特許第6405324号(P6405324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6405324
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】風力発電装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20181004BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20181004BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20181004BHJP
   H02P 9/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   F03D80/00
   F03D1/06 A
   F03D7/04 A
   F03D7/04 E
   H02P9/00 F
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-15734(P2016-15734)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-133461(P2017-133461A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】馬場 満也
(72)【発明者】
【氏名】林 義之
(72)【発明者】
【氏名】有木 和歌子
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−274953(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124023(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/083266(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01988284(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0061962(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0206051(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
F03D 1/06
F03D 7/04
H02P 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車翼を有する風車ロータを含む風力発電装置の運転方法であって、
前記風車翼に作用する荷重を取得するステップと、
前記荷重に基づいて、通常運転モードと、前記通常運転モードよりも前記風車翼に作用する前記荷重が小さい1以上の荷重抑制運転モードと、を含む複数の運転モードから前記風力発電装置の運転モードを選択するステップと、
を備え、
前記運転モードを選択するステップでは、前記荷重の振幅の閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択する
ことを特徴とする風力発電装置の運転方法。
【請求項2】
風車翼を有する風車ロータを含む風力発電装置の運転方法であって、
前記風車翼に作用する荷重を取得するステップと、
前記荷重に基づいて、通常運転モードと、前記通常運転モードよりも前記風車翼に作用する前記荷重が小さい1以上の荷重抑制運転モードと、を含む複数の運転モードから前記風力発電装置の運転モードを選択するステップと、
を備え、
前記運転モードを選択するステップでは、前記荷重が閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択し、
前記荷重の前記閾値は、前記風車ロータの回転数、前記風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの前記風車ロータのモーメントMd、又は、前記風力発電装置のヨー旋回軸回りの前記風車ロータのモーメントMqの少なくとも1つに応じて可変であることを特徴とする風力発電装置の運転方法。
【請求項3】
風車翼を有する風車ロータを含む風力発電装置の運転方法であって、
前記風車翼に作用する荷重を取得するステップと、
前記荷重に基づいて、通常運転モードと、前記通常運転モードよりも前記風車翼に作用する前記荷重が小さい1以上の荷重抑制運転モードと、を含む複数の運転モードから前記風力発電装置の運転モードを選択するステップと、
を備え、
前記荷重に基づいて、前記風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの前記風車ロータのモーメントMd又は前記風力発電装置のヨー旋回軸回りの前記風車ロータのモーメントMqの少なくとも一方を取得するステップをさらに備え、
前記運転モードを選択するステップでは、前記荷重に加えて、前記モーメントMd又は前記モーメントMqの前記少なくとも一方に基づいて前記運転モードを選択することを特徴とする風力発電装置の運転方法。
【請求項4】
前記運転モードを選択するステップでは、前記荷重又は前記荷重の振幅の少なくとも一方が閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択することを特徴とする請求項3に記載の風力発電装置の運転方法。
【請求項5】
前記風力発電装置は、前記風車ロータを回転可能に支持するためのナセルをさらに含み、
前記運転方法は、前記ナセルの加速度を取得するステップをさらに備え、
前記運転モードを選択するステップでは、前記荷重に加えて、前記ナセルの前記加速度に基づいて前記運転モードを選択することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の風力発電装置の運転方法。
【請求項6】
前記1以上の荷重抑制運転モードでは、前記通常運転モードでの運転時に比べて、前記風車ロータの回転数を低くし、または、前記風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、前記通常運転モードよりも前記荷重を抑制することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の風力発電装置の運転方法。
【請求項7】
前記1以上の荷重抑制運転モードは、第1荷重抑制運転モードと、前記第1荷重抑制運転モードに比べて、前記風車ロータの回転数を低くし、または、前記風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、前記第1荷重抑制運転モードよりも前記荷重を抑制した第2荷重抑制運転モードと、を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風力発電装置の運転方法。
【請求項8】
風車翼を有する風車ロータと、
前記風車翼に作用する荷重を取得するための荷重センサと、
前記荷重センサで取得した前記荷重に基づいて、通常運転モードと、前記通常運転モードよりも前記風車翼に作用する前記荷重が小さい1以上の荷重抑制運転モードと、を含む複数の運転モードから風力発電装置の運転モードを選択するように構成された運転モード選択部と、
を備え、
前記運転モード選択部は、前記荷重の振幅が閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択するように構成された
ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項9】
風車翼を有する風車ロータと、
前記風車翼に作用する荷重を取得するための荷重センサと、
