(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダンパモジュールは、前記複数のデジタル弁の中から、すでに前記第2の位置にある対象となるデジタル弁に前記作動電流パルスを周期的に加える、請求項1に記載のダンパシステム。
前記ダンパモジュールは、前記複数のデジタル弁の中から、対象となるデジタル弁を前記第2の位置に維持するために保持電流パルスを加え、前記対象となるデジタル弁を前記第2の位置から前記第1の位置に切り換えるために前記保持電流パルスを切る、請求項1に記載のダンパシステム。
前記ダンパモジュールは、前記複数のデジタル弁の中から、対象となるデジタル弁を前記第2の位置から前記第1の位置に切り換えるために逆電流パルスを加える、請求項1に記載のダンパシステム。
前記ダンパモジュールは、前記ショックアブソーバの加速度が、前もって設定された閾値以上である場合に、前記複数のデジタル弁の中から、前記第2の位置にある対象となるデジタル弁に作動電流パルスを加える、請求項1に記載のダンパシステム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
対応する参照番号は、図面のいくつかの図全体にわたって対応する要素を示している。
【0014】
添付の図面を参照して、例示的な実施形態が以下にさらに詳細に説明される。
【0015】
以下の説明は、実際上、単なる例示であり、本開示、用途、または使用法を限定することを意図されていない。
図1を参照すると、ショックアブソーバを有するサスペンションシステムを内蔵した車両10の例がここで提示されており、各ショックアブソーバはデジタル弁を内蔵している。車両10は、リアサスペンション12、フロントサスペンション14、およびボディ16を含む。リアサスペンション12は、1対のリアホイール18を動作可能に支持するように構成された、横方向に延びるリアアクスルアセンブリ(図示せず)を有する。リアアクスルは、1対のショックアブソーバ20および1対のスプリング22によってボディ16に取り付けられている。
【0016】
同様に、フロントサスペンション14は、1対のフロントホイール24を動作可能に支持する、横方向に延びるフロントアクスルアセンブリ(図示せず)を含む。フロントアクスルアセンブリは、1対のショックアブソーバ20および1対のスプリング26によってボディ16に取り付けられている。
【0017】
ショックアブソーバ20は、車両10のばね下部分(すなわち、フロントサスペンション14およびリアサスペンション12)の、ばね上部分(すなわち、ボディ16)に対する相対運動を弱めるように機能する。車両10は、フロントおよびリアアクスルアセンブリを有する乗用車として図示されているが、ショックアブソーバ20は、それらに限定されるものではないが、非独立型フロントおよび/または非独立型リアサスペンションを内蔵した車両、独立型フロントおよび/または独立型リアサスペンションを内蔵した車両、あるいは当技術分野で公知の他のサスペンションシステムを含む他のタイプの車両、あるいは他のタイプの用途で使用することができる。さらに、本明細書で使用される「ショックアブソーバ」という用語は、一般にダンパを指すことを意図され、したがって、マクファーソンストラットおよび当技術分野で公知の他のダンパ設計を含む。
【0018】
ここで
図2を参照すると、ショックアブソーバ20の例がさらに詳細に示されている。ショックアブソーバ20は、圧力チューブ30、ピストンアセンブリ32、ピストンロッド34、貯蔵チューブ36、およびベース弁アセンブリ38を含む。圧力チューブ30は、作動チャンバ42を画定する。ピストンアセンブリ32は、圧力チューブ30内にスライド可能に配置され、作動チャンバ42を上側作動チャンバ44と下側作動チャンバ46とに分割している。
【0019】
ピストンロッド34は、ピストンアセンブリ32に取り付けられ、上側作動チャンバ44と、圧力チューブ30の上側端を閉じるロッドガイドアセンブリ50とを貫通している。ピストンアセンブリ32とは反対側のピストンロッド34の端部は、非倒立構成で車両10のばね上質量に固定されるように構成されている。
【0020】
ピストンアセンブリ32内の弁は、圧力チューブ30内でのピストンアセンブリ32の移動中に、上側作動チャンバ44と下側作動チャンバ46との間の流体の移動を制御する。ピストンロッド34は、上側作動チャンバ44のみを貫通し、下側作動チャンバ46を通らないため、圧力チューブ30に対するピストンアセンブリ32の移動により、上側作動チャンバ44で移動する流体の量と、下側作動チャンバ46で移動する流体の量とに差が生じる。移動流体の量の差は「ロッド体積」として知られており、その流体はベース弁アセンブリ38を流れる。
【0021】
貯蔵チューブ36は、チューブ30および36間に配置された流体貯蔵器チャンバ52を画定するように圧力チューブ30を囲んでいる。貯蔵チューブ36の底端部は、非倒立構成で車両10のばね下質量に連結されるように構成されたベースカップ54によって閉じられている。貯蔵チューブ36の上側端は、ロッドガイドアセンブリ50に取り付けられている。ベース弁アセンブリ38は、チャンバ46および52間の流体の流れを制御するために、下側作動チャンバ46と貯蔵器チャンバ52との間に配置されている。ショックアブソーバ20の長さが伸長すると、「ロッド体積」という概念により、下側作動チャンバ46内の流体量を増量する必要がある。したがって、流体が、貯蔵器チャンバ52からベース弁アセンブリ38を通って下側作動チャンバ46に流れる。ショックアブソーバ20の長さが縮むと、「ロッド体積」という概念により、余分な流体を下側作動チャンバ46から除去しなければならず、したがって、流体は、下側作動チャンバ46からベース弁アセンブリ38を通って貯蔵器チャンバ52に流れる。
【0022】
