等が設けられており、被操作部を移動させて回動部を回動させたときに、回動部の回動方向の接線方向に沿って伝達部材の一端部が移動する。従って、伝達部材の一端部の移動方向を、軸部の往復移動方向と直交する方向(軸部の周方向)とすることができ、また、軸部と伝達部材の一端部とが直列的に並ばないようにすることができる。これにより、軸部の移動方向に沿った操作装置の長さを非常に小さなものとすることができる。その結果、良好な安全性や美感を確保しつつ、取付自由度を飛躍的に高めることができる。
【0016】
さらに、伝達部材の往復移動方向を操作部材の往復移動方向と直交する方向(操作部材の中心軸の周方向)とするために、上記特開2005−133331号公報の
図1等に示されるように、レリースワイヤを曲げる必要はない。従って、レリースワイヤの曲げに伴い、伝達部材及びチューブ部材間で生じる摩擦力が大きくなって操作性が低下してしまったり、伝達部材等に破損が生じてしまったりすることをより確実に防止できる。
【0017】
手段3.前記取付対象物は、底面部と、当該底面部に立設された側壁部とを有する浴槽であり、
前記貫通孔は、前記側壁部に形成されていることを特徴とする手段2に記載の排水栓装置。
【0018】
浴槽の側壁部は、通常、この裏側に位置する壁面やエプロンとの間隔が小さなものとなりやすい。従って、通常、側壁部に対し操作装置を取付けることは決して容易ではない。
【0019】
この点、上記手段2によれば、被操作部の移動方向に沿った操作装置の長さを非常に小さなものとすることができる。従って、壁面等との間隔が小さい側壁部に対しても操作装置を取付けることがより容易に可能となる。換言すれば、上記手段2は、貫通孔が浴槽の側壁部に設けられている場合に、特に有効である。
【0020】
手段4.前記取付対象物は、所定の壁面との間で隙間をあけて配置される板状のバックガードを備えてなる洗面化粧台であって、
前記貫通孔は、前記バックガードに形成されていることを特徴とする手段2に記載の排水栓装置。
【0021】
洗面化粧台のバックガードは、通常、この裏側に位置する壁面との間隔が小さい。従って、バックガードに対し操作装置を取付けることは容易ではない。
【0022】
この点、上記手段2によれば、被操作部の移動方向に沿った操作装置の長さを非常に小さなものとすることができる。従って、壁面等との間隔が小さいバックガードに対しても操作装置を取付けることがより容易に可能となる。換言すれば、上記手段2は、貫通孔が洗面化粧台のバックガードに設けられている場合に、特に有効である。
【0023】
手段5.前記取付対象物は、底面部と、当該底面部に立設された側壁部と、当該側壁部との間で隙間をあけて配置される板状のエプロンとを備えてなる浴槽であり、
前記貫通孔は、前記エプロンに形成されていることを特徴とする手段2に記載の排水栓装置。
【0024】
浴槽のエプロンは、通常、この裏側に位置する側壁部との間隔が小さいものとされる。従って、エプロンに対し、その板厚方向に貫通孔を形成した上で、当該貫通孔に対応して操作装置を取付けることは決して容易ではない。
【0025】
この点、上記手段2によれば、被操作部の移動方向に沿った操作装置の長さを非常に小さなものとすることができる。従って、側壁部との間隔が小さいエプロンに対しても操作装置を取付けることがより容易に可能となる。換言すれば、上記手段2は、貫通孔が浴槽のエプロンに設けられている場合に、特に有効である。
【0026】
手段6.前記取付対象物は、洗い場及び当該洗い場に隣接して設置される浴槽と、前記洗い場及び前記浴槽の周囲に設置される複数の板状の壁パネルとを備えてなる浴室ユニットであり、
前記貫通孔は、前記壁パネルに形成されていることを特徴とする手段2に記載の排水栓装置。
【0027】
浴室ユニットの壁パネルは、通常、この裏側に位置する壁面との間隔が小さなものとなりやすい。従って、通常、壁パネルに対し操作装置を取付けることは容易ではない。
【0028】
この点、上記手段2によれば、被操作部の移動方向に沿った操作装置の長さを非常に小さなものとすることができる。従って、壁面との間隔が小さい壁パネルに対しても操作装置を取付けることがより容易に可能となる。換言すれば、上記手段2は、貫通孔が浴室ユニットの壁パネルに設けられている場合に、特に有効である。
【0029】
