特許第6405315号(P6405315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405315
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】環境障壁コーティング及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/89 20060101AFI20181004BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20181004BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20181004BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20181004BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20181004BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C04B41/89 A
   B32B3/30
   B32B9/00 A
   B32B18/00 B
   F01D5/28
   F02C7/00 C
   F02C7/00 D
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-546488(P2015-546488)
(86)(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公表番号】特表2016-506315(P2016-506315A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】US2013069833
(87)【国際公開番号】WO2014092916
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】13/711,250
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】メスター,ピーター・ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,カーチス・アラン
(72)【発明者】
【氏名】スンダラム,サイラム
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジュリン
(72)【発明者】
【氏名】リプキン,ドン・マーク
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/085376(WO,A1)
【文献】 特開2011−037701(JP,A)
【文献】 特開2011−046598(JP,A)
【文献】 特開2011−068861(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02615250(EP,A1)
【文献】 特開2000−343642(JP,A)
【文献】 特表2002−511834(JP,A)
【文献】 特開2000−355753(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/123602(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0097538(US,A1)
【文献】 特開2007−015913(JP,A)
【文献】 米国特許第05419971(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
C04B 41/89 − 41/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
連続表面を有するセラミックマトリックス複合材料基材と、
前記基材の連続表面上に設けられたボンドコートであって、元素シリコン;1又はそれ以上のシリコン合金;炭化ケイ素;窒化ケイ素;遷移金属シリサイド;シリカ;希土類ケイ酸塩;希土類アルミノケイ酸塩;アルカリ土類 アルミノケイ酸塩;及びこれらの混合物を含有する材料から形成され、凹部、突起部又はこれらの組み合わせを含む表面特徴部を有するボンドコートと、
前記基材の連続表面及びボンドコートの表面の上にある少なくとも1つの外側層と、
前記ボンドコートの表面上で前記ボンドコートと前記少なくとも1つの外側層との間で接触する構成層と、
を備え、