あるいは、ショックアブソーバは、倒立型ショックアブソーバとして構成することもできる。倒立型ショックアブソーバとして、ピストンアセンブリ32とは反対側のピストンロッド34の端部は、車両10のばね下質量に固定されるように構成され、ベースカップ54は、車両10のばね上質量に連結されるように構成される。
【0023】
図3を参照すると、ショックアブソーバ20は、デジタル弁アセンブリ60を含む。簡潔にするために、デジタル弁アセンブリ60は、デジタル弁60と称することができる。デジタル弁60は、2つの位置のそれぞれに異なる流れ領域を有する2位置弁アセンブリである。デジタル弁60は、弁ハウジング62、スリーブ64、スプール68、およびコイルアセンブリ70を含むことができる。
【0024】
弁ハウジング62は、流体路(図示せず)を通じて上側作動チャンバ44と連通している弁流入口72と、貯蔵器チャンバ52と流体連通している弁流出口74とを画定する。スリーブ64は、弁ハウジング62内に配置されている。スリーブ64は、弁流入口72と連通している環状流入口チャンバ76と、弁流出口74と連通している1対の環状流出口チャンバ78および80とを画定する。
【0025】
スプール68は、スリーブ64内にスライド可能に受け入れられ、スリーブ64内で、スリーブ64内に配置されたコイルアセンブリ70とストッパパック82との間を軸方向に移動する。ばねは、スプール68をコイルアセンブリ70から離れる方向に、ストッパパック82に向かって付勢するために使用することができる。シム84は、スプール68の軸方向動作量を制御するために、コイルアセンブリ70とスリーブ64との間に配置されている。
【0026】
スプール68は、環状流入口チャンバ76と環状流出口チャンバ78との間の流体流れを制御する第1のフランジ86と、環状流入口チャンバ76と環状流出口チャンバ80との間の流体流れを制御する第2のフランジ88とを画定する。したがって、フランジ86および88は、上側作動チャンバ44から貯蔵器チャンバ52への流体流れを制御する。
【0027】
コイルアセンブリ70は、スプール68の軸方向移動を制御するために、スリーブ64内に配置されている。コイルアセンブリ70用の配線接続は、ロッドガイドハウジング(図示せず)、スリーブ64、弁ハウジング62、および/または貯蔵チューブ36を貫通することができる。コイルアセンブリ70に電力が全く供給されない場合、制振特性は、第1の位置にあるデジタル弁60の流れ領域、ピストンアセンブリ32、およびベース弁アセンブリ38によって定まる。
【0028】
スプール68の移動は、デジタル弁60をその第2の位置に移すようにコイルアセンブリ70に電力を供給することで制御される。デジタル弁60は、コイルアセンブリ70に電力を供給し続けることによって、またはデジタル弁60をその第2の位置に保持する手段を設けて、コイルアセンブリ70への電力供給を切ることによって、その第2の位置に保持することができる。デジタル弁60をその第2の位置に保持する手段には、機械手段、磁気手段、または当技術分野で公知の他の手段があり得る。その第2の位置を取ると、第1の位置への移動は、コイルアセンブリ70への電力供給を終わらせることによって、または保持手段に打ち勝つように電流を逆流させる、もしくはコイルアセンブリ70に供給される電力の極性を逆転させることによって行うことができる。
【0029】
ショックアブソーバ20は、1つまたは複数のデジタル弁60を含むことができる。複数のデジタル弁60が使用される場合、複数のデジタル弁60による全流れ領域は、各個々のデジタル弁60の位置に応じた特定の全流れ領域数に設定することができる。特定の全流れ領域数は
2n個の流れ領域として規定することができ、nはデジタル弁60の数である。例えば、以下の説明において、ショックアブソーバ20は、4つのデジタル弁60を有するとして説明される。利用できる全流れ領域数は24または16個の流れ領域であり、各流れ領域は、ショックアブソーバ20の制振レベルに影響を及ぼす。したがって、4つのデジタル弁60の場合、ショックアブソーバ20は、下記にさらに説明するように、16個の離散し、かつ異なる制振レベルに制御することができる。
【0030】
さらに、複数のデジタル弁60が使用される場合、デジタル弁の流れ領域は変えることができる。例えば、2つのデジタル弁60が使用される場合、一方のデジタル弁は他方のデジタル弁よりも大きい流れ領域を有することができる。したがって、デジタル弁60によってもたらされる流れ領域は、デジタル弁60のオリフィス径を調整することで個別調整することができる。
【0031】
デジタル弁60を流れる流体流れは、リバウンドまたは伸長ストローク時および圧縮ストローク時の両方で生じる。リバウンドまたは伸長ストローク時、上側作動チャンバ44内の流体は加圧され、これにより、次いで、デジタル弁60が開いたときに、流体流れがデジタル弁60に押し通される。圧縮ストローク時、流体は、「ロッド体積」という概念により、下側作動チャンバ46からピストンアセンブリ32を通って上側作動チャンバ44に流れる。デジタル弁60が開かれると、上側作動チャンバ44と貯蔵器チャンバ52との間の開流路が形成される。この開流路は、ベース弁アセンブリ38を通る流れと比較して、抵抗が最も小さい、貯蔵器チャンバ52への流路を形成するため、さらなる流体流れは、ピストンアセンブリ32およびデジタル弁60を流れる。
【0032】
例示的な実施形態では、デジタル弁アセンブリ60は、ショックアブソーバ20のロッドガイドアセンブリ50に、またはその近くに配置されるが、デジタル弁60は、ショックアブソーバ20内の他の位置に配置することもできる。特に、ショックアブソーバ20およびデジタル弁60に関するさらなる細部が、「デジタル弁を有するダンパ(Damper With Digital Valve)」として、2013年12月31日に発行された、本出願人が共同所有する米国特許第8,616,351号明細書でさらに説明されており、この特許の開示は、本明細書に援用される。