前記荷重センサで取得した前記荷重に基づいて、通常運転モードと、前記通常運転モードよりも前記風車翼に作用する前記荷重が小さい1以上の荷重抑制運転モードと、を含む複数の運転モードから風力発電装置の運転モードを選択するように構成された運転モード選択部と、
を備え、
前記運転モード選択部は、前記荷重が閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択するように構成され、
前記荷重の前記閾値は、前記風車ロータの回転数、前記風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの前記風車ロータのモーメントMd、又は、前記風力発電装置のヨー旋回軸回りの前記風車ロータのモーメントMqの少なくとも1つに応じて可変である
ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項10】
風車翼を有する風車ロータと、
前記風車翼に作用する荷重を取得するための荷重センサと、
前記荷重センサで取得した前記荷重に基づいて、通常運転モードと、前記通常運転モードよりも前記風車翼に作用する前記荷重が小さい1以上の荷重抑制運転モードと、を含む複数の運転モードから風力発電装置の運転モードを選択するように構成された運転モード選択部と、
を備え、
前記荷重に基づいて、前記風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの前記風車ロータのモーメントMd又は前記風力発電装置のヨー旋回軸回りの前記風車ロータのモーメントMqの少なくとも一方を取得するモーメント算出部をさらに備え、
前記運転モード選択部は、前記荷重に加えて、前記モーメント算出部により取得された前記モーメントMd又は前記モーメントMqの前記少なくとも一方に基づいて前記運転モードを選択するように構成された
ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項11】
前記運転モード選択部は、前記荷重又は前記荷重の振幅の少なくとも一方が閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択するように構成された
ことを特徴とする請求項8乃至10の何れか一項に記載の風力発電装置。
【請求項12】
前記風車ロータを回転可能に支持するためのナセルと、
前記ナセルの加速度を取得するための加速度センサと、をさらに備え、
前記運転モード選択部は、前記荷重に加えて、前記加速度センサで取得した前記ナセルの前記加速度に基づいて前記運転モードを選択するように構成された
ことを特徴とする請求項8乃至11の何れか一項に記載の風力発電装置。
【請求項13】
前記運転モードに基づいて前記風力発電装置の運転を制御するための運転制御部をさらに備え、
前記運転制御部は、前記1以上の荷重抑制運転モードでは、前記通常運転モードでの運転時に比べて、前記風車ロータの回転数を低くし、または、前記風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、前記通常運転モードよりも前記荷重を抑制するように構成された
ことを特徴とする請求項8乃至12の何れか一項に記載の風力発電装置。
【請求項14】
前記1以上の荷重抑制運転モードは、第1荷重抑制運転モードと、前記第1荷重抑制運転モードに比べて、前記風車ロータの回転数を低くし、または、前記風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、前記第1荷重抑制運転モードよりも前記荷重を抑制した第2荷重抑制運転モードと、を含むことを特徴とする請求項8乃至13の何れか一項に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は風力発電装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば高風速時のような過酷な気象条件から風力発電装置を保護するため、風力発電装置の運転モードを変更する試みが提案されている。
例えば、特許文献1には、風速が臨界風速(critical
wind velocity)以上の高風速域において風力運転装置を継続して運転するための方法が開示されている。特許文献1に記載の運転方法では、風速が臨界風速以上の高風速域において、風車翼のピッチ角を制御することにより、風速に応じて出力を不連続に減少させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7948104号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、風車翼に作用する荷重は、風車ロータが受ける風の風速に加えて、風車ロータの回転数や、風車翼のピッチ角等の影響も受ける。
この点、特許文献1に記載の運転方法では、風車翼に作用する荷重の決定要因の一つに過ぎない風速のみを運転出力変更の判定基準としている。
しかしながら、風速以外の要因も考慮して風車翼の荷重をより適切に評価して、風車翼に加わる荷重をより適切に低減し、これにより、風車の構成部品(例えば、風車翼を含む風車ロータが接続されるドライブトレインや、風車ロータを支持するナセルやタワー)に作用する荷重を低減することが望まれる。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、風車の構成部品に作用する荷重を適切に低減可能な風力発電装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置の運転方法は、
風車翼を有する風車ロータを含む風力発電装置の運転方法であって、
前記風車翼に作用する荷重を取得するステップと、
前記荷重に基づいて、通常運転モードと、前記通常運転モードよりも前記風車翼に作用する前記荷重が小さい1以上の荷重抑制運転モードと、を含む複数の運転モードから前記風力発電装置の運転モードを選択するステップと、を備える。
【0007】
上記(1)の方法では、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の直接的な要因となり得る風車翼の荷重に基づいて運転モードの選択を行う。すなわち、通常運転モードよりも風車翼の荷重が抑制される荷重抑制運転モードを選択するか否かを風車翼の荷重に基づいて決定するため、風車翼の荷重の決定要因の一部(例えば風速)のみに基づいて運転モードを選択する場合に比べて、荷重に応じて運転モードをより適切に選択することができる。よって、風車翼をはじめとする風車の構成部品に作用する荷重を低減して、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の発生を適切に抑制しながら、風力発電装置の発電の機会を増やすことができる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記運転モードを選択するステップでは、前記荷重又は前記荷重の振幅の少なくとも一方が閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択することを特徴とする。
上記(2)の方法によれば、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の直接的な要因となり得る風車翼の荷重又は荷重の振幅が比較的大きくなったときに荷重抑制運転モードで風力発電装置を運転する。これにより、通常運転モードを採用した場合には風車翼に過大な荷重及び/又は荷重振幅が加わってしまう場合において、荷重抑制運転モードを適切に選択することができる。よって、風車翼をはじめとする風車の構成部品に作用する荷重を低減して、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の発生を適切に抑制しながら、風力発電装置の発電の機会を増やすことができる。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の方法において、
