特許第6405296号(P6405296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲーエー ジェンバッハー ゲーエムベーハー アンド コー オーゲーの特許一覧

特許6405296内燃機関の運転方法、内燃機関及び発電セット
<>
  • 特許6405296-内燃機関の運転方法、内燃機関及び発電セット 図000002
  • 特許6405296-内燃機関の運転方法、内燃機関及び発電セット 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405296
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】内燃機関の運転方法、内燃機関及び発電セット
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20181004BHJP
   F02D 41/14 20060101ALI20181004BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20181004BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20181004BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20181004BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   F02D41/04 330Z
   F02D41/04 305Z
   F02D41/04 345Z
   F02D41/14 330A
   F02D43/00 301B
   F02D43/00 301H
   F02D45/00 364Z
   F02M21/02 301A
   H02P9/04 J
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-206182(P2015-206182)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-89828(P2016-89828A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年12月21日
【審判番号】不服2017-12207(P2017-12207/J1)
【審判請求日】2017年8月17日
(31)【優先権主張番号】A 796/2014
(32)【優先日】2014年10月30日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】504344576
【氏名又は名称】ゲーエー ジェンバッハー ゲーエムベーハー アンド コー オーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン ヒルジンガー−ウンターライナー
(72)【発明者】
【氏名】ウーベ リーブシャー
(72)【発明者】
【氏名】ハーバート シャムベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ タールハウザー
【合議体】
【審判長】 金澤 俊郎
【審判官】 松下 聡
【審判官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0292921(US,A1)
【文献】 特開2009−254232(JP,A)
【文献】 特開2014−159808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D29/00-29/06
F02D41/00-45/00
F02M21/02
H02P9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)の運転方法であって、燃料空気混合気を前記内燃機関(1)内で燃焼させて、前記内燃機関(1)で発電機(2)を駆動させ、該発電機(2)が電力供給ネットワーク(3)に接続されていて、該電力供給ネットワーク(3)に電力を供給し、該電力供給ネットワーク(3)への前記発電機(2)の電力供給が減少する動的ネットワーク障害の検知時に、前記内燃機関(1)の加速を防止又は制限すると同時に前記内燃機関(1)への燃料供給を増加させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記内燃機関(1)の加速を防止又は制限するための点火手段(10)の非アクティブ化と同時に前記内燃機関(1)への燃料供給を増加させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記内燃機関(1)へ供給される前記混合気のラムダ値を低下させることによって前記内燃機関(1)への燃料供給を増加させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つのポート噴射バルブ(11)のためのガス量を増加させることによって前記内燃機関(1)への燃料供給を増加させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