前記構成層が、前記ボンドコートの成分によって形成され且つ前記ボンドコートの表面特徴部に対応する特徴を表面に有していて、
前記表面特徴部が、前記構成層を通じて前記ボンドコートと前記少なくとも1つの外側層とを物理的に相互連結しており、
前記表面特徴部が、前記ボンドコートの表面の内外に40〜160μmだけ延びており、
前記表面特徴部の厚さが、前記構成層の厚さよりも厚い、
物品。
【請求項2】
前記表面特徴部が、互いに等間隔で配置される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記表面特徴部が、該表面特徴部が互いに非等間隔で配置されている及び/又は同じでない寸法を有する不規則なパターンを定める、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記表面特徴部が、前記ボンドコートの表面方向に少なくとも10μmの寸法を有する、請求項1から3のいずれかに記載の物品。
【請求項5】
前記表面特徴部が、少なくとも10μm離間して配置される、請求項1から4のいずれかに記載の物品。
【請求項6】
前記表面特徴部が、直線的形状、曲線形状、及び不規則な表面粗度の群からのものである、請求項1から5のいずれかに記載の物品。
【請求項7】
前記ボンドコートが、基本的に元素シリコンからなる、請求項1から6のいずれかに記載の物品。
【請求項8】
前記ボンドコートが、シリコンと、炭化ケイ素及び窒化ケイ素、遷移金属シリサイド及びシリカからなる群から選択された1又はそれ以上の追加の化合物とからなる、請求項1から6のいずれかに記載の物品。
【請求項9】
前記少なくとも1つの外側層が、ムライト;アルカリ土類アルミノシリケート;化学式RESiO又はRESiのREシリケート;アルカリ土類アルミノケイ酸塩;RE酸化物;REアルミノケイ酸塩;及びこれらの混合物を含有し、ここでREがSc、Y、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Eu、Gd、Tb又はこれらの組み合わせである、請求項1から8のいずれかに記載の物品。
【請求項10】
前記基材が、強化相及び/又はマトリックス相として炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び/又はシリコンを含有する、請求項1から9のいずれかに記載の物品。
【請求項11】
前記基材が、強化相及び/又はマトリックス相として炭化ケイ素を含有する、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記構成層が、非晶質シリカ、シリカリッチガラス、又は少なくとも1つの非晶質シリカ又はシリカリッチガラス相を含む多相混合物を含む、請求項1から11のいずれかに記載の物品。
【請求項13】
前記物品が、タービンエンジンの回転構成要素である、請求項1から12のいずれかに記載の物品。
【請求項14】
前記構成層が、ホウ素、アルミニウム及び/又は窒素を溶解して含有する、請求項12または13に記載の物品。
【請求項15】
前記多相混合物が、イットリウムアルミノケイ酸塩又は希土類ジシリケートをさらに含む、請求項12から14のいずれかに記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明技術は、全体的に、タービンエンジンの過酷な熱環境のような高温環境に曝される構成要素を保護するのに好適なコーティングシステム及び方法に関する。より詳細には、本発明技術は、構成要素のシリコン含有領域上の環境障壁コーティング(EBC)に関し、並びに高温で剪断荷重を受けたときのEBCのクリープ変位を抑制するためのシリコン含有領域への表面特徴部の組み込みに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンにおいては、その効率を向上させるために、動作温度をより高くすることが継続的に求められている。鉄、ニッケル、及びコバルト基超合金の構築によって高温性能の大幅な進歩が達成されたが、これらの代替材料が研究されている。タービンエンジンの燃焼器ライナ、ベーン、シュラウド、ブレード、及び他の高温セクションの構成要素などのこうした高温用途として、セラミック複合材料が開発されている。複合材料の一部の実施例には、シリコン系複合材、例えば、シリコン、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、及び/又は金属シリサイドを強化相及び/又はマトリックス相として機能させる複合材料が挙げられる。
【0003】