前記運転モードを選択するステップでは、前記荷重が閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択し、
前記荷重の前記閾値は、前記風車ロータの回転数、前記風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの前記風車ロータのモーメントMd、又は、前記風力発電装置のヨー旋回軸回りの前記風車ロータのモーメントMqの少なくとも1つに応じて可変である。
同一の風況であっても、ロータの回転数が大きくなると風車翼に作用する荷重も増加する。このように、風車翼に作用する荷重は、ロータ回転数と相関がある。このため、荷重抑制運転モードにおいてロータ回転数を制限している場合において風車翼に作用する荷重が許容範囲内であっても、通常運転モードに変更した途端に荷重が許容範囲を超えてしまうおそれがある。この点、上記(3)の方法のように、荷重の閾値を風車ロータの回転数に応じて可変にすれば、ロータ回転数が荷重に与える影響を考慮して、運転モードを適切に選択することができる。
また、風車翼に作用する荷重が許容範囲内であっても、風車ロータに作用するモーメントMd又はMqが過大であると、風車翼のタワーへの接触やヨーブレーキの滑りが生じてしまうおそれがある。すなわち、風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの風車ロータのモーメントMdは、風車翼のタワーへの接触の生じやすさを表す指標である。また、風力発電装置のヨー旋回軸回りの風車ロータのモーメントMqは、ヨーモータの損傷の要因となるヨー角すべりの生じやすさを表す指標である。この点、上記(3)の方法のように、荷重の閾値をモーメントMd又はMqに応じて可変にすれば、風車翼のタワーへの接触やヨーブレーキの滑りの発生を防止できる。
【0010】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の何れかの方法は、
前記荷重に基づいて、前記風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの前記風車ロータのモーメントMd又は前記風力発電装置のヨー旋回軸回りの前記風車ロータのモーメントMqの少なくとも一方を取得するステップをさらに備え、
前記運転モードを選択するステップでは、前記荷重に加えて、前記モーメントMd又は前記モーメントMqの前記少なくとも一方に基づいて前記運転モードを選択する。
上述のとおり、モーメントMdは、風車翼のタワーへの接触の生じやすさを表す指標であり、モーメントMqは、ヨーモータの損傷の要因となるヨー角すべりの生じやすさを表す指標である。上記(4)の方法では、風車翼の荷重に加えて、風車翼の荷重から算出される風車ロータのモーメントMd又はMqに基づいて風力発電装置の運転モードを選択するので、風車翼のタワーへの接触や風車翼又はヨーモータ等の損傷の発生をより適切に抑制しながら、風力発電装置の停止時間を低減することができる。
【0011】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の何れかの方法において、
前記風力発電装置は、前記風車ロータを回転可能に支持するためのナセルをさらに含み、
前記運転方法は、前記ナセルの加速度を取得するステップをさらに備え、
前記運転モードを選択するステップでは、前記荷重に加えて、前記ナセルの前記加速度に基づいて前記運転モードを選択する。
ナセルの加速度は、ナセル及びナセルに収容される構成部品又はナセルに支持されるロータの振動の指標である。上記(5)の方法では、風車翼の荷重に加えて、ナセルの加速度に基づいて風力発電装置の運転モードをより適切に選択するので、風車翼のタワーへの接触や風車翼又はナセルに収容される構成部品等の損傷の発生をより適切に抑制しながら、風力発電装置の停止時間を低減することができる。
【0012】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の何れかの方法において、
前記1以上の荷重抑制運転モードでは、前記通常運転モードでの運転時に比べて、前記風車ロータの回転数を低くし、または、前記風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、前記通常運転モードよりも前記荷重を抑制する。
上記(6)の方法によれば、荷重抑制運転モードにおいて、通常運転モードでの運転時に比べて、風車ロータの回転数を低くし、又は、風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、通常運転モードよりも風車翼の荷重を抑制することができる。これにより、風車翼をはじめとする風車の構成部品に作用する荷重を低減して、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の発生を抑制しながら、風力発電装置の発電の機会を増やすことができる。
【0013】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の何れかの方法において、
前記1以上の荷重抑制運転モードは、第1荷重抑制運転モードと、前記第1荷重抑制運転モードに比べて、前記風車ロータの回転数を低くし、または、前記風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、前記第1荷重抑制運転モードよりも前記荷重を抑制した第2荷重抑制運転モードと、を含む。
上記(7)の方法によれば、荷重抑制運転モードは、第1荷重抑制運転モードと、第1荷重抑制運転モードよりも荷重を抑制した第2荷重抑制運転モードとを含む。このように、複数の荷重抑制運転モードを設けることで、風車翼の荷重、及び、風車ロータの回転数又は風車翼のピッチ角に応じて段階的に風車翼の荷重を抑制することが可能となり、風力発電装置の発電の機会を増やすことができる。
【0014】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置は、
風車翼を有する風車ロータと、
前記風車翼に作用する荷重を取得するための荷重センサと、
前記荷重センサで取得した前記荷重に基づいて、通常運転モードと、前記通常運転モードよりも前記風車翼に作用する前記荷重が小さい1以上の荷重抑制運転モードと、を含む複数の運転モードから風力発電装置の運転モードを選択するように構成された運転モード選択部と、を備える。
【0015】
上記(8)の構成では、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の直接的な要因となり得る風車翼の荷重に基づいて運転モードの選択を行う。すなわち、通常運転モードよりも風車翼の荷重が抑制される荷重抑制運転モードを選択するか否かを風車翼の荷重に基づいて決定するため、風車翼の荷重の決定要因の一部(例えば風速)のみに基づいて運転モードを選択する場合に比べて、荷重に応じて運転モードをより適切に選択することができる。よって、風車翼をはじめとする風車の構成部品に作用する荷重を低減して、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の発生を適切に抑制しながら、風力発電装置の発電の機会を増やすことができる。
【0016】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記運転モード選択部は、前記荷重又は前記荷重の振幅の少なくとも一方が閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択するように構成される。