【0033】
ショックアブソーバ20はダンパモジュール100をさらに含む。ダンパモジュール100は、別のハウジング(図示せず)内にショックアブソーバ20と共に配置することができる。ダンパモジュール100は、ショックアブソーバ20の制振特性を調整するために、ショックアブソーバ20内に配置されたデジタル弁60の位置を制御する。ショックアブソーバ20およびダンパモジュール100は、合わせて制振システムと称することができる。
【0034】
ダンパモジュール100は、マスタモジュール102からダンパ設定を受信することができる。マスタモジュール102は、車両10内に配置されている(
図1)。マスタモジュール102は、車両10に配置された各ショックアブソーバ20のダンパモジュール100に通信可能に接続されている。
【0035】
図4を参照すると、車両制振システム103の例が示されている。マスタモジュール102は、ショックアブソーバ20に、またはその近くに配置され、かつ/または車両10の他の位置に配置された様々なセンサ104からデータを受信する。センサ104には、それらに限定されるものではないが、角速度センサ、慣性測定ユニット(IMU)、温度センサ、高さセンサ、圧力センサ、加速度計、およびショックアブソーバ20の制振特性を制御するのに使用されるデータを提供する他の適切なセンサが含まれ得る。
【0036】
マスタモジュール102は、車両10に配置された他のモジュールから車両ネットワーク106を介して情報を受信することもできる。車両ネットワーク106は、コントローラエリアネットワーク(CAN)、ローカル相互接続ネットワーク(LIN)、または他の適切なネットワークとすることができる。マスタモジュール102は、例えば、ステアリングホイール位置センサから車両ネットワーク106を介して、ステアリングホイールの回転に関する情報を受信することができる。
【0037】
受信した入力に基づき、マスタモジュール102は、各ショックアブソーバ20に対するダンパ設定を定める。具体的には、マスタモジュール102は、受信した入力に基づきダンパ設定を定める、コンピュータで実行可能なプログラムの形態の一連のアルゴリズムを含むことができる。ダンパ設定は、各ショックアブソーバ20のダンパモジュール100に提供される。さらに、マスタモジュール102は、センサ104および/または車両ネットワーク106から受信した情報をダンパモジュールに提供することができる。例えば、ダンパモジュール100は、ショックアブソーバの温度または車両の加速度に関連するデータを受信することができる。例示的な実施形態では、マスタモジュール102は、ダンパモジュール100から離れて配置される。あるいは、マスタモジュール102は、各ダンパモジュール100がマスタモジュールを含むように、ダンパモジュール100と共に配置することができる。
【0038】
図5を参照すると、ダンパモジュール100の例が提示されている。ダンパモジュール100は、弁切換モジュール108およびコイル励磁モジュール110を含むことができる。ダンパ設定に基づき、弁切換モジュール108は、ショックアブソーバ20の制振状態を定める。例えば、デジタル弁60が4つある場合、柔から剛までの範囲にわたる16個の離散し、かつ異なる制振レベルを有することができる。
【0039】
弁切換モジュール108は、ショックアブソーバ20に設けられた各デジタル弁60の位置または弁状態と制振状態とを関連付けるテーブルを含むことができる。例えば、
図6を参照すると、4つのデジタル弁60は、#1、#2、#3、および#4としてテーブル内で特定することができる。各制振状態に対して、デジタル弁60の弁状態は、「オフ」または「オン」として規定することができる。オフ状態では、デジタル弁60のコイルアセンブリ70は電力を受け取らず、第1の位置にある。反対に、オン状態では、コイルアセンブリ70は電力を受け取るため、デジタル弁60は第2の位置にある。
図6に示すように、制振状態に対して、すべてのデジタル弁60はオフ状態を取る。あるいは、7番目の制振状態を達成するために、#1デジタル弁60(#1)および#4デジタル弁60(#4)はオフ状態を取り、#2デジタル弁60(#2)および#3デジタル弁60(#3)はオン状態を取る。
【0040】
ダンパモジュール100が受信したダンパ設定は、ショックアブソーバ20の目標状態である。弁切換モジュール108は、ショックアブソーバ20の現在の制振状態であるショックアブソーバ20の現在状態と目標状態とを比較する。目標状態が現在状態と異なる場合、弁切換モジュール108は、目標状態を所望の状態とみなすことができる。
【0041】
目標状態および現在の状態に基づき、弁切換モジュール108は、デジタル弁60の制御動作を定める。具体的には、弁切換モジュール108は、デジタル弁60の制御動作が作動動作を取るか、保持動作を取るか、またはオフ動作を取るかを定める。
図7を参照すると、デジタル弁60の作動動作において、コイルアセンブリ70によってデジタル弁60を第1の位置から第2の位置(すなわち、オン状態)に変えるように電流パルス(すなわち、作動パルス)が加えられる。したがって、デジタル弁60の作動位置は、デジタル弁60の機械構成に応じて、油圧的に開いた、または閉じた状態のいずれかに対応することができる。
【0042】
保持動作時、デジタル弁60をオン状態に保持するために、作動パルスよりも低い安定状態レベルを有する電流パルスを加えることができる。具体的には、デジタル弁60が作動した後、デジタル弁60をオン状態に維持するために、保持動作を行うことができる。あるいは、上記のように、デジタル弁60が、デジタル弁60をその第2の位置に保持する手段を含む場合、保持動作中に、電流パルスは、コイルアセンブリ70に全く加えられない。