手段7.前記被操作部を移動させたときに、前記伝達部材の一端部の移動量が、前記被操作部の移動量よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする手段2乃至6のいずれかに記載の排水栓装置。
【0030】
上記手段7によれば、栓蓋のより確実な上下動を図りつつ、被操作部の往復移動量(ストローク量)をより小さなものとすることができる。従って、被操作部の移動方向に沿った操作装置の長さをより小さなものとすることができ、取付自由度を一層高めることができる。また、排水口を開閉するために必要な被操作部の往復移動量を小さくすることができ、操作性を向上させることができる。
【0031】
さらに、被操作部の移動量を小さくできることにより、使用者が排水口を開閉しようとしたときに、被操作部の移動量が不十分となり、排水口の開閉に失敗してしまう(例えば、排水口を閉鎖したつもりが、実際には閉鎖されていない)といった事態をより確実に防止することができる。これにより、使用者にとっての使い勝手の向上を図ることができる。
【0032】
尚、上記手段7は、例えば、回動部の回動軸から回動部のうち伝達部材の一端部に動力を加える部位までの距離(半径)を調節したり、軸側接触部及び回動側接触部の少なくとも一方に設けられた傾斜面状部分の、軸部の移動方向に対する傾斜角度を調節したり〔すなわち、軸部の単位移動量当たりにおける回動部の回動量(回転角度)を調節したり〕することで実現することができる。
【0033】
手段8.前記取付対象物に対し直接又は間接的に取付けられ、前記回動部のその回動軸方向の端面が接触するとともに、前記回動部の回動時に前記端面が摺動する操作側回動支持部を備え、
前記軸部は、前記被操作部とは反対側に開口する穴部を具備する筒状をなし、
前記操作側回動支持部は、前記穴部に挿通される棒状部を備え、
前記穴部及び前記棒状部は、前記穴部に対し前記棒状部が挿通された状態において、前記棒状部に対し前記軸部が相対回転不能となるように構成されており、前記棒状部及び前記軸部のうち前記穴部を形成する部位によって前記回転規制部が構成されることを特徴とする手段2乃至7のいずれかに記載の排水栓装置。
【0034】
上記手段8によれば、回動部は、その回動時に、操作側回動支持部を摺動する。従って、回動部をより安定的に回動させることができ、装置の動作安定性を一層高めることができる。
【0035】
さらに、上記手段8によれば、操作側回動支持部は、回転規制部の一部(棒状部)を有するものとされる。そのため、装置の小型化を一層図ることができ、取付自由度の更なる向上や製造コストの低減を図ることができる。
【0036】
尚、操作側回動支持部は、前記回動部の端面と接触する部位に、ボールベアリングやころ軸受等を備えていてもよい。この場合には、回動部をよりスムーズに回動させることができる。
【0037】
手段9.内部空間が前記排水口を通る排水の流路を構成する筒状の排水管と、
前記栓蓋に対し直接又は間接的に取付けられるとともに、前記排水管内に配置された被支持部材と、
前記排水管に取付けられるとともに、前記軸部、前記回動部、及び、前記運動方向変換部を具備してなる栓蓋側機構部とを備え、
前記伝達体は、筒状のチューブ部材と、当該チューブ部材の内周において往復移動可能に構成された伝達部材とを有してなるレリースワイヤを備えており、前記被操作部を移動させることで前記伝達部材が往動するように構成され、
前記軸部は、前記伝達部材のうち前記被操作部とは反対側に位置する端部が接続されるとともに、前記伝達部材の往復移動時に前記伝達部材とともに移動し、
前記回動部には、前記排水管内へと突出するとともに、少なくとも前記排水口を開放した状態において前記被支持部材が載置されることで前記被支持部材を支持する支持部が設けられ、
前記支持部は、前記回動部の回動に伴い回動しつつ上下動可能であるとともに、前記軸部の移動に伴い前記回動部が回動したときに、上動又は下動するように構成されており、
前記支持部の上下動に伴い前記被支持部材及び前記栓蓋が上下動するように構成されていることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0038】
上記手段9の排水栓装置では、回動部の回動に伴い、支持部が回動しつつ上動することで、支持部によって被支持部材が持ち上げられる。その結果、栓蓋が上動し排水口が開放される。一方、回動部の回動に伴い、支持部が回動しつつ下動することで、被支持部材が下動する。その結果、栓蓋が下動し排水口が閉鎖される。
【0039】
