【文献】
TRAFFIC,2012年 6月 1日,Vol. 13, No. 6,pp.780-789
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多重特異性結合物質が、その結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期に基づいて選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
前記第1のポリペプチドドメインおよび前記第2のポリペプチドドメインが、互いに独立して完全長抗体、scFv、scFab、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖Fc領域断片、抗体軽鎖可変ドメインおよび抗体重鎖可変ドメインの対、VH、VL、CH1、CH2、CH3、CH4、CL、抗体ヒンジ領域、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、検出可能な標識、タグ、ならびに、結合対のパートナーより選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記小胞体保留シグナルがSEQ ID NO: 02(KDEL)、SEQ ID NO: 03(HDEL)、またはSEQ ID NO: 04(SFIXXXXMP)より選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記ソルターゼモチーフがLPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
結合している前記第1のドメイン、または前記第1の結合実体が、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【0008】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(S. aureus))のCa
2+依存性酵素ソルターゼAを用いることによって、第1のポリペプチドドメインおよび第2のポリペプチドドメインの酵素触媒による(すなわち、酵素的)結合体をインビボの細胞内で作製するための方法であって、それらポリペプチドドメインのうちの1つおよび可溶性ソルターゼAが小胞体保留シグナル配列を含む、方法が本明細書において報告される。
【0009】
この技術は、例えば、ポリペプチドドメインの第1のグループ(例えば、抗体可変ドメインの同種の対のような結合ドメインの第1のグループ)とポリペプチドドメインの第2のグループ(例えば、第1のグループのものとは別のエピトープ/抗原を対象とするが抗体可変ドメインの同種の対のような結合ドメインの第2のグループ、またはペイロード分子のグループ)の組合せのライブラリーを迅速に作製するのに特に適している。このライブラリーは、例えば、HEK細胞に一過性にトランスフェクションすることによって容易に作製することができ、結果として生じる組合せを、例えば、意図される生物学的効果または意図される特性に関して、その後スクリーニングすることができる。
【0010】
本明細書において報告される1つの局面は、少なくとも2つのポリペプチドドメインを含むポリペプチドを作製するための方法であって、
-(a)C末端の小胞体保留シグナルを有する可溶性ソルターゼAをコードする核酸、
(b)ソルターゼモチーフとそれに続く小胞体保留シグナルをそのC末端にまたはそのC末端領域中に含む第1のポリペプチドドメインをコードする核酸、および
(c)少なくとも2つのグリシン残基のオリゴグリシンモチーフをそのN末端に含む第2のポリペプチドドメインをコードする核酸
を含む細胞を培養する段階
を含み、
その細胞が、第1のポリペプチドドメインおよび第2のポリペプチドドメインのソルターゼA(の媒介による/によって触媒された)結合体を分泌し、
それによって、少なくとも2つのポリペプチドドメインを含むポリペプチドを作製する、方法である。
【0011】
本明細書において報告される1つの局面は、少なくとも2つの結合実体を含む多重特異性結合物質(multispecific binder)を作製するための方法であって、
-(a)C末端の小胞体保留シグナルを有する可溶性ソルターゼAをコードする核酸、
(b)ソルターゼモチーフとそれに続く小胞体保留シグナルをそのC末端にまたはそのC末端領域中に含む第1の結合実体をコードする核酸、および
(c)少なくともジグリシンをそのN末端に含む第2の結合実体をコードする核酸
を含む細胞を培養する段階
を含み、
その細胞が、第1の結合実体および第2の結合実体のソルターゼA(の媒介による/によって触媒された)結合体を分泌し、
第1の結合実体が、第1の抗原または第1の標的に特異的に結合し、かつ第2の結合実体が、第2の抗原または第2の標的に特異的に結合し、
それによって、少なくとも2つの結合実体を含む多重特異性結合物質を作製する、方法である。
【0012】
すべての局面の1つの態様において、ソルターゼAは、黄色ブドウ球菌(S. aureus)のソルターゼAである。1つの態様において、C末端の小胞体保留シグナルを有する(可溶性)ソルターゼAをコードする核酸は、SEQ ID NO: 51またはSEQ ID NO: 52のアミノ酸配列をコードする。
【0013】
治療を必要とする患者において、癌またはウイルス感染症のような疾患を治療するためのテーラーメイドの高度に特異的な治療的分子を提供するための方法であって、治療的分子が、患者の疾患の特徴および/または患者の遺伝子型/表現型に適応させられる、方法が本明細書において報告される。
【0014】
このような適応は、患者の疾患を有する/該疾患に罹患している細胞の遺伝子型/表現型を考慮に入れたテーラーメイドの分子を作製することによって実現する。
【0015】
第1段階において、治療的分子を用いてターゲティングされることが意図される細胞の遺伝子型/表現型(例えば、疾患に特異的な細胞表面分子の存在および数/量)が判定される。例えば、蛍光標識した単特異性の(治療的または診断用)抗体を用いた、例えば血液および/または生検材料に由来する患者細胞の免疫組織化学染色(IHC、免疫組織化学)のような細胞イメージング技術によって、これを実現することができる。あるいは、細胞の遺伝子型/表現型は、標識された治療的抗体または診断用抗体を用いて染色した後に、FACSに基づく方法を用いて解析することもできる。また、光学イメージング、分子イメージング、蛍光イメージング、生物発光イメージング、MRI、PET、SPECT、CT、および生体顕微鏡検査を含むインビボイメージング技術も、患者の疾患関係細胞の遺伝子型/表現型を判定するのに使用され得る。患者の疾患関係細胞の判定された遺伝子型/表現型に応じて、ターゲティング/結合実体のテーラーメイドの組合せが選択されることができ/選択され、治療的分子中で組み合わせられる。このような治療的分子は、例えば、二重特異性抗体であってよい。
【0016】
このようなテーラーメイドの治療的分子は、(i)高度に特異的であると考えられ、(ii)十分な治療的有効性を有していると考えられ、かつ(iii)慣例的に選択された治療的物質と比べて、誘発する副作用は少ないかつ/または重篤性が低いと考えられる。これは、例えば、意図された作用部位への治療的物質搭載量(therapeutic payload)の送達に関して向上したターゲティング特性および/または向上したテーラーメイドの送達特性を治療的分子に付与することによって実現することができる。
【0017】
例えば癌細胞のような作用部位への治療的分子の送達の向上は、慣例的に選択された治療的分子と比べて高い/増大した、ターゲティングされた治療的分子に対する選択性および/または特異性によって実現され得る。治療的分子は、異なるタンパク質(例えば、2種の異なる細胞表面マーカー)特異的に結合するか、または該異なるタンパク質によって結合されうる、少なくとも2つの実体を含む。
【0018】
テーラーメイドの治療的分子の選択性および/または特異性の増大は、両方のターゲティング実体がそれらの各々の標的/エピトープに同時に結合することによって、または両方のポリペプチドドメインがその相互作用パートナーによりもしくはその混合物により同時に結合することによって実現され得る。すなわち、結合力の効果によって実現される。
【0019】
各々の標的/エピトープに対して低度から中度の親和性を有する2つの結合実体の組合せが、特に適している。さらに、オフターゲット結合が大きく減少するかまたは全くなくなる場合さえある。
【0020】
本明細書において報告される方法を用いて、例えば、癌細胞のような細胞の表面に見出される2種の表面マーカーを特異的に対象とする二重特異性抗体などのような二重特異性結合物質(bispecific binder)をテーラーメイドすることが可能であることが判明している。結合特異性は出発構成要素によって個々に与えられるため、細胞、例えば癌細胞上に存在する表面マーカーを決定し、これらの表面マーカーまたはそれらの各々のリガンドに特異的に結合する各抗体断片を酵素的手順によって結合させるだけで、ターゲティングし結合する多重特異性分子をテーラーメイドすることが可能である。酵素的結合は、黄色ブドウ球菌のソルターゼAによる1つの態様において酵素ソルターゼAによって実施されるため、結果として生じる二重特異性結合物質(二重特異性抗体)は、アミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)の存在を特徴とする。
【0021】
本明細書において報告される1つの局面は、2つの異なるエピトープまたは抗原に特異的に結合する多重特異性結合物質を選択するための方法であって、
-第1の結合実体および第2の結合実体の様々な組合せを含む多重特異性結合物質の多数群より、2つの異なるエピトープまたは抗原に特異的に結合する多重特異性結合物質を選択する段階
を含む、方法である。
【0022】
本明細書において報告される1つの局面は、二重特異性抗体を選択するための方法であって、
(i)細胞を含む試料中に存在する細胞表面マーカーを決定し、かつそれらから少なくとも第1の表面マーカーおよび第2の表面マーカーを選択する段階、
(ii)(a)20(二十)個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)とそれに続く小胞体保留シグナルKDEL(SEQ ID NO: 02)を含む抗体FabまたはscFab断片またはscFv抗体をコードする核酸であって、FabまたはscFab断片またはscFv抗体が第1の表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する、核酸、(b)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む一アーム抗体断片をコードする核酸であって、完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2の表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ抗体重鎖Fc領域ポリペプチドがそのN末端にオリゴグリシンG
m(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、核酸、ならびに、(c)C末端の小胞体保留シグナルを有する可溶性ソルターゼAをコードする核酸を、細胞にトランスフェクトする段階
を含み、
かつそれによって、二重特異性抗体を作製する、方法である。
【0023】
本明細書において報告される1つの局面は、抗原結合部位の組合せを決定するための方法であって、
(i)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)とそれに続く小胞体保留シグナルKDEL(SEQ ID NO: 02)を含み、FabまたはscFab断片またはscFv抗体断片が、第1のエピトープまたは第1の抗原に特異的に結合する、抗体FabまたはscFab断片またはscFv抗体断片の第1の多数群の各メンバーを、(b)一アーム抗体断片が完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2のエピトープまたは第2の抗原に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ抗体重鎖Fc領域ポリペプチドがそのN末端にオリゴグリシンG
m(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、一アーム抗体断片の多数群の各メンバーと、ソルターゼAによって触媒される酵素反応によって共有結合的に結合させることによって調製された多数の二重特異性抗体の結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を明らかにする段階、ならびに
(ii)適切な結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を有する二重特異性抗体を選択し、かつそれによって、抗原結合部位の組合せを決定する段階
を含む、方法である。
【0024】
すべての局面の1つの態様において、ソルターゼAは、黄色ブドウ球菌のソルターゼAである。1つの態様において、C末端の小胞体保留シグナルを有する(可溶性)ソルターゼAをコードする核酸は、SEQ ID NO: 51 またはSEQ ID NO: 52のアミノ酸配列をコードする。
【0025】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される方法によって得られる二重特異性抗体である。
【0026】
本明細書において報告される1つの局面は、その重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)を含む二重特異性抗体である。
【0027】
以下に、本明細書において報告されるすべての局面の態様が与えられる。
【0028】
1つの態様において、多重特異性結合物質の多数群のメンバーはそれぞれ、本明細書において報告される方法によって得られる。
【0029】
1つの態様において、多重特異性結合物質は、その結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期に基づいて選択される。
【0030】
1つの態様において、結合実体は、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインの同種の対である。
【0031】
1つの態様において、多重特異性結合物質は、2つまたは4つの結合実体を含む二重特異性抗体である。
【0032】
1つの態様において、第1のポリペプチドドメインおよび第2のポリペプチドドメインは、互いに独立して完全長抗体、scFv、scFab、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖Fc領域断片、抗体軽鎖可変ドメインおよび抗体重鎖可変ドメインの対、抗原に結合する抗体断片、VH、VL、CH1、CH2、CH3、CH4、CL、抗体ヒンジ領域、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、検出可能な標識、タグ、ならびに、結合対のパートナーより選択される。
【0033】
1つの態様において、小胞体保留シグナルは、SEQ ID NO: 02(KDEL)、SEQ ID NO: 03(HDEL)、またはSEQ ID NO: 04(SFIXXXXMP)より選択される。
【0034】
1つの態様において、ソルターゼモチーフは、LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)である。
【0035】
1つの態様において、結合している第1のドメインまたは第1の結合実体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)を有する。
【0036】
1つの態様において、細胞は、哺乳動物細胞または酵母細胞である。1つの態様において、哺乳動物細胞は、HEK細胞、CHO細胞、またはBHK細胞より選択される。