【0043】
オフ動作は、デジタル弁60を作動しないようにする。例えば、電流は、もはやデジタル弁60に供給することができない。相応して、デジタル弁60は、第2の位置から第1の位置に変わり、デジタル弁60はオフ状態を取る。あるいは、上記のように、デジタル弁60が、デジタル弁60をその第2の位置に保持する手段を含む場合、オフ動作時に、保持手段に打ち勝つために、逆電流または逆極性の電力をコイルアセンブリ70に供給することができる。
【0044】
ショックアブソーバ20のデジタル弁60は、(
図5に点線で示された)コイルアセンブリ70を介して、コイル励磁モジュール110に電気接続されている。弁切換モジュール108は、制御動作をコイル励磁モジュール110に提供し、次いで、コイル励磁モジュール110は、相応してコイルアセンブリ70を動作させる。例えば、デジタル弁60が作動される場合、コイル励磁モジュール110は、作動電流パルスをデジタル弁60のコイルアセンブリ70に供給する。
【0045】
現在の状態から所望の状態への、ダンパ状態の高速かつ円滑で電力効率のよい切換を提供するために、弁切換モジュール108は、デジタル弁60が現在の状態から所望の状態に変わる切換時間および/または移行期間を制御することができる。具体的には、弁切換は、油圧応答をより速くするために使用することができる。弁切換モジュール108は、流体力学に特有の遅延を軽減するのに寄与する様々なタイプの切換方法を含む。
【0046】
切換方法は、ダンパシステムの動的動作時に、剛質性設定(firmness setting)の変更に伴う油圧過渡現象を最小限にすることもできる。切換方法は、ダンパシステムの油圧変化時に円滑な移行をもたらすことを意図されている。したがって、車両の騒音、振動、およびハーシュネス(NVH)は、ここで説明する切換方法を利用することで最適化することができる。
【0047】
さらに、切り換えるデジタル弁60の数を最小限にする切換方法を利用することによって、または作動パルス間に時間ずれを持たせることによって、デジタル弁60を作動させるのに必要とされるピーク電流を低減することができる。弁切換モジュール108によってもたらされる切換方法は、2つのカテゴリ、すなわち、弁ずらし制御および状態移行制御に分けることができる。
【0048】
弁ずらし制御とは、現在の状態と所望の状態との間の過渡状態を使用することができる方法を意味する。過渡中間状態とも呼ぶことができる過渡状態は、所望の状態(すなわち、目標状態)の前に達成される、現在の状態および所望の状態と異なる1つまたは複数の制振状態である。過渡状態の1つの目的は、所要ピーク電流を低減することである。具体的には、短時間遅延(例えば、1〜2ミリ秒)をデジタル弁60の作動動作間に加えることができる。例えば、
図8に示すように、作動パルス120、122、124はずれている。デジタル弁60をオフ状態に切り換える前の時間遅延は必要でない。
【0049】
弁ずらし制御の1つのタイプとして、基本遅延ずらしがある。基本遅延ずらし時に、特定のデジタル弁60の作動前に短い遅延が設けられる。弁切換モジュール108は、デジタル弁60のうちのどれを即座に作動させ、どれを遅延させるべきかを特定する。例えば、ショックアブソーバが4つのデジタル弁を含む場合、弁切換モジュール108は、デジタル弁60のうちの2つを即座に作動させ、短い遅延の後、他の2つが続くようにすることができる。したがって、弁切換モジュール108は、遅延されるデジタル弁60を前もって定めることができる。
【0050】
図9を参照すると、基本遅延ずらしの例が提示されている。グラフは、制振状態1から制振状態2〜16への切換を示している。グラフの右側は、
図6に規定したデジタル弁60の弁位置を示している。例えば、
図6において、オン状態は「1」で示され、オフ状態は「0」で示されている。したがって、状態1の場合、弁状態は「0000」である。同様に、状態4の場合、弁状態は「0011」である。4桁2進弁では、左から右への値は、#1デジタル弁60、#2デジタル弁、#3デジタル弁、および#4デジタル弁の弁状態を表す。したがって、状態4の場合、#1デジタル弁60および#2デジタル弁60はオフ状態を取り(すなわち、「00」)、#3デジタル弁60および#4デジタル弁60はオン状態を取る(すなわち、「11」)。
【0051】
図9に示すように、現在の状態が状態1(0000)であり、目標状態が状態7(0110)である場合、#2デジタル弁60が最初に作動し、次いで、短い遅延の後、#3デジタル弁60が作動する。基本遅延ずらしに基づき、1つの過渡状態が現在の状態と目標状態との間に設けられる。つまり、現在の状態(0000)から目標状態(0110)に至るまでに、制振状態は、0000(現在の状態)から0100(過渡状態)に変わり、0110(目標状態)に変わる。
図9によれば、過渡状態は、可能な移行シナリオの約80%で使用されている。
【0052】
弁ずらし制御の別のタイプとして、スマート遅延ずらしがある。基本遅延ずらしと同様に、スマート遅延ずらしは、特定の弁の作動の前に短い遅延を設ける。ただし、スマート遅延ずらしでは、目標状態を達成するため、デジタル弁60のうちのどれを切り換えなければならないかに基づいて、どのデジタル弁60を即座に作動させるべきかについての特定がなされる。言い換えると、基本遅延ずらしとは異なり、弁切換モジュール108は、遅延すべきデジタル弁を前もって定めない。弁切換モジュール108は、現在の状態および目標状態に基づいて、どの弁が作動すべきかを判断し、最初に、1つまたは複数のデジタル弁を作動させ、必要ならば、短い遅延の後、他のデジタル弁が続く。
【0053】
図10を参照すると、スマート遅延ずらしの例が提示されている。特に、
