(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コンデンサ本体の前記第6面の前記第1窄み面と前記第2窄み面それぞれは、前記コンデンサ本体の前記第6面と前記第5面との間の最大高さ方向寸法をh1とし、前記コンデンサ本体の前記第1面と前記第2面それぞれの最大高さ方向寸法をh2とし、前記コンデンサ本体の前記第1面と前記第2面それぞれの最小高さ方向寸法をh3としたとき、h1>h2>h3の条件を満足する凸曲面となっている、
請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの相対する端部それぞれに設けられた外部電極の態様として、コンデンサ本体の長さ方向一面に沿う部分と高さ方向一面に沿う部分とを有する略L字状のものが知られている(後記特許文献1を参照)。以下、
図1を用いて、この略L字状の外部電極を有する従前の積層セラミックコンデンサについて説明する。
【0003】
図1(A)に示したように、積層セラミックコンデンサ100のサイズは、長さLと幅W(図示省略)と高さHによって規定されている。この積層セラミックコンデンサ100は、略直方体状のコンデンサ本体101と、略L字状の第1外部電極102と、略L字状の第2外部電極103とを備えている。
【0004】
コンデンサ本体101は、長さ方向で向き合う第1面及び第2面(
図1(A)の左面及び右面)と、幅方向で向き合う第3面及び第4面(
図1(A)には現れていない手前側の面及び奥側の面)と、高さ方向で向き合う第5面及び第6面(
図1(A)の下面及び上面)とを有している。また、コンデンサ本体101には、複数の第1内部電極層104と複数の第2内部電極層105が誘電体層106を介して交互に積層された容量部(符号省略)が内蔵されており、容量部の幅方向両側と高さ方向両側は誘電体からなるマージン部(符号省略)によって覆われている。各第1内部電極層104の長さ方向一端部(
図1(A)の左端部)は引出部104aとなっており、各第2内部電極層105の長さ方向一端部(
図1(A)の右端部)は引出部105aとなっている。
【0005】
第1外部電極102は、コンデンサ本体101の第1面に沿う第1部分102aと、コンデンサ本体101の第5面に沿う第2部分102bとを有しており、各第1内部電極層104の端縁は第1部分102aに接続されている。一方、第2外部電極103は、コンデンサ本体101の第2面に沿う第1部分103aと、コンデンサ本体101の第5面に沿う第2部分103bとを有しており、各第2内部電極層105の端縁は第1部分103aに接続されている。図示を省略したが、第1外部電極102と第2外部電極103それぞれは、コンデンサ本体101の外面に密着した下地膜とこの下地膜の外面に密着した表面膜との2層構造、或いは、下地膜と表面膜との間に少なくとも1つの中間膜を有する多層構造を有している。
【0006】
図1(A)に示した積層セラミックコンデンサ100は、第1外部電極102と第2外部電極103それぞれが略L字状であるため、コンデンサ本体101の第6面に沿う部分をさらに有するU字状の外部電極を用いた同一外形寸法(長さ、幅及び高さ)の積層セラミックコンデンサに比べて、第6面に沿う部分の厚さ分だけコンデンサ本体101の高さ方向寸法を大きく設計できる。また、コンデンサ本体101の第6面に沿う部分と第3面に沿う部分と第4面に沿う部分をさらに有する有底4角筒状の外部電極を用いた同一外形寸法の積層セラミックコンデンサに比べて、第6面に沿う部分と第3面に沿う部分と第4面に沿う部分それぞれの厚さ分だけコンデンサ本体101の高さ方向寸法と幅方向寸法それぞれを大きく設計できる。即ち、コンデンサ本体101の寸法拡大に基づいて第1内部電極層104と第2内部電極層105の層数の増加や面積の増加が図れるため、容量増加に貢献できる利点がある。
【0007】
ところで、
図1(A)に示した積層セラミックコンデンサ100を含む積層セラミックコンデンサ全般に対しては依然として小型化が要求されており、最近ではこの要求を満足するためにコンデンサ本体の幅方向マージン部と高さ方向マージン部が薄い厚さに設計される傾向がある。実際のところ、幅方向マージン部の厚さと高さ方向マージン部の厚さそれぞれが20μmに満たないものも知られている。