上記(9)の構成によれば、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の直接的な要因となり得る風車翼の荷重又は荷重の振幅が比較的大きくなったときに荷重抑制運転モードで風力発電装置を運転する。これにより、通常運転モードを採用した場合には風車翼に過大な荷重及び/又は荷重振幅が加わってしまう場合において、荷重抑制運転モードを適切に選択することができる。よって、風車翼をはじめとする風車の構成部品に作用する荷重を低減して、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の発生を適切に抑制しながら、風力発電装置の発電の機会を増やすことができる。
【0017】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記運転モード選択部は、前記荷重が閾値以上である場合に前記1以上の荷重抑制運転モードの何れかを選択するように構成され、
前記荷重の前記閾値は、前記風車ロータの回転数、前記風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの前記風車ロータのモーメントMd、又は、前記風力発電装置のヨー旋回軸回りの前記風車ロータのモーメントMqの少なくとも1つに応じて可変である。
同一の風況であっても、ロータの回転数が大きくなると風車翼に作用する荷重も増加する。このように、風車翼に作用する荷重は、ロータ回転数と相関がある。このため、荷重抑制運転モードにおいてロータ回転数を制限している場合において風車翼に作用する荷重が許容範囲内であっても、通常運転モードに変更した途端に荷重が許容範囲を超えてしまうおそれがある。この点、上記(10)の構成のように、荷重の閾値を風車ロータの回転数に応じて可変にすれば、ロータ回転数が荷重に与える影響を考慮して、運転モードを適切に選択することができる。
また、風車翼に作用する荷重が許容範囲内であっても、風車ロータに作用するモーメントMd又はMqが過大であると、風車翼のタワーへの接触やヨーブレーキの滑りが生じてしまうおそれがある。すなわち、風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの風車ロータのモーメントMdは、風車翼のタワーへの接触の生じやすさを表す指標である。また、風力発電装置のヨー旋回軸回りの風車ロータのモーメントMqは、ヨーモータの損傷の要因となるヨー角すべりの生じやすさを表す指標である。この点、上記(10)の構成のように、荷重の閾値をモーメントMd又はMqに応じて可変にすれば、風車翼のタワーへの接触やヨーブレーキの滑りの発生を防止できる。
【0018】
(11)幾つかの実施形態では、上記(8)〜(10)の何れかの構成において、
前記風力発電装置は、前記荷重に基づいて、前記風車ロータの回転面と水平面とが交差する直線回りの前記風車ロータのモーメントMd又は前記風力発電装置のヨー旋回軸回りの前記風車ロータのモーメントMqの少なくとも一方を取得するモーメント算出部をさらに備え、
前記運転モード選択部は、前記荷重に加えて、前記モーメント算出部により取得された前記モーメントMd又は前記モーメントMqの前記少なくとも一方に基づいて前記運転モードを選択するように構成される。
上述のとおり、モーメントMdは、風車翼のタワーへの接触の生じやすさを表す指標であり、モーメントMqは、ヨーモータの損傷の要因となるヨー角すべりの生じやすさを表す指標である。上記(11)の構成では、風車翼の荷重に加えて、風車翼の荷重から算出される風車ロータのモーメントMd又はMqに基づいて風力発電装置の運転モードを選択するので、風車翼のタワーへの接触や風車翼又はヨーモータ等の損傷の発生をより適切に抑制しながら、風力発電装置の停止時間を低減することができる。
【0019】
(12)幾つかの実施形態では、上記(8)〜(11)の何れかの構成において、前記風力発電装置は、
前記風車ロータを回転可能に支持するためのナセルと、
前記ナセルの加速度を取得するための加速度センサと、をさらに備え、
前記運転モード選択部は、前記荷重に加えて、前記加速度センサで取得した前記ナセルの前記加速度に基づいて前記運転モードを選択するように構成される。
ナセルの加速度は、ナセル及びナセルに収容される構成部品又はナセルに支持されるロータの振動の指標である。上記(12)の構成では、風車翼の荷重に加えて、ナセルの加速度に基づいて風力発電装置の運転モードをより適切に選択するので、風車翼のタワーへの接触や風車翼又はナセルに収容される構成部品等の損傷の発生をより適切に抑制しながら、風力発電装置の停止時間を低減することができる。
【0020】
(13)幾つかの実施形態では、上記(8)〜(12)の何れかの構成において、
前記風力発電装置は、前記運転モードに基づいて前記風力発電装置の運転を制御するための運転制御部をさらに備え、
前記運転制御部は、前記1以上の荷重抑制運転モードでは、前記通常運転モードでの運転時に比べて、前記風車ロータの回転数を低くし、または、前記風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、前記通常運転モードよりも前記荷重を抑制するように構成される。
上記(13)の構成によれば、荷重抑制運転モードにおいて、通常運転モードでの運転時に比べて、風車ロータの回転数を低くし、又は、風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、通常運転モードよりも風車翼の荷重を抑制することができる。これにより、風車翼をはじめとする風車の構成部品に作用する荷重を低減して、風車翼のタワーへの接触や風車翼等の損傷の発生を抑制しながら、風力発電装置の発電の機会を増やすことができる。
【0021】
(14)幾つかの実施形態では、上記(8)〜(13)の何れかの構成において、
前記1以上の荷重抑制運転モードは、第1荷重抑制運転モードと、前記第1荷重抑制運転モードに比べて、前記風車ロータの回転数を低くし、または、前記風車翼のピッチ角をフェザー側にすることにより、前記第1荷重抑制運転モードよりも前記荷重を抑制した第2荷重抑制運転モードと、を含む。
上記(14)の構成によれば、荷重抑制運転モードは、第1荷重抑制運転モードと、第1荷重抑制運転モードよりも荷重を抑制した第2荷重抑制運転モードとを含む。このように、複数の荷重抑制運転モードを設けることで、風車翼の荷重、及び、風車ロータの回転数又は風車翼のピッチ角に応じて段階的に風車翼の荷重を抑制することが可能となり、風力発電装置の発電の機会を増やすことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、風車の構成部品に作用する荷重を適切に低減可能な風力発電装置の運転方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態に係る風力発電装置の構成を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る風力発電装置のコントローラの構成を示す図である。
図3】一実施形態に係る風力発電装置の運転方法のフローチャートである。
図4】一実施形態に係る運転モードを判定するステップのフローチャートである。
図5】ロータ回転数と、ロータ回転数に対応する荷重の閾値との関係を示すグラフである。
図6】一実施形態に係る風力発電装置の運転制御の例を示す図である。
図7】風車ロータ5のモーメントMdを説明するための図である。
図8】風車ロータ5のモーメントMqを説明するための図である。
図9】モーメントMdと荷重の閾値との関係の一例を示すグラフである。
図10】モーメントMqと荷重の閾値との関係の一例を示すグラフである。
図11】一実施形態に係る風力発電装置の運転方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0025】