図10は、状態1から状態2〜16への切換を示している。その例では、切り換える必要がある第1および第2のデジタル弁60は即座に作動し、短い遅延の後、第3および第4の弁が続く。例えば、現在の状態が状態1(0000)であり、目標状態が状態12(1011)の場合、弁切換モジュール108は、状態12(1011)に達するために、#1、#3、および#4デジタル弁60を作動させると定める。
【0054】
スマート遅延ずらしを使用すると、#1および#3デジタル弁60が最初に作動し、短い遅延の後、#4デジタル弁が作動する。スマート遅延ずらしは、必要ならば、現在の状態と目標状態との間に1つの過渡状態をもたらすことができる。つまり、現在の状態(0000)から状態12などの目標状態に至るまでに、制振状態は、0000(現在の状態)から1010(過渡状態)に変わり、1011(目標状態)に変わる。
図10に示すように、中間状態は、可能な移行シナリオの約1/3で使用されている。
【0055】
デジタル弁60の流れ領域は、目標状態に基づいて、どのデジタル弁60が遅延すべきか(基本遅延ずらし)、かつ/またはどのデジタル弁60が作動すべきか(スマート遅延ずらし)を定めるために使用することができる。したがって、基本ずらしの場合、弁切換モジュール108により、より小さい流れ領域を有するデジタル弁60を遅延すべきデジタル弁60として特定することができる。同様に、スマート遅延ずらしが、目標状態に達するために作動するべきデジタル弁60を定める場合に、より大きい流れ領域を有するデジタル弁60が最初に作動し、より小さい領域を有するデジタル弁60が続く。
【0056】
他の変形形態として、弁ずらし制御は、流れ領域ずらしを含むことができる。流れ領域ずらしは、目標状態に基づいて、どのデジタル弁60が作動すべきかを定める点で、スマート遅延ずらしと同様である。流れ領域ずらしはまた、最も大きい流れ領域を有するデジタル弁60から、最も小さい流れ領域を有するデジタル弁60に向かってデジタル弁60の作動を進め、各デジタル弁60の作動の間に短い遅延を設ける。流れ領域ずらしは、一度に1つの弁だけが切り換わるため、所要ピーク電流を最小にする。
【0057】
図11を参照すると、流れ領域ずらし方法の例示的な動作が提示されている。
図11の例は、状態1から状態2〜16への切換を示している。流れ領域ずらし方法に基づき、切り換える必要がある最も大きい流れ領域を有するデジタル弁60が即座に作動し、短い遅延の後、他のデジタル弁60が順次続く。例えば、現在の状態が状態1(0000)であり、目標状態が状態8(0111)の場合、弁切換モジュール108は、目標状態に達するために、#2、#3、および#4デジタル弁60が作動すると定める。流れ領域ずらし方法に基づいて、#2デジタル弁60が最初に作動する。短い遅延の後、#3デジタル弁60が作動し、短い遅延の後、#4デジタル弁60が続く。
【0058】
したがって、現在の状態と目標状態との間で、制振状態は2つの過渡状態に入る。つまり、制振状態は、0000(現在の状態)から0100(過渡状態)に変わり、0110(過渡状態態)に変わり、0111(目標状態)に変わる。
図11によれば、現在の状態と目標状態との間に、最大で3つの過渡状態をもたらすことができる。
【0059】
最初に作動するデジタル弁は、主弁と称することができ、主弁の後に作動するデジタル弁は、非主弁または二次弁と称することができる。デジタル弁は、各グループ間に遅延を設けて、1つまたは複数のグループで切り換わる、または作動することができると容易に理解される。
【0060】
弁ずらし制御に加えて、弁切換モジュール108によってもたらされる切換方法には、状態移行制御も含まれ得る。状態移行制御は、弁ずらし制御と並行して使用することができる。本明細書で説明する複数の状態移行制御を同時に使用することもできる。状態移行制御の目的の1つは、応答時間およびNVHを最適化することである。弁ずらし制御と同様に、状態移行制御もさらなる状態および遅延を使用するが、遅延はかなり長くすることができる。例えば、遅延は、状態移行制御の場合に5〜100ミリ秒とすることができる。
【0061】
状態移行制御がない場合、制振状態は目標状態に直接切り換わる。言い換えると、このモードでは、移行制御はない。状態移行制御の1つのタイプとして、制振状態が、「m」で規定される一定のステップ数で、現在の状態から目標状態に移行する固定ステップ制御があり、ここでmは整数である。したがって、現在の状態から目標状態に移行するため、過渡状態はm個の状態ごとである。
【0062】
図12を参照すると、固定ステップ制御の例示的な動作が示されている。
図12において、現在の状態は状態3として示され、目標状態は状態13である。固定状態数がない場合(すなわち、直接切換)、制振状態は、状態3から状態13に直接切り換わる。m=4の場合、制振状態は4つの状態ごとに変わる。したがって、制振状態は、状態13という目標状態に達する前に、状態3から状態7に変わり、次いで、状態11に変わる。
【0063】
固定ステップ制御によれば、目標状態を通り過ぎないことを保証するように定めることができる。例えば、固定ステップ制御は、現在の制振状態と目標制振状態との間の制振状態数が、固定ステップ数(m)よりも小さいかどうかを判定することができる。小さい場合、固定ステップ制御は、制振状態を目標状態に調整する。その結果、m=4の場合、制振状態は、状態11から状態13という目標状態に切り換わった。さらに、固定ステップ数が少なくなると、現在の状態から目標状態に達するのに要する時間が長くなる。したがって、固定ステップ制御では、現在の状態と目標状態との間の遅延が変わる。
【0064】
状態移行制御の他のタイプとして、固定移行時間がある。固定移行時間では、現在の状態から目標状態への切換は、前もって設定された時間量で行われる。言い換えると、現在の状態から目標状態に達するのに要する時間は、目標状態にかかわらず同じである。例えば、