このような排水栓装置において、上記手段9によれば、比較的簡素な構成により、軸部の運動を回動部の回動運動へと変換し、ひいては支持部を上下動させることができる。従って、栓蓋側機構部の動作安定性を高めることができる。
【0040】
また、上記手段9によれば、栓蓋側機構部の簡素化や小型化を図ることができる。そのため、排水管に対する栓蓋側機構部の取付自由度を高めることができる。
【0041】
尚、支持部は、回動部の軸方向端面において回動軸と非同軸に設けられた突起であってもよいし、回動部の外周から外側に向けて突出する棒状部材であってもよい。
【0042】
手段10.前記被操作部を移動させたときに、前記支持部の鉛直方向に沿った移動量が、前記軸部の移動量よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする手段9に記載の排水栓装置。
【0043】
尚、「支持部の鉛直方向に沿った移動量」とあるのは、栓蓋の上下方向に沿った移動量(リフト量)ということもできる。
【0044】
上記手段10によれば、栓蓋のより確実な上下動を図りつつ、軸部の往復移動量(ストローク量)をより小さなものとすることができる。従って、軸部の往復移動方向に沿った栓蓋側機構部の長さをより小さなものとすることができる。これにより、排水管に対する栓蓋側機構部の取付自由度を高めることができる。また、排水口を開閉するために必要な被操作部の往復移動量を小さくすることができ、操作性を向上させることができる。
【0045】
さらに、被操作部の往復移動量を小さくできることにより、使用者が排水口を開閉しようとしたときに、被操作部の移動量が不十分となり、排水口の開閉に失敗してしまうといった事態をより確実に防止できる。これにより、使用者にとっての使い勝手の向上を図ることができる。
【0046】
尚、上記手段10は、例えば、回動部の回動軸から支持部(特に、被支持部材を支持する部位)までの距離(回動半径)を調節したり、軸側接触部及び回動側接触部の少なくとも一方に設けられた傾斜面状部分の、軸部の移動方向に対する傾斜角度を調節したり〔すなわち、軸部の単位移動量当たりにおける回動部の回動量(回転角度)を調節したり〕することで実現することができる。
【0047】
手段11.前記排水管は、前記排水の流路を構成する筒状の主管と、当該主管の外周から突出し前記主管に連通された筒状の取付管とを備え、
前記取付管は、自身の内周に自身の軸方向に沿って延びる凹部を有し、
前記軸部は、前記凹部に配置される突部を備え、
前記回転規制部は、前記突部、及び、前記取付管のうち前記凹部を形成する部位によって構成されることを特徴とする手段9又は10に記載の排水栓装置。
【0048】
上記手段11によれば、排水管(取付管)を利用することで回転規制部を実現することができる。従って、装置の小型化や簡素化を一層図ることができるとともに、製造コストをさらに抑制することができる。
【0049】
手段12.前記排水管は、前記回動部のその回動軸方向の端面が接触するとともに、前記回動部の回動時に前記端面が摺動する排水管側回動支持部を備えることを特徴とする手段9乃至11のいずれかに記載の排水栓装置。
【0050】
上記手段12によれば、回動部は、その回動時に、排水管側回動支持部を摺動する。従って、回動部をより安定的に回動させることができ、装置の動作安定性を一層高めることができる。
【0051】
加えて、上記手段12によれば、排水管の一部によって排水管側回動支持部が構成されるため、装置の小型化や簡素化をより図ることができ、製造コストの抑制を一層図ることができる。
【0052】
手段13.少なくとも前記回動側接触部のうち前記軸側接触部に接触する部位は、前記軸部の運動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記回動側接触部のうち前記軸側接触部に接触する部位は、その全域において、前記軸部の運動方向に対する傾斜が一定とされた螺旋状をなすことを特徴とする手段1乃至12のいずれかに記載の排水栓装置。
【0053】
上記手段13によれば、軸部を移動させたときに、軸側接触部において、回動側接触部に接触する部分を常に同一部分とすることができる。従って、被操作部を移動させたときに、回動部を安定的に回動させることができ、動作安定性の向上を図ることができる。
【0054】