まず、幾つかの実施形態に係る運転方法が適用される風力発電装置の全体構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る風力発電装置の構成を示す概略図である。同図に示すように、風力発電装置1は、少なくとも1本の風車翼2及びハブ3で構成される風車ロータ5と、ハブ3に連結されるメインシャフト6と、風車ロータ5の回転エネルギーにより駆動される発電機10と、を備える。メインシャフト6と発電機10とはドライブトレイン8を介して接続されており、風車ロータ5の回転エネルギーは、メインシャフト6及びドライブトレイン8を介して発電機10に伝達されるようになっている。
また、風力発電装置1は、メインシャフト6、ドライブトレイン8、発電機10等の各種機器を収容するためのナセル7と、ナセル7を支持するタワー9と、を備える。風車ロータ5は、ナセル7によって回転可能に支持されている。なお、ハブ3は、スピナ(ハブカバー)4によって覆われていてもよい。
風力発電装置1は、海上に設置される洋上風力発電装置であってもよいし、陸上に設置された陸上風力発電装置であってもよい。
【0026】
風力発電装置1は、風車翼2に作用する荷重(翼荷重)を取得するための荷重センサ12をさらに備える。
荷重センサ12は、例えば、風車翼2の翼根部2aに取り付けられた歪センサを含み、該歪センサにより取得される歪データに基づいて風車翼2に作用する荷重を算出するように構成されていてもよい。なお、風車翼2の翼根部2aとは、風車翼2のハブ3側の端部を構成している構造部分のことであり、風車翼2からハブ3へ伝達される曲げモーメントを負担する。
風車ロータ5が複数の風車翼2で構成される場合、荷重センサ12は、複数の風車翼2の各々に設けられ、それぞれの風車翼2に作用する荷重を取得するように構成されていてもよい。
【0027】
一実施形態では、風力発電装置1は、ナセル7の加速度を取得するための加速度センサ14を備えていてもよい。
【0028】
図2は、一実施形態に係る風力発電装置のコントローラの構成を示す図である。
風力発電装置1は、風力発電装置1の運転を制御するためのコントローラ20をさらに備える。図2に示すように、一実施形態に係るコントローラ20は、運転モード選択部22と、モーメント算出部24と、運転制御部26と、を備える。
運転モード選択部22は、荷重センサ12により取得された翼荷重や、加速度センサ14により取得されたナセル7の加速度等に基づいて、風力発電装置1の運転モードを複数の運転モードから選択するように構成される。
モーメント算出部24は、荷重センサ12により取得された翼荷重に基づいて、風車ロータ5のモーメントを算出するように構成される。
運転制御部26は、運転モード選択部22により選択された運転モードに基づいて、風力発電装置1の運転を制御するように構成される。
【0029】
次に、幾つかの実施形態に係る風力発電装置の運転方法について、上述した風力発電装置1に適用する場合を例として説明する。
【0030】
図3は、一実施形態に係る風力発電装置の運転方法のフローチャートである。図3に示すように、一実施形態に係る風力発電装置の運転方法は、風車翼2に作用する荷重Mを取得するステップ(S102)と、ステップS102で取得した荷重Mに基づいて風力発電装置1の運転モードを選択するステップ(S104〜S114)と、を備える。そして、風力発電装置1は、ステップS104〜S114にて選択された運転モードで運転される。
【0031】
ステップS102では、風車翼2に設けられた荷重センサ12を用いて、風車翼2に作用する荷重Mを取得してもよい。
【0032】
風力発電装置1の運転モードを選択するステップ(S104〜S114)では、運転モード選択部22は、通常運転モード(Mode0)と、該通常運転モードよりも風車翼2に作用する荷重が小さい(即ち、荷重が抑制された)1以上の荷重抑制運転モード(Mode1,Mode2,…)と、を含む複数の運転モードから、風力発電装置1の運転モードを選択する。より具体的には、図3のフローチャートに示す運転方法では、運転モードを選択するステップにおいて、通常運転モード(Mode0)と、通常運転モード(Mode0)よりも風車翼2に作用する荷重が小さい第1荷重抑制運転モード(Mode1)と、第1荷重抑制運転モード(Mode1)よりも風車翼2に作用する荷重がさらに小さい第2荷重抑制運転モード(Mode2)と、を含む3つの運転モードから風力発電装置1の運転モードが選択される。
【0033】
他の実施形態では、風力発電装置1の運転モードを選択するステップにおいて、通常運転モード(Mode0)と、上述の第1荷重抑制運転モード(Mode1)と、を含む2つの運転モードから風力発電装置1の運転モードが選択されてもよい。あるいは、他の実施形態では、運転モードを選択するステップにおいて、通常運転モード(Mode0)と、上述の第1荷重抑制運転モード(Mode1)、上述の第2荷重抑制運転モード(Mode2)、及び、さらなる荷重抑制運転モード(Mode3,…)を含む4つ以上の運転モードから風力発電装置1の運転モードが選択されてもよい。また、風力発電装置1の運転モードとして、荷重抑制運転モードが選択される場合よりもさらに過酷な風況において風力発電装置1の運転が停止される停止モードが含まれていてもよい。
以降、本明細書において、第1荷重抑制運転モード及び第2荷重抑制運転モードを、それぞれ、第1抑制モード及び第2抑制モードと表記する場合がある。
【0034】
風力発電装置1の運転モードを選択するステップ(S104〜S114)についてより具体的に説明する。
運転モードを選択するステップでは、まず、運転モード選択部22は、ステップS102で取得した荷重Mに基づいて、各運転モードについてのフラグの成立条件が満たされているかを判定し、成立条件が満たされている何れかの運転モードのフラグをONとする(S104)。
【0035】
そして、運転モード選択部22は、ステップS104でONとされた運転モードのフラグに基づいて、そのフラグに対応した運転モードを選択する(S106〜S114)。例えば、ステップS104で第2抑制モード(Mode2)のフラグがONとされた場合には(S106の結果がYES)、第2抑制モードが選択される(S110)。また、ステップS104で第1抑制モード(Mode1)のフラグがONとされた場合には(S106の結果がNOかつS108の結果がYES)、第1抑制モードが選択される(S112)。あるいは、ステップS104で通常運転モード(Mode0)のフラグがONとされた場合には(S106の結果がNOかつS108の結果がNO)、通常運転モードが選択される(S114)。
このように、ステップS104〜S114では、通常運転モード(Mode0)、第1抑制モード(Mode1)、及び、第2抑制モード(Mode2)のうち、フラグの成立条件が満たされた運転モードのフラグがONとされ、このフラグに対応する運転モードが選択される。
【0036】
一実施形態では、運転モードを選択するステップ(S104〜S114)において、運転モード選択部22は、ステップS102で取得した荷重Mが閾値以上である場合に、荷重抑制運転モード(第1抑制モード又は第2抑制モード)を選択する。すなわち、ステップS104において、ステップS102で取得した荷重Mが閾値以上である場合に、荷重抑制運転モード(第1抑制モード又は第2抑制モード)のフラグをONとする。
なお、荷重Mは、風車翼2のフラップ方向の荷重(フラップ荷重)であってもよい。ここで、風車翼2のフラップ方向とは、風車翼の長手方向に直交する断面において、前縁と後縁を結ぶ方向(エッジ方向又はコード方向)に直交する方向である。
【0037】
この実施形態に係るステップS104について、図4を参照して説明する。図4は、一実施形態に係る運転モードを判定するステップ(S104)のフローチャートである。
一実施形態において、運転モードを判定するステップ(S104)では、運転モード選択部22は、荷重M(ステップS102で取得した荷重M)を閾値と比較し(S402)、荷重Mが閾値以上である場合に荷重抑制運転モードの何れかのフラグをONとし、荷重Mが閾値未満である場合に通常運転モードのフラグをONとする(S404〜S412)。