【0008】
ところが、
図1(A)に示した積層セラミックコンデンサ100は第1外部電極102と第2外部電極103それぞれが略L字状であるが故に、高さ方向マージン部、特にコンデンサ本体101の第6面側(
図1(A)の上面側)のマージン部の厚さが薄くなると、外部電極がU字状や有底4角筒状である場合には生じない不具合が生じ得る。以下、この点について説明する。
【0009】
第1外部電極102の第1部分102aは各第1内部電極層104の端縁が接続される部分であり、且つ、第2外部電極103の第1部分103aは各第2内部電極層105の端縁が接続される部分であるため、これら接続を良好に行うには第1部分102aと第1部分103aそれぞれに十分な高さ方向寸法が必要となる。
【0010】
しかしながら、第1外部電極102の第1部分102aと第2外部電極103の第1部分103aに十分な高さ方向寸法を得ようとすると、
図1(B)に示したように、第1部分102a(又は第1部分103a)の端縁高さがコンデンサ本体101の第6面よりも僅かに高くなって、積層セラミックコンデンサ100の高さHが変動するといった不良が発生してしまい、先に述べた容量増加の恩恵が得られなくなってしまう。また、これを回避するために第1外部電極102の第1部分102aと第2外部電極103の第1部分103aそれぞれの高さ方向寸法を制限しようとすると、
図1(C)に示したように、第1部分102a(又は第1部分103a)の端縁高さがコンデンサ本体101の第6面よりも僅かに低くなって、最上位の第1内部電極層104の端縁が第1外部電極102の第1部分102aに接続されないといった不良が発生してしまう。また、最上位が第2内部電極層105である場合にはその端縁が第2外部電極103の第1部分103aに接続されないといった不良が発生してしまう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、
図2〜
図6を用いて、本発明を適用した積層セラミックコンデンサ10について説明する。
【0017】
なお、
図2〜
図6には、後記長さLと後記幅Wと後記高さHそれぞれが長さL>幅W=高さHである積層セラミックコンデンサ10を描いているが、これら長さLと幅Wと高さHの関係は長さL>幅W>高さHや、長さL>高さH>幅Wの他、幅W>長さL=高さHや、幅W>長さL>高さHや、幅W>高さH>長さLであってもよい。また、後記第1内部電極層14と後記第2内部電極層15それぞれを8層ずつ描き、且つ、後記誘電体層16を15層描いているが、これらは図示の都合によるものであって、第1内部電極層14と第2内部電極層15それぞれの数は9層以上(誘電体層16の数は17層以上)であってもよいし、7層以下(誘電体層16の数は13層以下)であってもよい。
【0018】
積層セラミックコンデンサ10のサイズは、長さLと幅Wと高さHによって規定されている。この積層セラミックコンデンサ10は、略直方体状のコンデンサ本体11と、略L字状の第1外部電極12と、略L字状の第2外部電極13とを備えている。
【0019】
コンデンサ本体11は、長さ方向で向き合う第1面f1及び第2面f2と、幅方向で向き合う第3面f3及び第4面f4と、高さ方向で向き合う第5面f5及び第6面f6とを有している。また、コンデンサ本体11には、8層の第1内部電極層14と8層の第2内部電極層15が誘電体層16を介して交互に積層された容量部(符号省略)が内蔵されており、この容量部の幅方向両側と高さ方向両側は誘電体からなるマージン部(符号省略)によって覆われている。ちなみに、8層の第1内部電極層14それぞれの輪郭と8層の第2内部電極層15それぞれの輪郭は矩形であり、各第1内部電極層14の輪郭寸法及び厚さと各第2内部電極層15の輪郭寸法及び厚さは略同じである。また、15層の誘電体層16それぞれの厚さは略同じである。
【0020】
各第1内部電極層14の長さ方向一端部(