多くの高温用途において、保護コーティングは、Si含有材料に有利又は必要とされる。このようなコーティングは、揮発性シリコン水酸化物(例えば、Si(OH))生成物の形成を抑制し、望ましくは酸化面への水蒸気の侵入を阻止することにより環境保護を提供する必要がある。これらの機能を有するコーティングシステムは、以下では環境障壁コーティング(EBC)システムと呼ばれる。コーティング材料に望ましい特性には、熱膨張係数(CTE)がシリコン含有基材の材料に適合すること、酸化剤に対して透過性が低いこと、熱伝導率が小さいこと、シリカの化学的活性が低いこと、並びに下にあるシリコン含有材料及びシリカ熱成長スケールと化学的適合性があることが挙げられる。
【0004】
シリコン含有ボンドコートのシリコン含有量は、高温で酸素及び/又は水蒸気と反応して酸化生成物、主成分として非晶質シリカ(SiO)スケールを形成するが、酸化生成物の小部分は、結晶シリカ又はボンドコートの他の成分の(固体又は気体の)酸化物とすることができる。非晶質シリカ生成物は低酸素透過性を示す。その結果、ボンドコート上で熱成長するシリカ生成物は、基材中への酸素の透過を阻止する保護障壁層を形成することができる。
【0005】
供用中のシリコン含有ボンドコート上に形成する非晶質シリカ生成物は、比較的低粘性であるため、作動温度での剪断荷重を受けて高クリープ速度を有する。高い剪断荷重は、タービンエンジンのブレード(バケット)などの部品の回転によって生じる重力加速度により加わる可能性がある。このような剪断荷重は、基材に対するEBCのクリープ変位を引き起こす恐れがあり、結果として、過酷なEBC損傷、及び更には、下にある基材のEBC保護の直接的な喪失を生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,299,988号明細書
【特許文献2】米国特許第6,296,941号明細書
【特許文献3】米国特許第6,410,148号明細書
【特許文献4】欧州特許第2615250A1号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明技術は、環境障壁コーティング(EBC)システム、並びにシリコン含有材料を強化相及び/又はマトリックス相として機能させて、セラミックマトリックス複合材料(CMC)のようなシリコン含有材料から形成された物品上にEBCシステムを作製する方法を提供する。EBCシステム及び方法は、タービンエンジンの過酷な熱環境を含む高温に曝されるシリコン含有物品を保護するのに特に好適である。
【0008】
本発明技術の1つの態様によれば、物品は、凹部、突起部又はこれらの組み合わせを含む表面特徴部を表面上に有するシリコン含有領域と、シリコン含有領域の表面の上にある少なくとも1つの外側層と、シリコン含有領域の表面上でシリコン含有領域と少なくとも1つの外側層との間で接触する構成層と、を備え、構成層は、シリコン含有領域の成分によって形成され且つ物品の動作環境内でクリープ変形の影響を受けやすく、表面特徴部は、構成層を通じてシリコン含有領域と少なくとも1つの外側層を物理的に相互連結する。
【0009】
本発明技術の別の態様によれば、シリコン含有領域を含むコーティング物品の製造方法は、凹部、突起部又はこれらの組み合わせを含む表面特徴部をシリコン含有領域の表面上に形成するステップと、シリコン含有領域の表面の上にある少なくとも1つの外側層を形成するステップと、シリコン含有領域と少なくとも1つの外側層との間でシリコン含有領域の表面上に構成層を形成するステップと、構成層が、シリコン含有領域の成分の酸化によって形成され且つ物品の動作環境内でクリープの影響を受けやすく、表面特徴部が、構成層を通じてシリコン含有領域と少なくとも1つの外側層を物理的に相互連結する。
【0010】
本発明の他の態様及び利点は、図面を参照しながら以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0011】
シリコン含有領域を環境障壁コーティングシステムの第1の層と相互連結することにより、シリコン含有領域上で熱成長する構成層(例えば、シリカ層)のクリープに起因するEBCの変位が実質的に抑制され、これにより環境障壁コーティングシステムの構造的完全性並びに高温用途における物品の保護能力を向上させることができる。本発明技術は、既知の環境障壁コーティング材料と共に用いるのに適用可能であり、相互連結特徴要素は、種々の付加及び除去プロセスを用いて製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明技術の1つの実施例による、表面特徴部の規則的分布を有するように表面が構成されたボンドコートを含有するEBCシステムの概略図。