図13は、様々な目標状態に対する固定移行時間を示している。示した例では、現在の状態は状態3であり、様々な線は、状態5、8、13、および16などの異なる目標状態への移行を示している。グラフによれば、状態3から状態5に達するのに要する時間は、状態3から状態16に達するのとほぼ同じである。
【0065】
固定移行時間内に目標状態に達するためにどの過渡状態を使用するかを定めるため、本明細書で説明した様々な切換方法を固定移行時間と共に使用することができる。例えば、上記の弁ずらし制御を使用して、固定移行時間内に現在の状態から目標状態に切り換わることができる。
【0066】
状態移行制御には、オーバドライブ制御も含まれる。オーバドライブ制御によれば、目標状態を越える制振状態が、過渡状態として設けられ、遅延の後、制振状態は、目標状態に切り換わる。オーバドライブ制御の目的の1つは、より速い油圧応答を達成することである。例えば、
図14は、2つのオーバドライブ制御を示している。現在の状態が状態3で、目標状態が状態13の場合、高速オーバドライブ制御は、状態3(現在の状態)から16(過渡状態)に切り換わり、13(目標状態)に切り換わる。低速オーバドライブ制御の場合、制振状態は、3(現在の状態)から16(過渡状態)に切り換わり、14(過渡状態)に切り換わり、13(目標状態)に切り換わる。
【0067】
したがって、オーバドライブ制御は、目標状態に切り換わる前に、制振状態を、目標状態を越えた状態に切り換える。さらに、オーバドライブ制御が切換を行う時間は、高速または低速制御を可能にするように前もって設定することができる。
【0068】
状態移行制御には、PID制御がさらに含まれる。PID制御は、目標状態と現在の状態との間の差として誤差値を計算する公知の比例−積分−微分アルゴリズムに基づいている。古典PID制御としても公知であり、過渡状態数は、誤差の比例、積分、および微分値の計算結果の合計に基づく。比例、積分、および微分項の個々の乗数(「ゲイン」)がPID制御として使用される。
図14は、状態3(現在の状態)から状態13(目標状態)に切り換わるPID制御を示している。
【0069】
古典PIDと同様に、状態移行制御には二次制御も含まれる。二次制御は、目標状態と現在の状態との間の誤差の二乗からなる二次乗数項を使用する。二次乗数項は微分項の代わりとなる。二次制御はPIQ制御と称することができる。二次移行制御は、誤差が大きいほど大きな状態変化を使用し、誤差値が小さいほど小さい状態変化を使用することで、線形比例制御に対する性能改善となることを意図されている。
図14は、状態3(現在の状態)から状態13(目標状態)に切り換わる二次制御を示している。
【0070】
状態移行制御には、制振状態移行の増減方向に対して、切換遅延が別個に設定される非対称制御も含まれる。例えば、
図15は、状態3と状態13との間で移行するために非対称制御が使用される4つの例を提示している。例1および3では、状態13から状態3に移行するのに要する時間は、状態3から状態13に移行するのに要する時間よりも短い。それに対して、例2および4では、状態13から状態3に移行するのに要する時間は、状態3から状態13に移行するのに要する時間よりも長い。非対称制御を行う場合、弁切換モジュール108は、制振状態移行の増減方向に対する切換遅延を規定する所定のロジックテーブルを含むことができる。
【0071】
したがって、ここまでに提示された状態移行制御の例では、現在の状態から目標状態への移行には、離散した制振状態への切換が含まれる。状態移行制御の一環として、フラクショナル(fractional)ステップ制御(すなわち、パルスモード動作)により、離散した制振状態間の仮想の位置がもたらされる。パルスモード動作は、パルス変調または2つの位置間の高速切換によって仮想の位置をもたらす。
【0072】
パルスモード動作を実施する1つの方法は、対応する保持電流を加えることなく、作動パルスを繰り返すことによる。具体的には、2つの離散した制振状態(すなわち、2つの隣接する制振状態)間の仮想位置は、1つまたは複数の弁を「オフ」弁状態と「オン」弁状態との間で動作させることによりもたらすことができる。これは、パルスモード動作を用いて、「オフ」弁状態と「オン」弁状態との間で振動させることで達成することができる。新たな状態はフラクショナル状態と称することができる。
【0073】
別の方法には、ステッピングモータの極小ステッピングと同様であるパルス幅変調(PWM)制御が含まれる。さらに微細な分解能の半ステッピングまたは極小ステッピングが可能である。PWM制御は、NVHを改善する過渡方法として使用される。連続パルスモード動作は、余分な熱および電力消費をもたらすことがある。パルスモード動作は、
図16に示すように、固定ステップ、PID、または二次制御などの他の状態移行制御と並行して使用することができる。
【0074】
弁ずらし制御および状態移行に加えて、弁切換モジュール108は、ショックアブソーバ20の性能を改善する他の切換方法を含むことができる。例えば、同期制御では、保持電流を切る前に、または作動電流パルスの前に、遅延を設けることができる。その結果、他のデジタル弁を作動させる、または他のデジタル弁を切ることで生じる油圧不連続点のタイミングが合致する、または同期する。
【0075】
繰り返し作動制御では、作動電流パルスが、オン状態を取ることを前もって意図された、デジタル弁60に付属するコイルに加えられる。繰り返し作動制御は、確実に目標ダンパ状態が設定されるようにする。具体的には、デジタル弁60は、例えば、過剰な電磁干渉、汚染、低温による油の高粘度化、高温による油の低粘度化、および/またはくぼみを走行するなどの外的要因による極めて高い加速度衝撃などにより、オン状態に入らない、または留まらないことがある。したがって、障害を防止する軽減動作として繰り返し作動制御が機能する。
【0076】