チャージ圧力の増加によって前記内燃機関(1)への燃料供給を増加させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
発電機と、内燃機関(1)とを備える発電セット(13)であって、内燃機関(1)が、
電力供給ネットワーク(3)への前記発電機の電力供給が減少する動的ネットワーク障害を検知するための少なくとも一つのセンサと、
動的ネットワーク障害時に前記内燃機関(1)の加速を防止又は制限するための少なくとも一つの制限装置と、
少なくとも一つの点火手段(10)と、
少なくとも一つの燃料計測装置(6、11)と、
開ループ・閉ループ制御装置(12)と、
を含んでおり、
動的ネットワーク障害の検知時に、前記内燃機関(1)への燃料供給が増加するように、前記開ループ・閉ループ制御装置(12)が前記燃料計測装置(6、11)に作用することを特徴とする、
発電セット(13)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1記載の前提部分の特徴を有する内燃機関の運転方法に関する。本発明は、請求項6記載の前提部分の特徴を有する内燃機関と、請求項7記載の前提部分の特徴を有する発電セット(ゲンセット;genset)にも関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一つの内燃機関と少なくとも一つの発電機とを含んだ定置電力設備は、主力ネットワーク並行モードの運用で頻繁に使用されており、電力供給ネットワークにエネルギーを供給する。特にガス機関、すなわち気体燃料でオットーサイクルにて運転される内燃機関は、高い効率性と低レベルの汚染物排出性を有するため、そのような利用形態に適している。
【0003】
主力ネットワーク並行モードの運用では、電力供給ネットワークが標的の電圧と標的の周波数、および交流発電機の交流電圧の位相を予め設定する。
【0004】
電力供給ネットワークで、電圧降下や電圧変動、すなわち動的ネットワーク障害が発生すると、内燃機関とそれに接続された交流発電機の回転速度が、電力供給ネットワークによる抵抗の降下のため、適切な防止策なしで、急速に上昇する。
【0005】
動的ネットワーク障害という用語は、数百ミリ秒(ms)と、例えば700ms以下、好適には500msとの間の範囲での電圧降下または変動を意味するように使用される。
【0006】
電力供給ネットワークでの電圧降下は、“低電圧状況”として言及される。
【0007】
主力ネットワーク並行モードの運用での利用の場合には、ネットワーク障害をさらに悪化させない目的で、電力供給設備のために設定された頻繁なデフォルトが存在する。
【0008】
動的ネットワーク障害中に電力供給装置が適切に反応する性能、すなわちネットワークに悪影響を及ぼすことなくネットワークへの接続状態を保つ性能は、“フォールトライドスルー”(FRT)または、電圧降下と関連して、“低電圧ライドスルー”(LVRT)と称される。
【0009】
負荷の降下の場合での内燃機関の回転速度の上昇(加速)を防止する目的で、いくつかの調節方法が従来技術から知られている。
【0010】
AT413132Bは、閉ループ調節装置について解説しており、負荷減少作用のためにスロットルバルブを完全閉鎖位置とは異なる許容可能程度の最小位置に設定し、過剰な回転を防止するため、少なくとも一つのシリンダを閉鎖する。
【0011】
AT509558B1は、交流発電機または内燃機関の実際の速度が、電力供給ネットワークに関する故障によって予備設定可能な所定最大値を超えた時に、電力供給ネットワークへの接続を維持しながら、内燃機関内の燃焼が少なくとも一時的に停止される方法について解説している。この方法では、交流発電機と電力供給ネットワークとの間の接続を維持しながら、閉ループ制御装置が、回転速度の予備設定可能な制限値を超えた内燃機関への燃料供給を減少させる、および/または少なくとも一つの点火装置を停止させる。
【0012】
EP2433355B1は、電力負荷の突然の変化に対応して、電圧降下の検知前に存在していた内燃機関への燃料供給を維持すると同時に、内燃機関からの出力を減少させるように内燃機関の点火状況を変更する、および/または、発電機へのモーメントを増加させるように発電機の励磁装置の磁界を増加させて、内燃機関と発電機への抵抗を均衡状態に維持する。
【0013】