図2】本発明技術の別の実施例による、表面特徴部の不規則的分布を有するように表面が構成されたボンドコートを含有するEBCシステムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明技術は一般に、高温、熱サイクル、熱及び機械的応力、並びに酸化によって特徴付けられる環境内で作動する構成要素に適用可能である。このような構成要素の実施例は、高圧及び低圧タービンベーン(ノズル)及びブレード(バケット)、シュラウド、燃焼器ライナ、オーグメンタ金具、及びタービンエンジンの他の高温セクションの構成要素を含むが、本発明技術は、他の構成要素にも適用可能である。最も注目すべき点は、本発明技術は、ブレード(バケット)などのタービンエンジンの回転構成要素に適用可能なことである。
【0014】
本発明技術の実施例による多層環境障壁コーティング(EBC)システム14は、構成要素又は物品10の基材12を保護するものとして図1及び図2に概略的に示されている。基材12は、シリコン含有領域を含むことができる。シリコン含有材料の実施例は、マトリックス又は第二相として、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリサイド(例えば、限定ではないが、Mo、Nb、又はWシリサイドを含む、耐火性金属又は遷移金属シリサイド)及び/又はシリコンを有するものを含む。別の実施例は、強化及び/又はマトリックス相として炭化ケイ素を含有するセラミックマトリックス複合材(CMC)を含む。
【0015】
図1及び図2のEBCシステム14は、図1及び図2に示すシリコン含有ボンドコート16を基材12の表面34に直接施工するように組み込むことができる様々な異なるEBCシステムのうちの1つを示している。シリコン含有ボンドコートの1つの実施例は、例えば、米国特許第6,299,988号において開示されている。ボンドコート16は更に、基材12への第1のEBC層20及び任意選択的にEBCシステム14の少なくとも1つの追加層22、24、18の接合として表される。EBCシステム14は、下にある基材12に対して環境保護を提供すること、並びに構成要素10の動作温度を潜在的に低下させ、これにより構成要素10が他の場合に可能な温度よりも高いガス温度で動作できるようにすることを目的としている。図1及び図2は、シリコン含有ボンドコートを含むものとしてEBCシステム14を表しており、この場合、第1のEBC層20は、ボンドコート16によって形成されるシリコン含有表面領域上に直接堆積されるが、本発明技術はまた、本明細書で記載されるボンドコート16を含まないEBCシステム14にも適用可能であり、この場合には、第1のEBC層20は、基材12によって形成されるシリコン含有表面領域上に直接堆積される。以下でより詳細に説明される構成層30又は構成層30の一部は、第1のEBC層20の施工前に存在することができる点は理解すべきである。
【0016】
燃焼環境におけるシリコン含有材料の劣化により、水蒸気と反応して揮発性のシリコン水酸化(例えば、Si(OH))生成物が形成される。EBC層25(以下、EBCと呼称)は、水蒸気とボンドコート16及び/又は基材12の化学反応による減肉を抑制し、又は構成要素10の作動温度を低下させる温度勾配をもたらし、或いはその両方の役割を果たすことができる。本発明技術で使用するのに好適なEBCは、限定ではないが、例えば、米国特許第6,296,941号、米国特許第6,410,148号で開示されたものを含む。EBCは、シール、反応障壁、耐減肉性、及び/又は熱障壁などの多くの機能を実施することができる。
【0017】
上述のように、ボンドコート16及び基材12は、シリコンを含有する構成要素10の表面領域を定めることができる。例えば、ボンドコート16は、元素シリコンを含む、又は基本的に元素シリコンからなることができる。或いは、ボンドコート16は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、金属シリサイド、元素シリコン、シリコン合金、又はこれらの組み合わせを含有することができる。ボンドコート16は、更に、シリカ、希土類ケイ酸塩、希土類アルミノケイ酸塩、及び/又はアルカリ土類アルミノケイ酸塩などの酸化物相を含有することができる。ボンドコート16用にシリコン含有組成物を使用することで、基材12の耐酸化性が改善され、基材12と第1のEBC層20との間の結合が強化される。このために、ボンドコート16の厚さは、例えば、約25〜約350μm、例えば約50〜約250μm、例えば約100〜200μm、例えば約125〜175μm、例えば約150μmとすることができる。図1及び図2に概略的に示されるように、ボンドコート16のシリコンは、高温で酸素と反応して、表面32上で主成分として非晶質シリカ(SiO)の構成層30を熱成長させる。結果として得られる非晶質シリカは、低酸素透過性を示す。その結果、構成層30は、シリコン含有領域ボンドコート16と併せて、ボンドコート16及び基材12への酸素の透過を阻止することができる。構成層の成長の間、非晶質シリカの一部は結晶化して結晶シリカになる場合がある。