【0038】
より具体的には、運転モード選択部22は、荷重Mを閾値Mth1と比較し(S404)、荷重Mが閾値Mth1未満である場合には(S404のNO)、通常運転モードのフラグをONとする(S408)。一方、ステップS404にて荷重Mが閾値Mth1以上である場合には(S404のYES)、さらに、荷重Mを閾値Mth2(但しMth2>Mth1である。)と比較し(S406)、荷重Mが値Mth2未満である場合には(S406のNO)第1抑制モードのフラグをONとし(S410)、荷重Mが値Mth2以上である場合には(S406のYES)第2抑制モードのフラグをONとする(S412)。
【0039】
このように、運転モードを判定するステップ(S104)では、風車翼2に作用する荷重Mを閾値(Mth1,Mth2)と比較することにより、何れかの運転モードのフラグがONとされる。そして、運転モード選択部22は、ステップS104にてONとなったフラグに対応する運転モードを選択し(S110〜S114)、運転制御部26は、該運転モードに基づいて風力発電装置1の運転を制御する。
【0040】
上述したステップS102〜S114を含む運転方法では、通常運転モードよりも風車翼2の荷重が抑制される荷重抑制運転モードを選択するか否かを風車翼2の荷重に基づいて決定する。このため、風車翼2の荷重の決定要因の一部(例えば風速)のみに基づいて運転モードを選択する場合に比べて、荷重Mに応じて運転モードを適切に選択することができる。
また、上述したステップS102〜S114を含む運転方法では、風車翼2のタワー9への接触や風車翼2等の損傷の直接的な要因となり得る風車翼2の荷重Mが比較的大きくなったときに荷重抑制運転モードで風力発電装置1を運転する。これにより、通常運転モードを採用した場合には風車翼2に過大な荷重が加わってしまう場合において、荷重抑制運転モードを適切に選択することができる。よって、風車翼2をはじめとする風車(風力発電装置1)の構成部品に作用する荷重を低減して、風車翼2のタワー9への接触や風車翼2等の損傷の発生を適切に抑制しながら、風力発電装置1の発電の機会を増やすことができる。
【0041】
一実施形態では、運転モードを選択するステップ(S104〜S114)において、風車翼2に作用する荷重Mの振幅が閾値以上である場合に、荷重抑制運転モードの何れかのフラグをONとし、これに基づいて風力発電装置1の運転モードを選択してもよい。
風車翼2に作用する荷重Mの振幅は、風車翼2に作用する疲労荷重の指標であり、風車翼2の損傷の直接的な要因となり得る。よって、上述のように、風車翼2の荷重Mの振幅が閾値以上となったときに荷重抑制運転モードで風力発電装置1を運転することで、通常運転モードを採用した場合には風車翼2に過大な荷重振幅が加わってしまう場合において、荷重抑制運転モードを適切に選択することができる。よって、風車翼2をはじめとする風車(風力発電装置1)の構成部品に作用する荷重を低減して、風車翼2の損傷の発生を適切に抑制しながら、風力発電装置1の発電の機会を増やすことができる。
【0042】
また、一実施形態では、運転モードを選択するステップ(S104〜S114)において、風車翼2に作用する荷重M及び荷重Mの振幅の両方がそれぞれ閾値以上である場合に、荷重抑制運転モードの何れかのフラグをONとし、これに基づいて風力発電装置1の運転モードを選択してもよい。
【0043】
幾つかの実施形態において、荷重抑制運転モードでは、通常運転モードでの運転時に比べて風車ロータ5の回転数(ロータ回転数)を低くすることにより、通常運転モードでの運転時よりも風車翼2に作用する荷重を抑制する。
例えば、通常運転モードでの目標回転数(rpm)がΩである場合、荷重抑制運転モードでの目標回転数をΩ(ただし、Ω<Ω)としてもよい。
【0044】
第1抑制モード及び第2抑制モードを含む複数の荷重抑制運転モードを設ける実施形態においては、第2抑制モードでは、第1抑制モードに比べて、風車ロータ5の回転数を低くすることにより、第1抑制モードよりも風車翼2に作用する荷重が抑制されるようになっていてもよい。
例えば、2つの(2段階の)荷重抑制運転モードを設ける場合、通常運転モードでの目標回転数をΩとし、第1抑制モードでの目標回転数をΩ(ただし、Ω<Ω)とし、第2抑制モードでの目標回転数をΩ(ただし、Ω<Ω)としてもよい。
【0045】
幾つかの実施形態において、荷重抑制運転モードでは、通常運転モードでの運転時に比べて風車翼2のピッチ角をフェザー側にすることにより、通常運転モードでの運転時よりも風車翼2に作用する荷重を抑制するようにしてもよい。この実施形態に係る運転方法は、例えば、風車ロータと発電機とがドライブトレインを介さずに直結され、風車ロータの回転数が固定速の風力発電装置に適用することができる。
【0046】
第1抑制モード及び第2抑制モードを含む複数の荷重抑制運転モードを設ける実施形態においては、第2抑制モードでは、第1抑制モードに比べて、風車翼2のピッチ角をフェザー側にすることにより、第1抑制モードよりも風車翼2に作用する荷重が抑制されるようになっていてもよい。
【0047】
運転モードを選択するステップ(上述のS104〜S114)において、風車翼2に作用する荷重Mが閾値以上である場合に荷重抑制運転モードを選択する実施形態(例えば、上述において図3及び図4のフローチャートを参照して説明した実施形態)では、荷重Mの閾値は、風車ロータ5の回転数(ロータ回転数)に応じて可変であってもよい。
【0048】
荷重Mの閾値が風車ロータ5の回転数に応じて可変である一実施形態について、図5を参照して説明する。
図5は、ロータ回転数と、ロータ回転数に対応する荷重の閾値との関係を示すグラフである。図5のグラフにおいて、横軸は、ロータ回転数及びロータ回転数に対応する風力発電装置の運転モードを示し、縦軸は荷重の大きさを示す。
【0049】
本実施形態では、通常運転モード(Mode0)での目標回転数はΩであり、第1抑制モード(Mode1)での目標回転数はΩ(ただし、Ω<Ω)であり、第2抑制モード(Mode2)での目標回転数はΩ(ただし、Ω<Ω)である。
【0050】
図5のグラフにおいて、直線L0〜L2は、それぞれ、風車翼2に作用する荷重Mが等価であるレベルを示す直線(荷重等価ライン)であり、L0は荷重Mが比較的小さい「安全運転レベル」を示し、L1はL0よりも荷重Mが大きい「運転注意レベル」を示し、L2はL1よりもさらに荷重Mが大きい「運転停止レベル」を示す。
【0051】
図5のグラフにおいて、M1_onは、通常運転モードでの運転中において第1抑制モードを選択するか否かを判定するための荷重Mの閾値であり、M2_onは、第1抑制モードでの運転中において第2抑制モードを選択するか否かを判定するための荷重Mの閾値である。すなわち、M1_on及びM2_onは、現在の運転モードよりも、より翼荷重が抑制された運転モードを選択するか否かを判断するための荷重Mの閾値である。
また、M1_offは、第1抑制モードでの運転中において通常運転モードに復帰するか否かを判定するための荷重Mの閾値であり、M2_offは、第2抑制モードでの運転中において第1抑制モードに復帰するか否かを判定するための荷重Mの閾値である。すなわち、M1_off及びM2_offは、現在の運転モードよりも、より通常運転モードに近い運転モードを選択するか否かを判断するための荷重Mの閾値である。
なお、Mtripは、通常運転モードでの運転中において風力発電装置1を停止するか否かを判定するための荷重Mの閾値である。また、M1’_onは、荷重抑制運転中である旨の警報を発生するか否かを判定するための荷重Mの閾値である。
【0052】
図5に示すように、荷重Mの各閾値を設定した場合、以下に述べる考え方にしたがって、風力発電装置1の運転モードが移行する。なお、以下の説明において、P1〜P7は、図5のグラフ中に示す点P1〜P7のことである。