図6の左端部)は引出部14aとなっていて、各引出部14aの端縁はコンデンサ本体11の第1面f1に引き出されており、各端縁は第1外部電極12の後記第1部分12aに接続されている。また、各第2内部電極層15の長さ方向一端部(
図6の右端部)は引出部15aとなっていて、各引出部15aの端縁はコンデンサ本体11の第2面f2に引き出されており、各端縁は第2外部電極13の後記第1部分13aに接続されている。
【0021】
コンデンサ本体11の第1面f1と第2面f2と第3面f3と第4面f4それぞれは略平坦な面となっている。第5面f5の後記第1窄み面f5a及び後記第2窄み面f5bを除く部分は幅方向中央が膨らんだ凸曲面となっており、第6面f6の後記第1窄み面f6a及び後記第2窄み面f6bを除く部分は幅方向中央が膨らんだ凸曲面となっている。
【0022】
また、コンデンサ本体11の第5面f5は、第1面f1に隣接する位置に、該第1面f1の高さ方向寸法を減少させる第1窄み面f5aを幅方向全体に亘って有し、且つ、第2面f2に隣接する位置に、該第2面f2の高さ方向寸法を減少させる第2窄み面f5bを幅方向全体に亘って有している。コンデンサ本体11の第6面f6は、第1面f1に隣接する位置に、該第1面f1の高さ方向寸法を減少させる第1窄み面f6aを幅方向全体に亘って有し、且つ、第2面f2に隣接する位置に、該第2面f2の高さ方向寸法を減少させる第2窄み面f6bを幅方向全体に亘って有している。
【0023】
詳しく述べれば、第5面f5の第1窄み面f5aは幅方向中央が膨らみ、且つ、第1面f1に向かって傾いた凸曲面となっており、第2窄み面f5bも幅方向中央が膨らみ、且つ、第2面f2に向かって傾いた凸曲面となっている。第6面f6の第1窄み面f6aは幅方向中央が膨らみ、且つ、第1面f1に向かって傾いた凸曲面となっており、第2窄み面f6bも幅方向中央が膨らみ、且つ、第2面f2に向かって傾いた凸曲面となっている。
図5を用いて補足すれば、第5面f5の第1窄み面f5aと第2窄み面f5bそれぞれと、第6面f6の第1窄み面f6aと第2窄み面f6bそれぞれは、第5面f5と第6面f6との間の最大高さ方向寸法をh1とし、第1面f1と第2面f2それぞれの最大高さ方向寸法をh2とし、第1面f1と第2面f2それぞれの最小高さ方向寸法をh3としたとき、h1>h2>h3の条件を満足する凸曲面となっている。
【0024】
図6から分かるように、第5面f5の第1窄み面f5a及び第2窄み面f5bそれぞれが凸曲面となっており、且つ、第6面f6の第1窄み面f6a及び第2窄み面f6bそれぞれが凸曲面となっているため、これらに近い幾つかの第1内部電極層14の長さ方向一端部(
図6の左端部)と第2内部電極層15の長さ方向一端部(
図6の右端部)それぞれは内側に湾曲している。また、
図5から分かるように、第5面f5の第1窄み面f5a及び第2窄み面f5bを除く部分が凸曲面なっており、且つ、第6面f6の第1窄み面f6a及び第2窄み面f6bを除く部分が凸曲面なっているため、これらに近い幾つかの第1内部電極層14の幅方向両端部(
図5(A)の左右端部)と第2内部電極層15の幅方向両端部(
図5(B)の左右端部)それぞれも内側に湾曲している。
【0025】
なお、
図2〜
図6には、第1窄み面f5aと第2窄み面f5bと第1窄み面f6aと第2窄み面f6bそれぞれの長さ方向寸法及び凸曲面の態様を略同じにしたものを示しているが、各々の長さ方向寸法は多少相違していてもよいし、凸曲面の態様も多少相違していてもよい。また、第1窄み面f5aと第2窄み面f5bと第1窄み面f6aと第2窄み面f6bそれぞれは必ずしも単一の曲率半径を有する凸曲面でなくてもよく、例えば単一の曲率半径を有しない曲面からなるものの全体として凸曲面の形を呈しているものや、形が異なる複数の曲面が組み合わされているものの全体として凸曲面の形を呈しているものや、略平坦な面を部分的に含むものの全体として凸曲面の形を呈しているもの等であってもよい。
【0026】