【0037】
1つの態様において、Fc領域は、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つのさらなる変異とを含み、Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。これらの特定のアミノ酸残基の変更により、未改変(野生型)Fc領域と比べて、Fc領域のエフェクター機能が変化する。
【0038】
1つの態様において、結合実体は、ダルピンドメインをベースとする結合実体、アンチカリンドメインをベースとする結合実体、T細胞受容体断片に似たscTCRドメインをベースとする結合実体、ラクダVHドメインをベースとする結合実体、10番目のフィブロネクチン3ドメインをベースとする結合実体、テネイシンドメインをベースとする結合実体、カドヘリンドメインをベースとする結合実体、ICAMドメインをベースとする結合実体、タイチンドメインをベースとする結合実体、GCSF-Rドメインをベースとする結合実体、サイトカイン受容体ドメインをベースとする結合実体、グリコシダーゼ阻害剤ドメインをベースとする結合実体、スーパーオキシドジスムターゼドメインをベースとする結合実体、またはFab断片もしくはscFab断片もしくはscFv断片のような抗体断片の群より選択される(または、第1の結合実体および第2の結合実体は、該群より互いに独立して選択される)。
【0039】
1つの態様において、第1のポリペプチドドメインは、(i)そのC末端アミノ酸配列領域中に(すなわち、20個のC末端アミノ酸残基内に)アミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)、および(ii)そのC末端に小胞体保留シグナルKDEL(SEQ ID NO: 02)を含み、第2のポリペプチドドメインは、そのN末端にオリゴグリシンG
m(m=2または3または4または5)を含む。
【0040】
1つの態様において、第2のポリペプチドドメインまたは第2の結合実体は、そのN末端にオリゴグリシンG
m(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を含む。
【0041】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される多重特異性結合物質を含む薬学的製剤である。
【0042】
本明細書において報告される1つの局面は、医薬の製造における、本明細書において報告される多重特異性結合物質の使用である。
【0043】
1つの態様において、医薬は癌の治療のためである。
【0044】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される多重特異性結合物質の有効量を、癌を有している個体に投与する段階を含む、該個体を治療する方法である。
【0045】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される多重特異性結合物質の有効量を個体に投与する段階を含む、個体中の癌細胞を破壊するための方法である。
【0046】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される二重特異性抗体を含む薬学的製剤である。
【0047】
本明細書において報告される1つの局面は、医薬の製造における、本明細書において報告される二重特異性抗体の使用である。
【0048】
1つの態様において、医薬は癌の治療のためである。
【0049】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される二重特異性抗体の有効量を、癌を有している個体に投与する段階を含む、該個体を治療する方法である。
【0050】
本明細書において報告される1つの局面は、本明細書において報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与する段階を含む、個体中の癌細胞を破壊するための方法である。本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、Fc領域は、ヒトFc領域またはその変種である。
【0051】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、ヒトIgG1サブクラス、またはヒトIgG2サブクラス、またはヒトIgG3サブクラス、またはヒトIgG4サブクラスのものである。
【0052】
1つの態様において、抗体Fc領域は、ヒトIgG1サブクラスまたはヒトIgG4サブクラスのヒト抗体Fc領域である。
【0053】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、異なる残基への、次のアミノ酸位置:228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、329、および/または331のうちの少なくとも1つの天然に存在するアミノ酸残基の変異を含み、抗体Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。
【0054】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つのさらなる変異とを含み、Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。これらの特定のアミノ酸残基の変更により、Fc領域のエフェクター機能が、未改変(野生型)のFc領域と比べて変化する。
【0055】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、対応する野生型IgG Fc領域を含む結合体と比べて、ヒトFcγRIIIA、および/またはFcγRIIA、および/またはFcγRIに対する親和性が低い。
【0056】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域中の329位のアミノ酸残基は、グリシンもしくはアルギニン、またはFc領域内のプロリンサンドイッチを消失させるのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換されている。
【0057】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域中の天然に存在するアミノ酸残基の変異は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、P329G、および/またはP331Sのうちの少なくとも1つである。
【0058】
1つの態様において、変異は、抗体Fc領域がヒトIgG1サブクラスのものである場合にはL234AおよびL235Aであるか、または抗体Fc領域がヒトIgG4サブクラスのものである場合にはS228PおよびL235Eである。
【0059】
1つの態様において、抗体Fc領域は変異P329Gを含む。
【0060】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366Wならびに第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366S、L368A、およびY407Vを含み、番号付与は、KabatのEUインデックスに従う。
【0061】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異S354Cおよび第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異Y349Cを含む。
[本発明1001]
少なくとも2つのポリペプチドドメインを含むポリペプチドを作製するための方法であって、
-(a)C末端の小胞体保留シグナルを有する黄色ブドウ球菌(S. aureus)可溶性ソルターゼAをコードする核酸、
(b)ソルターゼモチーフとそれに続く小胞体保留シグナルをそのC末端に含む第1のポリペプチドドメインをコードする核酸、および
(c)少なくともジグリシンをそのN末端に含む第2のポリペプチドドメインをコードする核酸
を含む細胞を培養する段階
を含み、
該細胞が、該第1のポリペプチドドメインおよび該第2のポリペプチドドメインのソルターゼA結合体を分泌し、
それによって、少なくとも2つのポリペプチドドメインを含むポリペプチドを作製する、方法。
[本発明1002]
少なくとも2つの結合実体を含む多重特異性結合物質(multispecific binder)を作製するための方法であって、
-(a)C末端の小胞体保留シグナルを有する黄色ブドウ球菌可溶性ソルターゼAをコードする核酸、
(b)ソルターゼモチーフとそれに続く小胞体保留シグナルをそのC末端に含む第1の結合実体をコードする核酸、および
(c)少なくともジグリシンをそのN末端に含む第2の結合実体をコードする核酸
を含む細胞を培養する段階
を含み、
該細胞が、該第1の結合実体および該第2の結合実体のソルターゼA結合体を分泌し、
該第1の結合実体が、第1の抗原または第1の標的に特異的に結合し、かつ該第2の結合実体が、第2の抗原または第2の標的に特異的に結合し、
それによって、少なくとも2つの結合実体を含む多重特異性結合物質を作製する、方法。
[本発明1003]
2つの異なるエピトープまたは抗原に特異的に結合する多重特異性結合物質を選択するための方法であって、
-第1の結合実体および第2の結合実体の様々な組合せを含む多重特異性結合物質の多数群より、2つの異なるエピトープまたは抗原に特異的に結合する多重特異性結合物質を選択する段階
を含み、
該多重特異性結合物質の多数群のメンバーがそれぞれ、本発明1002の方法によって得られる、方法。
[本発明1004]
多重特異性結合物質が、その結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期に基づいて選択されることを特徴とする、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記結合実体が、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインの同種の対であることを特徴とする、本発明1002〜1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記多重特異性結合物質が、2つまたは4つの結合実体を含む二重特異性抗体であることを特徴とする、本発明1002〜1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
前記第1のポリペプチドドメインおよび前記第2のポリペプチドドメインが、互いに独立して完全長抗体、scFv、scFab、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖Fc領域断片、抗体軽鎖可変ドメインおよび抗体重鎖可変ドメインの対、VH、VL、CH1、CH2、CH3、CH4、CL、抗体ヒンジ領域、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、検出可能な標識、タグ、ならびに、結合対のパートナーより選択されることを特徴とする、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記小胞体保留シグナルがSEQ ID NO: 02(KDEL)、SEQ ID NO: 03(HDEL)、またはSEQ ID NO: 04(SFIXXXXMP)より選択されることを特徴とする、本発明1001〜1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
前記ソルターゼモチーフがLPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)であることを特徴とする、本発明1001〜1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
結合している前記第1のドメイン、または前記第1の結合実体が、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)を有することを特徴とする、本発明1001〜1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記細胞が哺乳動物細胞または酵母細胞であることを特徴とする、本発明1001〜1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記哺乳動物細胞がHEK細胞、CHO細胞、またはBHK細胞より選択されることを特徴とする、本発明1011の方法。
[本発明1013]
二重特異性抗体を選択するための方法であって、
(i)細胞を含む試料中に存在する細胞表面マーカーを決定し、かつそれらから少なくとも第1の細胞表面マーカーおよび第2の細胞表面マーカーを選択する段階、
(ii)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)とそれに続く小胞体保留シグナルKDEL(SEQ ID NO: 02)を含む抗体Fab断片または抗体scFabまたはscFv抗体をコードする核酸であって、該Fab断片または該scFv抗体が該第1の表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する、核酸、(b)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む一アーム抗体断片をコードする核酸であって、該完全長抗体重鎖および該完全長抗体軽鎖が互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、該第2の表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、該完全長抗体重鎖および該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドがそのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、核酸、ならびに(c)C末端の小胞体保留シグナルを有する黄色ブドウ球菌可溶性ソルターゼAをコードする核酸を、細胞にトランスフェクトする段階
を含み、
かつそれによって、該二重特異性抗体を作製する、方法。
[本発明1014]
抗原結合部位の組合せを決定するための方法であって、
(i)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)とそれに続く小胞体保留シグナルKDEL(SEQ ID NO: 02)を含み、抗体Fab断片またはscFv抗体が第1のエピトープまたは第1の抗原に特異的に結合する、該Fab断片またはscFv抗体断片の第1の多数群の各メンバーを、(b)一アーム抗体断片が完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、該完全長抗体重鎖および該完全長抗体軽鎖が互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2のエピトープまたは第2の抗原に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、該完全長抗体重鎖および該抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ抗体重鎖Fc領域ポリペプチドがそのN末端にオリゴグリシンGm(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、該一アーム抗体断片の多数群の各メンバーと、黄色ブドウ球菌ソルターゼAの媒介による細胞内酵素結合反応によって結合させることによって調製された多数の二重特異性抗体の結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を明らかにする段階、ならびに