通常運転モード(Mode0)での運転時に荷重MがM1_on以上となれば(Q1)、荷重抑制運転中である旨の警報が発生されるとともに、第1抑制モード(Mode1)が選択されて、第1抑制モードでの運転に移行する(Q2)。
あるいは、第1抑制モードでの運転時に荷重MがM1’_on以上となれば(Q2)、荷重抑制運転中である旨の警報が発生される。
第1抑制モードでの運転時に、荷重MがM2_on(通常運転モードにおけるMtripに相当する「運転停止レベル」の荷重)以上となれば(Q3)、第2抑制モード(Mode2)が選択されて、第2抑制モードでの運転に移行する(Q4)。
第2抑制モードでの運転時に、荷重MがM2_off(「運転注意レベル」の荷重)未満に低下すれば(Q5)、第1抑制モードでの運転に移行(復帰)する(Q6)。
第1抑制モードでの運転時に、荷重MがM1_off(「安全運転レベル」の荷重)未満に低下すれば(Q7)、通常運転モードでの運転に移行(復帰)する(Q8)。
なお、通常運転モード(Mode0)での運転時に、荷重MがMtrip以上となった場合には、運転モードを停止モードに移行して、風力発電装置1の運転が停止されるようになっていてもよい。
【0053】
風車翼2に作用する荷重は、ロータ回転数と相関があるため、荷重抑制運転モードにおいてロータ回転数を制限している場合において風車翼2に作用する荷重が許容範囲内であっても、通常運転モードに変更した途端に荷重が許容範囲を超えてしまうおそれがある。例えば、図5に示した例において、第1抑制モード(Mode1)での運転時に、風車翼2に作用する荷重Mが、通常運転モード(Mode0)における安全運転レベルの荷重MS1であるときに、運転モードを通常運転モードに変更したとすれば、「運転注意レベル」相当の荷重よりも大きな荷重MS2が風車翼2に作用してしまうこととなる。
この点、上述した実施形態のように、荷重Mの閾値を風車ロータ5の回転数に応じて可変とすることで、ロータ回転数が荷重に与える影響を考慮して、運転モードを適切に選択することができる。
【0054】
図6は、図5のグラフに示したロータ回転数(運転モード)と荷重Mの閾値の関係に基づく風力発電装置1の運転制御の例を示す図である。図6において、横軸は時間tを示し、縦軸は、上から順に、風車翼2に作用する荷重M、ロータ回転数、及び、運転モードを示す。
【0055】
時刻t1及びt5では、通常運転モード(Mode0)での運転時に荷重Mが閾値M1_on以上となったため、第1抑制モード(Mode1)が選択されて運転モードが該第1抑止モードに移行している。
時刻t2では、第1抑制モードでの運転時に荷重Mが閾値M2_on以上となったため、第2抑制モード(Mode2)が選択されて運転モードが該第2抑止モードに移行している。
時刻t3では、第2抑制モードでの運転時に荷重Mが閾値M2_off未満となったため、第1抑制モードが選択されて運転モードが該第1抑止モードに移行(復帰)している。
また、時刻t4及びt6では、第1抑制モードでの運転時に荷重Mが閾値M1_off未満となったため、通常運転モードが選択されて運転モードが該通常運転モードに移行(復帰)している。
なお、時刻t7では、通常運転モードでの運転時に荷重Mが閾値Mtrip以上となったため、風力発電装置1の運転が停止モードに移行している。
【0056】
通常運転モードと第1抑制モードとの間での運転モードの移行時と、第1抑制モードと第2抑制モードとの間での運転モードの移行時とで、ロータ回転数の変更速度(rpm/sec)を異ならせてもよい。
例えば、通常運転モードと第1抑制モードとの間での運転モードの移行時にはロータ回転数を比較的速やかに変更するとともに、第1抑制モードと第2抑制モードとの間での運転モードの移行時にはロータ回転数を比較的ゆっくりと変更するようにしてもよい。
これは、通常運転モードを比較的速やかに第1抑制モードに移行することにより風車翼2に作用する荷重を速やかに抑制するとともに、第1抑制モードを比較的緩やかに第2抑制モードに移行することにより、風力発電装置1を構成する機器を保護するためである。
【0057】
なお、図6のグラフにおいて、荷重MがM1_off又はM2_off未満に一度なっても、所定期間Tの間は、運転モードを変更することなく風力発電装置1の運転を継続し、所定期間T経過後に、運転モードのフラグの判定及び運転モードの選択を行っている。これは、所定期間Tの間に風速の変動が激しい場合などに、運転モードの移行が頻繁に起こらないようにするためである。
【0058】
図7は風車ロータ5のモーメントMdを説明するための図であり、図8は、風車ロータ5のモーメントMqを説明するための図である。
運転モードを選択するステップ(上述のS104〜S114)において、風車翼2に作用する荷重Mが閾値以上である場合に荷重抑制運転モードを選択する実施形態(例えば、上述において図3及び図4のフローチャートを参照して説明した実施形態)では、荷重Mの閾値は、風車ロータ5の回転面と水平面とが交差する直線L3回りの風車ロータ5のモーメントMd(図7参照)に応じて可変であってもよく、あるいは、荷重Mの閾値は、風力発電装置1のヨー旋回軸O回りの風車ロータ5のモーメントMq(図8参照)に応じて可変であってもよい。
【0059】
なお、風車ロータ5のモーメントMd又はモーメントMqは、モーメント算出部24により、ステップS102にて取得した翼荷重Mに基づいて算出される。
風車ロータ5が複数の風車翼2により構成される場合には、風車ロータ5のモーメントMd又はモーメントMqは、複数の風車翼2のそれぞれの翼荷重を用いて算出される。
【0060】
風車翼2に作用する荷重は、風車ロータ5の回転面内において一様ではない分布となっている場合がある。
例えば、図7の(A)に示すように、風車翼2に作用する荷重は、風車翼2が風車ロータ5の最下部にあるとき(荷重F)に比べて、風車翼2が風車ロータ5の最上部にあるとき(荷重F)のほうが大きくなる場合がある。この場合、これらの荷重の差(荷重偏差)によって、風車ロータ5において、風車ロータ5の回転面と水平面とが交差する直線L3回りのモーメントMd(首上げモーメント)が発生する。
また、風況によっては、図7の(B)に示すように、風車翼2に作用する荷重は、風車翼2が風車ロータ5の最下部にあるとき(荷重F)に比べて、風車翼2が風車ロータ5の最上部にあるとき(荷重F)のほうが大きくなるとともに、これらの荷重の向きが図7の(A)の場合とは逆向きになる場合がある。この場合、これらの荷重の差(荷重偏差)によって、風車ロータ5において、風車ロータ5の回転面と水平面とが交差する直線L3回りのモーメントMd(首下げモーメント)が発生する。
【0061】
図7の(A)の場合と(B)の場合とを比べると、図7の(B)に示されるような首下げ方向のモーメントMdが発生した場合、風車翼2とタワー9とが接触する可能性が大きくなる。すなわち、風車ロータ5に作用するモーメントMdは、風車翼2のタワー9への接触の生じやすさを示す指標である。
そして、風車翼2に作用する荷重がM許容範囲内であっても、風車ロータ5に作用するモーメントMdが過大であると、風車翼2のタワー9への接触が生じてしまうおそれがある。
そこで、風力発電装置1の運転モードの選択する場合における翼荷重Mの閾値をモーメントMdに応じて可変とすることで、風車翼2のタワー9への接触の発生を効果的に防止することができる。
【0062】
図9は、モーメントMdに応じて荷重の閾値を可変とする場合の、モーメントMdと荷重の閾値との関係の一例を示すグラフである。
図9のグラフにおいて横軸はモーメントMdを示し、縦軸は荷重を示す。また、モーメントMdは、図7の(A)に示すモーメントMdの向き(首上げモーメントの向き)を正としている。