第1外部電極12は、コンデンサ本体11の第1面f1に沿う第1部分12aと、コンデンサ本体11の第5面f5(第1窄み面f5aを除く)に沿う第2部分12bと、コンデンサ本体11の第5面f5の第1窄み面f5aに沿う第3部分12cとを有している。一方、第2外部電極13は、コンデンサ本体11の第2面f2に沿う第1部分13aと、コンデンサ本体11の第5面f5(第2窄み面f5bを除く)に沿う第2部分13bと、コンデンサ本体11の第5面f5の第2窄み面f5bに沿う第3部分13cとを有している。ちなみに、第1外部電極12と第2外部電極13それぞれの外周縁を除く部分の厚さは略同じである。図示を省略したが、第1外部電極12と第2外部電極13それぞれは、コンデンサ本体11の外面に密着した下地膜とこの下地膜の外面に密着した表面膜との2層構造、或いは、下地膜と表面膜との間に少なくとも1つの中間膜を有する多層構造を有している。
【0027】
図3及び
図5から分かるように、第1外部電極12の第1部分12aはコンデンサ本体11の第6面f6の第1窄み面f6aに僅かに入り込む部分12a1を有しており、第2外部電極13の第1部分13aはコンデンサ本体11の第6面f6の第2窄み面f6bに僅かに入り込む部分13a1を有している。また、コンデンサ本体11の第5面f5の第1窄み面f5aに沿う第1外部電極12の第3部分12cは該第1窄み面f5aに見合った形状となっており、コンデンサ本体11の第5面f5の第2窄み面f5bに沿う第2外部電極13の第3部分13cは該第2窄み面f5bに見合った形状となっている。
【0028】
材料等について補足すれば、コンデンサ本体11の各第1内部電極層14と各第2内部電極層15を除く部分には、好ましくはチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、酸化チタン等を主成分とした誘電体セラミックス、より好ましくはε>1000又はクラス2(高誘電率系)の誘電体セラミックスを使用できる。
【0029】
また、各第1内部電極層14と各第2内部電極層15には、好ましくはニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、これらの合金等を主成分とした良導体を使用できる。
【0030】
さらに、第1外部電極12及び第2外部電極13それぞれの下地膜は例えば焼き付け膜又はメッキ膜からなり、この下地膜には好ましくはニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、これらの合金等を主成分とした良導体を使用できる。表面膜は例えばメッキ膜からなり、この表面膜には好ましくは銅、スズ、パラジウム、金、亜鉛、これらの合金等を主成分とした良導体を使用できる。中間膜は例えばメッキ膜からなり、この中間膜には好ましくは白金、パラジウム、金、銅、ニッケル、これらの合金等を主成分とした良導体を使用できる。
【0031】
次に、
図7及び
図8を用いて、第1外部電極12の第1部分12aの端縁高さと第2外部電極13の第1部分13aの端縁高さについて説明する。
【0032】
なお、
図7及び
図8には第1外部電極12とコンデンサ本体11の一部を示し、第2外部電極13の図示を省略しているが、当該第2外部電極13の第1部分13aの端縁高さについても以下と同じことが言える。
【0033】
図6の部分拡大図である
図7中のD1はコンデンサ本体11の第6面f6の第1窄み面f6aの高さ方向寸法を示し、D2は第1部分12aの第1窄み面f6aに入り込んだ部分12a1の高さ方向寸法(以下、部分12a1の端縁を第1部分12aの端縁と言う)を示しており、
図7にあっては高さ方向寸法D2は高さ方向寸法D1の略1/2となっている。
図8(A)と
図8(B)それぞれは第1外部電極12の第1部分12aの端縁高さが
図7と異なる状態を示す図であり、
図8(A)にあっては高さ方向寸法D2が高さ方向寸法D1に近く、
図8(B)にあっては高さ方向寸法D2が高さ方向寸法D1よりもかなり小さい。
【0034】
図7、
図8(A)及び
図8(B)に示した状態は、何れも、第1内部電極層12の第1部分12aの端縁がコンデンサ本体11の第6面f6よりも上側に突出していないため、積層セラミックコンデンサ10の高さHに変動はない。また、