(ii)適切な結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を有する二重特異性抗体を選択し、かつそれによって、抗原結合部位の組合せを決定する段階
を含む、方法。
[本発明1015]
本発明1006〜本発明1013のいずれかの方法によって得られる、二重特異性抗体。
[本発明1016]
二重特異性抗体の重鎖のうちの1つにおいてアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)を含む、該二重特異性抗体。
[本発明1017]
Fc領域が、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つのさらなる変異とを含むことを特徴とし、該Fc領域中の残基が、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている、本発明1006〜1013のいずれかの方法または本発明1015もしくは1016の抗体。
[本発明1018]
本発明1015または本発明1016または本発明1017の二重特異性抗体を含む、薬学的製剤。
[本発明1019]
医薬の製造における、本発明1015または本発明1016または本発明1017の二重特異性抗体の使用。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の態様の詳細な説明
I. 定義
本明細書および特許請求の範囲において、免疫グロブリン重鎖Fc領域中の残基の番号付与は、KabatのEUインデックスのものである(参照により本明細書に明確に組み入れられるKabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242)。
【0064】
「改変」という用語は、親アミノ酸配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基の変異、付加、または欠失を意味する。
【0065】
「タグ」という用語は、ペプチド結合を介して互いに連結された、特異的な結合特性を有するアミノ酸残基の配列を意味する。1つの態様において、タグは、アフィニティータグまたは精製タグである。1つの態様において、タグは、Argタグ、Hisタグ、Flagタグ、3×Flagタグ、Strepタグ、Nanoタグ、SBPタグ、c-mycタグ、Sタグ、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、GSTタグ、またはMBPタグより選択される。1つの態様において、タグは、
より選択される。
【0066】
「抗原結合抗体断片」という用語は、インタクト抗体が結合する抗原に結合する完全長抗体の一部分を含む、完全長抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例には、Fv、scFv、Fab、scFab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')
2、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えばscFv)、および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0067】
抗体断片には、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')
2、Fv、およびscFv断片、ならびに後述する他の断片が含まれるがそれらに限定されるわけではない。いくつかの抗体断片の概要については、Hudson, P.J., et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134を参照されたい。scFv断片の概要については、例えばPlueckthun, A., In: The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore (eds.), Springer-Verlag, New York (1994), pp. 269-315を参照されたい。また、WO 93/16185; US 5,571,894、およびUS 5,587,458も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が長くなっているFab断片およびF(ab')
2断片の考察については、US 5,869,046を参照されたい。
【0068】
抗体断片は、本明細書において説明するように、インタクト抗体のタンパク質分解消化および切断ならびに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E. coli)またはファージまたは真核生物細胞)による作製を非限定的に含む様々な技術によって作製することができる。
【0069】
「二重特異性抗体」という用語は、第1の抗原またはエピトープおよび第2の抗原またはエピトープに特異的に結合できる抗原結合分子であって、第1の抗原またはエピトープが第2の抗原またはエピトープと異なる、抗原結合分子を意味する。
【0070】
二重特異性抗体型は、例えば、WO 2009/080251、WO 2009/080252、WO 2009/080253、WO 2009/080254、WO 2010/112193、WO 2010/115589、WO 2010/136172、WO 2010/145792、およびWO 2010/145793において説明されている。
【0071】
抗体の「クラス」という用語は、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを意味する。ヒトの抗体には5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインをコードする遺伝子セグメントは、α、δ、ε、γ、およびμとそれぞれ呼ばれる。さらに、ヒト起源の抗体中に存在する軽鎖の2つのクラスであるカッパおよびラムダがあり、これらは、それらの同種の重鎖パートナーと一緒にインタクト抗体を形成することができる。カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖をコードする遺伝子はκおよびλとそれぞれ呼ばれる。
【0072】
「エフェクター機能」という用語は、抗体のクラス/サブクラスによって変わる、抗体のFc領域に起因し得る生物学的活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞障害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);抗体依存性細胞食作用(ADCP);細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が含まれる。このような機能は、例えば、食作用活性もしくは溶解活性を有する免疫細胞上のFc受容体にFc領域を結合させることによって、または補体系の成分にFc領域を結合させることによって、もたらすことができる。
【0073】
薬学的製剤などの剤の「有効量」とは、所望の治療結果または予防的結果を達成するのに必要な用量においておよび期間にわたって有効な量を意味する。
【0074】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンのC末端領域を意味する。Fc領域は、ジスルフィド結合されている2つの抗体重鎖断片(重鎖Fc領域ポリペプチド鎖)を含む二量体分子である。Fc領域は、インタクト(完全長)抗体のパパイン消化もしくはIdeS消化、もしくはトリプシン消化によって生成させることができるか、または組換えによって作製することができる。
【0075】
完全長抗体または免疫グロブリンから得られるFc領域は、完全長重鎖の少なくとも残基226(Cys)からC末端までを含み、したがって、ヒンジ領域の一部分および2つまたは3つの定常領域ドメイン、すなわち、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ならびに、IgEクラス抗体およびIgMクラス抗体の場合は付加的な/追加のCH4ドメインを含む。Fc領域中の所定のアミノ酸残基の変更が表現型に影響することが、US 5,648,260およびUS 5,624,821から公知である。
【0076】
2つの同一または同一でない抗体重鎖断片を含む二量体Fc領域の形成は、含まれるCH3ドメインの非共有結合的二量体化によってもたらされる(関与するアミノ酸残基については、例えば、Dall'Acqua, Biochem. 37 (1998) 9266-9273を参照されたい)。Fc領域は、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合の形成によって共有結合的に安定化されている(例えば、Huber, et al., Nature 264 (1976) 415-420; Thies, et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 67-79を参照されたい)。CH3-CH3ドメインの二量体化相互作用を妨害するためにCH3ドメイン内にアミノ酸残基変化を導入しても、新生児型Fc受容体(FcRn)結合は、CH3-CH3ドメインの二量体化に関与している残基の場所による悪影響を受けず、この残基はCH3ドメインの内側の境界に位置しているがFc領域-FcRn相互作用に関与している残基はCH2-CH3ドメインの外側に位置している。
【0077】
Fc領域のエフェクター機能に関連している残基は、完全長抗体分子に関して決定される場合、ヒンジ領域、CH2ドメイン、および/または、CH3ドメインに位置している。Fc領域が関連/媒介する機能は、
(i)抗体依存性細胞障害(ADCC)、
(ii)補体(C1q)の結合、活性化、および補体依存性細胞障害(CDC)、
(iii)抗体依存性細胞性食作用(ADCP)、
(iv)抗原-抗体複合体(免疫複合体)の貪食/クリアランス、
(v)場合によりサイトカイン放出、ならびに
(vi)抗体および抗原-抗体複合体の半減期/クリアランス速度
である。
【0078】
Fc領域が関連するエフェクター機能は、Fc領域とエフェクター機能特有の分子または受容体との相互作用によって引き起こされる/開始される。大部分は、IgG1サブクラスの抗体は受容体活性化をもたらし得るのに対し、IgG2サブクラスおよびIgG4サブクラスの抗体は、エフェクター機能を有していないか、またはエフェクター機能が限定されている。
【0079】
エフェクター機能を惹起する受容体は、Fc受容体タイプ(ならびにサブタイプ)FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIである。IgG1サブクラスに関連付けられているエフェクター機能は、ヒンジ領域下流に、FcγRおよびC1q結合に関与している特定のアミノ酸変化、例えばL234Aおよび/またはL235Aを導入することによって、低下することができる。また、特にCH2ドメイン中および/またはCH3ドメイン中に位置しているある種のアミノ酸残基は、血流中での抗体分子またはFc領域融合ポリペプチドの循環半減期の制御に関連している。循環半減期は、新生児型Fc受容体(FcRn)へのFc領域の結合に左右される。
【0080】
「ヒトFc領域」という用語は、ヒンジ領域の部分の少なくとも1部、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む、ヒト由来の免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。1つの態様において、ヒトIgG抗体重鎖Fc領域は、重鎖のGlu216あたり、またはCys226あたり、またはPro230あたりからカルボキシル末端まで伸びる。しかしながら、抗体Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合があるかまたは存在しない場合がある。
【0081】
IgG1サブクラスの野生型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0082】
IgG4サブクラスの野生型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、次のアミノ酸配列:
を有する。
【0083】
「完全長抗体」という用語は、天然の抗体構造ならびに本明細書において報告されるFc領域を含むポリペプチドと実質的に同一な構造およびアミノ酸配列を有する抗体を意味する。
【0084】
「完全長抗体重鎖」という用語は、N末端からC末端の方向に、抗体可変ドメイン、第1の定常ドメイン、抗体重鎖ヒンジ領域、第2の定常ドメイン、および第3の定常ドメイン、ならびに場合によっては第4の定常ドメインを含むポリペプチドを意味する。
【0085】
「抗体重鎖Fc領域」という用語は、抗体重鎖ヒンジ領域、第1の定常ドメイン(通常はCH2ドメイン)、および第2の定常ドメイン(通常はCH3ドメイン)含むポリペプチドを意味する。
【0086】
「CH2ドメイン」という用語は、おおよそEU位置231番目からEU位置340番目(KabatによるEU番号付与方式)まで伸びる、抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。1つの態様において、CH2ドメインは、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列
を有する。CH2ドメインは、別のドメインと接近して対になっていないという点で、独特である。もっと正確に言えば、N結合型分枝状炭水化物鎖2つが、インタクトな天然Fc領域の2つのCH2ドメインの間に介在している。炭水化物が、ドメイン間の対形成のための代用品となり、CH2ドメインを安定化するのに寄与し得ると推測されている。Burton, Mol. Immunol. 22 (1985) 161-206。
【0087】
「CH3ドメイン」という用語は、おおよそEU位置341番目からEU位置446番目まで伸びる、抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。1つの態様において、CH3ドメインは、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列
を有する。
【0088】
「完全長抗体軽鎖」という用語は、N末端からC末端の方向に、抗体可変ドメインおよび定常ドメインを含むポリペプチドを意味する。
【0089】
「ヒンジ領域」という用語は、野生型抗体重鎖においてCH1ドメインおよびCH2ドメインを連結する、例えばKabatのEU番号方式によれば216位あたりから230位あたりまでの、またはKabatのEU番号方式によれば226位あたりから230位あたりまでの、抗体重鎖ポリペプチド部分を意味する。他のIgGサブクラスのヒンジ領域は、IgG1サブクラス配列のヒンジ領域システイン残基と整列させることによって決定することができる。
【0090】
通常、ヒンジ領域は、アミノ酸配列が同一である2つのポリペプチドからなる二量体である。一般に、ヒンジ領域は約25個のアミノ酸残基を含みかつ可動性であるため、抗原結合領域が互いに独立して動くことが可能である。ヒンジ領域は、3つのサブドメイン:上部ヒンジ領域、中央部ヒンジ領域、下部ヒンジ領域に細分することができる(例えば、Roux, et al., J. Immunol. 161 (1998) 4083を参照されたい)。
【0091】
Fc領域の「ヒンジ領域下流」という用語は、中央部(中心)ヒンジ領域のC末端側のすぐ近くのアミノ酸残基、すなわち、KabatのEU番号方式によればFc領域の残基233〜239のストレッチを意味する。
【0092】
「野生型Fc領域」という用語は、自然界に存在するFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を意味する。野生型ヒトFc領域には、天然ヒトIgG1 Fc領域(A以外のアロタイプおよびAアロタイプ)、天然ヒトIgG2 Fc領域、天然ヒトIgG3 Fc領域、および天然ヒトIgG4 Fc領域、ならびに天然に存在するそれらの変種が含まれる。