また、上記手段13によれば、被操作部を移動させるときに、使用者は、被操作部に生じる負荷の変化(前記負荷は、例えば、伝達部材を復動させるための戻り力付与部等で生じる力の変化や、軸側接触部及び回動側接触部間で生じる摩擦力の変化、開栓の状態などにより変化する)等をより確実に知覚することができる。その結果、使用者は、排水口を開閉する際に、被操作部を介して栓蓋の状況などをより確実に把握することができ、ひいては操作ミスが生じてしまう等の事態をより確実に防止できる。
【0055】
手段14.少なくとも前記回動側接触部のうち前記軸側接触部に接触する部位は、前記軸部の運動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記回動側接触部のうち前記軸側接触部に接触する部位は、前記軸部の運動方向に対する傾斜が一定ではない形状をなすことを特徴とする手段1乃至12のいずれかに記載の排水栓装置。
【0056】
上記手段14によれば、被操作部を移動させる際に軸部等へと加わる力などを考慮し、回動側接触部の傾斜を調整することで、良好な操作性を得ることができる。
【0057】
例えば、被操作部を移動させて回動部を回動させるときに、回動部が回動し開栓し始めるまでには、開栓した後よりも比較的大きな力を要する点を考慮して、回動側接触部のうち、被操作部を移動させて回動部を回動させるときに軸側接触部と最初に接触する部分の傾斜を、回動側接触部におけるその他の部分の傾斜よりも緩やかにしてもよい。この場合には、回動部を回動させて開栓し始めるときに必要となる被操作部への押圧力を比較的小さくすることができる。
【0058】
また、例えば、伝達部材を復動させるための戻り力付与部(例えば、バネ部材)等が設けられ、被操作部を往動させるにつれて、前記バネ部材等から被操作部に対しその復動方向に加わる力が大きくなるように構成した場合には、回動側接触部のうち、前記戻り力付与部等から被操作部に対しその復動方向に加わる力が所定値よりも大きくなる段階で軸側接触部と接触する部分の傾斜を、回動側接触部におけるその他の部分の傾斜よりも緩やかにしてもよい。この場合には、例えば、被操作部を移動させるときの最後の段階(被操作部の押込みが完了する直前の段階)などにおいて、回動部を回動させるために被操作部へと加えることが必要な押圧力を比較的小さく抑えることができる。
【0059】
さらに、例えば、回動側接触部のうち、回動部を回動させるために被操作部へと加えることが必要な押圧力が比較的小さくて済む段階(例えば、回動部の回動開始後、各部材間の遊びや隙間がなくなるまでの段階)で軸側接触部と接触する部分については、その傾斜を比較的急なものとしてもよい。この場合には、被操作部の移動量(操作量)が比較的小さくても、伝達部材や支持部を比較的大きく移動させることができる。
【0060】
手段15.少なくとも前記軸側接触部のうち前記回動側接触部に接触する部位は、前記軸部の運動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記軸側接触部のうち前記回動側接触部に接触する部位は、その全域において、前記軸部の運動方向に対する傾斜が一定とされた螺旋状をなすことを特徴とする手段1乃至12のいずれかに記載の排水栓装置。
【0061】
上記手段15によれば、基本的には上記手段13と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0062】
手段16.少なくとも前記軸側接触部のうち前記回動側接触部に接触する部位は、前記軸部の運動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記軸側接触部のうち前記回動側接触部に接触する部位は、前記軸部の往復移動方向に対する傾斜が一定ではない形状をなすことを特徴とする手段1乃至12のいずれかに記載の排水栓装置。
【0063】
上記手段16によれば、基本的には上記手段14と同様の作用効果が奏されることとなる。すなわち、被操作部を移動させる際に軸部へと加わる力などを考慮し、軸側接触部の傾斜を調整することで、良好な操作性を得ることができる。
【0064】
尚、上記手段16に係る排水栓装置としては、例えば、上記手段14において例示した回動側接触部の構成を、軸側接触部のうち回動側接触部に接触する部位へと適用したものなどを挙げることができる。
【0065】
手段17.前記軸部は、自身の軸方向に沿って往復移動可能であり、