【0018】
構成層30は、純粋シリカ以外の組成を有するが、ボンドコート16の酸化から生じた成分としてシリカを含有することができる。例えば、構成層30は、限定ではないが、ホウ素、アルミニウム、及び/又は窒素などの他の元素を溶解して含有することができる。構成層30はまた、イットリウムアルミノケイ酸塩(YAS)又は希土類ジシリケート(REDS)などの他の相を含有することができる。構成層30として種々の可能性のある組成は、少なくとも一部には、ボンドコート16の組成から生成することができる。
【0019】
シリコン含有ボンドコート16が存在しない場合、EBC25の第1の層20は、基材12により定められる構成要素10のシリコン含有表面領域上に直接堆積することができ、この場合、基材12は、高温で酸素と反応して上述の保護シリカ構成層30を形成するのに十分なシリコン含有量の組成を有するように形成される。更に、基材12の組成に応じて、この層は、主成分として非晶質シリカ生成物、シリカリッチガラス、又は相の1つがシリカリッチである多相混合物とすることができる。便宜上、残りの開示では、図1及び図2において示されるボンドコート16を含む実施形態について言及するが、本開示は、基材12の表面34上に形成される構成層30にも等しく適用されることは理解すべきである。
【0020】
高温の供用中にシリコン含有ボンドコート16(又は基材12のような別のシリコン含有表面領域)上に形成される構成層30は、用途に応じて、最大で約50μm又はそれ以上の厚さまで成長させることができる。構成層30は、比較的低粘性であり、そのためタービンエンジンのブレード(バケット)などの回転部品で生じる重力加速度により加わる可能性がある剪断荷重を受けて高クリープ速度を有する可能性がある。構成層30のクリープの結果として、上にあるEBC25の基材12に対する変位が、約1315°C(約2400°F)にて25,000時間供用を過ぎて100mmを超える可能性がある。このような大きなクリープ変位は、EBCシステム14に対して大きな損傷をもたらし、下にある基材12の環境保護の直接喪失を生じる可能性がある。
【0021】
シリコン含有ボンドコート16の表面32上(又はボンドコート16が存在しない場合には、基材12の表面34上)に形成される構成層30のクリープは、凹部(陥凹)26及び/又は突起部(突出部)28それぞれの形態で図1及び図2に概略的に示される表面特徴部をボンドコート16の表面32に含めるようにすることによって抑制することができる。凹部26及び/又は突起部28は、図1及び2にはボンドコート16の表面32上にのみ示されているが、同様の表面特徴部を基材12の表面に設けてもよい点は理解されたい。
【0022】
EBCシステム14のボンドコート16と上にある層20との間の界面にて望ましい相互連結作用を提供するために、表面特徴部は、構成要素10の供用間隔にわたって表面32上に成長する構成層30の厚さにほぼ等しいか又はそれ以上の厚さだけボンドコート表面32から延びるのが好ましい。このため、表面特徴部26,28は、ボンドコート16の表面32の内外に、例えば、約10〜約200μm、例えば約40〜約160μm、例えば約80〜約120μm、例えば約100μmだけ延びることができるが、この寸法は、構成層30の最大予想厚さ及び特定の用途に関連する他の要因によって決定されることができる。例えば、約50〜約100μmの平均深さを有する凹部が効果的とすることができ、また、約50〜約100μmの平均高さを有する突起部28が効果的とすることができる。
【0023】