【0093】
「個体」または「対象」という用語は、家畜化した動物(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに齧歯類(マウス、ラット、およびハムスター)を含むが、それらに限定される訳ではない。ある特定の態様において、個体または対象はヒトである。
【0094】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、配列を整列させ、かつ必要な場合にはギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを実現した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部分とみなさない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための配列アライメントは、当技術分野の技能の範囲内である様々な方法において、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど公的に使用可能なコンピューターソフトウェアを用いて、実現することができる。当業者は、比較される配列の全長に渡って最大限のアライメントを実現するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のためには、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を用いて、アミノ酸配列同一性%の値を得る。配列比較コンピュータープログラムALIGN-2は、Genentech, Inc.の著作物であり、ソースコードはユーザー向け文書と共にU.S. Copyright Office, Washington D.C., 20559に提出され、米国著作権登録番号(U.S. Copyright Registration No.)TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムにおける使用向けにコンパイルされるべきである。配列比較パラメーターはすべて、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
【0095】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために使用される状況において、所与のアミノ酸配列Bに対する、該Bとの、または該Bと比較しての所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対して、と、または比較してある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現することもできる)は、以下のとおりに算出される。
100×比X/Y
式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムによるAおよびBのアライメントにおいて同一のマッチとして採点されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくならないことが認識されるであろう。別段の記載が特に無い限り、本明細書において使用されるアミノ酸配列同一性%の値はすべて、すぐ前の節で説明したように、ALIGN-2コンピュータープログラムを用いて得られる。
【0096】
「薬学的製剤」という用語は、その中に含まれる有効成分の生物活性が有効になるのを可能にするような形態で存在し、かつその製剤が投与されると思われる対象に対して許容されないほど毒性である追加成分を含まない、調製物を意味する。
【0097】
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって非毒性である、薬学的製剤中の有効成分以外の成分を意味する。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、または保存剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0098】
「患者の表現型」という用語は、患者由来のある一種の細胞における細胞表面分子/受容体の組成物を意味する。組成物は、質的組成物ならびに量的組成物であることができる。遺伝型が決定された/示された細胞は、単一の細胞であることまたは細胞を含む試料であることができる。
【0099】
「位置」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列におけるあるアミノ酸残基の場所を意味する。位置は、順を追って、または確立された形式、例えば抗体番号付与のためのKabatのEUインデックスに従って、番号付与してよい。
【0100】
「受容体」という用語は、少なくとも1つのリガンドに結合することができるポリペプチドを意味する。1つの態様において、受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、および任意で他のドメイン(例えば、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン、および/または膜アンカー)を有する細胞表面受容体である。本明細書において説明するアッセイ法で評価される受容体は、完全な受容体またはその断片もしくは派生物(例えば、1つもしくは複数の異種ポリペプチドに融合された受容体の結合ドメインを含む融合タンパク質)であってよい。さらに、結合特性を評価される受容体は、細胞中に存在してもよいか、または単離され、アッセイプレートもしくは他の何らかの固相に任意で塗られてもよい。
【0101】
本明細書において使用される場合、「治療(treatment)」(およびその文法的変形、例えば「治療する(treat)」または「治療すること(treating)」)とは、治療される個体の自然経過を変化させようとする臨床的介入を意味し、予防のため、または臨床的病状の過程のいずれかに実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の直接的または間接的な任意の病理学的転帰の減少、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後改善が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせるため、または疾患の進行を遅くするために使用される。
【0102】
II. 第1のポリペプチドドメインと第2のポリペプチドドメインとを含むテーラーメイドの分子
本明細書において報告されるモジュール式アプローチを用いることによってテーラーメイドの治療的ポリペプチドを提供できることが判明している。これらのポリペプチドは、それらが形成される元となるポリペプチドドメインに関してテーラーメイドである。
【0103】
2つのポリペプチドドメインを組み合わせることによる、治療的物質のこのテーラーメイド作製を用いると、二重ターゲティング(2つの結合実体の組合せ、二重特異性結合物質または多重特異性結合物質)、ターゲティングおよびペイロード送達(結合実体(ターゲティング)およびエフェクター実体(ペイロード)の組合せ、例えば抗体結合体)、または組み合わされた受容体阻害(2つの受容体および/もしくはリガンドの組合せ)など様々な作用様式を組み合わせることができる。得られる治療的物質は、個々のポリペプチドドメインの作用様式を同時に果たす単一の治療的分子である。それによって、例えば、単一ドメインの治療的分子と比較して相加/相乗効果が予想される。
【0104】
例えば、治療的抗体に由来するもののような既に入手可能な治療的実体を用いることによって、複数ドメイン治療的分子の迅速かつ容易な作製を実現することができる。
【0105】
例えば、結合活性を操作された結合分子/抗体は、単一の細胞上に存在する2種またはそれ以上の細胞表面マーカーに結合し得る。この結合は、すべての/両方の結合実体が細胞に同時に結合する場合にのみ活性である(avid)。この目的には、低度から中度、低度から高度、または中度から高度の親和性の(affine)抗体が特に適している。一方で、これにより、スクリーニング過程の間に結合特異性の特異性が低い組合せを除外することも可能になる。
【0106】
このようなアプローチを用いることにより、テーラーメイドの、したがって極めて効果的な治療的分子の作製が可能である。これらの分子は、(少なくとも2つの結合分子を含む)ターゲティング構成要素のより高い選択性および特異性に基づく標的化送達(例えば、腫瘍細胞に対するペイロード)ならびに標的細胞へのターゲティングの向上など、特性が改善されているため、副作用は少なくなっているか、またはそれほど重度ではなくなっているか/弱められていると考えられる。
【0107】
多重特異性結合物質のより高い選択性および特異性は、潜在的な「オフターゲット」結合を減少させるかまたは完全に防ぐ、2つの「低親和性」結合物質の組合せの同時結合(結合活性)によってもたらされる。
【0108】
本明細書において報告される方法
本明細書において報告される1つの局面は、少なくとも2つのポリペプチドドメインを含むポリペプチドを作製するための方法であって、
-(a)C末端の小胞体保留シグナルを有する可溶性ソルターゼAをコードする核酸、
(b)ソルターゼモチーフとそれに続く小胞体保留シグナルをそのC末端にまたはそのC末端領域中に含む第1のポリペプチドドメインをコードする核酸、および
(c)少なくともジグリシンモチーフをそのN末端に含む第2のポリペプチドドメインをコードする核酸
を含む細胞を培養する段階
を含み、
その細胞が、第1のポリペプチドドメインおよび第2のポリペプチドドメインのソルターゼA(によって連結された)結合体を分泌し、
それによって、少なくとも2つのポリペプチドドメインを含むポリペプチドを作製する、方法である。
【0109】
本明細書において報告される1つの局面は、少なくとも2つの結合実体を含む多重特異性結合物質を作製するための方法であって、
-(a)C末端の小胞体保留シグナルを有する可溶性ソルターゼAをコードする核酸、
(b)ソルターゼモチーフとそれに続く小胞体保留シグナルをそのC末端にまたはそのC末端領域中に含む第1の結合実体をコードする核酸、および
(c)少なくともジグリシンモチーフをそのN末端に含む第2の結合実体をコードする核酸
を含む細胞を培養する段階
を含み、
その細胞が、第1の結合実体および第2の結合実体のソルターゼA(によって連結された)結合体を分泌し、
第1の結合実体が、第1の抗原または第1の標的に特異的に結合し、かつ第2の結合実体が、第2の抗原または第2の標的に特異的に結合し、
それによって、少なくとも2つの結合実体を含む多重特異性結合物質を作製する、方法である。
【0110】
本明細書において報告される1つの局面は、2つの異なるエピトープまたは抗原に特異的に結合する多重特異性結合物質を選択するための方法であって、
-第1の結合実体および第2の結合実体の様々な組合せを含む多重特異性結合物質の多数群より、2つの異なるエピトープまたは抗原に特異的に結合する多重特異性結合物質を選択する段階
を含み、方法である。
【0111】
本明細書において報告される1つの局面は、二重特異性抗体を選択するための方法であって、
(i)細胞を含む試料中に存在する細胞表面マーカーを決定し、かつそれらから少なくとも第1の表面マーカーおよび第2の表面マーカーを選択する段階、
(ii)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)とそれに続く小胞体保留シグナルKDEL(SEQ ID NO: 02)を含む抗体Fab断片または抗体scFabまたはscFv抗体をコードする核酸であって、Fab断片またはscFab断片またはscFv抗体が第1の表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する、核酸、(b)完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む一アーム抗体断片をコードする核酸であって、完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2の表面マーカーまたはそのリガンドに特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ抗体重鎖Fc領域ポリペプチドがそのN末端にオリゴグリシンG
m(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、核酸、ならびに、(c)C末端の小胞体保留シグナルを有する可溶性ソルターゼAをコードする核酸を、細胞にトランスフェクトする段階
を含み、
かつそれによって、二重特異性抗体を作製する、方法である。
【0112】
本明細書において報告される1つの局面は、抗原結合部位の組合せを決定するための方法であって、
(i)(a)20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)とそれに続く小胞体保留シグナルKDEL(SEQ ID NO: 02)を含み、抗体Fab断片または抗体scFab断片またはscFv抗体が第1のエピトープまたは第1の抗原に特異的に結合する、抗体Fab断片または抗体scFab断片またはscFv抗体断片の第1の多数群の各メンバーを、(b)一アーム抗体断片が完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、完全長抗体重鎖および完全長抗体軽鎖が互いに相補的な同種の抗体鎖であり、かつそれらの可変ドメイン(VHおよびVL)の対が、第2のエピトープまたは第2の抗原に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、完全長抗体重鎖および抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体ヒンジ領域を形成している1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結されており、かつ抗体重鎖Fc領域ポリペプチドがそのN末端にオリゴグリシンG
m(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を有している、一アーム抗体断片の多数群の各メンバーと、ソルターゼAの媒介による酵素結合反応を用いて結合させることによって調製された多数の二重特異性抗体の結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を明らかにする段階、ならびに
(ii)適切な結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を有する二重特異性抗体を選択し、かつそれによって、抗原結合部位の組合せを決定する段階
を含む、方法である。
【0113】
以下に、本明細書において報告されるすべての方法の態様が与えられる。
【0114】
すべての局面の1つの態様において、ソルターゼAは、黄色ブドウ球菌(S. aureus)のソルターゼAである。1つの態様において、C末端の小胞体保留シグナルを有する(可溶性)ソルターゼAをコードする核酸は、SEQ ID NO: 51またはSEQ ID NO: 52のアミノ酸配列をコードする。
【0115】
1つの態様において、多重特異性結合物質の多数群のメンバーはそれぞれ、本明細書において報告される方法によって得られる。
【0116】
1つの態様において、多重特異性結合物質は、その結合特異性および/または選択性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期に基づいて選択される。
【0117】
1つの態様において、結合実体は、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインの同種の対である。