少なくとも前記回動側接触部は、前記軸部の運動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記回動部は、前記軸部の運動方向に沿って前記回動側接触部と対向し、前記回動側接触部と同じ向きに傾斜する傾斜面状の回動側対向部を備え、
前記軸部の往動に伴い、前記軸側接触部が前記回動側接触部及び前記回動側対向部の一方を押圧することで、前記回動部が前記軸部に対し一方側に相対回動するとともに、
前記軸部の復動に伴い、前記軸側接触部が前記回動側接触部及び前記回動側対向部の他方を押圧することで、前記回動部が前記軸部に対し他方側に相対回動するように構成されていることを特徴とする手段1乃至16のいずれかに記載の排水栓装置。
【0066】
上記手段17によれば、軸部を押引き動作(往復)させることで、回動部を両方向に回動させることができる。従って、回動部を他方側に回動させるための部材(例えば、バネ部材からなる戻り力付与部等)を設ける必要がなくなり、製造コストの増大抑制や装置の簡素化(小型化)を一層図ることができる。
【0067】
また、回動側対向部が存在することによって、軸部が意図せず移動してしまうことを防止できる。これにより、被操作部の意図しない移動をより確実に防止することができ、使用者にとっての使い勝手をより高めることができる。
【0068】
手段18.前記軸部は、自身の軸方向に沿って往復移動可能であり、
少なくとも前記軸側接触部のうち前記回動側接触部と接触する部位は、前記軸部の運動方向に対し傾斜する傾斜面状をなしており、
前記軸部は、自身の運動方向に沿って前記軸側接触部の前記傾斜面状をなす部位の背後に位置し、前記軸側接触部のうち前記傾斜面状をなす部位と同じ向きに傾斜する傾斜面状の軸側背面傾斜部を備え、
前記回動部は、前記軸側背面傾斜部と接触可能な第二回動側接触部を備え、
前記軸部の往動に伴い、前記回動側接触部に対する前記軸側接触部の押圧、及び、前記第二回動側接触部に対する前記軸側背面傾斜部の押圧の一方が行われることで、前記回動部が前記軸部に対し一方側に相対回動するとともに、
前記軸部の復動に伴い、前記回動側接触部に対する前記軸側接触部の押圧、及び、前記第二回動側接触部に対する前記軸側背面傾斜部の押圧の他方が行われることで、前記回動部が前記軸部に対し他方側に相対回動するように構成されていることを特徴とする手段1乃至16のいずれかに記載の排水栓装置。
【0069】
上記手段18によれば、上記手段17と同様の作用効果が奏されることとなる。すなわち、製造コストの増大や装置の簡素化(小型化)をより図ることができるとともに、使い勝手の一層の向上を図ることができる。
【0070】
手段19.前記軸部の中心軸を回転軸として回転可能な状態で前記軸部に取付けられるとともに、前記軸部とともに移動可能であり、かつ、外側に突出形成された被係合部を有する回転リングと、
前記軸部のうち前記回転リングの取付けられた部位の外周に配置されるとともに、前記取付対象物及び前記槽体の少なくとも一方に対し相対移動不能とされた筒状のロック用筒部とを備えるとともに、
前記ロック用筒部は、その周方向に沿って複数設けられた、前記軸部の運動方向に沿って延びる筒側溝部を有し、かつ、
前記ロック用筒部に対し前記軸部をその軸方向に沿った所定位置以上まで移動させることで、前記ロック用筒部に設けられた係合歯に対し前記被係合部が係合されること、及び、前記係合歯に対する前記被係合部の係合が解除され、前記筒側溝部に前記被係合部が落ち込むとともに、前記軸部が所定の戻り位置まで戻ることが交互になされるように構成されたロック機構を具備し、
前記軸部は、外側に突出する突起部を備え、
前記突起部の少なくとも一部は、前記軸部が移動するときに、常に前記筒側溝部に配置され、
前記筒側溝部に前記突起部が配置されることで、前記回転規制部としての機能が発揮されるように構成されていることを特徴とする手段1乃至18のいずれかに記載の排水栓装置。
【0071】
一般にロック機構(例えば、スラストロック機構)において、筒側溝部は、回転リング(被係合部)を相対回転不能な状態で移動させるために用いられるが、上記手段19によれば、筒側溝部は、軸部の相対回転を規制する回転規制部としての機能を実現するためにも用いられる。つまり、筒側溝部は、回転リングの相対回転を規制することと、軸部の相対回転を規制することとの双方において共通して用いられる。従って、ロック機構を設けながらも、装置が複雑化してしまうことをより確実に防止できる。その結果、装置の簡素化(小型化)や製造コストの増大抑制をより確実に図ることができる。