繰り返し作動制御の1つの形態として、作動電流パルスを、オン状態を取るデジタル弁60に周期的に加えることができる。例えば、弁切換モジュール108は、前もって設定されたタイマーに基づき、作動電流を周期的に加えるコイル励磁モジュールを有することができる。作動電流を周期的に加えることは、余分な熱の発生を回避するために、控えめに行われるべきである。例えば、前もって設定されるタイマーは、1〜100秒ごとの範囲に設定することができる。
【0077】
繰り返し作動制御の1つの形態として、測定した温度が前もって設定した値を上回るか、または下回る場合に、作動電流パルスを加えることができる。そのような制御は、ショックアブソーバが、極端に高い、または低い温度動作中に、意図された制振状態で機能するのを保証する。例えば、温度は、ショックアブソーバの温度、ショックアブソーバ内の流体の温度、ダンパモジュール100が配置されたハウジングの温度、またはショックアブソーバが動作する温度を示す温度の組み合わせとすることができる。温度に基づく繰り返し作動は、1〜100秒ごとの範囲とすることができる。
【0078】
繰り返し作動制御の1つの形態として、測定した、または計算した加速度が、前もって設定した値を超える場合に、作動電流パルスを加えることができる。そのような制御は、衝撃負荷を受けた後、ショックアブソーバ20が意図された制振状態に設定されるのを保証する。例えば、加速度は、ショックアブソーバ20に、またはその近くに配置された加速度計から提供することができ、かつ/または加速度の組み合わせとすることができる。高い加速度を受けた後、各コイルに1つまたは複数の作動パルスを加えることができる。
【0079】
弁切換モジュール108は、コイル、弁、およびオイルを電気で低い温度に加熱する予熱制御を含むこともできる。例えば、測定した温度が前もって設定した値未満である場合に、作動電流パルスを加えることができる。その目的は、さらなる熱を発生させて、デジタル弁60およびショックアブソーバ20内の流体を暖めることである。5〜500ミリ秒ごとの範囲で作動電流パルスを加えることができる。
【0080】
予熱制御の別の形態として、測定した温度が前もって設定した値未満の場合、連続する最大(非変調)電流を加えることができる。あるいは、測定した温度が前もって設定した値未満の場合、作動パルスのない保持電流(または他の変調電流レベル)を加えることができる。
【0081】
車両レベルのずらし遅延を使用して、所要ピーク電流を低減することができる。言い換えると、車両のコーナに配置されたショックアブソーバ20は、ショックアブソーバのそれぞれの制振状態に同時に切り換わらないように制御することができる。そのような制御を行う1つの方法は、マスタモジュール102によって各ショックアブソーバ20に送られるコマンド間に、短時間の遅延を加えることによる。ずらし遅延は通常、1〜2ミリ秒とすることができる。車両の個々のショックアブソーバへのコマンドを遅延させることができ、または2つのセットでコマンドを送ることもできる。例えば、2つのセットは、2つのフロントサスペンション14のショックアブソーバ20、およびリアサスペンション12のショックアブソーバ20で構成することができる。
【0082】
弁切換モジュール108およびコイル励磁モジュール110を含むダンパモジュール100は、デジタル弁60を作動させるため、本明細書で説明した1つまたは複数の切換方法を使用することができる。例えば、ダンパモジュール100は、デジタル弁を作動させるのに使用される切換方法を規定する一組のアルゴリズム、および/または所定のテーブルを含むことができる。
【0083】
4つのデジタル弁60を有するショックアブソーバに関連して切換方法が説明されたが、2つ以上のデジタル弁60を有するショックアブソーバにその切換方法を適用することも本開示の範囲内である。
【0084】
図17を参照すると、弁切換動作を行う例示的な方法200のフローチャートが提示されている。ダンパモジュール100は、202で、ダンパ設定が受信されたかどうかを判定する。例えば、ダンパモジュール100は、マスタモジュール102からダンパ設定を受信することができる。ダンパ設定が受信されていない場合、ダンパモジュールは202に戻る。ダンパ設定が受信されている場合、ダンパモジュール100は、204で、ダンパ設定に基づいて、ショックアブソーバ20の目標状態(目標制振状態)を定める。
【0085】
206で、ダンパモジュール100は、現在の状態が目標状態に等しいかどうかを判定する。現在の状態が目標状態に等しい場合、ダンパモジュール100はそのまま208に進む。現在の状態が目標状態に等しくない場合、ダンパモジュール100は、210で、現在の状態を目標状態に変えるために、所定の切換方法を実施する。切換方法は、上記の切換方法の任意の1つまたは複数とすることができる。例えば、切換方法は、スマート遅延ずらしと非対称制御との組み合わせとすることができる。切換方法の終了後、ダンパモジュール100は202に戻る。
【0086】
208で、ダンパモジュール100は、デジタル弁60への電力供給を維持することができる。例えば、デジタル弁60が第2の位置を取っている場合、デジタル弁60を第2の位置に維持するために、保持電流を加えることができる。図示していないが、デジタル弁60を現在の制振状態に維持する場合、ダンパモジュール100は、第2の位置を取っているデジタル弁を周期的に作動させることができる。例えば、ダンパモジュール100は、本明細書で説明したように、ダンパシステムの温度を上げるために、予熱制御を実施することができる。ダンパモジュール100はまた、第2の位置を取らなければならないデジタル弁60がオン状態にあることを保証するために、繰り返し作動制御を実施することができる。ダンパモジュール100は、208から202に戻る。
【0087】