【0118】
1つの態様において、多重特異性結合物質は、2つまたは4つの結合実体を含む二重特異性抗体である。
【0119】
1つの態様において、第1のポリペプチドドメインおよび第2のポリペプチドドメインは、互いに独立して完全長抗体、scFv、scFab、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖Fc領域断片、抗体軽鎖可変ドメインおよび抗体重鎖可変ドメインの対、抗原に結合する抗体断片、VH、VL、CH1、CH2、CH3、CH4、CL、抗体ヒンジ領域、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、検出可能な標識、タグ、ならびに、結合対のパートナーより選択される。
【0120】
1つの態様において、小胞体保留シグナルは、SEQ ID NO: 02(KDEL)、SEQ ID NO: 03(HDEL)、またはSEQ ID NO: 04(SFIXXXXMP)より選択される。
【0121】
1つの態様において、ソルターゼモチーフは、LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)である。
【0122】
1つの態様において、結合している第1のドメインまたは第1の結合実体は、20個のC末端アミノ酸残基内にアミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)を含むかまたは有する。
【0123】
1つの態様において、細胞は、哺乳動物細胞または酵母細胞である。1つの態様において、哺乳動物細胞は、HEK細胞、CHO細胞、またはBHK細胞より選択される。
【0124】
1つの態様において、Fc領域は、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つのさらなる変異とを含み、Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。これらの特定のアミノ酸残基の変更により、未改変(野生型)Fc領域と比べて、Fc領域のエフェクター機能が変化する。
【0125】
1つの態様において、結合実体は、ダルピンドメインをベースとする結合実体、アンチカリンドメインをベースとする結合実体、T細胞受容体断片に似たscTCRドメインをベースとする結合実体、ラクダVHドメインをベースとする結合実体、10番目のフィブロネクチン3ドメインをベースとする結合実体、テネイシンドメインをベースとする結合実体、カドヘリンドメインをベースとする結合実体、ICAMドメインをベースとする結合実体、タイチンドメインをベースとする結合実体、GCSF-Rドメインをベースとする結合実体、サイトカイン受容体ドメインをベースとする結合実体、グリコシダーゼ阻害剤ドメインをベースとする結合実体、スーパーオキシドジスムターゼドメインをベースとする結合実体、またはFab断片もしくはscFab断片もしくはscFv断片のような抗体断片の群より選択される(または、第1の結合実体および第2の結合実体は、該群より互いに独立して選択される)。
【0126】
1つの態様において、第1のポリペプチドドメインは、(i)そのC末端アミノ酸配列領域中に(すなわち、20個のC末端アミノ酸残基内に)アミノ酸配列LPXTG(SEQ ID NO: 01、Xは任意のアミノ酸残基であってよい)、および(ii)そのC末端に小胞体保留シグナルKDEL(SEQ ID NO: 02)を含み、第2のポリペプチドドメインは、そのN末端にオリゴグリシンG
m(m=2または3または4または5)を含む。
【0127】
1つの態様において、第2のポリペプチドドメインまたは第2の結合実体は、そのN末端にオリゴグリシンG
m(m=2または3または4または5)アミノ酸配列を含む。
【0128】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、ヒトIgG1サブクラス、またはヒトIgG2サブクラス、またはヒトIgG3サブクラス、またはヒトIgG4サブクラスのものである。
【0129】
1つの態様において、抗体Fc領域は、ヒトIgG1サブクラスまたはヒトIgG4サブクラスのヒト抗体Fc領域である。
【0130】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、異なる残基への、以下のアミノ酸位置:228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、329、および/または331のうちの少なくとも1つの天然に存在するアミノ酸残基の変異を含み、抗体Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。
【0131】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、異なる残基への、天然に存在する329位のアミノ酸残基の変異と、228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331位のアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つのさらなる変異とを含み、Fc領域中の残基は、KabatのEUインデックスに従って番号をつけられている。これらの特定のアミノ酸残基の変更により、未改変(野生型)Fc領域と比べて、Fc領域のエフェクター機能が変化する。
【0132】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、対応する野生型IgG Fc領域を含む結合体と比べて、ヒトFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAおよび/またはFcγRIに対する親和性が低い。
【0133】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域中の329位のアミノ酸残基は、グリシンもしくはアルギニン、またはFc領域内のプロリンサンドイッチを消失させるのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換されている。
【0134】
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域中の天然に存在するアミノ酸残基の変異は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、P329G、および/またはP331Sのうちの少なくとも1つである。
【0135】
1つの態様において、変異は、抗体Fc領域がヒトIgG1サブクラスのものである場合にはL234AおよびL235Aであるか、または抗体Fc領域がヒトIgG4サブクラスのものである場合にはS228PおよびL235Eである。
【0136】
1つの態様において、抗体Fc領域は変異P329Gを含む。
【0137】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366Wならびに第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366S、L368A、およびY407Vを含み、番号付与は、KabatのEUインデックスに従う。
【0138】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異S354Cおよび第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異Y349Cを含む。
【0139】
1つの態様において、抗体Fc領域は、329位のアミノ酸残基プロリンの変異に加えて、抗体Fc領域結合体の安定性上昇と相関関係があるFc領域中のアミノ酸残基の、少なくとも1つのさらなる付加、変異、または欠失を含む。
【0140】
1つの態様において、Fc領域中のアミノ酸残基のさらなる付加、変異、または欠失は、Fc領域がIgG4サブクラスのものである場合、Fc領域の228位および/または235位に存在する。1つの態様において、228位のアミノ酸残基セリンおよび/または235位のアミノ酸残基ロイシンが、別のアミノ酸によって置換される。1つの態様において、抗体Fc領域結合体は、228位にプロリン残基を含む(セリン残基からプロリン残基への変異)。1つの態様において、抗体Fc領域結合体は、235位にグルタミン酸残基を含む(ロイシン残基からグルタミン酸残基への変異)。
【0141】
1つの態様において、Fc領域は、3つのアミノ酸変異を含む。1つの態様において、3つのアミノ酸変異は、P329G、S228P、およびL235E変異(P329G/SPLE)である。
【0142】
1つの態様において、Fc領域中のアミノ酸残基のさらなる付加、変異、または欠失は、Fc領域がIgG1サブクラスのものである場合、Fc領域の234位および/または235位に存在する。1つの態様において、234位のアミノ酸残基ロイシンおよび/または235位のアミノ酸残基ロイシンが、別のアミノ酸に変異する。
【0143】
1つの態様において、Fc領域は、ロイシンアミノ酸残基がアラニンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を234位に含む。
【0144】
1つの態様において、Fc領域は、ロイシンアミノ酸残基がアラニンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を235位に含む。
【0145】
1つの態様において、Fc領域は、プロリンアミノ酸残基がグリシンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を329位に、ロイシンアミノ酸残基がアラニンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を234位に、ロイシンアミノ酸残基がアラニンアミノ酸残基に変異するアミノ酸変異を235位に含む。
【0146】
FcRnに対する親和性が上昇しているFc領域変種は、より長い血清半減期を有しており、このような分子は、例えば、慢性的な疾患または障害を治療するために、投与される抗体またはFc領域結合体に関する全身半減期が長いことが望ましい場合、哺乳動物を治療する方法において有用な用途があると考えられる。
【0147】
FcRn結合親和性が低下している抗体Fc領域結合体は、より短い血清半減期を有しており、このような分子は、例えば、毒性の副作用を回避するため、またはインビボの画像診断法に応用するために、投与される抗体Fc領域結合体の全身半減期がより短いことが望ましい場合、哺乳動物を治療する方法において有用な用途があると考えられる。FcRn結合親和性が低下したFc領域融合ポリペプチドまたはFc領域結合体は、胎盤を通過する可能性が低いことが予期され、したがって、妊婦の疾患または障害の治療において使用され得る。
【0148】
1つの態様において、FcRnに対する結合親和性が変化したFc領域は、アミノ酸位置238、252、253、254、255、256、265、272、286、288、303、305、307、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、386、388、400、413、415、424、433、434、435、436、439、および/または447のうちの1つまたは複数においてアミノ酸改変を有するFc領域である。
【0149】
1つの態様において、Fc領域は、アミノ酸位置252、253、254、255、288、309、386、388、400、415、433、435、436、439、および/または447において1つまたは複数のアミノ酸改変を有するFc領域である。
【0150】
1つの態様において、FcRnへの結合の増大を示すFc領域は、アミノ酸位置238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、および/または434に1つまたは複数のアミノ酸改変を含む。
【0151】
1つの態様において、Fc領域は、IgG1サブクラスのFc領域であり、アミノ酸変異P329G、ならびに/またはL234AおよびL235Aを含む。
【0152】
1つの態様において、Fc領域は、IgG4サブクラスのFc領域であり、アミノ酸変異P329G、ならびに/またはS228PおよびL235Eを含む。
【0153】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366Wならびに第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異T366S、L368A、およびY407Vを含み、番号付与は、KabatのEUインデックスに従っている。
【0154】
1つの態様において、抗体Fc領域は、第1の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異S354Cおよび第2の重鎖Fc領域ポリペプチド中の変異Y349Cを含む。
【0155】
ソルターゼAを用いた酵素的結合
複数ドメインポリペプチドは、例えば、酵素ソルターゼAを用いることによってインビボで得ることができる。
【0156】
多くのグラム陽性菌は、ソルターゼを用いて、病原性因子を含む様々な表面タンパク質をそれらの細胞壁(ペプチドグリカン)に共有結合的に固定する。ソルターゼは、膜結合型酵素である。野生型黄色ブドウ球菌ソルターゼA(SrtA)は、N末端に膜貫通領域を有する、アミノ酸206個からなるポリペプチドである。第1段階において、ソルターゼAは、LPXTG(SEQ ID NO:01)アミノ酸配列モチーフを含む基質タンパク質を認識し、活性部位Cysを用いてThrとGlyの間のアミド結合を切断する。このペプチド切断反応により、ソルターゼA-基質チオエステル中間体が生じる。第2段階で、チオエステルアシル−酵素中間体は、(黄色ブドウ球菌(S. aureus)のペプチドグリカンのペンタグリシン単位に相当する)オリゴグリシンを含む第2の基質ポリペプチドのアミノ基の求核攻撃によって分解されて、共有結合的に結合された細胞壁タンパク質が生じ、ソルターゼAが再生される。オリゴグリシン求核剤がない場合、アシル−酵素中間体は水分子によって加水分解されることができる。
【0157】
ソルターゼの媒介による連結/結合は、様々なタンパク質工学およびバイオコンジュゲーションの目的に応用され始めている。この新しい技術により、LPXTGタグ付きの組換えポリペプチドまたは化学的に合成されたポリペプチドに天然および合成の機能性を導入することが可能になる。例には、オリゴグリシンで誘導体化されたポリマー(例えばPEG)、蛍光体、ビタミン(例えば、ビオチンおよび葉酸)脂質、炭水化物、核酸、合成ペプチドおよび合成タンパク質(例えばGFP)の共有結合が含まれる(Tsukiji, S. and Nagamune, T., ChemBioChem 10 (2009) 787-798; Popp, M.W.-L. and Ploegh, H.L., Angew. Chem. Int. Ed. 50 (2011) 5024-5032)。
【0158】
アミノ構成要素のトリグリシンはSrtAの媒介による連結段階に十分であること、およびアミノ構成要素のジグリシンモチーフでさえもSrtAの媒介による連結段階に十分であることが示されている(Clancy, K.W., et al., Peptide Science 94 (2010) 385-396)。
【0159】
酵素的結合のために、膜貫通領域を欠く可溶性の短縮型ソルターゼA(SrtA;黄色ブドウ球菌SrtAのアミノ酸残基60〜206)が使用され得る(Ton-That, H., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (1999) 12424-12429; Ilangovan, H., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98 (2001) 6056-6061)。
【0160】