US20110180043A1は、電子燃料噴射装置を備えた発電機(発電セット)のための内燃機関を開示しており、負荷が変化すると、点火時調整と燃料噴射が電気値とクランクシャフト位置によって変化できる。
【0014】
したがって、従来技術に開示された調節概念は、ネットワーク障害の発生前に存在していた燃料供給を減少させるか、または燃料供給をせいぜい維持し、同時にネットワークでの電圧降下中に内燃機関からの電力出力を減少させるように点火状態を変化させる。これら両方策は、特に長時間(約100ms以上)のネットワーク障害に関するネットワーク回復の場合における、ネットワーク運用装置のデフォルト予備設定に伴う重大な問題をもたらす可能性がある内燃機関の駆動電力の降下を発生させる。
【0015】
同じ一般的な方法について解説しておらず、先の優先権を有するが公開されていない本件出願人のオーストリア特許出願A832/2013は、ネットワーク障害後の数10ミリ秒の短時間内に発生する、短絡回路プロセスの初期過度効果の取扱い効果に関与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】AT413132B
【特許文献2】AT509558B1
【特許文献3】EP2433355B1
【特許文献4】US20110180043A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、これらの欠点を有さない方法、内燃機関および発電セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法、請求項6記載の内燃機関、および請求項7記載の発電セットによって達成される。
【0019】
ネットワークでのネットワーク障害の検知時または検知後に内燃機関への燃料供給が増加するという事実は、電圧降下が消滅した後の長期間のネットワーク障害後であっても、内燃機関が可能な限り迅速に、その定格負荷(nominal load)に戻るということを示す。
【0020】
本発明の一利用形態は、希薄燃焼(リーンバーン)機関(ラムダ>1での運転)である。なぜなら、これは高濃度化および/またはチャージ圧力の増加を提供するからである。
【0021】
化学量論的燃焼(ラムダ=1での運転)の機関の場合には、高濃度化は好都合ではないが、ここでは、燃料供給の増加は、チャージ圧力(注入圧力)の増加によって実行できる。
【0022】
前述の本件出願人の、同じ一般的方法には関係せず、先の優先日を有するが公開されていないオーストリア特許出願A832/2013とは異なり、本出願は、初期過度効果(subtransient effects)の消滅後の結果への対応に関与している。
【0023】
混合気チャージ内燃機関の場合、燃料供給の増加をできるだけ早く、すなわち発電機からの電力供給の減少につながるネットワーク障害の検知時または検知後に直ちに実行することが有利である。なぜならここでは、混合気経路の長さは燃料計測器(例えばガス混合器)の位置から燃焼チャンバへの混合気の搬送の遅延につながるからである。よって、燃料計測システムで採られる方策は、燃焼チャンバで時間遅延を伴って効果を発揮する。ポート噴射装置の場合、すなわち燃料計測が燃焼チャンバの直ぐ上流で実行される内燃機関では、燃料供給を増加させるための介入(intervention)は、混合気チャージ内燃機関と比較して、遅れて発生する。
【0024】
よって、一般的な知識および直観に反して、本発明による方法では、ネットワーク障害を検知時に燃料供給は直ちに減少または維持されず、反対に、増加される。この燃料供給という用語は、単位時間内での炭化水素の形態の化学的エネルギーの供給量を意味するために使用されている。
【0025】
好適には、内燃機関への燃料供給は、点火手段の非アクティブ化(非活動化、停止;deactivation)または遅延と同時にまたは点火手段の非アクティブ化または遅延の後に増加される。
【0026】
追加的に、または代わりに、内燃機関の機械的制動を機械的制動装置によって提供できる。
【0027】
動的ネットワーク障害の検知時または検知後に内燃機関の加速を防止または制限する方策は、例えば機械的制動であり、加えて発電機の制動モーメントを増加させ、例えば発電機の励起電流を増加させる方策や、チャージ圧力を減少させる方策や、オーム抵抗への電力の拡散等の方策などである。一般的な用語では、これらは駆動構造体の電力出力を減少させる方策である。
【0028】
内燃機関への燃料供給が、内燃機関へ供給される混合気のラムダ値を低下させることによって増加されることが好適である。混合気形成が、機関への移動前(一般的にターボチャージャの上流)に発生するなら、すなわち機関が混合気チャージ内燃機関であるなら、燃料供給を増加させるための制御介入が、混合気の高濃度化、すなわちラムダの減少を発生させる方向でのガス計測バルブのためのガス量標的予備設定を変更することによって実行される。