凹部26及び突起部28の横方向寸法は、構成層30のクリープの結果としてEBC25が受ける可能性がある許容可能変位によって決定することができる。EBC25の相対変位は、凹部26の深さ及び横方向寸法、及び/又は突起部28の高さ及び突起部28間の平均距離によって制限される。従って、凹部26及び突起部28の横方向寸法は、EBCシステム14の特定の組成及び構造、並びにEBCシステム14によって保護される構成要素10の特定の用途に応じて決定することができるが、横方向寸法はまた、約10μmの最小値から物品10の寸法にほぼ等しい最大値までとすることができる。凹部26及び/又は突起部28は、図1に示すように同じサイズ及び形状(均質又は均一)とすることができ、又は、図2に示すように異なるサイズ及び/又は形状(異質又は不規則)とすることができる。凹部26及び突起部28の可能性のある形状は、限定ではないが、方形、矩形、及び三角形などの直線的形状、及び円又は楕円のような曲線形状を含む。このような凹部26及び突起部28は、不連続又は連続的であり、ボンドコート16を堆積するプロセスの結果として生じる方形波形、正弦波形又はランダム波形、テーパ付きトレンチ、及び不規則な表面粗度により定めることができる。
【0024】
凹部26及び/又は突起部28は、図1の凹部26により表されるような均一な又は規則的(均質)なアレイ又はパターンを定めるように配列されるか、又は、図2の突起部28により表されるような不均一な又は不規則(異質)な分布又はパターンを定めるように配列されるか、或いは、両方の組み合わせとすることができる。均一なパターンとしては、凹部26及び/又は突起部28は、互いにほぼ等間隔に配置することができ、ほぼ等しい寸法を有することができ、他方、不規則なパターンは、互いに非等間隔で及び/又は不均一な寸法を有する凹部26及び/又は突起部28によって特徴付けることができる。隣接する表面特徴部26/28間の好適なスペースは、少なくとも約10μm、より好ましくは、約20〜約2000μmの範囲、及び特に約50〜約1000μmとすることができる。凹部26及び/又は突起部28の密集度は、ボンドコート16の表面積の1平方センチメートル当たりの離散的表面特徴部により測定したときに、一つには、表面特徴部の高さ/深さ、形状、 及び/又は横方向寸法、及び構成要素10の動作環境(例えば、時間、温度、及び剪断応力)に依存することができる。
【0025】
凹部26及び/又は突起部28は、ボンドコート16の堆積中、又は堆積後、並びに第1の層20の堆積前に形成することができる。凹部26及び/又は突起部28は、種々のプロセスによって作製することができる。例えば、凹部26は、限定ではないが、グリットブラスティング、化学エッチング、プラズマエッチング、及びレーザ加工などの様々な材料除去(減)法により製作することができ、突起部28は、化学蒸着(CVD)、イオンプラズマ蒸着(IPD)、及び溶射などの材料堆積(付加)法によって製作することができる。凹部26及び/又は突起部28のサイズ及び分布は、マスキングなどの好適な方法で制御することができる。
【0026】
ボンドコート16上の凹部26及び/又は突起部28は、ボンドコート16上に成長する構成層30とボンドコート16上に堆積される第1のEBC層20がボンドコート16と物理的に相互連結できるようにすると共に、構成層30が凹部26内及び突起部28上を含むボンドコート16の表面32上に成長し続ける手段を提供する。ボンドコート16上の凹部26及び/又は突起部28は、構成層30の変位を、従ってEBC25の相対変位を制限する。凹部26及び/又は突起部28は、構成層30を通じてボンドコート16とボンドコート16上に堆積される層を相互連結することによって、ボンドコート16の表面32が微視的に平滑である場合、特に構成要素10がタービンエンジンのバケット/ブレードのような回転構成要素である場合にボンドコート16及び基材12に関して生じる可能性があるEBC25の長距離の滑動を抑制することができる。凹部26及び/又は突起部28によって抑制されない場合には、このような滑動は、上にあるEBC25の亀裂形成及び剥離、並びに多層EBCシステム14によって提供される環境保護の後続の損失を生じることになる。凹部26及び/又は突起部28によって抑制されない場合には、このような滑動は、上にあるEBC25の亀裂形成及び剥離、並びに多層EBCシステム14によって提供される環境保護の後続の損失を生じることになる。極端な場合には、構成要素10の大きな表面領域にわたるEBCシステム14の損失は、急激な環境劣化、及び最終的には構成要素10の不具合につながる可能性がある。
【0027】
本発明技術は、開示された実施例に関して説明してきたが、当業者であれば他の形態を採用してもよいことは理解されたい。
【符号の説明】
【0028】
10 構成要素又は物品
12 基材
14 多層環境障壁コーティング(EBC)システム
16 シリコン含有ボンドコート
18 追加層
20 第1のEBC層
22 追加層
24 追加層
26 凹部(陥凹)
28 突起部(突出部)
30 構成層
32 ボンドコート16の表面
34 基材12の表面
図1
図2