図7、
図8(A)及び
図8(B)に示した状態は、何れも、第1内部電極層12の第1部分12aに各第1内部電極層14の端縁が接続されているため、接続の観点からしても良品である。換言すれば、高さ方向寸法D2が高さ方向寸法D1の範囲内で変化しても、積層セラミックコンデンサ10の高さHも変動しないし、且つ、接続不良が発生することはない。
【0035】
即ち、コンデンサ本体11の第6面f6の第1窄み面f6aの高さ方向寸法D1は、第1外部電極12の第1部分12aの端縁高さの誤差を許容する役目を果たしており、図示省略のコンデンサ本体11の第6面f6の第2窄み面f6bの高さ方向寸法D1も、第2外部電極13の第1部分13aの端縁高さを誤差を許容する役目を果たしている。つまり、コンデンサ本体11の第6面f6側のマージン部の厚さが薄くなっても、高さ方向寸法D1分だけ第1外部電極12の第1部分12aの端縁高さの誤差と第2外部電極13の第1部分13aの端縁高さの誤差を許容できるため、高さ変動や接続不良を回避するために第1部分12a及び第1部分13aそれぞれの端縁高さを高精度で管理する必要はない。
【0036】
次に、
図2〜
図6の符号を適宜引用して、前記積層セラミックコンデンサ10の製造に適した2種類の製法例について説明する。
【0037】
〈第1の製法例〉
製造に際しては、誘電体セラミックス粉末を含有したセラミックスラリーと、良導体粉末を含有した電極ペーストを用意する。続いて、キャリアフィルムの表面にセラミックスラリーを塗工し乾燥して、第1グリーンシートを作製する。また、第1グリーンシートの表面に電極ペーストを印刷し乾燥して、第1内部電極層14及び第2内部電極層15の前身となる内部電極パターン群が形成された第2グリーンシートを作製する。
【0038】
続いて、第1グリーンシートから取り出した単位シートを所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返して、高さ方向一方のマージン部に対応する部位を作製する。また、第2グリーンシートから取り出した単位シート(内部電極パターン群を含む)を所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返して、容量部に対応する部位を作製する。さらに、第1グリーンシートから取り出した単位シートを所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返して、高さ方向他方のマージン部に対応する部位を作製する。最後に、積み重ねられた全体を本熱圧着して、未焼成積層シートを作製する。この未焼成積層シート作製工程では、合成ゴム等からなる圧着用弾性板の厚さ又は形を変える等して、
図2〜
図6に示したコンデンサ本体11の第5面f5(第1窄み面f5a及び第2窄み面f5bを含む)と第6面f6(第1窄み面f6a及び第2窄み面f6bを含む)それぞれに対応した表面凹凸が未焼成積層シートの上下面に形成されるようにする。
【0039】
続いて、未焼成積層シートを格子状に切断して、コンデンサ本体11に対応した未焼成チップを作製する。続いて、未焼成チップを、前記セラミックスラリーに含まれている誘電体セラミックス粉末と前記電極ペーストに含まれている良導体粉末に応じた雰囲気下、並びに、温度プロファイルにて多数個一括で焼成(脱バインダ処理と焼成処理を含む)を行って、焼成チップを作製する。続いて、焼成チップを多数個一括でバレル研磨して角及び稜線に丸み付けを行って、コンデンサ本体11を作製する。
【0040】
続いて、コンデンサ本体11の第1面f1と第2面f2それぞれに電極ペースト(前記電極ペーストと同じ電極ペースト、或いは、良導体粉末の種類が異なる別の電極ペースト)をディップし乾燥した後、焼き付け処理を行って外部電極用の下地膜を形成する。ちなみに、この下地膜は、スパッタリングや真空蒸着等の乾式メッキ法によって、コンデンサ本体11の第1面f1と第2面f2それぞれに良導体の膜を形成する方法によって形成してもよい。
【0041】