【0029】
変形例では、内燃機関への燃料供給は、少なくとも一つのポート噴射バルブのためのガス量を増加させることによって増加される。これは、例えばポート噴射を備えた内燃機関の場合のように、混合気形成がターボチャージャの後である場合、燃料供給を増加させるための制御介入は、少なくとも一つのポート噴射バルブのためのガス量標的予備設定を増加させることによって実行される。この場合には、これは給気機関とも言う。
【0030】
特に混合気チャージ内燃機関の場合、内燃機関への燃料供給がチャージ圧力を増加させることによって増加されることが特に有利である。チャージ圧力は、例えばスロットルバルブの開放、効果的なコンプレッサ出力の増加(例えばコンプレッサバイパスの閉鎖またはウエィストゲートの閉鎖などによる)、若しくは可変ターボチャージャ容量が利用可能であるときのターボチャージャ容量の変更、またはこれらの組み合わせによって増加できる。
【0031】
この制御介入は好適には、点火作動と同時または点火作動後に再び復帰する。
【0032】
特許保護は、ネットワーク障害の検知時または検知後に、内燃機関への燃料供給が増加するよう、開ループ・閉ループ制御装置が燃料計測装置に影響を及ぼす内燃機関にも請求される。動的ネットワーク障害時に内燃機関の加速を防止または制限するための制限装置は、例えば、動的ネットワーク障害の検知時または検知後に内燃機関の加速を防止するか、または制限する、上記で言及された方策を設定させる開ループ・閉ループ制御装置の機能によって具現化できる。
【0033】
特許保護は、本発明による発電機と内燃機関とを含んだ発電セットにも請求される。発電セットという用語は、電力を発生させる発電機を備えた(定置)内燃機関の構造体を表わす、当業者には普通の特定用語である。
【0034】
好適には、本発明は、本発明の内燃機関により電力供給ネットワークへ供給される電力が、電力供給ネットワークの全電力よりも顕著に少ない(例えば10%未満、好適には1%未満)電力供給ネットワークにて利用される。
【0035】
この内燃機関は、特に定置ガス機関である定置機関でよい。
【0036】
本発明を、図面との関連において以降でさらに詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、付属制御部材を備えた内燃機関の概略図である。
図2図2は、時間に対する制御介入の概略的グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、排気ガスタービン4、コンプレッサ5、ガス計測装置6、コンプレッサバイパスバルブ7、混合気インタークーラ8およびスロットルバルブ9を有する内燃機関1の概略図である。内燃機関1の実際の機関ブロックは符号100で示されている。ガスはガス計測装置6に供給される。空気の供給Aは、この図ではガス計測装置6の下流で実行されている。ガスGおよび空気Aを、例えばベンチュリ混合器などの一般的な装置内に供給することも当然可能である。
【0039】
内燃機関1は点火手段10を有している。オプションとして、ポート噴射バルブ11を設けることが可能であり、ポート噴射バルブ11を通して燃料を吸気バルブの直ぐ上流で内燃機関1の燃焼チャンバに供給することができる。ポート噴射バルブ11は例示としてのみ示されている。図1の形態では、燃料計測がガス計測装置6(例えばガス混合器)によって実行される混合注入機関が関与している。
【0040】
点火手段10とポート噴射バルブ11は、1つのシリンダ用のためだけの簡易な形態で図示されている。
【0041】
内燃機関に発電機2がシャフトによって接続されている。発電機2はここでは三相同期発電機の形態である。発電機2は、電力供給ネットワーク3へ電力を供給する。回転速度nactは、例えば回転速度計測手段などによって、内燃機関1と発電機2との間のシャフトで検出できる。対応するセンサはここでは図示されていない。
【0042】
開ループ・閉ループ制御装置12が、信号線を介して指令(コマンド)を制御部材ガス計測装置6、コンプレッサバイパスバルブ7、スロットルバルブ9、点火手段10、およびポート噴射バルブ11に送信する。開ループ・閉ループ制御装置12は、例えば速度nactなどの機関および/または発電機パラメータに関する信号も受信する。
【0043】
発電機2を備えた内燃機関1の構造体は、発電セット13と呼ばれる。
【0044】
図2は、時間に対する状況と制御介入とに関するグラフを示している。
【0045】
曲線nactは、ネットワーク障害前、最中またはその後の内燃機関の回転速度nactの変化を示している。回転速度は、時間tにおけるネットワーク障害のための電力出力の減少によって最初は上昇する。
【0046】
遅延と共に、方策“点火停止”が時間tign offで発生し、回転速度が降下する。予め設定可能な最低速度に到達すると、点火手段が再起動する。ネットワーク障害が消滅した後の振動後効果(post−oscillation effects)も確認できる。