図9に示すように、モーメントMdが負であり(即ち図7の(B)に示すような首下げモーメントMdが生じる場合)、かつ、その絶対値が比較的大きい場合(図9のグラフではモーメントMdがMd1以下である場合)の荷重の閾値M_Md1は、モーメントMdが正であり(即ち図7の(A)に示すような首上げモーメントMdが生じる場合)、かつ、その絶対値が比較的大きい場合(図9のグラフではモーメントMdがMd2以上である場合)の閾値にM_Md2比べて小さい。これにより、風車翼2のタワー9への接触が生じる可能性が大きくなっている場合に、荷重抑制モードを選択しやすくすることができる。
【0063】
また、例えば、図8に示すように、風車翼2に作用する荷重は、風車翼2が風車ロータ5の一方の側方部にあるとき(荷重F)に比べて、風車翼2が風車ロータ5の反対側の側方部にあるとき(荷重F)のほうが大きくなる場合がある。この場合、これらの荷重の差(荷重偏差)によって、風車ロータ5において、風力発電装置1のヨー旋回軸O回りの風車ロータ5のモーメントMqが発生する。
【0064】
風力発電装置1のヨー旋回軸O回りの風車ロータ5のモーメントMqが大きいほど、ヨー角滑りが生じやすくなることから、該モーメントMqは、ヨーモータの損傷の要因となるヨー角すべりの生じやすさを表す指標である。
そして、風車翼2に作用する荷重Mが許容範囲内であっても、風車ロータ5に作用するモーメントMqが過大であると、ヨーブレーキの滑りが生じてしまうおそれがある。
そこで、風力発電装置1の運転モードの選択する場合における翼荷重Mの閾値をモーメントMqに応じて可変とすることで、ヨーブレーキの滑りの発生を効果的に防止することができる。
【0065】
図10は、モーメントMqに応じて荷重の閾値を可変とする場合の、モーメントMqと荷重の閾値との関係の一例を示すグラフである。
図10のグラフにおいて横軸はモーメントMqを示し、縦軸は荷重を示す。また、モーメントMdは、図8に示すモーメントMqの向き(平面視において反時計回り方向)を正としている。
図10に示すように、モーメントMqの絶対値が比較的大きい場合(図10のグラフにおいてモーメントMqがMq1以下又はMq4以上である場合)の荷重の閾値M_Mq1は、モーメントMqの絶対値が比較的小さい場合(図10のグラフにおいてモーメントMqがMq2より大きくMq3未満である場合)の荷重の閾値M_Mq2に比べて小さい。これにより、ヨー角滑りの可能性が大きくなっている場合に、荷重抑制モードを選択しやすくすることができる。
【0066】
幾つかの実施形態に係る運転方法は、風車翼2に作用する荷重Mに基づいて、上述した風車ロータ5のモーメントMd又はモーメントMqの少なくとも一方を取得するステップ、及び/又は、加速度センサ14を用いてナセル7の加速度を取得するステップをさらに備える。そして、運転モードを選択するステップでは、上述の荷重Mに加えて、モーメントMd、モーメントMq又はナセル7の加速度に基づいて、運転モードを選択する。
【0067】
上述したように、モーメントMdは、風車翼2のタワー9への接触の生じやすさを表す指標であり、モーメントMqは、ヨーモータの損傷の要因となるヨー角すべりの生じやすさを表す指標である。そこで、風車翼2の荷重Mに加えて、風車翼2の荷重Mから算出される風車ロータ5のモーメントMd又はMqに基づいて風力発電装置1の運転モードを選択することにより、風車翼2のタワー9への接触や風車翼2又はヨーモータ等の損傷の発生をより適切に抑制しながら、風力発電装置1の停止時間を低減することができる。
また、ナセル7の加速度は、ナセル7及びナセル7に収容される構成部品又はナセル7に支持される風車ロータ5の振動の指標である。そこで、風車翼2の荷重に加えて、ナセル7の加速度に基づいて風力発電装置1の運転モードをより適切に選択することで、風車翼2のタワー9への接触や風車翼2又はナセル7に収容される構成部品等の損傷の発生をより適切に抑制しながら、風力発電装置1の停止時間を低減することができる。
【0068】
ここで、風車翼2に作用する荷重Mに加えて、風車ロータ5のモーメントMdに基づいて運転モードを選択する例について、図11を参照して説明する。
図11は、一実施形態に係る風力発電装置1の運転方法のフローチャートである。図11に示すように、一実施形態に係る風力発電装置の運転方法は、風車翼2に作用する荷重Mを取得するステップ(S122)と、ステップS122で取得した荷重Mに基づいて、風車ロータ5のモーメントMdを取得するステップ(S123)と、ステップS122で取得した荷重M及びステップS123で取得したモーメントMdに基づいて風力発電装置1の運転モードを選択するステップ(S124〜S134)と、を備える。そして、風力発電装置1は、ステップS124〜S134にて選択された運転モードで運転される。
【0069】
図11のフローチャートに含まれるステップのうち、S122及びS124については、上述した図3のフローチャートに含まれるステップS102及び104と同様のステップであるので、説明を省略する。
【0070】
ステップS123では、モーメント算出部24は、ステップS122で取得した荷重Mに基づいて、風車ロータ5のモーメントMdを算出する。ここで、風車ロータ5が複数の風車翼2により構成される場合には、風車ロータ5のモーメントMd又はモーメントMqは、複数の風車翼2のそれぞれの翼荷重を用いて算出される。
【0071】
ステップS125では、運転モード選択部22は、ステップS123で算出されたモーメントMdに基づいて、各運転モードについてのフラグの成立条件が満たされているかを判定し、成立条件が満たされている何れかの運転モードのフラグをONとする。
ステップS125は、例えば、図4のフローチャートに示す方法と同様のやり方で、モーメントMdと閾値とを比較することによって、通常運転モード、第1抑制モード及び第2抑制モードの何れかの運転モードのフラグをONとする。
【0072】
そして、運転モード選択部22は、ステップS124及びS125でONとされた運転モードのフラグに基づいて、そのフラグに対応した運転モードを選択する(S126〜S134)。
ステップS124又はS125の少なくとも一方で第2抑制モード(Mode2)のフラグがONとされた場合には(S126の結果がYES)、第2抑制モードが選択される(S130)。また、ステップS124及びS125の両方で第2抑制モードのフラグがONとされず、かつ、ステップS124又はS125の少なくとも一方で第1抑制モード(Mode1)のフラグがONとされた場合には(S126の結果がNOかつS128の結果がYES)、第1抑制モードが選択される(S132)。あるいは、ステップS124及びS125の両方で第2抑制モードのフラグも第1抑制モードのフラグもONとされず、ステップS124及びS125の両方で通常運転モード(Mode0)のフラグがONとされた場合には(S126の結果がNOかつS128の結果がNO)、通常運転モードが選択される(S134)。
このように、ステップS124〜S134では、荷重M及びモーメントMdに基づいて、通常運転モード(Mode0)、第1抑制モード(Mode1)、及び、第2抑制モード(Mode2)のうち、フラグの成立条件が満たされた運転モードのフラグがONとされ、このフラグに対応する運転モードが選択される。
【0073】
なお、風車翼2に作用する荷重Mに加えて、風車ロータ5のモーメントMq又はナセル7の加速度に基づいて運転モードを選択する場合についても、上述と同様の説明が適用できる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0075】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0076】
1 風力発電装置
2 風車翼
2a 翼根部
3 ハブ
5 風車ロータ
6 メインシャフト
7 ナセル
8 ドライブトレイン
9 タワー
10 発電機
12 荷重センサ
14 加速度センサ
20 コントローラ
22 運転モード選択部
24 モーメント算出部
26 運転制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11