続いて、コンデンサ本体11の第5面f5の長さ方向両端部それぞれに電極ペースト(前記電極ペーストと同じ電極ペースト、或いは、良導体粉末の種類が異なる別の電極ペースト)を印刷して乾燥した後、焼き付け処理を行って外部電極用の別の下地膜を前記下地膜と連続するように形成する。ちなみに、この下地膜は、スパッタリングや真空蒸着等の乾式メッキ法によって、コンデンサ本体11の第5面f5の長さ方向両端部それぞれに良導体の膜を形成する方法によって形成してもよい。
【0042】
続いて、2つの下地膜の連続物を覆う表面膜、或いは、中間膜と表面膜を、電解メッキや無電解メッキ等の湿式メッキ法、或いは、スパッタリングや真空蒸着等の乾式メッキ法によって形成して、第1外部電極12と第2外部電極13それぞれを作製する。
【0043】
〈第2の製法例〉
製造に際しては、誘電体セラミックス粉末を含有したセラミックスラリーと、良導体粉末を含有した電極ペーストを用意する。続いて、キャリアフィルムの表面にセラミックスラリーを塗工し乾燥して、第1グリーンシートを作製する。また、第1グリーンシートの表面に電極ペーストを印刷し乾燥して、第1内部電極層14及び第2内部電極層15の前身となる内部電極パターン群が形成された第2グリーンシートを作製する。さらに、第1グリーンシートの表面に電極ペーストを印刷し乾燥して、下地パターン群が形成された第3グリーンシートを作成する。この下地パターン群は、第1外部電極12の第2部分12bの下地膜と第2外部電極13の第2部分13bの下地膜それぞれに対応する略矩形状パターンの集合体である。
【0044】
続いて、第1グリーンシートから取り出した単位シートを所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返して、高さ方向一方のマージン部に対応する部位を作製する。また、第2グリーンシートから取り出した単位シート(内部電極パターン群を含む)を所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返して、容量部に対応する部位を作製する。さらに、第1グリーンシートから取り出した単位シートを所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返した後、第3グリーンシートから取り出した単位シート(下地パターン群を含む)を積み重ねて熱圧着して、高さ方向他方のマージン部に対応する部位を作製する。最後に、積み重ねられた全体を本熱圧着して、未焼成積層シートを作製する。この未焼成積層シート作製工程では、合成ゴム等からなる圧着用弾性板の厚さ又は形を変える等して、
図1〜
図5に示したコンデンサ本体11の第5面f5(第1窄み面f5a及び第2窄み面f5bを含む)と第6面f6(第1窄み面f6a及び第2窄み面f6bを含む)それぞれに対応した表面凹凸が未焼成積層シートの上下面に形成されるようにする。
【0045】
続いて、未焼成積層シートを格子状に切断して、コンデンサ本体11に対応した未焼成チップを作製する。この未焼成チップには、コンデンサ本体11の第5面f5に対応する面の長さ方向両端部それぞれに下地パターンが存在する。続いて、未焼成チップを、前記セラミックスラリーに含まれている誘電体セラミックス粉末と前記電極ペーストに含まれている良導体粉末に応じた雰囲気下、並びに、温度プロファイルにて多数個一括で焼成(脱バインダ処理と焼成処理を含む)を行って、焼成チップを作製する。続いて、焼成チップを多数個一括でバレル研磨して角及び稜線に丸み付けを行って、コンデンサ本体11を作製する。このコンデンサ本体11には、第5面f5の長さ方向両端部の一方に第1外部電極12の第2部分12bの下地膜が存在し、他方に第2外部電極13の第2部分13bの下地膜が存在する。
【0046】
続いて、コンデンサ本体11の第1面f1と第2面f2それぞれに電極ペースト(前記電極ペーストと同じ電極ペースト、或いは、良導体粉末の種類が異なる別の電極ペースト)をディップし乾燥した後、焼き付け処理を行って、外部電極用の別の下地膜を前記下地膜と連続するように形成する。ちなみに、この下地膜は、スパッタリングや真空蒸着等の乾式メッキ法によって、コンデンサ本体11の第1面f1と第2面f2それぞれに良導体の膜を形成する方法によって形成してもよい。