少なくともN末端の1つにオリゴグリシンモチーフ(G
m、m=2または3または4または5)を含む任意のポリペプチドドメインは、真核細胞(例えば、HEK293細胞、CHO細胞)の上清から発現および精製することができる。
【0161】
1つのポリペプチド鎖のC末端にSrtA認識モチーフを含む結合実体(例えば、scFv、scFab、もしくはダルピンなどの単鎖抗原結合ポリペプチドまたはdsFvもしくはFabなどの多鎖抗原結合ポリペプチド)は、真核細胞(例えば、HEK293細胞、CHO細胞)の上清から発現および精製することができる。
【0162】
「コンビマトリックス(Combimatrix)」アプローチ
抗体Fab断片のような第1の結合実体を別の特異的結合実体、例えば、第2の抗体Fab断片または完全長重鎖およびその同種の完全長軽鎖およびジスルフィド結合された重鎖Fc領域ポリペプチドを含む一アーム抗体断片と組み合わせることが望ましい。さらに、第1の結合実体をいくつかの異なる他の結合実体に連結した場合に、第1の結合実体がより優れた特性を示すかどうかスクリーニングすることも可能である。いわゆるコンビマトリックスアプローチを用いて、結合実体の多数の組合せを簡単な方法で扱うことができる。第2の結合実体が、異なる標的/エピトープ/抗原に結合できるのか、または同じ抗原に結合するが異なるエピトープに結合できるのか、または同じエピトープに結合するが、単一の結合実体の異なる変種(例えば、ヒト化候補物)であり得るのかを指摘しなければならない。
【0163】
このシナリオでは、自動化プラットホームプロセスが実施され得る。例えば96ウェルプレートまたは他のハイスループットな形式、例えばEppendorf epMotion 5075vacピペッティングロボットを使用する任意のプラットホームが適している。
【0164】
最初に、結合実体をコードする構築物のクローニングが実施される。結合実体をコードする核酸を有するプラスミドは、遺伝子合成もしくはPCR増幅によって通常は得られ、コードされる1つの結合実体のC末端領域は、ソルターゼモチーフおよび小胞体保留シグナルを含み、かつ、他の各結合実体のN末端領域は、少なくとも2つの連続するグリシン残基(ジグリシン)を含む/少なくとも2つの連続するグリシン残基(ジグリシン)のN末端オリゴグリシンモチーフを含む。プラスミドは、マルチウェルプレートの別々のウェル中に個別に移される(プレート全体に載せることができる)。その後、プラスミドは、結合実体コード領域を切り離す制限酵素ミックスを用いて消化される。すべてのプラスミドに対して必要な制限酵素ミックスが1種類だけになるようにすべての遺伝子合成および/またはPCRプライマーを設計することが望ましい。その後、任意の洗浄段階により、精製されたDNA断片が得られる。これらの断片は、前述したのと同じ制限ミックスを用いてアクセプターベクターから切り取っておかれたプラスミド骨格にライゲーションされる。あるいは、クローニング手順は、SLICによるクローニング段階によっても実施され得る。ライゲーション後、自動化プラットホームは、すべてのライゲーションミックスを、コンピテント大腸菌(E. coli)細胞を有する別のマルチウェルプレート(例えば、Top10 Multi Shot、Invitrogen)に移し、形質転換反応が実施される。これらの細胞は、所望の密度まで培養される。培養混合物の分取物から、グリセロールストックを得ることができる。培養物から、(例えば、プラスミド単離ミニキット(例えば、NucleoSpin 96 Plasmid、Macherey&Nagel)を用いて)プラスミドが単離される。適切な制限ミックスによる分取物の消化およびSDS電気泳動(例えば、E-Gel 48、Invitrogen)によって、プラスミドのアイデンティティが確認される。その後、対照の配列決定反応を実施するために、プラスミド分取物を新しいプレートに載せることができる。
【0165】
次の段階において、結合実体が発現される。このために、HEK細胞は、マルチウェルプレート(例えば48ウェルプレート)に播種され、C末端の内質保留シグナルを有する可溶性ソルターゼをコードするプラスミドと共に、(適切なバックボーンベクター中に結合実体コード領域を含む)単離された各プラスミド組合せでトランスフェクトされる。したがって、HEK細胞は、次の3つの発現プラスミドで同時トランスフェクトされる:(i)(N末端からC末端の方向に)C末端Hisタグと、ソルターゼモチーフと、内質保留シグナルとを有する結合実体をコードするプラスミド、(ii)少なくとも2つのグリシン残基のN末端オリゴグリシンモチーフを有する結合実体をコードするプラスミド、ならびに(iii)C末端の内質保留シグナルを有する可溶性ソルターゼをコードするプラスミド。トランスフェクトされたHEK細胞は数日間培養され、続いて、(例えば、バキュームステーションを用いて1.2μmおよび0.22μmのフィルタープレートに通してろ過することにより)、培養上清が回収される。力価は、例えばELISAを実施することによってモニターされ得る。
【0166】
結合実体は、インビボで発現される間に、ソルターゼの媒介によるペプチド転移反応を用いて、互いに連結される。C末端ソルターゼ認識モチーフを含む結合ドメインが小胞体保留シグナルを含むため、これが実現される。使用される可溶性ソルターゼは、C末端に同じ小胞体保留シグナルを含む。したがって、両方の分子が、小胞体中でほぼ完全に保留される。第2のポリペプチドドメインが小胞体中に入ると、酵素結合反応が起こり、酵素的ペプチド転移反応の間に除去される小胞体保留シグナルを含まない酵素的結合体は、培養培地中に分泌される。結合体は、Hisタグ選択手順を用いることによって、培養培地から回収することができる(培養上清を、例えばHis MultiTrap HPプレート(GE Healthcare)に加え、ろ過する。これによって、Hisタグを含む分子はすべてマトリックスに結合し(すなわち結合体)、洗浄後に適切な溶出緩衝液を用いて溶出させることができ、一方、他のすべての分子はクロマトグラフィー材料に結合しないと考えられる。
【0167】
多重特異性結合分子は、コンビマトリックスアプローチを用いて作製され得、後述する以下の表を参照されたい。
【0168】
マルチウェルプレートの最初の列(column)のウェルは、C末端ソルターゼモチーフを含む第1の結合実体をコードする異なるプラスミドを示す(アラビア数字、例えば96ウェルプレートの場合1〜11で示される)。同じプレートの第1の列(row)のウェルは、N末端/N末端領域にオリゴグリシンを含む第2の結合実体をコードする異なるプラスミドを示す(文字、例えばA〜Gで示されている最初の列を除く)。その後、最初の横列の第1の結合実体をコードするプラスミドのすべてが、最初の縦列の第2の結合実体をコードするプラスミドのすべてと組み合わされ(例えば、96ウェルプレートにおいて77個の組合せが得られる)、数字と文字の組合せによって示される(例えば、1A〜11G)。さらに、ソルターゼをコードするプラスミドが、すべてのウェルに添加される。すべての組合せが、HEK細胞に同時トランスフェクトされ、かつそれによって発現され、小胞体保留シグナルを含むソルターゼAによってインビボで結合される。インビボでの酵素的結合が実施された後、最適な精製段階が実施され得る。そうすると、多重特異性結合分子は、生化学的アッセイ法または細胞ベースのアッセイ法において評価される準備ができた状態となる。
【0169】
III. 組換え法
ポリペプチドをコードするベクターのクローニングおよび/または発現/分泌に適した宿主細胞には、本明細書において説明する原核細胞および真核細胞が含まれる。例えば、特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、ポリペプチドは細菌において作製され得る(例えば、大腸菌における抗体断片の発現を説明しているUS 5,648,237、US 5,789,199、およびUS 5,840,523、Charlton, Methods in Molecular Biology 248 (2003) 245-254 (B.K.C. Lo, (ed.), Humana Press, Totowa, NJ)を参照されたい)。発現後、ポリペプチドは、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離され得、または不溶性画分から、いわゆる、可溶化できる封入体から単離され得、かつ、ポリペプチドは、生物活性型にリフォールディングされ得る。その後、ポリペプチドはさらに精製され得る。
【0170】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物も、ポリペプチドをコードするベクターのための適切なクローニング宿主または発現宿主であり、これらには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、その結果、部分的または全面的にヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドを産生する真菌株および酵母株が含まれる(例えば、Gerngross, Nat. Biotech. 22 (2004) 1409-1414、およびLi, et al., Nat. Biotech. 24 (2006) 210-215を参照されたい)。
【0171】
またグリコシル化ポリペプチドの発現のために適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞および昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と組み合わせて、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用され得る多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0172】
植物細胞培養物もまた、宿主として使用することができる(例えば、US 5,959,177、US 6,040,498、US 6,420,548、US 7,125,978、およびUS 6,417,429(トランスジェニック植物において抗体を産生させるためのPLANTIBODIES(商標)技術を説明している)を参照されたい)。
【0173】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁培養液中で増殖するように順応させた哺乳動物細胞株が、有用である場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、COS-7細胞株(SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞;HEK293細胞株(ヒト胎児腎(human embryonic kidney))BHK細胞株(仔ハムスター腎臓(baby hamster kidney));TM4マウスセルトリ細胞株(例えば、Mather, Biol. Reprod. 23 (1980) 243-251で説明されているTM4細胞);CV1細胞株(サル腎臓細胞);VERO-76細胞株(アフリカミドリザル腎臓細胞);HELA細胞株(ヒト子宮頸部癌細胞);MDCK細胞株(イヌ腎臓細胞);BRL-3A細胞株(バッファローラット肝臓細胞(buffalo rat liver cell));W138細胞株(ヒト肺細胞);HepG2細胞株(ヒト肝臓細胞);MMT060562細胞株(マウス乳房腫瘍細胞(mouse mammary tumor cell));例えば、Mather, et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68で説明されているTRI細胞株;MRC5細胞株;およびFS4細胞株である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR欠損(negative)CHO細胞株(Urlaub, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216)を含むCHO細胞株(チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster ovary cell))、ならびにY0、NS0、およびSp2/0細胞株などの骨髄腫細胞株が含まれる。ポリペプチド産生に適したいくつかの哺乳動物宿主細胞株の概要については、例えば、Yazaki, and Wu, Methods in Molecular Biology, Antibody Engineering 248 (2004) 255-268 (B.K.C. Lo, (ed.), Humana Press, Totowa, NJ)を参照されたい。
【0174】
IV. 診断および検出のための方法および組成物
ある特定の態様において、本明細書において提供される二重特異性抗体のいずれかは、生物試料において一方または両方の抗原の存在を検出するのに有用である。本明細書において使用される「検出する」という用語は、定量的検出または定性的検出を包含する。ある特定の態様において、生物試料は、細胞または組織、例えば癌細胞の生検材料を含む。
【0175】
1つの態様において、診断または検出の方法において使用するための二重特異性抗体が提供される。さらなる局面において、癌細胞の存在を生物試料において検出する方法が提供される。ある特定の態様において、この方法は、二重特異性抗体がその1つまたは複数の抗原に結合するのを許容する条件下で、生物試料を本明細書において説明する二重特異性抗体と接触させる段階、および二重特異性抗体とその1つまたは複数の抗原との間で複合体が形成されるかどうかを検出する段階を含む。このような方法は、インビトロの方法またはインビボの方法であってよい。
【0176】
本発明の抗体を用いて診断され得る例示的な障害には、癌が含まれる。
【0177】
ある特定の態様において、標識された二重特異性抗体が提供される。標識には、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光性標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識)、ならびに例えば酵素反応または分子相互作用を通じて間接的に検出される酵素またはリガンドなどの部分が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例示的な標識には、ラジオアイソトープ
32P、
14C、
125I、
3H、および
131I、蛍光体、例えば、希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなど、ルセリフェラーゼ(luceriferase)、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(US 4,737,456)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシターゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、過酸化水素を使用して色素前駆体を酸化する酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼまたはミクロペルオキシダーゼと併用される、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなどの糖類酸化酵素、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなどの複素環系酸化酵素、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、ならびに、安定なフリーラジカルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0178】
V. 薬学的製剤