【0047】
曲線Ugridは、時間に対するネットワーク電圧の変化を示している。時間tでは、時間tまで持続するネットワークの電圧降下が観察される。
【0048】
曲線Ignは、内燃機関のスパーク点火の状況を概略的に示している。この点において、曲線の高位置は通常運転での点火状況を示しており、一方曲線の低位置は点火手段の非アクティブ化を示している。時間tignoffでは、点火手段は例えば電圧降下などのネットワーク障害への反応として非アクティブ化している。時間tignonでは、点火手段はネットワーク障害前に優勢であった点火モードに再び戻されている。
【0049】
元の点火モードへの点火の再設定のための起動状況は、例えば回転速度信号であり、すなわち、速度の低下が観察されると点火手段が再アクティブ化(再起動)されるか、ネットワーク障害前に優勢であった点火モードに再設定(リセット)される。
【0050】
回転速度信号の代わりに、例えばロータ信号(rotor signal)などを使用することが可能である。
【0051】
その下の曲線中、燃焼空気燃料の比であるラムダ(λ)値が、時間に対して示されている。空燃比ラムダという用語は十分に良く知られている。ラムダ値1は化学量論的状態を表わしており、すなわち燃料の化学量論的燃焼に必要とされる利用可能な正確な空気量が存在していることを表わしている。1未満のラムダは、準化学量論的(化学量論より少ない)であることを表わし、すなわち高濃度の運転モードを示しており、一方、1を超えるラムダは、化学量論より多いことを表わし、すなわち希薄な運転モードを表わしている。このラムダの図解例から、時間tignoffでの電圧降下の検知後、内燃機関に供給される混合気のラムダは減少すること、すなわち混合気が高濃度化されることが理解されるであろう。ネットワーク障害の消滅前には、空燃比ラムダは電圧降下前に優勢であった値に回復される。点火での介入において解説したように、回転速度信号は初期値に再設定するための起動手段として利用できる。
【0052】
本発明による方法の特に有利な点は、電圧降下が消滅した後に、内燃機関が、従来技術から知られている方法よりもかなり迅速に定格負荷に回復されることである。
【0053】
電圧降下中の高濃度化のおかげで、調節リザーブ(regulating reserve)がいわばさらに負荷が高くなる方向で実行される。定格負荷の回復を意味する短い準備時間(ランプアップ(ramp−up)と称する)では、電圧降下中の燃料供給の維持、または減少さえも不利であると証明されている。
【0054】
なぜなら、通常のネットワーク電圧が回復されたときには、高い制動モーメントが発電機によって内燃機関に発揮され、燃料供給が維持されていても、ネットワーク電圧が回復したときに内燃機関の速度の低下が観察されるからである。
【0055】
対照的に、本発明による方法と本発明による装置では、そのオーバシュート(overshoot)が補償でき、内燃機関が回転速度を減速させることなく迅速なランプアップが行われる。
【0056】
ネットワーク障害の検知が(発電機の)パラメータ電圧、(発電機の)電流、および(発電機の)周波数を観察することによって実行されることが好適である。したがって、例えば接続端子などでの、発電機電力(有効電力、無効電力または皮相電力)に従う必要がなく、発電機の電圧、電流および周波数のはるかに高感度な指標が利用される。
【0057】
この開示の内容中で言及される電圧降下は、典型的には500ミリ秒(ms)以下の時間のものであることを付記する。2007年度BDEWトランスミッション規準(The BDEW Transmission Code of 2007)(ドイツトランスミッションシステム運用者のネットワークおよびシステム規則;Network and System Rules of the German Transmission System Operators)は、例えば、製造設備は、150ms以下の時間のネットワーク電圧の0%への電圧降下ではネットワークから切断されないとしている。
【符号の説明】
【0058】
1 内燃機関
2 発電機
3 電力供給ネットワーク(電力供給網)
4 排気ガスタービン
5 コンプレッサ
6 ガス計測装置
7 コンプレッサバイパスバルブ
8 混合/チャージ空気インタークーラ
9 スロットルバルブ
10 点火手段
11 ポート噴射バルブ
12 開ループ・閉ループ制御装置
13 発電セット
100 機関ブロック
act 発電機シャフトでの回転速度
混合/チャージ空気インタークーラの上流のチャージ圧力
混合/チャージ空気インタークーラの上流での温度
P’ 混合/チャージ空気インタークーラの下流のチャージ圧力
T’ 混合/チャージ空気インタークーラの下流の温度
A 空気
G ガス
図1
図2