【0047】
続いて、2つの下地膜の連続物の覆う表面膜、或いは、中間膜と表面膜を、電解メッキや無電解メッキ等の湿式メッキ法、或いは、スパッタリングや真空蒸着等の乾式メッキ法によって形成して、第1外部電極12と第2外部電極13それぞれを作製する。
【0048】
次に、前記積層セラミックコンデンサ10によって得られる効果について説明する。
【0049】
(1)前記積層セラミックコンデンサ10は、コンデンサ本体11の第6面f6の第1面f1に隣接する位置に、該第1面f1の高さ方向寸法を減少させる第1窄み面f6aを幅方向全体に亘って有し、且つ、第6面のf6の第2面f2に隣接する位置に、該第2面f2の高さ方向寸法を減少させる第2窄み面f6bを幅方向全体に亘って有しており、第6面f6の第1窄み面f6aの高さ方向寸法D1が第1外部電極12の第1部分12aの端縁高さの誤差を許容するように構成され、且つ、第6面f6の第2窄み面f6bの高さ方向寸法D1が第2外部電極13の第1部分13aの端縁高さの誤差を許容するように構成されている。
【0050】
即ち、コンデンサ本体11の第6面f6側のマージン部の厚さが薄くなっても、高さ方向寸法D1分だけ第1外部電極12の第1部分12aの端縁高さの誤差と第2外部電極13の第1部分13aの端縁高さの誤差を許容できる。依って、高さ変動や接続不良を回避するために第1部分12a及び第1部分13aそれぞれの端縁高さを高精度で管理することなく、略L字状の第1外部電極12及び第2外部電極13を適切に形成できる。
【0051】
(2)前記積層セラミックコンデンサ10は、コンデンサ本体11の第6面f6の第1窄み面f6aが幅方向中央で膨らみ、且つ、第1面f1に向かって傾いた凸曲面となっており、第6面f6の第2窄み面f6aが幅方向中央で膨らみ、且つ、第2面f2に向かって傾いた凸曲面となっている。即ち、第1外部電極12の第1部分12aの端縁がコンデンサ本体11の第6面f6の第1窄み面f6aに入り込む場合や、第2外部電極13の第1部分13aの端縁がコンデンサ本体11の第6面f6の第2窄み面f6aに入り込む場合でも、第1部分12a及び第1部分13aそれぞれの表面全体を滑らかに仕上げることができる。
【0052】
次に、前記効果の検証結果、特に第1外部電極12及び第2外部電極13の適切な形成に係る検証結果について説明する。
【0053】
検証に際して、
図2〜
図6に示した積層セラミックコンデンサ10に対応した評価用積層セラミックコンデンサと、
図1に示した積層セラミックコンデンサ100に対応した比較用積層セラミックコンデンサを、前記〈第1の製法例〉に準じてそれぞれ100個製造した。評価用積層セラミックコンデンサの仕様と、比較用積層セラミックコンデンサの仕様は、以下のとおりである。ちなみに、仕様中の数値は何れも設計上の基準値であって、製造公差を含むものではない。
【0054】
〈評価用積層セラミックコンデンサの仕様(
図2〜
図6の符号を引用)〉
・積層セラミックコンデンサ10の長さLが400μmで幅Wが200μmで高さHが200μm
・コンデンサ本体11の長さが370μmで幅が200μmで高さが185μm
・コンデンサ本体11の第1内部電極層13と第2内部電極層を除く部分の主成分がチタン酸バリウム
・第1内部電極層と第2内部電極層の主成分がニッケル、各々の厚さが0.5μm、各々の層数が145層
・第1内部電極層14と第2内部電極層15の間に介在する誘電体層16の厚さが0.5μm
・コンデンサ本体11の幅方向マージン部の厚さと高さ方向マージン部の厚さそれぞれが15μm
・コンデンサ本体11の第6面f6の第1窄み面6a及び第2窄み面6bの高さ方向寸法D1が10μm
・コンデンサ本体11の第5面f5の第1窄み面5a及び第2窄み面5bの高さ方向寸法D1が10μm
・第1外部電極12と第2外部電極13は3層構造で各々の厚さが15μm、下地膜の主成分は銅で厚さが10μm、中間膜の主成分はニッケルで厚さが2μm、表面膜の主成分はスズで厚さが3μm
【0055】