本明細書において説明する二重特異性抗体の薬学的製剤は、所望の程度の純度を有するそのような抗体を1種または複数種の任意の薬学的に許容される担体(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.), (1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水性液剤の形態で調製される。通常、薬学的に許容される担体は、使用される投与量および濃度において受容者に非毒性であり、限定されるわけではないが、次のものが含まれる:リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリ(ビニルピロリドン)のような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸; グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムのような、塩を形成する対イオン;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン系界面活性剤。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体には、さらに、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)のような間質(interstitial)薬物分散剤、例えば、rhuPH20(HYLENEX(登録商標), Baxter International, Inc.)のようなヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が含まれる。rhuPH20を含む、いくつかの例示的なsHASEGPおよび使用方法は、US 2005/0260186およびUS 2006/0104968において説明されている。1つの局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼのような1種または複数種の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0179】
例示的な凍結乾燥抗体製剤が、US 6,267,958において説明されている。水性抗体製剤には、US 6,171,586およびWO 2006/044908において説明されているものが含まれ、後者の製剤は、ヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0180】
また本明細書における製剤は、治療される個々の適応症に対する必要に応じて複数種の有効成分、好ましくは、補完的な活性を有し、互いに悪影響を及ぼさないものも含んでよい。このような有効成分は、意図される目的のために有効な量で組み合わせられて存在するのが適切である。
【0181】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリラート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に閉じ込めることができる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) (1980)で開示されている。
【0182】
徐放性製剤が調製され得る。徐放性製剤の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスは造形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態である。
【0183】
通常、インビボ投与のために使用される製剤は、滅菌済みである。無菌状態は、例えば、滅菌ろ過膜に通してろ過することによって、容易に実現することができる。
【0184】
VI. 治療方法および治療的組成物
本明細書において提供される二重特異性抗体のいずれかを治療方法で使用することができる。
【0185】
1つの局面において、医薬として使用するための二重特異性抗体が提供される。さらなる局面において、癌を治療する際に使用するための二重特異性抗体が提供される。ある特定の態様において、治療の方法において使用するための二重特異性抗体が提供される。ある特定の態様において、本発明は、有効量の二重特異性抗体を、癌を有している個体に投与する段階を含む、該個体を治療する方法において使用するための、二重特異性抗体を提供する。1つのこのような態様において、この方法は、例えば後述するような少なくとも1種の追加の治療物質の有効量を個体に投与する段階をさらに含む。さらなる態様において、本発明は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解する際に使用するための二重特異性抗体を提供する。ある特定の態様において、本発明は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するために有効量の二重特異性抗体を個体に投与する段階を含む、個体において癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するための方法において使用するための、二重特異性抗体を提供する。上記の態様のいずれかに記載の「個体」は、ヒトであることができる。
【0186】
さらなる局面において、本発明は、医薬の製造または調製における、二重特異性抗体の使用を提供する。1つの態様において、医薬は、癌の治療のためである。さらなる態様において、医薬は、癌を有している個体に有効量の医薬を投与する段階を含む癌を治療する方法において使用するためである。1つのこのような態様において、この方法は、例えば後述するような少なくとも1種の追加の治療物質の有効量を個体に投与する段階をさらに含む。さらなる態様において、医薬は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するためである。さらなる態様において、医薬は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するために有効量の医薬を個体に投与する段階を含む、個体において癌細胞を除去する/死滅させる/溶解する方法において使用するためである。上記の態様のいずれかに記載の「個体」は、ヒトであってよい。
【0187】
さらなる局面において、本発明は、癌を治療するための方法を提供する。1つの態様において、この方法は、癌を有している個体に有効量の二重特異性抗体を投与する段階を含む。1つのこのような態様において、この方法は、後述するような少なくとも1種の追加の治療物質の有効量を個体に投与する段階をさらに含む。上記の態様のいずれかに記載の「個体」は、ヒトであってよい。
【0188】
さらなる局面において、本発明は、個体において癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するための方法を提供する。1つの態様において、この方法は、癌細胞を除去する/死滅させる/溶解するために有効量の二重特異性抗体を個体に投与する段階を含む。1つの態様において、「個体」はヒトである。
【0189】
さらなる局面において、本発明は、例えば、上記の治療方法のいずれかで使用するための、本明細書において提供される二重特異性抗体のいずれかを含む薬学的製剤を提供する。1つの態様において、薬学的製剤は、本明細書において提供される二重特異性抗体のいずれかおよび薬学的に許容される担体を含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書において提供される二重特異性抗体のいずれかおよび例えば後述するような少なくとも1種の追加の治療物質を含む。
【0190】
本発明の抗体は、治療法において単独でまたは他の作用物質と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1種の追加の治療物質と同時投与されてよい。ある特定の態様において、追加の治療物質は、細胞毒性剤または化学療法剤である。
【0191】
前述のこのような併用療法は、併用投与(2種またはそれ以上の治療物質が同じ製剤または別々の製剤に含まれる)、ならびに、追加の治療物質および/またはアジュバントの投与の前、追加の治療物質および/またはアジュバントの投与と同時、および/または追加の治療物質および/またはアジュバントの投与の後に本発明の抗体の投与が行われ得る個別投与を包含する。本発明の抗体はまた、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0192】
本発明の抗体(および任意の追加の治療物質)は、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与、ならびに局所的治療のために望ましいならば、病巣内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短時間であるかまたは長期的であるかにある程度応じて、任意の適切な経路によって、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によって行うことができる。限定されるわけではないが、単回投与または様々な時点に渡る複数回投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含む様々な投薬スケジュールが、本明細書において企図される。
【0193】
本発明の抗体は、優良医療規範(good medical practice)と一致する様式で製剤化され、分量を決定され(dosed)、投与される。この状況で考慮すべき因子には、治療される個々の障害、治療される個々の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、作用物質の送達部位、投与方法、投与スケジューリング、および医療担当者に公知である他の因子が含まれる。抗体は、そうする必要はないが、任意で、問題の障害を予防または治療するのに現在使用されている1種または複数種の作用物質と共に製剤化される。このような他の作用物質の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療のタイプ、および上記の他の因子に依存する。通常、これらは、本明細書において説明するのと同じ投与量および投与経路で、もしくは本明細書において説明する投与量の約1〜99%で、または適切であると実験的に/臨床的に判定される任意の投与量および任意の経路で、使用される。
【0194】
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適切な投与量(単独で、または1種もしくは複数種の他の追加の治療物質と組み合わせて使用される場合)は、治療しようとする疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および経過、その抗体が予防目的で投与されるのかまたは治療目的で投与されるのか、以前の治療法、患者の臨床歴、および抗体に対する応答、ならびに主治医の判断に依存する。抗体は、1回で、または一連の治療の間、患者に適宜投与される。疾患のタイプおよび重症度によって、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.5mg/kg〜10mg/kg)の抗体が、患者に投与するための最初の候補投与量であることができ、例えば、1回または複数回の個別投与によるか持続輸注によるかを問わない。1つの典型的な1日投与量は、前述の因子に応じて、約1μg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上の範囲にわたり得る。数日間またはそれより長い期間に渡る反復投与の場合、病態に応じて、疾患症状の所望の抑制が起こるまで、通常、治療は継続される。抗体の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲である。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは10mg/kg(またはその任意の組合せ)という1種または複数種の用量が、患者に投与され得る。このような用量は、断続的に、例えば、毎週または3週間ごとに(例えば、患者に抗体が約2〜約20回、または例えば約6回与えられるように)投与されてよい。最初に多めの負荷用量、続いて、1回または複数回の少なめの用量を投与してよい。しかしながら、他の投与計画が有用である場合がある。この治療法の経過は、従来の技術およびアッセイ法を用いて容易にモニターされる。
【0195】
二重特異性抗体の代わりにまたは二重特異性抗体に加えて、本発明の免疫結合体を用いて、上記の製剤または治療方法のいずれかを実施できることが理解される。
【0196】
VII. 製造物
本発明の別の局面において、前述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な材料を含む製造物が提供される。製造物は、容器、および容器の上または容器に伴うラベルまたは添付文書を含む。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど様々な材料から形成されてよい。容器は、単独であるか、または病態を治療、予防、および/もしくは診断するのに有効な別の組成物と組み合わせられた組成物を含み、無菌取出口を有してよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き刺すことができる栓を有する静注液バッグまたはバイアルでよい)。組成物中の少なくとも1種の活性物質は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、その組成物が、選ばれた病態を治療するのに使用されることを示す。さらに、製造物は、(a)本発明の抗体を含む組成物がその中に含まれる第1の容器;および(b)別の細胞障害性物質またはそうでなければ治療物質を含む組成物がその中に含まれる第2の容器を含んでよい。本発明のこの態様の製造物は、それらの組成物を用いて特定の病態を治療できることを示す添付文書をさらに含んでよい。あるいはまたはさらに、製造物は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2の(または第3の)容器をさらに含んでよい。これは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料もさらに含んでよい。
【0197】
上記の製造物のいずれかは、二重特異性抗体の代わりにまたは二重特異性抗体に加えて、本発明の免疫結合体を含んでよいことが理解される。
【実施例】
【0198】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の例である。上記に提供した一般的説明を前提として、他の様々な態様が実施され得ることが理解されよう。
【0199】
前述の本発明は、理解を明確にするために、例示および例としていくらか詳しく説明してきたが、これらの説明および例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0200】
材料および方法
組換えDNA技術
Sambrook, J. et al., Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989において説明されているように、標準的方法を用いてDNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造業者の取扱い説明書に従って使用した。
【0201】
遺伝子およびオリゴヌクレオチドの合成
所望の遺伝子セグメントは、Geneart GmbH(Regensburg, Germany)において化学合成によって調製された。合成された遺伝子断片を、増殖/増幅のために大腸菌プラスミド中にクローニングした。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列は、DNA配列決定によって確認した。あるいは、合成オリゴヌクレオチドを化学的にアニーリングすることによって、またはPCRによって、短い合成DNA断片を構築した。それぞれのオリゴヌクレオチドをmetabion GmbH(Planegg-Martinsried, Germany)によって調製した。