実施形態の前述の説明は、例示および説明のために提示された。実施形態は、網羅的であることを意図されておらず、または本開示を限定することも意図されていない。特定の実施形態の個々の要素または特徴部は、通常、その特定の実施形態に限定されるのではなく、具体的に図示または説明していなくても、適用可能な場合に、選択された実施形態において交換可能であり、使用することができる。同一のものを様々な方法で変えることもできる。そのような変形形態は、本開示からの逸脱とみなすべきではなく、そのような修正形態のすべては、本開示の範囲内に含まれることを意図されている。本願では、下記の定義を含めて、モジュールという用語は回路という用語で置き換えることができる。
【0088】
モジュールという用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル、アナログ、または混合アナログ/デジタルディスクリート回路、デジタル、アナログ、または混合アナログ/デジタル集積回路、組み合わせロジック回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行するプロセッサ(共有、専用、またはグループ)、プロセッサによって実行されるコードを格納するメモリ(共有、専用、またはグループ)、説明した機能を提供する他の適切なハードウェア構成要素、あるいはシステムオンチップなどにおける上記の一部またはすべての組み合わせを指す、それらの一部である、あるいはそれらを含むことができる。
【0089】
例示的な実施形態は、本開示が完全であるように提示され、当業者にその範囲を十分に伝えるであろう。本開示の実施形態の十分な理解をもたらすために、特定の構成要素、装置、および方法の例などの様々な特定の細部が説明された。特定の細部は使用される必要がなく、例示的な実施形態は多数の異なる形態で具現化でき、どれも本開示の範囲を限定すると解釈すべきでないことが当業者には明らかであろう。一部の例示的な実施形態では、公知のプロセス、公知の装置構造、および公知の技術が詳細に説明されていない。
【0090】
本明細書で使用した用語は、特定の例示的な実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図されていない。本明細書では、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が別途明示しない限り、さらに複数形を含むことを意図することができる。「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」および「有すること(having)」という用語は包括的であり、したがって、決まった特徴部、完全体、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つまたは複数の他の特徴部、完全体、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。本明細書で説明した方法ステップ、プロセス、および動作は、性能のレベルとして具体的に特定されない限り、説明または図示した特定のレベルの性能を必ず必要とすると解釈すべきでない。追加した、または代替のステップを使用できることも理解される。
【0091】
要素または層が、他の要素または層に「載っている」、「係合している」、「連結されている」、または「接続されている」と言い表される場合に、要素または層は、他の要素または層に直接載ること、係合すること、連結されること、または接続されることが可能であり、あるいは介在する要素または層が存在してもよい。対照的に、要素が、他の要素または層に「直接載っている」、「直接係合している」、「直接連結されている」、または「直接接続されている」と言い表される場合に、介在する要素または層は存在することができない。要素間の関係を説明する他の文言も、同様に解釈されるべきである(例えば、「〜の間に」対「〜の間に直接」、「隣接する」対「直接隣接する」など)。本明細書では、「および/または」という用語は、1つまたは複数の関連する列挙された物品の任意およびすべての組み合わせを含む。
【0092】
第1の、第2の、第3のなどの用語は、様々な要素、構成要素、領域、層、および/または部分を説明するために、本明細書で使用することができるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または部分は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、または部分を他の領域、層または部分から区別するためだけに使用することができる。「第1の」、「第2の」などの用語、および他の数字用語は、本明細書で使用する場合、文脈によって明示されない限り、シーケンス、または順序を意味するものではない。したがって、下記に説明する第1の要素、構成要素、領域、層、または部分は、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、または部分と称することができる。
【0093】
「内側」、「外側」、「下方」、「〜の下」、「下側」、「〜の上」、「上側」などの空間的相対用語は、図に示すように、1つの要素または特徴部の他の要素または特徴部に対する関係を説明するための記述を容易にするために、本明細書で使用することができる。空間的相対用語は、図に示された向きに加えて、使用時または動作時の装置の様々な向きを包含することを意図することができる。例えば、図の装置が反転した場合、他の要素または特徴部の「下」または「下方」として記載された要素は、他の要素または特徴部の「上」の位置に置かれる。したがって、「〜の下」という例示的用語は、上と下の両方の向きを包含することができる。装置は、それ以外に向けることができ(90°または他の向きに回転される)、本明細書で使用された空間的相対記述子は相応に解釈される。