〈比較用積層セラミックコンデンサの仕様(
図2〜
図6の符号を引用)〉
・コンデンサ本体11の第6面f6が略平坦で第1窄み面f6a及び第2窄み面f6bを有しておらず、且つ、第5面f5が略平坦で第1窄み面f5a及び第2窄み面f5bを有していない以外は評価用積層セラミックコンデンサと同じ
【0056】
効果の検証は、製造後の100個の評価用積層セラミックコンデンサと製造後の100個の比較用積層セラミックコンデンサに対して、第1外部電極12の第1部分12aの端縁高さと第2外部電極13の第1部分13aの端縁高さがコンデンサ本体11の第6面f6よりも高くなっているか否かを観察することによって行った。観察の結果、100個の評価用積層セラミックコンデンサのうちで第1外部電極12の第1部分12aの端縁高さと第2外部電極13の第1部分13aの端縁高さがコンデンサ本体11の第6面f6よりもに高くなっているものは0個であったのに対し、100個の比較用積層セラミックコンデンサのうちで第1外部電極12の第1部分12aの端縁高さと第2外部電極13の第1部分13aの端縁高さがコンデンサ本体11の第6面f6よりも高くなっているものは33個であった。
【0057】
なお、前記〈第1の製法例〉では、第1外部電極12の第1部分12aと第2外部電極13の第1部分13aそれぞれの下地膜が電極ペーストのディップ及びその焼き付けによって形成されるものであり、評価用積層セラミックコンデンサと比較用積層セラミックコンデンサそれぞれの製造における下地膜形成時には各第1内部電極層14の露出端縁の全てが下地膜で覆われ、且つ、各第2内部電極層15の露出端縁の全てが下地膜で覆われるように留意したため、
図1(C)に示したように第1内部電極層14の露出端縁が第1外部電極12の第1部分12aに接続されていないものや第2内部電極層13の露出端縁が第2外部電極13の第1部分13aに接続されていないものは存在しなかったことを付記する。
【0058】
以下に、評価用積層セラミックコンデンサの仕様等を考慮の上で、
図7及び
図8を用いて先に説明したコンデンサ本体11の第6面f6の第1窄み面f6a及び第2窄み面f6bの高さ方向寸法D1について補足する。
【0059】
評価用積層セラミックコンデンサにおけるコンデンサ本体11の第6面f6の第1窄み面f6a及び第2窄み面f6bの高さ方向寸法D1は10μmであり、これはコンデンサ本体11の高さ方向マージンの厚さ(15μm)の2/3に相当する。この高さ方向寸法D1を15μmよりも大きくすることは製造上可能ではあるが、高さ方向寸法D1を極端に増加すると、第1窄み面f6a及び第2窄み面f6bに近い第1内部電極層14及び第2内部電極層15の湾曲度合いが大きくなって、第1内部電極層14と第2内部電極層15が短絡する懸念が生じる。依って、評価用積層セラミックコンデンサを製造したときに併せて製造した試作品の仕様を踏まえると、コンデンサ本体11の第6面f6の第1窄み面f6a及び第2窄み面f6bの高さ方向寸法D1の上限は、コンデンサ本体11の高さ方向マージンの厚さに止めることが望ましい。
【0060】
次に、前記積層セラミックコンデンサ10の変形例について説明する。
【0061】
〈第1変形例〉
図2〜
図6には、コンデンサ本体11の第5面f5として、第1窄み面f5a及び第2窄み面f5bを有し、且つ、第1窄み面f5a及び第2窄み面f5bを除く部分が幅方向中央で膨らんだ凸曲面となっているものを示したが、前記効果は第6面f6の態様に依存したものであるため、コンデンサ本体11の第5面f5から第1窄み面f5a及び第2窄み面f5bを排除して第5面f5全体を幅方向中央が膨らんだ凸曲面となるようにしてもよいし、第5面f5全体を略平坦な面となるようにしてもよい。
【0062】
〈第2変形例〉
図2〜
図6には、第1外部電極12の幅方向寸法をコンデンサ本体11の幅方向寸法(幅W)と一致させたものを示し、第2外部電極13の幅方向寸法をコンデンサ本体11の幅方向寸法(幅W)と一致させたものを示したが、第1外部電極12と第2外部電極13それぞれの幅方向寸法が幅Wよりも僅かに小さくても前記同様の効果を得ることができる。