【0202】
タンパク質測定
280nmにおける光学濃度(OD)を測定し、ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて算出したモル吸光係数を用いることによって、精製したポリペプチドのタンパク質濃度を測定した。
【0203】
実施例1
単鎖Fab抗体断片を含む抗体および抗体断片のための発現プラスミドの作製
ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293)の一過性トランスフェクションによって、所望のタンパク質を発現させた。所望の遺伝子/タンパク質(例えば、完全長抗体重鎖、完全長抗体軽鎖、scFab断片、またはN末端にオリゴグリシンを含むFc鎖)を発現させるために、以下の機能的エレメントを含む転写ユニットを使用した:
-イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の最初期エンハンサーおよびプロモーター(P-CMV)、
-ヒト重鎖免疫グロブリン5'非翻訳領域(5'UTR)、
-マウス免疫グロブリンの重鎖シグナル配列(SS)、
-発現させる遺伝子/タンパク質、ならびに
-ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGH pA)。
【0204】
発現させる所望の遺伝子を含む発現ユニット/カセットに加えて、基本的/標準的な哺乳動物発現プラスミドは、
-大腸菌においてこのプラスミドが複製するのを可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および
-大腸菌にアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子
を含む。
【0205】
(a)C末端Hisタグ、ソルターゼモチーフ、およびER保留シグナルを有する単鎖Fab断片(scFab)の発現プラスミドの作製
C末端Hisタグ、続いてソルターゼ認識モチーフ、および内質保留(ER)シグナルを含むscFabコード融合遺伝子を、各配列エレメント(短いGS配列エレメントによってそれぞれ隔てられたHis6タグ(HHHHHH、SEQ ID NO: 07)、ソルターゼモチーフ(LPETGGS、SEQ ID NO: 28)、およびER保留シグナル(KDEL、SEQ ID NO: 02)をコードするDNA断片
をラット-ヒトキメラ単鎖Fab分子(Vκ-huCκ-リンカー-V重鎖-huCH1)に融合することによって、組み立てた。
【0206】
scFab断片とC末端Hisタグ、ソルターゼモチーフ、およびER保留シグナルとの融合タンパク質をHEK293細胞において一過性に発現させるための発現プラスミドは、C末端Hisタグ、ソルターゼモチーフ、およびER保留シグナルを有するscFab断片の発現カセットに加えて、大腸菌(E. coli)におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および大腸菌においてアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子を含んだ。C末端Hisタグ、ソルターゼモチーフ、およびER保留シグナルを有するscFab断片融合遺伝子の転写単位は、以下の機能的エレメントを含む:
-イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の最初期エンハンサーおよびプロモーター(P-CMV)、
-ヒト重鎖免疫グロブリン5'非翻訳領域(5'UTR)、
-マウス免疫グロブリンの重鎖シグナル配列、
-scFab(Vκ-huCκ-リンカー-V重鎖-huCH1)をコードする核酸、
-Hisタグをコードする核酸、
-ソルターゼ認識モチーフをコードする核酸、
-ER保留シグナルをコードする核酸、ならびに
-ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGHpA)。
【0207】
抗トランスフェリン受容体抗体3D8の成熟scFab断片とC末端Hisタグ、ソルターゼモチーフ、およびER保留シグナルとの融合タンパク質のアミノ酸配列は、
である。
【0208】
(b)N末端グリシン-セリンモチーフを有する単鎖Fab断片(scFab)の発現プラスミドの作製
N末端グリシン-セリンモチーフを含むscFab融合遺伝子を、各配列エレメント((G
4S)
2、SEQ ID NO: 31)をコードするDNA断片をラット-ヒトキメラ単鎖Fab分子(Vκ-huCκ-リンカー-V重鎖-huCH1)に融合することによって、組み立てた。
【0209】
N末端グリシン-セリンモチーフを有するscFab断片をHEK293細胞において一過性に発現させるための発現プラスミドは、N末端グリシン-セリンモチーフを有するscFab断片の発現カセットに加えて、大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および大腸菌においてアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子を含んだ。N末端グリシン-セリンモチーフを有するscFab断片融合遺伝子の転写単位は、以下の機能的エレメントを含む:
-イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の最初期エンハンサーおよびプロモーター(P-CMV)、
-ヒト重鎖免疫グロブリン5'非翻訳領域(5'UTR)、
-マウス免疫グロブリンの重鎖シグナル配列、
-(G
4S)
2モチーフをコードする核酸、
-scFab(Vκ-huCκ-リンカー-V重鎖-huCH1)をコードする核酸、ならびに
-ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGH pA)。
【0210】
N末端グリシン-セリンモチーフを有する抗トランスフェリン受容体抗体3D8の成熟scFab断片のアミノ酸配列は、
である。
【0211】
(c)N末端トリプルグリシンモチーフを有する抗体Fc領域断片(FC)の発現プラスミドの作製
N末端トリプルグリシンモチーフを含むFC融合遺伝子を、各配列エレメント(GGG、SEQ ID NO: 33)をコードするDNA断片をヒト抗体重鎖Fc領域分子に融合することによって、組み立てた。
【0212】
N末端トリプルグリシンモチーフを有する抗体Fc領域断片をHEK293細胞において一過性に発現させるための発現プラスミドは、N末端トリプルグリシンモチーフを有する抗体重鎖Fc領域の発現カセットに加えて、大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および大腸菌においてアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子を含んだ。N末端トリプルグリシンモチーフを有する抗体Fc領域断片(FC)融合遺伝子の転写単位は、以下の機能的エレメントを含む:
-イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の最初期エンハンサーおよびプロモーター(P-CMV)、
-ヒト重鎖免疫グロブリン5'非翻訳領域(5'UTR)、
-マウス免疫グロブリンの重鎖シグナル配列、
-GGGをコードする核酸、
-Fc領域をコードする核酸、ならびに
-ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGH pA)。
【0213】
N末端トリプルグリシンモチーフを有する成熟した抗体Fc領域断片のアミノ酸配列は、
である。
【0214】
(d)抗体重鎖および軽鎖の発現プラスミド
先に概説した方法に従って、以下のポリペプチド/タンパク質をコードする発現プラスミドを構築した。
-T366W変異を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域と組み合わせられたペルツズマブ重鎖可変ドメイン:
。
-ヒトκ軽鎖定常領域と組み合わせられたペルツズマブ軽鎖可変ドメイン:
。
-T366S、L368A、およびY407V変異を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域と組み合わせられたトラスツズマブ重鎖可変ドメイン:
。
-ヒトκ軽鎖定常領域と組み合わせられたトラスツズマブ軽鎖可変ドメイン:
。
-ペルツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
アミノ酸配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体VH-CH1断片:
。
-ペルツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体VH-CH1断片:
。
-ペルツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体VH-CH1断片:
。
-トラスツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体VH-CH1断片:
。
-トラスツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体VH-CH1断片:
。
-トラスツズマブ重鎖可変ドメインおよびC末端
配列を含むサブクラスIgG1のヒト重鎖定常領域1(CH1)を含む、抗体VH-CH1断片:
。
-N末端
配列を含む、T366S、L368A、およびY407V変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):
。
-N末端GGHTCPPC配列を含む、T366S、L368A、およびY407V変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):
。
-N末端GGCPPC配列を含む、T366S、L368A、およびY407V変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):
。
-N末端
配列を含む、T366W変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):
。
-N末端GGHTCPPC配列を含む、T366W変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):
。
-N末端GGCPPC配列を含む、T366W変異を有する重鎖Fc領域ポリペプチド(ヒトIgG1(CH2-CH3)):
。
【0215】
実施例2
C末端ER保留シグナルを有する黄色ブドウ球菌可溶性ソルターゼAの発現プラスミドの作製
ER保留シグナル(KDEL)をコードするDNA断片を、N末端が短縮された黄色ブドウ球菌ソルターゼA(60〜206)分子に融合することによって、C末端ER保留シグナルを含むソルターゼ融合遺伝子を組立てた(SrtA-KDEL)。
【0216】
ER保留シグナルを有する可溶性ソルターゼをHEK293細胞において一過性に発現させるための発現プラスミドは、ER保留シグナルを有する可溶性ソルターゼの発現カセットに加えて、大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および大腸菌においてアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子を含んだ。ER保留シグナルを有する可溶性ソルターゼの転写単位は、以下の機能的エレメントを含む:
-イントロンAを含む、ヒトサイトメガロウイルス由来の最初期エンハンサーおよびプロモーター(P-CMV)、
-ヒト重鎖免疫グロブリン5'非翻訳領域(5'UTR)、
-マウス免疫グロブリンの重鎖シグナル配列、
-N末端が短縮された黄色ブドウ球菌ソルターゼAをコードする核酸、
-ER保留シグナルをコードする核酸、ならびに
-ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGHpA)。
【0217】
N末端が短縮された黄色ブドウ球菌ソルターゼAのC末端アミノ酸残基は既にリジン(K)であるため、機能的なER保留シグナル(KDEL)を確立するためには、アミノ酸配列DELを酵素のC末端に融合させるだけでよかった。
【0218】
ER保留シグナル(KDEL)を有する成熟した可溶性ソルターゼのアミノ酸配列は、
である。
【0219】
GSKDEL小胞体保留シグナルを有する成熟した可溶性ソルターゼのアミノ酸配列は、
である。
【0220】
実施例3
ソルターゼの媒介によるペプチド転移によってインビボで作製された結合体の一過性発現、精製、および分析的特徴決定
F17培地(Invitrogen Corp.)中で培養し、一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞(ヒト胎児由来腎臓細胞株293に由来)において、インビボで結合体を生じさせた。トランスフェクションには、「293-Free」トランスフェクション試薬(Novagen)を使用した。前述のN末端およびC末端を伸長させたscFab分子ならびに可溶性ソルターゼをそれぞれ、個々の発現プラスミドから発現させた。トランスフェクションは、製造業者の取扱い説明書で指定されたようにして実施した。トランスフェクション後三〜七(3〜7)日目に、融合タンパク質を含む細胞培養上清を回収した。精製するまで、上清を低温(例えば-80℃)で保存した。
【0221】
例えばHEK293細胞におけるヒト免疫グロブリンの組み換え発現に関する一般的情報は、Meissner, P. et al., Biotechnol. Bioeng. 75 (2001) 197-203において与えられている。
【0222】
培養上清をろ過し、続いて、Ni
2+イオンアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。Ni Sepharose(商標)高性能His-Trap HP(GE Healthcare)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって、Hisタグを含む分泌されたタンパク質を捕捉した。500mM NaClおよび30mMイミダゾールを含む10mMトリス緩衝液pH7.5で洗浄することによって、未結合タンパク質を除去した。500mM NaClおよび500mMイミダゾールを含む10mMトリス緩衝液pH7.5を用いて、Hisタグを含む結合されたタンパク質を溶出させた。Superdex 200(商標)(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを、2回目の精製工程として使用した。サイズ排除クロマトグラフィーは、20mMヒスチジン緩衝液、0.14M NaCl、pH 6.0中で実施した。回収されたタンパク質を、140mM NaClを含む10mMヒスチジン緩衝液、pH6.0に対して透析し、-80℃で保存した。
【0223】
280nmにおける光学濃度(OD)を測定し、アミノ酸配列に基づいて算出したモル吸光係数を用いることによって、タンパク質のタンパク質濃度を決定した。還元剤(5mM 1.4-ジチオトレイトール(dithiotreitol))の存在下および非存在下でのSDS-PAGEならびにクーマシーブリリアントブルーを用いた染色によって、純度を分析した。SK3000SWxl分析用サイズ排除カラム(Tosohaas, Stuttgart, Germany)を用いた高性能SECによって、Fc融合タンパク質調製物の凝集物含有量を測定した。ペプチド-N-グリコシダーゼF(Roche Applied Science)を用いた酵素処理によってN-グリカンを除去した後、還元されたFc融合タンパク質のアミノ酸主鎖の完全性をNano Electrospray QTOF質量分析法によって検証した。